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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1239675
審判番号 不服2008-10681  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-28 
確定日 2011-07-07 
事件の表示 特願2004- 50930「ジェル状一時染毛料組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 8日出願公開、特開2005-239626〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成16年2月26日の出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりである。

平成20年1月16日付け 拒絶理由通知
平成20年2月27日 意見書・手続補正書
平成20年3月27日付け 拒絶査定
平成20年4月28日 審判請求書・手続補正書
平成20年6月3日付け 前置審査移管
平成20年6月19日付け 前置報告書
平成20年6月27日付け 前置審査解除
平成22年11月24日付け 審尋
平成23年1月31日 回答書


第2 平成20年4月28日付け手続補正書についての補正の却下の決定
1 本件補正
平成20年4月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の

「下記成分(A)?(D)を含有することを特徴とするジェル状一時染毛料組成物。
(A)パール光沢を有する顔料及び/又はカーボンブラック
(B)ゲル化剤
(C)フィルム形成ポリマー
(D)一般式(1)
【化1】

(但し、Aは水酸基、アルコキシル基及びアミノ基含有アルキル基から選ばれた基、RはC1?18のアルキル基及び水酸基から選ばれた基、Qはアミノ基含有アルキル基、m及びnは0?3の数、xは30?400の数、yは1?3の数である。)で表されるアミノ基含有ポリシロキサンとアニオン基含有ポリマーとを反応させ得たシリコーン変性ポリマー」

「下記成分(A)?(D)を含有することを特徴とするジェル状一時染毛料組成物。
(A)パール光沢を有する顔料及び/又はカーボンブラック 0.01?10質量%
(B)ゲル化剤 0.1?5質量%
(C)フィルム形成ポリマー 0.2?5質量%
(D)一般式(1)
【化1】

(但し、Aは水酸基、アルコキシル基及びアミノ基含有アルキル基から選ばれた基、RはC1?18のアルキル基及び水酸基から選ばれた基、Qはアミノ基含有アルキル基、m及びnは0?3の数、xは30?400の数、yは1?3の数である。)で表されるアミノ基含有ポリシロキサンとアニオン基含有ポリマーとを反応させ得たシリコーン変性ポリマー」
とする補正を含むものである。

2.補正の適否
(1)補正の目的の適否
上記補正は、「(A)パール光沢を有する顔料及び/又はカーボンブラック」、「(B)ゲル化剤」、「(C)フィルム形成ポリマー」の配合量を特定するものである。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であり、補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項である「(A)パール光沢を有する顔料及び/又はカーボンブラック」、「(B)ゲル化剤」、「(C)フィルム形成ポリマー」の配合量を限定するものである。
したがって、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項により、なお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」といい、本件補正後の明細書を「本願補正明細書」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項により、なお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定に適合するか否か)、具体的には、本願補正発明が、本願出願前に頒布された刊行物に基づいて当業者が容易に発明をすることができたか否かについて、以下に検討する。

(2)刊行物に記載された事項
(ア)刊行物1に記載された事項
本願の出願前である平成9年9月9日に頒布された刊行物である特開平09-235213号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1a)「該オレフィン系多官能性モノマーの配合量としては、長鎖アルキルアクリレートモノマーとオレフィン性不飽和カルボン酸モノマーとオレフィン系多官能性モノマーとの総量に対して0.01?4重量%が好ましく、更に好ましくは0.2?1.0重量%である。これら上記の共重合体は、例えば特開昭51-6190号公報、特開平4-39312号公報等に記載された方法で製造することができる。共重合体の平均分子量は500,000?5,000,000が好ましい。これらの共重合体の具体例としては、ペミュレン、カーボポール1342(いずれもB.F.グッドリッチケミカル社製)の商品名で市販されている。尚、本願発明の上記共重合体の配合量としては、整髪料の組成物全量に対して0.01?5.0重量%が好ましく、更に好ましくは0.1?1.0重量%である。この範囲であると使用上好ましい粘性が得られる。」(段落【0015】)

(1b)「【実施例】実施例、比較例に示した整髪保持効果、官能試験、保存安定性の試験方法は下記の通りである。尚、以下の表に示す組成物の配合量は重量%で示す。」(段落【0025】)

(1c)「(1)整髪保持効果
長さ15cm、重さ1gの毛束にゲル状整髪料の試料を0.5gを均等に塗布し、直径2cmのロッドに巻き、45℃の高温室内に6時間放置して、完全に乾燥させた。乾燥後、ロッドをはずして、毛束の見かけの長さ(L)を測定した。次に温度25℃湿度90%の恒温恒湿室に毛束を吊し、30分後に取り出し、再び毛束の見かけの長さ(L_(0))を測定した。
整髪保持効果を次式にて求めた。
整髪保持力(%)=(15-L_(0))÷(15-L)×100
従って、この値が100に近いほど整髪保持効果が高い。
評価基準は、以下の通りである。
◎:非常に良好 整髪保持力80%以上
○:良好 整髪保持力50%以上、80%未満
△:やや悪い 整髪保持力30%以上、50%未満
×:悪い 整髪保持力30%未満実施例4(酸化染毛剤)」
(段落【0026】?【0028】)

(1d)「(2)官能試験
20名の被験者によってゲル状整髪料の試料を使用し、整髪を実施した。その後、被験者本人が、使用時の伸びの良さ、べたつきのなさ、使用後のごわつきのなさ、フレーキングのなさについて官能評価した。評価基準は、以下の通りである。
◎:非常に良好 良いと答えた被験者の数が18人以上
○:良好 良いと答えた被験者の数が12人以上、18人未満
△:やや悪い 良いと答えた被験者の数が8人以上、12人未満
×:悪い 良いと答えた被験者の数が8人未満」
(段落【0029】)

(1e)「(3)保存安定性
ゲル状整髪料の試料を透明容器に充填し、40℃に保たれた恒温槽に保存し、3ヶ月後の試料の状態を評価した。評価基準は、以下の通りである。
○:分離、粘度の変化なし
×:分離、又は粘度変化がある」(段落【0030】)

(1f)「表1、表2に示す処方に基づき、常法によってゲル状整髪料を調整した。
【表1】

」(段落【0032】)

(1g)「表1、表2より明らかなように本発明のゲル状整髪料(実施例1?5)はいずれも優れた性能を有していた。
一方、本発明の必須成分のいずれかを欠いたゲル状整髪料(比較例1?5)は、整髪保持効果、使用時の伸びの良さ、べたつきのなさ、使用後のごわつきのなさ、フレーキングのなさ、保存安定性の点で本発明のゲル状整髪料よりも劣っており、本発明の目的を達成できなかった。」(段落【0034】?【0035】)

(1h)「本発明は、優れた整髪保持効果を有し、毛髪に塗布時の伸びが良く、べたつきが極めて少なく、使用後には、ごわつきがなく、フレーキングがなく、更には、保存安定性に優れたゲル状整髪料を提供することができる。」(段落【0035】)

(イ)刊行物2に記載された事項
本願の出願前である平成11年2月23日に頒布された刊行物である特開平11-49651号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(2a)「パール光沢を有する顔料2?40重量%、ゲル化剤0.1?5重量%、及びフィルム形成性ポリマー0.2?5重量%を含有することを特徴とするヘアーマスカラ組成物。」(【請求項1】)

(2b)「現在市販されている一時染毛剤をみると、着色剤としてカーボンブラック又はタール系色素を用いたものがヘアーマスカラ剤として見受けられるが、これらは耐摩擦性に欠け、一度衣服につくと洗濯しても落ちないという問題点を有している。」(段落【0006】)

(2c)「以下発明の実施の形態を詳説する。本発明に使用するパール光沢を有する顔料は、以下のものが挙げられる。
1.雲母チタン。
2.カルミン、コンジョウ、群青、黒酸化鉄、ベンガラ、黄酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム等の無機顔料より選ばれる一種又は二種以上の有色顔料で被覆された雲母チタン。
3.アゾ顔料、酸性染料、フタロシアニン顔料、スレン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、イソインドリノン顔料等の有機顔料又は有機染料から選ばれる一種又は二種以上で被覆された雲母チタン。」(段落【0008】)

(2d)「本発明に使用するゲル化剤は、カルボキシビニルポリマー,アルキルアクリル酸-アクリル酸共重合体,ポリアクリル酸アミド,シェラック等が挙げられる。カルボキシビニルポリマーとしては、カーボポール(B.F.グッドリッチケミカル社製),ハイビスワコー(和光純薬製)、アルキルアクリル酸-アクリル酸共重合体としては、PEMULEN(B.F.グッドリッチケミカル社製)、ポリアクリル酸アミドとしては、セピゲル(セピック社製)の商品名等で市販されている。これらのゲル化剤は、一種又は二種以上を混合して用いることができ、ゲル化剤の配合量は本発明に係る組成物全量に対して0.1?5重量%である。0.1重量%未満では、顔料の沈殿等が発生し安定性上問題があり、5重量%を超えると粘度が高く、使用上のびや付きが悪い。」(段落【0011】)

(2e)「本発明に使用するフィルム形成性ポリマーとしては、ノニオン性高分子化合物と両性高分子化合物が特に好ましいものとして挙げられる。ノニオン性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン(ルビスコールK、BASF社製)、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体(ルビスコールVA、BASF社製)、及びビニルピロリドンとジメチルアミノエチルメタクリレートとの共重合体(コポリマー937、ISP社製)が挙げられる。両性高分子化合物としては、ジアルキルアミノエチルメタクリレート重合体のモノクロル酢酸両性化物(ユカフォーマー、三菱化学社製)が挙げられる。」(段落【0013】)

(2f)「(1)隠蔽力(試験法)
染色に使用するヘアーマスカラ組成物の試料をガラス板に0.2mmの厚さで均一な皮膜を作製し、一昼夜乾燥した後、色彩色差計を用いて、皮膜の明度(La)を測定した。次に、長さ10cm、重さ1gの毛束の明度(Lb)を測定した後に、ヘアーマスカラ組成物の試料0.5gを均等に塗布し、25℃、RH60%の条件下で1時間放置して乾燥させた。乾燥後、色彩色差計を用いて、染色した毛髪の明度(Lc)を測定した。次に以下の式に従って、染色による隠蔽力を求めた。この場合、値が高いほど隠蔽力が高いことを示す。
式 : 隠蔽力=(Lc-La)×100/(Lb-La)
尚、評価基準は、以下の通りである。
◎:極めて良好 隠蔽力90%以上
○:良好 隠蔽力80%以上、90%未満
△:やや悪い 隠蔽力50%以上、80%未満
×:悪い 隠蔽力50%未満」
(段落【0021】)

(2g)「
【表1】

」(段落【0026】)

(2h)

【表2】

」(段落【0029】)

(3)刊行物1に記載された発明
刊行物1の上記摘記事項(1f)には、上記摘記事項(1b)も併せてみると、ゲル状整髪料の具体的な実施例3として、「長鎖アルキルアクリレート/アクリル酸共重合体0.5重量%と、ポリビニルピロリドン2.0重量%と、シリコン変性ポリマーを含有するゲル状整髪料」(以下「引用発明」という。)が記載されている。

(4)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、刊行物1の上記摘記事項(1f)によれば引用発明の「長鎖アルキルアクリレート/アクリル酸共重合体」として「PEMULEN TR-1(B.F.グッドリッチケミカル社製)」を用いているが、本願補正明細書の段落【0014】には「ゲル化剤」として「PEMULEN(B.F.グッドリッチケミカル社製)」が例示されている。さらに、刊行物1の上記摘記事項(1a)の「上記共重合体の配合量としては、整髪料の組成物全量に対して0.01?5.0重量%が好ましく、・・・。この範囲であると使用上好ましい粘性が得られる」の記載からみて、引用発明の「長鎖アルキルアクリレート/アクリル酸共重合体」は好ましい粘性を与えるものであるので、本願補正発明の「ゲル化剤」に相当する。そして、引用発明において、「長鎖アルキルアクリレート/アクリル酸共重合体」は、「0.5重量部」配合されているから、本願補正発明と同様に「0.1?5質量%」の範囲内で配合されているといえる。
また、本願補正発明の段落【0016】には、「フィルム形成ポリマー」として「ポリビニルピロリドン」を例示しているから、引用発明の「ポリビニルピロリドン」は本願補正発明の「フィルム形成ポリマー」に相当する。そして、引用発明において、「ポリビニルピロリドン」は「2.0重量%」配合されているから、本願補正発明と同様に「0.2?5質量%」の範囲内で配合されているといえる。
さらに、刊行物1の上記摘記事項(1f)によれば引用発明の「シリコン変性ポリマー」として「シリコンFZ-3148(20%エタノール溶液)(日本ユニカー社製)」を用いており、本願補正明細書の段落【0022】には、本願補正発明の【化1】の「アミノ基含有ポリシロキサンとアニオン含有ポリマーとを反応させたシリコーン変性ポリマー」について「シリコンFZ-3148の商品名で日本ユニカー社から市販されている」と記載されているから、引用発明における「シリコン変性ポリマー」は本願補正発明における「(D)一般式(1)
【化1】

(但し、Aは水酸基、アルコキシル基及びアミノ基含有アルキル基から選ばれた基、RはC1?18のアルキル基及び水酸基から選ばれた基、Qはアミノ基含有アルキル基、m及びnは0?3の数、xは30?400の数、yは1?3の数である。)で表されるアミノ基含有ポリシロキサンとアニオン基含有ポリマーとを反応させ得たシリコーン変性ポリマー」に相当する。
そして、一般に「ジェル」は「ゲル状」の剤型になっているといえるから(この点について、例えば、特開平6-256143号公報の段落【0051】、特開平3-178917号公報の第2頁右上欄第16?20行、特開2001-335425号公報の段落【0027】を参照)、引用発明の「ゲル状整髪料」は「ジェル状」になっているといえる。

したがって、両者は、
「下記成分(B)?(D)を含有することを特徴とするジェル状組成物。
(B)ゲル化剤 0.1?5質量%
(C)フィルム形成ポリマー 0.2?5質量%
(D)一般式(1)
【化1】

(但し、Aは水酸基、アルコキシル基及びアミノ基含有アルキル基から選ばれた基、RはC1?18のアルキル基及び水酸基から選ばれた基、Qはアミノ基含有アルキル基、m及びnは0?3の数、xは30?400の数、yは1?3の数である。)で表されるアミノ基含有ポリシロキサンとアニオン基含有ポリマーとを反応させ得たシリコーン変性ポリマー」

という点で一致するが、以下の点で相違する。

相違点:「組成物」の成分として、本願補正発明では、「(A)パール光沢を有する顔料及び/又はカーボンブラック0.01?10質量%」を含有して「一時染毛料組成物」として用いるのに対し、引用発明では「(A)パール光沢を有する顔料及び/又はカーボンブラック」を含有せずに「整髪料」として用いる点

(5)判断
(ア)相違点について
上記相違点について検討する。
刊行物2の上記摘記事項(2a)には、「パール光沢を有する顔料2?40重量%、ゲル化剤0.1?5重量%、及びフィルム形成性ポリマー0.2?5重量%を含有することを特徴とするヘアーマスカラ組成物」が記載され、刊行物2の上記摘記事項(2d)、(2e)の記載からみて、「ゲル化剤」及び「フィルム形成ポリマー」は引用発明のものと同様のものであるといえる。また、上記摘記事項(2b)の記載からみて「ヘアーマスカラ組成物」は「一時染毛剤」すなわち「一時染毛料組成物」と同義であると認められる。
また、整髪料にパール光沢顔料や炭等を混入して毛髪の装飾や色付けを行うことは周知の技術である(例えば、平成20年3月27日付け拒絶査定で引用された特開2004-10540号公報の【請求項1】【請求項3】及び段落【0004】、特表2003-503332号公報の【請求項1】、【請求項8】【請求項16】及び【請求項20】、特開2003-313114号公報の【請求項1】を参照)。
そうすると、引用発明において、「パール光沢を有する顔料」を添加して、「一時染毛料組成物」として使用することは、当業者が容易に想到し得たことといえる。
また、その際に、「パール光沢を有する顔料」等の顔料や装飾剤の配合量を「0.01?10質量%」とすることも、刊行物2の上記摘記事項(2h)の実施例5、7?8には、(2c)の記載と併せてみると「パール光沢を有する顔料」を「2?10重量%」配合することが記載されているから(さらに、平成20年3月27日付け拒絶査定で引用された特開2004-10540号公報の段落【0027】の【表1】には、「DCグリッターゴールドI♯01」あるいは「Timica Pearlwhite」を4重量%配合させることが記載されている。また、特表2003-503332号公報の段落【0033】には「反射スパンコール」を100g中5g配合させることが記載されている。)、特異な範囲の配合量であるということはできず、当業者が適宜設定し得たことといえる。

(ウ)本願補正発明の効果について
本願補正発明の効果について、本願補正明細書の段落【0008】には、「本発明によって、隠蔽性、汗や雨などの水分に対する耐水性、安定性に優れ、且つ、べとつきやごわつきがない感触に優れたジェル状一時染毛料組成物を提供することができる」と記載されている。

一方、刊行物1の上記摘記事項(1f)の評価、(1d)?(1e)、(1g)、(1h)の記載からみて、引用発明の整髪料も、べたつきやごわつきがなく、保存安定性に優れたものであると評価することができる。また、刊行物2の上記摘記事項(2g)の評価を(2c)、(2f)の記載と併せてみると、「パール光沢顔料」である「雲母チタン」等が配合されたものは「隠蔽力」に優れているから、引用発明に「パール光沢を有する顔料」を添加したものは、「隠蔽力」に優れたものになるといえる。
さらに、「耐水性」について、本願補正発明では、本願補正明細書の段落【0027】によれば「長さ10cm、重さ1gの毛束にジェル状一時染毛料組成物の試料を0.5gを均等に塗布し、45℃の恒温室内に6時間放置して、完全に乾燥させた。次に温度25℃湿度90%の恒温恒湿室に毛束を吊し、30分後に取り出し、毛髪に木綿の布を擦り付け、布に付着した顔料の有無を目視により判断した」ことにより評価している。
一方、引用発明においても、「耐水性」ではなく「整髪保持効果」の評価ではあるが、刊行物1の上記摘記事項(1c)の記載からみて、本願補正発明と同様の条件下で処理した後の「毛髪の見かけの長さ(L_(0))」について評価しており、「整髪保持効果」が優れたものになっている。そして、「整髪料」に顔料等を添加した場合、「整髪保持効果」が優れたものであれば、「整髪料」が崩れにくく顔料等も堅固に保持されるようになり、「毛髪に木綿の布を擦り付け」たときの「布に付着した顔料」が減少し、「耐水性」に優れたものになるといえる。
そうすると、本願補正発明の効果は、引用発明および刊行物2に記載された事項から当業者が予測できる範囲内のことと認められ、格別顕著な効果であると評価することはできない。

(6)請求人の主張
平成23年1月31日付け回答書において、「本願発明の成分(B)や(C)に加えて、成分(D)を含む引用文献1に記載の整髪料に、成分(A)を組み合わせることによって、染毛料として要求される耐水性を備えたものとなることは、これを一時染毛料として用いることを想定していない当業者が到底予測し得ることではありません」、「これに対し、本願発明は、成分(A)、(B)及び(C)を含有する一時染毛料において、成分(D)を含有せしめることによって、べたつき及びごわつきが抑制され、隠蔽性及び安定性に優れるため、成分(A)の量も0.01?10質量%という少量でよくなることに加えて、意外にも、優れた耐水性が得られる、という顕著な効果を奏するものであります。斯かる効果は、成分(A)?(D)のいずれかが不足する場合には得られないものであり(本願明細書段落〔0035〕:表1比較例1?4参照)、前述のような引用文献1及び2に記載の発明並びに周知技術から当業者が容易に予測できたものではありません」と主張している。
しかしながら、上記(5)(ア)でも検討したように、「整髪料」に顔料等を添加して「一時染毛料組成物」として用いることは当業者が容易に想到し得たことであり、さらに、上記(5)(ウ)でも検討したように、引用発明の「整髪料」に顔料等を添加した場合であっても、「整髪保持効果」が優れれば、「整髪料」が崩れにくく顔料等も堅固に保持されるようになり「耐水性」に優れたものになるといえる。したがって、本願補正発明の効果である「優れた耐水性が得られる」ことは、刊行物1及び刊行物2から当業者が予測できる程度のものであり、格別顕著な効果であるとは評価できない。

(7)まとめ
よって、本願補正発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 むすび
以上のとおり、上記補正は、平成18年法律第55号改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、本件補正は、その余のことを検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成20年4月28日付け手続補正書は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「下記成分(A)?(D)を含有することを特徴とするジェル状一時染毛料組成物。
(A)パール光沢を有する顔料及び/又はカーボンブラック
(B)ゲル化剤
(C)フィルム形成ポリマー
(D)一般式(1)
【化1】

(但し、Aは水酸基、アルコキシル基及びアミノ基含有アルキル基から選ばれた基、RはC1?18のアルキル基及び水酸基から選ばれた基、Qはアミノ基含有アルキル基、m及びnは0?3の数、xは30?400の数、yは1?3の数である。)で表されるアミノ基含有ポリシロキサンとアニオン基含有ポリマーとを反応させ得たシリコーン変性ポリマー」

2 原査定の概要
原査定における拒絶の理由の概要は、本願発明は、その出願前に頒布された以下の刊行物である引用文献1?2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとするものである。

1.特開平09-235213号公報
2.特開平11-049651号公報

3 引用文献及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(上記「刊行物1」に同じ)及び引用文献2(上記「刊行物2」に同じ)の記載事項は、「第2 平成20年4月28日付け手続補正についての補正却下の決定」の「2 補正の適否」の「(2)刊行物に記載された事項」に記載したとおりであり、引用発明は同「(3)刊行物1に記載された発明」に記載したとおりである。

4 対比・判断
前記「第2 平成20年4月28日付け手続補正についての補正却下の決定」の「2 補正の適否」の「(1)補正の目的の適否」で検討したように、本願補正発明は、本願発明を特定するために必要な事項を限定したものであるから、本願発明は本願補正発明を包含するものである。

そうすると、本願発明の構成要件の全てを含むさらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明は、前記「第2 平成20年4月28日付け手続補正についての補正却下の決定」の「2 補正の適否」の「(4)対比」?「(5)判断」に記載したとおり、刊行物1及び刊行物2に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これを包含する本願発明も、同様の理由により、本願の出願前に頒布された刊行物1及び刊行物2に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

3 むすび
以上のとおりであるから、その余のことについて検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-02 
結審通知日 2011-05-10 
審決日 2011-05-24 
出願番号 特願2004-50930(P2004-50930)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 貴子  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 前田 佳与子
杉江 渉
発明の名称 ジェル状一時染毛料組成物  
代理人 村田 正樹  
代理人 伊藤 健  
代理人 高野 登志雄  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 有賀 三幸  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 山本 博人  

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