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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1239704
審判番号 不服2009-24018  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-04 
確定日 2011-07-07 
事件の表示 平成11年特許願第 90323号「X線透視撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月10日出願公開、特開2000-279401〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成11年3月30日の特許出願であって,平成21年8月31日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月4日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?2に係る発明は,平成20年11月28日付け手続補正書により補正された事項により特定されたものと認められ,その請求項1に係る発明は,次のとおりである。
「【請求項1】被検体を載置する天板と,前記天板を保持する本体フレームと,X線管と,前記本体フレームの側方に位置し,前記X線管を前記天板の上方で支持する支持フレームと,前記天板を挟んでX線管と対向するように配置された透過X線検出器と,前記X線管からのX線照射に伴って透過X線検出器から出力されるX線検出データに基づきX線透視画像を得る画像処理を行う画像処理手段とを備えてなるX線透視撮影装置において,前記透過X線検出器としてX線検出素子がマトリックス状に配列されている単一のX線面センサと,このX線面センサを天板の下方で前記X線管と対向して天板に平行となる正面方向撮影位置と,正面方向撮影位置で天板に平行姿勢の前記X線面センサを,天板の下方の天板に対して垂直姿勢の中間位置を経て前記支持フレーム側の天板の側上部で天板に対して垂直姿勢となる側面方向撮影位置とに往復移動させる移動手段とを備えていることを特徴とするX線透視撮影装置。」(以下,「本願発明」という。)

第3 引用刊行物およびその記載事項
本願出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平10-108860号公報(以下,「引用刊行物1」という。)には,「X線撮影装置」について,図面とともに次の事項が記載されている。
(1-ア)
「【請求項1】 X線撮影装置において,ディテクタホルダ(7)のための底部支承装置(1,2,3;15,16,25)が設けられており,該底部支承装置(1,2,3;15,16,25)に前記ディテクタホルダ(7)が三次元的に調節可能に結合されていて,三次元的に自由に調節可能なX線放射器(10)が設けられており,ディテクタ(24)を備えたディテクタホルダ(7)とX線放射器(10)とが,複数の種々異なる患者支承装置(9,27)に,X線撮影を行うために接近させられるようになっていることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】 リンクアーム(2,3)に設けられたディテクタホルダ(7)がベース(1)に連結されていて,該ベース(1)が鉛直軸線(6)を中心として回転可能である,請求項1記載のX線撮影装置。
【請求項3】 ディテクタホルダ(7)が支持装置(15)に高さ調節可能に,かつ旋回可能に支承されていて,該支持装置(15)がガイド(16)によって底部レール(17)で長手方向摺動可能にガイドされている,請求項1記載のX線撮影装置。
【請求項4】 別の支持装置(19)がガイド(18)によって底部レール(17)で長手方向摺動可能にガイドされていて,前記別の支持装置(19)がX線放射器(10)を三次元的に調節可能に保持している,請求項3記載のX線撮影装置。
【請求項5】 患者台(9)が一方の側で支承されていて,ディテクタホルダ(7)とX線放射器(10)とが患者台(9)の上方若しくは下方で調節可能である,請求項3又は4記載のX線撮影機。
【請求項6】 患者台(9)とディテクタホルダ(7)とに,患者台(9)とディテクタホルダ(7)とを結合させるための互いに適合する連結手段(22,23)が設けられている,請求項5記載のX線撮影装置。
【請求項7】 ディテクタホルダ(7)が,床に支持されたコラム(25)に沿って自由に調節可能に支承されている,請求項1記載のX線撮影装置。
【請求項8】 ディテクタホルダ(7)とコラム(25)とがテレスコープ式装置(26)を介して連結されていて,該テレスコープ式装置(26)がコラム(25)に高さ調節可能に支承されている,請求項7記載のX線撮影装置。
【請求項9】 ディテクタホルダ(7)とテレスコープ式装置(26)とが回転可能に連結されている,請求項8記載のX線撮影装置。」

(1-イ)
「【0005】
【発明の効果】本発明によるX線撮影装置では,有利には,アモルファスシリコンを主体としたディテクタ素子のマトリックスから成る扁平な固体ディテクタを有するディテクタホルダを,患者位置に相応して三次元的に個々に調節することができる。これにより自在な撮影技術が提供されて,例えば撮影室において胸部撮影,台撮影及び自由な撮影が可能である。」

(1-ウ)
「【0007】図1には検査室の床に支承されたベース1が示されている。このベース1には2つの部分から成るリンクアーム2,3が結合されている。これらのリンクアーム2,3は2つの水平軸線4,5を中心として旋回可能である。ベース1は鉛直軸線6を中心として回転可能である。リンクアーム2,3の自由端部にはX線撮影装置のディテクタホルダ7が,別の水平軸線8を中心として旋回可能に結合されている。ディテクタホルダ7は,ディテクタ素子のマトリックスから成る扁平ディテクタを有していて,ディテクタ素子の電気的な信号が画像コンピュータに送られ,この画像コンピュータがディテクタ素子の信号から,患者の検査領域の画像を形成する。」

(1-エ)
「【0008】図2には患者台9の下側に位置しているディテクタホルダ7が示されている。ディテクタホルダ7と同様に自由に三次元的にで調節可能であるX線放射器10は患者台9の上方に位置しているので,横たわった患者のもとで撮影を行うことができる。図2ではさらに破線で,ディテクタ面が鉛直位置に位置しているディテクタホルダ7の位置が示されている。このディテクタホルダ7は,患者12の胸部撮影を行うために壁台11にガイドされている。」

(1-オ)
「【0010】図3には,ディテクタホルダ7が支持装置15に設けられた平行四辺形リンク機構14によって高さ調節可能に,かつ同様に三次元的に自由に調節可能に支承されていることが示されている。支持装置15はガイド16によって底部レール17で(図4参照)長手方向摺動可能にガイドされている。図4にはさらに,ガイド18が底部レール17で同様に長手方向摺動可能にガイドされていることが示されている。ガイド18は支持装置19でX線放射器10を,空間内で三次元的に調節可能に保持している。患者台9は図4のX線撮影装置では,一方の側で水平軸線20を中心として旋回可能に支承されている。ディテクタホルダ7は水平軸線8を中心として傾斜可能であるほかに,この水平軸線8に対して垂直に延びる水平軸線21を中心として傾斜可能である。従って,横たわった患者のもと及び直立した患者のもとでの撮影が可能である。X線放射器10は相応に調節可能である。
【0011】患者台9には連結手段22が設けられている。この連結手段22はディテクタホルダ7に設けられた連結手段23に適合する。これにより,ディテクタホルダ7を患者台9に堅固に連結させることができる。この場合にはディテクタホルダ7は患者台9とともに運動し,このような運動は自動的に相応に調節される。」

(1-カ)
「【0012】図4にはさらに,扁平ディテクタ(ディテクタ素子のマトリクスから成る固体ディテクタ)として形成されたディテクタ24が示されている。」

(1-キ)
「【0013】図5?図7の実施例では検査室の床に支持されたコラム25が設けられている。このコラム25には,ディテクタ24を備えたディテクタホルダ7がテレスコープ式装置26を介して三次元的に自由に調節可能に支承されている。図5ではディテクタホルダ7は台27の下方に持っていくこともできるので,横たわった患者のもとでの撮影が可能である。図6では,直立した患者のもとで撮影が可能であるような位置にあるディテクタホルダ7が示されている。図7では,台27上に横たわった患者のもとで側方からの撮影が可能であるような位置にあるディテクタホルダ7が示されている。この場合は,中央放射器は台27の支承面に対して横方向に延びている。
【0014】図5?図7にはX線放射器が示されていない。X線放射器は三次元的に自由に調節可能である。ディテクタホルダ7が既に説明したように同様に三次元的に自由に調節可能であり,特にテレスコープ式装置26を介して回転可能でもある。」

そうすると,これら(1-ア)?(1-キ)の記載と,【図1】?【図7】,特に【図5】及び【図7】を総合すると,引用刊行物には,次の発明が記載されていると認められる。
「患者台9と,X線放射器10と,該X線放射器10を三次元的に調節可能に保持している支持装置19と,ディテクタ24と,ディテクタ素子の信号から,患者の検査領域の画像を形成する画像コンピュータとを備えるX線撮影装置において,前記ディテクタとして,ディテクタ素子のマトリックスから成る扁平ディテクタと,患者台9の下側に位置しているディテクタホルダ7を,横たわった患者のもとで撮影が可能であるような位置と,側方からの撮影が可能であるような位置とに,三次元的に自由に調節可能な支承装置とを備えるX線撮影装置。」(以下,「引用発明」という。)

第4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると,その機能・構造からみて,引用発明の「X線放射器10」,「ディテクタ24」,「ディテクタ素子の信号から」,「患者の検査領域の画像を形成する画像コンピュータ」「ディテクタ素子」,「マトリックスから成る扁平ディテクタ」が,それぞれ,本願発明の「X線管」,「透過X線検出器」,「前記X線管からのX線照射に伴って透過X線検出器から出力されるX線検出データに基づき」,「X線透視画像を得る画像処理を行う画像処理手段」,「X線検出素子」,「マトリックス状に配列されている単一のX線面センサ」に相当するのは明らかである。
また,引用発明の「患者台9」と,本願発明の「被検体を載置する天板と,前記天板を保持する本体フレーム」とは,「被検体を載置する天板と,前記天板を保持するフレーム」である点で共通する。
そして,上記摘記事項(1-オ),(1-カ)及び【図4】の記載から,引用発明の「X線放射器を三次元的に調節可能に保持している支持装置」は「天板を支持するフレームの側方に位置し,X線放射器を前記天板の上方で支持している」といえるから,これと,本願発明の「前記本体フレームの側方に位置し,前記X線管を前記天板の上方で支持する支持フレーム」とは,「フレームの側方に位置し,前記X線管を前記天板の上方で支持する支持フレーム」である点で共通する。
また,X線撮影装置の分野において,患者が載置される天板を挟んで「X線放射器」と「ディテクタ」を「対向」させて配置することは技術常識である。
そして,上記摘記事項(1-キ)と【図5】の記載によると,引用発明の「患者台の下側に位置しているディテクタホルダを,横たわった患者のもとで撮影が可能であるような位置」では,「ディテクタホルダ」が「患者台に平行」であるといえるから,本願発明の「天板の下方で前記X線管と対向して天板に平行となる正面方向撮影位置」に相当する。
また,上記摘記事項(1-キ)と【図7】の記載によると,引用発明の「側方からの撮影が可能であるような位置で」は,「ディテクタホルダ」は「患者台」に対して垂直であるといえるから,本願発明の「天板の側上部で天板に対して垂直姿勢となる側面方向撮影位置」に相当する。
そして,引用発明の「三次元的に自由に調節可能な支承装置」と,本願発明の「往復移動させる移動手段」とは,「移動させる移動手段」である点で共通する。

そうすると,両者は,
(一致点)
「被検体を載置する天板と,前記天板を保持するフレームと,X線管と,前記フレームの側方に位置し,前記X線管を前記天板の上方で支持する支持フレームと,前記天板を挟んでX線管と対向するように配置された透過X線検出器と,前記X線管からのX線照射に伴って透過X線検出器から出力されるX線検出データに基づきX線透視画像を得る画像処理を行う画像処理手段とを備えてなるX線透視撮影装置において,前記透過X線検出器としてX線検出素子がマトリックス状に配列されている単一のX線面センサと,このX線面センサを天板の下方で前記X線管と対向して天板に平行となる正面方向撮影位置と,天板の側上部で天板に対して垂直姿勢となる側面方向撮影位置とに移動させる移動手段とを備えているX線透視撮影装置。」である点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
「天板を保持するフレーム」について,本願発明は「天板を保持する本体フレーム」であるのに対し,引用発明はそのような構成でない点。
(相違点2)
「X線面センサ」について,本願発明は「正面方向撮影位置で天板に平行姿勢の前記X線面センサを,天板の下方の天板に対して垂直姿勢の中間位置を経て前記支持フレーム側の天板の側上部で天板に対して垂直姿勢となる側面方向撮影位置とに往復移動させる」のに対し,引用発明は,天板の下方の中間位置を経て移動させるか否か不明な点。

上記相違点について検討する。
(相違点1)について
「X線透視撮影装置」の分野において,天板の下部に本体部分を設置して「天板を保持する本体フレーム」とすることは,周知であったといえる。
例えば,本願出願日前に頒布された刊行物である実願平1-36934号(実開平2-126612号)のマイクロフィルムには,以下の事項が記載されている。
「2.実用新案登録請求の範囲
X線管と撮像機構とを本体フレームに設けるとともに,前記X線管と前記撮像機構との間に位置させて,被検者搭乗用の天板を設けた透視撮影台において,前記X線管または前記撮像機構を,前記天板の下方位置と下方から退避した位置とにわたつて変位可能に設けるとともに,前記本体フレームに前記天板を上下方向に変位可能に設けたことを特徴とする透視撮影台。
3.産業上の利用分野
この考案は,X線管と撮像機構とを本体フレームに設けるとともに,X線管と撮像機構の間に位置させて,被験者搭乗用の天板を設けた透視撮影台に関する。」
そうすると,引用発明の「天板を保持するフレーム」において,上記周知の構成を適用して本願発明のような構成とすることは当業者にとって容易に想到しうるものであるといえる。

(相違点2)について
上記摘記事項(1-キ)の記載によると,引用発明の「ディテクタホルダ」は「三次元的に自由に調節可能に支承されて」おり,任意のポジションで移動・固定可能となっている。ここで,「ディテクタホルダ」を【図5】の「天板に対して平行姿勢」なポジションから,【図7】の「天板に対して垂直姿勢」のポジションに遷移させる場合,「ディテクタホルダ」を一旦「天板に対して垂直」な「中間位置」を経てから,「テレスコープ式装置26」を引き上げることが可能であることは明らかである。
そうすると,引用発明において,正面方向撮影位置で天板に平行姿勢の前記X線面センサを,天板の下方の天板に対して垂直姿勢の中間位置を経て前記支持フレーム側の天板の側上部で天板に対して垂直姿勢となる側面方向撮影位置とに往復移動させるようにして,相違点2における本願発明の構成とすることは,設計事項であるということができる。
そして,本願明細書に記載された効果も,引用発明および上記周知の技術から,当業者が予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものといえない。

したがって,本願発明は,引用発明および上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるというべきである。

第5 まとめ
以上のとおり,本願発明は,本願出願前に頒布された引用刊行物に記載された発明および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして,その余の請求項の発明ついて言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-29 
結審通知日 2011-04-05 
審決日 2011-05-25 
出願番号 特願平11-90323
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 九鬼 一慶  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 後藤 時男
竹中 靖典
発明の名称 X線透視撮影装置  
代理人 江口 裕之  
代理人 喜多 俊文  

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