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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61H
管理番号 1240059
審判番号 無効2010-800123  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-07-15 
確定日 2011-05-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3686244号発明「エアーマッサージ機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯
(1)本件特許第3686244号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成9年12月15日に出願され、平成17年6月10日にその発明について特許権の設定登録がされたものである。
(2)これに対し請求人は、平成22年7月15日に本件無効審判を請求し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出し、本件特許発明1及び2についての特許を無効とするとの審決を求めた。
(3)被請求人は、平成22年10月4日に答弁書を提出するとともに、訂正請求書を提出して訂正を求めた。
(4)その後請求人より平成22年12月6日付け口頭審理陳述要領書及び証拠方法として甲第14号証ないし甲第18号証が提出され、被請求人から同日付け口頭審理陳述要領書が提出され、平成22年12月20日に口頭審理が実施された。
(5)その後請求人より平成23年1月14日付けで上申書が提出され、証拠方法として甲第19号証ないし甲第29号証が提出され、被請求人より平成23年1月31日付けで上申書が提出された。

2 訂正の可否
(2-1)訂正の内容
平成22年10月4日付け訂正請求は、本件特許発明の明細書(以下、「本件明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、訂正の内容は以下の訂正事項1?5のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。)
(ア)訂正事項1
請求項1の「この身体支持部に配設されるとともにエアーの給排気によって膨縮する複数のエアーバッグと、」を「この身体支持部の各被施療部に対応する部位に配設されるとともにエアーの給排気によって膨縮する複数のエアーバッグと、」に訂正する。
(イ)訂正事項2
請求項1の「この設定手段に設定されたマッサージ力情報を指定するための指定情報を入力するとともに、定められた順序にしたがって各エアーバッグにエアーを給排気させるマッサージのコースを設定する入力手段と、」を「定められた順序にしたがって各エアーバッグにエアーを給排気させる複数のマッサージのコースのうちいずれかのコースを選択して設定する入力手段とを備え、前記入力手段は、マッサージ機を動作させながら前記設定手段に設定されたマッサージ力情報を指定するための指定情報を入力するものであり、」に訂正する。
(ウ)訂正事項3
請求項1の「この記憶手段に記憶された指定情報に基づいて前記それぞれのエアーバッグが前記設定手段に設定されたマッサージ力となるように前記エアー供給装置を制御する制御手段とを備え、」を、「この記憶手段に記憶された指定情報に基づいて、指定された被施療部に対応するエアーバッグが前記設定手段に設定されたマッサージ力となるように前記エアー供給装置を制御する制御手段とを備え、」に訂正する。
(エ)訂正事項4
請求項1の「前記コースにより定められた順序にしたがってエアーが給排気される前記それぞれのエアーバッグ毎に、マッサージ力の強さを可変できるようにしたことを特徴とする」を、「マッサージ機を動作させながら前記指定情報を入力することで、前記コースにより定められた順序にしたがってエアーが給排気される前記それぞれのエアーバッグのマッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいて指定された被施療部に対応するエアーバッグ毎に可変できるようにしたことを特徴とする」に訂正する。
(オ)訂正事項5
明細書の段落【0006】の、「この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、請求項1記載の発明は、身体支持部と、この身体支持部に配設されるとともにエアーの給排気によって膨縮する複数のエアーバッグと、これらエアーバッグにエアーを給排気するエアー供給装置と、前記エアーバッグのそれぞれによって生じるマッサージ力を定めるマッサージ力情報を設定する設定手段と、この設定手段に設定されたマッサージ指定するための指定情報を入力するとともに、定められた順序にしたがって各エアーバッグにエアーを給排気させるマッサージのコースを設定する入力手段と、この入力手段から入力された指定情報を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された指定情報に基づいて前記それぞれのエアーバッグが前記設定手段に設定されたマッサージ力となるように前記エアー供給装置を制御する制御手段とを備え、前記コースにより定められた順序にしたがってエアーが給排気される前記それぞれのエアーバッグ毎に、マッサージ力の強さを可変できるようにしたエアーマッサージ機としたものである。」を、「この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、請求項1記載の発明は、身体支持部と、この身体支持部の各施療部に対応する部位に配設されるとともにエアーの給排気によって膨縮する複数のエアーバッグと、これらエアーバッグにエアーを給排気するエアー供給装置と、前記エアーバッグのそれぞれによって生じるマッサージ力を定めるマッサージ力情報を設定する設定手段と、定められた順序にしたがって各エアーバッグにエアーを給排気させる複数のマッサージのコースのうちいずれかのコースを選択して設定する入力手段とを備え、前記入力手段は、マッサージ機を動作させながら前記設定手段に設定されたマッサージ力情報を指定するための指定情報を入力するものであり、この入力手段から入力された指定情報を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された指定情報に基づいて、指定された被施療部に対応するエアーバッグが前記設定手段に設定されたマッサージ力となるように前記エアー供給装置を制御する制御手段とを備え、マッサージ機を動作させながら前記指定情報を入力することで、前記コースにより定められた順序にしたがってエアーが給排気される前記それぞれのエアーバッグのマッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいて指定された被施療部に対応するエアーバッグ毎に可変できるようにしたエアーマッサージ機としたものである。」と訂正する。

(2-2)訂正の可否に対する判断
(i)請求人は、これらの訂正事項のうち訂正事項4の「マッサージ機を動作させながら前記指定情報を入力すること」及び「マッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいて指定された被施療部に対応するエアーバッグ毎に」とした点について、マッサージのコース運転中に指定情報を入力する態様を含むものとなるが、コース運転中に指定情報を入力することは本件明細書に記載されていないから、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものでなく、訂正要件を満たさないと主張している(ここで、「コース運転」とは複数のマッサージのコースの内いずれかのコースを選択して設定し、そのコースに定められた順序にしたがってマッサージを行う運転をいうものと解される。)ので、この点について以下検討する。
まず訂正事項4により訂正された「・・・マッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいて指定された被施療部に対応するエアーバッグ毎に可変できるようにした・・・」との記載を自然に解釈すれば「マッサージのコースにおいて」は「指定された」にかかるものと解されるから、この記載は単に「マッサージのコースにおいて指定された被施療部に対応するエアーバッグ」に対し、「マッサージ力の強さをエアーバッグ毎に可変できるようにしたこと」を記載しているにすぎず、「マッサージ機を動作させながら前記指定情報を入力すること」との記載を併せてみても、コース運転中に指定情報を入力する態様を含むとは解し難い。しかしながら、上記記載において「マッサージのコースにおいて」が「可変できる」にかかると解する余地もあるので、そのように解した場合にコース運転中に指定情報を入力する態様を含むことになるかについて、さらに検討する。
この場合の「マッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいて」「可変できる」という文言の意味は、(a)マッサージ力の変更操作自体をコース運転中に行うことすなわち「コース運転中に指定情報を入力する」ことを指す場合と、(b)マッサージ力の変更操作自体をコース運転中に行うのではなく、単にマッサージのコースにおけるマッサージ力が変更できることを指す場合と、が考えられる。
そこで、願書に添付した明細書又は図面を参照すると、以下の記載がある。ここで、下線部は審査過程の手続補正により補正された箇所を示す。
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のエアーマッサージ機においては、マッサージ力の強さをある強さに設定すると各エアーバッグはすべて前記設定された強さとなるようになっているため、なんらかの事情によりある被施療部のマッサージ力を他の被施療部のマッサージ力よりも弱いあるいは強いマッサージ力としたい場合が生じたとしても、被施療部毎にマッサージ力を可変できないことから良好なマッサージ効果を得ようとする点では必ずしも満足できるものではないという問題がある。」(段落0005)
(イ)「このように構成した請求項1記載の発明は、身体支持部に配設されエアー供給装置からのエアーの給排気によって膨縮するエアーバッグに、制御手段によって入力手段から入力されたマッサージ力の強さを指定する指定情報に基づいてエアー設定手段に設定されているマッサージ力情報に基づいてエアー供給装置を制御し、前記それぞれのエアーバッグのマッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいてエアーバッグ毎に可変できることから、良好なマッサージ効果が得られるという作用を有するものである。」(段落0007)
(ウ)「つぎに、指定情報の他の入力の仕方について説明する。
この入力の仕方は、マッサージ機1を動作させながらなす仕方であり、この場合は、まず、使用者は椅子に座り身体の各部位をそれぞれ対応するエアーバッグに当て、ついで入力手段100の前記各部位指定する部位釦のいずれか(例えば「首肩」)を押圧して部位を指定する。ついで「強さ」釦125を所望の強さの発光ダイオード(例えば「強」)を点灯させるように押圧操作して設定する。
これらの操作がされるとマッサージ部位制御部71の制御に前記入力された指定情報(この場合前記「強」)は記憶手段80の指定された部位アドレスの強さ情報エリア(この場合は首・肩部アドレス81の強さ情報エリア81a)に前記入力された指定情報が格納される。
そして、前記操作により部位が指定されるとともに指定情報が入力されると、分配器制御部72の制御により分配器63は前記指定された(この場合は「首・肩部」)部位に対応するエアーバッグ(この場合は首・肩用エアーバッグ43)にエアーを供給できる状態に制御する。また、図示しない主制御部の制御によりエアー生成手段制御部73は記憶手段80に格納された部位アドレスの強さ情報エリアに格納された指定情報によって定まる供給時間を供給時間設定テーブル90から読み出し、(この場合は首・肩部アドレス90の格納エリア91dから1.8秒を読み出す)この供給時間の間エアーを供給し、この供給によってエアーバッグは膨脹し被施療部は押圧されつまりマッサージ力を受ける。
・・・・・・・・
この入力の仕方によれば使用者は、それぞれの被施療部に対応するエアーバッグのマッサージ力をそれぞれの被施療部に合わせたマッサージ力に設定することができることから良好なマッサージ効果が得られるものである。また、マッサージ力の大きさの決定は、各被施療部に対応する部位のエアーバッグを動作つまり膨脹させてその時の実際に被施療部が受けるマッサージ力によってその大きさを決定できることから所望のマッサージ力の決定が容易にできるものである。」(段落0048?0054)
(エ)「つぎに、このように構成したマッサージ機1の動作について説明する。
なお、この場合指定情報は上述したいずれかの入力の仕方によって使用者が所望する値に設定されているものとして説明する。
まず、使用者は座部20に腰掛け背中を背もたれ部30に当てて座り、ついで入力手段100の「全身コース」釦120、「上半身コース」釦121および「下半身コース」釦122のいずれかを操作し所望のコースを設定する。また、設定タイマー釦126により所望の時間を設定し、ついで、「入/切」釦118を操作つまり閉成する。
すると、マッサージ部位制御部71は、主制御部とともに前記設定されたコースによって定められた順序にしたがって各エアーバッグ40ないし46にエアーの給排気をさせるように分配器制御部72を制御し、この分配器制御部72は設定されたコースによって定められた順序にしたがって各エアーバッグ40ないし46にエアーの給排気をさせるように分配器63を制御する。
・・・・・・・・・
そして、各被施療部に対応するエアーバッグのマッサージ力はそれぞれの使用者が所望する大きさに設定されていることから良好なマッサージ効果が得られるものである。また、マッサージ力の大きさはエアーバッグにエアーを供給しない零つまり膨脹させない状態も含むものであることから、被施療部のうちで何らかの事情例えば腰痛等の疾患を有する場合は、腰用エアーバッグ40を動作させないようにし腰部を除く他の部位をマッサージすることができ使い勝手がよく、良好なマッサージ効果が得られるものである。」(段落0055?0064)

上記記載事項(ア)から、発明が解決しようとする課題は、被施療部毎にマッサージ力を可変できるようにすることである。
また記載事項(イ)には、「それぞれのエアーバッグのマッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいてエアーバッグ毎に可変できる」との記載があるが、この記載からは、上記(a)(b)のいずれを意味するものか不明であるから、明細書の他の箇所の記載を参照する必要がある。
そして記載事項(ウ)から、指定情報の他の入力の仕方は、マッサージ機1を動作させながらなす仕方であり、使用者は椅子に座り身体の各部位をそれぞれ対応するエアーバッグに当て、ついで入力手段100の前記各部位を指定する部位釦のいずれか(例えば「首肩」)を押圧して部位を指定し、ついで「強さ」釦125を所望の強さの発光ダイオード(例えば「強」)を点灯させるように押圧操作して設定するものである。
また記載事項(エ)から、マッサージ機1の動作についての説明として、指定情報は上述したいずれかの入力の仕方によって使用者が所望する値に設定されているものとした場合に、まず、使用者は座部20に腰掛け背中を背もたれ部30に当てて座り、ついで入力手段100の「全身コース」釦120、「上半身コース」釦121および「下半身コース」釦122のいずれかを操作し所望のコースを設定し、設定タイマー釦126により所望の時間を設定し、ついで、「入/切」釦118を操作つまり閉成することによりコース運転させることが記載されている。
以上の記載及びその他の記載からみても、マッサージ機1を動作させながら指定情報を入力することを、コース運転中に行うことは記載されていない。
また、記載事項(エ)によれば、他の入力の仕方によって使用者が所望する値に設定されている場合、すなわちマッサージ機1を動作させながら指定情報を入力し、所望の値に設定した場合、その後で、コース運転を始めることが記載されている。そうすると、マッサージ機を動作させながら指定情報を入力するのはコース運転中であるとの解釈では、コース運転を二重に行うこととなり、この記載と整合しない。
また、被請求人は、記載事項(エ)の「この場合指定情報は上述したいずれかの入力の仕方によって使用者が所望する値に設定されているものとして説明する。」との記載から、設定されていない場合もあることを前提としているとし、この設定されていない場合とは、コース運転中にマッサージ力を調整する構成を含むのであり、そうでなければこの記載自体が必要でないと主張している。しかしながら、設定されていない場合とは、使用者が指定情報を入力することなく、いわゆるデフォルト状態のまま使用することが通常想定されるので、上記主張は採用できない。
以上の点から、願書に添付した明細書又は図面には、「コース運転中に指定情報を入力する」ことが記載されているとはいえないので、訂正された請求項1における「マッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいて」「可変できる」とは、上記(b)マッサージ力の変更操作自体をコース運転中に行うのではなく、単にマッサージのコースにおけるマッサージ力が変更できることを指すと解すべきである。
そうすると、訂正事項4により訂正された「・・・マッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいて指定された被施療部に対応するエアーバッグ毎に可変できるようにした・・・」における「マッサージのコースにおいて」が「指定された」及び「可変できる」のどちらにかかるものと解しても、コース運転中に指定情報を入力する態様を含むものではない。そして、単にマッサージのコースにおけるマッサージ力が変更できることは願書に添付した明細書又は図面に記載されていることは明らかであるから、訂正事項4による訂正が、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものでないとの請求人の主張は採用できない。

(ii)その他の訂正要件について検討すると、上記訂正事項1は、請求項1のエアーバッグの配設箇所である「身体支持部」にさらに「の各被施療部に対応する部位」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記訂正事項2は、請求項1の入力手段が設定する「マッサージのコース」に「複数の」及び「のうちいずれかのコースを選択して」との限定を付加し、「設定手段に設定されたマッサージ力情報を指定するための指定情報を入力する」に「マッサージ機を動作させながら」との限定を付加するとともに、「・・・するとともに、・・・する入力手段と」との記載を「・・・する入力手段を備え、前記入力手段は、・・・するものであり」との記載に変更するものであって、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
上記訂正事項3は、請求項1の「前記それぞれのエアーバッグ」が「指定された被施療部に対応するエアーバッグ」であるとして実質的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記訂正事項4は、請求項1のマッサージ力の強さを可変できるようにした点について、「マッサージ機を動作させながら前記指定情報を入力することで、」との限定を付加するとともに、「マッサージのコースにおいて指定された被施療部に対応するエアーバッグ毎に」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記訂正事項5は、訂正事項1?4の訂正に伴い特許請求の範囲と整合しなくなった発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する
そして、いずれの訂正事項も、訂正後の技術事項が願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(iii)したがって、平成22年10月4日付けの訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許法第134条の2第1項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第134条の2第5項の規定によって準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3 請求人の主張
請求人は、本件訂正後の本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、(1)本件特許発明1は、本件出願前に頒布された刊行物である(以下、同様。)甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証乃至甲第10号証、甲第12号証及び甲第14号証乃至甲第18号証に記載された周知技術に基づいて、本件特許発明2は、それらに加えて甲第5号証乃至甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、(2)本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証に記載された発明及び甲第第19号証乃至甲第29号証に記載された周知技術に基づいて、本件特許発明2は、それらに加えて甲第5号証乃至甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1及び2の特許は無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第29号証を提出している。
さらに、請求人は(3)本件訂正は認められず、本件訂正前の本件特許の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に適合しないと主張している。

[証拠方法]
甲第1号証:特開平8-229086号公報
甲第2号証:特開平7-148210号公報
甲第3号証:特開昭61-56649号公報
甲第4号証:実願昭61-39848号(実開昭61-163635号)のマイクロフィルム
甲第5号証:実願昭61-56235号(実開昭62-166843号)のマイクロフィルム
甲第6号証:特開平5-168666号公報
甲第7号証:実願平2-55625号(実開平4-13119号)のマイクロフィルム
甲第8号証:特開平3-55059号公報
甲第9号証:実公平2-15477号公報
甲第10号証:実公平6-27140号公報
甲第11号証:平成16年12月21日付け拒絶理由通知書
甲第12号証:実願平4-40854号(実開平6-439号)のCD-ROM
甲第13号証:平成17年2月21日付け意見書
甲第14号証:特開平6-335503号公報
甲第15号証:特開平7-184749号公報
甲第16号証:特開平9-38166号公報
甲第17号証:特開平9-154905号公報
甲第18号証:特開平9-192185号公報
甲第19号証:特開平7-171184号公報
甲第20号証:特開平7-250874号公報
甲第21号証:特開平8-150188号公報
甲第22号証:特開平9-253156号公報
甲第23号証:松下電工 エアーマッサージ機のカタログ
甲第24?28号証:フジ医療器 カタログ
甲第29号証:フジ医療器 生産終了商品の発売日一覧

4 被請求人の主張
一方、被請求人は、本件特許発明1及び2は、本件出願前に頒布された刊行物に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当せず、また本件訂正は認められるべきものであり、本件特許の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に適合するから、本件特許発明1及び2の特許は無効とされるべきでない旨主張している。

5 本件特許発明
本件特許発明1及び2は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
身体支持部と、
この身体支持部の各被施療部に対応する部位に配設されるとともにエアーの給排気によって膨縮する複数のエアーバッグと、
これらエアーバッグにエアーを給排気するエアー供給装置と、
前記エアーバッグのそれぞれによって生じるマッサージ力を定めるマッサージ力情報を設定する設定手段と、
定められた順序にしたがって各エアーバッグにエアーを給排気させる複数のマッサージのコースのうちいずれかのコースを選択して設定する入力手段とを備え、
前記入力手段は、マッサージ機を動作させながら前記設定手段に設定されたマッサージ力情報を指定するための指定情報を入力するものであり、 この入力手段から入力された指定情報を記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された指定情報に基づいて、指定された被施療部に対応するエアーバッグが前記設定手段に設定されたマッサージ力となるように前記エアー供給装置を制御する制御手段とを備え、
マッサージ機を動作させながら前記指定情報を入力することで、前記コースにより定められた順序にしたがってエアーが給排気される前記それぞれのエアーバッグのマッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいて指定された被施療部に対応するエアーバッグ毎に可変できるようにしたことを特徴とするエアーマッサージ機。
【請求項2】
請求項1記載の発明において、マッサージ力情報は、エアーバッグにエアーを供給させない情報を含むことを特徴とするエアーマッサージ機。」

6 甲各号証の記載内容
請求人が本件特許発明1に対する無効理由の根拠とする甲各号証のうち、甲第1号証乃至甲第4号証及び甲第6号証には、図面と共にそれぞれ次の事項が記載されている。

(甲第1号証)
(ア)「【産業上の利用分野】この発明は水圧マッサージ用ベッド、更に詳しくは液体を満たした液体容器の上部に治療者が横たわることができるマットを設け、このマット上に横たわった治療者にマットを介して高圧の液体を当てて行うマッサージに用いるための水圧マッサージ用ベッドに関するものである。」(段落0001)
(イ)「【発明が解決しようとする課題】そこで本発明のうち請求項1記載の発明は、液体を満たした液体容器の上部に治療者が横たわることができるマットを設けると共に、液体容器中にマットに向かって液体を吹き出す液体噴出ノズルを設けることによって、マット上に横になってリラックスした状態で治療が行えるようにした水圧マッサージ用ベッドを提供することを目的としたものである。」(段落0004)
(ウ)「図面に示したように、この実施例にかかわる水圧マッサージ用ベッドは、液体容器として上面が開口した浴槽状のベッド本体10を設け、このベッド本体10の上面にマット20を設けたものである。またここで、マット20は、水密性を備えた布状のものとして形成され、ベッド本体10の上端縁に水密的に固定されているものである。更に、ベッド本体10中にある液体としては、水30を用いた場合を示してある。
そして、ベッド本体10の内部には、底面11上に位置させた載置台12の上に、噴出ノズル13を備えた噴出用配管14が複数本位置させてある。この噴出ノズル13は、マット20の上に横たわって治療者40の足から頭部に至るまで横方向に8列設けられ、各列には各々横方向に2個づつの噴出ノズル13が設けられている。更にこのベッド本体10の底面11からは、吸引用配管15が突出させてある。そして、前記噴出用配管14及び吸引用配管15は、ポンプ51を備えた制御部50に連結され、ポンプ51によって吸引用配管15から吸引した水30を噴出用配管14に圧送させるようになっている。またこの制御部50では、ポンプ51によって圧送させる水30の温度制御も可能なようになっている。更に、図示例では噴出用配管14が3本設けてあり、各々の噴出用配管14ごとに噴出の制御が行えるようになっている。」(段落0011?0012)
(エ)「また、液体噴出ノズル13を複数設け、液体噴出ノズル13によって噴出の調整を可能に形成することによって、マッサージの強さ及び広さを調整可能にできる。そして、例えば治療者40の足首、ふくらはぎ、ひざのように、順次マッサージしていくこともできる。更にここで、各噴出ノズル13を各々独立させて制御可能に形成すると、局部的なマッサージが可能となる。また各噴出ノズル13を各々独立させて、噴出圧力あるいは噴出範囲の制御を可能とすると、更にマッサージ効果が増大する。」(段落0015)

上記記載事項からみて、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「液体を満たした液体容器の上部に治療者が横たわることができるマットを設け、
液体容器中にマットに向かって液体を吹き出す液体噴出ノズルを複数設け、
前記液体噴出ノズルを備える噴出用配管に水を圧送するポンプと、
前記液体噴出ノズルによって噴出の調整を可能に形成することによって、マッサージの強さ及び広さを調整可能にでき、あるいは各噴出ノズルを各独立させて、噴出圧力あるいは噴出範囲の制御を可能とし、
足首、ふくらはぎ、ひざのように、順次マッサージしていくこともでき、
前記ポンプを備えた制御部を設けた、
水圧マッサージ用ベッド。」

(甲第2号証)
(オ)「【従来の技術】
従来からエアーマッサージ装置として、椅子の背もたれやマット等に複数の空気袋を配置し、給排気装置によって、この空気袋に空気を供給して空気袋を膨張させたり、空気袋の排気を行なって空気袋を収縮させることによってマッサージを行うものが知られている。
これは、各空気袋に対する給排気を一定の時間間隔で順次行うことで、各空気袋を順次膨張・収縮させて、これを繰り返し、マッサージを行うものである。
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなエアーマッサージ装置にあっては、各空気袋に対する給気時間が一定であるため、空気袋の膨張・収縮時間、即ち、マッサージの速さが調整できないと共に、空気袋への給気量、即ち、マッサージの強さが調整できないという問題があった。
そこで、この発明は、マッサージの速さや強さを調整することができるエアーマッサージ装置を提供することを課題とする。」(段落0001?0005)
(カ)「図1において、符号1は、椅子本体であり、その背もたれ4は表生地(図示せず)に覆われ、その表生地の内側に短冊状の空気袋2a?2fが上下一列に配置されている。空気袋2a?2fには、ホース3a?3fの一端部がそれぞれ接続され、そのホース3a?3fの他端部は、椅子本体1の座部7の下部に設置された給排気装置5に接続されている。
この給排気装置5は、各空気袋2a?2fに対してそれぞれ別個に給排気を行い、これにより、各空気袋2a?2fが膨張・収縮し、背もたれ4に凹凸面が形成されることによって、マッサージを行うものである。
また、給排気装置5は、図2のブロック図に示すように、ロータリーバルブ13を内蔵しており、このロータリーバルブ13は、ステッピングモータ9によって回転する回転体(図示せず)を有し、この回転体の回転により空気袋2a?2fのうちの1つの空気袋をフィルタータンク12に連通させると共に、他の空気袋を外気に連通させるものである。例えば、空気袋2aがフィルタータンク12に連通されると、空気袋2aに圧縮空気が供給されて空気袋2aが膨張してゆき、他の空気袋2b?2fは外気と連通されて排気状態となり、膨張された空気袋が収縮していくこととなる。
そして、回転体がさらに回転すると空気袋2bがフィルタータンク12と連通し、空気袋2a,2c?2fが外気と連通される。即ち、ロータリーバルブ13は回転体の回転によってフィルタータンク12と連通する空気袋2a?2fを順次切り換えてゆくものである。」(段落0010?0013)
(キ)「図2中、符号11は圧縮空気を生成するエアコンプレッサー、符号12は生成された圧縮空気を浄化して貯えるフィルタータンクであり、これらエアコンプレッサー11,フィルタータンク12等は給排気装置5に内蔵されている。符号8はコントローラ6の操作に基づいてステッピングモータ9、および、エアコンプレッサー11を制御する制御回路(制御手段)である。」(段落0015)
(ク)「次に、上記のように構成されるエアーマッサージ装置の動作について説明する。
まず、コントローラ6に設けた電源スイッチ6aを入れる。すると、制御回路8はエアコンプレッサー11を作動させて圧縮空気をフィルタータンク12に蓄えてゆく。そして、制御回路8は、コントローラ6の強さ調整ツマミ6b、および、速さ調整ツマミ6cに従ってステッピングモータ9を制御する。なお、エアコンプレッサー11は、給気中の空気袋2a?2fが予め設定された最大値Vmまで膨張したときには、停止するように制御されている。
以下、空気袋2aがフィルタータンク12と連通している状態に基づいて説明する。
制御回路8は、強さ調整ツマミ6bが「強」に設定されている場合には、図5に示すように、空気袋2aが最大値Vmに膨張するまでエアコンプレッサー11を作動させ、最大値Vmに達した時点で作動を停止する。そして、ステッピングモータ9を作動し、全ての空気袋2a?2fが外気と連通した状態にし、空気袋2aの排気を行う。
また、強さ調整ツマミ6bが「弱」側に設定されている場合には、図6に示すように、空気袋2aをツマミ6bの設定に応じて膨張させた後、最大値Vmに至る前にステッピングモータ9を作動し、全ての空気袋2a?2fを外気と連通した状態にし、空気袋2aの排気を行う。
そして、所定時間経過後に、再びステッピングモータ9を作動し、空気袋2bをフィルタータンク12と連通させ、空気袋2bを膨張させる。このとき、エアコンプレッサー11が停止している場合には、エアコンプレッサー11を作動させる。」(段落0017?0022)

上記記載事項からみて、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「椅子本体の背もたれに複数の空気袋が上下一列に配置され、給排気装置が各空気袋に別個に給排気を行って膨張・収縮させるものであって、給排気装置が内蔵するロータリーバルブによって空気袋を順次切り換えて膨張・収縮させ、制御回路はコントローラの強さ調整ツマミおよび速さ調整ツマミに従ってステッピングモータを介してロータリーバルブを制御し、空気袋に対する給気時間を変えることで、マッサージの速さや強さを調整することができるエアーマッサージ装置。」

(甲第3号証)
(ケ)「(1)施療子を上下方向、左右幅方向に自在に移動させる施療子駆動手段と、・・・とを備えたマッサージ機において、首、肩、肩甲間、背、腰等の複数の被施療部位毎に施療時間や施療回数等の施療量を可変とする選択設定手段を備えて該選択設定手段の施療量設定状態に応じて各施療部位に施療子を移動させることを特徴とするマッサージ機。」(特許請求の範囲第1項)
(コ)「第1図は実施例1の構成を示しており、施療子1は周知の偏心傾斜をもつ揉み輪からなり、施療子駆動回路2により左右幅方向、上下方向および突出量、回数が制御されるようになっている。」(2頁左上欄13行?16行)
(サ)「記憶回路9は施療コース生成回路7により生成された施療コースを格納する施療コーステーブル9a及び現在施療コース中のどの施療を実行しているかを示すテーブルポインタ9bにより構成される。
制御回路8は記憶回路9に格納される施療コーステーブル9aに基づいて施療子1を制御するために制御すべき情報であるテーブルポインタ9bに指示される施療コーステーブル9a内容と各検出回路3,4,5からの入力とを比較する比較判別部3aと、施療回数あるいは時間を数えるカウント回路8bとを備え、操作入力回路6と記憶回路9と施療コース生成回路7とを制御するとともに施療子駆動回路2の動作シーケンスを指示する指示回路10を制御する。」(2頁左下欄5行?19行)

(甲第4号証)
(シ)「第1図は本考案に係る空気マッサージ器の全体構造を示す系統図であり、参照符号10a、10bは複数の空気室12を画成した袋体を示し、この袋体10a、10bの各空気室12には弁機構14a、14bから分岐導出されたパイプ16a、16bが接続される。弁機構14a、14bに対しては、コンプレッサ18で起生した圧縮空気を圧力調整装置20a、20bを介して供給するよう構成される。なお、圧力調整された空気圧は、圧力計21a、21bによって検出される。」(6頁15行?7頁5行)
(ス)「次に、上述したように構成した弁機構14を使用して、袋体10a、10bの各空気室12を給排気操作する場合の動作について説明する。
まず、第2図および第3図に示す弁機構を使用する場合には、第4図および第5図に示すように、2つの回転体26、26’を矢印の方向に回転することにより、袋体10a、10bの各空気室とパイプ16a、16bを介して連通する給排気口22a?22cおよび22’a?22’cが回転体26、26’の給気通孔部28、28’と排気通孔部30、30’とに順次連通し、第7図a?fに示す給排気動作が達成される。
[考案の効果]
前述した実施例から明らかなように、本考案によれば、前記構成からなる弁機構を同一空気供給源に並列に接続して2組の気密袋体に対して給排気操作を行うことにより、一方の袋体に対して給気を行っているときは、他方の袋体に対しては排気となるように給排気操作が交互に順序よく達成される。このため、供給空気圧を圧力調整装置20a、20bで調整することにより、マッサージ圧の異なる身体部分へのマッサージや容量の異なる2組の気密袋体の使用等が可能となり、1台の装置で2台分のマッサージ器の役割を果すことができる。」(9頁2行?10頁6行)

(甲第6号証)
(セ)「移動自在な施療子を備えて施療子の移動によって施療部位を可変としているマッサージ機用の操作器であって、人体形状を模した表示部にマトリックス状に配したスイッチ群を施療子の移動範囲入力用として備えているとともに、入力した移動範囲を表示する表示手段を上記表示部に備えていることを特徴とするマッサージ機の操作器。」(特許請求の範囲、請求項1)
(ソ)「さて、「お好み」のスイッチSW7 を押すと、「設定」スイッチSW3 が点滅を開始し、また以前に使用した時のデータが記憶回路6に残っている場合は「前回」のスイッチSW5 も点滅を開始する。「前回」のスイッチSW5 を押した場合には、記憶回路6のデータ通りにマトリックススイッチ群SWA1 ?SWI10のうちの動作範囲内を示すものが点灯し、「開始」スイッチSW1 と「中止」スイッチSW2 とが点滅する。ここで「開始」スイッチSW1 を押せば、施療子による施療動作が開始される。「中止」スイッチSW2 を押したならば、マトリックススイッチ群SWA1 ?SWI10が消灯し、「設定」スイッチSW3 が点滅する。」(段落0012)

7 当審の判断
[理由1について]
(1)本件特許発明1について
(i)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「マット」は治療者が横たわることができるものであるから前者の「身体支持部」に相当する。
また、後者の「液体噴出ノズル」はマットに向かって液体を吹き出すものであって複数設けられ、足首、ふくらはぎ、ひざのように順次マッサージしていくことができるから、前者の「エアーバッグ」とは、「身体支持部の各被施療部に対応する部位に配設される複数の流体によるマッサージ駆動部」である点で共通している。
また、後者の「ポンプ」は前者の「エアー供給装置」と「マッサージ駆動部に流体を供給する駆動源」である点で共通している。
また、後者も各噴出ノズルを各々独立させて、噴出圧力あるいは噴出範囲の制御を可能とするような制御部を設けている以上、「マッサージ駆動部(液体噴出ノズル)のそれぞれによって生じるマッサージ力(噴出圧力)を定めるマッサージ力情報を設定する設定手段」や、「各被施療部に対応するマッサージ駆動部(液体噴出ノズル)が設定手段に設定されたマッサージ力(噴出圧力)となるように前記駆動源(ポンプ)を制御する制御手段」を備えることは自明のことであり、記載されたに等しい事項といえる。
また、後者の「水圧マッサージ用ベッド」は前者の「エアーマッサージ機」と「流体圧マッサージ機」である点で共通している。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、本件特許発明1の用語及び表現ぶりを用いて記載すると次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「身体支持部と、
この身体支持部の各被施療部に対応する部位に配設される複数の流体によるマッサージ駆動部と、
これらマッサージ駆動部に流体を供給する駆動源と、
前記マッサージ駆動部のそれぞれによって生じるマッサージ力を定めるマッサージ力情報を設定する設定手段を備え、
各被施療部に対応するマッサージ駆動部が設定されたマッサージ力となるように前記駆動源を制御する制御手段とを備えた、
流体圧マッサージ機。」
(相違点1)
「流体によるマッサージ駆動部」が、本件特許発明1においては、「エアーの給排気によって膨縮するエアーバッグ」であるのに対し、甲1発明においては、「マットに向かって液体を吹き出す液体噴出ノズル」であり、それに伴い、「マッサージ駆動部に流体を供給する駆動源」が、本件特許発明1においては、「エアーバッグにエアーを給排気するエアー供給装置」であるのに対し、甲1発明においては、「液体噴出ノズルを備える噴出用配管に水を圧送するポンプ」である点。
(相違点2)
本件特許発明1においては「定められた順序にしたがって各マッサージ駆動部(エアーバッグ)に流体を供給する(エアーを給排気させる)複数のマッサージのコースのうちいずれかのコースを選択して設定する入力手段を備え、前記入力手段はマッサージ機を動作させながら前記設定手段に設定されたマッサージ力情報を指定するための指定情報を入力するものであり、この入力手段から入力された指定情報を記憶する記憶手段を備えた」ものであって、「この記憶手段に記憶された指定情報に基づいて」駆動源(エアー供給装置)を制御するのに対し、甲1発明においてはそのような特定がない点。
(相違点3)
本件特許発明1においては「マッサージ機を動作させながら前記指定情報を入力することで、前記コースにより定められた順序にしたがって流体が供給される(エアーが給排気される)前記それぞれのマッサージ駆動部(エアーバッグ)のマッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいて指定された被施療部に対応するマッサージ駆動部(エアーバッグ)毎に可変できるようにした」のに対し、甲1発明においてはそのような特定がない点。
(相違点4)
「流体圧マッサージ機」が、本件特許発明1においては「エアーマッサージ機」であるのに対し、甲1発明においては「水圧マッサージ用ベッド」である点。

(ii)判断
(相違点1について)
流体として圧縮性のエアーを用いるエアーバッグ形式の本件特許発明1では、給排気されるエアーバッグの膨縮により生じる圧力、すなわち静的でありかつ比較的柔軟な圧力が身体に作用するのに対し、流体として非圧縮性の液体を用いる液体噴出ノズル形式の甲1発明は、噴出ノズルから噴出された液体の、マットを介した噴射圧、すなわち動的でありかつ比較的強靱な圧力が直接身体に作用するものであって、その圧力作用形態が異なっている。
そして、甲1発明は、上記記載事項(ア)、(イ)からみて「マット上に横たわった治療者にマットを介して高圧の液体を当てて行うマッサージに用いるための水圧マッサージ用ベッドに関するもの」であり、「液体を満たした液体容器の上部に治療者が横たわることができるマットを設けると共に、液体容器中にマットに向かって液体を吹き出す液体噴出ノズルを設けることによって、マット上に横になってリラックスした状態で治療が行えるようにした水圧マッサージ用ベッドを提供することを目的とした」ものである。そうすると、「流体によるマッサージ駆動部」としては、「マットに向かって液体を吹き出す液体噴出ノズル」であり、それに伴って「マッサージ駆動部に流体を供給する駆動源」は「液体噴出ノズルを備える噴出用配管に水を圧送するポンプ」であることが前提となるものであって、それらを圧力作用形態の異なる「エアーの給排気によって膨縮するエアーバッグ」や「エアーバッグにエアーを給排気するエアー供給装置」に置き換えることはそもそも甲1発明の目的に沿わないこととなる。
したがって、マッサージ機の分野において液体噴出ノズルを用いるものが甲第8、9、10号証から、エアーバッグを用いるものが甲第2、4、5号証からそれぞれ周知であったとしても、液体噴出ノズルを用いる形式の甲1発明をエアーバッグを用いる形式に変更することは想到し得ないことであって、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項のように構成することは当業者が容易になし得たこととはいえない。
(相違点2、3について)
請求人はマッサージ機において複数のコースの中からいずれか1つのコースを選択して設定する手段を有する技術事項が、本件出願前の周知技術(1)であるとして甲第12号証及び甲第14号証乃至甲第18号証を提示するとともに、マッサージ機においてマッサージ機を動作させながらマッサージ力の強さを入力設定することが、本件出願前の周知技術(2)であるとして甲第7号証および甲第19号証乃至甲第29号証を提示している。
そこで、この後者について検討すると、
甲第7号証には、施療子である刺激体を用いて押圧治療を施す治療装置において、押圧治療中に押圧強さを入力設定する点が記載されている。
甲第19号証には、複数の袋体を用いた加圧式マッサージャーにおいて、マッサージ動作中に複数の袋体全体としてマッサージ力の強さを入力設定する点が記載されている。
甲第20号証には、身体に接する部分は一体のエアバッグとなっている血行促進装置において、マッサージ動作中にマッサージ力の強さを入力設定する点が記載されている。
甲第21号証には、叩き玉を有する足裏のマッサージ器において、マッサージ動作中にマッサージ力の強さを入力設定する点が記載されている。
甲第22号証には、叩き部を有するバイブレータにおいて、マッサージ動作中にマッサージ力の強さを入力設定する点が記載されている。
甲第23号証乃至甲第28号証には、エアーマッサージ機において、強さ調節つまみ又はボタンがあることが記載されているが、マッサージ動作中にマッサージ力の強さを入力設定するものかどうかは明らかでない。
以上の証拠のうち、甲第7、21、22号証のものは流体によるマッサージ駆動部を用いたものでなく、甲第19、20号証のものは複数の袋体またはエアバッグのマッサージ力の強さを個別に入力設定するものでない。よって、請求人の主張するように甲第7号証および甲第19号証乃至甲第22号証から、「マッサージ機においてマッサージ機を動作させながらマッサージ力の強さを入力設定すること」は周知技術であるといえても、マッサージ機を動作させながら複数の流体によるマッサージ駆動部のマッサージ力の強さを個別に入力設定することまでは周知技術とはいえない。
そうすると、甲1発明において入力手段や記憶手段自体を追加することは適宜なし得るとし、周知技術(1)及び周知技術(2)を適用することが仮に容易に想到し得るとしても、「前記コースにより定められた順序にしたがって流体が供給される(エアーが給排気される)前記それぞれのマッサージ駆動部(エアーバッグ)のマッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいて指定された被施療部に対応するマッサージ駆動部(エアーバッグ)毎に可変できるようにした」点及び入力手段はそのような作用を生じさせる指定情報を入力することができる入力手段である点にまで想到しうるとはいえない。
したがって、甲1発明及び周知技術に基づいて相違点2、3に係る本件特許発明1の発明特定事項のように構成することは当業者が容易になし得たこととはいえない。

以上の点から見て、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証乃至甲第10号証、甲第12号証及び甲第14号証乃至甲第18号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、他の甲各号証に記載された周知技術を考慮しても、本件特許発明1は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、さらにその他の発明特定事項を付加したものである。本件特許発明1が甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証乃至甲第10号証、甲第12号証及び甲第14号証乃至甲第18号証、その他甲各号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件特許発明1の発明特定事項を全て具備した本件特許発明2も、それらに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[理由2について]
(1)本件特許発明1について
(i)対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、後者の「椅子本体の背もたれ」は前者の「身体支持部」に相当する。
また、後者の「空気袋」及び「給排気装置」は椅子の背もたれに複数の空気袋が上下一列に配置され、給排気装置が各空気袋に別個に給排気を行って膨張・収縮させるものであるから、前者の「この身体支持部の各被施療部に対応する部位に配設されるとともにエアーの給排気によって膨縮する複数のエアーバッグ」及び「これらエアーバッグにエアーを給排気するエアー供給装置」に相当する。
また、後者は「制御回路はコントローラの強さ調整ツマミおよび速さ調整ツマミに従ってステッピングモータを介してロータリーバルブを制御し、空気袋に対する給気時間を変えることで、マッサージの速さや強さを調整することができる」ものである以上、「エアーバッグによって生じるマッサージ力を定めるマッサージ力情報を設定する設定手段」を備えることは自明であり、記載されているに等しい事項といえる。なお、後者は、「給排気装置が各空気袋に別個に給排気を行って膨張・収縮させるもの」であって、「空気袋を順次切り換えて膨張・収縮させ」るものであるが、図4その他の記載からみて、コントローラの強さ調整ツマミは各空気袋のそれぞれのマッサージ力を(独立に)定めるものとは記載されていない。そして後者の「強さ調整ツマミ」は前者の「入力手段」に相当するとともに、「前記設定手段に設定されたマッサージ力情報を指定するための指定情報を入力するもの」といえる。さらに、後者の「制御回路」は「エアーバッグが前記設定手段に設定されたマッサージ力となるように前記エアー供給装置を制御する制御手段」といえる。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明とは、本件特許発明1の用語及び表現ぶりを用いて記載すると次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「身体支持部と、
この身体支持部の各被施療部に対応する部位に配設されるとともにエアーの給排気によって膨縮する複数のエアーバッグと、
これらエアーバッグにエアーを給排気するエアー供給装置と、
前記エアーバッグによって生じるマッサージ力を定めるマッサージ力情報を設定する設定手段と、
入力手段とを備え、
前記入力手段は、前記設定手段に設定されたマッサージ力情報を指定するための指定情報を入力するものであり、
エアーバッグが前記設定手段に設定されたマッサージ力となるように前記エアー供給装置を制御する制御手段を備えた、
エアーマッサージ機。」
(相違点1)
本件特許発明1においては設定手段がエアーバッグ「のそれぞれ」によって生じるマッサージ力を定めるが、甲2発明においては、「のそれぞれ」との特定がない点。
(相違点2)
入力手段が、本件特許発明1においては「定められた順序にしたがって各エアーバッグにエアーを給排気させる複数のマッサージのコースのうちいずれかのコースを選択して設定する」ものであるのに対し、甲2発明においてはそのようなものでない点。
(相違点3)
入力手段に指定情報を入力するに際し、本件特許発明1においては「マッサージ機を動作させながら」入力するのに対し、甲2発明においては「マッサージ機を動作させながら」との特定がない点。
(相違点4)
本件特許発明1においては「この入力手段から入力された指定情報を記憶する記憶手段」を有し、制御手段が「この記憶手段に記憶された指定情報に基づいて、指定された被施療部に対応する」エアーバッグが前記設定手段に設定されたマッサージ力となるように前記エアー供給装置を制御するものであるのに対し、甲2発明においてはそのような「記憶手段」を有さず、制御手段の制御についても「この記憶手段に記憶された指定情報に基づいて、指定された被施療部に対応する」との特定がない点。
(相違点5)
本件特許発明1においては「マッサージ機を動作させながら前記指定情報を入力することで、前記コースにより定められた順序にしたがってエアーが給排気される前記それぞれのエアーバッグのマッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいて指定された被施療部に対応するエアーバッグ毎に可変できるようにした」のに対し、甲2発明においてはそのような特定がない点。

(ii)判断
相違点1について、甲第1号証には、複数の液体噴出ノズルを各独立させて、噴出圧力あるいは噴出範囲の制御を可能とする点が記載され、甲第3号証には、施療子を上下方向、左右幅方向に自在に移動させるマッサージ機において、首、肩、肩甲間、背、腰等の複数の被施療部位毎に施療時間や施療回数等の施療量を可変とする点が記載されている。しかしながら甲第1号証のものは噴出ノズルから噴出された液体のマットを介した噴出圧力を直接身体に作用させるもので、エアーバッグによるマッサージとは圧力作用形態の異なるものである。また、甲第3号証のものは一つの機械的な施療子を各部位に移動させながらマッサージを行うものであるし、マッサージ力を可変とするものでもないから、甲第3号証に記載された技術事項を甲2発明に適用しても複数のエアーバッグのそれぞれのマッサージ力を制御することに想到し得ない。なお甲第4号証には、2組の系統の気密袋体に対する供給空気圧を圧力調整装置で調整する点が記載されている。
相違点2について、甲第12号証及び甲第14乃至18号証、特に甲第12、14、15、17号証からみて、マッサージ機において、定められた順序にしたがって各エアーバッグにエアーを給排気させる複数のマッサージのコースのうちいずれかのコースを選択して設定するとの技術事項は本件出願前の周知技術であると認められる。
相違点3について、上記[理由1について](1)(ii)で検討したとおり、請求人の主張するように甲第7号証および甲第19号証乃至甲第22号証から、「マッサージ機においてマッサージ機を動作させながらマッサージ力の強さを入力設定すること」は本件出願前の周知技術であると認められる。
相違点4について、甲第3号証の記載事項(サ)及び甲第6号証の記載事項(ソ)からみて、施療子を被施療部に移動させてマッサージを行う機械的なマッサージ機において、入力された情報を記憶する記憶手段を有し、記憶手段の情報に基づいて、所望の被施療部に対応する施療子の施療内容を制御する点が記載されている。
相違点5について、記載事項(エ)からみて甲第1号証には、定められた順序にしたがって動作する複数のマッサージ駆動部のマッサージ力の強さを被施療部位に対応するマッサージ駆動部毎に可変とする点が記載され、記載事項(シ)、(ス)からみて甲第4号証には、定められた順序にしたがって動作する2組の袋体への供給空気圧を調整する点が記載されている。
しかしながら、このように多数の相違点に係る発明特定事項を欠いている甲2発明にこれら全ての公知技術及び周知技術を適用する動機付けとなるような記載はいずれの刊行物にもない。また、各相違点を充足するためには、相違点1については甲第1号証に記載された技術事項を作用形態の異なるエアーバッグ形式に転用し、あるいは甲第4号証に記載された2系統の調整をエアーバッグのそれぞれに対する調整とし、相違点4については甲第3号証又は甲第6号証に記載される移動する施療子を用いる機械的なマッサージ機の記憶手段や制御内容を具体的な構造及び作用形態の異なるエアーバッグ形式のマッサージ機の制御に適したように変更し、相違点5についても相違点1と同様に、甲第1号証に記載された技術事項を作用形態の異なるエアーバッグ形式に転用し、あるいは甲第4号証に記載された2系統の調整をエアーバッグのそれぞれに対する調整として構成するというように具体的な適用に際して変更を施す必要があるものであって、本件特許発明1が甲2発明、各公知技術及び各周知技術の単なる寄せ集めともいえない。よって、甲2発明に全ての公知技術及び周知技術を適用し、かつ総合して本件特許発明1に想到することは、当業者といえども容易になし得たこととは言えない。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、さらにその他の発明特定事項を付加したものである。本件特許発明1が甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第6号証に記載された発明並びに甲第19号証乃至甲第29号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件特許発明1の発明特定事項を全て具備した本件特許発明2も、それらに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[理由3について]
本件訂正は認められず、本件訂正前の本件特許の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に適合しないとの請求人の主張については、上記のとおり本件訂正が認められたことにより、主張の前提を欠くものとなり、採用できない。

8 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件特許発明1及び2の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
エアーマッサージ機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体支持部と、
この身体支持部の各被施療部に対応する部位に配設されるとともにエアーの給排気によって膨縮する複数のエアーバッグと、
これらエアーバッグにエアーを給排気するエアー供給装置と、
前記エアーバッグのそれぞれによって生じるマッサージ力を定めるマッサージ力情報を設定する設定手段と、
定められた順序にしたがって各エアーバッグにエアーを給排気させる複数のマッサージのコースのうちいずれかのコースを選択して設定する入力手段とを備え、
前記入力手段は、マッサージ機を動作させながら前記設定手段に設定されたマッサージ力情報を指定するための指定情報を入力するものであり、
この入力手段から入力された指定情報を記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された指定情報に基づいて、指定された被施療部に対応するエアーバッグが前記設定手段に設定されたマッサージ力となるように前記エアー供給装置を制御する制御手段とを備え、
マッサージ機を動作させながら前記指定情報を入力することで、前記コースにより定められた順序にしたがってエアーが給排気される前記それぞれのエアーバッグのマッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいて指定された被施療部に対応するエアーバッグ毎に可変できるようにしたことを特徴とするエアーマッサージ機。
【請求項2】
請求項1記載の発明において、マッサージ力情報は、エアーバッグにエアーを供給させない情報を含むことを特徴とするエアーマッサージ機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エアーの給排気によりエアーバッグを膨縮させて被施療部のマッサージをするエアーマッサージ機に関する。
【0002】
【従来の技術】
エアーの給排気によってエアーバッグを膨縮させて被施療部のマッサージをするエアーマッサージ機としては椅子式エアーマッサージ機、マット式エアーマッサージ機等として広く使用されている。
【0003】
これら、エアーマッサージ機は、首・肩部をマッサージする首・肩部用エアーバッグ、背中部をマッサージする背中用エアーバッグ、背筋部をマッサージする背筋用エアーバッグ、腰部をマッサージする腰部用エアーバッグ、尻部をマッサージする尻部用エアーバッグ、腿部をマッサージする腿用エアーバッグ、脚部(ふくらはぎ部)マッサージする脚用エアーバッグ等を備え、これら各エアーバッグを各種マッサージモードに応じて所定の順序で膨縮させて被施療部である首・肩部、背中部、背筋部、腰部等を押圧・弛緩してマッサージをするようになっているものである。
【0004】
また、前記エアーバッグを膨脹させて被施療部に加える押圧力すなわちマッサージ力の強さは、例えばリモートコントロール装置(以下リモコン装置という)からなる入力手段によって、所望(強・中・弱等)の強さを設定することにより可変できるようになっている。しかし、このマッサージ力の強さを所望の強さに設定すると各エアーバッグはすべて前記設定された強さとなるように構成されているため、なんらかの事情によりある被施療部のマッサージ力を他の被施療部のマッサージ力よりも弱いあるいは強いマッサージ力としたい場合があったとしても、被施療部に対応するエアーバッグ毎にマッサージ力を可変できないものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のエアーマッサージ機においては、マッサージ力の強さをある強さに設定すると各エアーバッグはすべて前記設定された強さとなるようになっているため、なんらかの事情によりある被施療部のマッサージ力を他の被施療部のマッサージ力よりも弱いあるいは強いマッサージ力としたい場合が生じたとしても、被施療部毎にマッサージ力を可変できないことから良好なマッサージ効果を得ようとする点では必ずしも満足できるものではないという間題がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、請求項1記載の発明は、身体支持部と、この身体支持部の各被施療部に対応する部位に配設されるとともにエアーの給排気によって膨縮する複数のエアーバッグと、これらエアーバッグにエアーを給排気するエアー供給装置と、前記エアーバッグのそれぞれによって生じるマッサージ力を定めるマッサージ力情報を設定する設定手段と、定められた順序にしたがって各エアーバッグにエアーを給排気させる複数のマッサージのコースのうちいずれかのコースを選択して設定する入力手段とを備え、前記入力手段は、マッサージ機を動作させながら前記設定手段に設定されたマッサージ力情報を指定するための指定情報を入力するものであり、この入力手段から入力された指定情報を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された指定情報に基づいて、指定された被施療部に対応するエアーバッグが前記設定手段に設定されたマッサージ力となるように前記エアー供給装置を制御する制御手段とを備え、マッサージ機を動作させながら前記指定情報を入力することで、前記コースにより定められた順序にしたがってエアーが給排気される前記それぞれのエアーバッグのマッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいて指定された被施療部に対応するエアーバッグ毎に可変できるようにしたエアーマッサージ機としたものである。
【0007】
このように構成した請求項1記載の発明は、身体支持部に配設されエアー供給装置からのエアーの給排気によって膨縮するエアーバッグに、制御手段によって入力手段から入力されたマッサージ力の強さを指定する指定情報に基づいてエアー設定手段に設定されているマッサージ力情報に基づいてエアー供給装置を制御し、前記それぞれのエアーバッグのマッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいてエアーバッグ毎に可変できることから、良好なマッサージ効果が得られるという作用を有するものである。
【0016】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明におけるマッサージ力情報は、エアーバッグにエアーを供給させない情報を含むエアーマッサージ機としたものである。
【0017】
この請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の作用に加えて、マッサージを望まない被施療部に対応するエアーバッグの膨脹させないようにすることができることから、全体として良好なマッサージ効果が得られるという作用を有するものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明を椅子式エアーマッサージ機に適用した場合の実施の形態を図1ないし図3に基づいて説明する。
【0021】
図1に示すようにエアーマッサージ機としての椅子式エアーマッサージ機(以下単にマッサージ機という)1は、本体枠10、この本体枠10に設けられた身体支持部としての座部20および背もたれ部30を有する椅子本体2、この椅子本体2に取り付けられた後述するエアー供給装置60(図1では不図示)、身体支持部としての脚載置台50、前記座部20、背もたれ部30および脚載置台50に配設される腰用エアーバッグ40ないし脚用エアーバッグ46等から構成されている。
【0022】
そして、前記本体枠10は略U字状に形成されるとともに円弧部を後部とした支持台11、この支持台11の両側に互いに対向するとともに後方に向けてやや傾斜させて設けた一対の支持枠12、これらの支持枠12の間に設けられた図示しない背もたれ枠、前記支持枠12の上部に設けられて円弧状に形成された一対の肘掛け部13、これら肘掛け部13の間に位置して前記支持枠12に設けられた座部台14等から構成されている。
【0023】
また、前記座部台14の上面部には図示しないクッション部材、このクッション部材を覆うカバー21からなる前記座部20が配設されており、この座部20の内部には、腿部および尻部をそれぞれマッサージする前記腿用エアーバッグ44および尻用エアーバッグ45が配設されている。また、前記背もたれ部30は前記図示しない背もたれ枠、この背もたれ枠に配設された同じく図示しないクッション部材、背もたれ枠およびクッション部材を覆うカバー31から構成されており、この背もたれ部30の前面つまり使用時の使用者の背中と対向する面には、図1に示すように前記一対の腰部をマッサージする腰用エアーバッグ40、背筋部をマッサージする背筋用エアーバッグ41、上部背中部をマッサージする一対の背中用エアーバッグ42および首・肩部をマッサージする一対の首・肩部用エアーバッグ43が配設され、これら腰用エアーバッグ40ないし首・肩部用エアーバッグ43は前記カバー31で覆われている。
【0024】
また、前記椅子枠10には前記座部台14の下方に位置して後に詳述する前記エアー供給装置60(図1では不図示)が配設されている。
【0025】
そして、前記腰用エアーバッグ40ないし尻用エアーバッグ45はそれぞれ、図3に示すようにホース40aないしホース45aによって前記エアー供給装置60の一部を構成する後述する分配器63に接続されている。
【0026】
つぎに、前記椅子本体2つまり本体枠10の座部台14の前部に設けられている前記脚載置台50は、図1に示すように略U字状溝部からなり脚部を載置する一対の載置部51が形成され、この一対の載置部51のU字状溝部のそれぞれの対向壁にはそれぞれ脚用エアーバッグ46が配設され、この脚用エアーバッグ46は図3に示すように分岐ホース46b、エアーホース46aを介して前記エアー供給装置60の一部である前記分配器63に接続されている。
【0027】
つぎに、上記のように構成されたマッサージ機1の制御構成を図3の制御ブロック図に基づいて説明する。
【0028】
図3において、60は前記エアー供給装置であり、このエアー供給装置60は、従来周知のエアーコンプレッサーからなるエアー生成手段61、このエアー生成手段61と供給管62によって接続された従来周知のロータリー弁からなり前記各エアーバッグ40ないし46にエアーを分配する分配器63とから構成されている。そして、この分配器63は前述したようにホース40aないし46a、46bを介して前記エアーバッグ40ないし46に接続され、前記エアーバッグ40ないし46にエアーの給排気をするものである。
【0029】
また、図3において70は制御手段であり、この制御手段70はマッサージ部位制御部71、このマッサージ部位制御部71に接続された分配器制御部72およびエアー生成手段制御部73を含むものである。また、前記制御手段70には図示しない主制御部を備えており、この主制御部によって前記マッサージ部位制御部71、分配器制御部72、エアー生成手段制御部73等は制御されるようになっているものである。
【0030】
そして、前記マッサージ部位制御部71は、前記図示しない主制御部の制御によって、後述する入力手段100からのマッサージのコースが設定された時はこの設定されたコースを実行、つまり、設置されたコースによって定められた順序にしたがって、各部位に対応する各エアーバッグ40ないし46にエアーの給排気をするように分配器制御部72等を制御するものである。
【0031】
また、前記マッサージ部位制御部71は後述する入力手段100からマッサージ部位つまり首・肩部、背中部、背筋部、腰部、尻部、腿部および脚部の部位が指定されるとこの指定信号を分配器制御部72に出力するものである。また、分配器制御部72はマッサージ部位制御部71の制御により、指定された部位に対応するエアーバッグにエアーを供給する状態とするように分配器63を制御するものである。
【0032】
また、エアー生成手段制御部73は、前記主制御部の制御により後述するマッサージ力の強さを定めるマッサージ力情報を設定する設定手段としての供給時間設定テーブル90からのマッサージ力情報としての供給時間に基づいてエアー生成手段61を動作させるように制御するものである。
【0033】
つぎに、前記入力手段100は、供給時間設定テーブル90のマッサージ力情報を指定するための指定情報を入力する機能を有しており、そして、この入力手段100には、記憶手段80が接続されており、この記憶手段80は入力手段100から入力された指定情報を記憶するものである。また、記憶手段80はマッサージ部位制御部71によって制御されるようになっている。
【0034】
また、前記記憶手段80には、マッサージ力情報である供給時間が設定されている供給時間設定テーブル90に接続されており、また、この供給時間設定テーブル90はマッサージ部位制御部71によって制御されるようになっている。
【0035】
つぎに、記憶手段80の構成は、図4に示すように前記各マッサージ部位つまり首・肩部、背中部、背筋部、腰部、尻部、腿部および脚部毎の部位アドレス81ないし87と、これら部位アドレス81ないし87に対応してマッサージ力の強さを指定する指定情報を格納する強さ情報エリア81aないし87aによって構成されている。なお、この実施の形態における指定情報はマッサージ力の強さの最も強い「強」、最も弱い「弱」、最も強い「強」と最も弱い「弱」の中間の強さである「中」およびエアーバッグにエアーを供給しないつまりマッサージ力が無い「零」の4種となっている。また、前記マッサージ力の強さはデジタル値として入力されている。
【0036】
つぎに、前記供給時間設定テーブル90は、図5に示すように首・肩部、背中部、背筋部、腰部、尻部、腿部および脚部毎の部位アドレス91ないし97と、これら部位アドレス91ないし97のそれぞれに対応して、前記「強」、「中」、「弱」および「零」の指定情報に対応して設けられた格納エリア91aないし91d、94aないし94d、97aないし97d等から構成されている(図5では91aないし91d、94aないし94d、97aないし97dのみを付してある)。
【0037】
そして、この実施の形態では前記格納エリアに格納するマッサージ力の強さを定めるマッサージ力情報は前記指定情報の「強」、「中」、「弱」および「零」に対応して「強」、「中」、「弱」および「零」の4種が設定されている。また、これらマッサージ力の強さはそれぞれの部位に対応するエアーバッグ40ないし46の膨脹量によって異なる押圧力によって定めてある。また、この膨脹量はこの実施の形態ではエアーの単位時間当たりの流量を一定としていることからエアーの供給時間によって定まるものであり、さらにまた、前記各エアーバッグ40ないし46の大きさを各部位によって異ならせていることから、各エアーバッグ40ないし46にマッサージ力の「強」、「中」、「弱」および「零」の強さは、各エアーバッグ40ないし46にエアーを供給する供給時間として格納してある。
【0038】
つまり、図5に示すように、首・肩部に対する「零」の場合は格納エリア91aに0秒を、「弱」の場合は格納エリア91bに1.2秒を、「中」の場合は格納エリア91cに1.5秒を、「強」の場合は格納エリア91dに1.8秒を設定し、また、腰部に対する「零」の場合は格納エリア94aに0秒を、「弱」の場合は格納エリア94bに2秒を、「中」の場合は格納エリア94cに2.5秒を、「強」の場合は格納エリア94dに3秒を設定してある。なお、この供給時間はエアーコンプレッサーの能力、エアーバッグの大きさ等が具体的設計において異なるものであることから、エアーコンプレッサーの能力、エアーバッグの大きさ等が定まった時点で実験的に求めて決定されるものである。
【0039】
また、前記首・肩部ないし脚部のそれぞれの格納エリアに設定する時間はそれぞれ異なるもののその押圧力は前記供給時間エアーを供給したときは同じ押圧力となるようになっている。換言すれば各エアーバッグ40ないし46のそれぞれの「強」、「中」、「弱」における押圧力が一定になるように供給時間を実験的に求めてこの値が設定されているもである。
【0040】
つぎに、リモコン装置からなる前記入力手段100を図2に基づいて説明する。
【0041】
この入力手段100は、図に示すように筐体101からコード102が引き出され、このコード102は前記マッサージ部位制御部71および記憶手段80に接続されている。また、筐体101の上面の下方側つまり前記コード102が引き出されている側には、前記各部位を指定する複数の部位釦すなわち首肩釦111、背中釦112、背筋釦113、腰釦114、尻釦115、腿釦116および脚釦117が設けられている。また、前記上面の上部にはマッサージ動作を始動させる「入/切」釦118が設けられている。この「入/切」釦118の下方にはマッサージのコースつまり「全身コース」釦120、「上半身コース」釦121および「下半身コース」釦122が設けられ、これらの釦を操作することによりコースが設定されるようになっている。
【0042】
また、これら各コース釦120ないし122の下方の左側に前記マッサージ力の強さを設定する「強さ」釦125が設けられており、この「強さ」釦125の側部には4個の発光ダイオード125a、125b、125cおよび125dが設けられており、それぞれ発光ダイオード125aは「強」、125bは「中」、125cは「弱」、125dは「オフ」を表示するようになっている。なお、前記「オフ」は前記「零」の指定情報に対応しているものである。
【0043】
そして、「強さ」釦125の押圧をくり返すことに応じて順次発光ダイオード125a、125b、125c、125dの順位に点灯するようになっており、それぞれ点灯した発光ダイオードに対応する指定情報が前記記憶手段80に入力されるようになっている。
【0044】
また、「強さ」釦125の下方にはマッサージ時間を設定する設定タイマー釦126が設けられている。この設定タイマー釦126の側部には2個の発光ダイオード126a、126bが設けられており、設定タイマー釦126を押して発光ダイオード126aを点灯させた時は30分が選択され、発光ダイオード126bを点灯させた時は15分が選択されるようになっている。
【0045】
また、「強さ」釦125の横方には前記コースと脚部と同時にマッサージをすることを設定するための「脚同時」釦127が設けられている。
【0046】
つぎに、入力手段100からマッサージ力の強さを指定する指定情報を記憶手段80に入力つまり格納する仕方について説明する。まず、入力手段100の前記各部位指定する部位釦のいずれか(例えば「首・肩部」)を押圧して首・肩部の部位を指定し、ついで「強さ」釦125を所望の強さの発光ダイオード(例えば「強」)を点灯させるように押圧操作する。これらの操作がされるとマッサージ部位制御部71の制御により前記入力された指定情報(この場合前記「強」)は記憶手段80の指定された部位アドレスの強さ情報エリア(この場合は首・肩部アドレス81の強さ情報エリア81a)に格納される。そして、この格納された指定情報はつぎに入力手段100から再度新たな指定情報が入力されるまで保持されるようになっている。
【0047】
同様にして、背中部、背筋部、腰部、尻部、腿部および脚部に対応する部位釦つまり背中釦112、背筋釦113、腰釦114、しり釦115、もも釦116および脚釦117を順次押圧し、ついで「強さ」釦125を所望の強さの発光ダイオードを点灯させるように押圧操作することにより各部位アドレス82ないし87に対応する強さ情報エリア82aないし87aにそれぞれ所望の指定情報が格納される。
【0048】
つぎに、指定情報の他の入力の仕方について説明する。
【0049】
この入力の仕方は、マッサージ機1を動作させながらなす仕方であり、この場合は、まず、使用者は椅子に座り身体の各部位をそれぞれ対応するエアーバッグに当て、ついで入力手段100の前記各部位指定する部位釦のいずれか(例えば「首肩」)を押圧して部位を指定する。ついで「強さ」釦125を所望の強さの発光ダイオード(例えば「強」)を点灯させるように押圧操作して設定する。
【0050】
これらの操作がされるとマッサージ部位制御部71の制御に前記入力された指定情報(この場合前記「強」)は記憶手段80の指定された部位アドレスの強さ情報エリア(この場合は首・肩部アドレス81の強さ情報エリア81a)に前記入力された指定情報が格納される。
【0051】
そして、前記操作により部位が指定されるとともに指定情報が入力されると、分配器制御部72の制御により分配器63は前記指定された(この場合は「首・肩部」)部位に対応するエアーバッグ(この場合は首・肩用エアーバッグ43)にエアーを供給できる状態に制御する。また、図示しない主制御部の制御によりエアー生成手段制御部73は記憶手段80に格納された部位アドレスの強さ情報エリアに格納された指定情報によって定まる供給時間を供給時間設定テーブル90から読み出し、(この場合は首・肩部アドレス90の格納エリア91dから1.8秒を読み出す)この供給時間の間エアーを供給し、この供給によってエアーバッグは膨脹し被施療部は押圧されつまりマッサージ力を受ける。
【0052】
そして、使用者はこのマッサージ力が所望のマッサージ力ではない時は、前記「強さ」釦125により強さを他の強さとする指定情報例えば「中」を入力するとすると、この「中」の指定情報が記憶手段80の強さ情報エリアに既に設定されている「強」の指定情報に設定しなおされ、エアー生成手段制御部73は記憶手段80の格納エリアに新たに格納された指定情報によって定まる給気時間を供給時間設定テーブル90から読み出し(この場合首・肩部アドレス81の強さ情報エリア81aから1.5秒を読み出す)、この供給時間エアーを供給しこの供給によってエアーバッグは膨脹し被施療部は押圧されつまりマッサージ力を受ける。そして、使用者はこのマッサージ力が所望する強さである時はこの強さに決定する。
【0053】
同様にして、背中部、背筋部、腰部、尻部、腿部および脚部に対応する部位釦つまり背中釦112、背筋釦113、腰釦114、尻釦115、腿釦116および脚釦117を順次押圧し、ついで「強さ」釦125を所望の強さの発光ダイオードを点灯させるように押圧操作し、それぞれれの部位に対応するエアーバッグのマッサージ力が所望の大きさとなるように各部位アドレスの強さ情報エリアにそれぞれ所望の指定情報を入力する。
【0054】
この入力の仕方によれば使用者は、それぞれの被施療部に対応するエアーバッグのマッサージ力をそれぞれの被施療部に合わせたマッサージ力に設定することができることから良好なマッサージ効果が得られるものである。また、マッサージ力の大きさの決定は、各被施療部に対応する部位のエアーバッグを動作つまり膨脹させてその時の実際に被施療部が受けるマッサージ力によってその大きさを決定できることから所望のマッサージ力の決定が容易にできるものである。
【0055】
つぎに、このように構成したマッサージ機1の動作について説明する。
【0056】
なお、この場合指定情報は上述したいずれかの入力の仕方によって使用者が所望する値に設定されているものとして説明する。
【0057】
まず、使用者は座部20に腰掛け背中を背もたれ部30に当てて座り、ついで入力手段100の「全身コース」釦120、「上半身コース」釦121および「下半身コース」釦122のいずれかを操作し所望のコースを設定する。また、設定タイマー釦126により所望の時間を設定し、ついで、「入/切」釦118を操作つまり閉成する。
【0058】
すると、マッサージ部位制御部71は、主制御部とともに前記設定されたコースによって定められた順序にしたがって各エアーバッグ40ないし46にエアーの給排気をさせるように分配器制御部72を制御し、この分配器制御部72は設定されたコースによって定められた順序にしたがって各エアーバッグ40ないし46にエアーの給排気をさせるように分配器63を制御する。
【0059】
また、マッサージ部位制御部71は、記憶手段80の前記設定されたコースによって定められた順序にしたがってエアーが供給される各エアーバッグの内の最初のエアーバッグが対応する部位の指定情報を、部位アドレスの強さ情報エリアに設定されている指定情報に基づいて供給時間設定テーブル90に設定されている供給時間を決定する。
【0060】
また、エアー生成手段制御部73は供給時間設定テーブル90から前記決定された供給時間を読み出し、この供給時間の間エアー生成手段61を動作させる。このことによって、最初のエアーバッグにエアーが供給され膨脹し被施療部を押圧することによりマッサージがなされる。
【0061】
そして、この最初のエアーバッグのエアーの給排気が終了すると、マッサージ部位制御部71は、記憶手段80のつぎにエアーを供給するエアーバッグが対応する部位アドレスの強さ情報エリアに設定されている指定情報に基づいて供給時間設定テーブル90に設定されている供給時間を決定する。
【0062】
また、エアー分配器72はつぎのエアーバッグにエアーが供給される状態に分配器63を制御する。また、エアー生成手段制御部73は供給時間設定テーブル90から前記決定された供給時間を読み出し、この供給時間の間エアー生成手段61を動作させる。このことによって、つぎのエアーバッグにエアーが供給され膨脹し被施療部を押圧することによりマッサージがなされる。
【0063】
この動作が設定タイマー釦126により設定された時間順次繰り返され、各被施療部はコースによって定められた順序で膨縮するエアーバッグによってマッサージがなされるものである。そして設定された時間が経過すると動作は終了する。
【0064】
そして、各被施療部に対応するエアーバッグのマッサージ力はそれぞれの使用者が所望する大きさに設定されていることから良好なマッサージ効果が得られるものである。また、マッサージ力の大きさはエアーバッグにエアーを供給しない零つまり膨脹させない状態も含むものであることから、被施療部のうちで何らかの事情例えば腰痛等の疾患を有する場合は、腰用エアーバッグ40を動作させないようにし腰部を除く他の部位をマッサージすることができ使い勝手がよく、良好なマッサージ効果が得られるものである。
【0065】
なお、上記実施の形態における入力手段100は1個の「強さ」釦125と4個の発光ダイオード125aないし125dによって、マッサージ力の強さを決める指定情報を入力する構成としたが、これは図6に示すように、首肩釦111、背中釦112、背筋釦113、腰釦114、尻釦115、腿釦116および脚釦117のそれぞれの釦に対応させて、強さ釦125を設け、これらの強さ釦125にそれぞれ対応させて「強」、「中」、「弱」および「零」を表示する4個の発光ダイオード125aないし125dを設けるようにしてもよく、この場合は発光ダイオードの数は多く必要とするものの、それぞれの釦にマッサージ力の強さ表示する発光ダイオードがあることから操作性をよくすることができるという利点がある。なお、図6において図2と同一部分に付いては同一符号を付してある。
【0066】
また、上記実施の形態においては、マッサージ力情報つまり各エアーバッグ40ないし46のマッサージ力の強さをこれらエアーバッグ40ないし46に供給するエアーの供給時間を用いてマッサージ力を決める構成としたが、これは各エアーバッグ40ないし46にエアー供給する場合における供給時間を一定としてエアーの流量を可変するようにしてもよく、また、マッサージ力の実施的な強さ(使用者が感じる強さ)は同一押圧力であっても押圧している持続時間によっても可変できるものであることから、各エアーバッグ40ないし46の膨脹状態を継続している膨脹継続時間としてもよいものである。
【0067】
つぎに、マッサージ力の強さを供給時間を一定としてこれらエアーバッグ40ないし46に供給するエアーの給気流量を用いてマッサージ力を決める場合を図7に示す制御ブロック図に基づいて説明する。なお、図7において上記実施の形態つまり図3と同一構成部分については同一符号を付しその説明は省略する。
【0068】
図7に示すように、記憶手段80には給気流量設定テーブル180が設けられ、この給気流量設定テーブル180の各部位に対応する格納エリアには、図示しないが上記実施の形態の場合における供給時間に代えて、記憶手段80の首・肩部、背中部、背筋部、腰部、尻部、腿部および脚部毎の部位アドレスと対応する強さ情報エリアに設定された指定情報である「強」、「中」、「弱」、「零」に対応せて、給気流量を決定するように、つぎに述べるエアー給気流量可変手段としての第一の弁手段181、第二の弁手段182を制御するマッサージ力情報としての弁制御情報が設定されている。この弁制御情報はマッサージ力の強さが「強」の場合は、第一の弁手段181、第二の弁手段182の両方を同時に開く情報であり、「中」の場合は単位時間当たりの流量の大きい第一の弁手段181のみを開く情報であり、「弱」の場合は単位時間当たりの流量の小さい第二の弁手段182のみを開く情報でありまた、「零」の場合は第一の弁手段181、第二の弁手段182の両方を同時に閉じる情報として設定されている。
【0069】
また、前記給気流量設定テーブル180には、弁制御手段183が接続され、この弁制御手段183は給気流量設定テーブル180に設定されている弁制御情報にしたがって前記第一の弁手段181、第二の弁手段182を制御するようになっている。
【0070】
また、前記第一の弁手段181の単位時間当たりの流量は第二の弁手段182単位時間当たりの流量の2倍に設定されており、これら第一の弁手段181と第二の弁手段182は給気管62を分岐して設けられている。
【0071】
そして、この場合の動作は上記実施の形態と同様に、使用者は座部20に腰掛け背中を背もたれ部30に当てて座り、所望のコースを設定し、また、設定タイマー釦126により所望の時間を設定して、「入/切」釦118を操作つまり閉成する。
【0072】
すると、マッサージ部位制御部71は、前記設定されたコースによって定められた順序にしたがって各エアーバッグ40ないし46にエアーの給排気をさせるように分配器制御部72を制御し、この分配器制御部72は設定されたコースによって定められた順序にしたがって各エアーバッグ40ないし46にエアーの給排気をさせるように分配器63を制御する。
【0073】
また、マッサージ部位制御部71は、記憶手段80の前記設定されたコースによって定められた順序にしたがってエアーが供給される各エアーバッグの内の最初のエアーバッグが対応する部位のマッサージ力の強さを、部位アドレスの強さ情報エリアに格納されている指定情報に基づいて給気流量設定テーブル180に設定されている弁制御情報を決定する。
【0074】
また、弁制御手段183は前記決定された弁制御情報を供給流量設定テーブル180から読み出して、この弁制御情報に基づいて第一の弁手段181と第二の弁手段182を開く(なお、この弁制御手段183が各弁を開いている時間は常に一定に設定されている)。また、エアー生成手段制御部73はエアー生成手段61を動作させる。このことによって、最初のエアーバッグにそのマッサージ力に応じた量のエアーが供給され膨脹し被施療部を押圧することによりマッサージがなされる。
【0075】
そして、この最初のエアーバッグのエアーの給排気が終了すると、同様の制御がなされて、設定されたコースのよって定められた順序にしたがって各エアーバッグに設定されたマッサージ力となるようにエアーが供給されてマッサージがなされるものである。
【0076】
そして、この場合も、各被施療部に対応するエアーバッグのマッサージ力はそれぞれの使用者が所望する大きさに設定されていることから良好なマッサージ効果が得られるものである。また、マッサージ力の大きさはエアーバッグにエアーを供給しない零つまり膨脹させない状態も含むものであることから、被施療部のうちで何らかの事情例えば腰痛等の疾患を有する場合は、腰用エアーバッグ40を動作させないようにし腰部を除く他の部位をマッサージでき使い勝手がよく、良好なマッサージ効果が得られるものである。
【0077】
つぎに、マッサージ力の強さを決める構成を各エアーバッグの膨脹状態を継続している膨脹継続時間とした場合を図8に示す制御ブロック図に基づいて説明する。なお、図8において上記実施の形態つまり図3と同一構成部分については符号を付しその説明は省略する。
【0078】
図8に示すように、記憶手段80には保持時間設定テーブル280が設けられ、この保持時間設定テーブル280は開閉手段制御部281が接続されており、この開閉手段制御部281はホース62に設けた電磁弁からなる保持手段としての開閉手段282を制御するようになっている。なお、この場合の分配器63は給気するが排気機能は有しておらず、各エアーバッグ40ないし46の排気は前記開閉手段282によってなされるようになっている。
【0079】
そして、保持時間設定テーブル280には、図示しないが上記実施の形態の場合における給気時間に代えて、記憶手段80の首・肩部、背中部、背筋部、腰部、尻部、腿部および脚部毎の部位アドレスの強さ情報エリアに設定された指定情報である「強」、「中」、「弱」、「零」に対応させて、エアーの供給によって膨脹した各エアーバッグ40ないし46の膨脹状態を維持させるマッサージ力情報としての保持時間が設定されている。この保持時間は記憶手段80の強さ情報エリアに設定された指定情報が「強」の場合は、開閉手段282を閉じている時間は最も長く、「弱」の場合は最も短く、「中」の場合は「強」と「弱」の中間の長さに設定されている。また、「零」の場合は零(つまり開閉手段283は閉じられることがない)が設定されている。
【0080】
そして、この場合の動作は上記実施の形態と同様に、使用者は座部20に腰掛け背中を背もたれ部30に当てて座り、所望のコースを設定し、また、設定タイマー釦126により所望の時間を設定して、「入/切」釦118を操作つまり閉成する。
【0081】
すると、マッサージ部位制御部71は、前記設定されたコースによって定められた順序にしたがって各エアーバッグ40ないし46にエアーの給排気をさせるように分配器制御部72を制御し、この分配器制御部72は設定されたコースによって定められた順序にしたがって各エアーバッグのエアーの給排気をさせるように分配器63を制御する。
【0082】
また、マッサージ部位制御部71は、記憶手段80の前記設定されたコースによって定められた順序にしたがってエアーが供給される各エアーバッグの内の最初のエアーバッグが対応する部位のマッサージ力の強さを、部位アドレスの強さ情報アリアに格納されている指定情報の基づいて保持時間設定テーブル280に設定されている保持時間を決定する。
【0083】
また、エアー生成手段制御部73は主制御部の制御によってエアー生成手段61を動作させる(なお、このエアー生成手段61の動作時間は常に一定に設定されている)。そして、エアー生成手段61の一定時間の動作によってエアーが供給されてエアーバッグが膨脹すると、開閉手段制御部281は前記保持時間設定テーブル280から設定されている保持時間を読み出して、この保持時間が経過するまで前記開閉手段282を閉状態とする。つまり、エアーバッグの膨脹状態を前記設定された保持時間の間保持する。そして保持時間が経過した際に前記開閉手段282を開き、このエアーバッグはそのエアーを開閉手段282を介して外部に排気して収縮する。
【0084】
そして、この最初のエアーバッグのエアーの給排気が終了すると、同様の制御がなされて、設定されたコースによって定められた順序にしたがって各エアーバッグ40ないし46に設定されたマッサージ力となるようにエアーが供給されてマッサージがなされるものである。
【0085】
そして、この場合も、各被施療部に対応するエアーバッグのマッサージ力はそれぞれの使用者が所望する大きさに設定されていることから良好なマッサージ効果が得られるものである。
【0086】
また、マッサージ力はエアーバッグが被施療部を押圧している時間によって定められることから、ストレッチ効果を伴うマッサージ力を可変できることから良好なマッサージ効果が得られるものである。
【0087】
また、上記実施の形態では、記憶手段80に入力した指定情報に基づいて、供給時間設定テーブル90、給気流量設定テーブル180、保持時間設定テーブル280の格納エリアに設定されたマッサージ力情報を読み出すようにしたが、これは前記各供給時間設定テーブル90、給気流量設定テーブル180、保持時間設定テーブル280を設けることなく、記憶手段80に直接指定情報に代えてマッサージ力情報を入力つまり設定し、このマッサージ力情報に基づいてそれぞれのエアーバッグ40ないし46のマッサージ力を定めるようにしてもよく、また、記憶手段80を省略し各供給時間設定テーブル90、給気流量設定テーブル180、保持時間設定テーブル280の格納エリアに直接入力手段100からマッサージ力情報を入力して設定するようにしてもよいものである。
【0088】
また、上記実施の形態では、エアーバッグによって直接被施療部を押圧する構成としたが、これはエアーバッグに押圧子を設け、この押圧子によって押圧するようにしてもよいものであり、この場合も押圧子の押圧力はエアーバッグの押圧力によって生じるものである。
【0089】
なお、上記実施の形態ではエアーマッサージ機を椅子式エアーマッサージ機とした場合に付いて説明したが、本発明は、他の形式のエアーマッサージ機例えばベッド式エアーマッサージ機等他の形式のマッサージ機にも適用できるものである。
【0090】
【発明の効果】
上記のように請求項1記載の発明は、身体支持部に配設されエアー供給装置からのエアーの給排気によって膨縮するエアーバッグに、制御手段によって入力手段から入力されたマッサージ力の強さを指定する指定情報に基づいてエアー設定手段に設定されているマッサージ力情報に基づいてエアー供給装置を制御し、前記それぞれのエアーバッグのマッサージ力の強さを、マッサージのコースにおいてエアーバッグ毎に可変できることから、良好なマッサージ効果が得られるという効果を有するものである。
【0094】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、マッサージを望まない被施療部に対応するエアーバッグの膨脹させないようにすることができることから、全体として良好なマッサージ効果が得られるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した椅子式エアーマッサージ機の斜視図。
【図2】上記椅子式エアーマッサージ機の入力手段の平面図。
【図3】上記椅子式エアーマッサージ機の制御ブロック図。
【図4】上記椅子式エアーマッサージ機の制御における記憶手段の構成を示す図。
【図5】上記椅子式エアーマッサージ機の制御における供給時間設定テーブルの構成を示す図。
【図6】上記椅子式エアーマッサージ機の入力手段の他の実施の形態の平面図。
【図7】上記椅子式エアーマッサージ機の制御の他の実施の形態の制御ブロック図。
【図8】上記椅子式エアーマッサージ機の制御のさらに他の実施の形態の制御ブロック図。
【符号の説明】
1 椅子式エアーマッサージ機(エアーマッサージ機)
20 座部(身体支持部)
30 背もたれ部(身体支持部)
40?46 エアーバッグ
60 エアー供給装置
61 エアー生成手段(エアー供給装置の一部)
63 分配器(エアー供給装置の一部)
70 制御手段
80 記憶手段
90 供給時間設定テーブル(設定手段)
100 入力手段
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2011-03-23 
結審通知日 2011-03-29 
審決日 2011-04-18 
出願番号 特願平9-345202
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A61H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安井 寿儀  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 蓮井 雅之
寺澤 忠司
登録日 2005-06-10 
登録番号 特許第3686244号(P3686244)
発明の名称 エアーマッサージ機  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  
代理人 辻本 希世士  
代理人 坂元 孝之  
代理人 古庄 俊哉  
代理人 森田 拓生  
代理人 丸山 英之  
代理人 上野 康成  
代理人 上野 康成  
代理人 森田 拓生  
代理人 高田 真司  
代理人 辻本 良知  
代理人 重冨 貴光  
代理人 辻本 一義  
代理人 重冨 貴光  
代理人 三山 峻司  
代理人 辻本 一義  
代理人 畑 郁夫  
代理人 井上 周一  
代理人 高田 真司  
代理人 辻本 良知  
代理人 黒田 佑輝  
代理人 辻本 希世士  
代理人 古庄 俊哉  
代理人 坂元 孝之  
代理人 木村 広行  
代理人 畑 郁夫  
代理人 丸山 英之  
代理人 黒田 佑輝  

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