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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2011800064 審決 特許
不服20082566 審決 特許
平成24行ケ10299審決取消請求事件 判例 特許
無効2008800115 審決 特許
無効2008800186 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A21D
審判 全部無効 2項進歩性  A21D
審判 全部無効 1項1号公知  A21D
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A21D
審判 全部無効 1項2号公然実施  A21D
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A21D
管理番号 1240073
審判番号 無効2009-800253  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-12-24 
確定日 2011-04-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4324237号発明「パン又は菓子用米粉」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第4324237号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
被請求人は,平成15年6月17日(優先権主張平成14年7月12日,平成14年7月31日,平成14年10月25日及び平成15年1月16日)に特許出願(特願2003-171692号)をし,平成20年11月4日にこれを分割してその一部につき,名称を「パン又は菓子用米粉」とする新たな特許出願をし,平成21年6月12日,特許庁から特許第4324237号として設定登録を受けた。
これに対して,請求人から平成21年12月24日付けで請求項1及び2に係る発明についての特許に対して,無効審判の請求がなされたところ,その後の手続の経緯は,以下のとおりである。

答弁書: 平成22年 3月19日
訂正請求書: 平成22年 3月19日
口頭審理陳述要領書(被請求人): 平成22年 5月25日
口頭審理陳述要領書(請求人): 平成22年 5月25日
口頭審理: 平成22年 5月25日
証人尋問申出書及び尋問事項書(請求人): 平成22年 5月31日
上申書(被請求人): 平成22年 6月 1日
証人尋問申出書及び尋問事項書(被請求人):平成22年 6月 4日
上申書(請求人): 平成22年 6月25日
上申書(被請求人): 平成22年 6月28日
尋問事項書(詳細)(被請求人): 平成22年 6月28日
証人尋問: 平成22年 7月 5日
上申書(2)(請求人): 平成22年 7月12日
上申書(3)(請求人): 平成22年 7月22日
上申書(4)(請求人): 平成22年 8月 4日
上申書(被請求人): 平成22年 8月 4日

第2 訂正請求の可否
1.訂正の内容
被請求人は,平成22年3月19日付け訂正請求書を提出して以下の訂正を求めている。

(1)訂正事項1
明細書の段落0014の「粒度が・・・含むものである」を,「100メッシュの篩にかけ,100メッシュの篩を通過した区分を140メッシュの篩と200メッシュの篩に順次かけ,各篩上に残った米粉の重量を測定し,前記米粉100重量%中140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20?40重量%含み,200メッシュを通過した区分が53.12重量%以上である」に訂正。
(2)訂正事項2
明細書の段落0020の「50重量%」を「40重量%」に訂正。
(3)訂正事項3
明細書の段落0020の「本発明の生地」を「パン又は菓子の生地」に訂正。
(4)訂正事項4
明細書の実施例3の記載された段落0066,0067,実施例11の記載された段落0085,及び実施例15の記載された段落0108?0110を削除するとともに,段落0054の「実施例9,11」を「実施例9」に,段落0086の「10及び11」,「前記4種類」を「及び10」,「前記3種類」にそれぞれ訂正。
(5)訂正事項5
明細書の段落0055,0063,0068,0071,0074,0077,0080,0083,0084,0087及び0095の「マツモトフーズ製」を「マツモトフーツ製」に訂正。

2.判断
訂正事項1,2は,特許請求の範囲の記載と一致せず,明りょうでない記載を特許請求の範囲の記載に合致させるもので,明りょうでない記載の釈明を目的とし,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
訂正事項3は,本発明は米粉の発明であるから,明りょうでない「本発明の生地」という記載を,段落0001の記載などにあわせて「パン又は菓子の生地」とするもので,明りょうでない記載の釈明を目的とし,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
訂正事項4は,用いた米粉が特許請求の範囲に記載される範囲に合致するか否か不明な実施例を削除するとともに,それに明細書の記載を合致させるものであり明りょうでない記載の釈明を目的とし,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
訂正事項5は,会社名の誤記を訂正するものであり,誤記の訂正を目的とし,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
したがって,平成22年3月19日付け訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書き,及び,同条第5項において準用する同法第126条第3項,4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。

第3 本件発明
本件特許第4324237号の請求項1及び2に係る発明は,その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された次のとおりのものと認める。(以下,「本件発明1」及び「本件発明2」という。)

「【請求項1】
胴搗き製粉,ロール製粉,石臼製粉,気流粉砕製粉又は高速回転打撃製粉により得られたものであり,粒度が,米粉(酵素処理したものを除く)を100メッシュの篩にかけ,100メッシュの篩を通過した区分を140メッシュの篩と200メッシュの篩に順次かけ,各篩上に残った米粉の重量を測定し,前記米粉100重量%中140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20?40重量%含み,200メッシュを通過した区分が53.12重量%以上である,小麦粉を使用しないパン用の米粉。
【請求項2】
胴搗き製粉,ロール製粉,石臼製粉,気流粉砕製粉又は高速回転打撃製粉により得られたものであり,粒度が,米粉(酵素処理したものを除く)を100メッシュの篩にかけ,100メッシュの篩を通過した区分を140メッシュの篩と200メッシュの篩に順次かけ,各篩上に残った米粉の重量を測定し,前記米粉100重量%中140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20?40重量%含み,200メッシュを通過した区分が53.12重量%以上である,小麦粉を使用しないケーキ,パイ,スコーン,マフィン又はシュークリーム用の米粉。

第4 当事者の主張の要点
1.請求人の主張
(1)無効理由1
本件特許明細書の表1中にある,「一般市販品 上新粉」の記載から,本件発明1及び2は,日本国内において公然知られた,又は公然実施された発明であるから特許法第29条第1項第1号又は同第2号の規定に該当するものであるか,少なくとも係る発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第2号の規定により本件特許は無効とすべきである。

(2)無効理由2
本件発明1は,甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第2号の規定により本件特許は無効とすべきである。
また,仮にそうでないとしても,甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明,もしくは甲第1?3号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第2号の規定により本件特許は無効とすべきである。
本件発明2は,甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第2号の規定により本件特許は無効とすべきである。
また,仮にそうでないとしても,甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明,もしくは甲第1?4号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第2号の規定により本件特許は無効とすべきである。

(3)無効理由3
群馬製粉株式会社が販売していた商標「雪わり草」の上新粉は,本件発明1及び2の米粉と同じ粒度分布のものである。甲第5号証に,上新粉 雪わり草を用いたショートブレッドケーキの製造方法が記載され,本件発明1及び2は,甲第5号証に記載された発明であって,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第2号の規定により本件特許は無効とすべきである。
また,仮にそうでないとしても,甲第5号証又は甲第1?5号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第2号の規定により本件特許は無効とすべきである。

(4)無効理由4
本件特許明細書の実施例1?8,11?13,15及び比較例3に記載される米粉が,どのような米粉であるのか,粒度分布がどのようなものか明らかでなく,特許法第36条第4項第1号及び第6項に規定する要件を満たしていないので,特許法第123条第1項第4号の規定により本件特許は無効とすべきである。

<証拠方法>
甲第1号証:新潟県食品研究所・研究報告・第27号21?28頁(平成4年8月発行)
甲第2号証:新潟県農業総合研究所食品研究センター・研究報告・第32号・1?5頁(平成10年3月発行)
甲第3号証:特公平7-100002号公報
甲第4号証:東京家政大学研究紀要・第42集・93?97頁「米粉を用いたシュー皮の特性」2002年2月発行
甲第5号証,甲5号証-1:「群馬製粉の新食感物語 米粉で作るとっておきのお菓子」2002年4月1日・群馬製粉株式会社発行
甲第6号証:陳述書(群馬製粉株式会社 山口慶一作成)
甲第7号証:平成13年3月14日測定の「上新粉・雪わり草」の粒度分布表
甲第8号証:平成13年11月21日測定の「上新粉・雪わり草」の粒度分布表
甲第9号証:平成15年8月5日測定の「リ・ファリーヌ」の粒度分布表
甲第10号証:平成15年9月26日測定の「リ・ファリーヌ」の粒度分布表
甲第11号証:平成16年1月16日測定の「上新粉・雪わり草」の粒度分布表
甲第12号証:平成16年2月24日測定の「上新粉・雪わり草」の粒度分布表
甲第13号証:平成21年12月17日測定の「リ・ファリーヌ」の粒度分布表
甲第14号証の1?2:1994年度・総勘定元帳の「43 工具器具備品」科目
甲第15号証の1?10:株式会社セイシン企業製の「ロボットシフターRPS-85」の機械及び現在の設置状況を示す写真
甲第16号証の1?2:平成13年度・総勘定元帳の「58 ソフトウエア開発費」科目
甲第17号証:測定結果一覧表・登録番号1?40
甲第18号証:粒度分布測定結果・登録番号4
甲第19号証:「2002国際食品工業展」(FOOMA JAPAN)結果報告書
甲第20号証:上申書(群馬製粉株式会社 山口慶一作成)
証人,山口慶一の証人尋問

2.被請求人の主張
(1)請求人が無効理由1について主張する事実は,本件特許の発明者の認識を示すものであって,本件特許出願時に当該「一般市販品 上新粉」をパンやケーキ等に用いることが,公然知られていたことや,公然実施されていたことを客観的に示すものではない。

(2)甲第1号証においては,「酵素処理を行っていない胴つき方式製粉による米粉」が,その属性により製パンとの用途に適することが見出された旨の記載が存在しないのみならず,当該米粉が製パンに不適である旨が明記され,甲第1号証における「酵素処理を行っていない胴つき方式製粉による米粉」は,パン用の米粉としての発明が未完成で,引用発明適格を有していない。裁判例(乙第9号証)の判示に照らせば,該米粉は,本件発明1の「小麦粉を使用しないパン用の米粉」の要件を備えておらず,本件発明1は,甲第1号証記載の発明と同一ではない。
また,仮に甲第1号証の「酵素処理を行っていない胴つき方式製粉による米粉」がパン用の米粉として発明が完成したものであるとしても,「パン用の米粉」と「ケーキ,パイ,スコーン,マフィン又はシュークリーム用の米粉」の用途発明が同一視できるものでない。
甲第2号証においては,4000rpm及び5000rpmで調製された米粉がカステラ用に適することが記載されていないのみならず,当該米粉はカステラには不適である旨が明記されているのであって,「カステラ用の米粉」としての発明が未完成である。
また,仮に甲第2号証の米粉がカステラ用の米粉として発明が完成したものであるとしても,同一の米粉によりパンが作成可能であるとの技術常識は存在しないし,「ケーキ,パイ,スコーン,マフィン又はシュークリーム」と「カステラ」は同一でない。カステラに適した米粉が,ケーキ,パイ,スコーン,マフィン又はシュークリーム用の米粉として適しているとの技術常識は存在しない。

(3)甲第5号証の「2002年4月1日発行」の記載は,「頒布」された事実を立証する物ではない。また,2002年4月1日に作成されたこと自体についても客観的に立証されていない。
甲第6号証の資料2は信憑性がない。
また,甲第5号証の「ショートブレッドケーキ」は,パンやケーキとは全く異なるものである。

(4)本件特許明細書の表1の「新潟製粉米粉A」,「新潟製粉米粉B」,「齋藤製粉米粉」は,いずれも酵素処理がなされた本件特許の比較例の米粉であり,「群馬製粉米粉」は実施例9で使用されており,「株式会社波里米粉」は実施例10で使用されている。してみれば,表1において「一般市販品上新粉」と記載された米粉が,実施例で用いられている(株)マツモトフーツ製上新粉と解するのが自然である。
また,比較例3は,本件発明に包含されないものであるから,本件特許の実施可能要件やサポート要件に影響を与えるものでない。

(5)請求人は,本件発明1及び2が,甲第1号証,甲第1?3号証,甲第2号証,甲第1?4号証,甲第5号証,甲第6号証又は甲第1?6号証に基づいて進歩性がないと主張しているが,いかなる理由で当業者が容易に発明できたか記載がなく失当であり,また,特許法第131条第2項に反する不適法なものである。

<証拠方法>
乙第1号証:陳述書(永江啓一作成)
乙第2号証:陳述書(福盛幸一作成)
乙第3号証-1:陳述書(松本吉司作成)
乙第3号証-2:株式会社マツモトフーツのホームページのコピー
乙第4号証-1:平成14年優良ふるさと食品中央コンクール新技術開発部門表彰状
乙第4号証-2:平成14年優良ふるさと食品中央コンクール応募申請書
乙第4号証-3:平成14年優良ふるさと食品中央コンクール応募申請書作成経過について(平成20年10月24日付け)
乙第5号証:食糧庁長官から福盛幸一宛て感謝状
乙第6号証:新聞記事(2002年10月19日付け読売新聞夕刊,2003年8月5日付け読売新聞夕刊,2005年2月28日付け日本経済新聞夕刊,2008年7月2日付け毎日新聞,2002年10月19日付け読売新聞夕刊,2002年11月23日付け朝日新聞夕刊,)
乙第7号証:「カフェスイーツ」2008年92号85頁
乙第8号証:最高裁判所昭和52年10月13日判決,昭和49年(行ツ)第107号判決文
乙第9号証:東京高等裁判所平成13年4月25日判決,平成10年(行ケ)第401号判決文
乙第10号証:山口慶一著「お米革命」(2008年10月発行)22?23,70?77,82?85,108?109,154?157頁
乙第11号証-1:農林水産省作成「第4回「販売」を軸とした米システムのあり方に関する検討会」議事録
乙第11号証-2:滝尾佳明作成「米粉の普及活動と現状の問題点について」
乙第12号証:グリコ栄養食品株式会社ホームページのコピー
乙第13号証-1:協同組合米ワールド21普及協議会ホームページのコピー
乙第13号証-2:「シトギ2号」紙袋の写真
乙第14号証-1:「雪わり草」(ロット番号:091217.51)と「シトギ2号」の米粉粒度分布測定結果
乙第14号証-2:「雪わり草」(ロット番号:091217.51)の写真
乙第15号証:特開2002-95404号公報
乙第16号証-1:2002年7月19日付け書簡
乙第16号証-2:2002年7月6日付けファクシミリ
乙第16号証-3:平成14年8月5日付けファクシミリ
乙第16号証-4:平成14年(有)シトギジャパン福盛幸一 米粉パン普及講習会及びプレゼンテイション一覧
乙第17号証-1:特願2002-203784号の出願書面控え
乙第17号証-2:特願2002-223548号の出願書面控え
乙第18号証:「コメナビ 米粉の種類と評価基準」ホームページのコピー
乙第19号証:関東農政局作成「米粉ってなーに」
証人,福盛幸一の証人尋問

第5 当審の判断1 無効理由1について
本件特許明細書の表1中に,「一般市販品 上新粉」の記載はあるが,本件特許明細書には,その製造元や商品名も明らかにされていないものであるから,本件発明1及び2のものと同じ粒度分布の上新粉が,本件特許の優先日前に市販されていた可能性が,単に示されているにすぎないというべきもので,そのような上新粉が,本件特許の優先日前に市販されていたと推定することもできないものである。ましてや,パン用やケーキ用の上新粉として知られていたり,実施されていた事実があるかどうか全く不明であり,請求人の主張及び挙証の事実からは,本件発明1及び2が,日本国内において公然知られた,又は公然実施された発明であるとは認めることはできないし,本件発明1及び2を,当業者が容易に発明できたものと認めることはできない。

第6 当審の判断2 無効理由2について
1.本件発明1について
(1)甲第1号証
請求人が甲第1号証として提出した,本件特許の優先日前に頒布された刊行物,「新潟県食品研究所 研究報告」,第27号21?28頁(平成4年8月発行)には,「米粉を利用した新食品として小麦の用途のなかで重要なパンを研究対象に選択した。このとき,小麦粉に米粉を添加したものではなく,米粉を主体としたパン様の食品(以下米パンと略記)の製造を目的に試験を行って,以下の結果を得たの(で)報告する。」(21頁左欄11?15行)と記載され,
試料及び実験方法の項に,製粉方法が異なる,胴つき方式製粉による米粉((株)高井製粉所製),衝撃方式製粉による米粉((株)高井製粉所製)及びロール方式製粉による米粉((株)高井製粉所製)を用いたこと(21頁右欄2?5行)が記載され,
表1(22頁)に澱粉・米粉によるパンの基本配合として,米粉の場合は,米粉(水分13.5%)85%,バイタルグルテン15%,塩2%,酵母2%,砂糖6%,ショートニング6%,水適量であることが記載され,
市販米粉の性状及び製パン性が,表2(23頁)に示されるとともに,「小麦澱粉によるパンと比較し,米粉により試作したパンは,製粉方式を問わずその品質は劣っていた。・・・胴つき方式の米粉の場合はロール方式のものよりミキシング時は良好だったが,加水量がおおくなり発酵時の体積増加は見られなかった。そのため,両者とも焼成後の内相がダンゴ状となり,食味が低下した。」(22頁右欄下から10?下から1行)と記載され,
図3(24頁)に,製粉方式の異なる米粉の粒度分布のグラフが記載され,
表5(26頁)には,酵素未処理のものと,ペクチナーゼ製剤処理されたものの,製粉方式と米粉の性状及び製パン性が記載されている。

(2)対比
甲第1号証に記載された,ペクチナーゼ処理されていない胴つき方式製粉による米粉((株)高井製粉所製)は,表2,図3及び表5に,平均粒度243.2メッシュとして記載されるもので,パンの試作に用いたものであり,そのとき表1の記載から明らかなように,パンの試作には小麦粉を使用していないものである。
そうすると,本件発明1と甲第1号証に記載された発明は,胴搗き製粉,ロール製粉,石臼製粉,気流粉砕製粉又は高速回転打撃製粉により得られた小麦粉を使用しないパン用の米粉(酵素処理したものを除く)である点で,一致するものである。
ところが,甲第1号証に記載された米粉の粒度は,米粉を100メッシュの篩にかけ,100メッシュの篩を通過した区分を140メッシュの篩と200メッシュの篩に順次かけ,各篩上に残った米粉の重量を測定し,前記米粉100重量%中140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20?40重量%含み,200メッシュを通過した区分が53.12重量%以上であるかどうか,一見明らかではない。

(3)判断
甲第1号証の図3には,製粉方式の異なる米粉の粒度分布として,平均粒度243.2メッシュの胴搗方式製粉による米粉,平均粒度132.4メッシュのロール方式製粉による米粉及び平均粒度170.5メッシュの衝撃方式製粉による米粉の棒グラフが記載されている。このグラフの縦軸は粒度分布(重量%)であり,横軸には,棒毎に100,150,200,250,250以上の数値が記載され,これは,100メッシュ,150メッシュ,200メッシュ,250メッシュの篩に順次かけたときに,それぞれの篩に残る量と,250メッシュの篩を通過した量が示されているものと理解できる。
本件発明1における,140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分との合計は,要するに,100メッシュの篩は通過する程度には粒度が細かいが,200メッシュの篩は通過できないほどには粒度が大きいものということができ,甲第1号証の150と200の棒グラフの合計に相当するものである。そして,甲第1号証の図3の,平均粒度243.2メッシュの胴搗方式製粉による米粉の,150と200の棒グラフの合計は,読み取りの誤差を考慮しても,25?28重量%程度になるものであり,本件発明1における米粉が,140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20?40重量%含むことと一致する。
また,本件発明1における,200メッシュを通過した区分は,甲第1号証の250と250以上の棒グラフの合計に相当するものであり,読み取りの誤差を考慮しても,59?62重量%程度になるものであり,本件発明1における米粉が,200メッシュを通過した区分が53.12重量%以上であることに一致する。
そうすると,本件発明1と甲第1号証に記載された発明は,何も違いがないことになり,本件発明1は,甲第1号証に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号の規定により,請求項1に係る発明についての本件特許は無効とすべきものである。

なお,請求人は,裁判例(乙第9号証)の判示に照らせば,甲第1号証における「酵素処理を行っていない胴つき方式製粉による米粉」は,パン用の米粉としての発明が未完成で,該米粉は,本件発明1の「小麦粉を使用しないパン用の米粉」の要件を備えておらず,本件発明1は,甲第1号証記載の発明と同一ではないことを主張するので,事案を異にするものではあるが,念のため乙第9号証の判決について検討する。
該判決においては,「小麦粉等の穀粉類のみから成る即席冷凍麺類用穀粉(従来技術)が存在すること,そのような穀粉類のみから成る従来の即席冷凍麺類用穀粉によっても十分に喫食可能で,それなりの食味,食感を有する即席冷凍麺類が製造できることはいずれも周知の事柄であって,先願明細書もそのことを当然の前提とするものと認められる。そうすると,仮に,先願明細書に,上記「タピオカ澱粉5?30重量%と穀粉95?70重量%とからなる即席冷凍麺類用穀粉」(先願発明)につき,その効果として開示されている事項が,単に喫食が可能である即席冷凍麺類が製造できるということにとどまるものとすれば,先願明細書には,タピオカ澱粉を特定割合で他の穀粉類と配合して即席冷凍麺類用穀粉として使用した場合に,従来技術以下の効果を奏することしか開示されていないことになる。そして,その効果が従来技術以下であるにすぎないものとすれば,先願明細書の記載において,タピオカ澱粉が,その特定の属性により即席冷凍麺類用穀粉という新たな用途への使用に適することは未だ見いだされていないといわざるを得ず,先願発明が,用途発明として完成しているということはできない。」(10頁下から16?下から3行)とし,
「先願明細書には,実施例1に,タピオカ澱粉と穀粉とを一定割合で配合した製麺用穀粉を用いた製造方法を含め,冷凍うどんに関する記載があるが,他に上記製麺用穀粉を用いて製造した冷凍麺についての記載はない。そして,上記実施例1には,当該冷凍うどんにつき「前記実施例とほぼ同様の評価を得た」,すなわち,「のどごしの良い滑らかさ,歯応え,歯切れのいずれも良好で,従来の手延べうどんと比べ優劣つけがたいものであった」との評価の記載があるが,先願明細書上,この評価を裏付ける具体的な試験についての記載や,試験データ等の開示はない。」(12頁1?9行)ところ,
タピオカ澱粉(11重量部と中力小麦粉89重量部を用いて,先願明細書の実施例1の記載に従って製造した冷凍うどんについての官能評価試験(原告官能評価試験)をふまえ,
「原告官能評価試験及び原告追加官能評価試験の上記結果にかんがみ,その各試験結果を踏まえて当業者が先願明細書の記載事項を見れば,先願明細書には,タピオカ澱粉を特定割合で配合した穀粉である先願発明が,即席冷凍麺類用穀粉として使用した場合に,穀粉類のみから成る従来の即席冷凍麺類用穀粉(従来技術)よりも優れた効果を奏することは何ら開示されておらず,かえって,これよりも劣悪な効果しか得られないことが開示されていると理解することは明らかである。」(16頁12?18行)とし,
「したがって,先願明細書の記載によっては,用途発明である先願発明は,構成上本願発明と一致する「タピオカ澱粉12?30重量%と穀粉類88?70重量%とからなる即席冷凍麺類用穀粉」という部分を含め,当業者が反復継続して所定の効果を挙げることができる程度まで具体的・客観的なものとして構成されているとはいえず,発明として未完成であるというべきである。」(16頁19?23行)と判示するものである。
すなわち,先願発明(注:特許出願であり,当然に従来技術よりすぐれたものを,提供することがその前提となるもので,実施例1においても,「のどごしの良い滑らかさ,歯応え,歯切れのいずれも良好で,従来の手延べうどんと比べ優劣つけがたいものであった」と評価されているものである。)が,その効果が従来技術以下であるにすぎないものとすれば,用途発明として完成していることはできないとし,冷凍麺についての唯一の実施例1を追試したところ,従来技術より劣悪な効果しかない(注:このことは,「のどごしの良い滑らかさ,歯応え,歯切れのいずれも良好で,従来の手延べうどんと比べ優劣つけがたいものであった」との実施例1の評価は,誤りなどである疑いが生じるものといえる。)ことから,構成上本願発明と一致する「タピオカ澱粉12?30重量%と穀粉類88?70重量%とからなる即席冷凍麺類用穀粉」という部分(注:この範囲は,実施例1のものとは同じでないから,本願発明も同様に,従来技術より劣悪な効果しかないものとはいえない。)を含め,先願発明は,発明として未完成であるとしているのである。
これに対し,甲第1号証は,「本報ではまず,米粉を利用した新食品として小麦の用途の中で重要なパンを研究対象に選択した」(21頁左欄11?12行)とあるように,新食品として米粉を利用したパンを研究した結果が発表されたもので,その結果が誤ったものであるなどの疑いは特にないものである。そうであるから,乙第9号証の判決とは,その前提が異なっており,甲第1号証に記載された米粉が,製パンに不適であったからといって,それは効果の程度が低い用途発明であるというにすぎず,用途発明として未完成であるとはいえないものである。
また,本件発明1の米粉と同じ粒度分布であることは,上述の通りであるから,本件発明1においても,甲第1号証に記載される製パン方法を採用すれば,品質が劣ったパンができるのであり,仮に被請求人の主張に従うとすると,本件発明1も未完成の部分を包含していることになり,特許法29条第1項柱書きの規定に違反することになるから,請求人の主張は,そもそも矛盾したものであって,採用できるものでない。

2.本件発明2について
(1)甲第2号証
請求人が甲第2号証として提出した,本件特許の優先日前に頒布された刊行物,「新潟県農業総合研究所食品研究センター 研究報告」,第32号1?5頁(平成10年3月発行)には,「従来和菓子分野への利用が中心であった米を新たに洋菓子分野への利用を試みることとした。利用対象とした菓子の種類は,消費者に馴染み深いカステラをとりあげ,米粉を用いた場合の安定製造条件を明らかにすることを目的に,米粉の粒度,生地調整条件,物性保持等について検討した。」(1頁左欄13?18行)と記載され,
表1(2頁)に,米粉を用いたカステラの原料配合として,鶏卵,上白糖,水飴,蜂蜜,みりん,水及び米粉の比率と仕込み量が記載され,
「これまでの予備試験の結果から,カステラの安定製造には,米粉の粒度が重要な要因となると考えられた。そこで,米粉の適正粒度を明らかにするため,気流粉砕機の回転数を4,000?8,000rpmの範囲で5段階に変化させて粒度の異なる米粉を調製し,その粒度分布を測定した。」(2頁右欄13?17行)と記載されるとともに,その結果が表2に示され,
「前述の粒度の異なる5種類の米粉を用いて調製したカステラの品質は,表3に示したとおりとなった。・・・総合評価の平均点で比較した場合,6,000rpm以下の3試験区ではいずれも普通以下の評価であったのに対し,7,000rpm以上の2試験区は僅かによい付近の評点となっており,両者の間で2ランク前後の差が認められた。」(3頁左欄8行?右欄9行)と記載されている。

(2)対比
甲第2号証に記載された,カステラの調製に用いられた米粉は,気流粉砕製粉により得られたもので,特に酵素処理したものではなく,表1から明らかなように,小麦粉を使用しないでカステラを調製したものである。
また,本件発明2における米粉の粒度の,140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分との合計は,要するに,100メッシュの篩は通過する程度には粒度が細かいが,200メッシュの篩は通過できないほどには粒度が大きいものということができ,甲第2号証の表2における150メッシュ残と200メッシュ残の合計に相当するものである。また,本件発明2における米粉の粒度の,200メッシュを通過した区分は,甲第2号証の表2における250メッシュ残と250メッシュ通過の合計に相当するものである。そして,甲第2号証において,カステラの調製に用いられた米粉のうち,4,000rpmと5,000rpmで粉砕された米粉の150メッシュ残と200メッシュ残の合計は,それぞれ31.4%及び21.9%であり,本件発明2における米粉が,140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20?40重量%含むことと一致し,4,000rpmと5,000rpmで粉砕された米粉の250メッシュ残と250メッシュ通過の合計は,それぞれ56.1%及び69.9%であり,本件発明2における米粉が,200メッシュを通過した区分が53.12重量%以上であることに一致する。
そうすると,本件発明2と甲第2号証に記載された発明は,「胴搗き製粉,ロール製粉,石臼製粉,気流粉砕製粉又は高速回転打撃製粉により得られたものであり,粒度が,米粉(酵素処理したものを除く)を100メッシュの篩にかけ,100メッシュの篩を通過した区分を140メッシュの篩と200メッシュの篩に順次かけ,各篩上に残った米粉の重量を測定し,前記米粉100重量%中140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20?40重量%含み,200メッシュを通過した区分が53.12重量%以上である,米粉。」である点で一致しているが,本件発明2の米粉が,「小麦粉を使用しないケーキ,パイ,スコーン,マフィン又はシュークリーム用」のものであるのに対し,甲第2号証に記載される米粉は,「小麦粉を使用しないカステラ用」のものである点で一応相違している。

(3)判断
安達巌編「パン・洋菓子事典」パン・洋菓子事典編纂会発行(昭和55年9月10日)123頁のカステラの項には,「小麦粉に鶏卵と佐藤を加えたケーキ。」とカステラのことが説明され,桜井芳人編「総合食品事典(第三版改訂第3刷)」同文書院発行(昭和51年3月15日)148頁のカステラの項には,「スポンジ・ケーキの一種で洋生菓子であるが,歴史が長いので,和生菓子の焼物であるという人もいる。」と説明され,「丸善食品総合事典」丸善株式会社発行(平成10年3月25日)208頁のカステラの項には,「小麦粉,卵,砂糖を主原料としてつくった甘くて質の柔らかい和製スポンジケーキ。」と説明されているように,カステラはケーキの一種であるから,上記の相違点により,本件発明2の米粉は,甲第2号証に記載される米粉と,実質的に相違していないことになる。
したがって,本件発明2は,甲第2号証に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号の規定により,請求項2に係る発明についての本件特許は無効とすべきものである。

なお,仮に上記相違点により,本件発明2の米粉と甲第2号証に記載される米粉とが,実質的に相違しているとしても,甲第2号証は,上記したように,従来和菓子分野への利用が中心であった米を新たに洋菓子分野への利用を試みたもので,そのとき,利用対象とした菓子の種類として,消費者に馴染み深いカステラをとりあげたものである。そうであるから,当業者であれば,他の洋菓子においても,カステラと同様の結果が得られるかに興味を抱くものであり,特にカステラに類似した洋菓子であるケーキにおいて,同様の研究を行うことは当業者が容易になし得ることに過ぎない。
そして,本件特許明細書を見ても,米粉をパン用に用いたことが具体的に記載されているだけであり,ケーキ,パイ,スコーン,マフィン又はシュークリーム用に用いたときに,どのような効果が奏されるのか明らかでなく,ケーキ,パイ,スコーン,マフィン又はシュークリーム用としたことにより格別顕著な効果があるものとも認められない。
したがって,仮に上記相違点が実質的な相違点であるとしても,本件発明2は,甲第2号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号の規定により,請求項2に係る発明についての本件特許は無効とすべきものである。

なお,被請求人は,甲第2号証における,4000rpm及び5000rpmで調製された米粉は,「カステラ用の米粉」としての発明が未完成であることを主張しているが,上記1.(3)において,甲第1号証について述べたと同様の理由で,未完成とはいえないものである。
また,被請求人は,カステラに適した米粉が,ケーキ,パイ,スコーン,マフィン又はシュークリーム用の米粉として適しているとの技術常識は存在しないことを主張しているが,前述のように,カステラもケーキに相当するものであるし,仮にそうでないとしても,カステラにおいて検討した米粉を,ケーキ,パイ,スコーン,マフィン又はシュークリーム用の米粉として適しているかどうかを研究してみようとすることは,何ら困難ではないものである。そして,甲第2号証の記載からは,そこに記載されるカステラ用の米粉が,ケーキ,パイ,スコーン,マフィン又はシュークリーム用の米粉として適しているか明らかでないとしても,本件特許明細書においても,どのような米粉が,ケーキ,パイ,スコーン,マフィン又はシュークリーム用の米粉として適しているか明らかにしていないのであるから,本件発明2において,進歩性を認めるほどの格別な点は,何ら見出せないというべきものである。
さらに,被請求人は,請求人の進歩性に関する主張が,特許法第131条第2項に反する不適法なものであることを主張しているが,審判請求書において,甲第2号証という証拠に,カステラ用の米粉として,4000rpm及び5000rpmで調製された米粉が記載されていることを具体的に特定しているのであるから,特許法第131条第2項に反するものでないことは明らかである。

第7 当審の判断3 無効理由3について
まず,請求人は,甲第6号証の資料2,3,甲第7号証及び甲第8号証として,測定日として2002年3月13日,2001年3月14日及び2001年11月21日の日付がある粒度分布測定結果を提出し,本件特許の優先日前に,群馬製粉株式会社が販売していた商標「雪わり草」の上新粉の粒度分布が,本件発明1及び2の米粉と同じ粒度分布のものであると主張しているので,本件特許の優先日前に,群馬製粉株式会社が販売していた商標「雪わり草」の上新粉の粒度分布について検討する。
証人,山口慶一の証言によれば,群馬製粉株式会社では,粒度測定装置のソフトウェアを2001年に変更したとのことで,甲第16号証の2に,2001年3月6日に総勘定元帳にソフトウェアが計上されているのと符合する。そして,甲第17号証によれば,粒度測定装置のソフトウェアを2001年に変更したあと,2003年6月までの間に,商標「雪わり草」の上新粉について測定したのは,上記の3回だけのようである。
証人,山口慶一の証言によれば,粒度を測定するのは,顧客からの企画書の依頼や要望があったときで,新製品の依頼のときや,顧客から,いつも使っている粉と違うとか,クレームがついたときに測ることもあるとのことであり,また,証人,山口慶一は,上記3回の測定のときに同席せず,甲第6?8号証のデータが,何を測定したのか知らないとのことである。そうすると,1年あたり1回又は2回しかなされていない上記の3回の測定は,何らかのトラブルで,普通とは異なる粒度分布の米粉が製造され,顧客からのクレームなどによって測定したものである可能性が否定できないものであり,甲第6号証の資料2,3,甲第7号証及び甲第8号証のデータが,本件特許の優先日前に,群馬製粉株式会社が販売していた商標「雪わり草」の上新粉の粒度分布を反映しているか不明であるというべきものである。測定した者も明らかでない,甲第6号証の資料2,3,甲第7号証及び甲第8号証に示されるデータの信憑性については,さておくとしても,請求人の主張及び挙証の事実からは,本件特許の優先日前に,群馬製粉株式会社が販売していた商標「雪わり草」の上新粉の粒度分布が,本件発明1及び2の米粉の粒度分布と同じであると認めることはできない。
したがって,群馬製粉株式会社が販売していた商標「雪わり草」の上新粉の粒度分布が,本件発明1及び2の米粉と同じ粒度分布であるとの前提の請求人の主張によって,本件発明1及び2を無効とすることはできない。

第8 当審の判断4 無効理由4について
本件特許明細書には,段落0052に,「以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。」と記載され,
段落0053に,
「(試験例1)
米粉の粒度分布の測定
表1に示す種々の米粉を、50?270メッシュの標準ふるいを用いてソニックシフター(ATMコーポレーション製)により粒度分布を測定した。」と記載され,
表1として,酵素処理した米粉とともに,群馬製粉米粉,一般市販品上新粉及び株式会社波里米粉の粒度分布が示され,
実施例1,2,4,5,6,7,8,12及び13において,「上新粉(マツモトフーツ製,水分率14%,胴搗き製粉により製造されたもの)」を用いたことが記載されている。
これらの記載から見て,実施例に用いられた米粉について,粒度分布が測定され,その結果が表1に記載されているもので,実施例1,2,4,5,6,7,8,12及び13では,上新粉が用いられているのであるから,これが表1に記載される一般市販品上新粉であることは容易に理解できるものであり,請求人が主張するように,実施例で用いられている米粉の粒度分布が明らかでないものではない。
したがって,請求人の主張する点で,本件特許明細書の記載が,平成14年法律第24号による改正前の特許法第36条第4項第1号及び第6項に規定する要件を満たしていないものとは認められない。

第7 むすび
以上のとおり,請求項1に係る発明についての本件特許は,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものであり,また,請求項2に係る発明についての本件特許は,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人の負担とすべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パン又は菓子用米粉
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン又は菓子用米粉に関する。より詳細には、上新粉等を主成分とする米粉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、発酵パンの主原料として利用されているのは、小麦粉又はライ麦粉であり、小麦パンはふっくら膨らんだ食感が好まれている。小麦粉は、水を加えて練り合わせると、小麦粉中のタンパク質のグリアジンとグルテニンによってガム状の粘弾性を有するグルテンになり、発酵で生じる炭酸ガスを生地中に包蔵する機能が発揮され、発酵パンの容積拡大につながることが知られている。
【0003】
一方、東南アジア諸国では米が伝統的に主食として用いられているが、日本では米の消費量が年々低下しており、自給率の高い米を消費して食糧自給率を上げることが望まれている。また、将来予測される食料不足の問題を解決するため、小麦に比べて単位面積当たりの収量が多く、栄養学的にもすぐれたバランス食品である米を、その用途を拡大したり消費量を増加させることも望まれている。
【0004】
発酵パンの主原料として、米粉を小麦粉の代替として利用する方法が提案されている。しかし、従来から和菓子の材料として用いられている上新粉等の米粉を小麦粉の代替として用いても小麦粉の場合のようには発酵生地が得られず、食味に劣るパンしか得られなかった。そこで、米粉を小麦粉の代替として利用するためには、例えば、ロール製粉機で粗粉砕した後、気流粉砕機で微粉砕して200メッシュの篩を通過する区分を90%以上にした米粉を製造する方法(例えば、特許文献1を参照)、ペクチナーゼを溶解した水溶液に米を浸漬処理した後、脱水、製粉、仮焼する方法(例えば、特許文献2を参照)、あるいは、有機酸水溶液(ペクチナーゼを含んでもよい)に米を浸漬した後、脱水、製粉する方法(例えば、特許文献3を参照)などが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特公平4-73979号公報
【特許文献2】特公平7-100002号公報
【特許文献3】特開2002-153215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記のような米粉を製造するには、特殊な製粉工程による微粉砕技術及び/又はペクチナーゼ等の酵素や有機酸を用いて処理する工程を必要とし、費用がかかる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、特殊な技術や処理を要せず、従来の製粉方法により得られ、従来と同様の製造工程で製造できるとともに外観、内相、食味及び日持ちに優れたパン又は菓子を製造することのできる米粉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく、小麦粉よりも粒子径が大きい故従来不可能であると信じられていた上新粉等の米粉を用いて、配合する原料や発酵条件について鋭意研究したところ、意外にも以下の構成を有する米粉により上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明のパン用米粉は、小麦粉を使用しないものであって、胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉又は高速回転打撃製粉により得られたものであり、粒度が、米粉(酵素処理したものを除く)を100メッシュの篩にかけ、100メッシュの篩を通過した区分を140メッシュの篩と200メッシュの篩に順次かけ、各篩上に残った米粉の重量を測定し、前記米粉100重量%中140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20?40重量%含み、200メッシュを通過した区分が53.12重量%以上であることを特徴とする。また本発明のケーキ、パイ、スコーン、マフィン又はシュークリーム用米粉は、小麦粉を使用しないものであって、胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉又は高速回転打撃製粉により得られたものであり、粒度が、米粉(酵素処理したものを除く)を100メッシュの篩にかけ、100メッシュの篩を通過した区分を140メッシュの篩と200メッシュの篩に順次かけ、各篩上に残った米粉の重量を測定し、前記米粉100重量%中140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20?40重量%含み、200メッシュを通過した区分が53.12重量%以上であることを特徴とする。
【0010】
上記の発明においては、前記米粉は石臼製粉により得られたものであることが好ましく、前記石臼製粉は水挽き製粉であることが好ましい。
【0011】
[作用効果]
本発明の米粉は、従来の製粉方法により製造可能であり、該米粉を使用すると、従来の小麦粉パン又は菓子の製造工程と同様の工程で米粉パン又は菓子を製造することができる。前記米粉に種々の副原材料を配合することにより、様々な種類のパン又は菓子の製造に便利な原料を提供することができる。
【0012】
本発明の米粉を使用したパン又は菓子の製造方法によると、第1発酵工程を大幅に短縮するか省略することにより製造工程の時間が短縮されるばかりでなく、機械耐性がよく、作業性に優れ、既存の設備を利用して小麦粉パン又は菓子と同等以上の外観、内相、食味及び日持ちに優れた米粉パン又は菓子を製造することができる。また、本発明の米粉を使用することにより、発酵工程が周囲の温度に大きく依存して熟練を要する小麦粉の場合と比較して、発酵時間が短縮されるので所要時間が半減するとともに、周囲の温度に影響されにくく、発酵時間を制御するだけで容易に米粉パン又は菓子を製造することができる。
【0013】
本発明の米粉を使用して得られるパン又は菓子は、小麦粉パン又は菓子と同等の食味を呈するとともに原料の米の特徴であるもっちり感やしっとり感もあり、さらに、日持ちがよく、食味も落ちにくいので、流通経路を拡大することができ、米の消費拡大ばかりでなくパン又は菓子全体の消費拡大にもつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のパン又は菓子用米粉は、胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉又は高速回転打撃製粉により得られたものであり、100メッシュの篩にかけ、100メッシュの篩を通過した区分を140メッシュの篩と200メッシュの篩に順次かけ、各篩上に残った米粉の重量を測定し、前記米粉100重量%中140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20?40重量%含み、200メッシュを通過した区分が53.12重量%以上であることを特徴とする。
【0015】
本発明の米粉は、粳米又はもち米の生米を粉砕、粉末化したものである。粳米の種類としてはジャポニカ米、インディカ米、ジャバニカ米等特に制限されるものではない。もち米の種類も、特に制限されるものではない。粉砕する前の生米は、精白米、玄米、屑米、古米など特に制限されるものではない。
【0016】
本発明の米粉は、胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉、高速回転打撃製粉等の従来からの製粉方法により得られたものである。前記製粉方法は、玄米そのもの又は玄米を精米した後、洗米し、又は洗米せずに、各製粉方法に応じた製粉装置を用いて粉砕し、篩にかけて得られる。米又は米粉の乾燥は、製粉方法に応じて粉砕前又は粉砕後に行われる。洗米工程を省略した製粉方法の場合は、米粉の乾燥工程も省略することができる。
【0017】
製粉装置としては、例えば胴搗き製粉の場合は杵やスタンプミル、ロール製粉の場合はロール製粉機、石臼製粉の場合は各種石臼、気流粉砕製粉の場合は気流粉砕機、高速回転打撃製粉の場合はハンマーミル又はピンミルがあげられる。石臼製粉は、各種石臼を用いて乾式製粉又は水挽き製粉(湿式製粉)を行う。高速回転打撃製粉は、ハンマーミル又はピンミルを用いて乾式製粉又は湿式製粉を行う。
【0018】
また、各種製粉方法で粉砕した米粉は、篩にかけて米粉の粒度を整えることが好ましい。米粉パンの出来上がりを良好にするためには、80?100メッシュの篩を通過させた米粉を用いることが好ましい。
【0019】
このようにして得られる米粉としては、従来から和菓子の原料として用いられている上用粉もしくは上新粉又は白玉粉もしくはぎゅうひ粉と称されるものが例示されるが、前記製粉方法により得られる米粉であれば特に制限されない。
【0020】
発明の米粉の粒度は、140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20?40重量%含む。粒度は、140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して25?40重量%がより好ましく、30?35重量%がさらに好ましい。米粉の粒度が前記のようであれば、パン又は菓子の生地を作製する際の作業性に優れ、得られるパン又は菓子の外観及び内相も良好である。
【0021】
前記粒度は、一定重量の米粉を100メッシュの篩にかけ、100メッシュの篩を通過した区分を140メッシュの篩と200メッシュの篩に順次かけ、各篩上に残った米粉の重量を測定し、その合計により求めた値である。なお、本発明で用いる米粉は、良好な発酵が行われるようにするには100メッシュの篩上に残る区分が10重量%以下となるように製粉することが望ましい。
【0022】
前記米粉の水分率は、原料の米の種類や製粉方法により異なるが、通常7?15%であり、11?13.5%が好ましい。水分率は、加熱乾燥法により米粉を常圧下100℃で乾燥させ、恒量に達した後乾燥前後の重量を測定し、下記式:(乾燥前の重量-乾燥後の重量)÷乾燥前の重量×100により求める。水分率が前記範囲であれば米粉の固まりが生じにくく、本発明の生地を作製する際の作業性に優れる。
【0023】
本発明の米粉は、以下のように使用することができる。
(1)本発明の米粉80?85重量部とグルテン20?15重量部とで穀粉100重量部とし、米粉とグルテンのなじみをよくするマルトース1?30重量部を含むパン又は菓子用米粉組成物とする。
【0024】
上記米粉組成物は、さらに白糠1?30重量部を含むものであることが好ましく、マルトースを除く糖類、食塩、ガム質、乳成分、卵成分、油脂、無機塩類及びビタミン類からなる群より選ばれる1種又は2種以上をさらに配合することが好ましい。
【0025】
(2)本発明の米粉80?85重量部とグルテン20?15重量部とで穀粉100重量部とし、米粉とグルテンのなじみをよくするマルトース1?30重量部、及び少なくとも水及び酵母と任意に油脂を混合して捏ね上げた後、第1発酵工程を無し、又は第1発酵工程の所要時間を30分以下としてパン又は菓子用の生地を製造する。
【0026】
本発明の米粉の用途であるパン又は菓子用の生地の製造方法における生地は、酵母を使用しない菓子用の生地であり、米粉やグルテンに液体を加え、所望によりその他の原料を加え、混合することにより得られる。加える液体は、水、牛乳、卵などがあげられる。その他の原料は、米粉組成物に記載したものと同様である。混合条件は、製造するパン又は菓子の種類に応じて当業者であれば適宜設定することができる。目的に応じて、適宜生地をねかせてもよい。
【0027】
(3)本発明の米粉80?85重量部とグルテン20?15重量部とで穀粉100重量部とし、米粉とグルテンのなじみをよくするマルトース1?30重量部、及び少なくとも水及び酵母と任意に油脂とを混合して捏ね上げた後、第1発酵工程を無し、又は第1発酵工程の所要時間を30分以下として生地を製造し、該生地を焼成してパン又は菓子を製造する。
【0028】
上記製造方法においては、製造した生地を成型する工程をさらに含むことが好ましい。また成型した生地を最終発酵させることが好ましい。油脂を配合する場合は、水及び酵母と同時に混合して捏ね上げることが重要である。同時に混合して捏ね上げることにより、水分が米粉の粒子内に入りにくくなり、生地が軽く仕上がる。
【0029】
加える水は特に制限されるものではなく、牛乳などの液体であってもよい。加水量は、水分率が14%の米粉を用いた場合、穀粉100重量部に対して75?90重量部である。加水量が75重量部未満であると製造したパン又は菓子が粉っぽくなり、90重量部を越えると生地が粥状になり、作業性、機械適性に劣るようになる。なお、生地に牛乳や卵等の液体成分を混合する場合は、前記加水量にこれらの液体成分中の水分も加える。
【0030】
上記製造方法においては、上記穀粉100重量部に対してさらに白糠を加えることができ、該白糠を加える場合、白糠10重量部当たり6?7重量部の水を追加する。
【0031】
酵母は、パンや菓子の製造に通常用いられているサッカロミセス・セレビシエのパン酵母が制限なく用いられ、生酵母又は乾燥酵母があげられる。生酵母の添加量は、酵母の種類により適宜設定することができる。乾燥酵母の添加量は、穀粉100重量部に対して通常0.5?2重量部程度である。その他の原料としては、上記米粉組成物に配合する副原料があげられる。
【0032】
上記の本発明の米粉の用途である米粉組成物、パン又は菓子用の生地の製造方法並びにパン又は菓子の製造方法において使用するマルトースは、米粉とグルテンのなじみをよくするために配合されるものであり、マルトースの割合は、米粉、グルテンを含む穀粉100重量部に対して1?30重量部であり、1.5?3重量部が好ましい。
【0033】
本発明の米粉を使用してパン又は菓子を製造する場合には、その種類によって必要に応じ、マルトースを除く糖類、食塩、ガム質、乳成分、卵成分、油脂、無機塩類及びビタミン類からなる群より選ばれる1種又は2種以上をさらに配合することが好ましい。
【0034】
糖類としては、ぶどう糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖、又はソルビト-ル、マルチトール、パラチニット、水添水飴などの糖アルコールがあげられる。食塩としては、塩化ナトリウムが99%以上の精製塩、又は天日塩もしくは粗塩等の粗製塩が制限なく用いられる。
【0035】
ガム質としては、米粉、グルテン、白糠、その他の原料のなじみをよくする作用を有するものであれば特に制限されないが、アルギン酸、キサンタンガム、デキストリン、セルロース等があげられる。乳成分としては粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等があげられる。
【0036】
卵成分としては、卵黄、卵白、全卵その他の卵に由来する成分があげられる。油脂としては、バター、マーガリン、ショートニング、ラード、オリーブ油等があげられる。
【0037】
無機塩類としては、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、焼成カルシウム、アンモニウムミョウバン等があげられる。
【0038】
ビタミン類としては、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンD、ビタミンE、カロチン等があげられる。
【0039】
また、本発明の米粉の用途である米粉組成物並びにパン又は菓子の製造方法においては、各種の食品又は食品添加物を配合してもよく、例えば、植物の果実、種子もしくは枝葉、又はイーストフード、乳化剤などがあげられる。
【0040】
パン又は菓子用の生地の製造における混合条件は、市販のミキサーを用い、製造するパン又は菓子の種類に応じて当業者であれば適宜設定することができる。同様に、捏ね上げ温度も当業者であれば適宜設定することができ、通常20?30℃であるが、25?30℃が好ましい。
【0041】
本発明の米粉の用途であるパン又は菓子の製造方法においては、第1発酵工程は無しでも可能であり、第1発酵工程を設ける場合は30分以下が好ましい。生酵母の場合は、フロアータイムは0分が好ましく、乾燥酵母の場合は、前記捏ね上げ温度と同温度で30分程度が好ましい。油脂を使用しないで生地を製造する場合は、乾燥酵母を用いることが好ましい。
【0042】
生地の成型工程においては、得られた生地を所望の重量に分割し、分割した生地を、目的のパン又は菓子の形状に応じて成型する。ここで、成型前にベンチタイムを15?25分設けることが好ましい。
【0043】
成型した生地は、最終発酵をする工程に供せられる。本発明では第1発酵工程は無し、又は第1発酵工程が30分以下であるので、最終発酵工程(ホイロタイム)を十分取る必要がある。ホイロタイムは、当業者であれば適宜設定することができるが、温度35?38℃で湿度75?80%の場合、通常30分以上、好ましくは40?60分である。
【0044】
本発明の米粉の用途であるパン又は菓子の別の製造方法においては、発酵生地は、米粉組成物に水及び酵母を加え、所望によりその他の原料を加え、混合し、所定の時間発酵させることにより得られる。
【0045】
本発明の米粉の用途であるパン又は菓子用の生地の製造方法における生地は、捏ね上げ後成型前の生地、成型した生地、成型した生地を最終発酵させた生地のいずれの段階の生地をも含む。該生地は、続けて下記のパン又は菓子の製造方法に供してもよく、一旦冷蔵又は冷凍保存してもよい。冷蔵又は冷凍保存した生地は、そのまま、又は解凍した後、下記調理工程に供することができる。
【0046】
本発明の米粉の用途であるパン又は菓子の製造方法においては、米粉とグルテンを含む米粉組成物と少なくとも水及び酵母と任意に油脂とを混合して捏ね上げた後、実質的に第1発酵工程を経ずに生地を製造する工程、前記生地を成型する工程、成型した生地を最終発酵する工程ならびに最終発酵した生地を焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱又は加圧加熱により調理する工程を含む。
【0047】
生地を調理する方法は、焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱又は加圧加熱などの公知の方法が適宜採用できる。焼成方法としては、例えば、上面及び/又は下面から加熱するオーブン、又は、前もって加熱された炉面などに直接接触させて加熱するなどの方法を用いることができる。フライ方法としては、例えば、食用油を使って加熱する調理法、火炎上で加熱することにより蒸気を発生させて加熱する蒸し器、又は、ボイラーを用いて予め作られた蒸気を容器内に送り込んで加熱するなどの方法を用いることができる。マイクロ波による方法としては、例えば、マイクロ波を発生、照射することのできる機能を備えた機器、装置を用いて加熱するなどの方法を用いることができる。加圧加熱方法としては、例えば、高温高圧条件で加熱することのできる圧力鍋、装置を用いて加圧加熱する方法を用いることができる。
【0048】
本発明の米粉の用途であるパン又は菓子の製造方法においては、ベンチタイム(15?25分)も含めた全製造工程の所要時間が約60?150分で外観、内相、食味に優れた高品質の米粉パンに仕上げることができる。これは、小麦粉を用いたパン製造の所要時間の半分以下の時間であり、本発明の製造方法は、作業性の点からも優れた方法である。
【0049】
本発明の米粉の用途であるパン又は菓子の製造方法においては、発酵生地又は生地を成型する際に、アン、カレー、各種惣菜などの具材料を包み込んでアンパン、カレーパン、惣菜パンや中華饅頭等に仕上げることも有利に実施できる。あるいは、生地を加熱した後に生クリーム、カスタードクリーム等を加えることにより、ケーキ、シュークリーム等に仕上げることも可能である。
【0050】
本発明のパン又は菓子用の米粉を使用して得られるものは、食パン、コッペパン、バターロール、揚げパン又は菓子パン、フランスパン、ドイツパン、ベーグル、デニッシュパン、中華饅頭、イーストドーナツ、プレッツェル、ピザもしくはナン等の発酵により得られるパン又は菓子、又はケーキ、パイ、スコーン、マフィンもしくはシュークリームなどの発酵せずに得られるパン又は菓子など多種多様に及ぶが、本発明の米粉を用いて得られるものであればこれらに限定されるものではない。
【0051】
このようにして得られた米粉パン又は菓子は、日持ちがよく、冷蔵又は冷凍保存することも容易であり、必要に応じて加温、解凍して喫食し、その食味を楽しむことも有利に実施できる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0053】
(試験例1)
米粉の粒度分布の測定
表1に示す種々の米粉を、50?270メッシュの標準ふるいを用いてソニックシフター(ATMコーポレーション製)により粒度分布を測定した。
【0054】
【表1】

表1より、群馬製粉米粉、株式会社波里の米粉は、140メッシュオンと200メッシュオンの値の合計値が約30?35重量%であり、群馬製粉米粉は実施例9において、また株式会社波里の米粉は、実施例10で使用されている。
【0055】
(実施例1)
米粉コッペパンの製造
上新粉((株)マツモトフーツ製、水分率14%、胴搗き製粉により製造されたもの)85重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品製、商品名「A-グルGX」)15重量部、マルトース2.5重量部、砂糖6重量部、食塩2重量部、脱脂粉乳3重量部及びイーストフード0.1重量部をミキサーを用いて混合し、プレミックス粉を調製した。前記プレミックス粉に、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)3重量部及び水88重量部をミキサーを用い、26℃で、低速5分、中速3分で混捏し、一時停止してショートニング6重量部を加えた後、更に中速で3分間混捏し、生地を作製した。
【0056】
次いで、これをフロアータイムとして40分間発酵させた。生地は80gに分割して丸めを行い、15分間のベンチタイムを取った後、成型を行った。成型した生地の一部は、-20℃で冷凍保存した。
【0057】
成型した生地を38℃、湿度80%のホイロにて40分間の発酵を行った。発酵終了後、上火230℃、下火200℃のオーブンにて14分間焼成し、米粉コッペパンを得た。
【0058】
(比較例1)
小麦粉コッペパンの製造
実施例1において、上新粉85重量部、小麦グルテン15重量部及びマルトース2.5重量部の代わりに小麦粉102.5重量部用い、水を68重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、生地を作製した。
【0059】
次いで、これをフロアータイムとして120分間発酵させた。生地は80gに分割して丸めを行い、20分間のベンチタイムを取った後、成型を行った。成型した生地の一部は、-20℃で冷凍保存した。
【0060】
成型した生地を38℃、湿度80%のホイロにて50分間の発酵を行った。発酵終了後、上火230℃、下火200℃のオーブンにて14分間焼成し、小麦粉コッペパンを得た。
【0061】
(評価試験1)
実施例1で得られた米粉コッペパン及び比較例1で得られた小麦粉コッペパンの外観、内相及び食味について7人のパネラーによる官能試験を行い、以下の項目について評価した。
評価項目:(1)外観については、へこみ、膨らみ、色調
(2)内相については、切り口のきめ、色調、触感
(3)食味については、味、香を中心とした風味、口当たりを中心とした食感。
米粉コッペパンは、膨らみ、色調が小麦粉コッペパンと同等に良好である上、小麦粉コッペパンに見られるような焼成後のへこみがなかった。米粉コッペパンの内相は、きめ、色調及び触感も程良く、小麦粉コッペパンと遜色のないものであった。米粉コッペパンの食味は、口溶けがよく、しっとりとして米粉のほのかな香りもあり、小麦粉コッペパンと同等かそれ以上の評価が得られた。
【0062】
(評価試験2)
コッペパンの冷凍による食味の影響
実施例1で得られた米粉コッペパン生地及び比較例1で得られた小麦粉コッペパン生地を-20℃で冷凍保存し、30日後に室温で解凍した。実施例1又は比較例1と同様にして、ホイロタイムをとり、オーブンにて焼成し、米粉コッペパン又は小麦粉コッペパンを得た。得られたコッペパンの食味について7名のパネラーにより官能試験を行ったところ、米粉コッ・BR>Yパンは冷凍後もしっとりとして食味がほとんど変化しなかったのに対し、小麦粉コッペパンはぱさつき、冷凍による食味の低下が感じられた。
【0063】
(実施例2)
白糠含有米粉コッペパンの製造
上新粉((株)マツモトフーツ製、水分率14%、胴搗き製粉により製造されたもの)85重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品製、商品名「A-グルGX」)15重量部、マルトース2.5重量部、白糠(上白粉)10重量部、デキストリン2.2重量部、砂糖6.6重量部、食塩2.2重量部、脱脂粉乳3.3重量部及びイーストフード0.11重量部をミキサーを用いて混合し、プレミックス粉を調製した。前記プレミックス粉に、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)3.3重量部及び水94重量部をミキサーを用い、26℃で、低速5分、中速3分で混捏し、一時停止してショートニング6.6重量部を加えた後、更に中速で3分間混捏し、生地を作製した。
【0064】
前記生地を、実施例1と同様に発酵、成型及び焼成を行い、白糠含有米粉コッペパンを得た。
【0065】
本実施例で調製した生地は付着性なく、操作性、機械適性良好で、小麦粉を使用した場合と比べてフロアータイム工程及びホイロ工程での発酵時間は半分程度に短縮され、発酵時の生地の膨張は同じであり、作業性は良好であった。また、できあがったコッペパンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であって、断面のきめも程良く、食味も良かった。また、本実施例のコッペパンは、実施例1のコッペパンと比べて白糠に由来する甘味の食味も感じた。更に、1週間冷蔵庫内(5℃)で放置した後のパンの食感も殆ど変化がなく、硬化によるパサツキも見られず保存性もよかった。
【0066】
【0067】
【0068】
(実施例4)
米粉アンパンの製造
上新粉((株)マツモトフーツ製、水分率14%、胴搗き製粉により製造されたもの)84重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品製、商品名「A-グルGX」)16重量部、マルトース2.5重量部、白糠(上白粉)10重量部、デキストリン2.2重量部、砂糖22重量部、食塩1.1重量部及び脱脂粉乳3.3重量部をミキサーを用いて混合し、プレミックス粉を調製した。前記プレミックス粉に、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)4.4重量部、全卵16.5重量部及び水77.5重量部をミキサーを用い、26℃で、低速5分、中速3分で混捏し、一時停止してマーガリン11重量部を加えた後、更に中速で3分間混捏し、生地を作製した。
【0069】
次いで、これをフロアータイムとして50分間発酵させた。生地は40gに分割して丸めを行い、20分間のベンチタイムを取った後、アン種を入れて成型を行い、38℃、湿度80%のホイロにて50分間の発酵を行った。発酵終了後、上火210℃、下火200℃のオーブンにて8分間焼成し、米粉アンパンを調製した。
【0070】
本実施例で調製した生地は付着性なく、操作性、機械適性良好で、小麦粉を使用した場合と比べてフロアータイム工程及びホイロ工程での発酵時間は半分程度に短縮され、発酵時の生地の膨張は同じであり、作業性は良好であった。また、できあがったアンパンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であって、断面のきめも程良く、食味も良かった。更に、1週間冷蔵庫内(5℃)で放置した後のパンの食感も殆ど変化がなく、硬化によるパサツキも見られず保存性もよかった。
【0071】
(実施例5)
米粉食パンの製造
上新粉((株)マツモトフーツ製、水分率14%、胴搗き製粉により製造されたもの)85重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品製、商品名「A-グルGX」)15重量部、マルトース2.5重量部、白糠(上白粉)10重量部、デキストリン2.2重量部、砂糖6.6重量部、食塩2.2重量部、脱脂粉乳3.3重量部及びイーストフード0.11重量部をミキサーを用いて混合し、プレミックス粉を調製した。前記プレミックス粉に、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)3.3重量部及び水94重量部をミキサーを用い、26℃で、低速5分、中速3分で混捏し、一時停止して無塩バター6.6重量部を加えた後、更に中速で4分間混捏し、生地を作製した。
【0072】
次いで、これをフロアータイムとして40分間発酵させた。生地は分割比容積3.7に分割して丸めを行い、15分間のベンチタイムを取った後、型下3.5cmの容器に入れて山食パンに成型を行い、38℃、湿度80%のホイロにて40分間の発酵を行った。発酵終了後、上火210℃、下火240℃のオーブンにて45分間焼成し、米粉山食パンを調製した。
【0073】
本実施例で調製した生地は付着性なく、操作性、機械適性が良好で、小麦粉を使用した場合と比べてフロアータイム工程及びホイロ工程での発酵時間は半分程度に短縮され、発酵時の生地の膨張は同じであり、作業性は良好であった。また、できあがった山食パンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であって、断面のきめも程良く、食味も良かった。更に、1週間冷蔵庫内(5℃)で放置した後のパンの食感も殆ど変化がなく、硬化によるパサツキも見られず保存性もよかった。
【0074】
(実施例6)
米粉バターロールの製造
上新粉((株)マツモトフーツ製、水分率14%、胴搗き製粉により製造されたもの)85重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品製、商品名「A-グルGX」)15重量部、マルトース2.5重量部、白糠(上白粉)10重量部、デキストリン2.4重量部、砂糖14.4重量部、食塩2.04重量部、脱脂粉乳3.3重量部及びイーストフード0.11重量部をミキサーを用いて混合し、プレミックス粉を調製した。前記プレミックス粉に、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)3.6重量部、全卵18重量部、牛乳24重量部及び水46重量部をミキサーを用い、26℃で、低速5分、中速4分で混捏し、一時停止して無塩バター14.4重量部を加えた後、更に中速で4分間混捏し、生地を作製した。
【0075】
次いで、これをフロアータイムとして40分間発酵させた。生地は40gに分割して丸めを行い、15分間のベンチタイムを取った後、ロールパンに成型を行い、38℃、湿度80%のホイロにて40分間の発酵を行った。発酵終了後、上火220℃、下火200℃のオーブンにて10分間焼成し、ロールパンを調製した。
【0076】
本実施例で調製した生地は付着性なく、操作性、機械適性良好で、小麦粉を使用した場合と比べてフロアータイム工程及びホイロ工程での発酵時間は半分程度に短縮され、発酵時の生地の膨張は同じであり、作業性は良好であった。また、できあがったロールパンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であって、断面のきめも程良く、食味も良かった。更に、1週間冷蔵庫内(5℃)で放置した後のパンの食感も殆ど変化がなく、硬化によるパサツキも見られず保存性もよかった。
【0077】
(実施例7)
米粉デニッシュパンの製造
上新粉((株)マツモトフーツ製、水分率14%、胴搗き製粉により製造されたもの)85重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品製、商品名「A-グルGX」)15重量部、マルトース2.5重量部、白糠(上白粉)10重量部、デキストリン2.4重量部、砂糖12重量部、食塩2.5重量部、脱脂粉乳4.8重量部及びイーストフード0.11重量部をミキサーを用いて混合し、プレミックス粉を調製した。前記プレミックス粉に、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)4.8重量部、及び水94重量部をミキサーを用い、26℃で、低速5分、中速4分で混捏し、一時停止して無塩バター6重量部を加えた後、更に中速で2分間混捏し、生地を作製した。
【0078】
次いで、これをフロアータイムとして20分間発酵させた。生地は238gに分割してシート状にし、-10℃で30分間ねかせた。次いで、シートの三折りを2回行い、さらに-10℃で30分間ねかせ、三折りをさらに1回行った。次いで、生地を厚さ3mmにのし、細三角形に切って成型を行い、30℃、加湿無しのホイロにて40分間の発酵を行った。発酵終了後、上火230℃、下火200℃のオーブンにて13分間焼成し、米粉デニッシュの一種米粉クロワッサンを調製した。
【0079】
クロワッサン生地製造時の生地は付着性なく、操作性、機械適性良好で、小麦粉を使用した場合と比べて製造時間は半分程度に短縮され、発酵時の生地の膨張も小麦粉を使用した場合と同じであり、作業性は良好であった。また、できあがったクロワッサンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であって、断面のきめも程良く、食味も良かった。更に、1週間冷蔵庫内(5℃)で放置した後の米粉クロワッサンの食感も殆ど変化がなく、硬化によるパサツキも見られず保存性も良かった。
【0080】
(実施例8)
米粉カレーパンの製造
上新粉((株)マツモトフーツ製、水分率14%、胴搗き製粉により製造されたもの)85重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品製、商品名「A-グルGX」)15重量部、マルトース2.5重量部、白糠(上白粉)10重量部、デキストリン2.4重量部、砂糖6重量部、食塩2.4重量部、脱脂粉乳3.6重量部、ベーキングパウダー2.16重量部及びイーストフード0.11重量部をミキサーを用いて混合し、プレミックス粉を調製した。前記プレミックス粉に、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)3.6重量部及び水94重量部をミキサーを用い、26℃で、低速5分、中速3分で混捏し、一時停止してショートニング6.6重量部を加えた後、更に中速で2分間混捏し、生地を作製した。
【0081】
次いで、これをフロアータイムとして40分間発酵させた。生地は40gに分割して丸めを行い、15分間のベンチタイムを取った後、カレー種を入れて成型を行い、38℃、湿度75%のホイロにて40分間の発酵を行った。発酵終了後、上火170℃、下火200℃のオーブンにて8分間焼成した後、170℃の油で揚げ、米粉カレーパンを調製した。
【0082】
本実施例で調製した生地は付着性なく、操作性、機械適性良好で、小麦粉を使用した場合と比べてフロアータイム工程及びホイロ工程での発酵時間は半分程度に短縮され、発酵時の生地の膨張は同じであり、作業性は良好であった。また、できあがった米粉カレーパンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であって、食味も良かった。
【0083】
(実施例9)
米粉コッペパンの製造
実施例1において、(株)マツモトフーツ製上新粉の代わりに群馬製粉製の米粉(胴搗き製粉により製造し、100メッシュの篩を通過したもの、140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分との合計が約30重量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして米粉コッペパンを得た。
【0084】
(実施例10)
米粉コッペパンの製造
実施例1において、(株)マツモトフーツ製上新粉の代わりに株式会社波里製の米粉(生米を気流粉砕したもの、140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分との合計が約32重量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして米粉コッペパンを得た。
【0085】
【0086】
(評価試験3)
実施例1、9、及び10で得られた米粉コッペパンの外観、内相及び食味について7人のパネラーによる官能試験を行い、以下の項目について評価した。
評価項目:(1)外観については、へこみ、膨らみ、色調
(2)内相については、切り口のきめ、色調、触感
(3)食味については、味、香を中心とした風味、口当たりを中心とした食感。
前記3種類の米粉を原料にしたコッペパンは、外観、内相及び食感は同等であり、焼成後のへこみがなく、パンの内相は、きめ、色調及び触感も程良く、食味も、口溶けがよく、しっとりとして米粉のほのかな香りが感じられた。
【0087】
(実施例12)
米粉コッペパンの製造
上新粉((株)マツモトフーツ製、水分率14%、胴搗き製粉により製造されたもの)85重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品製、商品名「A-グルGX」)15重量部、マルトース2.5重量部、砂糖6重量部、食塩2重量部、脱脂粉乳3重量部及びイーストフード0.1重量部をミキサーを用いて混合し、プレミックス粉を調製した。前記プレミックス粉に、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)3重量部、水88重量部及びショートニング6重量部をミキサーを用い、26℃で、低速6分で混捏し、更に高速で4分間混捏し、生地を作製した。
【0088】
次いで、フロアータイムを取らずに前記生地を80gに分割して丸めを行い、15分間のベンチタイムを取った後、成型を行った。成型した生地の一部は、-20℃で冷凍保存した。
【0089】
成型した生地を38℃、湿度80%のホイロにて40分間の発酵を行った。発酵終了後、上火230℃、下火200℃のオーブンにて14分間焼成し、米粉コッペパンを得た。
【0090】
(比較例2)
小麦粉コッペパンの製造
実施例12において、上新粉85重量部、小麦グルテン15重量部及びマルトース2.5重量部の代わりに小麦粉102.5重量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、プレミックス粉を調製した。前記プレミックス粉に、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)3重量部及び水68重量部をミキサーを用い、26℃で、低速5分、中速3分で混捏し、一時停止してショートニング6重量部を加えた後、更に中速で3分間混捏し、生地を作製した。
【0091】
次いで、これをフロアータイムとして120分間発酵させた。生地は80gに分割して丸めを行い、20分間のベンチタイムを取った後、成型を行った。成型した生地の一部は、-20℃で冷凍保存した。
【0092】
成型した生地を38℃、湿度80%のホイロにて50分間の発酵を行った。発酵終了後、上火230℃、下火200℃のオーブンにて14分間焼成し、小麦粉コッペパンを得た。
【0093】
(評価試験4)
実施例12で得られた米粉コッペパン及び比較例2で得られた小麦粉コッペパンの外観、内相及び食味について7人のパネラーによる官能試験を行い、以下の項目について評価した。
評価項目:(1)外観については、へこみ、膨らみ、色調
(2)内相については、切り口のきめ、色調、触感
(3)食味については、味、香を中心とした風味、口当たりを中心とした食感。
米粉コッペパンは、膨らみ、色調が小麦粉コッペパンと同等に良好である上、小麦粉コッペパンに見られるような焼成後のへこみがなかった。米粉コッペパンの内相は、きめ、色調及び触感も程良く、小麦粉コッペパンと遜色のないものであった。米粉コッペパンの食味は、口溶けがよく、しっとりとして米粉のほのかな香りもあり、小麦粉コッペパンと同等かそれ以上の評価が得られた。
【0094】
(評価試験5)
コッペパンの冷凍による食味の影響
実施例12で得られた米粉コッペパン生地及び比較例2で得られた小麦粉コッペパン生地を-20℃で冷凍保存し、30日後に室温で解凍した。実施例12又は比較例2と同様にして、ホイロタイムをとり、オーブンにて焼成し、米粉コッペパン又は小麦粉コッペパンを得た。得られたコッペパンの食味について7名のパネラーにより官能試験を行ったところ、米粉コッペパンは冷凍後もしっとりとして食味がほとんど変化しなかったのに対し、小麦粉コッペパンはぱさつき、冷凍による食味の低下が感じられた。
【0095】
(実施例13)
米粉食パンの製造
上新粉((株)マツモトフーツ製、水分率14%、胴搗き製粉により製造されたもの)85重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品製、商品名「A-グルGX」)15重量部、マルトース2.5重量部、白糠(上白粉)10重量部、デキストリン2.2重量部、砂糖6.6重量部、食塩2.2重量部、脱脂粉乳3.3重量部及びイーストフード0.11重量部をミキサーを用いて混合し、プレミックス粉を調製した。前記プレミックス粉に、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)3.3重量部、水94重量部及び無塩バター6.6重量部をミキサーを用い、26℃で、低速で6分、更に高速で4分間混捏し、生地を作製した。
【0096】
次いで、前記生地をフロアータイムを取らずに分割比容積3.7に分割して丸めを行い、15分間のベンチタイムを取った後、型下3.5cmの容器に入れて山食パンに成型を行い、38℃、湿度80%のホイロにて40分間の発酵を行った。発酵終了後、上火210℃、下火240℃のオーブンにて45分間焼成し、米粉山食パンを調製した。
【0097】
本実施例で調製した生地は付着性なく、操作性、機械適性が良好で、小麦粉を使用した場合と比べてフロアータイム工程を省略でき、ホイロ工程での発酵時間は半分程度に短縮された。発酵時の生地の膨張は同じであり、作業性は良好であった。また、できあがった山食パンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調が良好であり、裁断(スライス)も良好であった。断面のきめも程良く、食味も良かった。更に、1週間冷蔵庫内(5℃)で放置した後のパンの食感も殆ど変化がなく、硬化によるパサツキも見られず保存性もよかった。
【0098】
(試験例2)
米粉の粒度分布の測定
本発明に用いられる種々の製粉方法により、米粉を調製した。得られた種々の米粉を、50?230メッシュの標準ふるいを用いてソニックシフター(ATMコーポレーション製)により粒度分布を測定した。本発明の米粉パン及び菓子の製造方法に用いられる米粉の標準的な粒度分布は、表2に示す通りである。
【0099】
【表2】

次に、本発明において好適に用いられる米粉の粒度分布を調べた。まず、二種類の米粉を準備した。一方は、粳米を搗精した白米を洗米して乾燥させた後、胴搗き製粉により粉砕し、80メッシュの篩を通過させて米粉を調製した(水分率12.8%)。他方は、粳米を搗精した白米を洗米せずにハンマーミル製粉により粉砕し、100メッシュの篩を通過させて米粉を調製した(水分率12.6%)。
【0100】
得られた前記2種類の米粉を、50?270メッシュの標準ふるいを用いてソニックシフター(ATMコーポレーション製)により粒度分布を測定した。結果を表3に示す。
【0101】
【表3】

(実施例14)
篩を通過させた米粉を用いたコッペパンの製造
上新粉(胴搗き製粉により製造後、80メッシュの篩を通過させたもの)85重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品製、商品名「A-グルGX」)15重量部、マルトース2.5重量部、砂糖6重量部、食塩2重量部、脱脂粉乳3重量部及びイーストフード0.1重量部をミキサーを用いて混合し、プレミックス粉を調製した。前記プレミックス粉に、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)3重量部、水88重量部及びショートニング6重量部をミキサーを用い、26℃で、低速6分で混捏し、更に高速で4分間混捏し、生地を作製した。
【0102】
次いで、フロアータイムを取らずに前記生地を80gに分割して丸めを行い、15分間のベンチタイムを取った後、成型を行った。
【0103】
成型した生地を38℃、湿度80%のホイロにて40分間の発酵を行った。発酵終了後、上火230℃、下火200℃のオーブンにて14分間焼成し、米粉コッペパンを得た。
【0104】
(比較例3)
従来技術による米粉を用いたコッペパンの製造
特開2002-95404号公報に記載の方法に準じて、米粉コッペパンを製造した。上新粉(胴搗き製粉により製造後、70メッシュの篩を通過させたもの、通過後の米粉は粒径が180?200μmに主要分布を示す)86重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品製、商品名「A-グルGX」)12重量部、増粘剤としてデキストリン2重量部、砂糖9重量部、食塩5重量部、脱脂粉乳5.5重量部、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)3.5重量部及び水76重量部を混合してパン生地を作製した。
【0105】
次いで、前記生地を80gに分割して丸めを行い、成型を行った。成型した生地を28℃、湿度72%のホイロにて55分間の発酵を行った。発酵終了後、上火230℃、下火200℃のオーブンにて14分間焼成し、米粉コッペパンを得た。
【0106】
(評価試験6)
実施例14で得られた米粉コッペパン及び比較例3で得られた米粉コッペパンの外観、内相及び食味について7人のパネラーによる官能試験を行い、以下の項目について評価した。
評価項目:(1)外観については、へこみ、膨らみ、色調
(2)内相については、切り口のきめ、色調、触感
(3)食味については、味、香を中心とした風味、口当たりを中心とした食感。
実施例14の米粉コッペパンは、膨らみ、色調が比較例2の小麦粉コッペパンと同等に良好であった。実施例14の米粉コッペパンの内相は、きめ、色調及び触感も程良く、小麦粉コッペパンと遜色のないものであった。実施例14の米粉コッペパンの食味は、口溶けがよく、しっとりとして米粉のほのかな香りもあり、小麦粉コッペパンと同等かそれ以上の評価が得られた。
【0107】
一方、比較例3の米粉コッペパンは、膨らみが実施例14の米粉パンの半分程度であり、色調が濃いきつね色であり、外観は実施例14の米粉コッペパンや比較例2の小麦粉コッペパンとは大きく異なるものであった。比較例3の米粉パンの内相は、触感が固く発酵が良好に進んでいなかったように見受けられた。さらに、その食味も固く、口溶けが悪く、塩分を強く感じた。
【0108】
【0109】
【0110】
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉又は高速回転打撃製粉により得られたものであり、粒度が、米粉(酵素処理したものを除く)を100メッシュの篩にかけ、100メッシュの篩を通過した区分を140メッシュの篩と200メッシュの篩に順次かけ、各篩上に残った米粉の重量を測定し、前記米粉100重量%中140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20?40重量%含み、200メッシュを通過した区分が53.12重量%以上である、小麦粉を使用しないパン用の米粉。
【請求項2】
胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉又は高速回転打撃製粉により得られたものであり、粒度が、米粉(酵素処理したものを除く)を100メッシュの篩にかけ、100メッシュの篩を通過した区分を140メッシュの篩と200メッシュの篩に順次かけ、各篩上に残った米粉の重量を測定し、前記米粉100重量%中140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20?40重量%含み、200メッシュを通過した区分が53.12重量%以上である、小麦粉を使用しないケーキ、パイ、スコーン、マフィン又はシュークリーム用の米粉。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2010-08-12 
結審通知日 2010-08-16 
審決日 2010-08-27 
出願番号 特願2008-283623(P2008-283623)
審決分類 P 1 113・ 536- ZA (A21D)
P 1 113・ 537- ZA (A21D)
P 1 113・ 112- ZA (A21D)
P 1 113・ 113- ZA (A21D)
P 1 113・ 121- ZA (A21D)
P 1 113・ 111- ZA (A21D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清水 晋治  
特許庁審判長 平田 和男
特許庁審判官 鵜飼 健
田中 耕一郎
登録日 2009-06-12 
登録番号 特許第4324237号(P4324237)
発明の名称 パン又は菓子用米粉  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
代理人 特許業務法人ユニアス国際特許事務所  
代理人 亀川 義示  
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