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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41D
管理番号 1240140
審判番号 不服2010-21656  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-27 
確定日 2011-07-13 
事件の表示 特願2004-551163「生物剤に対する身体の部分保護用衣類」拒絶査定不服審判事件〔平成16年5月27日国際公開、WO2004/043544、平成18年3月2日国内公表、特表2006-507416〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年11月11日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理、2002年11月14日、(IT)イタリア)を国際出願日とする出願であって、平成22年5月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.拒絶査定の理由
原審の拒絶査定の理由は、次のとおりであると認める。
「本件出願の請求項1ないし11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用例1.特表平9-501744号公報
引用例2.特開平2-143856号公報
引用例3.特開平7-278918号公報 」

3.本願発明
平成21年9月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載から見て、本件の請求項1ないし11に係る発明は、請求項1ないし11に記載された事項によって特定される発明であると認める。その請求項1の記載は、次のとおりである。
「生物剤に対する保護衣類として好適であり、液体の浸透及び微生物の侵入に対する保護を行うことができ、機械的抵抗性を示すとともに、柔軟性およびドレープ性を備え、着心地が良い、新規ガウン、上着、またはズボンであって、その生地は、不織ポリプロピレンの内側の層とポリエチレンフィルムの外側の層との積層によって製造されており、上記ポリプロピレンと上記ポリエチレンとの単位重量の比率が、70:30?50:50の範囲であることを特徴とする衣類。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)

4.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用例1(特表平9-501744号公報)には、図面と共に次の記載がある。
a.「技術分野 本発明は、保護用衣服に関する。より詳細には、本発明は、心地よさが改善された保護用衣服に関する。
背景技術 ……バリヤ特性を形成するように設計された使い捨て保護用衣類がある。保護用衣類の一つの種類には、使い捨て保護用カバーオールがある。カバーオールは、例えば、ドレープ、ガウン等のように開いた、即ちクローク式の衣服ではできないような方法で、有害な環境から着用者を有効に遮断するのに用いることができる。……保護用衣類は、液体に対して抵抗がなければならない。様々な理由のために、液体、又は液体によって運ばれる可能性のある病原体が衣服を通って、病原体が存在する環境で働く人に接触することは好ましいことでない。同様に、作業場所、或いは事故発生場所に存在する有害物質から人を遮断することが熱望される。……使用後、有害な、即ち化学的に有害な物質に曝された保護用衣類を除染することは、一般的にかなり費用がかかる。保護用衣類は使い捨てできるように安いことが重要である。一般的に、使い捨て保護用衣類は、液体、又は粒子に対して比較的不透過性である布から形成されている。これらのバリヤタイプの布地は、一回使用しただけで衣類を捨てるように経済的な低コストで保護用衣類を製造するのに適していなければならない。」(6頁3?26行)
b.「望ましいバリヤ特性と強靭性とともに心地良さを与える費用の安い使い捨て保護用カバーオールが必要になる。比較的丈夫で、耐久性があり、心地良く、軽量で、高速度な製造及び加工工程に適する、費用が比較的安い使い捨て保護用カバーオールが必要である。例えば、衣類が液体、または粒子に対して比較的不透過性であり、呼吸ができ心地良い設計でありながら使い捨て可能であるように費用が安い高強度バリヤ材料から本質的に、即ち完全に構成される保護用カバーオールが必要とされる。」(7頁17?23行)
c.「図1は……本発明の例示的な使い捨て保護用カバーオール100を示している。」(14頁23?25行)
d.「使い捨て保護用カバーオールは呼吸可能な高強度バリヤ布地から形成されるのが好ましい。即ち、バリヤ布地は、液体不透過性であるが、水蒸気を拡散、即ち布地を通さなければならない。……呼吸可能高強度バリヤ布地は、少なくとも一つの不織ウェブと少なくとも一つのフィルムからなる積層であり……」(20頁12?24行)
e.「本発明の使い捨て保護用カバーオールの製造において用いることのできる例示的な高強度バリヤ布地が表1にリストされている。……3つの不織繊維が、表1にリストされた積層の支持体として用いられた。基本重量が約41グラム/平方メートル(gsm)を用いるスパンボンドされたポリプロビレン連続フィラメントウェブが一つの支持体として用いられた。」(21頁2?8行)
f.「積層は、各支持体をフィルム層と組み合わせることによって形成された。4つの異なる種類のフィルムが、3フィルム厚さを用いて適用された。フィルムが支持体を押し出しコーティングし、次いで滑らかなカレンダーロールのニップを重なった材料を通すことによって加えられた。約1.25ミル、2.0ミルおよび3.0ミルの厚さ(支持体を除く)を有する支持体上に層が作りだされるようにフィルムが形成された。“PE”として表1に識別されたフィルム積層成分は……一般的な低密度ポリエチレンフィルムである。」(21頁25行?22頁5行)
g.「表1 基本重量OSY ……
支持体
スパンボンドポリプロピレン 1.2 ……
…… ……
1.25ミルフィルム積層
…… ……
PE ON SB 1.9 ……」
(24頁の表1から第1列及び第2列の一部を抜粋)
そして、上記d?fの記載を参酌すると、表1の上記gの記載は、基本重量1.2オンス/平方ヤード(約41グラム/平方メートル)のスパンボンドされたポリプロピレン連続フィラメントウェブを支持体とし、該支持体に約1.25ミルの低密度ポリエチレンフィルムを積層した積層体であって、該積層体の基本重量が1.9オンス/平方ヤードの積層体を、保護用カバーオールを形成する高強度バリヤ布地として用いることを示している。
すると、上記記載から、引用例1には、次の発明が記載されているといえる。(以下、「引用発明」という。)
《引用発明》
液体不透過性であるが水蒸気を通す高強度バリヤ布地から形成された、比較的丈夫で、耐久性があり、心地良く、軽量な使い捨て保護用カバーオールであって、該高強度バリヤ布地が1.2オンス/平方ヤードのスパンボンドされたポリプロピレン連続フィラメントウェブを支持体とし、該支持体に約1.25ミルの低密度ポリエチレンフィルムを押し出しコーティングで積層した積層体であって、該積層体の基本重量が1.9オンス/平方ヤードの積層体である、使い捨て保護用カバーオール。

5.対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「液体不透過性であるが水蒸気を通す高強度バリヤ布地から形成された、比較的丈夫で、耐久性があり、心地良く、軽量な」は、本願発明1の「生物剤に対する保護衣類として好適であり、液体の浸透及び微生物の侵入に対する保護を行うことができ、機械的抵抗性を示すとともに、柔軟性およびドレープ性を備え、着心地が良い」に相当する。
また、引用発明の「使い捨て保護用カバーオール」と、本願発明1の「生物剤に対する保護衣類として好適」な「新規ガウン、上着、またはズボン」とは、「保護衣類」である限りにおいて相当する。
引用発明の「高強度バリヤ布地」、「スパンボンドされたポリプロピレン連続フィラメントウェブ」、「低密度ポリエチレンフィルム」及び「積層体」は、それぞれ本願発明1の「生地」、「不織ポリプロピレン」、「ポリエチレンフィルム」及び「積層によって製造されており」に相当する。
また、引用発明では、スパンボンドされたポリプロピレン連続フィラメントウェブの基本重量が1.2オンス/平方ヤードであり、そこに1.25ミルの低密度ポリエチレンフィルムを積層した積層体の基本重量が1.9オンス/平方ヤードであるから、ポリプロピレン連続フィラメントウェブと低密度ポリエチレンフィルムとの単位重量の比率は、
1.2:(1.9-1.2)=1.2:0.7=63.2:36.8
である。したがって、引用発明のポリプロピレン連続フィラメントウェブと低密度ポリエチレンフィルムとの単位重量の比率は、本願発明1の「ポリプロピレンと上記ポリエチレンとの単位重量の比率が、70:30?50:50の範囲である」という要件を充足する。
そうすると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点1ないし2で相違する。
《一致点》
生物剤に対する保護衣類として好適であり、液体の浸透及び微生物の侵入に対する保護を行うことができ、機械的抵抗性を示すとともに、柔軟性およびドレープ性を備え、着心地が良い、保護衣類であって、その生地は、不織ポリプロピレンの層とポリエチレンフィルムの層との積層によって製造されており、上記ポリプロピレンと上記ポリエチレンとの単位重量の比率が、70:30?50:50の範囲である保護衣類。
《相違点1》
本願発明1の保護衣類は、ガウン、上着、またはズボンであるのに対し、引用発明では、カバーオールである点。
《相違点2》
本願発明1では、不織ポリプロピレンが内側の層であり、ポリエチレンフィルムが外側の層であるが、引用発明では、積層体の内外が特定されていない点。

6.相違点の検討
相違点1について検討すると、保護衣類としてガウン、上着、ズボンなどの形態があることは、例えば米国特許第589249号明細書の1欄15?20行、特表平7-507249号公報の4頁右下欄7?14行、特表2000-504644号公報の7頁14?18行、国際公開第00/73058号の1頁5?19行、国際公開第01/32116号の1頁14?28行に記載されており、周知であるから、引用発明のカバーオールをガウン、上着、又はズボンに替えることは、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点2について検討すると、不織布とフィルムとの積層体を医療用衣類等として用いる場合、不織布を内側の層とし、フィルムを外側の層とすることは、例えば前記国際公開第00/73058号の14頁29?36行や、前記国際公開第01/32116号の1頁14?28行に記載されており、周知であるから、引用発明において、不織ポリプロピレンが内側の層であり、ポリエチレンフィルムが外側の層であるようにすることは、当業者が容易に推考し得たことである。
そして、本願発明1が奏する効果も、引用発明及び周知の事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

7.付記
引用例1の表2の「2.5osySB/1.25ミルPEフィルム」又は「2.5osySB/1.5ミルPEフィルム」にも、ポリプロピレンと上記ポリエチレンとの単位重量の比率が、70:30?50:50の範囲である高強度バリヤ布地が記載されている。
また、前記米国特許第589249号明細書には、保護衣類である外科用ガウンを、ポリプロピレンと上記ポリエチレンとの単位重量の比率が、70:30?50:50の範囲である積層体から形成することが示唆されている。
したがって、本願発明1は、これらに記載又は示唆されている発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもある。

8.むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
原査定の拒絶の理由は妥当である。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-09 
結審通知日 2011-02-15 
審決日 2011-02-28 
出願番号 特願2004-551163(P2004-551163)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A41D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久島 弘太郎  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 熊倉 強
鈴木 由紀夫
発明の名称 生物剤に対する身体の部分保護用衣類  
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所  

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