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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1240237 |
審判番号 | 不服2008-26905 |
総通号数 | 141 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-10-21 |
確定日 | 2011-07-14 |
事件の表示 | 特願2003-113772「情報入力方法および情報入力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月11日出願公開、特開2004-318642〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成15年4月18日の出願であって、 平成20年9月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成20年10月21日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年8月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。 「 【請求項1】 互いに交わらない少なくとも2つの線状の指標を有する入力領域において、ユーザが指示を開始した時から指示を終了するまでの一連の指示動作で、指示点が前記各指標を通過するごとに、通過対象となる指標の情報と該通過時における前記指示点の移動状態の情報とを含む通過データを生成するステップと、 通過データの組み合わせに対して予め個別に情報が定義されたテーブルを参照することにより、一連の指示動作において生成された通過データに対応する情報を決定するステップと、を含み、 前記移動状態の情報は、前記線状の指標を挟んで第一の側から第二の側に向かう第一の移動と、該第二の側から該第一の側に向かう第二の移動との二種類のいずれかを示す値を含む情報入力方法。」 第3.引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開平10-91320号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (a)【発明の名称】欄 「情報入力装置及び方法」 (b)段落番号【0036】-【0043】 「【0036】今、図4に示すように、矩形の領域13を考えると、4本の辺に4つのエッジを割り当てることができる。 【0037】さて、ポインタ10が領域13に入り、出て行く場合には、ポインタ10の軌跡は4つのエッジに対して、さまざまな関係を持つ。例えば、図5の説明図に示すように、領域13の上のエッジをT、右のエッジをR、左のエッジをL、下のエッジをBとした場合、4つのそれぞれのエッジT、B、L、Rに対して、ポインタ10は、外から内に入る場合のIと、内から外に出る場合のOで、2つの場合が存在する。つまり、ポインタ10が領域13に対して、外から内に入る場合、エッジによりT、B、L、Rの4種類の意味を持たせることが可能であり、ポインタ10が領域13に対して、内から外に出る場合、エッジによりT、B、L、Rの4種類の意味を持たせることができる。したがって、ポインタ10が領域13の内に入って、次に外に出て行く場合、必ず2つのエッジを通過するので、それぞれの通過エッジによって全部で16種類の意味合いを持たせることが可能である。 【0038】例えば、図4に示すように、ポインタ10が軌跡9に沿って、エッジTから入り、エッジTから出ていった場合、「IT、OT」と表現でき、ポインタ10が軌跡17に沿って、エッジLから入り、エッジBから出ていった場合、「IL、OB」と表現できる。 【0039】時系列パターン解析手段8は、この通過情報の時系列パターンから、単純なパターンを排除し、特徴的なものだけに特定の操作の意味を割り当てている。 【0040】例えば、あるドキュメントを表すオブジェクトに対して、それを選択してオープンする、という動作を割り当てるために、オブジェクトに対応づけた領域13に対して、「IT、OT」を割り当てる。 【0041】これは、図6の説明図に示すように、ポインタ10が、軌跡9に沿って、領域13に上から入り、上から出ていった場合を表すが、このようなポインタ10の動きに対応して、時系列パターン解析手段8は処理部5に対して、オープン操作に対応する解析結果を送出し、処理部5はオブジェクトに対応するファイルのオープンを実行する。 【0042】また、あるオブジェクトに対して、それを選択してドラッグする、という動作を割り当てるために、オブジェクトに対応づけた領域13に対して、「IB、OB」を割り当てる。 【0043】これは、図6の説明図に示すように、ポインタ10が、軌跡18に沿って領域13に下から入り、下から出ていった場合を表すが、このようなポインタ10の動きに対応して、時系列パターン解析手段8は処理部5に対して、ドラッグ操作に対応する解析結果を送出し、処理部5は、その後のポインタ10の動きに対応して、オブジェクトのドラッグを実行する。」 したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「矩形の領域13を考えると、4本の辺に4つのエッジを割り当てることができ、 ポインタ10が領域13に入り、出て行く場合には、ポインタ10の軌跡は4つのエッジに対して、さまざまな関係を持ち、例えば、領域13の上のエッジをT、右のエッジをR、左のエッジをL、下のエッジをBとした場合、4つのそれぞれのエッジT、B、L、Rに対して、ポインタ10は、外から内に入る場合のIと、内から外に出る場合のOで、2つの場合が存在し、つまり、ポインタ10が領域13に対して、外から内に入る場合、エッジによりT、B、L、Rの4種類の意味を持たせることが可能であり、ポインタ10が領域13に対して、内から外に出る場合、エッジによりT、B、L、Rの4種類の意味を持たせることができ、したがって、ポインタ10が領域13の内に入って、次に外に出て行く場合、必ず2つのエッジを通過するので、それぞれの通過エッジによって全部で16種類の意味合いを持たせることが可能であり、 例えば、ポインタ10が軌跡9に沿って、エッジTから入り、エッジTから出ていった場合、「IT、OT」と表現でき、ポインタ10が軌跡17に沿って、エッジLから入り、エッジBから出ていった場合、「IL、OB」と表現でき、 時系列パターン解析手段8は、この通過情報の時系列パターンから、単純なパターンを排除し、特徴的なものだけに特定の操作の意味を割り当てており、 例えば、あるドキュメントを表すオブジェクトに対して、それを選択してオープンする、という動作を割り当てるために、オブジェクトに対応づけた領域13に対して、「IT、OT」を割り当て、 これは、ポインタ10が、軌跡9に沿って、領域13に上から入り、上から出ていった場合を表すが、このようなポインタ10の動きに対応して、時系列パターン解析手段8は処理部5に対して、オープン操作に対応する解析結果を送出し、処理部5はオブジェクトに対応するファイルのオープンを実行し、 また、あるオブジェクトに対して、それを選択してドラッグする、という動作を割り当てるために、オブジェクトに対応づけた領域13に対して、「IB、OB」を割り当て、 これは、ポインタ10が、軌跡18に沿って領域13に下から入り、下から出ていった場合を表すが、このようなポインタ10の動きに対応して、時系列パターン解析手段8は処理部5に対して、ドラッグ操作に対応する解析結果を送出し、処理部5は、その後のポインタ10の動きに対応して、オブジェクトのドラッグを実行する 情報入力方法。」 第4.本願発明と引用発明の一致点・相違点 引用発明における矩形の領域13の4本の辺は線状であるから、引用発明の4つのエッジが、本願発明の「少なくとも2つの線状の指標」に相当する。引用発明における矩形の領域13の内側および外側の領域が、本願発明の「少なくとも2つの線状の指標を有する入力領域」に相当する。 引用発明の、ポインタ10が軌跡9に沿って、エッジTから入り、エッジTから出ていった場合の「IT、OT」における「T」は、「通過対象となる指標情報」であり、「I」や「O」は、「該通過時における前記指示点の移動状態の情報」である。したがって、「IT」や「OT」のような通過情報が、本願発明の「通過対象となる指標の情報と該通過時における前記指示点の移動状態の情報とを含む通過データ」に相当する。そして、引用発明の通過情報の時系列パターンを生成する段階が、本願発明の「ユーザが指示を開始した時から指示を終了するまでの一連の指示動作で、指示点が前記各指標を通過するごとに、通過対象となる指標の情報と該通過時における前記指示点の移動状態の情報とを含む通過データを生成するステップ」に相当する。 引用発明の「IT、OT」のような通過情報の時系列パターンが、本願発明の「通過データの組み合わせ」及び「一連の指示動作において生成された通過データ」に相当する。 引用発明では、あるドキュメントを表すオブジェクトに対して、それを選択してオープンする、という動作を割り当てるために、オブジェクトに対応づけた領域13に対して、「IT、OT」を割り当てているから、「IT、OT」という通過情報の時系列パターンに対応する情報として、「それを選択してオープンする、という動作」を決定している。したがって、本願発明と引用発明とは、「一連の指示動作において生成された通過データに対応する情報を決定するステップ」を含む点において、一致している。 引用発明の矩形の領域13の外側が、本願発明の「前記線状の指標を挟んで第一の側」に相当し、引用発明の矩形の領域13の内側が、本願発明の「第二の側」に相当し、引用発明の「外から内に入る場合のI」が、本願発明の「前記線状の指標を挟んで第一の側から第二の側に向かう第一の移動」に相当し、引用発明の「内から外に出る場合のO」が、本願発明の「該第二の側から該第一の側に向かう第二の移動」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、「前記移動状態の情報は、前記線状の指標を挟んで第一の側から第二の側に向かう第一の移動と、該第二の側から該第一の側に向かう第二の移動との二種類のいずれかを示す値を含む」点において、一致している。 したがって、本願発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「少なくとも2つの線状の指標を有する入力領域において、ユーザが指示を開始した時から指示を終了するまでの一連の指示動作で、指示点が前記各指標を通過するごとに、通過対象となる指標の情報と該通過時における前記指示点の移動状態の情報とを含む通過データを生成するステップと、 一連の指示動作において生成された通過データに対応する情報を決定するステップと、を含み、 前記移動状態の情報は、前記線状の指標を挟んで第一の側から第二の側に向かう第一の移動と、該第二の側から該第一の側に向かう第二の移動との二種類のいずれかを示す値を含む情報入力方法。」である点。 [相違点1] 本願発明では、少なくとも2つの線状の指標が互いに交わらないのに対して、引用発明では、4つのエッジが、その端点において隣接するエッジと接続されている点。 [相違点2] 本願発明では、通過データの組み合わせに対して予め個別に情報が定義されたテーブルを参照しているのに対して、引用発明では、時系列パターン解析手段8が、どのようにして、通過情報の時系列パターンから特定の操作の意味を決定するのか不明な点。 第5.相違点についての検討 [相違点1について] 刊行物1の段落番号【0027】に「また、ここで言う領域13は、矩形の領域に限らず、丸や三角やその他の形状の領域であっても、線や点で特定される領域であってもよい。つまり、オブジェクト12に対して、特定の位置関係にある線分や、点を設定しておき、これらの線分や点に対して、ポインタ10がどのように動いたかを検出してジェスチャ判定するようにすることもできる。」と記載されており、引用発明の矩形の領域13は、線や点であってもよいのであるから、引用発明において、4つのエッジが、それらの端点において隣接するエッジと開放されているように変更することは、当業者が容易に想到できたことである。 [相違点2について] 情報処理の分野において、あるデータを別の情報に変換するために、データを情報に対応付けたテーブルを用意しておき、該テーブルを参照することにより、あるデータを別の情報に変換することは、周知慣用の技術である。 したがって、引用発明において、「IT、OT」というデータを「それを選択してオープンする、という動作」という情報に対応付け、「IB、OB」というデータを「それを選択してドラッグする、という動作」という情報に対応付けたテーブルを用意しておき、該テーブルを参照することにより、通過情報の時系列パターンから特定の操作の意味を決定することは、当業者が容易に想到できたことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである 第6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-05-18 |
結審通知日 | 2011-05-19 |
審決日 | 2011-06-01 |
出願番号 | 特願2003-113772(P2003-113772) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 慎一 |
特許庁審判長 |
江口 能弘 |
特許庁審判官 |
青木 健 安久 司郎 |
発明の名称 | 情報入力方法および情報入力装置 |
代理人 | 松岡 修平 |