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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1240383
審判番号 不服2007-22396  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-13 
確定日 2011-07-20 
事件の表示 特願2004-153179「単一のアドレス指定可能な記憶アレイを使用して複数のエントリタイプ及び順序情報を格納するための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 9日出願公開、特開2004-348746〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成16年5月24日(パリ条約による優先権主張2003年5月23日、米国)に出願したものであって、平成19年5月8日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し同年8月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年9月5日付けで手続補正がなされ、その後、当審において、平成22年7月26日付けで平成19年9月5日付けの手続補正が却下され、平成22年7月26日付けの拒絶の理由の通知に対して、平成23年1月27日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年1月27日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「単一のアドレス指定可能な記憶アレイを使用して、複数のタイプのエントリの格納及び読み出しと、格納されたエントリについての順序情報の格納とを行う方法であって、
前記アドレス指定可能な記憶アレイの利用可能なアドレスにエントリを格納し、
前記格納されたエントリの前記アドレスを表す値と、該格納されたエントリの前記タイプを表す値と、該格納されたエントリの有効性を表す値とを、複数のステージレジスタにおける利用可能なステージレジスタの中で最も下流のステージレジスタ内に格納し、ここで、エントリを格納するために利用可能な前記アドレス指定可能な記憶アレイ内の各位置ごとに、1つのステージレジスタが設けられており、該利用可能なステージレジスタが、前記格納されたエントリの前記有効性を表す前記値に基づいて決定され、前記格納されたエントリの前記有効性は、前記アドレス指定可能な記憶アレイに書き込まれており、且つ、要求装置に対して読み出されるか又は送られる準備が出来ているエントリである、有効なエントリを示し、及び、無効なエントリは、前記アドレス指定可能な記憶アレイから前記要求装置に対して既に送られたエントリであり、
エントリの前記タイプに基づいて、順序規則に従って前記アドレス指定可能な記憶アレイから格納されたエントリを読み出し、
前記読み出されたエントリを前記要求装置に転送し、
前記アドレス指定可能な記憶アレイからの前記エントリの取り出しを反映するように、前記ステージレジスタ内に前記格納された値を更新し、ここで、該更新することは、上流のステージレジスタから下流のステージレジスタへと前記値が動かされて、前記要求装置に対して送られたエントリに対する値を置き換えることを含み、及び、
特定のタイプのエントリが読み出されるよう利用可能な場合には常に、1つか又は複数の要求装置に対して信号を伝達する
ことを含むことからなる、方法。」

3 当審の拒絶の理由
当審において平成22年7月26日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、特開平7-141145号公報(平成7年6月2日出願公開。以下「引用例1」という。)に記載された発明及び特開平2-184141号公報(平成2年7月18日出願公開。以下「引用例2」という。)に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

4 引用例の記載
(1)引用例1
引用例1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、優先制御情報に基づき、情報データの蓄積制御を行うバッファ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】優先機能付きバッファは、バッファに蓄積されるデータの中に、優先情報を含み、バッファに蓄積されているデータの中から、この優先情報をもとにデータを読みだす装置である。同じ優先情報を持つデータは、論理的に1つのFIFO(First In First Out)バッファとして振る舞う。すなわち、バッファに蓄積されているデータの中で、出力を指定された優先情報の値を持つデータの最も古く入力されたデータが出力される。」(段落【0001】?【0002】)

イ 「【0008】
【実施例】以下図面を参照して本発明の一実施例を説明する。本発明のバッファ装置の一構成を図1に示す。バッファ装置5は、入力されてきたセル付加されている優先情報を抽出するための優先情報抽出装置1と、セルの情報データを記憶するための情報データ記憶装置2と、この抽出された優先情報を記憶すると共に、この優先情報に対応するセルが記憶された情報データ記憶装置2の記憶領域を示すアドレスを管理するアドレス管理装置3と、これらの装置を制御する制御装置4とで構成されている。アドレス管理装置3は、情報データ記憶装置2の書き込みアドレス、読み出しアドレスを生成する装置である。情報データを情報データ記憶装置2に書き込む時は、アドレス管理装置3は、優先情報管理装置1から送られて優先情報を記憶すると共に、情報データを書き込むアドレスを情報データ記憶装置2に転送する。情報データを読み出す時は、アドレス管理装置3は読み出す情報データの優先情報から、該当する情報データの中で最も古い情報データの記憶されているアドレスを検索し、これを情報データ記憶装置2に伝送する。情報データ記憶装置2は、情報データを記憶する装置である。情報データを書き込むときは、情報データ記憶装置2は、優先情報抽出装置1から送られてきた情報データをアドレス管理装置3から送られてきたアドレスに書き込みを行う。情報データを読み出すときは、情報データ記憶装置2は、アドレス管理装置3から送られてきたアドレスの情報データを読み出し、外部に出力する。
【0009】アドレス管理装置3の構成を図2に示す。アドレス管理装置3は、優先情報レジスタ6-1?6-Nとアドレスポインタレジスタ8-1?8-Nとカラム制御装置7-1?7-Nで構成されるアドレス管理ユニット9-1?9-Nを直列に接続した装置である。アドレス管理装置3において、アドレス管理ユニット9-1?9-Nの位置は情報データの到着順序を意味する。図2に示された例では、下方にあるもの程、古い情報データであることを意味している。つまり、優先情報レジスタ6-1?6-N及びアドレスポインタレジスタ8-1?8-Nが下方に向かってシフトしていくように接続されているので、下方にある程古い情報であることを意味している。優先情報レジスタ6-1?6-Nは、優先情報抽出装置1から伝送された優先情報を記憶するレジスタである。アドレスポインタレジスタ8-1?8-Nは、情報データの記憶されているアドレスを記憶するレジスタである。アドレスポインタレジスタ8-1?8-Nのそれぞれは、初期状態は情報データ記憶装置2のアドレスに1対1に対応するように初期化されている。例えば情報データの記憶されるアドレスが0?N-1であった場合、アドレスポインタレジスタ8-1?8-Nの値は、それぞれ0?N-1に初期化されている。カラム制御装置7-1?7-Nは、制御装置4から伝送される制御情報をもとに、優先情報レジスタ6-1?6-N及びアドレスポインタレジスタ8-1?8-Nの書き込み及び出力の制御を行うための装置である。次に、アドレス管理装置3の動作について説明する。情報データ記憶装置2は、0,1,2,…N-1という線形のアドレス空間を持つと仮定する。ここで、Nは、情報データ記憶装置2に記憶できる情報データの個数である。また、アドレス管理装置3が図3のように初期化されていると仮定する。図3中で、“-”は、内容が不定であることを意味する。初期状態では、情報データ及び優先情報は、不定であるのですべてに“-”が記述されている。図3の例では、アドレスポインタの値は、下方から順番に0,1,2…N-1というように順序よく記憶されている。初期値は、情報データ記憶装置2のアドレスとアドレスポインタの値が、1対1に対応していれば順序関係は、どんなものでもよい。次に、書き込みアドレスを出力するときの動作について説明する。一例として、初期状態から優先情報としてAという値を持つaというデータが入力され、優先情報としてBという値を持つbというデータが入力され、その後、優先情報としてAという値を持つcというデータが入力された場合の動作を説明する。まず、優先情報としてAという値を持つaというデータが入力されたときの動作を説明する。アドレス管理装置3には、優先情報抽出装置1からAという優先情報が伝送される。アドレス管理装置3に送られた優先情報は、優先情報レジスタの下方から詰めて書き込まれる。初期状態では優先情報が1つも書き込まれていないので、入力された優先情報は、最下方に記憶される。書き込まれたカラムのアドレスポインタの値が、データの書き込みアドレスになる。したがってデータaは、アドレス0に記憶される。優先情報及びデータが書き込まれた後の状態を図4(a)に示す。
【0010】次に、優先情報としてBという値を持つbというデータが入力されたときの動作を説明する。アドレス管理装置3には、Bという値が伝送され、優先情報が記憶されていない空いているカラムの最下方に記憶される。この場合、アドレス管理装置3には、既に1つの優先情報が書き込まれているので下から2カラム目の優先情報レジスタにBという値が書き込まれる。Bというデータは、このカラムのアドレスポインタレジスタの値が示すアドレス、つまり、アドレス1に書き込まれる。優先情報及びデータが書き込まれた後の状態を図4(b)に示す。
【0011】次に、優先情報としてAという値を持つcというデータが入力されたときの動作を説明する。アドレス管理装置3には、Aという値が伝送され、優先情報が記憶されていない空いているユニットの最下方に記憶される。アドレス管理装置3には、既に2つの優先情報が書き込まれているので、下から3ユニットの優先情報レジスタにAという値が書き込まれる。cというデータは、このユニットのアドレスポインタレジスタの値が示すアドレス、つまり、アドレス2に書き込まれる。優先情報及びデータが書き込まれた後の状態を図4(c)に示す。
【0012】次に、読み出しアドレスを出力するときの動作を説明する。一例として、図4(c)の状態から優先情報としてBという値を持つデータを出力し、次に、優先情報としてAという値を持つデータを出力し、その後、優先情報としてAという値を持つデータを出力する場合の動作を説明する。図4(c)の状態は、優先情報Aでデータaのデータが最下方に優先情報Bでデータが下から2番目に、優先情報Aでデータcが下から3番目に書き込まれている状態である。データ出力の時は、同じ優先情報を持つデータで、最も古いデータが出力される。アドレス管理装置3内では、古い優先情報は、図中の下方に記憶されている。まず、優先情報Bのデータを出力する場合の動作について説明する。優先情報Bのデータを出力するときは、記憶されているデータの中でBの情報を持つものは、アドレス管理装置3の下から2番目のユニットに記憶されているデータである。従って、アドレス管理装置3は、情報データ記憶装置2に対し、下から2番目のアドレスポインタの値1を伝送する。情報データ記憶装置2は、送られてきたアドレスに記憶されているデータbを出力する。アドレス管理装置3では、出力されたデータに対応する優先情報は消去され、消去された優先情報より新しい優先情報が詰めれる。アドレスポインタは、優先情報と同様に出力されたアドレスポインタ以降のアドレスポインタの値が詰められ、最上部には、消去出力されたアドレスポインタの値が入力される。従って、優先情報Bのデータを出力した後では、アドレス管理3の内容は、図5(a)のように下から2番目にあった1という値が最上部のカラムに入力され、下から3番目にあった3という値が下から2番目のカラムに、下から4番目にあった4という値が下から3番目のカラムにというように順次変更される。
【0013】次に、優先情報Aのデータを出力する場合の動作について説明する。優先情報Bのデータを出力したので、アドレス管理部3及び情報データ記憶部2の内容は、図5(a)のようになっている。つまり、最下部に優先情報A(対応するデータはa)が蓄積されており、下から2番目に優先情報A(対応するデータは、c)が蓄積されている。この状態から優先情報Aを持つデータを出力するときは、下方より上方に優先情報がAであるカラムを検索する。この場合、優先情報がAであるユニットは、最下ユニットと下から2番目のユニットであるが、より下方の優先情報つまり、より古い優先情報選択されるので、最下方のユニットが選択される。アドレス管理装置3から情報データ記憶装置2に対し、最下部のユニットのアドレスポインタの値すなわち0が伝送される。情報データ記憶装置2では、アドレス0に記憶されているデータaが出力される。優先情報は、出力したデータに対応したユニットの内容が消去され、そのユニットより上方にある優先情報が詰められる。アドレスポインタは、対応するユニット以降の内容が詰められ、対応するユニットの内容は、最上部に記憶される。従って、優先情報Aのデータを出力した後でそれぞれの内容は、図5(b)のように変更される。次に、優先情報Aのデータを出力する場合の動作について説明する。アドレス管理部3及び情報データ記憶部2の内容は、図5(b)のようになっている。この状態から優先情報Aを持つデータを出力するときは、下方により上方に優先情報がAであるユニットを検索する。この場合、最下部に優先情報Aのユニットがあり、このユニットが選択される。アドレス管理装置3から情報データ記憶装置2に対し、最下部のユニットのアドレスポインタの値すなわち2が伝送される。情報データ記憶装置2では、アドレス2に記憶されているデータcが出力される。優先情報は、出力したデータに対応したユニットの内容が消去され、そのユニットより上方にある優先情報が詰められる。アドレスポインタは、対応するユニット以降の内容が詰められ、対応するユニットの内容は最上部に記憶される。したがって、優先情報Aのデータを出力した後でそれぞれの内容は、図5(c)のように変更される。 次に、優先情報レジスタの構成について説明する。優先情報レジスタの構成を図6に示す。各優先情報レジスタ6-1,…6-Nは、図7に示されるM個分の優先情報レジスタユニット6a,…6mを並べたものである。優先情報の種類をNpとすると、優先情報を識別するために必要な情報は、Np+1である。ここで、1は、データの有無を識別するためである。従って、優先情報レジスタのレジスタ長は、log_(2)(Np+1)ビット以上必要である。優先情報をエンコードし、log_(2)(Np+1)ビットした場合の例を以下に示す。この場合、図中の6Mの値は、log_(2)(Np+1)である。例えば、優先情報の種類が、A,B,Cの3種類であった場合について説明する。この場合優先情報がAであること、優先情報がBであること、優先情報がCであること、データが存在することの4つを識別するために、2ビット必要になる。エンコーディングの方法は、例えば、A:01,B:10,C:11,データの有無:00のようにエンコーディングする。このようにデータの有無を識別するのに全ビット0を割り当てると、データの有無を検出する回路が簡単になるという利点がある。この場合、データの有無を検出するために論理和回路を用いればよい。また、優先情報をエンコーディングせずに、Np+1ビットのレジスタを用いる方法もある。この場合図6中のMは、Np+1である。例えば、優先情報の種類が、A,B,Cの3種類であった場合、4ビットのレジスタを用いる。この方法の場合Aを識別するために1ビット、Bを識別するために1ビット、Cを識別するために1ビット、データの有無を識別するために1ビットを使用する。左から1番目のビットに、左から2番目のビットにB、左から3番目のビットにC、一番右のビットにデータの有無を割り当て、それらが記憶されているときに1を割り当て、それらが記憶されていないときに0を割り当てた場合、優先情報がAであることを示すビットパターンは、1001、優先情報がBであることを示すビットパターンは0101、優先情報がCであることを示すビットパターンは0011、データが無いことを示すビットパターンは、0000となる。この方法の場合、データがある場合は、必ずどこかの左から3ビットまでに1であるビットがあるので、データの有無を示すビットを省略することが可能である。データの有無を示すビットを省略した場合、図6中のMの値は、Npである。データの有無の検出は、各ビットの論理和を計算することで得られる。論理和が1の場合は、データが存在し、0の場合は存在しないことが検出できる。データの有無を示すビットを用いた場合、データの有無を検出するための回路が不要になり、また、検出のための処理時間を省くことができるという利点がある。データの有無を示すビットを用いなかった場合は、データの有無を示すためのレジスタが不要になり、ハード規模を小さくすることができるという利点がある。また、優先情報をエンコードした場合、優先情報を記憶するレジスタ長を短くできるという利点がある。優先情報をエンコードしなかった場合は、1つのデータに対し複数の優先情報を割り当てることができるという利点がある。優先情報レジスタユニットは、図7に示されるように、セレクタ10とフィリップフロップ11で構成されている。セレクタ10は、カラム制御装置からの指示に従って、入力バスカらの信号と隣接する優先情報レジスタからの信号の切り替えを行う。フリップフロップ11は、カラム制御装置からの指示に従って、セレクタによって切り替えられた信号を記憶する。データ入力のときは、セレクタは、入力バスからの信号を出力するように指示される。また、フリップフロップの書き込み信号は、自ユニットより以前(図2において下方)の優先情報レジスタにデータが書き込まれて、自ユニットに書き込まれていないときに書き込み許可が出される。データ出力のときは、セレクタは隣接するユニット(図2において上方のユニット)の優先情報レジスタからの信号を出力するように指示される。フリップフロップの書き込み信号は、自ユニットより以前(図2において下方)のユニットまたはユニットが検出されたときに書き込み許可が出される。
【0014】次に、アドレスポインタレジスタの構成について、説明する。アドレスポインタレジスタの構成を図8に示す。アドレスポインタレジスタは、図9に示されるL個分の各アドレスポインタレジスタユニット8a,…8lを並べたものである。情報データ記憶装置2のアドレス空間の大きさをNとするとLの値は、log2 Nである。アドレスポインタレジスタユニット8a,…8lはアドレスの値を記憶するフリップフロップ12と、アドレスの値をアドレスポインタ出力バスへ出力する制御を行うトラステートバッファ13で構成される。フリップフロップ12への書き込み及びトランステートバッファ13の出力制御は、カラム制御装置によって行われる。フリップフロップ12への書き込みは、データ出力時に、自ユニット以前(自ユニットを含む)のユニット検索されたときに行われる。トライステートバッファ13の出力許可は、データ入力時及びデータ出力時に、自カラムが検索されたときに行われる。
【0015】次に、各カラム制御装置7-1,…7-Nの構成を図10に示す。各カラム制御装置7-1,…7-Nは、優先制御レジスタの優先情報と出力優先情報との比較を行う比較器14と、自ユニットに対応するアドレスにデータが記憶されているかどうかを判定する有無判定器15と、比較器14、有無判定器15、制御バス及び近隣ユニットから伝送される情報から優先制御レジスタとアドレスポインタレジスタの制御情報と隣接ユニットへの情報を生成する演算装置16とで構成されている。有無判定器15は、優先情報に前述したようなコーディングを用いれば、論理和回路で実現できる。ここで、演算回路の動作を説明する。データ入力時は、自ユニット以前のユニットに対応するアドレスにデータが記憶されていて、自ユニットに対応するアドレスにデータが記憶されていなかった場合、入力バスから優先情報レジスタに優先情報を書き込み、アドレスポインタレジスタの値をアドレスポインタ出力バスに出力する。データ出力時は、出力する優先情報の値と、優先情報レジスタに記憶されている優先情報の値を比較し、一致した場合で、且つ自ユニット以前に検出されていないときにアドレスポインタレジスタに記憶されている値をアドレスポインタ出力バスに出力する。また、自ユニット以前(自ユニットを含む)に検出された場合は、アドレスポインタレジスタ及び優先情報レジスタ及び優先情報レジスタのシフト動作を行う。これらの動作を実現するためのカラム制御装置の詳細な構成の例を図11に示す。図中においてPRWEは、優先情報レジスタの書き込み許可信号、PRSLは、優先情報レジスタの入力切り替え信号、PROは、優先情報レジスタの値、APWEは、アドレスポインタレジスタの書き込み許可信号、APOEは、アドレスポインタレジスタの出力許可信号、PRIは、出力する優先情報の値、OMは、出力モードであることを示す信号、IMは入力モードであることを示す信号、EXIは、下方のカラムに対応するアドレスにデータが記憶されていることを示す信号、EXOは、自ユニットに対応するアドレスにデータが記憶されていることを示す信号、FDI、は自ユニットより前に出力する優先情報が検出されたことを示す信号、FDDは、自ユニット以前に出力する優先情報が検出されたことを示す信号、EQは、自ユニットの優先情報と出力する優先情報が一致したことを示す信号である。」(段落【0008】?【0015】)

以上の記載によれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「入力されてきたセルに付加されている優先情報を抽出するための優先情報抽出装置1と、セルの情報データを記憶するための情報データ記憶装置2と、この抽出された優先情報を記憶すると共に、この優先情報に対応するセルの情報データが記憶された情報データ記憶装置2の記憶領域を示すアドレスを管理するアドレス管理装置3と、これらの装置を制御する制御装置4とで構成され、
アドレス管理装置3は、情報データ記憶装置2の書き込みアドレス、読み出しアドレスを生成し、情報データを情報データ記憶装置2に書き込むときは、優先情報管理装置1から送られた優先情報を記憶すると共に、情報データを書き込むアドレスを情報データ記憶装置2に転送し、情報データを読み出すときは、読み出す情報データの優先情報から、該当する情報データの中で最も古い情報データの記憶されているアドレスを検索し、これを情報データ記憶装置2に伝送し、
情報データ記憶装置2は、情報データを書き込むときは、優先情報抽出装置1から送られてきた情報データをアドレス管理装置3から送られてきたアドレスに書き込みを行い、情報データを読み出すときは、アドレス管理装置3から送られてきたアドレスの情報データを読み出し、外部に出力し、
アドレス管理装置3は、優先情報レジスタ6-1?6-Nとアドレスポインタレジスタ8-1?8-Nとカラム制御装置7-1?7-Nで構成されるアドレス管理ユニット9-1?9-Nを直列に接続した装置であり、
アドレス管理装置3において、アドレス管理ユニット9-1?9-Nの位置は情報データの到着順序を意味し、下方にあるもの程、古い情報データであることを意味し、優先情報レジスタ6-1?6-N及びアドレスポインタレジスタ8-1?8-Nが下方に向かってシフトしていくように接続され、データ出力の時は、同じ優先情報を持つデータで、最も古いデータが出力され、
初期状態から、優先情報としてAという値を持つaというデータが入力されたとき、
アドレス管理装置3には、優先情報抽出装置1からAという優先情報が伝送され、アドレス管理装置3に送られた優先情報は、優先情報レジスタの下方から詰めて書き込まれ、初期状態では優先情報が1つも書き込まれていないので、入力された優先情報は、最下方に記憶され、書き込まれたカラムのアドレスポインタの値が、データの書き込みアドレスになり、データaは、アドレス0に記憶され、
次に、優先情報としてBという値を持つbというデータが入力されたとき、
アドレス管理装置3には、Bという値が伝送され、優先情報が記憶されていない空いているカラムの最下方に記憶され、アドレス管理装置3には、既に1つの優先情報が書き込まれているので下から2カラム目の優先情報レジスタにBという値が書き込まれ、Bというデータは、このカラムのアドレスポインタレジスタの値が示すアドレス、つまり、アドレス1に書き込まれ、
次に、優先情報としてAという値を持つcというデータが入力されたとき、
アドレス管理装置3には、Aという値が伝送され、優先情報が記憶されていない空いているユニットの最下方に記憶され、アドレス管理装置3には、既に2つの優先情報が書き込まれているので、下から3ユニットの優先情報レジスタにAという値が書き込まれ、cというデータは、このユニットのアドレスポインタレジスタの値が示すアドレス、つまり、アドレス2に書き込まれ、
優先情報Aでデータaのデータが最下方に優先情報Bでデータが下から2番目に、優先情報Aでデータcが下から3番目に書き込まれている状態から優先情報としてBという値を持つデータを出力し、次に、優先情報としてAという値を持つデータを出力し、その後、優先情報としてAという値を持つデータを出力する場合において、
まず、優先情報Bのデータを出力する場合、
記憶されているデータの中でBの情報を持つものは、アドレス管理装置3の下から2番目のユニットに記憶されているデータであるから、アドレス管理装置3は、情報データ記憶装置2に対し、下から2番目のアドレスポインタの値1を伝送し、情報データ記憶装置2は、送られてきたアドレスに記憶されているデータbを出力し、アドレス管理装置3では、出力されたデータに対応する優先情報は消去され、消去された優先情報より新しい優先情報が詰められ、アドレスポインタは、優先情報と同様に出力されたアドレスポインタ以降のアドレスポインタの値が詰められ、最上部には、消去出力されたアドレスポインタの値が入力され、優先情報Bのデータを出力した後では、アドレス管理装置3の内容は、下から2番目にあった1という値が最上部のカラムに入力され、下から3番目にあった3という値が下から2番目のカラムに、下から4番目にあった4という値が下から3番目のカラムにというように順次変更され、
次に、優先情報Aのデータを出力する場合、
最下部に優先情報A(対応するデータはa)が蓄積されており、下から2番目に優先情報A(対応するデータは、c)が蓄積されている状態から優先情報Aを持つデータを出力するときは、下方より上方に優先情報がAであるカラムを検索し、この場合、優先情報がAであるユニットは、最下ユニットと下から2番目のユニットであるが、より下方の優先情報つまり、より古い優先情報が選択されるので、最下方のユニットが選択され、アドレス管理装置3から情報データ記憶装置2に対し、最下部のユニットのアドレスポインタの値すなわち0が伝送され、情報データ記憶装置2では、アドレス0に記憶されているデータaが出力され、優先情報は、出力したデータに対応したユニットの内容が消去され、そのユニットより上方にある優先情報が詰められ、アドレスポインタは、対応するユニット以降の内容が詰められ、対応するユニットの内容は、最上部に記憶され、
次に、優先情報Aのデータを出力する場合、
下方より上方に優先情報がAであるユニットを検索し、最下部に優先情報Aのユニットがあり、このユニットが選択され、アドレス管理装置3から情報データ記憶装置2に対し、最下部のユニットのアドレスポインタの値すなわち2が伝送され、情報データ記憶装置2では、アドレス2に記憶されているデータcが出力され、優先情報は、出力したデータに対応したユニットの内容が消去され、そのユニットより上方にある優先情報が詰められ、アドレスポインタは、対応するユニット以降の内容が詰められ、対応するユニットの内容は最上部に記憶され、
各優先情報レジスタ6-1、…6-Nは、優先情報の種類が、A、B、Cの3種類であった場合、4ビットのレジスタを用い、Aを識別するために1ビット、Bを識別するために1ビット、Cを識別するために1ビット、データの有無を識別するために1ビットを使用し、
データ入力時は、自アドレス管理ユニット以前のユニットに対応するアドレスにデータが記憶されていて、自アドレス管理ユニットに対応するアドレスにデータが記憶されていなかった場合、入力バスから優先情報レジスタに優先情報を書き込み、アドレスポインタレジスタの値をアドレスポインタ出力バスに出力し、
データ出力時は、出力する優先情報の値と、優先情報レジスタに記憶されている優先情報の値を比較し、一致した場合で、且つ自アドレス管理ユニット以前に検出されていないときにアドレスポインタレジスタに記憶されている値をアドレスポインタ出力バスに出力し、
自アドレス管理ユニット以前(自アドレス管理ユニットを含む)に検出された場合は、アドレスポインタレジスタ及び優先情報レジスタのシフト動作を行う、
バッファ装置5。」

(2)引用例2
引用例2には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「(産業上の利用分野)
本発明は、例えばATM通信システムのセル通信路等で使用されるバッファ装置の改良に関する。」(1頁右下欄20行?2頁左上欄3行)

イ 「第1図は、本発明の一実施例であるバッファ装置の構成を示すブロック図である。
同図に示したバッファ装置は、第1の通信路からの要求に従ってデータを受取り、受取ったデータをデータ入力手段12がデータレジスタアレイ10に書込み、また第2の通信路からの要求に従ってデータ出力手段13がデータレジスタアレイ10からデータを読出して第2の通信路に出力するようになっている。
データレジスタアレイ10は、該バッファ装置が一旦蓄積するデータを記憶しておくものである。該データレジスタアレイ10は、データ入力手段12もしくはデータ出力手段13の出力するアドレスに対応したデータレジスタ(第3図?第10図参照)に対してデータを読み/書きできる必要があるが、例えば、この機能はLSI技術を用いて構成された半導体ランダムアクセスメモリICを用いることにより実現可能である。」(3頁右下欄6行?4頁左上欄3行)

ウ 「データ入力手段12はアービタ18の競合制御の結果を受けて、もしアービタ18によりデータ入力許可がされたなら、第1の通信路からデータを受取る。
また、データ入力手段12は、受取ったデータを空アドレス先頭レジスタ16の蓄積しているビットパターンにより指定されるデータレジスタアレイ10のアドレスに書込む。
また、データ入力手段12は、受取ったデータの持つビットパターンのうち予め定められた位置にある1つもしくは複数個のビットの内容(即ち、該データの持つ優先順位)に従って選択した書込アドレスレジスタ141?14mと空アドレス先頭レジスタ16とを用いて管理情報書込みポート11aと管理情報読出ポート11bを通じて管理レジスタアレイ11内部の管理レジスタ1141?114mに蓄積されている管理情報を更新する。
データ出力手段13は、アービタ18の競合制御の結果を受けて、もしアービタ18によりデータ出力が許可されたならば、バッファ装置の外部から与えられるビットパターン(即ち、出力するデータの優先順位)に従って選択した読出アドレスレジスタ151?15mの持つビットパターンをデータレジスタアレイ10のアドレスとして該データレジスタ10から該当データを取出し、これを第2の通信路に出力する。
また、データ出力手段13は、前記選択した読出しアドレスレジスタと空きアドレス最後尾レジスタ17とを用いて管理情報書込ポート11aと管理情報読出しポート11bとを通じて、管理レジスタアレイ11内部の管理レジスタ1141?114mに蓄積されている管理情報を更新する。」(4頁左下欄18行?5頁左上欄9行)

エ 「また、バッファ状態表示手段19は、同じ優先順位に対応した書込アドレスレジスタと読出しアドレスレジスタの蓄えているビットパターン同志を比較し、データレジスタアレイ10上に仮想的に構成されるそれぞれの優先順位に対応したFIFO機能付き記憶装置(スタック)が出力できるデータを持っているか否かを示すバッファエンプティ信号をバッファ装置外部に表示する。」(5頁右上欄5?12行)

オ 「また、本実施例のバッファ装置を使用する第2の通信路は、出力させたい優先順位に対応した仮想的なFIFO機能付き記憶装置のバッファエンプティ情報を参照し、該FIFO機能付き記憶装置が出力できるデータを持っていることを確認した後該出力したい優先順位を出力優先順位表示信号で示して出力要求信号を該バッファ装置に伝え、その後アービタ18からデータ出力表示信号でデータ出力が行なわれるのを待って、データ出力手段13が出力したデータを受取ることが望ましい(第12図参照)。」(5頁左下欄9?19行)

5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「情報データ記憶装置2」と本願発明の「記憶アレイ」は、「記憶装置」である点で一致する。
引用発明において、情報データは、情報データ記憶装置2のアドレスに記憶されることから、情報データ記憶装置2は、単一のアドレスが指定可能であることは明らかである。
引用発明の「情報データ」及び「データ」は、本願発明の「エントリ」に相当する。引用発明の「優先情報」は、本願発明の「タイプ」に相当する。引用発明の「書き込み」及び「記憶」は、本願発明の「格納」に相当する。そして、引用発明において、情報データ記憶装置2は、情報データの書き込み及び読み出しを行い、また、情報データはA及びBなどの複数の種類の優先情報を有していることから、引用発明は、本願発明の「複数のタイプのエントリの格納及び読み出し」「を行う」構成に相当する構成を有している。
願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項10には「エントリ順序情報」について「前記エントリ順序情報は、前記単一のアドレス指定可能な記憶アレイ内に格納されている前記エントリの位置を表す位置値と、前記エントリの前記タイプを表すタイプ値とを含む」と記載されていることにかんがみると、引用発明の情報データが記憶された「アドレス」及び情報データに関する「優先情報」は、本願発明の格納されたエントリについての「順序情報」に相当する。
引用発明において、アドレス管理装置3は、優先情報を記憶すると共に、この優先情報に対応する情報データが記憶された情報データ記憶装置2の記憶領域を示すアドレスを記憶することは明らかであるから、引用発明は、本願発明の「格納されたエントリについての順序情報の格納」「を行う」構成に相当する構成を有している。
引用発明は、バッファ装置5の発明であるが、バッファ装置5の制御に関する「方法」の発明であるともいえる。
引用発明において、情報データが書き込まれる情報データ記憶装置2のアドレスが利用可能なアドレスであることは明らかである。
引用発明の「アドレス」の値及び「優先情報」の値は、それぞれ本願発明の「前記格納されたエントリの前記アドレスを表す値」及び「タイプを表す値」に相当する。
引用発明の優先情報レジスタ6-1?6-Nとアドレスポインタレジスタ8-1?8-Nとカラム制御装置7-1?7-Nで構成される「アドレス管理ユニット9-1?9-N」は、本願発明の複数の「ステージレジスタ」に相当する。
引用発明において、アドレス管理装置3は、アドレス管理ユニット9-1?9-Nを直列に接続した装置であり、アドレス管理装置3において、アドレス管理ユニット9-1?9-Nの位置は情報データの到着順序を意味し、下方にあるもの程、古い情報データであることを意味し、優先情報レジスタ6-1?6-N及びアドレスポインタレジスタ8-1?8-Nが下方に向かってシフトしていくように接続され、アドレス管理装置3に送られた優先情報は、優先情報が記憶されていない空いているユニットの最下方に記憶され、書き込まれたカラムのアドレスポインタの値が、データの書き込みアドレスになることから、引用発明は、「前記格納されたエントリの前記アドレスを表す値と、該格納されたエントリの前記タイプを表す値とを、複数のステージレジスタにおける利用可能なステージレジスタの中で最も下流のステージレジスタ内に格納」する構成に相当する構成を有している。
引用発明の「情報データが記憶された情報データ記憶装置2の記憶領域を示すアドレス」は、本願発明の「エントリを格納するために利用可能な前記アドレス指定可能な記憶アレイ内の各位置」に相当する。そして、引用発明において、アドレス管理ユニット9-1?9-Nが、情報データが記憶された情報データ記憶装置2の記憶領域を示すアドレスごとに設けられていることは明らかである。
引用発明の情報データ記憶装置2において、データ出力の時は、指定された優先情報を持つデータで、最も古いデータが出力されることから、引用発明と本願発明は「エントリの前記タイプに基づいて、順序規則に従って前記アドレス指定可能な記憶装置から格納されたエントリを読み出」す構成を有する点で一致する。
引用発明において、情報データを読み出し、外部に出力しているから、引用発明の「外部」と本願発明の「要求装置」は「外部」である点で一致する。また、引用発明の「出力」は、本願発明の「転送」に相当する。
引用発明の「情報データ記憶装置2は、送られてきたアドレスに記憶されているデータbを出力」する構成は、本願発明の「前記アドレス指定可能な記憶装置からの前記エントリの取り出し」に相当する。また、引用発明において、情報データ記憶装置2は、送られてきたアドレスに記憶されているデータbを出力する構成について、データbを外部に送っていることは明らかであるから、引用発明の「データb」は、本願発明の「外部に対して送られたエントリ」である点で一致する。そうすると、引用発明の「優先情報Aでデータaのデータが最下方に優先情報Bでデータが下から2番目に、優先情報Aでデータcが下から3番目に書き込まれている状態で、優先情報Bのデータを出力する場合、記憶されているデータの中でBの情報を持つものは、アドレス管理装置3の下から2番目のユニットに記憶されているデータであるから、アドレス管理装置3は、情報データ記憶装置2に対し、下から2番目のアドレスポインタの値1を伝送し、情報データ記憶装置2は、送られてきたアドレスに記憶されているデータbを出力し、アドレス管理装置3では、出力されたデータに対応する優先情報は消去され、消去された優先情報より新しい優先情報が詰められ、アドレスポインタは、優先情報と同様に出力されたアドレスポインタ以降のアドレスポインタの値が詰められ」る構成と本願発明は「前記アドレス指定可能な記憶装置からの前記エントリの取り出しを反映するように、前記ステージレジスタ内に前記格納された値を更新し、ここで、該更新することは、上流のステージレジスタから下流のステージレジスタへと前記値が動かされて、外部に対して送られたエントリに対する値を置き換えることを含」む構成を有する点で一致する。

すると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「単一のアドレス指定可能な記憶装置を使用して、複数のタイプのエントリの格納及び読み出しと、格納されたエントリについての順序情報の格納とを行う方法であって、
前記アドレス指定可能な記憶装置の利用可能なアドレスにエントリを格納し、
前記格納されたエントリの前記アドレスを表す値と、該格納されたエントリの前記タイプを表す値とを、複数のステージレジスタにおける利用可能なステージレジスタの中で最も下流のステージレジスタ内に格納し、ここで、エントリを格納するために利用可能な前記アドレス指定可能な記憶アレイ内の各位置ごとに、1つのステージレジスタが設けられており、
エントリの前記タイプに基づいて、順序規則に従って前記アドレス指定可能な記憶装置から格納されたエントリを読み出し、
前記読み出されたエントリを外部に転送し、
前記アドレス指定可能な記憶装置からの前記エントリの取り出しを反映するように、前記ステージレジスタ内に前記格納された値を更新し、ここで、該更新することは、上流のステージレジスタから下流のステージレジスタへと前記値が動かされて、前記外部に対して送られたエントリに対する値を置き換えることを含むことからなる、方法。」

一方、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本願発明では、単一のアドレス指定可能な記憶装置が記憶アレイであるのに対し、引用発明では、単一のアドレス指定可能な記憶装置が情報データ記憶装置2であり、情報データ記憶装置2が記憶アレイであるのかについて記載がない点。
<相違点2>
本願発明では、要求装置に対してエントリが読み出され又は送られ、また、読み出されたエントリを要求装置に転送するのに対し、引用発明では、外部に対してエントリが読み出され又は送られ、また、読み出されたエントリを外部に転送することについては記載があるが、外部が要求装置であるのかについては記載がない点。
<相違点3>
本願発明では、複数のステージレジスタにおける利用可能なステージレジスタの中で最も下流のステージレジスタ内に、格納されたエントリの有効性を表す値を格納するのに対し、引用発明では、データの有無を識別するための1ビットを格納する点。
<相違点4>
本願発明では、利用可能なステージレジスタが、格納されたエントリの有効性を表す値に基づいて決定され、格納されたエントリの有効性は、アドレス指定可能な記憶アレイに書き込まれており、且つ、要求装置に対して読み出されるか又は送られる準備が出来ているエントリである、有効なエントリを示し、及び、無効なエントリは、アドレス指定可能な記憶アレイから要求装置に対して既に送られたエントリであるのに対し、引用発明では、この構成について明確な記載がない点。
<相違点5>
本願発明では、特定のタイプのエントリが読み出されるよう利用可能な場合には常に、1つか又は複数の要求装置に対して信号を伝達することを含むのに対し、引用発明では、その構成について記載がない点。

6 当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1についての検討>
引用例2には、データをデータレジスタアレイ10(本願発明の「記憶アレイ」に相当。)に記憶する技術が記載されている。
そして、引用発明及び引用例2に記載された技術の属する技術分野は、FIFOバッファである点で共通する。
したがって、引用発明において、引用例2に記載された技術を適用し、情報データ記憶装置2を記憶アレイとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

<相違点2についての検討>
引用例2には、第2の通信路が、出力要求信号をバッファ装置に伝え、バッファ装置からデータを受け取る技術が記載されている。また、第2の通信路には、出力要求信号を出力する要求元の装置(本願発明の「要求装置」に相当。)が接続されていることは自明である。
そして、引用発明及び引用例2に記載された技術の属する技術分野は、FIFOバッファである点で共通する。
したがって、引用発明において、引用例2に記載された技術を適用し、要求装置に対してエントリが読み出され又は送られ、また、読み出されたエントリを要求装置に転送するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

<相違点3及び4についての検討>
引用発明において、アドレス管理ユニット9-1?9-Nの優先情報レジスタ6-1?6-Nは、優先情報の一部として、データの有無を識別するビットを使用し、また、データ入力時は、自アドレス管理ユニット以前のアドレス管理ユニットに対応するアドレスにデータが記憶されていて、自アドレス管理ユニットに対応するアドレスにデータが記憶されていなかった場合、入力バスから優先情報レジスタに優先情報を書き込むことから、データの有無を識別するビットの値に基づいて、利用可能なアドレス管理ユニットが決定されていることは明らかである。
また、引用発明において、アドレス管理装置3には、優先情報抽出装置1から優先情報が伝送され、アドレス管理装置3に送られた優先情報は、優先情報レジスタに書き込まれ、書き込まれたカラムのアドレスポインタの値が、情報データの書き込みアドレスになり、情報データはそのアドレスに記憶されること、及び優先情報が優先情報レジスタに書き込まれるときに、データの有無を識別するビットがデータ有りを示すこととなることは明らかであるから、データの有無を識別するビットがデータ有りとなったときに、情報データが情報データ記憶装置2に書き込まれるといえる。さらに、引用発明において、情報データが情報データ記憶装置2に書き込まれた後、その情報データを外部に出力することができるようにするための特別の処理は何ら記載されていないから、情報データが情報データ記憶装置2に書き込まれたときから、その情報データを外部に出力する準備ができていると解するのが自然である。加えて、引用発明において、情報データ記憶装置2は、送られてきたアドレスに記憶されている情報データを出力し、アドレス管理装置3では、出力された情報データに対応する優先情報は消去されること、及び優先情報が消去されるときにデータの有無を識別するビットがデータ無しを示すこととなることは明らかであるから、情報データが情報データ記憶装置2から外部に送られる前まで、すなわち情報データを外部に出力する準備ができているときまでは、データの有無を識別するビットがデータ有りを示し、情報データが情報データ記憶装置2から外部に送られたときに、データの有無を識別するビットがデータ無しを示すこととなるといえる。したがって、引用発明において、データの有無を識別するビットがデータ有りを示しているときは、その情報データが情報データ記憶装置2に書き込まれており、かつ、情報データを外部に出力する準備ができていることを意味し、データの有無を識別するビットがデータ無しを示すときは、その情報データが情報データ記憶装置2から外部に既に送られたことを意味しているといえる。そうすると、データの有無を識別するビットがデータ有りを示すときは、その情報データが有効であることを意味し、データの有無を識別するビットがデータ無しを示すときは、その情報データが無効であることを意味することは明らかであるから、データの有無を識別するビットの値は、その情報データの有効性を表す値であるといえる。
さらに、要求装置に関しては、上記<相違点2についての検討>に記載したとおりである。
したがって、引用発明において、引用例2に記載された技術を適用し、相違点3及び4のように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

<相違点5についての検討>
引用例2には、それぞれの優先順位(本願発明の「タイプ」に相当。)に対応したFIFO機能付き記憶装置が出力できるデータを持っているか否かを示すバッファエンプティ信号(本願発明の「信号」に相当。)を第2の通信路に出力する技術が記載されている。また、第2の通信路には、バッファエンプティ信号を参照し、バッファ装置に対し出力要求信号を出力する要求元の装置(本願発明の「要求装置」に相当。)が接続されていることは自明である。
そして、引用発明及び引用例2に記載された技術の属する技術分野は、FIFOバッファである点で共通する。
したがって、引用発明において、引用例2に記載された技術を適用し、特定のタイプのエントリが読み出されるよう利用可能な場合には常に、1つか又は複数の要求装置に対して信号を伝達することを含むように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

また、本願発明の構成によって生じる効果も、引用発明及び引用例2に記載された技術から当業者が予測できるものである。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について論及するまでもなく、本願は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-16 
結審通知日 2011-02-22 
審決日 2011-03-07 
出願番号 特願2004-153179(P2004-153179)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 緑川 隆田中 友章  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 稲葉 和生
中野 裕二
発明の名称 単一のアドレス指定可能な記憶アレイを使用して複数のエントリタイプ及び順序情報を格納するための方法及び装置  
代理人 西山 清春  
代理人 古谷 聡  
代理人 溝部 孝彦  

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