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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01C
管理番号 1240537
審判番号 不服2010-15022  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-06 
確定日 2011-07-21 
事件の表示 特願2000-346560「田植機のロータリーケース」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月21日出願公開、特開2002-142520〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,平成12年11月14日の出願であって,平成22年3月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされれたものであり,請求項1及び2に係る発明のうち,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成21年9月24日付の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「田植機のロータリーケースにおいて,中間軸と,その中間軸を回動自在に支持するロータリーケース内壁との間に,中間軸の端部側面と,その中間軸に嵌着されたギヤの側面を支持する鍔付きの円筒形状である低摩擦のブッシュを配置したことを特徴とする田植機のロータリーケース。」

2.刊行物及びその記載内容
刊行物:特開平9-191725号公報

これに対して,原審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された上記刊行物には,図面とともに,次のことが記載されている。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,田植機において,一つの回転ケースに少なくとも二つの苗植体を備えたロータリー式の苗植機構に関するものである。」,
(1b)「【0002】【従来の技術】…
【0003】…この種のロータリー式の苗植機構において,回転ケース内のうち太陽歯車と各苗植軸との中間の部位に中間歯車を配設するに際して,従来は,前記回転ケース内に,前記中間歯車を支持するための中間軸を,その両端を回転ケースの左右側面板の内面に一体的に設けた軸受けボス部内に回転不能に嵌着して設けて,この中間軸に対して,前記中間歯車を回転自在に被嵌するか,或いは,前記回転ケース内に,前記中間歯車を支持するための中間軸を,その両端を回転ケースの左右側面板の内面に一体的に設けた軸受けボス部内に回転自在に嵌挿して設けて,この中間軸に対して,前記中間歯車を回転不能に嵌着すると言う構成にしている。」,
(1c)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし,前記いずれの構造においても,中間軸上における中間歯車の側面を,回転ケースの内面に一体的に設けた軸受けボス部の先端面に対して直接的に接当して,中間歯車がスラスト方向に動かないように構成していることにより,前記中間歯車の側面が,当該中間歯車におけるスラスト荷重により回転しながら軸受けボス部の先端面に対して擦り付けられることになるから,この部分に焼き付きが発生するばかりか,磨耗が発生し易いのであり,しかも,前記軸受けボス部の先端面の磨耗により中間歯車がスラスト方向にガタ付くことになるから,軸受けボス部の先端面に磨耗が発生すると,回転ケースの全体を交換しなければならないと言う問題があった。
【0005】本発明は,この問題を解消することを技術的課題とするものである。」,
(1d)「【0017】そして,前記中間軸20を,回転ケース10内において回転自在に軸支するに際しては,図8及び図9に示すように構成する。すなわち,前記回転ケース10の左右両内面に,軸受けボス部25a,25bを一体的に設けて,この両軸受けボス部25a,25b内に,金属粉末を多孔質に焼結し潤滑油を浸透してオイルレスにした軸受けブッシュ26a,26bを嵌挿し,この両軸受けブッシュ26a,26bにおける一端の外周にリング状のフランジ26a′,26b′を,当該フランジ26a′,26b′が前記軸受けボス部25a,25bの先端面に接当するように一体的に設ける一方,前記中間軸20の両端部を,当該中間軸20に対して両中間歯車21,22が嵌まる部分よりも小径にした小径部20a,20bに形成して,この両小径部20a,20bを,これに薄板状のカラー27a,27bを回転自在に被嵌したのち,前記両軸受けボス部25a,25bにおける軸受けブッシュ26a,26b内に回転自在に挿入する。」,
(1e)「【0018】このように構成することにより,両中間歯車21,22に対するスラスト荷重は,両軸受けボス部25a,25b及び両中間歯車21,22の両方に対して自在に回転する薄板状のカラー27a,27bを介して両軸受けボス部25a,25bに伝達されることになるから,この部分に磨耗が発生すること,及び焼き付きが発生することを確実に低減できると共に,前記の部分に磨耗が発生したとしても,前記カラー27a,27bを交換するだけで良いのである。」,
(1f)「【0019】また,両軸受けボス部25a,25b内に,外周面にリング状のフランジ26a′,26b′を一体的に設けた軸受けブッシュ26a,26bを,そのフランジ26a′,26b′が軸受けボス部25a,25bの先端面に接当するように嵌挿し,この軸受けブッシュ26a,26b内に前記中間軸20の小径部20a,20bを回転自在に挿入したことにより,前記中間軸20と両軸受けボス部25a,25bとの間に焼き付き及び磨耗が発生することを低減できることに加えて,前記カラー27a,27bと軸受けボス部25a,25bとの間に発生することが予想される焼き付き及び磨耗を更に低減することができるのである。」。

上記記載及び図面の記載からみて,上記刊行物には,
「田植機の回転ケース10において,中間軸20と,その中間軸20を回動自在に支持する回転ケース10内壁との間に,中間軸20の端部側面を支持するとともに,カラー27a,27bを介して中間軸20に嵌着された中間歯車21,22の側面を支持するリング状のフランジ26a’,26b’付きの円筒形状であって金属粉末を多孔質に焼結し潤滑油を浸透してオイルレスにした軸受けブッシュ26a,26bを配置した田植機の回転ケース10。」の発明(以下,「刊行物記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比・判断
本願発明と上記刊行物記載の発明とを対比すると,刊行物記載の発明の「回転ケース10」が本願発明の「ロータリーケース」に相当し,以下同様に,「中間軸20」が「中間軸」に,「リング状のフランジ26a’,26b’」が「鍔」に,「中間歯車21,22」が「ギヤ」に,「金属粉末を多孔質に焼結し潤滑油を浸透してオイルレスにした」が「低摩擦の」に,「軸受けブッシュ26a,26b」が「ブッシュ」に,それぞれ相当し,
両者は,
「田植機のロータリーケースにおいて,中間軸と,その中間軸を回動自在に支持するロータリーケース内壁との間に,中間軸の端部側面を支持する鍔付きの円筒形状である低摩擦のブッシュを配置した田植機のロータリーケース。」である点で一致し,次の点で相違する。
(相違点)
鍔付きの円筒形状である低摩擦のブッシュが,本願発明では,中間軸に嵌着されたギヤの側面を(直接)支持するのに対し,刊行物記載の発明では,カラーを介して中間軸に嵌着されたギヤの側面を支持する点。

上記相違点について検討する。

スラスト荷重及びラジアル荷重の両荷重を支持可能な鍔付軸受において、その鍔で直接、スラスト荷重を支持することは、例えば、以下の各文献に開示されるように軸受の使用形態として通常行われていることである。
・実公昭60-28821号公報(特に、第1図の記載を参照)
・実願昭59-22494号(実開昭60-134922号)の
マイクロフィルム(特に、従来例として記載された第3図及び第
4図の記載を参照)

一方、刊行物記載の発明におけるブッシュ(軸受ブッシュ26a、26b)に設けられたフランジ(フランジ26a'、26b')は、カラーを介してではあるがスラスト荷重を支持している(摘記事項(1e))。そして、刊行物記載の発明において、カラーを介しているのは、摘記事項(1c)に記載されるような焼き付きや摩耗の発生を防止するためであるところ、低摩擦ブッシュの性能、田植機の使用環境又は設計耐用年数等の相違により、焼き付きや摩耗の発生を回避できる場合に、上記した軸受の使用形態のようにブッシュ(軸受ブッシュ26a、26b)で直接、スラスト荷重を支持するようにすることは、当業者が通常有する創作能力の発揮に当たる。
そして,本願発明の作用効果は,刊行物記載の発明から当業者が予測できる範囲内のものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができず,本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-13 
結審通知日 2011-05-17 
審決日 2011-06-06 
出願番号 特願2000-346560(P2000-346560)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 博之  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 宮崎 恭
仁科 雅弘
発明の名称 田植機のロータリーケース  
代理人 渡邊 敏  

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