• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200731090 審決 特許
不服200814556 審決 特許
不服200820532 審決 特許
不服20092993 審決 特許
無効2010800239 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07H
管理番号 1240696
審判番号 不服2009-9939  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-05-15 
確定日 2011-07-27 
事件の表示 特願2005-357782「クラリスロマイシンの結晶形態IIの製造」拒絶査定不服審判事件〔平成18年6月1日出願公開、特開2006-137765〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成9年(1997年)7月28日(パリ条約による優先権主張 1996年7月29日 及び 1997年7月25日 米国(US))を国際出願日とする出願(特願平10-509038号)の一部を平成17年12月12日に新たな出願としたものである。
拒絶理由通知に対し、意見書を提出したが、平成21年2月6日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成21年5月15日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年6月15日付けで手続補正がされ、特許法第162条による審査の報告(同法第164条第3項)に基づく審尋に対し、平成22年6月22日付けで回答書が提出されている。

2 平成21年6月15日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年6月15日付けの手続補正を却下する。
[理由]

(1) 補正事項
平成21年6月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の補正事項のうち、特許請求の範囲についての補正は、請求項1及び2における「溶媒を含まない形態II結晶」を「溶媒を含まず且つ単離された、形態II結晶」と補正するものである。

請求人は、審判請求の理由について補正する平成21年7月21日付け手続補正書において、本件補正の目的は「補正前の「形態II結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA」につき限定的に減縮するものである」と主張している。
そこで、特許請求の範囲についての補正が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものとして、本件補正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に適合するか)、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について、以下に検討する。

本願補正発明は、次の事項により特定されるものである。
「以下の:
8.39±0.20、9.33±0.20、10.72±0.20、11.33±0.20、11.74±0.20、12.24±0.20、13.62±0.20、13.97±0.20、15.03±0.20、16.37±0.20、16.80±0.20、17.16±0.20、17.38±0.20、17.97±0.20、18.20±0.20、18.91±0.20、19.75±0.20、20.34±0.20、22.08±0.20、および24.79±0.20で示されるX線2-Θ角度位置を有することを特徴とする、溶媒を含まず且つ単離された、形態II結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA。」

(2) 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開昭63-264495号公報(原審における引用文献3。以下、「引用例」という。)には、「エリスロマイシンA誘導体およびその製造方法」について、次の事項記載されている。(以下、下線は当審で付加したものである。)
ア.「参考例1
(1)実施例1 (3)の方法で得られた2',4"-O-ビス(トリメチルシリル)-6-O-メチルエリスロマイシンA 9-[O-(1-メトキシ-1-メチルエチル)オキシム]3.46gをエタノール/水(1/1)60mlに溶解し、99%ギ酸1.5mlを加え、室温にて30分間攪拌した。次いで大部分のエタノールを減圧下で留去し、残渣に水を加えた。2N水酸化ナトリウム水溶液にて塩基性としたのち、酢酸エチルで抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、6-O-メチルエリスロマイシンA 9-オキシム2.53gを得た。
m.p.248?251℃(エタノール-石油エーテルより再結晶)
(2)上記で得られた化合物2gおよび亜硫酸水素ナトリウム1.1gをエタノール/水(1/1)20mlに溶解し、99%ギ酸0.25mlを加え、100分間還流した。反応液に水30mlを加えたのち、2N水酸化ナトリウム水溶液5mlを滴下し、氷冷下2時間攪拌した。生成した沈殿物を濾取し、エタノールから再結晶し、6-O-メチルエリスロマイシンA 1.51gを得た。 m.p.223?225℃」(21頁右上欄下3行?右下欄2行)

上記記載事項によれば、引用例には、「結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3) 対比
本願補正発明と、引用発明とを対比すると、両者は「6-O-メチルエリスロマイシンAの結晶」である点で一致し、本願補正発明が、所定のX線2-Θ角度位置を有する溶媒を含まず且つ単離された形態II結晶であるのに対し、引用発明は、かかる特定がされていない点で相違する。

(4) 相違点についての判断
最初に、「溶媒を含まず且つ単離された」の技術的意義について検討する。
本願明細書の発明の詳細な説明には、「溶媒を含まない」との事項は何ら記載されておらず、「濾過によって単離し」、「周囲温度?約50℃の温度および水銀約2インチ?気圧の圧力下において真空炉中で乾燥し」(段落[0027])と記載されている。(段落[0028]、[0030]などにも同様な記載がある。)
これらの記載事項によれば、本願補正発明における「単離」とは、生成した結晶を濾過によって母液と分離することを意味し、「溶媒を含まない」とは、再結晶によって物質を精製する際に、再結晶に用いた溶媒が残留することのないように、減圧下で十分に溶剤を除去することを意味するものと理解できる。
そして、再結晶によって物質を精製する際に、生成した結晶を濾過により母液と分離すること、再結晶に用いた溶媒が残留することのないように、減圧下で十分に溶剤を除去することは慣用手段であるから、「溶媒を含まず且つ単離された」とは、限定事項として単に慣用手段を付加するに過ぎず、本願補正発明の「溶媒を含まず且つ単離された、形態II結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA」は、「形態II結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA」と何ら異なるものではない。

なお、請求人は、上記回答書において次のとおり主張している。
「前置報告書において、「「単離された」という発明特定事項の追加によって、物の範囲が特段限定されるものではない」と御認定されていますが、「単離された」との語は、形態II結晶の6-O-メチルエリスロマイシンAを濾過し、乾燥させることで組成物から残留している溶媒を除去したことを意味するものであります。よって、「「単離された」という発明特定事項の追加によって、物の範囲が特段限定されるものではない」との御認定は当たらず、形態II結晶の6-O-メチルエリスロマイシンAが残留溶媒を除去されたものであることを明瞭にする語であるといえます。尚、「単離された」とは必ずしも全ての溶媒が除去されなければならないことを意味するのではなく、実用的な程度において残留した溶媒が除去されることを意味するものです。」
上記主張からみても、「溶媒を含まず且つ単離された、形態II結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA」と、「形態II結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA」とは、異なるものではないというべきである。

次に、引用発明の「結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA」について検討する。

本願明細書における参考例(段落[0036])には、「米国特許第4990602号の方法によってエタノールから再結晶して、6-O-メチルエリスロマイシンA形態Iを得た。」と記載されており、上記引用例は同米国特許に関連する出願である。一方、引用発明の「結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA」もエタノールから再結晶して得られたものであるから、引用発明の「結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA」は本願明細書における「形態I結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA」に相当する。
また、本願明細書には、「6-O-メチルエリスロマイシンAが、識別のために「形態I」および「形態II」と称される少なくとも2種の結晶形態で存在しうることを我々は見い出した。」(段落[0004])と記載されているところからみて、「形態I結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA」と「形態II結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA」とは、6-O-メチルエリスロマイシンAの「結晶多形」の関係にあるということができる。
すなわち、引用発明の「結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA」と「形態II結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA」とは、6-O-メチルエリスロマイシンAの「結晶多形」の関係にある。

ところで、医薬に用いられる多くの化合物において、結晶多形が存在すること、結晶形態によって溶解性や安定性に差があること、溶媒の種類や温度条件によって結晶多形が生ずることは周知である(例えば、西垣貞男著「調剤学 -基礎と応用-」(株式会社南山堂、1981年10月1日 6刷発行の142?145ページ)、仲井由宣、花野学編「新製剤学」(株式会社南山堂 1984年4月25日第2刷発行)の102ページ?103ページ、232?233ページ、等参照)から、6-O-メチルエリスロマイシンAについても、多形が存在する可能性を考慮して、異なる溶媒や温度条件で再結晶を行って、結晶多形の存在を確認することは当業者が普通に行うことである。
また、結晶多形について、X線回折による2Θ角度位置で表現することに特段の技術的意義があるということもできない。

そして、形態II結晶の6-O-メチルエリスロマイシンAが形態I結晶のものと比較して、格別顕著な効果を奏するものと認めることもできない。

そうすると、本願補正発明は、単に6-O-メチルエリスロマイシンAに「形態I」および「形態II」と称される少なくとも2種の結晶形態が存在することを単に発見したにすぎないというべきである。
したがって、本願補正発明は、その優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることできたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、請求人は上記回答書において補正案を提示し、補正する機会を求めているが、補正する機会を与えるべき理由は見当たらない。

(5) 補正却下のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
平成21年6月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「以下の:
8.39±0.20、9.33±0.20、10.72±0.20、11.33±0.20、11.74±0.20、12.24±0.20、13.62±0.20、13.97±0.20、15.03±0.20、16.37±0.20、16.80±0.20、17.16±0.20、17.38±0.20、17.97±0.20、18.20±0.20、18.91±0.20、19.75±0.20、20.34±0.20、22.08±0.20、および24.79±0.20で示されるX線2-Θ角度位置を有することを特徴とする、溶媒を含まない形態II結晶の6-O-メチルエリスロマイシンA。」

(1) 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2) 対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「且つ単離された」との発明を特定する事項を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定するために必要な事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-25 
結審通知日 2011-03-01 
審決日 2011-03-15 
出願番号 特願2005-357782(P2005-357782)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C07H)
P 1 8・ 121- Z (C07H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三木 寛  
特許庁審判長 横尾 俊一
特許庁審判官 平井 裕彰
星野 紹英
発明の名称 クラリスロマイシンの結晶形態IIの製造  
代理人 渡邉 千尋  
代理人 川口 義雄  
代理人 小野 誠  
代理人 坪倉 道明  
代理人 金山 賢教  
代理人 大崎 勝真  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ