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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
管理番号 1240854
審判番号 不服2010-14336  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-30 
確定日 2011-07-28 
事件の表示 特願2004- 10484「標識装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月28日出願公開、特開2005-202282〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年1月19日の出願であって、平成21年6月19日付け拒絶理由通知に対して、同年8月21日に手続補正がなされたが、平成22年4月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月30日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
これに対し、当審において、平成23年3月28日付けで拒絶の理由(最初)を通知したところ、同年5月18日に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成23年5月18日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
紫外線照射によって発光する平面である標識面を備えた標識本体と、前記標識面に紫外線を照射する第1及び第2の照射具を含む照射装置とを備えた道路用の標識装置であって、
前記第1の照射具から当該第1の照射具が照射対象とする標識面上の対象標識面に入射される紫外線の最大入射角度をθ1とし、第2の照射具から当該第2の照射具が照射対象とする標識面上の対象標識面に入射される紫外線の最小入射角度をθ2としたときに、角度θ1が30°を越えて70°未満、角度θ2が5°を越えて30°未満に設定され、
前記照射装置と矩形の平面である標識面との間の当該標識面の基準軸方向に沿う距離をXとし、照射装置と標識面の照射装置寄りの側端部との間の標識面の面方向に沿う距離と、標識面の横幅との和をMとしたときに、
前記照射装置は、標識面に対し、X/Mが0.5を越えて2.0未満となるように配置され、前記基準軸方向で見たときに、標識面の側端部より外側に位置することを特徴とする標識装置。」(下線は審決で付した。以下同じ。)

第3 引用文献に記載の事項
当審の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-301516号公報(以下「引用文献1」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

1 「【請求項1】照射装置本体の内部に、近紫外線領域に高い反射特性を有し、可視光領域に低い反射特性を有する反射鏡を配置し、また同照射装置本体の前面に、紫外線領域において分光透過率が高く、可視光領域において分光透過率の低い透光フィルターを配置し、さらに透光フィルターから照射される紫外線と可視光の混光割合を、20対1以下の比率で構成したことを特徴とする紫外線照射装置。」

2 「【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】本発明は紫外線照射装置の改良に関する。
【0003】
【従来の技術】従来、例えば道路壁面のディスプレー、道路標識あるいは看板等において、下地部分は青色として構成し、文字や図柄を蛍光面として構成し、同蛍光面に紫外線を照射し、文字や図柄が強い視認特性を有するように構成してある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記した紫外線照射装置によると、文字や図柄以外の下地部分が沈み込んで視認することができず、視認性が大きく低下する欠点がある。下地部分が沈み込むことで、例えば道路標識に使用した場合、標識全体が視認できず、文字や図柄が浮かびあがり違和感がある。
【0005】そこで、従来可視光のみを照射する照明装置が使用されているが、同装置よると蛍光体を使用しないため、雨や雪等気象条件が悪いとき、乱反射し視認性が低下する欠点がある。
【0006】本発明は上記の諸点に鑑み発明したものであって、表示面全体が所定の明るさで視認することができ、また文字や図柄を明確に視認することができる紫外線照射装置を提供することを目的とする。」

3 「【0008】
【発明の実施の形態】以下本発明を図1乃至図6について説明する。図1及び図2において、1は照射器本体であって、例えばアルミニウム材で構成してある。2は照射器本体1の内部に収納してなる反射鏡、3は反射鏡の内部に装着してなる光源であって、例えば400ワットのメタルハライドランプを用いて構成してある。同光源の分光透過特性は図6に示すとおりである。4は照射器本体1の前端に配置してなるフィルターである。5は照射器の前方に配置してなる道路標識であって、例えば下地部分は青色として構成し、文字や図柄を蛍光面として構成し、表示面に紫外線を効率よく照射し、可視光は減光して照射し、文字や図柄が強い視認特性を有するように構成してある。
【0009】上記の構成において、透光フィルターは、紫外線領域において分光透過率が高く、可視光領域において分光透過率は低く構成してある。分光透過率は図3と図4に示すように、波長365nmにおいて70%以上であり、460nm?660nmにおける平均透過率が0.5%以下に構成してある。同透光フィルターは、着色剤を混入してなる硬質ガラスで構成してある。同紫外線照射装置によると、紫外線を効率よく透過し可視光の透過は僅かであるので、表示面全体を視認し得ると共に文字や図柄を明確に視認することができ道路標識や看板等の使用に適する。
【0010】反射鏡は、近紫外線領域に高い反射特性を有し、可視光領域に低い反射特性を有して構成してある。また同反射鏡は、図5に示すように近紫外線領域を90%反射し、可視光を吸収または10%以下の反射特性を有して構成してある。反射鏡は例えばアルミニウムの表面に鏡面処理をし、さらに鏡面処理の表面に14層乃至25層程度の光学多層膜を被着し、紫外線反射鏡として構成してある。同紫外線照射装置によると、紫外線を効率よく反射し可視光の反射は僅かであるので、表示面全体を視認し得ると共に文字や図柄を明確に視認することができる。」

4 「【0012】次に上記した紫外線照射装置を道路標識の照明として使用した実験結果を説明する。
[実験条件]
1(審決注:原文では○に1。以下同様。)図1における道路標識と紫外線照射装置の間隔は10mとし
て構成してある。
2(○に2)道路標識の下地部分は青色塗装とし、文字と図柄部分は蛍光
塗料を被着して構成してある。
3(○に3)照射器から照射される紫外線と可視光の混光割合。
混合比 40:1 20:1 15:1 10:1
4(○に4)フィルターの可視光の平均透過率(%)
1.5 1.0 0.5 0.1
5(○に5)反射鏡の紫外線反射率(%)
30 60 90
6(○に6)光源
400ワットのメタルハライドランプ(分光特性 図6に示すとおり)
7(○に7)評価者:10人
8(○に8)評価区分
A:大変良い
B:良い
C:悪い
【0013】[実験結果]
1(○に1)紫外線と可視光の混光割合が40:1で、フィルターの可視光の平均透過率が0.5%で、反射鏡の紫外線反射率が90%であると、標識の下地部分には、若干の可視光が照射され、文字や図柄部分に多量の紫外線が照射されるので、標識全体を視認し得ると共に文字や図柄を明確に視認できる。同条件によると、9人の評価者がAで、1人の評価者がBであった。
2(○に2)紫外線と可視光の混光割合が20:1で、フィルターの可視光の平均透過率が0.5%で、反射鏡の紫外線反射率が90%であると、と比較し紫外線量は少なくなるが、8人の評価者がAで、2人の評価者がBであった。上記1(○に1)と2(○に2)では、標識として十分機能することが確認されている。
3(○に3)紫外線と可視光の混光割合が15:1で、透光フィルターの可視光の平均透過率が0.5%で、反射鏡の紫外線反射率が60%であると、紫外線量が少なく、標識全体を認識できるが、文字や図柄部分を明確に認識することができず、8人の評価者がBで、2人の評価者がCであった。
4(○に4)紫外線と可視光の混光割合が10:1で、フィルターの可視光の平均透過率が1.0%で、反射鏡の紫外線反射率が60%であると、紫外線量が減少し可視光が増大するので、3(○に3)に比較しさらに文字や図柄部分を明確に認識することができず、2人の評価者がBで、8人の評価者がCであった。」

5 「【0014】
【発明の効果】請求項1に記載の本発明によると、表示面全体が所定の明るさで視認することができ、また文字や図柄を明確に視認することができ、道路標識や看板等に使用した場合、気象条件が悪い場合も表示効果が大きい特別な効果がある。」

6 図1及び図2より、「照射器本体1」の前方に矩形の表示面を有する「道路標識5」を配置し、その表示面に紫外線を照射するようにした装置(以下「道路用の標識装置」という。)が看取される。

7 図2より、「道路標識5」は表示面の照射器本体寄りの側端部が取付け部材を介して支柱に取り付けられ、「照射器本体1」は表示面の側端部よりも路肩側に位置するように配置された、道路用の標識装置が看取される。

8 上記記載から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「下地部分は青色塗装とし、文字と図柄部分は蛍光塗料を被着して構成した矩形の表示面を有する道路標識と、
表示面に紫外線を照射する照射器本体と、を備えた道路用の標識装置であって、
照射器本体の前方に道路標識が配置され、
道路標識は表示面の照射器本体寄りの側端部が取付け部材を介して支柱に取り付けられ、
照射器本体は表示面の側端部よりも路肩側に位置するように配置された、
道路用の標識装置。」

第4 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「下地部分は青色塗装とし、文字と図柄部分は蛍光塗料を被着して構成した矩形の表示面」は本願発明の「紫外線照射によって発光する平面である標識面」に相当し、同様に、
「道路標識」は「標識本体」に、
「照射器本体」は「照射装置」に、
「道路用の標識装置」は「道路用の標識装置」に、それぞれ相当する。

(2)引用発明の「矩形の表示面」が所定の横幅を備えていることは明らかであり、また、引用発明の「照射器本体」は「表示面の側端部よりも路肩側に位置するように配置された」ものであるから、「照射器本体」は表示面の側端部より外側に位置するといえる。
してみれば、引用発明と本願発明とは「前記照射装置と矩形の平面である標識面との間の当該標識面の基準軸方向に沿う距離をXとし、照射装置と標識面の照射装置寄りの側端部との間の標識面の面方向に沿う距離と、標識面の横幅との和をMとしたときに、
前記照射装置は、標識面に対し、X/Mが所定範囲Aとなるように配置され、前記基準軸方向で見たときに、標識面の側端部より外側に位置する」という点で共通する。

(3)してみると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「紫外線照射によって発光する平面である標識面を備えた標識本体と、前記標識面に紫外線を照射する照射装置とを備えた道路用の標識装置であって、
前記照射装置と矩形の平面である標識面との間の当該標識面の基準軸方向に沿う距離をXとし、照射装置と標識面の照射装置寄りの側端部との間の標識面の面方向に沿う距離と、標識面の横幅との和をMとしたときに、
前記照射装置は、標識面に対し、X/Mが所定範囲Aとなるように配置され、前記基準軸方向で見たときに、標識面の側端部より外側に位置する、標識装置。」

(4)一方で、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
「照射装置の構造と紫外線の標識面への入射角度」に関し
本願発明が「前記標識面に紫外線を照射する第1及び第2の照射具を含む照射装置とを備えた道路用の標識装置であって、
前記第1の照射具から当該第1の照射具が照射対象とする標識面上の対象標識面に入射される紫外線の最大入射角度をθ1とし、第2の照射具から当該第2の照射具が照射対象とする標識面上の対象標識面に入射される紫外線の最小入射角度をθ2としたときに、角度θ1が30°を越えて70°未満、角度θ2が5°を越えて30°未満に設定され」と特定されるのに対して、引用発明では上記特定を有するか否か不明である点。

<相違点2>
「所定範囲A」に関し
本願発明が「0.5を越えて2.0未満」と特定されるのに対して、引用発明では上記特定を有するか否か不明である点。

2 判断
上記<相違点1>及び<相違点2>について検討する。
(1)引用文献1の図2から、2つの照射具を含む「照射器本体1」が見て取れるから、照射具の数については実質的な相違点ではない。
仮に、そうでないとしても、引用発明の「照射装置(照射器本体)」を2つの照射具を含む照射装置とすることは、当業者が適宜なし得たことである(例えば、特開平9-90889号公報の図1ないし5、特開平8-227604号公報の図1を参照。以下「周知技術」という。)。

(2)また、外部照明式の標識装置において、表面輝度等を測定することにより視認性の評価を行うことは、本願出願前に周知の事実である(例えば、特表2001-517809号公報の【0016】ないし【0024】、特開2000-57828号公報の【0040】及び【0041】、特開平11-184412号公報の【0014】及び【0015】、特開平11-134916号公報の【0034】、特開平10-112212号公報の【0028】ないし【0030】、特開平8-329717号公報の【0015】及び【0016】、特開平8-49218号公報の表1及び図1を参照。以下「周知事実」という。)。

(3)そして、照射装置のランプ出力、標識本体の設置高さ、標識本体のサイズ及び表面での反射特性等が一定の場合、照射装置の位置が遠くなるほど標識面が暗くなり、近くなるほど輝度ムラを生じることは、当業者にとって自明のことである。

(4)してみれば、引用発明において、最大入射角度及び最小入射角度を含めた両者の最適な位置関係は、当業者が照射装置のランプ出力等を勘案しつつ視認性の評価を行いながら適宜設定し得たことである。

(5)ところで、本願明細書には、「角度θ1」、「角度θ2」及び「X/M」について以下の事項が記載されている。

ア 「【0021】
ここで、・・・(略)・・・前記角度θ1が30°以下又は前記角度θ2が5°以下であると、標識面14が暗くなり、十分な視認性が得られなくなる一方、角度θ1が70°以上又は前記角度θ2が30°以上であると、標識面14の均斉度が低下して標識面14の十分な視認性が得られなくなる。
・・・(略)・・・前記X/Mが0.5以下であると、標識面14の均斉度が低下し易くなり、標識面14に良好な視認性が得られなくなる一方、前記X/Mが2.0以上であると、標識面14が暗くなり易くなり、良好なる視認性を得ることが困難となる。」

イ また、実施例1ないし4は、紫外放射ランプの出力が「400W」、標識面14の横幅Wが「3.5m」、距離Y1が「0.3m」及び距離Y2が「1.2m」との条件下で、
「距離X」を「6.0m」及び「5.5m」に、
「角度θ1」を「44°」及び「41°」に、
「角度θ2」を「16°」及び「15°」に設定した例が示されている。

上記実施例1ないし4は、本願発明の「M」の値を一定(3.5m+0.75m=4.25m)とした場合に、
「距離X:6.0m」では、
「角度θ1:44°、角度θ2:16°」が好適であること、
「距離X:5.5m」では、
「角度θ1:41°、角度θ2:15°」が好適であること、を示したものである。

ウ 上記ア及びイより、本願発明における、「角度θ1」の「30°を越えて70°未満」、「角度θ2」の「5°を越えて30°未満」及び「X/M」の「0.5を越えて2.0未満」のそれぞれの数値には、臨界的な技術的意義は認められず、標識面が暗くならず、かつ輝度ムラを生じることのない、好適な範囲を選択したにすぎないものである。

(6)上記(5)からして、引用発明において、第1の照射具に係る最大入射角度θ1を「30°を越えて70°未満」に、第2の照射具に係る最小入射角度θ2を「5°を越えて30°未満」の範囲内にするとともに、照射装置と標識面との位置関係を示す「X/M」を「0.5を越えて2.0未満」の範囲内とすることは、当業者が適宜なし得た設計事項である。

(7)上記(1)及び(6)のようにした引用発明の「照射装置の構造と紫外線の標識面への入射角度」は、「前記標識面に紫外線を照射する第1及び第2の照射具を含む照射装置とを備えた道路用の標識装置であって、
前記第1の照射具から当該第1の照射具が照射対象とする標識面上の対象標識面に入射される紫外線の最大入射角度をθ1とし、第2の照射具から当該第2の照射具が照射対象とする標識面上の対象標識面に入射される紫外線の最小入射角度をθ2としたときに、角度θ1が30°を越えて70°未満、角度θ2が5°を越えて30°未満に設定され」るとともに、「所定範囲A」は、「0.5を越えて2.0未満」となる。

(8)以上のことから、引用発明において、上記<相違点1>及び<相違点2>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が適宜なし得た設計事項である。

(9)また、本願発明の奏する効果も、当業者が引用発明、周知技術及び周知事実から予測し得る範囲内のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献1に記載された発明、周知技術及び周知事実に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-24 
結審通知日 2011-05-31 
審決日 2011-06-13 
出願番号 特願2004-10484(P2004-10484)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 桐畑 幸▲廣▼
星野 浩一
発明の名称 標識装置  
代理人 山口 義雄  
代理人 山口 義雄  
代理人 山口 義雄  
代理人 山口 義雄  
代理人 山口 義雄  

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