ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
---|---|---|
不服20099939 | 審決 | 特許 |
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07C |
---|---|
管理番号 | 1241139 |
審判番号 | 不服2007-31090 |
総通号数 | 141 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-11-16 |
確定日 | 2011-08-12 |
事件の表示 | 特願2000-399828「ベンゼンスルフォナート化合物」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月10日出願公開、特開2002-193915〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は、平成12年12月28日の出願であって、平成19年7月26日付けで拒絶理由が通知され、同年9月19日に意見書が提出されたが、同年10月9日付けで拒絶査定がされたところ、同年11月16日に拒絶査定に対する審判請求がされ、同年12月10日に審判請求書の手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 この出願の請求項1に係る発明は、願書に添付された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。 「一般式(1) [式中、Xはハロゲン原子を示す。] で表されるベンゼンスルフォナート化合物。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、引用された刊行物は下記のとおりである。 記 1.特開平7-179457号公報(原査定における引用文献1。以下、「刊行物1」という。) 2.大饗 茂編、「有機硫黄化学(合成反応編)」、(株)化学同人、1982年9月1日発行、349?351頁「10.3.4 スルホン酸エステルの反応」(原査定における引用文献2。以下、「刊行物2」という。) 第4 各刊行物に記載された事項 1 刊行物1に記載された事項 この出願の出願前に頒布された刊行物である刊行物1には、以下の事項が記載されている。 1a「【請求項1】下記一般式(I) 【化1】 Xは-O-,-NHCO-または-NH-を表し、lは2?6の整数を表し、mは0または1を表し、nは1または2を表し、環α,β,γはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、C_(1)?C_(3) のアルキル基、C_(1)?C_(3)のアルコキシ基およびシアノ基から選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。)で表されるN-置換イミダゾール誘導体もしくはその塩、またはそれらの水和物。・・・ 【請求項17】 請求項1?16のいずれかに記載の化合物および薬学的に許容される担体からなることを特徴とする医薬組成物。」(請求項1及び17) 1b「本発明化合物(I)は、以下に示す第1?第3の方法によって製造される。 (第1方法) 【化5】 (上記式中で、A,α,l,m,nは前記一般式(I)で定義したとおりである。Y,Zは独立してハロゲン原子またはスルホン酸エステルなどのエステル基を表し、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、アセトキシ基などがあげられる。) 本法は置換基を有していてもよいフェノール誘導体または置換基を有していてもよいベンジルアルコール誘導体の水酸基に末端に脱離基の置換した直鎖アルキル基を結合させ、最後にこの脱離基を置換基を有してもよいイミダゾールまたは置換基を有していてもよいベンズイミダゾールで置換して目的化合物(V)を得る方法である。 1段階目の置換基を有していてもよいフェノール誘導体または置換基を有していてもよいベンジルアルコール誘導体の水酸基に、末端に脱離基の置換した直鎖アルキル基を結合させる反応は通常、有機溶媒中、塩基存在下行なわれる。 用いる塩基としては、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、アルコキシナトリウム、トリエチルアミンなどがあげられる。」(段落【0011】?【0014】) 1c「合成例2 4-(4-クロロブトキシ)-1,3-ベンゾジオキソールの製造 無水エタノール10mlに金属ナトリウム127mgを加えて溶かし、そこへ4-ヒドロキシ-1,3-ベンゾジオキソール690mgを加えて、室温で10分間撹拌した。ここに4-クロロブチルp-トルエンスルホネート1.55gを加えて12時間加熱還流した。合成例1と同様に後処理して目的の4-(4-クロロブトキシ)-1,3-ベンゾジオキソール1.08g(収率95%)を油状物として得た。」(段落【0042】) 2 刊行物2に記載された事項 この出願の出願前に頒布された刊行物である刊行物2には、以下の事項が記載されている。 2a「10.3.4 スルホン酸エステルの反応 スルホン酸エステル(R’SO_(2)-OR”)はR’とR”の性質によって熱や加水分解などに対する安定性が大きく異なる.加水分解はアルキルエステルのほうがアリールエステルより容易に起こる.アルキルエステルの加水分解は,S_(N)1およびS_(N)2型のC-O結合開裂で進む.それゆえアルキルエステルの有用性は脱離基としてのスルホナートアニオン(R’SO_(3)^(-))にあり,アルコール性水酸基がとり込まれるためメタキシレン42などのアルキル化剤としてよく用いられる.(審決注:反応式は省略)しかもハロゲン化アルキルに比べ,脱離生成物に対する置換生成物の比率が大きい特徴をもっている.そのうえ,n-アルキルエステルの場合でも転位生成物を与えない.トリフルオロメタンスルホナート(triflate基)は特に良好な脱離基であり,MeOSO_(2)CF_(3)はMeOSO_(2)-p-Tolよりも10^(4)倍も速くアセトリシスを受ける.o-ニトロベンゼンスルホナートもトシラートより優れた脱離基である.」(349頁4?16行) 第5 当審の判断 1 刊行物1に記載された発明 刊行物1には、医薬組成物に使用される「一般式(I)」で表される化合物に関し記載されており(摘示1a)、該化合物の製造方法として、「第1方法」が挙げられ(摘示1b)、その第1段階である化合物(II)と化合物(III)とから、化合物(IV)を製造する方法について、合成例2に、次の方法が記載されている(摘示1c)。 「4-(4-クロロブトキシ)-1,3-ベンゾジオキソールの製造 無水エタノール10mlに金属ナトリウム127mgを加えて溶かし、そこへ4-ヒドロキシ-1,3-ベンゾジオキソール690mgを加えて・・・。ここに4-クロロブチルp-トルエンスルホネート1.55gを加えて12時間加熱還流した。・・・後処理して目的の4-(4-クロロブトキシ)-1,3-ベンゾジオキソール1.08g(収率95%)を油状物として得た。」 そうすると、刊行物1には、4-(4-クロロブトキシ)-1,3-ベンゾジオキソールの製造に用いる原料(中間体)化合物として、「4-クロロブチルp-トルエンスルホネート」が記載されているということができる。そして、「スルホネート」は、「スルフォナート」とも表記される。 したがって、刊行物1には、 「4-クロロブチルp-トルエンスルフォナート化合物」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。 2 対比 本願発明と引用発明を対比するにあたり、両発明の化合物の構造及び化合物名について、今一度確認する。 引用発明の「4-クロロブチルp-トルエンスルフォナート化合物」の構造式は、 で表されるので、別名として、「4-クロロブチル p-メチルベンゼンスルフォナート化合物」であるともいえる。 他方、本願発明の化合物である 「 [式中、Xはハロゲン原子を示す]で表されるベンゼンスルフォナート化合物」は、化合物名としては、「4-ハロゲノブチル o-ニトロベンゼンスルフォナート化合物」であるといえる。 そこで、以下、本願発明の化合物を「4-ハロゲノブチル o-ニトロベンゼンスルフォナート化合物」といい、引用発明の化合物を「4-クロロブチル p-メチルベンゼンスルフォナート化合物」ということにして、両者を対比すると、本願明細書の段落【0007】によれば、本願発明の「ハロゲノ」(ハロゲン原子)として「クロロ」(塩素原子)を包含するから、引用発明の「クロロ」は、本願発明の「ハロゲノ」に相当する。 また、両者は、ベンゼン環上に置換基を有する、置換ベンゼンスルフォナート化合物である点で共通するということができる。 よって、両者は、 「4-クロロブチル 置換ベンゼンスルフォナート化合物」 である点で一致するが、以下の点でのみ相違するということができる。 A 置換ベンゼンスルフォナート化合物のベンゼン環上の置換基が、本願発明においては、「o-ニトロ」であるのに対し、引用発明においては、「p-メチル」である点 (以下、「相違点A」という。) 3 検討 (1)相違点Aについて ア p-メチルベンゼンスルフォナートについて 上記1及び2で述べたとおり、引用発明の化合物はp-メチルベンゼンスルフォナート化合物といえ、4-(4-クロロブトキシ)-1,3-ベンゾジオキソールの製造に用いる原料(中間体)として用いられるものである。その製造の詳細は、刊行物1の摘示1cに記載されており、1,3-ベンゾジオキソールのベンゼン環に置換した4-ヒドロキシ基、すなわち、フェノール性の水酸基に、「4-クロロブチル p-メチルベンゼンスルフォナート化合物」を塩基存在下で反応させると、水酸基が「4-クロロブチル化」されるもので、反応式で示すと以下のようになる(摘示1bの「第1方法」の第1段階である化合物(II)と化合物(III)とから、化合物(IV)を製造する方法において、mが0、Zがp-メチルベンゼンスルフォナート、Yがクロロの場合にあたる。)。 つまり、「4-クロロブチル p-メチルベンゼンスルフォナート化合物」の「p-メチルベンゼンスルホン酸基」(p-CH_(3)C_(6)H_(4)SO_(3)-)は脱離基となり、「4-クロロブチル基」(-(CH_(2))_(4)Cl)が、フェノール性の水酸基に導入され、「4-クロロブチル化」されることになるから、「4-クロロブチル p-メチルベンゼンスルフォナート化合物」は、上記化合物(IV)の製造における中間体であって、「p-メチルベンゼンスルホン酸基」(p-CH_(3)C_(6)H_(4)SO_(3)-)を脱離基とする「4-クロロブチル化」剤であるといえる。 イ o-ニトロベンゼンスルフォナートについて 一方、刊行物2には、スルホン酸エステル(R’SO_(2)-OR”)の脱離基としての性質について記載されており、「アルキルエステルの有用性は脱離基としてのスルホナートアニオン(R’SO_(3)^(-))にあり,・・・アルキル化剤としてよく用いられる」こと、「o-ニトロベンゼンスルホナートもトシラートより優れた脱離基である」ことが記載されており(摘示2a)、上記の脱離基としての性質は、当業者に周知であるといえる。すなわち、トシラートは、p-トルエンスルフォナート(p-メチルベンゼンスルフォナート)と同義であるから、アルキル化剤として、p-メチルベンゼンスルフォナートより、o-ニトロベンゼンスルフォナートの方が優れていることが周知といえる。 ウ 原料としてのアルキル化剤について 上記1で述べたとおり、刊行物1においては、最終生成物である一般式(I)で表される化合物が医薬組成物として使用されることを考慮すれば、より不純物の少ない高純度のものが得られるような反応を求めることは、当業者に周知の課題であるといえるところ、引用発明の「4-クロロブチル化」剤も、アルキル部分が結合する原料としてのアルキル化剤であり、より不純物の少ない高純度のものが得られるようにするために、より穏和な条件で行える方法が望ましいといえるから、引用発明において、p-メチルベンゼンスルフォナートより優れた脱離基であることが周知であるo-ニトロベンゼンスルフォナートを導入したものとし、それにより、「4-クロロブチル化」剤として、「4-クロロブチル o-ニトロベンゼンスルフォナート化合物」を想到することは、当業者にとって容易である。そして、本願発明の化合物については、その化学構造となるべく具体的に合成することは、当業者にとって何らの困難があるともいえない。 エ まとめ したがって、引用発明において、置換ベンゼンスルフォナート化合物のベンゼン環上の置換基である「p-メチル」を、アルキル化剤としてより優れた「o-ニトロ」とすること、すなわち、引用発明の「4-クロロブチルp-トルエンスルフォナート化合物」に代えて、本願発明の「4-ハロゲノブチル o-ニトロベンゼンスルフォナート化合物」を想到することは、当業者にとって容易である。 (2)本願発明の効果について ア 本願発明は、本願明細書の段落【0005】?【0006】の記載からみて、「7-(4-ハロゲノブトキシ)-3,4-ジヒドロカルボスチリルを工業的規模にて、安価に、しかも簡便な操作で、高収率且つ高純度で製造できるという、7-(4-ハロゲノブトキシ)-3,4-ジヒドロカルボスチリルを合成するための中間体として優れたものである」という効果を奏するものである。 イ ここで、本願発明の「中間体として」の効果とは、次のようなものであるということができる。 本願明細書の段落【0015】?【0016】には、反応式-2として、式(4)で表される7-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノンと一般式(1)のベンゼンスルフォナート化合物とを反応させることにより、一般式(5)で表される7-(4-ハロゲノブトキシ)-3,4-ジヒドロカルボスチリルを製造することが記載されており、反応式は以下のとおりである。 つまり、本願発明の「4-ハロゲノブチル o-ニトロベンゼンスルフォナート化合物」の「o-ニトロベンゼンスルホン酸基」(o-NO_(2)C_(6)H_(4)SO_(3)-)は脱離基となり、「4-ハロゲノブチル基」(-(CH_(2))_(4)X)が、フェノール性の水酸基に導入され、「4-ハロゲノブチル化」されることになるから、「4-ハロゲノブチル o-ニトロベンゼンスルフォナート化合物」は、「o-ニトロベンゼンスルホン酸基」(o-NO_(2)C_(6)H_(4)SO_(3)-)を脱離基とする「4-ハロゲノブチル化」剤であるといえるので、上記中間体としての効果とは、「4-ハロゲノブチル化」剤としての効果であるということができる。 そこで、引用発明についてみると、上記(1)で述べたとおり、引用発明である「4-クロロブチルp-トルエンスルフォナート化合物」も、フェノール性水酸基に対する「4-クロロブチル化」剤として用いられる中間体であり、反応の相手である原料のフェノールに縮合する環が異なるものの、本願発明と同様の反応に用いられる中間体であるといえる。 また、刊行物1においても、「4-クロロブチル p-メチルベンゼンスルフォナート化合物」を中間体として用いた合成例2において、収率95%という高収率で最終生成物が得られている(摘示1c)。 そして、上記(1)で述べたように、刊行物2には、「o-ニトロベンゼンスルホナートもトシラートより優れた脱離基である」(摘示2a)ことが記載されているので、脱離基としてより優れたものを用いれば、脱離が容易になって、より穏和な条件で反応を行うことができ、その結果、不純物の少ない高純度のものが得られることは、当業者が予測し得ることである。 よって、本願発明の化合物を中間体として用いた「4-ハロゲノブチル化」剤としての効果は、当業者の予測を超える格別顕著なものであるとはいえない。 (3)請求人の主張について ア 請求人は、平成19年12月10日付けの審判請求書の手続補正書の「(3)(iii)」において、「本願請求項1に係るベンゼンスルフォナート化合物の用途は、7-(4-ハロゲノブトキシ)-3,4-ジヒドロカルボスチリルを合成するための原料であります。・・・ 本願請求項1に係るベンゼンスルフォナート化合物の進歩性は、当該化合物が7-(4-ハロゲノブトキシ)-3,4-ジヒドロカルボスチリルを合成するための好適な中間体になり得るかどうかということにより判断されるべきものであります。」と主張する。 しかしながら、本願発明は化合物発明であり、上記の反応における合成原料に特化した用途発明ではない。しかも、上記(2)イの反応式に示されるように、本願発明は、フェノール性水酸基に対する「4-ハロゲノブチル化」剤として機能するのであり、該「4-ハロゲノブチル化」剤が、式(5)の化合物の製造を目的にしなければ到底想到できないような剤であったのでもないから、上記(2)イの反応の中間体になり得るかどうかの判断に至らなくても、「4-ハロゲノブチル化」剤としての機能を有する化合物として、引用発明から、中間体としての化合物を当業者が容易に想到することができれば十分であるといえる。 そして、本願発明が、引用発明から容易に想到でき、「4-ハロゲノブチル化」剤としての効果が当業者の予測を超える格別顕著なものといえないことは、上記(1)及び(2)で述べたとおりである。 よって、刊行物1及び2に「7-(4-ハロゲノブトキシ)-3,4-ジヒドロカルボスチリル」についての記載がなかったことのみをもって、本願発明の化合物を容易に想到し得ないとすることはできない。 なお、上記(2)で述べたとおり、引用発明である「4-クロロブチルp-トルエンスルフォナート化合物」も、フェノール性水酸基に対する「4-クロロブチル化」剤として用いられる中間体であり、反応の相手である原料のフェノールに縮合する環が異なるものの、本願発明と同様の反応に用いられる中間体であるといえるから、本願明細書の段落【0004】に記載された公知化合物である「7-(4-ハロゲノブトキシ)-3,4-ジヒドロカルボスチリル」の合成に適用しても同様の効果が得られ、好適な中間体となり得ることも当業者が容易に予測できるものである。 イ 請求人は、平成19年9月19日付けの意見書において、本願発明の化合物と引用発明の化合物を中間体として用いた場合の効果について比較しており、実施例Aに比して、実施例B及びC(比較例)は、純度が低下し、不純物も多量に生成するという結果を示し、本願発明の効果の顕著性について主張している。 しかしながら、実施例B及びC(比較例)は、塩基として、実施例Aの炭酸カリウムよりも強い作用を有する水素化リチウムや水素化ナトリウムを用いるといった厳しい条件で反応を行うことによって、純度が低下し、不純物も多量に生成しているものである。これは、刊行物2の摘示2aを参酌すれば、実施例B及びCが、より脱離しにくいp-トルエンスルフォナートを用いたために、より強い条件で反応をせざるを得なかったのに対し、実施例Aがより穏和な条件で反応を行えたことにより、不純物の少ない高純度のものが得られたと説明できるから、この実験結果から、本願発明の効果が格別顕著なものと認めることはできない。 そして、本願発明の化合物の方が、優れた脱離基を有し、より穏和な条件で反応を行うことができたことにより、不純物の少ない高純度のものが得られたという効果は、刊行物2の記載からみて、当業者が予測し得ることである。 以上のとおり、請求人の上記主張はいずれも採用することはできない。 4 本願発明についてのまとめ したがって、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その余の点を検討するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-14 |
結審通知日 | 2010-09-21 |
審決日 | 2010-10-04 |
出願番号 | 特願2000-399828(P2000-399828) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C07C)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 櫛引 智子 |
特許庁審判長 |
西川 和子 |
特許庁審判官 |
齊藤 真由美 松本 直子 |
発明の名称 | ベンゼンスルフォナート化合物 |
代理人 | 三枝 英二 |
代理人 | 中野 睦子 |
代理人 | 林 雅仁 |