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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1241175
審判番号 不服2009-1015  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-13 
確定日 2011-08-02 
事件の表示 特願2003-563052号「ケーブル・クランプを含む3軸コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月31日国際公開、WO03/63303、平成17年 6月 2日国内公表、特表2005-516355号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2003年1月16日(パリ条約による優先権主張、外国庁受理2002年1月18日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その後の経緯は以下のとおりである。

平成18年 1月 7日 手続補正書
平成20年 3月13日 拒絶理由通知
平成20年 8月28日 意見書、手続補正書
平成20年10月 7日 拒絶査定
平成21年 1月13日 本件審判請求
平成21年 2月 9日 手続補正書
平成22年 7月13日 審尋
平成22年11月16日 回答書

第2 平成21年2月9日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年2月9日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、請求項1について、補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと次のとおりである。

(1)補正前
「【請求項1】
リング状コレットであって、
内壁と、外壁と、前記コレットの幅だけ離隔した第1エンドおよび第2エンドと、
前記幅を部分的に横切って前記第1エンドから前記第2エンドへ向かって延びる、少なくとも2つの等しく離隔する、前記内壁から外壁までのスロットと、前記幅を部分的に横切って前記第2エンドから前記第1エンドに向かって延びる、少なくとも2つの等しく離隔する、前記内壁から外壁までのスロットと、から成り、前記第1エンド内のスロットの数は、前記第2エンド内のスロットの数に等しく、前記第1エンドからのスロットは、前記第2エンドからのスロットの間に概ね等しく配置されており、
前記内壁は、伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定された直径を形成し、前記内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで延びているリッジを備えており、
前記外壁は、前記第1エンドにおける最大直径から、前記第2エンドにおける最小直径までテーパが付けられた直径を有し、
前記第2エンドの前記スロットの各々は、前記第1エンド近傍において、前記内壁から前記外壁まで延びる前記第1エンドの一部によって閉鎖されており、
変形可能材料から形成されたリング状コレット。」

(2)補正後
「【請求項1】
リング状コレットであって、
内壁と、外壁と、前記コレットの幅だけ離隔した第1エンドおよび第2エンドと、
前記第1エンドから前記第2エンドへ向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの等しく離隔する、前記内壁から外壁までのスロットと、前記第2エンドから前記第1エンドに向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの等しく離隔する、前記内壁から外壁までのスロットと、から成り、前記第1エンド内のスロットの数は、前記第2エンド内のスロットの数に等しく、前記第1エンドからのスロットは、前記第2エンドからのスロットの間に概ね等しく配置されており、
前記内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで一様な直径を有しており、前記一様な直径は、伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定されており、前記内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで延びているリッジを備えており、
前記外壁は、前記第1エンドにおける最大直径から、前記第2エンドにおける最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有し、
前記第2エンドの前記スロットの各々は、前記第1エンド近傍において、前記内壁から前記外壁まで延びる前記第1エンドの一部によって閉鎖されており、
変形可能材料から形成されたリング状コレット。」

2 補正の適否
上記特許請求の補正は、請求項1について、
「前記内壁は、伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定された直径を形成し、前記内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで延びているリッジを備えており」を、「前記内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで一様な直径を有しており、前記一様な直径は、伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定されており、前記内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで延びているリッジを備えており」として、内壁を限定し、
「前記外壁は、前記第1エンドにおける最大直径から、前記第2エンドにおける最小直径までテーパが付けられた直径を有し」を、「前記外壁は、前記第1エンドにおける最大直径から、前記第2エンドにおける最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有し」として、外壁を限定すると共に、
「前記幅を部分的に横切って前記第1エンドから前記第2エンドへ向かって延びる、少なくとも2つの等しく離隔する、前記内壁から外壁までのスロット」を、「前記第1エンドから前記第2エンドへ向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの等しく離隔する、前記内壁から外壁までのスロット」とし、「前記幅を部分的に横切って前記第2エンドから前記第1エンドに向かって延びる、少なくとも2つの等しく離隔する、前記内壁から外壁までのスロット」を、「前記第2エンドから前記第1エンドに向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの等しく離隔する、前記内壁から外壁までのスロット」として、スロットを明りょうにしたものであり、
かつ、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後における請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。
なお、請求人は、審判請求書において、本件補正の目的について何ら主張をしておらず、かつ、平成22年7月13日付け審尋で、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的としているとしたことに対しても、平成22年11月16日付け回答書において釈明していない。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲並びに明細書及び図面の記載からみて、前記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件優先日前に頒布された刊行物である米国特許第5573423号明細書(以下「刊行物1」という。)、米国特許第5773759号明細書(以下「刊行物2」という。)には、それぞれ、次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付した。

ア 刊行物1
(ア)第1欄第1段落
「The present invention relates to an innovative distribution cable mounting device for fastening a distribution cable to a junction block of an electrical box. More particularly, the present invention is related to an improvement of the invention of U.S. Pat. No. 5,362,253.」

<仮訳(下線部のみ)>
この発明は、米国特許第5362253号の改良に関する。

(イ)第1欄第2段落
「The invention of U.S. Pat. No. 5,362,253, entitled Distribution Cable Mounting Device, is a very good system with five major component parts, namely a junction block, a tapered plug, a hollow screw member, a nut, and a cable with conductor. Nevertheless, its component parts are still comparatively complicated for practical use. Therefore, the present invention has been developed to provide a simplified cable mounting structure using fewer component parts.」

<仮訳>
米国特許第5362253号の分配ケーブル保持装置はよくできており、5つの主要な部材すなわち、ジャンクションブロック、テーパ状プラグ、円筒状ねじ部材、ナット、導体を有するケーブルからなる。しかし、それらの部材は依然として複雑である。この発明は、より少ない部材でケーブルの保持を実現する。

(ウ)第2欄第1段落
「Referring to FIGS. 1-4, junction block 1 has an internal thread 111 formed on an inner wall of a tapered junction hole 11. Further, there is shown, a hollow tapered plug 2 and a hollow screw member 3 disposed on the conductor 41 of cable 4.」

<仮訳>
図1ないし4を参照して、ジャンクションブロック1は、テーパ状ジャンクションホール11の内壁に形成された雌ねじ111部を有している。さらに、ケーブル4の導体41上に配置されるテーパ状円筒プラグ2と円筒状ねじ部材3が示されている。

(エ)第2欄第2段落
「The hollow tapered plug 2 has a longitudinal through hole 22, 25, but with the portion 22 being a different size than the portion 25. The back end of plug 2 has a tapered conical surface 24, and parallel slits 21 are formed to extend from ends thereof. The hollow screw member 3 has an external thread 31 formed on a front portion thereof. When the hollow screw member 3 is screwed into the junction hole 11 of junction block 1 to engage the internal thread 111, the hollow tapered plug 2 is pushed into junction hole 11 and the inner hole portion 25 is thereby squeezed and narrowed, so as to cramp the conductor 41 of cable 4.」

<仮訳>
テーパ状円筒プラグ2は、長手方向の貫通穴22、25を有し、貫通穴の部分22と貫通穴の部分25とはサイズが異なる。プラグ2の後端はテーパ面24を有し、平行なスリット21がプラグ2の各々の端部から延びるように形成される。円筒状スクリュメンバ3は、その前部に雄ねじ部31が形成されている。円筒状ねじ部材3が、雌ねじ部111に結合されることによりジャンクションブロック1のジャンクションホール11にねじ込まれると、テーパ状円筒プラグ2はジャンクションホール11内に押し込まれ、貫通穴の部分25は絞られると共に狭められ、ケーブル4の導体41をクランプする。

(オ)第2欄第3段落
「When the hollow screw member 3 is screwed in continuously, the tapered surface 24 of the hollow tapered plug 2 is pushed in by the internal conical wall 33 at the front of hole 32 of hollow screw member 3. Such further causes the hole portions 22 and 25 to be reduced in size, so as to cause the insulator of the cable 4 as well as the conductor 41 to be tightly cramped. Raised serrations 23 are formed on the inner wall of hole portion 22. Thus, the innovative distribution cable mounting device becomes more simple to use than the system described in U.S. Pat. No. 5,362,253, and furthermore, it has wide use, such as on a cable distribution box 5, as shown in FIG. 5, or for coupling to a battery 6, as shown in FIG. 6.」

<仮訳(下線部のみ)>
円筒状ねじ部材3がさらにねじ込まれると、テーパ状円筒プラグ2のテーパ面24は、円筒状ねじ部材3の穴32前部の円錐状内壁33により押し込まれる。これにより、貫通穴の部分22と貫通穴の部分25は縮径し、ケーブル4の絶縁体は導体41と共にクランプされる。隆起したセレーション23が貫通穴の部分22の内壁に形成される。これにより、米国特許第5362253号のものに比べてより簡素化される。

(カ)第2欄第4段落
「As can be seen from the description of the embodiment of the innovative distribution cable mounting device, the present invention not only more tightly clamps the conductor 41 of cable 4, but also is more simple and less expensive to manufacture. Therefore, the innovative distribution cable mounting device is more practical and convenient to use.」

(キ)上記(エ)及び図3のテーパ状円筒プラグ2の構成からみて、テーパ状円筒プラグが、内壁と、外壁と、テーパ状円筒プラグの軸方向に離隔した前端及び後端を有していることは明らかである。

(ク)上記(エ)の「The back end of plug 2 has a tapered conical surface 24, and parallel slits 21 are formed to extend from ends thereof.」(プラグ2の後端はテーパ面24を有し、平行なスリット21がプラグ2の各々の端部から延びるように形成される。)との記載、及び図1、3のスリット21の配置からみて、テーパ状円筒プラグ2が、後端から前端へ向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の、内壁から外壁までのスリットと、前端から後端に向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の、内壁から外壁までのスリットを有している、ということができる。また、前端から後端に向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びるスリットの各々は、後端近傍において、内壁から外壁まで延びる後端の一部によって閉鎖されている、ということができる。

(ケ)上記(エ)の「テーパ状円筒プラグ2は、長手方向の貫通穴22、25を有し、貫通穴の部分22と貫通穴の部分25とはサイズが異なる」との記載、及び図3のテーパ状円筒プラグ2の構成からみて、テーパ状円筒プラグ2の内壁は、後端から延びる内壁の直径と前端から延びる内壁の直径が異なっていることは明らかである。

(コ)上記(ケ)の記載、上記(エ)の「円筒状ねじ部材3が、雌ねじ部111に結合されることによりジャンクションブロック1のジャンクションホール11にねじ込まれると、テーパ状円筒プラグ2はジャンクションホール11内に押し込まれ、貫通穴の部分25は絞られると共に狭められ、ケーブル4の導体41をクランプする。)との記載及び図4からみて、テーパ状円筒プラグ2の内壁のうち、前端から延びる内壁の直径は、ケーブルの導体を収容するサイズに設定されている、ということができる。

(サ)上記(ケ)の記載、上記(オ)の 「これにより、貫通穴の部分22と貫通穴の部分25は縮径し、ケーブル4の絶縁体は導体41と共にクランプされる。」との記載、及び図4からみて、テーパ状円筒プラグ2の内壁のうち、後端から延びる内壁の直径は、ケーブルの絶縁体を収容するサイズに設定され、後端から延びる内壁はセレーションを備えている、ということができる。

(シ)上記(エ)の「テーパ状円筒プラグ2はジャンクションホール11内に押し込まれ、貫通穴の部分25は絞られると共に狭められ、ケーブル4の導体41をクランプする。」との記載、及び図3におけるテーパ状円筒プラグ2の前端から延びるテーパ面からみて、テーパ状円筒プラグの外壁は、後端側におけるテーパ面の最大直径から、前端における最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有している、ということができる。
また、上記(オ)の「円筒状ねじ部材3がさらにねじ込まれると、テーパ状円筒プラグ2のテーパ面24は、円筒状ねじ部材3の穴32前部の円錐状内壁33により押し込まれる。」との記載、及び図3におけるテーパ状円筒プラグ2の後端から延びるテーパ面24からみて、テーパ状円筒プラグの外壁は、後端からテーパ状に増加する直径を有している、ということができる。

(ス)テーパ状円筒プラグ2が変形可能材料から形成されていることは、技術常識から明らかである。

上記(ア)ないし(カ)に摘示した事項並びに上記(キ)ないし(ス)で認定した事項をふまえると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「テーパ状円筒プラグであって、内壁と、外壁と、前記テーパ状円筒プラグの軸方向に離隔した後端及び前端と、
前記後端から前記前端へ向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の、前記内壁から外壁までのスリットと、前記前端から前記後端に向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の、前記内壁から外壁までのスリットと、から成り、
前記内壁は、後端から延びる内壁の直径と前端から延びる内壁の直径が異なっており、前記前端から延びる内壁の直径はケーブルの導体を収容するサイズに設定され、前記後端から延びる内壁の直径はケーブルの絶縁体を収容するサイズに設定されており、前記後端から延びる内壁はセレーションを備えており、
前記外壁は、後端からテーパ状に増加する直径と、後端側におけるテーパ面の最大直径から前端における最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有し、
前記前端から後端に向かって長手方向の長さの一部の長さだけ延びるスリットの各々は、後端の近傍において、前記内壁から前記外壁まで延びる前記後端の一部によって閉鎖されており、
変形可能材料から形成されたテーパ状円筒プラグ。」

イ 刊行物2
(ア)第2欄第13行?第31行
「The screw-type conduit fitting has essentially a first part 1, a second part 2, and a third part 3. It is used to introduce an electrical cable 4 into a grounded housing 5 in a shielded manner. The cable 4 is surrounded by an electrically conductive wire mesh tube 6, and the latter is surrounded by a flexible protective sheathing 7. The part 1, designed essentially as a body of rotation, has a hole 9, through which the cable 4 is pushed. Against the second part 2, the hole 9 forms a conical expansion 9', into which the second part 2 can be pushed, as will be described later. The first part 1 is provided on the outside with an annular rib 10, which is coaxial to the hole 9 and is joined by a threaded section 11 and 12 each on both sides. For the shielded introduction of a cable 4, the first part 1 is pushed with its thread 11 through a hole in the housing 5 and is then fastened by means of a nut, not shown, which is screwed onto the thread 11. The cable entry is protected from moisture by O-rings. For grounding, the first, conductive part 1 is connected to the housing 5 in an electrically conductive manner.」

<仮訳(下線部のみ)>
ねじタイプの電線保持部材は、本質的に、第1部材1、第2部材及び第3部材からなる。 ケーブル4は、導電性のワイヤメッシュチューブ6に囲まれ、さらに柔軟な被覆材7で囲まれる。回転体である第1部材1は、ケーブル4が押し込まれる穴9を有している。第2部材に対して、穴9は、後述する第2部材が押し込まれる円錐状拡径部9’を有している。

(イ)第2欄第32行?第39行
「The third part 3 can be screwed onto the thread 12 of the first part 1 with a female thread 13. The thread 12 and 13 being a first fastening means. The female thread joins a hole 14, through which the cable 4 with the protective sheathing 7 surrounding it is pushed. An annular shoulder 15 joining the female thread 13 pushes the second part 2 axially into the conical expansion 9' of the hole 9 while the third part 3 is being screwed onto the first part 1.」

<仮訳(下線部のみ)>
第3部材は、雌ねじ部13により、第1部材の雄ねじ部に係合する。
第3部材が第1部材にねじ係合されるのに伴い、雌ねじ部13につながる環状の肩部15は、第2部材を穴9の円錐状拡径部9’内の軸方向に押し込む。

(ウ)第2欄第40行?第59行
「The second part 2 is provided with a cylindrical hole 16 and a conical sheathing surface 17, which has the same cone angle as the conical expansion 9'. The second part 2 is, an electrically conductive annular sleeve, and is seated axially on a section of the wire mesh tube 6 projecting over the protective sheathing 7, the diameter of the hole 16 is somewhat smaller than that of the protective sheathing 7. The wall of the second part 2 has incisions 18 and 19 alternatingly from the front side and the rear side, which form webs 18' and 19' and impart a shape meandering in a zigzag pattern or shape to the developed view (Figure 2) of the second part 2. In the case of a concentric, radial application of force, which becomes established during pushing into the conical expansion 9', the cylindrical hole 16 of the second part 2 can decrease uniformly as a result and it can come into contact with the wire mesh tube 6 with a uniform distribution of pressure. The radial reduction in the cylindrical inner cross section of part 2 ends when the flanks touch each other at the open ends of the respective incisions 18 and 19.」

<仮訳>
第2部材は、円筒状の穴16と円錐状外壁面17を有する。円錐状外壁面17の円錐角と円錐状拡大部9’の円錐角は同じである。第2部材は、導電性の環状のスリーブであり、柔軟な被覆材7から突き出したワイヤメッシュチューブ6上に軸方向に配置される。円筒状の穴16の直径は、柔軟な被覆材7の直径よりいくらか小さい。第2部材の壁は、前側及び後側から交互に延びる切り込み18と切り込み19を有し、それによりウェブ18’とウェブ19’が形成され、ジグザグパターンの蛇行形状あるいは第2図の展開図に示される形状が与えられる。円錐状拡径部9’に押し込まれることで生ずる同心方向、径方向の力により、第2部材の円筒状の穴16が均一に小さくなり、均一な圧力分布でワイヤメッシュチューブ6と接触する。第2部材の横断面の内径の減少は、それぞれの切り込み18、19の開放端において、側面が互いに接触することにより終了する。

(エ)第2欄第60行?第3欄第9行
To establish the screw-type conduit fitting, the cable 4, the wire mesh tube 6, and the protective sheathing 7 are prepared in the manner shown in FIG. 1. The first part 1 is then fastened to the housing, and the third part 3 is pushed over the cable end onto the protective sheathing 7. The second part 2 is then attached via the cable end to the projecting section of the wire mesh tube 6 such that its conically tapered sheathing surface converges toward the free cable end. The cable 4 is then pushed through the hole 9 and into the housing 5 to the extent that the second part 2 (pushed from the front end of the protective sheathing 7) is located in the conical expansion 9'. The third part 3 is subsequently screwed with its female thread 13 onto the thread 12 of the first part 1 and is tensioned axially until the second part 2 is pressed from the annular shoulder 15 into the conical expansion 9'and is radially compressed in the process to the extent that it snugly fits the wire mesh tube 6.

<仮訳(下線部のみ)>
第3部材9の雌ねじ13が第1部材の雄ねじ12上に係合しつつ第3部材がねじられると、第2部材が、第3部材の環状の肩部15により押し付けられ円錐状拡大部9’に入り込み径方向に圧縮されワイヤメッシュチューブ6にしっかりと合わさるまで、第3部材は軸方向に移動する。

(オ)上記(イ)の「第3部材が第1部材にねじ係合されるのに伴い、雌ねじ部13につながる環状の肩部15は、第2部材を穴9の円錐状拡径部9’内の軸方向に押し込む」との記載、及び上記(エ)の「第2部材が、第3部材の環状の肩部15により押し付けられ」との記載、図1、図3及び図4からみて、第2部材の円筒状の穴16の第3部材側の端から円錐状外壁面17まで順次増加する直径により形成される第2部材における第3部材側の端面は、第3部材の環状の肩部15により押されるものであり、第2部材の円錐状外壁面17は、前記第3部材側の端面の近傍の最大直径から第1部材側の端部における最小直径まで連続的に減少する直径を有している、ということができる。

(カ)上記(ウ)、上記(オ)、図1、3及び4からみて、第2部材は、第2部材の軸方向に離隔した第3部材側の端面と第1部材側の端部を有している、ということができる。

(キ)上記(ウ)及び図2からみて、第2部材は、第3部材側の端面から第1部材側の端部へ向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の切り込みを有すると共に、第1部材側の端部から第3部材側の端面へ向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の切り込みを有している、ということができる。

(ク)上記(ウ)において、第2部材は円筒状の穴16を有していること、及び第2部材が円錐状拡径部9’に押し込まれることで生ずる同心方向、径方向の力により、第2部材の円筒状の穴16が均一に小さくなり、均一な圧力分布でワイヤメッシュチューブ6と接触すること、並びに図1における円筒状の穴16の断面図からみて、円筒状の穴16は、第3部材側の端面から第1部材側の端部まで一様な直径を有しており、前記一様な直径は、ワイヤメッシュチューブを収容するサイズに設定されている、ということができる。

上記(ア)ないし(エ)に摘示した事項並びに上記(オ)ないし(ク)で認定した事項をふまえると、刊行物2には、次の事項が記載されているものと認められる。

「ねじタイプの電線保持部材の第2部材であって、円筒状の穴と、円錐状外壁面と、第2部材の軸方向に離隔した、第2部材の円筒状の穴16の第3部材側の端から円錐状外壁面17まで順次増加する直径により形成され、第3部材の環状の肩部15により押される第3部材側の端面及び第1部材側の端部と、第3部材側の端面から第1部材側の端部へ向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の切り込みと、第1部材側の端部から第3部材側の端面へ向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の切り込みと、から成る第2部材において、
円筒状の穴16は、第3部材側の端面から第1部材側の端部まで一様な直径を有しており、前記一様な直径は、ワイヤメッシュチューブを収容するサイズに設定されており、
第2部材の円錐状外壁面17は、前記第3部材側の端面の近傍の最大直径から第1部材側の端部における最小直径まで連続的に減少する直径を有していること。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「テーパ状円筒プラグ」は、本件補正発明の「リング状コレット」に相当する。
引用発明の「テーパ状円筒プラグの軸方向に離間した後端」及び「前端」は、それぞれ、本件補正発明の「コレットの幅だけ離隔した第1エンド」及び「第2エンド」に、相当する。
引用発明の「前記後端から前記前端へ向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の、前記内壁から外壁までのスリット」と、本件補正発明の「前記第1エンドから前記第2エンドへ向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの等しく離隔する、前記内壁から外壁までのスロット」とは、「前記第1エンドから前記第2エンドへ向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの、前記内壁から外壁までのスロット」という限りにおいて共通する。
引用発明の「前記前端から前記後端に向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の、前記内壁から外壁までのスリット」と、本件補正発明の「前記第2エンドから前記第1エンドに向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの等しく離隔する、前記内壁から外壁までのスロット」とは、「前記第2エンドから前記第1エンドに向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの、前記内壁から外壁までのスロット」という限りにおいて共通する。
引用発明の「ケーブル」及び「ケーブルの絶縁体」は、本件補正発明の「伝送線路ケーブル」に相当する。
引用発明の「セレーション」は、本件補正発明の「リッジ」に相当する。
引用発明の「前記内壁は、後端から延びる内壁の直径と前端から延びる外壁の直径が異なっており、前記前端から延びる内壁の直径はケーブルの導体を収容するサイズに設定され、前記後端から延びる内壁の直径はケーブルの絶縁体を収容するサイズに設定されており、前記後端から延びる内壁はセレーションを備えて」いることと、本件補正発明の「前記内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで一様な直径を有しており、前記一様な直径は、伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定されており、前記内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで延びているリッジを備えて」いることとは、「前記内壁は、第1エンドから第2エンドまで直径を有しており、第1エンドから第2エンドまでの直径の少なくとも一部は、伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定されており、伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定された内壁はリッジを備えている」という限りにおいて共通する。
引用発明の「前記外壁は、後端からテーパ状に増加する直径と、後端側におけるテーパ面の最大直径から前端における最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有」することと、本件補正発明の「前記外壁は、前記第1エンドにおける最大直径から、前記第2エンドにおける最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有」することとは、「前記外壁は、テーパ状に変化する直径を有する」という限りにおいて共通する。
引用発明の「前記前端から後端に向かって長手方向の長さの一部の長さだけ延びるスリット」は、本件補正発明の「第2エンドの前記スロット」に相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。

<一致点>
「リング状コレットであって、
内壁と、外壁と、コレットの幅だけ離隔した第1エンドおよび第2エンドと、
前記第1エンドから前記第2エンドへ向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの、前記内壁から外壁までのスロットと、前記第2エンドから前記第1エンドに向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの、前記内壁から外壁までのスロットと、から成り、
前記内壁は、第1エンドから第2エンドまで直径を有しており、第1エンドから第2エンドまでの直径の少なくとも一部は、伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定されており、伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定された内壁はリッジを備えており、
前記外壁は、テーパ状に変化する直径を有し、
前記第2エンドの前記スロットの各々は、前記第1エンドの近傍において、前記内壁から前記外壁まで伸びる前記第1エンドの一部によって閉鎖されており、
変形可能材料から形成されたリング状コレット。」の点。

<相違点1>
第1エンドから第2エンドへ向かって幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの、内壁から外壁までのスロットが、
本件補正発明は、「等しく離隔」しているのに対し、
引用発明は、「等しく離隔」しているかどうか不明な点。

<相違点2>
第2エンドから第1エンドに向かって幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの、内壁から外壁までのスロットが、
本件補正発明は、「等しく離隔」しているのに対し、
引用発明は、「等しく離隔」しているかどうか不明な点。

<相違点3>
本件補正発明は、「第1エンド内のスロットの数は、第2エンド内のスロットの数に等しく、第1エンドからのスロットは、第2エンドからのスロットの間に概ね等しく配置されて」いるのに対し、
引用発明は、後端から前端へ向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の、内壁から外壁までのスリット(すなわち第1エンド内のスロット)の数が、前端から後端に向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の、内壁から外壁までのスリット(すなわち第2エンド内のスロット)の数と等しいかどうか不明であり、後端からのスリット(すなわち第1エンドからのスロット)が、前端からのスリット(すなわち第2エンドからのスロット)の間に概ね等しく配置されているかどうか不明な点。

<相違点4>
内壁は、第1エンドから第2エンドまで直径を有しており、第1エンドから第2エンドまでの直径の少なくとも一部は、伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定されており、伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定された内壁はリッジを備えている点について、
本件補正発明は、「内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで一様な直径を有しており、前記一様な直径は、伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定されており、前記内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで延びているリッジを備えて」いるのに対し、
引用発明は、内壁は、後端(第1エンド)から延びる内壁の直径と前端(第2エンド)から延びる内壁の直径が異なっており、前記前端(第2エンド)から延びる内壁の直径はケーブル(伝送線路ケーブル)の導体を収容するサイズに設定され、前記後端(第1エンド)から延びる内壁の直径はケーブルの絶縁体(伝送ケーブル)を収容するサイズに設定されており、前記後端(第1エンド)から延びる内壁はセレーション(リッジ)を備えている点。

<相違点5>
前記外壁は、テーパ状に変化する直径を有している点について、
本件補正発明では、外壁が、第1エンドにおける最大直径から、第2エンドにおける最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有しているのに対し、
引用発明では、外壁が、後端(第1エンド)からテーパ状に増加する直径と、後端側(第1エンド側)におけるテーパ面の最大直径から前端における最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有している点。

(4)当審の判断
ア 相違点4及び5について
まず、相違点4及び5について検討する。

(ア)刊行物2には、上記(2)イに示したとおりの事項(「ねじタイプの電線保持部材の第2部材であって、円筒状の穴と、円錐状外壁面と、第2部材の軸方向に離隔した、第2部材の円筒状の穴16の第3部材側の端から円錐状外壁面17まで順次増加する直径により形成され、第3部材の環状の肩部15により押される第3部材側の端面及び第1部材側の端部と、第3部材側の端面から第1部材側の端部へ向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の切り込みと、第1部材側の端部から第3部材側の端面へ向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の切り込みと、から成る第2部材において、
円筒状の穴16は、第3部材側の端面から第1部材側の端部まで一様な直径を有しており、前記一様な直径は、ワイヤメッシュチューブを収容するサイズに設定されており、
第2部材の円錐状外壁面17は、前記第3部材側の端面の近傍の最大直径から第1部材側の端部における最小直径まで連続的に減少する直径を有していること。」)が記載されている。
そして、刊行物2記載の事項の「ねじタイプの電線保持部材の第2部材」は、本件補正発明の「リング状コレット」ということができる。
以下同様に、
「円筒状の穴」は、「内壁」と、
「円錐状外壁面」は、「外壁」と、
「第2部材の軸方向に離隔した、第2部材の円筒状の穴16の第3部材側の端から円錐状外壁面17まで順次増加する直径により形成され、第3部材の環状の肩部15により押される第3部材側の端面」及び「第1部材側の端部」は、「コレットの幅だけ離隔した第1エンド」及び「第2エンド」と、
「第3部材側の端面から第1部材側の端部へ向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の切り込み」は、「前記第1エンドから前記第2エンドへ向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの」「スロット」と、
「第1部材側の端部から第3部材側の端面へ向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びる、複数の切り込み」は、「前記第2エンドから前記第1エンドに向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの」「スロット」と、
「円筒状の穴16は、第3部材側の端面から第1部材側の端部まで一様な直径を有して」いることは、「前記内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで一様な直径を有して」いることと、それぞれいうことができる。
また、刊行物2記載の事項の「第2部材の円錐状外壁面17は、前記第3部材側の端面の近傍の最大直径から第1部材側の端部における最小直径まで連続的に減少する直径を有」することの「前記第3部材側の端面の近傍」も、本件補正発明の「第1エンド」ということができる。すなわち、本件補正発明の「前記外壁は、前記第1エンドにおける最大直径から、前記第2エンドにおける最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有」することの「第1エンドにおける最大直径」については、請求人は、「『前記第1エンドにおける最大直径』は、明細書の段落[0017]の『エンド144の最大直径分』の記載と、図9及び図10Aと、を根拠」とする(平成20年8月28日付け意見書の【意見の内容】(2)を参照のこと。)と主張するところ、本件出願の図9及び図10Aをみると、第2エンドにおける最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径は、第1エンド144の端面から始まるのではなく、その端面の近傍の最大直径から始まっていることは明らかであるから、刊行物2記載の事項の「前記第3部材側の端面の近傍」も本件補正発明の「第1エンド」ということができる。
そうすると、刊行物2記載の事項の「第2部材の円錐状外壁面17は、前記第3部材側の端面の近傍の最大直径から第1部材側の端部における最小直径まで連続的に減少する直径を有」することは、本件補正発明の「外壁は、前記第1エンドにおける最大直径から、前記第2エンドにおける最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有」すること、ということができる。
また、刊行物2記載の事項の「前記一様な直径は、ワイヤメッシュチューブを収容するサイズに設定され」ていることは、一様な直径とすることで伝送線路ケーブルの構成要素の一つであるワイヤメッシュチューブ部分のみを収容してクランプするため、すなわち、一様な直径とすることで伝送線路ケーブルにおける単一の部分を収容してクランプするためであるといえる。そうすると、刊行物2記載の事項の「前記一様な直径は、ワイヤメッシュチューブを収容するサイズに設定され」ていることは、一様な直径は、伝送線路ケーブルにおける単一の部分を収容するサイズに設定されていること、ということができる。
してみると、刊行物2記載の事項は、「リング状コレットであって、内壁と、外壁と、コレットの幅だけ離隔した第1エンドおよび第2エンドと、前記第1エンドから前記第2エンドへ向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つのスロットと、前記第2エンドから前記第1エンドに向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つのスロットと、から成るリング状コレットにおいて、前記内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで一様な直径を有しており、一様な直径は、伝送線路ケーブルにおける単一の部分を収容するサイズに設定されており、前記外壁は、前記第1エンドにおける最大直径から、前記第2エンドにおける最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有していること。」と言い換えることができる。
(イ)ここで、引用発明は、一つのコレットでケーブルの絶縁体部分と導体部分の二つの部分をクランプしている一方、一つのコレットでケーブルの単一の部分をクランプすることは、従来周知の事項(例えば、周知例1:原査定時に引用された特開昭60-264065号公報のシェル34、周知例2:原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-200651号公報のクランプ3、周知例3:刊行物1に従来例として記載されている米国特許第5362253号明細書のhollow tapered plug 4を参照のこと。)であるから、一つのコレットでケーブルの二つの部分をクランプするか、単一の部分をクランプするかは、当業者が適宜選択すべき事項というべきものである。
そして、引用発明と刊行物2記載の事項とは、共に、リング状コレットであって、内壁と、外壁と、コレットの幅だけ離隔した第1エンドおよび第2エンドと、前記第1エンドから前記第2エンドへ向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つのスロットと、前記第2エンドから前記第1エンドに向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つのスロットと、から成るリング状コレットで共通する。
しかも、刊行物2記載の事項の第2部材(リング状コレット)における、第2部材の円筒状の穴16の第3部材側の端から円筒状外壁面17まで順次増加する直径により形成される第3部材側の端面(第1エンド)は、クランプ時に第3部材の環状の肩部15により押されるものである一方、引用発明のテーパ状円筒プラグ(リング状コレット)における、後端から後端近傍までテーパ状に増加する直径により形成される外壁(刊行物1の図3、4におけるテーパ面24を参照のこと。)も、ケーブル4の導体41をまずクランプする際に、円筒状ねじ部材3により押されるものであるから、その点で、刊行物2記載の第3部材側の端面(第1エンド)と、引用発明の後端からテーパ状に増加する直径により形成される外壁とは機能が共通する。
してみると、ケーブルにおける単一の部分をクランプするために、引用発明の内壁を、刊行物2記載の事項のごとく、第3部材側の端面(第1エンド)から第1部材側の端部(第2エンド)まで一様な直径とし、一様な直径を伝送線路ケーブルにおける単一の部分を収容するサイズに設定すると共に、 引用発明における後端(第1エンド)に加えて、引用発明の外壁における、後端(第1エンド)から後端近傍(第1エンド近傍)までテーパ状に増加する直径による外壁を、刊行物2記載の事項のごとく、第2部材の円筒状の穴16の第3部材側の端から円筒状外壁面17まで順次増加する直径により形成され、第3部材の環状の肩部15により押される第3部材側の端面(第1エンド)とすること、
引用発明の外壁における、後端側(第1エンド側)におけるテーパ面の最大直径から前端における最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径よる外壁を、刊行物2記載の事項のごとく、第3部材側の端面の近傍の最大直径から第1部材側の端部における最小直径まで連続的に減少する直径を有する円錐状外壁面(第1エンドにおける最大直径から、第2エンドにおける最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有する外壁)とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(ウ)また、リング状コレットにより、ケーブルの単一の部分としてケーブルの外側被覆をクランプすること、そのクランプを確実にするためにリング状コレットの内壁にリッジを設けることは、従来周知の事項(例えば、周知例1のグリップ部分52、周知例4:原査定時に引用された実願平2-123643号(実開平4-81382号)のマイクロフィルムの第7ページ第7?9行、雌ネジ11を参照のこと。)であり、かかるリッジをリング状コレットの第1エンドから第2エンドまで設けるかどうかは、そのクランプを確実に行うべく適宜選択すべき事項にすぎない。
してみると、内壁の一様な直径を伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定すると共に、リッジを内壁の第1エンドから前記第2エンドまで延びるように設けることは、引用発明の内壁を、刊行物2記載の事項のごとく、第1エンドから第2エンドまで一様な直径とし、一様な直径を伝送線路ケーブルにおける単一の部分を収容するサイズに設定するに際して、当業者が適宜なし得たことである。

(エ)以上のとおりであるから、引用発明において、相違点4及び5に係る本件補正発明が具備する構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点1ないし3について
引用発明及び刊行物2記載の事項は、いずれも、第1エンドから第2エンドへ向かって幅の一部の長さだけ延びる少なくとも2つのスロットと、第2エンドから前記第1エンドに向かって前記幅の一部の長さだけ延びる少なくとも2つのスロットを有している。
そして、刊行物2には、コレットの内壁を均一に小さくさせ、均一な圧力分布でケーブルに接触させる旨が記載されている(前記(2)イ(ウ)を参照のこと。)ところ、第1エンドから第2エンドへ向かって延びる幅の一部の長さだけ延びるスロットを等しく離隔すること、第2エンドから第1エンドに向かって幅の一部の長さだけ延びるスロットを等しく離隔すること、第1エンド内のスロットの数を、第2エンド内のスロットの数に等しく、第1エンドからのスロットは、第2エンドからのスロットの間に概ね等しく配置することは、コレットの内壁を均一に小さくさせ、均一な圧力分布でケーブルに接触させるべく、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
してみると、引用発明において、相違点1ないし3に係る本件補正発明が具備する構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

ウ 本件補正発明の効果について
本件補正発明の効果についてみても、引用発明、刊行物2記載の事項及び周知の事項から当業者が予測できる範囲のものであって、格別顕著なものとはいえない。

エ 請求人の主張について
(ア)請求人は、本件補正発明と原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3、すなわち本審決の刊行物1とを対比しつつ、「引用文献3(当審注:刊行物1のこと。以下同じ。)は、請求項1、6及び7に記載されたコレットの構成、即ち、コレットの内壁が第1エンドから第2エンドまで一様な直径を有している構成を開示及び示唆しておりません。」(平成21年2月9日付け手続補正書(方式)(以下、単に「手続補正書(方式)」という。)の第8ページの第24行?第26行)、「引用文献3は、請求項1、6及び7に記載のコレットの内壁が第1エンドから第2エンドまで延びているリッジ(隆起部)を備えている構成を開示及び示唆しておりません。」(手続補正書(方式)の第8ページ下から6行目から下から4行目)、「引用文献3は、請求項1及び6のコレットの構成、即ち、外壁が第1エンドにおける最大直径から第2エンドにおける最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有する構成・・・を開示及び示唆しておりません。このような構成は、引用文献3のプラグ2にはありません。また、請求項1、6及び7のコレットは、第1エンドから第2エンドに向かって延びる複数のスロットと第2エンドから第1エンドに向かって延びる複数のスロットとを備えており、このような複数のスロットを備えたコレットの周囲でスライドするリア・シールが該コレットを圧縮して変形させた場合、コレットの内壁は第1エンドから第2エンドまで一様な直径を維持することができます。このような作用・機能は、引用文献3のプラグ2にはありません。」(手続補正書(方式)の第9ページ第6行?第16行)と主張する。
しかし、引用発明のテーパ状円筒プラグにおいて、その内壁を、第1エンドから第2エンドまで一様な直径とし、一様な直径を伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定すること、リッジを内壁の第1エンドから第2エンドまで延びるように設けること、その外壁を第1エンドにおける最大直径から第2エンドにおける最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有する外壁とすること、に困難性のないことは上記アで述べたとおりである。また、コレットの内壁について、第1エンドから第2エンドまで一様な直径を維持することができることも、刊行物2における、コレットの内壁を均一に小さくさせ、均一な圧力分布でケーブルに接触させる旨の記載(前記(2)イ(ウ)及び(ク)を参照のこと。)からみて、困難性はない。

(イ)また、請求人は、本件補正発明と原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4、すなわち本審決の刊行物2とを対比しつつ、「引用文献4(当審注:刊行物2のこと。以下同じ。)は、 請求項1、6及び7のコレットの構成、即ち、該コレットが、第1エンドから第2エンドへ向かって該コレットの幅の一部の長さだけ延びており内壁から外壁まで形成された複数のスロットと、第2エンドから第1エンドに向かって該コレットの幅の一部の長さだけ延びており内壁から外壁まで形成されている複数のスロットと、を備えており、第2エンドから延びる複数のスロットの各々が第1エンドの近傍において、コレットの内壁から外壁まで延びる第1エンドの一部によって閉鎖されている構成を開示及び示唆しておりません。引用文献4の部材2のウェブ18’は、部材2の内壁から外壁まで延びておらず、むしろ、内壁から外壁に向かう途中で終結しております(図4参照)。即ち、内壁から外壁までは延びていないウェブ18’は、部材2の最も厚い部分に隣接するスロット19の底の部分しか閉鎖しておりません。また、このウェブ18’及びウェブ19の変形例に関する記載もありません。」と主張する。
しかし、前記(2)ア(ク)の認定及び引用発明の認定のとおり、引用発明のテーパ状円筒プラグにおいて、前端(第2エンド)から後端(第1エンド)に向かって軸方向長さの一部の長さだけ延びるスリットの各々は、後端近傍(第1エンド近傍)において、内壁から外壁まで延びる後端(第1エンド)の一部によって閉鎖されていることは、明らかである。

オ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、刊行物2記載の事項及び周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、平成20年8月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件優先日前に頒布された刊行物1及び2には、前記第2の2(2)ア及びイで示したとおりの事項が記載されている。

3 対比、判断
本願発明は、本件補正発明の「前記第1エンドから前記第2エンドへ向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの等しく離隔する、前記内壁から外壁までのスロット」が、「前記幅を部分的に横切って前記第1エンドから前記第2エンドへ向かって延びる、少なくとも2つの等しく離隔する、前記内壁から外壁までのスロット」とされ、
「前記第2エンドから前記第1エンドに向かって前記幅の一部の長さだけ延びる、少なくとも2つの等しく離隔する、前記内壁から外壁までのスロット」が、「前記幅を部分的に横切って前記第2エンドから前記第1エンドに向かって延びる、少なくとも2つの等しく離隔する、前記内壁から外壁までのスロット」とされ、
「前記内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで一様な直径を有しており、前記一様な直径は、伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定されており、前記内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで延びているリッジを備えており」が、「前記内壁は、伝送線路ケーブルを収容するサイズに設定された直径を形成し、前記内壁は、前記第1エンドから前記第2エンドまで延びているリッジを備えており」とされ、
「前記外壁は、前記第1エンドにおける最大直径から、前記第2エンドにおける最小直径までテーパ状に連続的に減少する直径を有し」が、「前記外壁は、前記第1エンドにおける最大直径から、前記第2エンドにおける最小直径までテーパが付けられた直径を有し」とされたものである。
してみると、本願発明を構成する事項をすべて含む本件補正発明が、上記第2の2(4)で述べたとおり、引用発明、刊行物2記載の事項及び周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであり、本願発明は、引用発明、刊行物2記載の事項及び周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-02 
結審通知日 2011-02-08 
審決日 2011-02-23 
出願番号 特願2003-563052(P2003-563052)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 鈴木 敏史
冨岡 和人
発明の名称 ケーブル・クランプを含む3軸コネクタ  
代理人 下田 容一郎  

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