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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1241241
審判番号 不服2010-2651  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-08 
確定日 2011-08-03 
事件の表示 平成11年特許願第126686号「2平面超音波イメージング方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月25日出願公開,特開2000-201936〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成11年 5月 7日(パリ条約による優先主張:平成10年5月7日 米国)に特許出願されたものであって,平成21年9月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成22年2月8日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正(以下「本件補正」という)がなされたものである。さらに,平成22年8月6日付けで審尋がなされ,回答書が平成23年2月10日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正後の請求項1に係る発明
本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項1は,次のとおりに補正された。(下線は補正箇所を示す。)

「超音波イメージング装置であって、
第1のイメージング平面を生じさせる第1の変換器(102)と、
第2のイメージング平面を生じさせる第2の変換器(104)と
前記超音波イメージングに用いる器具を通してガイドするための通路(114)をもたらすチャンネル(120)が形成されたガイド(118)とを備え、
前記第1のイメージング平面と前記第2のイメージング平面が直交するように形成され、
前記器具通路(114)は、前記第1と第2のイメージング平面の交差部分が形成するラインを通るように形成され、これにより、前記第1と第2のイメージング平面内において、同時に器具をみることができることを特徴とする超音波イメージング装置。」

上記補正は,実質的に,「通路(114)をもたらすチャンネル(120)が形成されたガイド(118)」という構成を追加することにより,補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「器具の通路」,すなわち,補正後の「器具通路」について,「前記超音波イメージングに用いる器具を通してガイドするための通路(114)をもたらすチャンネル(120)が形成されたガイド(118)とを備え」と限定するものであるといえる。
そうすると,前記補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下「平成18年法改正前」という)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,補正後の請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物の記載事項

(1)本願優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である「特開平5-317309号公報」(以下「引用刊行物」という)には,「穿刺用超音波探触子」に関して次の事項が記載されている。

(1-ア)
「【請求項1】配列振動子を複数組備え、それらの配列振動子により送受波される超音波走査面が交差するように前記配列振動子が配設された超音波探触子において、前記超音波走査面の交差線上に穿刺針を案内する穿刺針案内手段を備えたことを特徴とする穿刺用超音波探触子。」

(1-イ)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は超音波診断装置で用いる超音波探触子に係り、特に超音波探触子を被検体へ当接して断層像を観察しながら穿刺を行うに好適な超音波探触子に関するものである。」

(1-ウ)
「【0007】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図1乃至図5を用いて説明する。図1はリアルタイムバイプレーン型の超音波診断装置、例えば、特公昭58-2697号公報に記載された技術を用いて製造された超音波診断装置へ接続して用いるようにした穿刺用超音波探触子を、超音波送受信面側から見た図である。この穿刺用超音波探触子1は、本体ケース2と、本体ケース2へ図示破線で示す如く、配列方向が直交(これはとりも直さず超音波走査面が直交することを意味する。)して配置された配列振動子を有する超音波送受信部3及び4と、これらの超音波送受信部3及び4へ接続された信号線を内蔵した探触子ケーブル5と、前記本体ケース2と超音波送受信部4とを貫通するように設けられた穿刺針案内孔6とを有している。
【0008】この穿刺用超音波探触子1は周知の如く超音波診断装置本体(図示省略)にコネクタ接続され、超音波診断装置本体内の送受波回路により、超音波送受信部3,4内の各配列振動子により超音波走査が行われる。各超音波走査面は、このとき、超音波送受信部3及び4内の各配列振動子の配列方向が直交しているため、それと同様に直交したものとなる。
【0009】本発明において、前記穿刺針案内孔6は、この穿刺針案内孔6に穿刺針7を挿入したとき、穿刺針7を前記超音波走査面同志の交差線に沿って案内するように形成される。図2,図3,図4は穿刺針案内孔の例を示している。図2に示す穿刺針案内孔6aは孔の横断面が円形の例、図3及び図4に示す穿刺針案内孔6a,6cは長孔に形成した例である。
【0010】図5は本発明の超音波探触子を用いて穿刺を行ったときに、超音波診断装置本体のモニタ画面に表示される超音波像を示している。表示画面において、左側の画像は探触子の超音波受信部3による超音波像Aで、右側の画像は超音波送受信部4による超音波像Bである。そして、図5の実施例によると、2つの画像A,B中に写し出された穿刺針が相互の画像の断面位置を表わしている。この図に示すように被検体内へ刺し込まれる針は、超音波像A及びBの双方に写し出される。したがって、穿刺の対象部位へ対して針の刺し込みを直交する2方向から観察することができ、穿刺精度を向上させることができる。」

上記記載事項(1-ア)?(1-ウ)によれば,引用刊行物には次の発明が記載されていると認められる。
「超音波診断装置で用いる超音波探触子1であって,該超音波探触子1は,本体ケース2と,配列方向が直交(これはとりも直さず超音波走査面が直交することを意味する。)して配置された2組の配列振動子を有する超音波送受信部3,4と,該超音波送受信部3,4へ接続された信号線を内蔵した探触子ケーブル5と,前記本体ケース2と前記超音波送受信部4とを貫通するように設けられた穿刺針案内孔6とを有し,前記超音波走査面の交差線に沿って穿刺針7を案内するとともに,モニタに前記配列振動子3,4のそれぞれの超音波受信部による超音波像A,B中に穿刺針7が写し出される超音波探触子1。」

3 対比・判断
(1)対比
補正発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「超音波診断装置」は,「配列振動子3,4」の「超音波受信部」から得られる信号から画像,すなわち,イメージを表示し診断するものであるから,補正発明の「超音波イメージング装置」に相当するといえる。また,引用発明の「配列振動子3,4」は,それぞれ超音波走査面を形成し,該両超音波走査面は直交するのであるから,補正発明の「第1,2のイメージング平面を生じさせる第1,2の変換器」に相当するといえる。
そして,引用発明の「穿刺針7」は,「超音波像A,B」中に写し出されるのであるから,超音波イメージングに用いる器具であるといえ,補正発明の「超音波イメージングに用いる器具」に相当することは明らかであり,引用発明の「穿刺針案内孔6」は「穿刺針7」を案内するのであるから,補正発明の「チャンネル(120)」に相当し,引用発明の「前記超音波走査面の交差線上に穿刺針7を案内する穿刺針案内孔6を備える」は,本願発明の「前記器具通路は、前記第1と第2のイメージング平面の交差部分が形成するラインを通るように形成され」るに相当するといえる。
さらに,引用発明においては「モニタに前記配列振動子3,4のそれぞれの超音波受信部による超音波像A,B中に穿刺針7が写し出される」のであるから,「超音波像A,B」において「穿刺針7」の像が同時にみることができるのは明らかであり,引用発明の前記特定事項は,本願発明の「前記第1と第2のイメージング平面内において,同時に器具をみることができる」に相当するといえる。

そうすると,両者は,
(一致点)
「超音波イメージング装置であって,
第1のイメージング平面を生じさせる第1の変換器と,
第2のイメージング平面を生じさせる第2の変換器と,
超音波イメージングに用いる器具を通してガイドするための通路をもたらすチャンネルとを備え,
前記第1のイメージング平面と前記第2のイメージング平面が直交するように形成され、
前記器具通路は、前記第1と第2のイメージング平面の交差部分が形成するラインを通るように形成され,これにより,前記第1と第2のイメージング平面内において,同時に器具をみることができる超音波イメージング装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点)
「チャンネル」について,補正発明では「ガイド(118)」に形成されているのに対し,引用発明では「超音波送受信部4」を貫通している点。

(3)判断
相違点について検討するに,
そもそも,超音波イメージング装置(超音波診断装置)の技術分野において,超音波送受信部を貫通する生検針(穿刺針)を案内するためにガイドを備えることは,本願優先日前当業者間において周知の技術的事項であるといえる。
例えば,本願優先日前に頒布された刊行物である特開平8-614号公報の段落【0011】には「・・・・・また、アタッチメント6には複数の穿刺角度(通常0°、15°、30°の3種類程度)に対応できるような穿刺針の案内孔が設けられている。」と記載されており,該「アタッチメント6」が補正発明の「ガイド(118)」に相当するといえる。また,本願優先日前に頒布された刊行物である実公昭63-40976号公報の実用新案登録請求の範囲の欄に「 一部を欠損された圧電振動子列を具備する探触子本体と、振動子列の欠損部分に挿入される穿刺針と、該穿刺針を前記探触子本体との間に挟持し案内する保持体とを有し、該保持体と探触子本体とが接触する支持面の一方を磁石によつて、他方を磁性材によつて構成されている穿刺針用超音波探触子において、前記保持体が穿刺針を案内する切欠をもち、剛性あるものからなり、前記探触子本体は振動子配列方向に沿つて保持体を移動させ得る平面状の支持面を有するとともに、振動子配列方向にたいする穿刺針の傾斜角度を表示する目盛りを有することを特徴とする穿刺針用超音波探触子。」と記載されており,該「保持体」が補正発明の「ガイド(118)」に相当するといえる。
そして,引用発明の「超音波送受信部4」に上記周知の事項である「ガイド」を付加することに何ら阻害要因もなく,また,該「ガイド」の付加されることによりメンテナンス等を容易にするという動機付けも存在する。
してみると,引用発明おいて,上記周知の事項を適用して,相違点における補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得る事項であるといえる。

そして,本願明細書に記載された相違点により奏する作用・効果も,引用刊行物の記載および周知の事項から予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものとはいえない。

したがって,補正発明は,引用発明および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり,特許法第29条第2項の規定により,独立して特許を受けることができないものである。

5 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1?46に係る発明は,平成20年6月3日付け手続補正書に補正された特許請求の範囲の請求項1?46に記載された事項により特定されるものであって,その請求項1は次のとおりである(以下「本願発明」という)。

「超音波イメージング装置であって、
第1のイメージング平面を生じさせる第1の変換器と、
第2のイメージング平面を生じさせる第2の変換器と、
を備え、
前記第1のイメージング平面と前記第2のイメージング平面が直交し、
器具の通路によって、前記第1と第2のイメージング平面内において、同時に器具をみることができることを特徴とする超音波イメージング装置。」

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物およびその記載事項は,前記「第2 2 引用刊行物の記載事項」に記載したとおりである。

3 判断
本願発明は,補正発明において,その「器具通路」について「前記超音波イメージングに用いる器具を通してガイドするための通路(114)をもたらすチャンネル(120)が形成されたガイド(118)とを備え」との限定をしないものであるから,本願発明と引用発明との間には,前記「第2 3 対比・判断 (1)対比」において述べた相違点が存在せず,実質的同一であるというべきである。
そうすると,本願発明は,引用刊行物に記載された発明である。

4 請求人の主張について
請求人は,回答書において「引用文献1が、『超音波走査面の交差線上に穿刺針を案内する』と記載した箇所は4カ所に上るのであり、『穿刺針7を前記超音波走査面同志の交差線に沿って案内する』と記載した箇所は一カ所にとどまることに鑑みれば、引用文献1の開示事項は、前者を、即ち、穿刺針は交差線とは一点にて交差することを開示若しくは教示しようとしたと観るのが妥当ではないかと考えます。この点から、補正された発明は引1とは異なる発明である・・・・・」旨,主張している。
しかしながら,引用刊行物においては,特許請求の範囲では「超音波走査面の交差線上に穿刺針を案内する」と表現し,実施例としてより具体的に「穿刺針7を前記超音波走査面同志の交差線に沿って案内する」と表現しているのに過ぎない。そして,該実施例に基づき引用発明を認定すれば,前述のとおりになり,上記請求人の主張は採用できない。

5 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第1項第3号の規定により,特許を受けることができないから,その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-02 
結審通知日 2011-03-08 
審決日 2011-03-23 
出願番号 特願平11-126686
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川上 則明  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 後藤 時男
竹中 靖典
発明の名称 2平面超音波イメージング方法及び装置  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  
代理人 黒川 俊久  

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