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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1241263
審判番号 不服2008-32240  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-22 
確定日 2011-08-05 
事件の表示 平成11年特許願第182407号「MR検査を行う装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月25日出願公開、特開2000- 23945〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本件は、平成11年6月28日(パリ条約による優先権主張 1998年6月26日、米国(US))の特許出願(平成11年特許願第182407号。以下、「本件出願」という。)であって、平成20年9月18日付けで、拒絶査定(発送日:同月26日)がなされたところ、拒絶査定不服審判が同年12月22日に請求され、当審で、平成22年3月5日付けで拒絶の理由を通知したところ、意見書及び手続補正書が同年8月10日に提出されたものである。
本件出願の請求項1?13に係る発明は、平成22年8月10日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 MR検査を行う装置において、
位相エンコーディンググラジエントを1パターン内でステップごとに変化させ、MRデータの1フレームを収集する手段を有しており、
当該収集する手段は、前記パターンを、a)最大位相エンコーディンググラジエントと最小位相エンコーディンググラジエントとの間で振動させ、かつ
b)最小位相エンコーディングから最大位相エンコーディングへの振動と、最大位相エンコーディングから最小位相エンコーディングへの振動のそれぞれ一部に、ゼロ位相エンコーディンググラジエントを含むようにする、ことを特徴とする装置。」

第2 当審の拒絶理由
一方、当審において平成22年3月5日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本件出願の請求項1?13に係る発明は、本件出願の優先権主張日より前に頒布された、特開平2-224736号公報 (以下、「引用刊行物A」という。)、特開平7-67855号公報(以下、「引用刊行物B」という。)、及び特開平10-33500号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

第3 引用刊行物記載の発明
(3A)上記引用刊行物Aには、次の事項が図面とともに記載されている。(下線は当審により付与したものである。以下、同様である。)
(3A-1)「2.特許請求の範囲
(1)位相エンコード量を同じ方向に変化させながら各ラインのデータ収集を行なうスキャンを、複数回連続して行なう手段と、収集したデータの任意時点での、時間的に連続している、1画面分のライン数のデータより画像再構成する手段とを具備することを特徴とするMR撮像装置。」(1頁左下欄4?10行)

(3A-2)「【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように各スキャンでそれぞれ1画面の画像を再構成するというのでは、1スキャンに数秒かかり(1画面の画像はこの1スキャンの時間内の平均像ということになる)、画像と画像の時間間隔が1スキャンに要する時間となるため、画像の時間分解能が悪いという問題がある。
この発明は、同じ部位につき時間的につぎつぎに複数の画像を得る場合に、画像の時間分解能を高めることができる、MR撮像装置を提供することを目的とする。」(1頁右下欄12行?2頁左上欄3行)

(3A-3)「【実 施 例】
つぎにこの発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。第1図において被検者10は主マグネット11により形成される静磁場中に配置される。傾斜磁場コイル12には傾斜磁場電源22からパルス状の電流が供給され、パルス状の傾斜磁場が上記の静磁場に重畳される。被検者10にはRFコイル13がセットされ、このRFコイル13に高周波送受信回路23より所定波形の高周波信号が供給され、被検者10のスピンが励起されるとともに、そこに生じたNMR信号がこのRFコイル13を経て高周波送受信回路23に受信される。これら、RF励起・受信、傾斜磁場の波形及びタイミングは測定制御装置21により制御されて、公知のフィールドエコー法やスピンエコー法などのパルスシーケンスが行なわれる。受信された1個のNMR信号をサンプリングして1ラインのデータが得られ、これらが次々にデータ収集メモリ24に格納される。
この実施例では、128×128のマトリクスの画像を再構成するものとし、位相エンコード量を-64から+63まで128通りに変化させ、その各々で1ラインのシーケンスを行い、1スキャン(128回のシーケンス)で128ライン分のデータを得るものとする。
そして、第2図A、Bに示すように、たとえば位相エンコード量が-64から+63へという同一の順序で同じ方向に変化しながら各スキャンが行なわれるよう測定制御装置21が制御する。
1回目の撮像で第1回のスキャンが行なわれ、2回目の撮像で第2回のスキャンが行なわれる、というようにして複数回のスキャンを順次時間的に連続して行なう。この場合、1回の撮像(スキャン)に2秒かかるとすると、第2図Bに示すように、1回目の撮像で得られたデータを使用して2次元フーリエ変換を行なって得た画像の時間重心は時刻1秒、2回目の撮像での画像のそれは時刻3秒、3回目の撮像での画像のそれは時刻5秒となり、各画像の時間間隔は2秒となる。
ところが、上記のように位相エンコード量の変化方向が各スキャンで同一となっているため、1回目の撮像と2回目の撮像で得られる多数ラインのデータのうち第2図Aの(b)、(c)のデータ分のように時間的に連続している128ライン分のデータであればどの部分であってもすべての位相エンコード量が揃うことになり、画像再構成可能である。
そこで、この実施例ではデータ収集メモリ24に蓄えられた多数ラインのデータのうち、第1の画像分として1回目撮像で得られた128ライン分のデータ(a)を取り出し、高速フーリエ変換回路25でそれぞれライン方向にフーリエ変換した後、メモリ26に格納する。このメモリ26の内容は第3図Aに示すようになる。このメモリ26の内容を読み出し、高速フーリエ変換回路25により今度は位相エンコード方向にフーリエ変換し、こうして再構成された画像を画像メモリ31に格納する。
つぎに第2の画像分として、2回目撮像で得られた128ライン一分のデータのうちの前の1/6分のみのデータを取り出し、ライン方向にフーリエ変換してメモリ26にオーバーライドする。するとメモリ26の内容は、前に格納されていた1回目撮像で得られた128ライン分のデータのうちの後の5/6分のデータと組み合わせられて第3図Bのようになる。このメモリ26に格納されたデータは第2図Aの(b)に相当する。これらを読み出し高速フーリエ変換回路25によって位相エンコード方向にフーリエ変換し、再構成された画像を画像メモリ32に格納する。
さらに第3の画像分として、前記第2の画像を再構成するのに用いた2回目撮像の1/6分のデータに続く1/6分のみのデータを取り出し、ライン方向にフーリエ変換してメモリ26にオーバーライドする。するとメモリ26の内容は、前に格納されていた1回目撮像で得られた128ライン分のデータのうちの後の4/6分のデータと、2回目撮像で得られた128ライン分のデータのうちの最初の1/6分のデータと組み合わせられて第3図Bのようになる。このメモリ26に格納されたデータは第2図Aの(c)に相当する。これらを1回目撮像で得られた128ライン分のデータのうちの後の4/6分のデータと2回目撮像で得られた128ライン分のデータのうちの前の2/6分のデータ(c)を取り出し、同様にフーリエ変換してメモリ26に格納する。この内容は第3図Cのようになり、これを読み出し高速フーリエ変換回路25によって位相エンコード方向にフーリエ変換し、再構成された画像を画像メモリ33に格納する。
これらの画像は第2図Aのデータ(a),(b),(c)で作られたものであるから、それぞれに時間重心は時刻1秒、1.3秒、1.6秒となり、時間間隔の短い複数の画像を得ることができる。」(2頁右上欄10行?3頁左下欄3行)

(3A-4)「【発明の効果】
この発明のMR撮像装置によれば、各画像の時間間隔が非常に短い同一部位の複数画像を得ることができるため、造影剤の流れ等の被検体内の動きをより滑らかに表示することができ、診断能が向上する。」(3頁左下欄4?9行)

(3A-5)図1及び図2には、位相エンコード量として、-64と+63の間に0の位相エンコード量を設けることが描かれている。

上記摘記事項(3A-1)?(3A-5)の記載を参照すると、上記引用刊行物Aには、
「位相エンコード量が-64から0を含み+63へという同一の順序で同じ方向に変化しながら各スキャンが行なわれるように制御する測定制御装置21と、
位相エンコード量の-64から0を含み+63までの128通りに変化させたときの128ライン分のデータを得るデータ収集メモリ24とを有し、
データ収集メモリ24に蓄えられた多数ラインのデータのうち、第1の画像分として1回目撮像で得られた128ライン分のデータ(a)を取り出し、再構成された画像を画像メモリ31に格納し、
つぎに第2の画像分として、1回目撮像で得られた128ライン分のデータのうちの後の5/6分のデータと、2回目撮像で得られた128ライン分のデータのうちの前の1/6分のみのデータとを取り出し、再構成された画像を画像メモリ32に格納し、
さらに第3の画像分として、1回目撮像で得られた128ライン分のデータのうちの後の4/6分のデータと、2回目撮影で得られた128ライン分のデータのうちの前の2/6のみのデータとを取り出して、再構成された画像を画像メモリ33に格納することにより、同一部位の複数画像から造影剤の流れ等の被検体内の動きをより滑らかに表示することができるMR撮像装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3B)本件出願の優先権主張の日前に頒布された、上記引用刊行物Bには、次の事項が図面とともに記載されている。
(3B-1)「【請求項1】 核共鳴信号により時間分解して画像を生成する方法であって、
核スピンを励起し、位相符号化し、発生した信号を読出し、該信号の位相エンコードに相応して当該信号を個々のセグメント(SG)に分割されたローデータマトリクス(RM)のそれぞれ1つの列にプロットし、
列によって完全に満たされたローデータマトリクス(RM)から画像を作成し、
複数のローデータマトリクスを運動経過の異なる時点で生成する、MR画像生成方法において、
少なくとも1つのセグメント(SG)の信号(S)を時間的に順次連続する2つのローデータマトリクス(RM)に対して共通に適用することを特徴とする、
MR画像生成方法。」

(3B-2)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、核共鳴信号により時間分解して画像を生成する方法であって、核スピンを励起し、位相エンコードし、発生した信号を読出し、該信号の位相エンコードに相応して当該信号を個々のセグメントに分割されたローデータマトリクスのそれぞれ1つの列にプロットし、列によって完全に満たされたローデータマトリクスから画像を作成し、複数のローデータマトリクスを運動経過の異なる時点で生成する、MR画像生成方法に関する。」

(3B-3)「【0009】FISPシーケンスを以下、図1に基づいて簡単に説明する。詳細な記載は米国特許第4769603号明細書にある。図1のAの高周波パルスシーケンスRFにより、基本磁場に配列された被検体の核スピンが偏向される。図1Bの高周波パルスは層選択勾配SSの作用下で照射される。したがってこのパルスは被検体の層にだけ選択的に作用する。層選択勾配SSの各正のパルスには負のパルスが続き、したがって正のパルスによって惹起されたディフェージングが再び回復される。各励起後に位相エンコード勾配Phのパルスが照射され(図1C)、このパルスの振幅-時間面は励起パルスごとに変化する。これにより核スピンは励起ごとに異なって位相エンコードされる。図1Eのバイポーラ読出し勾配ROにより引き続き、図1Eの核共鳴信号Sが生成される。この信号は核読出し勾配ROの正部分の作用下で読出される。各核共鳴信号Sの後かつ励起の前に、核スピンの位相は位相エンコード装置で位相エンコード勾配Phの負のパルスによって再び回復される。」

(3B-4)「【0019】問題点を説明するため、図2には心臓運動の時間分解検出のための従来のデータ記録が示されている。ここではECGが検出され、R波によりそれぞれ測定がトリガされる。各心周期、すなわち2つのR波間の時間は心臓フェーズに分割される。ここで各心臓フェーズにはデータ獲得窓が割り当てられている。図2の実施例ではデータ獲得窓DA1?DA6が割り当てられる。各データ獲得窓DA1?DA6でFISPシーケンスにより個々の信号、すなわちローデータマトリクスのラインが得られる。したがって6つの心臓フェーズを検出したければ、6つのデータ獲得フェーズDA1?DA6で6つの信号が得られる。これら6つの信号は、6つの連続する画像を作成するためローデータマトリクスのそれぞれ1つのラインに配属される。ECGの次のR波の後、位相エンコード勾配の連続接続によりそれぞれ別のラインが6つの画像の各々に対して得られる。したがってローデータマトリクスのラインの数NとECGの順次連続する2つのR波の平均間隔TRRの積から全測定時間が得られる。ローデータマトリクスが128ラインの場合、完全な測定のためには約128秒が必要である。これは呼吸停止期間内には実施するはできないから、ほとんど必然的に運動アーチファクトが生じる。
【0020】すでに冒頭に述べたD.J.AtkinsonおよびR.R.Edelman著の刊行物から、各心臓フェーズ内で画像の各々に対して複数のフーリエラインを高速に順次連続して測定し、これらのラインを相応する心臓フェーズを有するローデータマトリクスのセグメントに割り当てることが公知である。このセグメント化されたK空間技術として公知の手段は、図3に概略的に示されている。ここではそれぞれの心臓フェーズに対する各データ獲得窓DA(図3には概略的にそれぞれ第1のデータ獲得窓DA1だけが示されている)内で、異なって位相エンコードされた複数の信号が得られる。ローデータマトリクスRMはセグメントSG1?SGNの数に分割される。第1のデータ獲得フェーズDA1では第1のR波R1の後、各セグメントSGの第1のラインがそれぞれプロットされる。第2のデータ獲得フェーズDA1’では第2のR波の後、各セグメントのそれぞれ第2のラインがプロットされる。同じようにして、それぞれのR波に対して異なる間隔を有するデータ獲得窓によって別の心臓フェーズの画像に対するセグメントSGが得られる。
【0021】図4にはデータ獲得フェーズDA1に対するパルスシーケンスの対応関係が概略的に示されている。図2と比較すると、ここではデータ獲得フェーズDA1中に複数回の励起が行われ、複数の異なって位相エンコードされた信号の得られることがわかる。
【0022】図5には測定の時間的経過が示されている。ここでは時間軸tに心周期T_(RR)内のそれぞれの測定時点がプロットされている。SGは測定とK空間セグメントとの対応関係を表し、HPは画像シーケンス内の心臓フェーズないし画像に対する対応関係を表す。ここでは各ローデータマトリクスは9つのセグメントに分割されている。したがって図5からわかるように、例えば第1の測定は第1の心臓フェーズに相応する第1の画像の第1のセグメントに配属され、第10の測定は第2の心臓フェーズに相応する第2の画像の第1のセグメントに配属される。心臓フェーズないしデータ獲得フェーズ当たりに実施される測定数に相応してとくに、データ獲得フェーズを延長しなければならない。そのため心周期の分割できる心臓フェーズの数が少なくなる。例えば実施例のように心臓フェーズないしデータ獲得フェーズ当たりで、反復時間TRを有する9つの画像が得られれば、順次連続する心臓フェーズ画像間の最短時間間隔は9×TRである。したがって、現在技術的に実現可能な約10msの反復時間により、心臓フェーズ当たり90msまたは約11画像の時間分解能が達成される。このことは一般に心臓検査に対しては不十分である。セグメント数の低減すなわち心臓フェース当たりに得られたローデータライン数の低減は時間分解能を改善するが、しかし測定時間の短縮度が小さくなる。一般的に全測定時間TAはセグメント数がmの場合、
TA=N・T_(RR)/m
である。
【0023】ただ1つの呼吸停止サイクル内での“Cine-Studie”の実施は、約9のセグメント数を前提とする。」

(3B-5)「【0024】本発明は、2つの順次連続する画像のローデータラインに対して1つまたは複数の信号Sを使用するという考えから出発するものである。図6に手段が示されている。ここでも各画像のローデータマトリクスは9つのセグメントSGに分割かれる。しかし図5の従来技術とは異なり、この9番目の信号のそれぞれは順次連続する2つの心臓フェーズに対して使用される。例えば番号9の信号は、第1の心臓フェーズHPの画像に対するローデータマトリクスの第9のセグメントに対しても、第2の心臓フェーズの画像に対するローデータマトリクスの第9のセグメントに対しても使用される。番号17の信号は、第2の心臓フェーズHPの画像に対するローデータマトリクスの第1のセグメントに対しても、第3の心臓フェーズHPの画像に対するローデータマトリクスの第1のセグメントに対しても使用される。各パルスシーケンスの反復時間TRにおいて、1心周期で各心臓フェーズ画像ごとに時間8TRが必要であるが、相応する図5の従来技術では9TRが必要である。したがって心周期当たりに相応して比較的多数の画像を収容することができ、時間分解能が上昇する。フーリエ変換法では画像コントラストに対してまず第1に中央ローデータラインが重要であるから、過度に早い時点ないし遅い時点で得られた外側のローデータラインは時間的画像解像度に対してほとんど作用を及ぼさない。図6に示された実施例では、時間的分解能の上昇は比較的小さい。というのは、各心臓フェーズで1つのデータ獲得が節約されるだけだからである。
【0025】しかし1つの信号だけでなく複数の信号を順次連続する2つの心臓フェーズ画像に対して共通に使用することにより時間的分解能をさらに改善することも可能である。相応する実施例が図7に示されている。ここではそれぞれ4つの信号が順次連続する2つの心臓フェーズ画像のローデータマトリクスに対して使用される。したがって例えば、信号5?9が第1および第2の心臓フェーズHPの画像のローデータマトリクスに対して使用され、信号11?14が第2および第3の心臓フェーズの画像のローデータマトリクスに対して使用される。この場合、図7に示されているように5重の反復時間5TRが各心臓フェーズ画像で必要なだけである。したがって時間的分解能は図5のデータ獲得と比較してほぼ2倍にすることができる。説明のために図8には概略的にそれぞれ9つのセグメントSG1?SG9を有する3つのローデータマトリクスが示されている。わかりやすくするため、セグメントごとに5つのローデータラインだけが記入されている。実際には例えばローデータマトリクスRTの全ライン数を124にするため格段に多くのローデータラインが使用される。図8に矢印で示されたように、ローデータマトリクスRD1のローデータセグメントSG6?SG9のローデータラインがローデータマトリクスRD2の相応するセグメントSG6?SG9に伝送される。相応して第2のローデータマトリクスRD2の第1のセグメントSG1?SG4が第3のローデータマトリクスRD3の相応するセグメントに伝送される。」

(3B-6)「【0026】位相エンコード順序を線形に選択すれば、すなわち個々のセグメントをローデータマトリクスに配列されるのと同じ時間的順序で測定すれば、各第2の画像でセグメントの時間的検出に強い不連続性が生じる。このことは図9に示されている。ここでは各セグメントSGに対して相対的時点(すなわちローデータマトリクス内の第1のデータ検出の時点に関連して)が示されている。第1のローデータマトリクスRD1に対するデータ検出時点はセグメントごとに線形であり連続している。第1のローデータマトリクスから例えば最後の4つのセグメントを次のローデータマトリクスに引き渡すと、第2のローデータマトリクスRD2の第9のセグメントと第1のセグメントとの間に、図9に示されるように強い不連続性が生じる。位相エンコードステップを相応に整列し直すことによりこの不連続性を低減することができる。例えば図7に相応して、セグメントが3-1-2-4-5-7-9-8-6の順序で測定されるように位相エンコードを配列すれば、ローデータマトリクスRD1とRD2に対して図10に相応する相対的データ獲得時間の経過が得られる。この場合すべての画像は、各第2の画像に対して対称性を有する時間的フィルタ機能を有し、このことは実際値に基づく画像データに影響を与えない。」

(3B-7)図3にはECGが検出されたときのR1波の後のデータ獲得窓DA1からの出力が、SG1?SGNの第1のラインにプロットされるとともに、R1波の次のR2波のデータ獲得窓DA1´からの出力が、R1波のデータ獲得窓DA1からプロットされたSG1?SGNの第1のラインの次に第2のラインとしてプロットされることが描かれ、また、図4には、データ獲得窓DA1において、位相エンコード勾配Ph(図1、上記摘記事項(3B-3)の記載参照)の振幅-時間面が、励起パルスごとに、順次振幅の高いパルスから、低いパルスに変化することが描かれている。
さらに、図5には、2つのR波時間間隔T_(RR)において、測定の時間軸tの、
1、2、・・・9、10、11・・・18、19、20・・・27・・・
に対応して、セグメントSGの番号が
1、2、・・・9、1、2、・・・9、1、2、・・・9、・・・
と対応し、さらに、測定の時間軸tの1、2、・・・9に対応するセグメントSGの番号1、2、・・・9が第1の画像に対応するHP1に対応し、測定の時間軸tの10、11・・・18に対応するセグメントSGの番号1、2、・・・9が第2画像に対応するHP2に対応し、測定の時間軸tの19、20・・・27に対応するセグメントSGの番号1、2、・・・9が第3の画像に対応することが描かれている。
そして、図8にSG1?SG9にそれぞれ5本のローデータラインが描かれ、ローデータマトリクスRD1はSG1?SG9のローデータラインが使用され、ローデータマトリクスRD2は、SG1?SG5のローデータラインとローデータマトリクスRD1のSG6?SG9のローデータラインが使用され、ローデータマトリクスRD3は、SG5?SG9のローデータラインとローデータマトリクスRD2のSG1?SG4のローデータラインが使用されることが描かれている。
また、図9には、1-2-3-4-5-6-7-8-9のセグメントでローデータマトリックスRD1を構成し、ローデータマトリックスRD1を構成する6-7-8-9のセグメントと、5-1-2-3-4のセグメントでローデータマトリックスRD2を構成することが描かれている。

第4 本願発明と引用発明との対比・判断
(4-a)本願発明と引用発明の対比
(i)引用発明「MR撮像装置」がその構造及び機能からみて、本願発明の「MR検査を行う装置」に相当する。

(ii)上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-3)には「傾斜磁場コイル12には傾斜磁場電源22からパルス状の電流が供給され、パルス状の傾斜磁場が上記の静磁場に重畳される。被検者10にはRFコイル13がセットされ、このRFコイル13に高周波送受信回路23より所定波形の高周波信号が供給され、被検者10のスピンが励起されるとともに、そこに生じたNMR信号がこのRFコイル13を経て高周波送受信回路23に受信される。これら、RF励起・受信、傾斜磁場の波形及びタイミングは測定制御装置21により制御されて、公知のフィールドエコー法やスピンエコー法などのパルスシーケンスが行なわれる。受信された1個のNMR信号をサンプリングして1ラインのデータが得られ、これらが次々にデータ収集メモリ24に格納される。この実施例では、128×128のマトリクスの画像を再構成するものとし、位相エンコード量を-64から+63まで128通りに変化させ、その各々で1ラインのシーケンスを行い、1スキャン(128回のシーケンス)で128ライン分のデータを得るものとする。」ことが記載されていることから、引用発明の位相エンコード量は、測定制御装置21が傾斜磁場の印加を制御して得られるものであり、さらに、その位相エンコード量が、-64から+63まで128通りにステップ状に変化させることは明らかである。そして、上記引用刊行物Bの摘記事項(2B-3)に「各励起後に位相エンコード勾配Phのパルスが照射され(図1C)、このパルスの振幅-時間面は励起パルスごとに変化する。これにより核スピンは励起ごとに異なって位相エンコードされる。」と記載されいることから、引用発明の位相エンコーダ量は、本願発明と同様に、位相エンコーディンググラジエントを変えて得られたものであることは、明らかである。
よって、引用発明の「位相エンコード量が-64から0を含み+63へという同一の順序で同じ方向に変化しながら各スキャンが行なわれるように制御する測定制御装置21」と「位相エンコード量の-64から0を含み+63までの128通りに変化させたときの128ライン分のデータを得るデータ収集メモリ24」が、本願発明の「位相エンコーディンググラジエントを1パターン内でステップごとに変化させ、MRデータの1フレームを収集する手段」に相当する。

(iii)引用発明の(a)「位相エンコード量」の「+63」、(b)「位相エンコード量」の「0」、及び(c)「位相エンコード量の-64」が、それぞれ本願発明の(a’)「最小位相エンコーディンググラジエント」、(b’)「ゼロ位相エンコーディンググラジエント」、(c’)「最大位相エンコーディンググラジエント」に相当する。
そうすると、引用発明の「測定制御装置21」と「データ収集メモリ24」のうちの「測定制御装置21」が、「位相エンコード量の-64から0を含み+63までの128通りに変化させ」ることと、本願発明において「当該収集する手段は、前記パターンを、a)最大位相エンコーディンググラジエントと最小位相エンコーディンググラジエントとの間で振動させ、かつb)最小位相エンコーディングから最大位相エンコーディングへの振動と、最大位相エンコーディングから最小位相エンコーディングへの振動のそれぞれ一部に、ゼロ位相エンコーディンググラジエントを含むようにする」こととは、「当該収集する手段は、前記パターンが、最大位相エンコーディンググラジエントと最小位相エンコーディンググラジエントとの間に、ゼロ位相エンコーディンググラジエントを含むようにする」点で共通する。

(iv)引用発明の「MR撮像装置」が、本願発明の「装置」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「 MR検査を行う装置において、
位相エンコーディンググラジエントを1パターン内でステップごとに変化させ、MRデータの1フレームを収集する手段を有しており、
当該収集する手段は、前記パターンを、最大位相エンコーディンググラジエントと最小位相エンコーディンググラジエントとの間に、ゼロ位相エンコーディンググラジエントを含むようにする装置」
である点で一致し、他方、下記の相違点(あ)で相違するものである。

・相違点(あ)
当該収集する手段は、前記パターンを、最大位相エンコーディンググラジエントと最小位相エンコーディンググラジエントとの間に、ゼロ位相エンコーディンググラジエントを含むようにすることが、本願発明においては、「前記パターンを、a)最大位相エンコーディンググラジエントと最小位相エンコーディンググラジエントとの間で振動させ、かつb)最小位相エンコーディングから最大位相エンコーディングへの振動と、最大位相エンコーディングから最小位相エンコーディングへの振動のそれぞれ一部に、ゼロ位相エンコーディンググラジエントを含むようにする」ことであるのに対して、引用発明においては、「位相エンコード量の-64から0を含み+63までの128通りに変化させる」ことである点。

(4A-b)当審の判断
上記相違点(あ)について検討する。
(あ-1)はじめに、上記引用刊行物Bの記載事項について検討する。
上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-7)には、それぞれ「図3にはECGが検出されたときのR1波の後のデータ獲得窓DA1からの出力が、SG1?SGNの第1のラインにプロットされるとともに、R1波の次のR2波のデータ獲得窓DA1´からの出力が、R1波のデータ獲得窓DA1からプロットされたSG1?SGNの第1のラインの次に第2のラインとしてプロットされる」こと、及び「図4には、データ獲得窓DA1において、位相エンコード勾配Phの振幅-時間面が、励起パルスごとに、順次振幅の高いパルスから、低いパルスに変化する」ことが記載され、さらに、摘記事項(3B-6)には、「【0026】位相エンコード順序を線形に選択すれば、すなわち個々のセグメントをローデータマトリクスに配列されるのと同じ時間的順序で測定」することが記載されており、これらの記載によれば、MR画像を生成する際に、R1波の後のデータ獲得窓DA1では、時間の経過とともに、位相エンコード勾配Phの振幅の大きいパルスから順に位相エンコード勾配Phの振幅が小さくなっていく9個のパルス(仮に、振幅の大きいパルスから順に、Ph1、Ph2・・・Ph9とする。)が、すなわち、位相エンコードステップされた9個のパルスが照射されたときに得られる9つのデータラインが、順にSG1?SG9のセグメントの第1のラインとしてプロットされ、R1波の次のR2波のデータ獲得窓DA1´では、時間の経過とともに、位相エンコード勾配Phの振幅の大きいパルスから順に位相エンコード勾配Phの振幅が小さくなっていく9個のパルスが照射されたときに得られる9つのデータラインが、順にSG1?SG9のセグメントに、第1のラインの次に第2のラインがプロットされることになる。さらに、摘記事項(3B-7)には、「図8にSG1?SG9にそれぞれ5本のローデータラインが描かれ」ることが記載されているから、この例では、ECGが検出されたときのR1波、R2波・・・R5波後のデータ獲得窓DA1、DA1´・・・DA´´´´よりSG1?SG9のセグメントに第1のライン、第2のライン・・・第5のラインがプロットされることになる。
(あ-2)また、上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-5)、(3B-6)及び(3B-7)には、それぞれ「【0025】しかし1つの信号だけでなく複数の信号を順次連続する2つの心臓フェーズ画像に対して共通に使用することにより時間的分解能をさらに改善することも可能である。相応する実施例が図7に示されている。ここではそれぞれ4つの信号が順次連続する2つの心臓フェーズ画像のローデータマトリクスに対して使用される。したがって例えば、信号5?9が第1および第2の心臓フェーズHPの画像のローデータマトリクスに対して使用され、信号11?14が第2および第3の心臓フェーズの画像のローデータマトリクスに対して使用される。・・・図8に矢印で示されたように、ローデータマトリクスRD1のローデータセグメントSG6?SG9のローデータラインがローデータマトリクスRD2の相応するセグメントSG6?SG9に伝送される。相応して第2のローデータマトリクスRD2の第1のセグメントSG1?SG4が第3のローデータマトリクスRD3の相応するセグメントに伝送される。」こと、「【0026】位相エンコード順序を線形に選択すれば、すなわち個々のセグメントをローデータマトリクスに配列されるのと同じ時間的順序で測定すれば、各第2の画像でセグメントの時間的検出に強い不連続性が生じる。このことは図9に示されている。ここでは各セグメントSGに対して相対的時点(すなわちローデータマトリクス内の第1のデータ検出の時点に関連して)が示されている。第1のローデータマトリクスRD1に対するデータ検出時点はセグメントごとに線形であり連続している。第1のローデータマトリクスから例えば最後の4つのセグメントを次のローデータマトリクスに引き渡すと、第2のローデータマトリクスRD2の第9のセグメントと第1のセグメントとの間に、図9に示されるように強い不連続性が生じる。位相エンコードステップを相応に整列し直すことによりこの不連続性を低減することができる。例えば図7に相応して、セグメントが3-1-2-4-5-7-9-8-6の順序で測定されるように位相エンコードを配列すれば、ローデータマトリクスRD1とRD2に対して図10に相応する相対的データ獲得時間の経過が得られる。この場合すべての画像は、各第2の画像に対して対称性を有する時間的フィルタ機能を有し、このことは実際値に基づく画像データに影響を与えない。」こと、及び「図5には、2つのR波時間間隔T_(RR)において、測定の時間軸tの、1、2、・・・9、10、11・・・18、19、20・・・27・・・に対応して、セグメントSGの番号が1、2、・・・9、1、2、・・・9、1、2、・・・9、・・・と対応し、さらに、測定の時間軸tの1、2、・・・9に対応するセグメントSGの番号1、2、・・・9が第1の画像に対応するHP1に対応し、測定の時間軸tの10、11・・・18に対応するセグメントSGの番号1、2、・・・9が第2画像に対応するHP2に対応し、測定の時間軸tの19、20・・・27に対応するセグメントSGの番号1、2、・・・9が第3の画像に対応する・・・図9には、1-2-3-4-5-6-7-8-9のセグメントでローデータマトリックスRD1を構成し、ローデータマトリックスRD1を構成する6-7-8-9のセグメントと、5-1-2-3-4のセグメントでローデータマトリックスRD2を構成する」ことが記載されており、これらの記載によれば、上記引用刊行物Bには、位相エンコ-ドを線形、すなわち、振幅の大きいパルスから順に、Ph1、Ph2・・・Ph9と位相エンコードステップするように配列されて、1-2-3-4-5-6-7-8-9のセグメントの順序で測定されたローデータマトリックスの最後のセグメントのローデータマトリックスと新たにPh5-Ph1-Ph2-Ph3-Ph4の位相エンコードステップするように配列されて、5-1-2-3-4のセグメントの順序で測定されたローデータマトリックスとから、画像を形成したときに生じる強い不連続性を低減するために、時間的に位相エンコードステップを、Ph3-Ph1-Ph2-Ph4-Ph5-Ph7-Ph9-Ph8-Ph6のように整列し直して3-1-2-4-5-7-9-8-6のセグメントの順序で測定されたローデータマトリクスRD1で第1の画像の一部が構成され、次に、ローデータマトリクスRD1で用いた7-9-8-6のローデータマトリックスと、時間的に位相エンコードステップをを、Ph5-Ph3-Ph1-Ph2-Ph4のように整列し直して5-3-1-2-4のセグメントの順序で測定されたローデータマトリクスRD2とで第2の画像の一部が構成されることになる。
そして、上記(あ-1)で検討したように、時間の経過とともに、位相エンコード勾配Phの振幅の大きいパルスから順に位相エンコード勾配Phの振幅が小さくなっていく9個のパルス(Ph1、Ph2・・・Ph9)が照射されたときに得られる9つのデータラインが、順にSG1?SG9のセグメントの第1のラインとしてプロットされるものであり、さらに、時間的に位相エンコードステップを、Ph3-Ph1-Ph2-Ph4-Ph5-Ph7-Ph9-Ph8-Ph6のように整列し直して3-1-2-4-5-7-9-8-6のセグメントの順序で測定されたローデータマトリクスRD1で第1の画像の一部が構成される場合には、セグメント1(SG1)には、位相エンコード勾配Phの振幅の大きさが変化する9個のパルスのうちの最も振幅の大きいパルス(Ph1)が照射されたときに得られるデータラインがプロットされ、セグメント9(SG9)には、位相エンコード勾配Phの振幅の大きさが変化する9個のパルスのうちの最も振幅の小さいパルス(Ph9)が照射されたときに得られるデータラインがプロットされ、セグメント5(SG5)には、位相エンコード勾配Phの振幅の大きさが変化する9個のパルスのうちの最も振幅の大きいパルスと最も振幅の小さいパルスの中間の振幅のパルス(Ph5)が照射されたときに得られるデータラインがプロットされることから、位相エンコード勾配Phの最も振幅の大きいパルス(Ph1)が照射されたとき(SG1にデータラインがプロットされる)から、位相エンコード勾配Phの最も振幅の小さいパルス(Ph9)が照射されたとき(SG9にデータラインがプロットされる)まで位相エンコード勾配Phの振幅が変化する間に、その中間の位相エンコード勾配Phの振幅のパルス(Ph5)(SG5にデータラインがプロットされる)が含まれることは明らかである。
さらに、ローデータマトリクスRD1で用いた7-9-8-6のセグメントのローデータマトリックスと、時間的に位相エンコードステップを整列し直して5-3-1-2-4のセグメントの順序で測定されたローデータマトリクスRD2とで第2の画像の一部が構成される場合には、7-9-8-6-5-3-1-2-4ののグメントの順序で測定されたローデータマトリックスで第2の画像の一部が構成されるから、時間的に位相エンコードステップを整列し直して3-1-2-4-5-7-9-8-6のセグメントの順序で測定されたローデータマトリクスRD1で第1の画像の一部が構成される場合と同様に、位相エンコード勾配Phの最も振幅の小さいパルス(Ph9)が照射されたときから、位相エンコード勾配Phの最も振幅の大きいパルス(Ph1)が照射されたときまで位相エンコード勾配Phの振幅が変化する間に、その中間の位相エンコード勾配Phの振幅のパルス(Ph5)が含まれることは明らかであり、この中間の位相エンコード勾配Phの振幅のパルス(Ph5)が、例えば、特開平8-38452号公報の【0004】に「図3は、このTurbo SEパルス系列により形成された各スピンエコー信号がどのようにして、256行データマトリックス(「k空間」内マトリックスとして知られている)に配属されるのかについて略示されている。この256行データマトリックスは、後で、フーリエ変換される。行データマトリックスは、複数セグメントに分割されている。つまり、各セグメントは、1信号スキャン内で得られた信号数に等しい数である。(この例では、7セグメントであるが、これは、例示のためだけにすぎない。)各スキャンの間、各セグメントの一つの行が取り込まれる。系列は、全セグメントの全ての行が取り込まれるまで、即ち、一つの完全セットのデータが集められるまで、繰り返される。図3から分かるように、最も高い正の位相エンコーディング勾配でのスピンエコーE_(1)は、第1セグメントの一つの行に配属されており、ゼロ位相エンコーディング勾配でのスピンエコーE_(4)は、真ん中のセグメント(信号対雑音比に関して、フーリエ変換にとって最も有意な部分)内の行に配属され、スピンエコーE_(7)は、最も高い負の位相エンコーディング勾配での最後のセグメントの行に配属されている。」(下線は当審で付与したものである。)と記載されているように、ゼロ位相エンコーディング勾配を意味することは技術常識である。
(あ-3)そこで、上記(あ-1)?(あ-2)で検討した事項を整理すると、上記引用刊行物Bには、時間的に位相エンコードステップを整列し直して3-1-2-4-5-7-9-8-6のセグメントの順序で測定されたローデータマトリクスRD1で第1の画像の一部が構成され、さらに、ローデータマトリクスRD1の一部と時間的に位相エンコードステップを配列を整列し直して測定されたローデータマトリクスRD2の一部とからなる7-9-8-6-5-3-1-2-4のセグメントの順序で測定されたローデータマトリックスで第2の画像の一部が構成される場合には、測定されるセグメントの順序は、3-1-2-4-5-7-9-8-6-5-3-1-2-4となり、このとき照射される位相エンコード勾配Phのパルスは、最も振幅の大きいパルス(Ph1)から最も小さいパルス(Ph9)への振動と、最も振幅の大きいパルス(Ph1)から最も小さいパルス(Ph9)への振動を含み、さらに、最も振幅の大きいパルス(Ph1)から最も小さいパルス(Ph9)への振動の間と、最も振幅の小さいパルス(Ph9)から最も大きいパルス(Ph1)への振動の間に、それぞれ、最も振幅の大きいパルス(Ph1)と最も小さいパルス(Ph9)との中間の振幅の大きさの位相エンコード勾配Phのパルス(Ph5)を含ませるように時間的に位相エンコードを整列し直すことにより、データラインで構成するセグメント間で不連続が低減される発明が記載されているものと認められる。
(あ-4)ところで、引用発明のMR撮像装置では、1回目撮像で得られた128ライン分のデータのうちの後の5/6分のデータと、2回目撮像で得られた128ライン一分のデータのうちの前の1/6分のみのデータとを取り出し、再構成された画像を画像メモリ32に格納し、さらに第3の画像分として、1回目撮像で得られた128ライン分のデータのうちの後の4/6分のデータと、2回目撮影で得られた128ライン分のデータのうちの前の2/6のみのデータとを取り出して、画像を再構成していることから、第2の画像分及び第3の画像分では第1回目撮像で得られたエンコード量の+63から第2回目の撮像で得られたエンコード量の-64に移動した不連続なラインを含むデータで画像が構成されるものであり、他方、上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-6)に「【0026】・・・第1のローデータマトリクスから例えば最後の4つのセグメントを次のローデータマトリクスに引き渡すと、第2のローデータマトリクスRD2の第9のセグメントと第1のセグメントとの間に、図9に示されるように強い不連続性が生じる。」と記載されており。この記載によれば、セグメントが6-7-8-9-1-5-1-2-3-4の順序で測定される、すなわち、位相エンコード勾配Phが、Ph6-Ph7-Ph8-Ph9-Ph5-Ph1-Ph2-Ph3-Ph4順で照射されることにより、Ph9が照射されて得られるSG9にプロットされたデータラインから、Ph5が照射されて得られるSG5にプロットされたデータラインに移動した不連続なデータライン、及び、Ph5が照射されて得られるSG5にプロットされたデータラインから、Ph1が照射されて得られるSG1にプロットされたデータラインに移動した不連続なデータラインから画像が再構築されることから、引用発明の第1回目撮像で得られたエンコード量の+63から第2回目の撮像で得られたエンコード量の-64に移動した不連続なラインを含むデータで画像が構成されることと、上記引用刊行物Bに記載された発明の、Ph9が照射されて得られるSG9にプロットされたデータラインから、Ph5が照射されて得られるSG5にプロットされたデータラインに移動した不連続なデータライン、及び、Ph5が照射されて得られるSG5にプロットされたデータラインから、Ph1が照射されて得られるSG1にプロットされたデータラインに移動した不連続なデータラインから画像が再構築されることとは、不連続な位相エンコード量を照射したときに得られるデータを用いて画像が構成される点で共通するものである。
そうすると、引用発明では、第2の画像分及び第3の画像分では第1回目撮像で得られたエンコード量の+63から第2回目の撮像で得られたエンコード量の-64に移動した不連続なラインを含むデータで画像が構成されるものであるから、引用発明においても上記引用刊行物Bに記載された発明と同様に、不連続なラインを含むデータで画像が構成されることを解決しようとする課題が生ずることから、引用発明において、位相エンコード量の-64から0を含み+63までの128通りに変化させて、1回目撮像で得られた128ライン分のデータのうちの後の5/6分のデータと、2回目撮像で得られた128ライン一分のデータのうちの前の1/6分のみのデータとを取り出し、再構成された画像を画像メモリ32に格納し、さらに第3の画像分として、1回目撮像で得られた128ライン分のデータのうちの後の4/6分のデータと、前記第2の画像を再構成するのに用いた2回目撮像うちの前の1/6分のデータと、2回目撮像の1/6分のデータに続く1/6分のみのデータとを取り出して、再構成された画像を画像メモリ33に格納する際に、第2の画像分、第3の画像分に不連続を低減するために、上記引用刊行物Bに記載された発明の構成を採用して、最大のエンコーダ量の+63から最小のエンコーダ量の-64への振動と、最小のエンコーダ量-64から最大のエンコーダ量の+63への振動を含み、さらに、最大のエンコーダ量の+63から最小のエンコーダ量の-64への振動と、最小のエンコーダ量-64から最大のエンコーダ量の+63への振動との間に中間の位相エンコーダ量0を含むようにすることにより、本願発明のごとく、当該収集する手段は、前記パターンを、最大位相エンコーディンググラジエントと最小位相エンコーディンググラジエントとの間に、ゼロ位相エンコーディンググラジエントを含むようにすることが、「前記パターンを、a)最大位相エンコーディンググラジエントと最小位相エンコーディンググラジエントとの間で振動させ、かつb)最小位相エンコーディングから最大位相エンコーディングへの振動と、最大位相エンコーディングから最小位相エンコーディングへの振動のそれぞれ一部に、ゼロ位相エンコーディンググラジエントを含むようにする」ことは当業者が容易になし得るものである。

そして、本願発明によってもたらされる作用効果は、引用発明及び引用刊行物Bに記載された発明から予測される範囲内のものであって、格別のものではない。

なお、拒絶査定不服審判の請求人は、当審において通知した拒絶の理由に対して提出した平成22年8月20日付けの意見書において、
「審判官は、引用刊行物Bの図10に記載されたSGが本願の位相エンコーディンググラジエントのステップに相当すると認定されていますが、引用刊行物Bに記載のセグメントSG1?SG9のそれぞれは本願発明の1パターンに相当するものです。
すなわち引用刊行物B、第6段第45行?第7段第1行に『説明のために図8には概略的にそれぞれ9つのセグメントSG1?SG9を有する3つのローデータマトリクスが示されている。わかりやすくするため、セグメントごとに5つのローデータラインだけが記入されている。実際には例えばローデータマトリクスRTの全ライン数を124にするために格段に多くのローデータラインが使用される。』と記載のようにローデータマトリクスごとに124のローデータラインが使用されます。そしてこのローデータラインが本願発明のステップに相当するものです。
本願発明では、図1および図2の時間軸の単位からも明らかなように約300msで1つのパターンが形成されます。そしてこの1パターン内には黒い四角で示した124のステップが存在します。したがって引用刊行物Bの1ローデータマトリクスが本願発明の1パターンに相当するものであり、引用刊行物Bの1セグメントは本願発明の1パターンに相当するものではありません。
引用刊行物Bの図10には時間軸の単位が示されていませんが、これはリアルタイムの時間経過には相当しないためです。引用刊行物Bに記載の発明は、第7段第24?28行『例えば図7に相応して、セグメントが3-1-2-4-5-7-9-8-6の順序で測定されるように位相エンコードを配列すれば、ローデータマトリクスRD1とRD2に対して図10に相応する相対的データ獲得時間の経過が得られる。』の記載から明らかなように、リアルタイムでの画像サンプリングに関するものではなく、セグメント自体の測定順序を工夫するものです。
したがって引用刊行物Bの図10は、セグメントSG1?SG9をどのような順序で処理するかを示すものであり、SG1が『最大位相エンコーディンググラジエント』に相当するものでも、SG9が『最小位相エンコーディンググラジエント』に相当するものでもなく、SG5(当審注:「SG3」は「SG5」の誤記)が『ゼロ位相エンコーディンググラジエント』に相当するものでもありません。
図10では9つのセグメントが単に上下に並べられているだけであり、一番上が『最大位相エンコーディング』を、一番下が『最小位相エンコーディング』を意味するものではなく、それを示唆する記載もありません。
したがって引用刊行物Bには、1セグメント内のローデータラインが、『最小位相エンコーディングから最大位相エンコーディングへの振動と、最大位相エンコーディングから最小位相エンコーディングへの振動のそれぞれ一部に、ゼロ位相エンコーディンググラジエントを含むようにする』ことは一切開示されていません。」旨の主張している。
しかしながら、上記(あ-1)で検討したように、引用刊行物Bに記載された発明では、MR画像を生成する際に、SG1?SG9の各セグメントには、時間の経過とともに、位相エンコード勾配Phの振幅の大きいパルスから順に位相エンコード勾配Phの振幅が小さくなっていくように位相エンコードステップされた9個のパルスが照射されたときに得られるに9つのデータラインが、順にSG1?SG9のセグメントの第1のライン、第2のライン・・・第5のラインの各ラインにプロットされることから、SG1?SG9のセグメントの第1のライン、第2のライン・・・第5のラインのデータが、1つのパターンに相当するものである。
そして、上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-6)には「【0026】・・・第1のローデータマトリクスから例えば最後の4つのセグメントを次のローデータマトリクスに引き渡すと、第2のローデータマトリクスRD2の第9のセグメントと第1のセグメントとの間に、図9に示されるように強い不連続性が生じる。位相エンコードステップを相応に整列し直すことによりこの不連続性を低減することができる。例えば図7に相応して、セグメントが3-1-2-4-5-7-9-8-6の順序で測定されるように位相エンコードを配列すれば、ローデータマトリクスRD1とRD2に対して図10に相応する相対的データ獲得時間の経過が得られる。」と記載されており、さらに、摘記事項(3B-7)には「図5には、2つのR波時間間隔T_(RR)において、測定の時間軸tの、1、2、・・・9、10、11・・・18、19、20・・・27・・・に対応して、セグメントSGの番号が1、2、・・・9、1、2、・・・9、1、2、・・・9、・・・と対応し、さらに、測定の時間軸tの1、2、・・・9に対応するセグメントSGの番号1、2、・・・9が第1の画像に対応するHP1に対応し、測定の時間軸tの10、11・・・18に対応するセグメントSGの番号1、2、・・・9が第2画像に対応するHP2に対応し、測定の時間軸tの19、20・・・27に対応するセグメントSGの番号1、2、・・・9が第3の画像に対応する」と記載されていることから、セグメントが3-1-2-4-5-7-9-8-6の順序で測定されるように位相エンコードを配列することは、時間の経過とともに、位相エンコード勾配Phの振幅の大きいパルスから順に位相エンコード勾配Phの振幅が小さくなっていくように位相エンコードステップされた9個のパルス(仮に、振幅の大きいパルスから順に、Ph1、Ph2・・・Ph9とする。)が照射されたときに得られる9つのデータラインが、順に1-2-3-4-5-6-7-8-9のセグメントの各ラインにプロットするのではなく、3-1-2-4-5-7-9-8-6の順序で測定されるように、セグメントに対応した位相エンコード勾配Phの振幅の大きさのパルスを、時間と経過とともに順に、つまり、Ph3-Ph1-Ph2-Ph4-Ph5-Ph7-Ph9-Ph8-Ph6の順に照射していくことを意味することから、請求人の「引用刊行物Bの図10には時間軸の単位が示されていませんが、これはリアルタイムの時間経過には相当しない」との主張は採用できないものである。
また、上記(あ-2)で検討したように、上記引用刊行物Bに記載された、最も振幅の大きいパルス(Ph1)と最も小さいパルス(Ph9)との中間の振幅の大きさの位相エンコード勾配Phのパルス(Ph5)がゼロ位相エンコーディング勾配を意味することは技術常識であり、さらに、最も振幅の大きいパルス(Ph1)と最も小さいパルス(Ph9)は、振幅の大きいパルスから順に、Ph1、Ph2・・・Ph9に位相エンコードステップされた9個のパルスでは、それぞれ最大位相エンコードと最小位相エンコードであり、引用発明の、最大のエンコーダ量の+63と最小のエンコーダ量-64に対応するものである。
そして、上記(あ-4)で検討したように、引用発明においても上記引用刊行物Bに記載された発明と同様に、不連続なラインを含むデータで画像が構成されることを解決しようとする課題が生ずることから、引用発明において、第2の画像分、第3の画像分に不連続を低減するために、上記引用刊行物Bに記載された発明の構成を採用して、本願発明のごとく、当該収集する手段は、前記パターンを、a)最大位相エンコーディンググラジエントと最小位相エンコーディンググラジエントとの間で振動させ、かつb)最小位相エンコーディングから最大位相エンコーディングへの振動と、最大位相エンコーディングから最小位相エンコーディングへの振動のそれぞれ一部に、ゼロ位相エンコーディンググラジエントを含むようにする」パターンとすることは当業者が容易になし得るものであり、請求人の主張は採用できない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用刊行物Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件出願はその余の請求項に係る発明を検討するまでもなく、当審が通知した上記拒絶の理由によって拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-04 
結審通知日 2011-03-09 
審決日 2011-03-28 
出願番号 特願平11-182407
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 幸仙  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 竹中 靖典
郡山 順
発明の名称 MR検査を行う装置  
代理人 星 公弘  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  
代理人 矢野 敏雄  

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