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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する A23L
管理番号 1241623
審判番号 訂正2011-390074  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2011-06-17 
確定日 2011-07-23 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4746706号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4746706号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 審判請求の趣旨
本件審判(平成23年6月17日に請求)の請求の趣旨は、特許4746706号発明(平成22年8月4日特許出願、平成23年5月20日設定登録)の特許請求の範囲及び明細書を、審判請求書に添付した特許請求の範囲及び明細書のとおり、すなわち、次のとおりに訂正することを求めるものである。

訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1の
「常圧であり、且つ180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて、2秒?10秒の間で未処理の玄米を加熱し、当該加熱初期に当該玄米の表面に結露水を発生させると共に、当該過熱水蒸気による当該玄米の加熱によって、当該結露水を除去させる加熱水蒸気処理と、
前記加熱水蒸気処理の直後に、前記玄米から前記過熱水蒸気を分離させる蒸気分離処理と、
前記蒸気分離処理の直後に、前記玄米を冷却する冷却処理と、
を有する玄米の処理方法で処理した玄米を、当該玄米の糊粉層のうち、胚乳に接する境界部を残すように搗精することを特徴とする精米方法。」

「常圧であり、且つ180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて、2秒?10秒の間で未処理の玄米を加熱し、当該加熱初期に当該玄米の表面に結露水を発生させると共に、当該過熱水蒸気による当該玄米の加熱によって、当該結露水を除去させる過熱水蒸気処理と、
前記過熱水蒸気処理の直後に、前記玄米から前記過熱水蒸気を分離させる蒸気分離処理と、
前記蒸気分離処理の直後に、前記玄米を冷却する冷却処理と、
を有する玄米の処理方法で処理した玄米を、当該玄米の糊粉層のうち、胚乳に接する境界部を残すように搗精することを特徴とする精米方法。」
と訂正する。

訂正事項b:段落【0010】の
「本発明の精米方法は、常圧であり、且つ180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて、2秒?10秒の間で未処理の玄米を加熱し、当該加熱初期に当該玄米の表面に結露水を発生させると共に、当該過熱水蒸気による当該玄米の加熱によって、当該結露水を除去させる加熱水蒸気処理と、前記加熱水蒸気処理の直後に、前記玄米から前記過熱水蒸気を分離させる蒸気分離処理と、前記蒸気分離処理の直後に、前記玄米を冷却する冷却処理と、を有する玄米の処理方法で処理した玄米を、当該玄米の糊粉層のうち、胚乳に接する境界部を残すように搗精する。」

「本発明の精米方法は、常圧であり、且つ180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて、2秒?10秒の間で未処理の玄米を加熱し、当該加熱初期に当該玄米の表面に結露水を発生させると共に、当該過熱水蒸気による当該玄米の加熱によって、当該結露水を除去させる過熱水蒸気処理と、前記過熱水蒸気処理の直後に、前記玄米から前記過熱水蒸気を分離させる蒸気分離処理と、前記蒸気分離処理の直後に、前記玄米を冷却する冷却処理と、を有する玄米の処理方法で処理した玄米を、当該玄米の糊粉層のうち、胚乳に接する境界部を残すように搗精する。」
と訂正する。

訂正事項c:段落【0014】の
「さらに、蒸気分離処理によって、加熱水蒸気処理の直後に、玄米から過熱水蒸気を分離させることができるため、玄米に対して、長時間に亘って過熱水蒸気処理されることがなくなる。」

「さらに、蒸気分離処理によって、過熱水蒸気処理の直後に、玄米から過熱水蒸気を分離させることができるため、玄米に対して、長時間に亘って過熱水蒸気処理されることがなくなる。」
と訂正する。

訂正事項d:段落【0054】の
「また、玄米流出部43の下部には過熱玄米投入部70が設けられており、過熱玄米投入部70は水平のベルトコンベア71の一端側に連絡されている。・・・」

「また、玄米流出部43の下部には加熱玄米投入部70が設けられており、加熱玄米投入部70は水平のベルトコンベア71の一端側に連絡されている。・・・」
と訂正する。

訂正事項e:段落【0124】の
「また、図11に示す別の実施形態に係る過熱水蒸気処理装置400の様に、蒸気分離機14から流出された玄米1が過熱玄米投入装置15から冷風処理管16に投入されて強制的に冷却されていてもよい。」

「また、図11に示す別の実施形態に係る過熱水蒸気処理装置400の様に、蒸気分離機14から流出された玄米1が加熱玄米投入部15から冷風処理管16に投入されて強制的に冷却されていてもよい。」
と訂正する。

訂正事項f:段落【0125】の
「冷風処理管16は、過熱水蒸気処理管13と同様の形状を有しており、過熱玄米投入装置15から玄米1が投入される側には、冷風を噴出する冷風機22が設けられている。冷風機22は、温度や速度を可変させて冷風を噴出する。」

「冷風処理管16は、過熱水蒸気処理管13と同様の形状を有しており、加熱玄米投入部15から玄米1が投入される側には、冷風を噴出する冷風機22が設けられている。冷風機22は、温度や速度を可変させて冷風を噴出する。」
と訂正する。

訂正事項g:段落【0127】の
「このような構成を有する冷風処理管16において、過熱玄米投入装置15から投入された玄米1が、冷風機22から噴出された冷風と接触して流されながら冷却処理されるようになっている。このように、加熱された玄米1を強制的に即座に冷却させることができる。」

「このような構成を有する冷風処理管16において、加熱玄米投入部15から投入された玄米1が、冷風機22から噴出された冷風と接触して流されながら冷却処理されるようになっている。このように、加熱された玄米1を強制的に即座に冷却させることができる。」
と訂正する。

訂正事項h:段落【0132】の
「1 玄米
・・・
70 過熱玄米投入部 ・・・」

「1 玄米
・・・
70 加熱玄米投入部 ・・・」
と訂正する。

第2 当審の判断
1.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び実質的拡張・変更の存否について
(1)訂正事項aについて
訂正事項aは、訂正前の請求項1の「当該過熱水蒸気による当該玄米の加熱によって、当該結露水を除去させる加熱水蒸気処理と、前記加熱水蒸気処理の直後に、前記玄米から前記過熱水蒸気を分離させる蒸気分離処理と」を「当該過熱水蒸気による当該玄米の加熱によって、当該結露水を除去させる過熱水蒸気処理と、前記過熱水蒸気処理の直後に、前記玄米から前記過熱水蒸気を分離させる蒸気分離処理と」に、すなわち、「加熱水蒸気処理」を「過熱水蒸気処理」に訂正するものである。
ところで、訂正前の請求項1には、「加熱水蒸気処理」について、「当該過熱水蒸気による当該玄米の加熱によって、当該結露水を除去させる」ものとしており、「玄米」を単なる「加熱水蒸気」により処理するのではなく、「過熱水蒸気」により処理していることが明らかである。
さらに、願書に添付された明細書には、以下の記載がある。(下線は当審で付加したものである。)
段落【0022】:「次に、過熱水蒸気処理装置10に投入された玄米1を、後述する過熱水蒸気処理管13の中で180℃?250℃の過熱水蒸気に接触させて流しながら、2秒?10秒の間で加熱する(S32)。具体的に、過熱水蒸気処理管13の中で過熱水蒸気が玄米1に接触すると、玄米1の表面に結露水が発生する。そして、玄米1が過熱水蒸気処理管13の中を通過する間に、過熱水蒸気の温度によって玄米表面に付着した結露水が除去されるようになっている。」
段落【0024】:「また、玄米1が過熱水蒸気処理される時間は2秒?10秒である。これは、2秒より短い時間で過熱水蒸気処理した場合、加熱時間が短すぎるために、加熱初期に玄米表面に付着した結露水を除去することが難しく、その結果、胴割れ粒や水浸割れ粒などを誘発してしまう恐れがあるためである。」
段落【0027】:「また、ここで言う『乾燥』とは、過熱水蒸気処理によって玄米表面に発生した結露水が除去されるまで玄米1を乾燥させることであるが、乾燥によって玄米1が胴割れなどを起こすまではしない。」
段落【0028】:「次に、過熱水蒸気で玄米1を加熱した直後に、玄米1を冷却する。つまり、S32の過熱水蒸気処理の後に、時間を空けることなく、連続的に玄米1を冷却する。」
段落【0029】:「具体的には、後述する蒸気分離機14に過熱水蒸気処理された玄米1と過熱水蒸気とを連続的に投入し、玄米1から過熱水蒸気を分離させる(S33)。この処理により、玄米1に対して、長時間に亘って過熱水蒸気処理されることがなくなる。」
段落【0030】:「次に、後述する冷却部77に過熱水蒸気と分離された玄米1を連続的に投入し、熱せられた玄米1を冷却する(S34)。この処理により、過熱水蒸気処理で高温に熱せられた玄米1の温度を即座に常温に戻すことができる。」
これらの記載からみても、「玄米」は、単なる「加熱水蒸気」により処理するのではなく、「過熱水蒸気」により処理されていることが明らかである。

そうしてみると、訂正前の請求項1の「加熱水蒸気処理」の記載は、「過熱水蒸気処理」の誤記であることは明らかである。
したがって、訂正事項aについての訂正は、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項aについての訂正は、願書に最初に添付された明細書の段落【0030】、【0032】、【0035】?【0038】には、願書に添付された明細書の段落【0022】、【0024】、【0027】?【0030】と同様の記載があることから、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、願書に添付された明細書の段落【0010】について、訂正事項aと同じ訂正をするものである。
したがって、「(1)訂正事項aについて」で検討したとおり、誤記の訂正を目的とするものに該当するものであり、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であることは明らかであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(3)訂正事項cについて
訂正事項cは、願書に添付された明細書の段落【0014】について、訂正前の「加熱水蒸気処理」を「過熱水蒸気処理」に訂正するものである。
この訂正事項cについても、「(1)訂正事項aについて」で検討したとおり、処理対象である「玄米」は、単なる「加熱水蒸気」により処理されるのではなく、「過熱水蒸気」により処理されていることが明らかである。
したがって、訂正事項cも、誤記の訂正を目的とするものに該当するものであり、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であることは明らかであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(4)訂正事項dについて
訂正事項dは、願書に添付された明細書の段落【0054】について、訂正前の「過熱玄米投入部70」を「加熱玄米投入部70」に訂正するものである。

訂正事項dは、「過熱玄米・・・」を「加熱玄米・・・」に訂正するものであるが、処理対象である「玄米」自体は、過熱水蒸気で処理されたとしても、「過熱」状態になるのではなく、単なる「加熱」状態にしかならないことは技術常識から明らかである。

また、願書に添付された明細書には、以下の記載がある。(下線は当審で付加したものである。)
段落【0028】:「次に、過熱水蒸気で玄米1を加熱した直後に、玄米1を冷却する。つまり、S32の過熱水蒸気処理の後に、時間を空けることなく、連続的に玄米1を冷却する。」
段落【0032】:「上記の玄米1の処理方法によれば、玄米1に過熱水蒸気を用いて加熱することによって、玄米1の表面に結露水を発生させて、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7を糊化することができる。・・・さらに、玄米1に180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて2秒?10秒の間で玄米1を加熱しているため、境界部7を糊化する程度の適量の結露水を玄米表面に発生させることができ、玄米1に対する過度の乾燥や玄米表面に発生する過量の結露水に起因する胴割れ粒や水浸割れ粒の発生などを抑えることができる。」
段落【0040】:「上記の精米方法によれば、過熱水蒸気によって加熱された玄米1は、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7を残すように搗精される。これにより得られた精白米は、過熱水蒸気を用いた玄米1の加熱によって、境界部7が糊化している。」
段落【0041】:「また、上記の精米方法で得られた精白米によれば、過熱水蒸気を用いた玄米1の加熱によって、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7が糊化している。」
これらの記載からみても、「玄米」は、単なる「加熱水蒸気」により処理するのではなく、「過熱水蒸気」により処理されていることが明らかである。
そうしてみると、訂正前の願書に添付された明細書の段落【0054】の「過熱玄米・・・」の記載は、「加熱玄米・・・」の誤記であることは明らかである。

そして、願書に最初に添付された明細書の段落【0036】、【0040】、【0048】?【0049】には、願書に添付された明細書の段落【0028】、【0032】、【0040】?【0041】と同様の記載があることから、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(5)訂正事項eについて
訂正事項eは、願書に添付された明細書の段落【0124】について、訂正前の「過熱玄米投入装置15」を「加熱玄米投入部15」に訂正するものである。

(ア)まず、訂正事項eのうち、「過熱玄米・・・」を「加熱玄米・・・」に訂正するについて、上記「(4)訂正事項dについて」で検討したように、「過熱玄米・・・」の記載は、「加熱玄米・・・」の誤記であることは明らかであり、また、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであること、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(イ)次に、訂正事項eのうち、「・・・玄米投入装置15」を「・・・玄米投入部15」に訂正することについて、「過熱玄米投入装置15」と同じ作用・機能を有する、願書に添付された明細書の段落【0054】及び段落【0132】の「過熱玄米投入部70」が「・・・投入部」とされていることからすれば、「・・・玄米投入装置15」は「・・・玄米投入部15」の誤記であることは明らかである。
また、願書に最初に添付された明細書の段落【0062】及び【0140】においても、「過熱玄米投入部70」が「・・・投入部」とされていることからすれば、訂正事項eは願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであること、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(6)訂正事項f及び訂正事項gについて
訂正事項fは、願書に添付された明細書の段落【0125】について、訂正前の「過熱玄米投入装置15」を「加熱玄米投入部15」に訂正するものであり、訂正事項gは、本願明細書段落【0127】について、訂正前の「過熱玄米投入装置15」を「加熱玄米投入部15」に訂正するものであるが、両者とも訂正事項eと同じ訂正をするものである。
したがって、「(5)訂正事項eについて」で検討したとおり、誤記の訂正を目的とするものに該当するものであり、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であることは明らかであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(7)訂正事項hについて
訂正事項hは、願書に添付された明細書の段落【0132】について、訂正前の「過熱玄米投入部70」を「加熱玄米投入部70」に訂正するものであるが、訂正事項dと同じ訂正をするものである。
したがって、「(4)訂正事項dについて」で検討したとおり、誤記の訂正を目的とするものに該当するものであり、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であることは明らかであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(8)まとめ
上記(1)?(7)で検討したとおり、訂正事項a?hは、特許法第126条第1項ただし書第2号の「誤記・・・の訂正」を目的とするものであり、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであること、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

2.独立特許要件について
上記「1.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び実質的拡張・変更の存否について」で検討したとおり、訂正事項a?hは、誤記の訂正を目的とするものである。
そして、これらの訂正事項についての訂正がなされた後の特許請求の範囲の請求項1係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。


第3 むすび
本件審判請求が求める訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
精米方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、精米方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、刈り取られた稲は、脱穀された後、籾が取り除かれて玄米となる。玄米は、外側から果皮、種皮、糊粉層、胚乳の順に層を形成し、胚乳の一角に胚芽を有している。果皮、種皮、および糊粉層は、玄米100%に対して約7%の割合で存在し、そこに胚芽の約3%を足した、約10%がいわゆる糠である。普通食べられている精白米は、搗精によってこの糠が取り除かれ、澱粉の塊である胚乳のみとしたものである。
【0003】
ところで、糊粉層のうち胚乳に接する境界部には、米の食味に関する酵素やオリゴ糖、アミノ酸、たんぱく質、脂質などが多く含まれており、炊飯時の香りや味覚などの美味しいと言われる大半を占めている。つまり、このような境界部を出来る限り残すような高い搗精歩留まりで搗精することにより、良食味の精白米を作ることができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、玄米の表面から少なくとも果皮層を取り除かれ、糊粉層及び胚芽が残存している搗精米の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4300555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された製造方法のように、旨み成分がつまった境界部を残すように搗精した場合、境界部に内在する脂肪や酸化酵素を多く残すことになり、日数が経過すると、脂質などが酸化し、精白米の味を逆に低下させる方に働く。つまり、搗精したての精白米は、香りも良く美味しいが、日数が経過すると糠臭く、不味くなってしまう。
【0007】
一方、玄米などの穀物に、糊化や酵素を失活させるために過熱水蒸気で加熱する技術が従来から存在する。しかしながら、玄米を過熱水蒸気で加熱することにより、玄米の硬度が弱まり、搗精時に割れ易くなったり、洗米する際に割れてしまったりといった問題がある。
【0008】
そこで、発明者が鋭意研究及び実験を繰り返して試行錯誤を行った結果、過熱水蒸気処理における処理時間や過熱水蒸気の温度と、玄米の品質と、の間に関係があることを見いだした。
【0009】
本発明は、上記の問題を鑑みてされたものであり、玄米を過熱水蒸気処理することによって、玄米における糊粉層のうち胚乳に接する境界部を残すように玄米を搗精しても保存性に優れ、良食味で付加価値の高い精白米を作ることができる精米方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の精米方法は、常圧であり、且つ180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて、2秒?10秒の間で未処理の玄米を加熱し、当該加熱初期に当該玄米の表面に結露水を発生させると共に、当該過熱水蒸気による当該玄米の加熱によって、当該結露水を除去させる過熱水蒸気処理と、前記過熱水蒸気処理の直後に、前記玄米から前記過熱水蒸気を分離させる蒸気分離処理と、前記蒸気分離処理の直後に、前記玄米を冷却する冷却処理と、を有する玄米の処理方法で処理した玄米を、当該玄米の糊粉層のうち、胚乳に接する境界部を残すように搗精する。
【0011】
上記の精米方法によれば、未処理の玄米に過熱水蒸気を用いて加熱することによって、未処理の玄米の表面に結露水を発生させて、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層のうち胚乳に接する境界部を糊化することができる。そのため、境界部を残すように玄米を搗精して得られた精白米は、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、玄米に過熱水蒸気を用いて加熱することによって、境界部に含まれる酸化酵素を失括させ、酸化酵素による脂質の酸化を抑えることができる。そのため、境界部を残すように玄米を搗精した場合でも、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米を提供することができる。さらに、玄米に180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて2秒?10秒の間で玄米を加熱しているため、境界部を糊化する程度の適量の結露水を玄米表面に発生させることができ、玄米に対する過度の乾燥や玄米表面に発生する過量の結露水に起因する胴割れ粒や水浸割れ粒の発生などを抑えることができる。
【0012】
また、玄米表面に長時間結露水が付着することを抑えることができる。これにより、過熱水蒸気の加熱によって発生する玄米表面の結露水に起因する胴割れ粒や水浸割れ粒の発生などをさらに抑えることができる。
【0013】
また、過熱水蒸気によって加熱された玄米は、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層のうち胚乳に接する境界部を残すように搗精される。これにより得られた精白米は、過熱水蒸気を用いた玄米の加熱によって、境界部が糊化している。そのため、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、これにより得られた精白米は、過熱水蒸気を用いた玄米の加熱によって、境界部に含まれる酸化酵素が失括し、酸化酵素による脂質の酸化が抑えられている。そのため、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米となる。
【0014】
さらに、蒸気分離処理によって、過熱水蒸気処理の直後に、玄米から過熱水蒸気を分離させることができるため、玄米に対して、長時間に亘って過熱水蒸気処理されることがなくなる。
【0015】
さらに、冷却処理によって、蒸気分離処理の直後に、玄米を冷却するため、過熱水蒸気処理で高温に熱せられた玄米の温度を即座に常温に戻すことができる。このように、加熱処理された玄米が加熱直後に冷却されるため、玄米自体が保つ熱によって胴割れなどを引き起こすことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の精米方法によると、境界部を残すように玄米を搗精して得られた精白米は、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、境界部を残すように玄米を搗精した場合でも、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米を提供することができる。さらに、玄米に対する過度の乾燥や玄米表面に発生する過量の結露水に起因する胴割れ粒や水浸割れ粒の発生などを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る玄米処理ルーチンを示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態において、玄米が商品として市場に流通するまでの流れを示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る玄米の構造を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る過熱水蒸気処理装置を示す説明図である。
【図5】(a)本発明の実施形態に係る過熱水蒸気処理装置における蒸気分離機の側断面図である。(b)本発明の実施形態に係る過熱水蒸気処理装置における蒸気分離機の横断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る過熱水蒸気処理装置の内部構成を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る過熱水蒸気処理装置の動作である玄米投入調整処理ルーチンを示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る過熱水蒸気処理装置の動作である過熱水蒸気調整処理ルーチンを示す説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係る実施例3の中の一例の評価結果を示す図である。
【図10】(a)本発明の別の実施形態に係る過熱水蒸気処理装置における蒸気分離機を示す説明図である。(b)本発明の別の実施形態に係る過熱水蒸気処理装置における蒸気分離機の横断面図である。
【図11】本発明の別の実施形態に係る過熱水蒸気処理装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(玄米の処理方法)
図1に示すように、本実施形態に係る玄米1の処理方法は、180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて、2秒?10秒の間で玄米1を加熱している。
【0020】
ここで、玄米1は、図3に示すように、外側から果皮5、種皮4、糊粉層3、胚乳2の順に層を形成し、胚乳2の一角に胚芽6を有している。果皮5は、玄米1の最表面を被覆する黒褐色の堅い皮である。種皮4は、フィルムのような薄い皮で、種子の水分や酸素の出入りを調整する。糊粉層3は、タンパク質と脂肪から成り、稲が発芽するにあたって酵素を発生する。酵素は、胚乳2と胚芽6との境界を溶解し、胚芽6が胚乳2の養分を使えるようにする。また、酵素は、胚乳2の中の澱粉をブドウ糖に変えて稲の成長に使えるようにする。胚乳2は、稲が炭素同化作用で作った澱粉の貯蔵庫であり、搗精によって精白米となる部分である。胚芽6は、胚乳の一角にある胚盤に付着していおり、稲の生命のおおもとになる部分である。また、図3の拡大図Sに示すように、糊粉層3のうち胚乳2に接する部分には、境界部7が存在する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る玄米1の処理方法において、上記で説明したような構造を有する玄米1を、先ず、後述する過熱水蒸気処理装置10に投入する(S31)。
【0022】
次に、過熱水蒸気処理装置10に投入された玄米1を、後述する過熱水蒸気処理管13の中で180℃?250℃の過熱水蒸気に接触させて流しながら、2秒?10秒の間で加熱する(S32)。具体的に、過熱水蒸気処理管13の中で過熱水蒸気が玄米1に接触すると、玄米1の表面に結露水が発生する。そして、玄米1が過熱水蒸気処理管13の中を通過する間に、過熱水蒸気の温度によって玄米表面に付着した結露水が除去されるようになっている。この過熱水蒸気処理により、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7の僅かな糊化を誘引し、加熱吸水性を向上させることができる。また、同時に、過熱水蒸気の熱によって、境界部7が有する酸化酵素を失括させることができる。
【0023】
ここで、『過熱水蒸気』とは、例えば100℃で蒸発した飽和水蒸気を常圧のまま100℃以上に加熱させた水蒸気のことである。また、本実施形態における過熱水蒸気は180℃?250℃の範囲であるが、この範囲内であれば、何れの温度を用いてもよい。一方、180℃以下の温度の過熱水蒸気を用いた場合、温度が低すぎるために、加熱初期に玄米表面に付着した結露水を除去することが難しく、その結果、胴割れ粒や水浸割れ粒などを誘発してしまう恐れがある。また、250℃以上の温度の過熱水蒸気を用いた場合、温度が高すぎるために、過度に乾燥が進んでしまい、その結果、胴割れなどを引き起こしてしまう恐れがある。なお、過熱水蒸気は、180℃?250℃の範囲において、好ましくは200℃以上であり、また、好ましくは220℃以下である。
【0024】
また、玄米1が過熱水蒸気処理される時間は2秒?10秒である。これは、2秒より短い時間で過熱水蒸気処理した場合、加熱時間が短すぎるために、加熱初期に玄米表面に付着した結露水を除去することが難しく、その結果、胴割れ粒や水浸割れ粒などを誘発してしまう恐れがあるためである。また、10秒より長い時間で過熱水蒸気処理した場合、加熱時間が長すぎるために、過度に乾燥が進んでしま、その結果、胴割れなどを引き起こしてしまう恐れがある。なお、過熱水蒸気処理される時間は、2秒?10秒の範囲において、好ましくは2秒以上であり、また、好ましくは5秒以下である。
【0025】
また、『糊化』とは、澱粉が吸水して徐々に膨張し、最終的にはデンプン粒が崩壊し、ゲル状に変化する現象である。本実施形態の場合、境界部7が玄米表面に発生した結露水を吸水して、ゲル状に変化することで粘度が増し、米の加熱吸水性を向上させている。
【0026】
また、ここで言う『酸化酵素』とは、米の旨み成分である脂質を酸化させることによって、米の旨みを低下させ、米の劣化を促進してしまう酵素のことである。また、『失活』とは、過熱水蒸気の熱によって、酸化酵素の働きを無くすことである。
【0027】
また、ここで言う『乾燥』とは、過熱水蒸気処理によって玄米表面に発生した結露水が除去されるまで玄米1を乾燥させることであるが、乾燥によって玄米1が胴割れなどを起こすまではしない。
【0028】
次に、過熱水蒸気で玄米1を加熱した直後に、玄米1を冷却する。つまり、S32の過熱水蒸気処理の後に、時間を空けることなく、連続的に玄米1を冷却する。
【0029】
具体的には、後述する蒸気分離機14に過熱水蒸気処理された玄米1と過熱水蒸気とを連続的に投入し、玄米1から過熱水蒸気を分離させる(S33)。この処理により、玄米1に対して、長時間に亘って過熱水蒸気処理されることがなくなる。
【0030】
次に、後述する冷却部77に過熱水蒸気と分離された玄米1を連続的に投入し、熱せられた玄米1を冷却する(S34)。この処理により、過熱水蒸気処理で高温に熱せられた玄米1の温度を即座に常温に戻すことができる。
【0031】
その後、処理された玄米1を、後述する通路管74および玄米回収部75を介して回収箱76に回収する(S35)。
【0032】
上記の玄米1の処理方法によれば、玄米1に過熱水蒸気を用いて加熱することによって、玄米1の表面に結露水を発生させて、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7を糊化することができる。そのため、境界部7を残すように玄米1を搗精して得られた精白米は、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、玄米に過熱水蒸気を用いて加熱することによって、境界部7に含まれる酸化酵素を失括させ、酸化酵素による脂質の酸化を抑えることができる。そのため、境界部7を残すように玄米1を搗精した場合でも、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米を提供することができる。さらに、玄米1に180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて2秒?10秒の間で玄米1を加熱しているため、境界部7を糊化する程度の適量の結露水を玄米表面に発生させることができ、玄米1に対する過度の乾燥や玄米表面に発生する過量の結露水に起因する胴割れ粒や水浸割れ粒の発生などを抑えることができる。
【0033】
また、上記の玄米1の処理方法によれば、玄米表面に長時間結露水が付着することを抑えることができる。これにより、過熱水蒸気の加熱によって発生する玄米表面の結露水に起因する胴割れ粒や水浸割れ粒の発生などをさらに抑えることができる。
【0034】
(商品流通までの流れ)
次に、図2を用いて、玄米1が商品として市場に流通するまでの流れを説明する。
【0035】
具体的には、先ず、脱穀されて籾が取り除かれた玄米1を搬入する(S11)。次に、搬入した玄米1に粗選別処理を施し、玄米1に混ざった糸くずや大きなゴミなどを取り除く(S12)。その後、図1で示した本実施形態における玄米処理によって、玄米1に過熱水蒸気処理する(S13)。
【0036】
次に、玄米1を常温の環境で保管し、玄米内部の水分を均一化する(S14)。そして、再度、玄米1に粗選別処理を施し、玄米1に混ざった糸くずや大きなゴミなどを取り除く(S15)。その後、玄米1に石抜き処理を施し、玄米1に混ざった比較的大きな石を取り除く(S16)。
【0037】
次に、搗精処理によって、玄米1の糠を取り除き、精白米とする(S17)。ここで、『搗精』とは、精米機などを用いて、玄米1から糠を取り除くことであり、通常は日数が経過しても米が劣化しないように、米の旨みや栄養成分が凝縮された境界部7も取り除かれる。本実施形態の場合、米の劣化を促進する酸化酵素を過熱水蒸気処理によって失括させているため、境界部7を残すように、91%以上の高い搗精歩留まりで玄米1を搗精している。
【0038】
次に、搗精処理によって出来た精白米に小米・砕米抜き処理を施し、粒の小さい米や割れた米を取り除く(S18)。その後、色彩選別処理によって、精白米に混ざっている変色した米を取り除く(S19)。そして、異物除去処理によって、精白米に混ざったガラスやプラスチック、小石などを取り除く(S20)。その後、金属チェック処理によって、精白米に混ざった細かい金属を取り除き、綺麗な精白米とする(S21)。
【0039】
最後に、精白米を計量器にかけ、計量して袋詰めし(S22)、加工工場などに流通させる(S23)。以上が、商品流通までの一連の流れである。
【0040】
上記の精米方法によれば、過熱水蒸気によって加熱された玄米1は、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7を残すように搗精される。これにより得られた精白米は、過熱水蒸気を用いた玄米1の加熱によって、境界部7が糊化している。そのため、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、これにより得られた精白米は、過熱水蒸気を用いた玄米1の加熱によって、境界部7に含まれる酸化酵素が失括し、酸化酵素による脂質の酸化が抑えられている。そのため、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米となる。
【0041】
また、上記の精米方法で得られた精白米によれば、過熱水蒸気を用いた玄米1の加熱によって、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7が糊化している。そのため、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、過熱水蒸気を用いた玄米1の加熱によって、境界部7に含まれる酸化酵素が失括し、酸化酵素による脂質の酸化が抑えられている。そのため、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米となる。
【0042】
(過熱水蒸気処理装置の構成)
次に、図4を用いて、本実施形態における過熱水蒸気処理装置10について説明する。
【0043】
図4に示すように、本実施形態に係る過熱水蒸気処理装置10は、180℃?250℃の過熱水蒸気を噴出する過熱水蒸気噴出部と、2秒?10秒の間で過熱水蒸気を玄米1に接触させることによって、玄米1を加熱する過熱水蒸気処理部と、を備えている。
【0044】
具体的には、過熱水蒸気処理装置10は、玄米投入機構12と、過熱水蒸気処理管13と、蒸気分離機14と、冷却部77と、を備えている。
【0045】
玄米投入機構12は、玄米投入装置61と、ベルトコンベア62と、投入器64と、を有している。玄米投入装置61は、漏斗型の形状を有しており、その口径が広い口からは玄米1が投入されるようになっている。また、玄米投入装置61の口径が小さい口には、図示しない駆動型の開閉部が設けられており、開閉部はベルトコンベア62の一端側に連絡されている。ベルトコンベア62は、ベルトを進退させることによって玄米投入装置61から投入された玄米1を通路管63へと移動させる。通路管63は、投入器64へと連絡されており、ベルトコンベア62によって移動された玄米1が通路管63を通って投入器64へと投入される。投入器64は、内部に数枚の回転羽65を備えており、この回転羽65によって玄米1を散乱させることができるようになっている。また、投入器64の下部には通路管66が連結されており、過熱水蒸気処理管13の内部に繋がっている。
【0046】
このような構成を有する玄米投入機構12において、投入された玄米1が玄米投入装置61に一旦貯留され、駆動型の開閉部の開閉により、一定量の玄米1がベルトコンベア62および投入器64を介して過熱水蒸気処理管13に投入されるようになっている。これにより、過熱水蒸気処理装置10が設置された室内の気温や湿度などを考慮して、その時の最適な量の玄米1を過熱水蒸気処理管13に投入することができるようになっている。
【0047】
過熱水蒸気処理管13は、長尺状の筒型の形状を有しており、玄米投入機構12から玄米1が投入される側には、過熱水蒸気を噴出する過熱水蒸気噴出機21が設けられている。また、過熱水蒸気処理管13におけるもう一方の側には、蒸気分離機14が設けられている。さらに、過熱水蒸気処理管13は、過熱水蒸気噴出機21が設けられている側よりも、蒸気分離機14が設けられている側の方が、鉛直方向下側となるように、斜めに設置されている。これにより、過熱水蒸気噴出機21から噴出された過熱水蒸気は、過熱水蒸気処理管13の内部を蒸気分離機14に向かって流れるようになっている。
【0048】
過熱水蒸気噴出機21は、温度や速度を可変させて過熱水蒸気を噴出する。また、過熱水蒸気噴出機21から噴出される過熱水蒸気の温度は、180℃?250℃である。
【0049】
このような構成を有する過熱水蒸気処理管13において、玄米投入機構12から投入された玄米1が、過熱水蒸気噴出機21から噴出された過熱水蒸気に接触して流されながら加熱されるようになっている。この時、玄米1が過熱水蒸気に接触すると同時に、玄米1と過熱水蒸気との間の温度差で、玄米表面には結露水が発生する。そして、過熱水蒸気処理管13内を通過する間に、高温の過熱水蒸気によって次第に玄米表面の結露水が乾燥して除去されるようになる。そのため、蒸気分離機14内に入る直前には、玄米表面には結露水が付着していない状態となる。なお、玄米1が過熱水蒸気処理管13内で加熱処理される時間は、2秒?10秒間が適切である。このように、玄米1の表面に適量の結露水を発生させることができるため、境界部7の僅かな糊化を誘引して、加熱吸水性を向上させることができる。また、同時に、過熱水蒸気の熱によって、境界部7が有する酸化酵素を失括させることができる。
【0050】
蒸気分離機14は、図5(a)に示すように、蒸気流出部47と、サイクロン部42と、玄米流出部43と、から構成されている。
【0051】
サイクロン部42は、横断面が円形であり、その口径が鉛直方向上側から鉛直方向下側に向けて徐々に小さくなるような形状を有している。サイクロン部42の鉛直方向上側に位置する口には、蒸気流出部47が連結されており、サイクロン部42の鉛直方向下側に位置する口には、玄米流出部43が連結されている。また、図5(b)に示すように、サイクロン部42の外周部には、過熱水蒸気処理管13との連絡口である入口孔46が設けられている。
【0052】
さらに、入口孔46における過熱水蒸気処理管13外部の表面には、入口孔46を乾燥させるヒーター23が設けられている。また、サイクロン部42における入口孔46と相対する側の内周部41には、過熱水蒸気処理管13を流れてきた玄米1が衝突した時の衝撃を吸収するクッション材45が設けられている。
【0053】
このような構成を有する蒸気分離機14において、過熱水蒸気処理管13を過熱水蒸気によって流されながら加熱された玄米1が、入口孔46を通って、過熱水蒸気と共にサイクロン部42に流入される。そして、図5(a)に示すように、流入された過熱水蒸気は、その勢いによってサイクロン部42内の内周を伝ってサイクロン50を形成し、鉛直方向上側に渦をまきながら上昇するようになっている。その後、上昇した過熱水蒸気は、蒸気流出部47へと移動する。また、蒸気流出部47の上部には、L字型の蒸気通路69が設けられており、蒸気通路69内ではプロペラ68がモータ67によって回転されるようになっている。このプロペラ68の回転で発生する気流によって、蒸気流出部47へと移動した蒸気は確実に外部へ放出されるようになっている。一方、サイクロン部42に流入された玄米1は、途中までは過熱水蒸気が形成するサイクロン50によって上昇するが、次第に重力によってサイクロン50から外れ、玄米流出部43から流出されるようになっている。このように、蒸気分離機14において、玄米1を、過熱水蒸気から分離することができるようになっている。また、入口孔46に設けられたヒーター23によって、その部分における過熱水蒸気処理管13内部を常時乾燥させて結露水の発生を防ぐことができるため、結露水による装置の劣化を抑えると共に、再び玄米表面に結露水が付着してしまうこと防止している。さらに、クッション材45によって、過熱水蒸気で勢いよく流されてきた玄米1がサイクロン部42の内周部41に衝突する衝撃を吸収することができるため、衝突によって玄米1が割れたりすることを防ぐことができるようになっている。
【0054】
また、玄米流出部43の下部には加熱玄米投入部70が設けられており、加熱玄米投入部70は水平のベルトコンベア71の一端側に連絡されている。ベルトコンベア71は、冷却部77の内部を通り、通路管74を介して玄米回収部75に連絡されている。また、ベルトコンベア71の表面には無数の極小さな穴が形成されており、下方から上方に向けて空気が通過するようになっている。また、冷却部77の上部には、複数の吸引機72が設けられている。吸引機72は、吸引によってベルトコンベア71の下方から上方へと空気の流れを作り、空気を外部へと放出する。このような構成により、玄米流出部43から流出された玄米1は、ベルトコンベア71によって移動される。この時、ベルトコンベア71の下方から上方へ向けて流れる空気によって加熱された玄米1は冷却されながら移動する。冷却された玄米1は、やがて、通路管74に到達し、玄米回収部75内へと排出される。このように、加熱処理された玄米1が加熱直後に冷却されるため、玄米1自体が保つ熱によって胴割れなどを引き起こすことを防ぐことができる。玄米回収部75は、回収箱76へと連絡されており、冷却された玄米1は玄米回収部75を介して回収箱76に回収される。
【0055】
(過熱水蒸気処理装置の内部構成)
次に、図6を用いて、本実施形態における過熱水蒸気処理装置10の内部構成について説明する。
【0056】
図6に示すように、過熱水蒸気処理装置10は、玄米投入装置61と、過熱水蒸気噴出機21と、過熱水蒸気センサ26と、吸引機72と、ヒーター23と、環境測定装置30と、制御コントローラ100と、を有している。
【0057】
玄米投入装置61は、後述する玄米投入駆動部161の制御信号に基づき、ベルトコンベア62に玄米1を投入する。
【0058】
過熱水蒸気噴出機21は、ボイラ25に接続されており、ボイラ25からの熱によって過熱水蒸気を作る。また、過熱水蒸気噴出機21は、後述する過熱水蒸気噴出駆動部121の制御信号に基づき、過熱水蒸気処理管13に過熱水蒸気を噴出する。
【0059】
過熱水蒸気センサ26は、過熱水蒸気噴出機21に接続されており、後述する過熱水蒸気センサ駆動検知部126の制御信号に基づき、過熱水蒸気噴出機21から噴出される過熱水蒸気の温度や噴出速度を測定する。そして、過熱水蒸気センサ26は、過熱水蒸気センサ駆動検知部126にその測定データを出力する。
【0060】
吸引機72は、後述する吸引駆動部172の制御信号に基づき、冷却部77の内部に空気の流れを作る。
【0061】
ヒーター23は、熱を発生することで、入口孔46における過熱水蒸気処理管13内部を乾燥させて、結露水の発生を防ぐ。
【0062】
環境測定装置30は、温度計や湿度計などから構成され、過熱水蒸気処理装置10が設置された温度や湿度などの環境を測定する。
【0063】
制御コントローラ100は、玄米投入駆動部161と、過熱水蒸気噴出駆動部121と、過熱水蒸気センサ駆動検知部126と、吸引駆動部172と、ヒーター駆動部123と、環境測定駆動部130と、記憶部104と、操作部102と、表示部103と、コントローラ101と、から構成される。
【0064】
玄米投入駆動部161は、コントローラ101の制御信号に基づき、玄米投入装置61を駆動する。この時、玄米投入駆動部161は、コントローラ101からの制御信号に含まれる命令の内容に対応して、玄米投入装置61から投入される玄米1の量を適宜可変するように、玄米投入装置61を制御する。
【0065】
過熱水蒸気噴出駆動部121は、コントローラ101の制御信号に基づき、過熱水蒸気噴出機21を駆動する。この時、過熱水蒸気噴出駆動部121は、コントローラ101からの制御信号に含まれる命令の内容に対応して、過熱水蒸気噴出機21から噴出される過熱水蒸気の温度や噴出速度などを適宜可変するように、過熱水蒸気噴出機21を制御する。
【0066】
過熱水蒸気センサ駆動検知部126は、コントローラ101の制御信号に基づき、過熱水蒸気センサ26を駆動する。また、過熱水蒸気センサ駆動検知部126は、過熱水蒸気噴出機21から噴出される過熱水蒸気の温度や噴出速度の測定データを過熱水蒸気センサ26から取得し、その測定データをコントローラ101に出力する。
【0067】
吸引駆動部172は、コントローラ101の制御信号に基づき、吸引機72を駆動する。
【0068】
ヒーター駆動部123は、コントローラ101の制御信号に基づき、ヒーター23を駆動する。
【0069】
環境測定駆動部130は、コントローラ101の制御信号に基づき、環境測定装置30を駆動する。
【0070】
記憶部104は、環境測定装置30および過熱水蒸気センサ26で取得した測定データなどの各種情報を記憶する。
【0071】
操作部102は、図示しない操作スイッチと接続されており、作業者による操作スイッチの操作に基づき、コントローラ101に制御信号を出力する。
【0072】
表示部103は、図示しない液晶表示装置と接続されており、コントローラ101の制御に基づき、過熱水蒸気処理装置10の運転状態などの各種情報を液晶表示装置に表示させる。
【0073】
コントローラ101は、玄米投入駆動部161を制御して、玄米投入装置61を駆動させる。この時、コントローラ101は、過熱水蒸気処理装置10が設置された室内の気温や湿度などを考慮して、その時の最適な量の玄米1を玄米投入装置61から過熱水蒸気処理管13に投入されるように、玄米投入駆動部161を制御する。
【0074】
また、コントローラ101は、過熱水蒸気噴出駆動部121を制御して、過熱水蒸気噴出機21を駆動させる。この時、コントローラ101は、過熱水蒸気センサ駆動検知部126から取得した過熱水蒸気の温度や噴出速度の測定データを判定した結果に基づき、過熱水蒸気噴出機21から最適な温度や噴出速度の過熱水蒸気が噴出されるように、過熱水蒸気噴出駆動部121を制御する。
【0075】
また、コントローラ101は、過熱水蒸気噴出機21から噴出される過熱水蒸気の温度や噴出速度などの測定データを過熱水蒸気センサ駆動検知部126から取得し、過熱水蒸気処理装置10が設置された室内の気温や湿度などを考慮して、噴出された過熱水蒸気の温度や噴出速度などが最適であるか否かを判定する。コントローラ101は、過熱水蒸気噴出機21から噴出された過熱水蒸気の温度や噴出速度などが最適であると判定した場合は、そのままの温度や噴出速度の過熱水蒸気が過熱水蒸気噴出機21から噴出されるように、過熱水蒸気噴出駆動部121を制御する。一方、コントローラ101は、過熱水蒸気噴出機21から噴出された過熱水蒸気の温度や噴出速度などが最適ではないと判定した場合は、最適な温度や噴出速度に可変された過熱水蒸気が過熱水蒸気噴出機21から噴出されるように、過熱水蒸気噴出駆動部121を制御する。
【0076】
また、コントローラ101は、吸引駆動部172を制御して、吸引機72を駆動させる。
【0077】
また、コントローラ101は、ヒーター駆動部123を制御して、ヒーター23を駆動させる。
【0078】
また、コントローラ101は、環境測定駆動部130を制御して、環境測定装置30を駆動させる。
【0079】
また、コントローラ101は、環境測定装置30および過熱水蒸気センサ26で取得した測定データなどの各種情報を記憶部104に記憶させる。
【0080】
また、コントローラ101は、作業者による操作スイッチの操作があった場合に、その操作に基づく制御信号に対応する処理を実行する。例えば、コントローラ101は、作業者による操作スイッチの操作によって、手動で過熱水蒸気噴出機21の温度を変化させる旨の命令を含んだ制御信号を受信した時は、過熱水蒸気噴出機21から変化させた過熱水蒸気が噴出されるように、過熱水蒸気噴出駆動部121を制御する。
【0081】
また、コントローラ101は、表示部103を制御して、過熱水蒸気処理装置10の運転状態などの各種情報を液晶表示装置に表示させる。
【0082】
(過熱水蒸気処理装置の動作)
次に、本実施形態に係る過熱水蒸気処理装置10の動作について説明する。
【0083】
(過熱水蒸気処理装置の動作:玄米投入調整処理ルーチン)
図7を用いて、玄米投入調整処理ルーチンについて説明する。
【0084】
玄米投入調整処理ルーチンにおいて、先ず、制御コントローラ100は、玄米投入装置61から投入される玄米1の量を記憶する(S51)。
【0085】
次に、制御コントローラ100は、環境測定装置30を制御して、過熱水蒸気処理装置10が設置されている温度や湿度などの環境を測定する(S52)。
【0086】
次に、制御コントローラ100は、測定した設置環境に、玄米投入装置61から投入される玄米1の量が適合しているか否かを判定する(S53)。
【0087】
制御コントローラ100は、玄米投入装置61から投入される玄米1の量が、過熱水蒸気処理装置10が設置されている環境に適合していると判定した場合は、本ルーチンを終了する。
【0088】
一方、制御コントローラ100は、玄米投入装置61から投入される玄米1の量が、過熱水蒸気処理装置10が設置されている環境に適合していないと判定した場合は、玄米投入装置61を制御して、投入される玄米1の量を設置環境に適合させる(S54)。その後、制御コントローラ100は、本ルーチンを終了する。
【0089】
(過熱水蒸気処理装置の動作:過熱水蒸気調整処理ルーチン)
次に、図8を用いて、過熱水蒸気調整処理ルーチンについて説明する。
【0090】
過熱水蒸気調整処理ルーチンにおいて、先ず、制御コントローラ100は、過熱水蒸気噴出機21から噴出される過熱水蒸気の温度や噴出速度などの測定データを過熱水蒸気センサ26から取得したか否かを判定する(S61)。
【0091】
制御コントローラ100は、過熱水蒸気センサ26から測定データを取得していない場合は、取得するまで待機する。一方、制御コントローラ100は、過熱水蒸気センサ26から測定データを取得した場合は、取得した測定データを記憶する(S62)。
【0092】
次に、制御コントローラ100は、環境測定装置30を制御して、過熱水蒸気処理装置10が設置されている温度や湿度などの環境を測定する(S63)。
【0093】
次に、制御コントローラ100は、過熱水蒸気処理装置10が設置されている温度や湿度などの環境に、取得した測定データに基づく過熱水蒸気の温度や噴出速度などが適合しているか否かを判定する(S64)。
【0094】
制御コントローラ100は、取得した測定データに基づく過熱水蒸気の温度や噴出速度などが、過熱水蒸気処理装置10が設置されている環境に適合していると判定した場合は、本ルーチンを終了する。
【0095】
一方、制御コントローラ100は、取得した測定データに基づく過熱水蒸気の温度や噴出速度などが、過熱水蒸気処理装置10が設置されている環境に適合していないと判定した場合は、過熱水蒸気噴出機21を制御して、噴出される過熱水蒸気の温度や噴出速度などを設置環境に適合させる(S65)。その後、制御コントローラ100は、本ルーチンを終了する。
【0096】
上記の構成および動作を有する過熱水蒸気処理装置10によれば、過熱水蒸気噴出機21から噴出された180℃?250℃の過熱水蒸気によって、2秒?10秒の間で玄米1を過熱水蒸気処理管13で加熱することで、玄米1の表面に結露水を発生させて、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7を糊化することができる。そのため、境界部7を残すように玄米1を搗精して得られた精白米は、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、玄米1に過熱水蒸気を用いて加熱することによって、境界部7に含まれる酸化酵素を失括させ、酸化酵素による脂質の酸化を抑えることができる。そのため、境界部7を残すように玄米1を搗精した場合でも、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米を提供することができる。さらに、玄米1に180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて2秒?10秒の間で玄米を加熱しているため、境界部7を糊化する程度の適量の結露水を玄米表面に発生させることができ、玄米1に対する過度の乾燥や玄米表面に発生する過量の結露水に起因する胴割れ粒や水浸割れ粒の発生などを抑えることができる。
【0097】
また、上記の構成および動作を有する過熱水蒸気処理装置10によれば、過熱水蒸気処理部による過熱水蒸気によって発生する入口孔46における結露水をヒーター23によって乾燥させることができるため、結露水による装置の劣化を抑えることができる。
【0098】
また、上記の構成および動作を有する過熱水蒸気処理装置10で処理された玄米1の糊粉層3のうち、胚乳2に接する境界部7を残すように、玄米1を搗精して得られた精白米によれば、過熱水蒸気を用いた玄米1の加熱によって、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7が糊化している。そのため、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、過熱水蒸気を用いた玄米1の加熱によって、境界部7に含まれる酸化酵素が失括し、酸化酵素による脂質の酸化が抑えられている。そのため、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米となる。
【0099】
(実施例と比較例)
次に、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明する。
【0100】
先ず、図4に示すような過熱水蒸気処理装置10と玄米1を準備する。過熱水蒸気処理装置10における玄米投入装置61から投入される玄米1の量は、6g/secである。また、過熱水蒸気噴出機21から噴出される過熱水蒸気の噴出速度は18m/secであり、その噴出量は8g/secである。
【0101】
上記の条件である過熱水蒸気処理装置10を用いて玄米1を過熱水蒸気処理した時の過熱水蒸気の条件および結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
表1に示すように、実施例1?8における過熱水蒸気の温度は180℃?250℃であり、玄米1を過熱水蒸気処理する時間は1秒?12秒である。一方、比較例1?6における過熱水蒸気の温度は150℃?170℃、260℃?280℃であり、玄米1を過熱水蒸気処理する時間は1秒?12秒である。
【0104】
以上のような条件で過熱水蒸気処理した玄米1を、表1に示すように、胴割れ、水浸割れ、および食味の観点から優良・良・可・不可の4パターンの評価をつけた。この結果から、過熱水蒸気の温度が180℃よりも低い場合(比較例1?3)と250℃よりも高い場合(比較例4?6)は、どの加熱時間においても胴割れおよび水浸割れが多く不可の結果となった。また、加熱時間が2秒よりも短く、10秒よりも長い場合は、どの過熱水蒸気の温度であっても胴割れおよび水浸割れが多く不可の結果となった。一方、過熱水蒸気が180℃?250℃の間の温度では、加熱時間が2秒?10秒間の何れかの時間においても可以上となる評価が得られている。例えば、過熱水蒸気が200℃の実施例3の場合、加熱時間が2秒?7秒の間は胴割れおよび水浸割れが少なく、また食味に関しても良好で優良・良・可の何れかの評価を得ている。
【0105】
この中で一例を示すと、過熱水蒸気が200℃で加熱時間が4秒の場合、図9に示すような結果となっている。図9に示すように、過熱水蒸気で処理した玄米は、玄米品質における胴割れ粒混入率が未処理の場合と1.3%しか差がない。そして、米飯にした場合の食味は未処理の玄米に比べて処理した玄米の方が、総合評価が良好であった。さらに、付着菌数についても未処理の玄米に比べて処理した玄米の方が少なくなっている。つまり、過熱水蒸気で処理した玄米1は、良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができ、過熱水蒸気の温度および加熱時間を設定することによって、胴割れ粒や水浸割れ粒の発生を抑えることができることが分かる。
【0106】
このように、実施例1?8における玄米1の処理方法によれば、玄米1に過熱水蒸気を用いて加熱することによって、玄米1の表面に結露水を発生させて、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7を糊化することができる。そのため、境界部7を残すように玄米1を搗精して得られた精白米は、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、玄米1に過熱水蒸気を用いて加熱することによって、境界部7に含まれる酸化酵素を失括させ、酸化酵素による脂質の酸化を抑えることができる。そのため、境界部7を残すように玄米1を搗精した場合でも、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米を提供することができる。さらに、玄米1に180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて2秒?10秒の間で玄米1を加熱しているため、境界部7を糊化する程度の適量の結露水を玄米表面に発生させることができ、玄米1に対する過度の乾燥や玄米表面に発生する過量の結露水に起因する胴割れ粒や水浸割れ粒の発生などを抑えることができる。
【0107】
(本実施形態の概要)
以上のように、本実施形態に係る玄米1の処理方法は、180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて、2秒?10秒の間で玄米を加熱する。
【0108】
上記の玄米1の処理方法によれば、玄米1に過熱水蒸気を用いて加熱することによって、玄米1の表面に結露水を発生させて、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7を糊化することができる。そのため、境界部7を残すように玄米1を搗精して得られた精白米は、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、玄米1に過熱水蒸気を用いて加熱することによって、境界部7に含まれる酸化酵素を失括させ、酸化酵素による脂質の酸化を抑えることができる。そのため、境界部7を残すように玄米1を搗精した場合でも、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米を提供することができる。さらに、玄米1に180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて2秒?10秒の間で玄米1を加熱しているため、境界部7を糊化する程度の適量の結露水を玄米表面に発生させることができ、玄米1に対する過度の乾燥や玄米表面に発生する過量の結露水に起因する胴割れ粒や水浸割れ粒の発生などを抑えることができる。
【0109】
また、本実施形態に係る玄米1の処理方法において、過熱水蒸気による玄米1の加熱によって、加熱初期に玄米1の表面に生じた結露水を除去させていている。
【0110】
上記の玄米1の処理方法によれば、玄米表面に長時間結露水が付着することを抑えることができる。これにより、過熱水蒸気の加熱によって発生する玄米表面の結露水に起因する胴割れ粒や水浸割れ粒の発生などをさらに抑えることができる。
【0111】
また、本実施形態係る精米方法は、本実施形態に係る玄米1の処理方法で処理された玄米1の糊粉層3のうち、胚乳2に接する境界部7を残すように、玄米1を搗精している。
【0112】
上記の精米方法によれば、過熱水蒸気によって加熱された玄米は、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層のうち胚乳に接する境界部を残すように搗精される。これにより得られた精白米は、過熱水蒸気を用いた玄米の加熱によって、境界部が糊化している。そのため、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、これにより得られた精白米は、過熱水蒸気を用いた玄米の加熱によって、境界部に含まれる酸化酵素が失括し、酸化酵素による脂質の酸化が抑えられている。そのため、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米となる。
【0113】
また、本実施形態に係る過熱水蒸気処理装置10は、180℃?250℃の過熱水蒸気を噴出する過熱水蒸気噴出機21と、2秒?10秒の間で過熱水蒸気を玄米1に接触させることによって、玄米1を加熱する過熱水蒸気処理管13と、を備えている。
【0114】
上記の構成によれば、過熱水蒸気噴出機21から噴出された180℃?250℃の過熱水蒸気によって、2秒?10秒の間で玄米1を過熱水蒸気処理管13で加熱することで、玄米1の表面に結露水を発生させて、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7を糊化することができる。そのため、境界部7を残すように玄米1を搗精して得られた精白米は、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、玄米1に過熱水蒸気を用いて加熱することによって、境界部7に含まれる酸化酵素を失括させ、酸化酵素による脂質の酸化を抑えることができる。そのため、境界部7を残すように玄米1を搗精した場合でも、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米を提供することができる。さらに、玄米1に180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて2秒?10秒の間で玄米1を加熱しているため、境界部7を糊化する程度の適量の結露水を玄米表面に発生させることができ、玄米1に対する過度の乾燥や玄米表面に発生する過量の結露水に起因する胴割れ粒や水浸割れ粒の発生などを抑えることができる。
【0115】
また、本実施形態に係る玄米1は、上記の玄米の処理方法で処理した玄米1である。
【0116】
上記の玄米1によれば、過熱水蒸気を用いた加熱によって、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7が糊化している。そのため、境界部7を残すように玄米1を搗精して得られた精白米は、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、過熱水蒸気を用いた加熱によって、境界部7に含まれる酸化酵素が失括し、酸化酵素による脂質の酸化が抑えられている。そのため、境界部7を残すように玄米1を搗精した場合でも、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米を提供することができる。さらに、180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて2秒?10秒の間で加熱されているため、境界部7を糊化する程度の適量の結露水を玄米表面に発生させることができ、玄米1に対する過度の乾燥や玄米表面に発生する過量の結露水に起因する胴割れ粒や水浸割れ粒の発生などを抑えることができる。
【0117】
また、本実施形態に係る精白米は、上記の精米方法で得られた精白米である。
【0118】
上記の精白米によれば、過熱水蒸気を用いた玄米1の加熱によって、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7が糊化している。そのため、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、過熱水蒸気を用いた玄米1の加熱によって、境界部7に含まれる酸化酵素が失括し、酸化酵素による脂質の酸化が抑えられている。そのため、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米となる。
【0119】
また、本実施形態に係る精白米は、本実施形態に係る過熱水蒸気処理装置10で処理された処理された玄米1の糊粉層3のうち、胚乳2に接する境界部7を残すように、玄米1を搗精して得られた精白米である。
【0120】
上記の精白米によれば、過熱水蒸気を用いた玄米1の加熱によって、米の旨み成分である脂質が凝縮された、糊粉層3のうち胚乳2に接する境界部7が糊化している。そのため、加熱吸水性が向上し、高含水のご飯となるように炊飯しても良食味で軟らかくなりすぎないご飯に炊き上げることができる。また、過熱水蒸気を用いた玄米1の加熱によって、境界部7に含まれる酸化酵素が失括し、酸化酵素による脂質の酸化が抑えられている。そのため、保存性に優れ、栄養価の高い良食味の精白米となる。
【0121】
以上、本発明の一実施形態を説明した。なお、本発明は上記の実施形態に限定される必要はない。
【0122】
(過熱水蒸気処理装置の別の実施形態)
例えば、図10(a)に示す別の実施形態に係る過熱水蒸気処理装置200の様に、過熱水蒸気処理管13と蒸気分離機14との連絡口である入口孔46の断面径が、玄米1のが流入される側から流出される側に向けて徐々に大きくなっていてもよい。この様な構成により、拡径された入口孔46において、玄米1と共に流れてきた過熱水蒸気の勢いが減少するため、玄米1の流速も減少する。これにより、過熱水蒸気の勢いで流れてきた玄米1が、サイクロン部42の内周部41に設けられたクッション材45に衝突する速度を抑えることができるため、玄米1が衝突した時の衝撃をより和らげることができる。
【0123】
また、図10(b)に示す別の実施形態に係る過熱水蒸気処理装置300の様に、蒸気分離機14におけるサイクロン部42の内周部41に、複数の通気口44が形成されていてもよい。この通気口44に、外部から風を送入することにより、過熱水蒸気処理管13を流れてきた過熱水蒸気の流路がサイクロン部42の内周に沿い易くなる。これにより、過熱水蒸気がサイクロン50をより形成し易くなるため、過熱水蒸気と共に流れてきた玄米1をクッション材45に衝突しにくくすることができる。
【0124】
また、図11に示す別の実施形態に係る過熱水蒸気処理装置400の様に、蒸気分離機14から流出された玄米1が加熱玄米投入部15から冷風処理管16に投入されて強制的に冷却されていてもよい。
【0125】
冷風処理管16は、過熱水蒸気処理管13と同様の形状を有しており、加熱玄米投入部15から玄米1が投入される側には、冷風を噴出する冷風機22が設けられている。冷風機22は、温度や速度を可変させて冷風を噴出する。
【0126】
また、冷風処理管16におけるもう一方の側には、冷風分離機17が設けられている。さらに、冷風処理管16は、冷風機22が設けられている側よりも、冷風分離機17が設けられている側の方が、鉛直方向下側となるように、斜めに設置されている。これにより、冷風機22から噴出された冷風は、冷風処理管16の内部を冷風分離機17に向かって流れるようになっている。
【0127】
このような構成を有する冷風処理管16において、加熱玄米投入部15から投入された玄米1が、冷風機22から噴出された冷風と接触して流されながら冷却処理されるようになっている。このように、加熱された玄米1を強制的に即座に冷却させることができる。
【0128】
冷風分離機17は、図5に示す蒸気分離機14と同様の構成、動作を有しており、冷風処理管16を流れて乾燥処理された玄米1を、冷風から分離することができるようになっている。その後、冷風と分離された玄米1は、回収箱76に落ちて、回収されるようになっている。
【0129】
なお、本実施形態における過熱水蒸気処理装置10、200、300、400は一例であり、搗精前の玄米1を過熱水蒸気処理できる装置であれば、何れのものを用いてもよい。
【0130】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、玄米から糠を取り除く精米について利用することができる。
【符号の説明】
【0132】
1 玄米
2 胚乳
3 糊粉層
4 種皮
5 果皮
6 胚芽
7 境界部
10 過熱水蒸気処理装置
12 玄米投入機構
13 過熱水蒸気処理管
14 蒸気分離機
70 加熱玄米投入部
71 ベルトコンベア
72 吸引機
77 冷却部
76 回収箱
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常圧であり、且つ180℃?250℃の過熱水蒸気を用いて、2秒?10秒の間で未処理の玄米を加熱し、当該加熱初期に当該玄米の表面に結露水を発生させると共に、当該過熱水蒸気による当該玄米の加熱によって、当該結露水を除去させる過熱水蒸気処理と、
前記過熱水蒸気処理の直後に、前記玄米から前記過熱水蒸気を分離させる蒸気分離処理と、
前記蒸気分離処理の直後に、前記玄米を冷却する冷却処理と、
を有する玄米の処理方法で処理した玄米を、当該玄米の糊粉層のうち、胚乳に接する境界部を残すように搗精することを特徴とする精米方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2011-07-13 
出願番号 特願2010-175422(P2010-175422)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小野 郁磨  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 杉江 渉
齊藤 真由美
登録日 2011-05-20 
登録番号 特許第4746706号(P4746706)
発明の名称 精米方法  
代理人 須原 誠  
代理人 梶 良之  
代理人 須原 誠  
代理人 梶 良之  

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