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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A63F
審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1241629
審判番号 無効2009-800095  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-05-15 
確定日 2011-05-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3795311号発明「遊技機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由
第1.手続の経緯

本件特許は,特願平5-126281号の一部を特許法44条1項の規定により新たな出願として特願2000-159094号とし,その特願2000-159094号の一部を特許法44条1項の規定により新たな出願として特願2000-194103号とし,その特願2000-194103号の一部を特許法44条1項の規定により新たな出願として特願2000-229525号とし,更にその特願2000-229525号の一部を特許法44条1項の規定により新たな出願とした特願2000-258258号の特許であり,経緯概要は以下のとおりである。

平成 5年 5月27日 原々々々出願(特願平5-126281号)
平成12年 5月29日 原々々出願(特願2000-159094号)
平成12年 6月28日 原々出願(特願2000-194103号)
平成12年 7月28日 原出願(特願2000-229525号)
平成12年 8月28日 本件特許出願(特願2000-258258号)
平成18年 4月 4日 特許査定
平成18年 4月21日 設定登録(特許第3795311号)

平成21年 5月15日 無効審判請求(書面は5月14日の日付)
平成21年 8月20日 答弁書・訂正請求(被請求人)
平成21年12月 3日 弁駁書(請求人)
平成22年 2月24日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成22年 3月 8日 審判上申書(請求人)
平成22年 3月10日 口頭審理陳述要領書(請求人)
同 上 口頭審理
平成22年 4月 7日 上申書(被請求人)
平成22年 4月 8日 審判上申書(請求人)

第2.本件審判事件にかかる両当事者の主張

請求人と被請求人の主張は以下のとおりである。なお,以下において,訂正前の請求項とは本件設定登録時の請求項を,訂正後の請求項とは平成21年8月20日付けの訂正請求に基づく請求項を,それぞれ指す。

1.請求人の主張

請求人は,平成21年5月15日付けの審判請求書において,「特許第3795311号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求め」(請求の趣旨),以下の理由により,本件特許発明(訂正前の請求項1?3)は特許を受けることができないものであるから,特許法123条1項の規定により無効にされるべきである旨主張し,証拠方法として甲第1?10号証を提出した。

【無効理由1】
本件特許に係る特許出願は,特願2000-229525号(以下,「原出願」という。)の分割出願として出願されたものであるが,その分割は適法になされたものではなく,出願日の遡及は認められず,本件特許出願日は平成12年8月28日である。そして,本件特許発明(訂正前の請求項1?3)は,本件特許出願前に頒布された原々々々出願の公開特許公報(甲第8号証,特開平6-327809号)に記載されたものであるから,特許法29条1項3号もしくは同条2項に該当する。

【無効理由2】
本件特許発明(訂正前の請求項1?3)は,甲第1?5,7号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に成し得たものであり,特許法29条2項により無効とされるべきものである。なお,甲第6号証は「フラグ」が入賞の発生を許容するか否かを示す情報であることが技術情報であることの例(審判請求書84頁)である。

甲第1号証:特開平5-123444号公報
甲第2号証:パチスロ必勝ガイド平成5年4月号,白夜書房,平成5年4月1日,P6-7,12-13
甲第3号証:パチスロ必勝ガイド平成3年9月号,白夜書房,平成3年9月1日,P76-77
甲第4号証:特開平4-279183号公報
甲第5号証:特開昭60-106479号公報
甲第6号証:特開平5-31233号公報
甲第7号証:特開平2-232084号公報
甲第8号証:特開平6-327809号公報
甲第9号証:特開2001-54616号公報
甲第10号証:特許第3795311号公報

そして,被請求人の平成21年8月20日付け訂正請求を受けて,同年12月3日付け弁駁書,平成22年3月8日付け審判上申書,同年3月10日付け口頭審理陳述要領書(周知例として甲第11?15号証を添付),同年4月8日付け審判上申書において,該訂正請求は訂正要件違反であって認められないものである旨主張し,訂正が認められるとしても,訂正後の請求項1,2に係る発明(それぞれ「本件訂正発明1」,「本件訂正発明2」という。)について,審判請求書で申し立てた無効理由1,2は解消していない旨主張している。

甲第11号証:特開昭56-70779号公報
甲第12号証:特開昭59-40883号公報
甲第13号証:特開昭60-100987号公報
甲第14号証:特開昭60-148575号公報
甲第15号証:実開昭62-84484号のマイクロフィルム

2.被請求人の主張

被請求人は,平成21年8月20日付けで答弁書を提出し,「本件無効審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め」(答弁の趣旨),本件訂正発明1,2について,無効理由1,2は理由がない旨,主張している。
さらに,平成22年2月24日付け口頭審理陳述要領書,同年4月7日付け上申書において,平成21年8月20日付けの訂正請求は認められるべきとした上で,請求人の主張している無効理由1,2は理由がない旨,主張している。

第3.被請求人による訂正請求について

1.訂正請求の内容

平成21年8月20日付けの訂正請求は,本件設定登録時の特許第3795311号の明細書(以下,「特許明細書」という。)を,本件訂正請求書に添付した明細書によって訂正しようとするものであって,次の事項を訂正内容とするものである。

・訂正事項1
【請求項1】の「特別遊技状態用識別情報」を「ビッグボーナス識別情報」と訂正する。
・訂正事項2
【請求項1】及び【請求項2】の「特別遊技状態」を「ビッグボーナス遊技状態」と訂正する。
・訂正事項3
【請求項1】の「前記入賞の発生を許容するか否かを決定する決定手段」を「前記入賞の発生を許容するか否かを,ランダム値を用いて所定の演算を行なった演算結果と所定の当選値とを比較することにより決定する決定手段」と訂正する。
・訂正事項4
【請求項1】の「前記可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた特定の表示態様のうちのいずれかとなった場合に所定の有価価値を付与する価値付与手段」を「前記可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた小役入賞の発生のための予め複数種類定められた特定の表示態様のうちのいずれかとなった場合に特定の表示態様の種類に応じて予め定められた数の有価価値を付与する価値付与手段」と訂正する。
・訂正事項5
【請求項1】の「前記特別遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させる制御を行なう確率制御手段とを含み,
該確率制御手段は,前記特別遊技状態となった場合に,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させる」を
「前記通常遊技状態において,前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し,該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が,1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を制御し,さらに,前記比較結果に基づいて,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとなることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率も併せて制御することにより,前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを前記標準値との比較によって変動させて前記通常遊技状態を前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えて前記通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内に保つための確率制御手段とを含み,
該確率制御手段は,前記小役高確率状態から前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させ,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させる」と訂正する。
・訂正事項6
【請求項3】を削除する。
・訂正事項7
【0001】及び【0002】の「特別遊技状態用識別情報」を「ビッグボーナス識別情報」と訂正する。
・訂正事項8
【0002】【0003】【0004】【0006】【0010】【0103】【0104】【0107】及び【0108】の「特別遊技状態」を「ビッグボーナス遊技状態」と訂正する。
・訂正事項9
【0005】の「請求項1に記載の本発明は,・・・特徴とする。」を「請求項1に記載の本発明は,遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり,所定のビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を含み,該可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置の表示結果が所定の表示態様となった場合に所定の入賞が発生する遊技機であって,
前記遊技機は,遊技者にとって特に有利な遊技状態であるビッグボーナス遊技状態と,前記ビッグボーナス遊技状態よりも低い所定の範囲の払出比率で遊技が行なわれる通常遊技状態とを有し,
前記1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数である賭数を入力するための賭数入力手段と,
前記可変表示装置により前記ビッグボーナス識別情報が導出表示されることにより,前記ビッグボーナス遊技状態に制御可能な遊技制御手段と,
前記入賞の発生を許容するか否かを,ランダム値を用いて所定の演算を行った演算結果と所定の当選値とを比較することにより決定する決定手段と,
前記可変表示装置を制御する手段であって,前記決定手段の決定内容に基づいた制御が可能な可変表示制御手段と,
前記可変表示装置の表示結果を判定する判定手段と,
前記可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた小役入賞の発生のための予め複数種類定められた特定の表示態様のうちのいずれかとなった場合に特定の表示態様の種類に応じて予め定められた数の有価価値を付与する価値付与手段と,
前記通常遊技状態において,前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し,該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が,1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を制御し,さらに,前記比較結果に基づいて,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとなることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率も併せて制御することにより,前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを前記標準値との比較によって変動させて前記通常遊技状態を前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えて前記通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内に保つための確率制御手段とを含み,
該確率制御手段は,前記小役高確率状態から前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させ,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させることを特徴とする。」と訂正する。
・訂正事項10
【0008】を削除する。
・訂正事項11
【0009】の「請求項1に記載の本発明によれば,・・・決定される確率を低下させる制御が行われる。」を「請求項1に記載の本発明によれば,賭数入力手段により,1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数である賭数が入力される。前記可変表示装置により前記ビッグボーナス識別情報が導出表示されると,遊技制御手段の働きにより,前記ビッグボーナス遊技状態に制御される。決定手段の働きにより,入賞の発生を許容するか否かが,ランダム値を用いて所定の演算を行った演算結果と所定の当選値とを比較することにより決定される。可変表示制御手段の働きにより,前記決定手段の決定内容に基づいて前記可変表示装置が制御される。判定手段の働きにより,前記可変表示装置の表示結果が判定される。価値付与手段の働きにより,可変表示制御手段により制御される可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた小役入賞の発生のための予め複数種類定められた特定の表示態様のうちのいずれかとなった場合に特定の表示態様の種類に応じて予め定められた数の有価価値が遊技者に付与される。さらに,確率制御手段の働きにより,前記通常遊技状態において,前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し,該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が,1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率が制御され,さらに,前記比較結果に基づいて,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとなることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率も併せて制御されることにより,前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを前記標準値との比較によって変動させて前記通常遊技状態が前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えられて前記通常遊技状態における価値付与状況が所定範囲内に保たれる。さらに,前記小役高確率状態から前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に,確率制御手段の働きにより,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させる制御が行われる。さらに,前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に,前記確率制御手段の働きにより,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させる制御が行われる。」と訂正する。
・訂正事項12
【0012】を削除する。
・訂正事項13
【0098】の「所定の特別遊技状態用識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置が開示されている。ビッグボーナスゲームによって特別遊技状態が開示されている。」を「所定のビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置が開示されている。ビッグボーナスゲームによってビッグボーナス遊技状態が開示されている。」と訂正する。
・訂正事項14
【0099】の「前記可変表示装置により前記特別遊技状態用識別情報が導出表示されることにより,前記特別遊技状態に制御可能な遊技制御手段が構成されている。」を「前記可変表示装置により前記ビッグボーナス識別情報が導出表示されることにより,前記ビッグボーナス遊技状態に制御可能な遊技制御手段が構成されている。」と訂正する。
・訂正事項15
【0100】の「図8のS58A,図9のS66,S67,S69,S70,S72,S73,S76,S77,S78,S79,S81,S82,S83およびS84により前記入賞の発生を許容するか否かを決定する決定手段が構成されている。」を「図8のS58,図9のS66,S67,S69,S70,S72,S73,S76,S77,S78,S79,S81,S82,S83およびS84により前記入賞の発生を許容するか否かを,ランダム値を用いて所定の演算を行なった演算結果と所定の当選値とを比較することにより決定する決定手段が構成されている。」と訂正する。
・訂正事項16
【0105】の「これにより,前記確率制御手段は,前記特別遊技状態となった場合に,」を「これにより,前記確率制御手段は,前記小役高確率状態から前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に,」と訂正する。
・訂正事項17
【0107】の「入賞率を適正化することができる。」を「入賞率を適正化することができる。また,通常遊技状態においては,遊技者への価値付与状況と予め定められた標準値とが比較され,その比較結果に基づいて可変表示装置の表示結果が1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値を付与する特定の表示態様となることを許容する旨が決定手段により決定される確率が制御され,さらに,前記比較結果に基づいて,可変表示装置の表示結果が,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとなることを許容する旨が決定手段により決定される確率も併せて制御されることにより,前記複数種類の小役入賞の発生確率のみが前記標準値との比較によって変動して通常遊技状態が小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えられて通常遊技状態における価値付与状況が所定範囲内に保たれるために,その特定の表示態様を導出表示させることが可能なゲームが通常遊技状態において時間的に偏って提供されてしまう不都合を極力防止でき,複数の遊技者が時間を変えて1台の遊技機で遊技した場合に,通常遊技状態において或る遊技者に多くの有価価値が付与されて他の遊技者に有価価値があまり付与されないという不公平な事態が生ずることを極力防止できる。」と訂正する。
・訂正事項18
【0110】を削除する。

2.訂正の適否に対する判断
(1)請求人の訂正に関する主張及び判断
請求人は,上記訂正のうち,訂正事項5は,特許請求の範囲を拡張するものであり,「特許請求の範囲の減縮」に当たらず,「誤記又は誤訳の訂正」もしくは「明りょうでない記載の釈明」に当たらないから,特許法134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものでなく,訂正請求は認められない旨主張(弁駁書2?3頁)している。更に,訂正請求が認められるか否かは請求項毎に判断すべきであるから,請求項1を訂正するものである訂正事項1?4及び請求項1に係る訂正事項との整合を図るものである訂正事項7?9,11,13?17は,認められない旨主張(弁駁書4頁)している。
訂正事項5は,「1.訂正請求の内容」に記載したとおりを内容とするものであるが,そのうち「前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させ,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させる」という処理を,記載の簡略化のため「確率変更処理」とすると,請求人が訂正違法の根拠としている部分は,訂正前の「特別遊技状態となった場合に,確率変更処理を行う」を「小役高確率状態から前記ビッグボーナス状態となった場合に,確率変更処理を行う」とする訂正である。
ここで,「特別遊技状態」を「ビッグボーナス状態」と訂正することは,明らかに限定するものであって争いがないから,当該訂正を以下に検討する訂正と切り離して扱うと,
<訂正前構成>「特別遊技状態となった場合に,確率変更処理を行う」
<訂正後構成>「小役高確率状態から特別遊技状態となった場合に,確率変更処理を行う」
という訂正が,請求人が違法としている部分となる。
「確率変更処理を行う」条件として,<訂正前構成>においては,「特別遊技状態になった場合」としているだけで,その前の状態については問わないものとなっている。それに対し,<訂正後構成>においては,<訂正前構成>では特定されていなかった「その前の状態」について「小役高確率状態」と特定するものであって,当該訂正は限定を行うものであるから,特許請求の範囲を拡張するものではない。
請求人の主張するとおり,訂正前の請求項1においては遊技状態として「通常遊技状態」及び「特別遊技状態」が記載されており,「通常遊技状態」は発明の詳細な説明における「小役低確率状態」及び「小役高確率状態」を内在しているものであるから,<訂正前構成>はA「通常遊技状態のうち小役高確率状態から特別遊技状態となった場合に,確率変更処理を行う」構成及びB「通常遊技状態のうち小役低確率状態から特別遊技状態となった場合に,確率変更処理を行う」構成を含むものということができる。しかしながら,訂正前の請求項1には「特別遊技状態となった場合に,必ず確率変更処理を行う」と記載されているわけではなく,上記のように特別遊技状態となる前の状態については問わないものである以上,訂正前の請求項1に係る発明はA及びBの構成を含むのではなく,A又はBの構成を含むものと解するのが至当である。そうすると,<訂正前構成>から選択的構成のうちAのみに限定して<訂正後構成>とする訂正は,特許請求の範囲を減縮するものであり,特許請求の範囲を拡張するものではない。

なお,請求人は,弁駁書(4頁)において,「小役低確率状態から特別遊技状態になった場合に,確率変更処理を行わないもの」は訂正前には特許請求の範囲に含まれなかったが,訂正により含まれることとなった旨,主張しており,また,平成22年3月8日付け審判上申書(3?4頁)において,特許明細書の図11(a)と(d)を例に挙げ,「訂正基準明細書記載の実施例」は訂正前の特許請求の範囲には該当しないものであったため,被請求人は実施例を含ませるように訂正しようとしている旨主張している。
図11(a)の状態から(d)の状態になる関係は「小役低確率状態から特別遊技状態になった場合に,確率変更処理を行わないもの」に相当するものであるが,実施例において(a)の状態から(d)の状態になる場合の他に,(b)の状態から(d)の状態になる場合があることは自明である。そして,上記したように訂正前の請求項1に「特別遊技状態となった場合に,必ず確率変更処理を行う」と記載されていない以上,(a)の状態から(d)の状態になる場合のように「特別遊技状態になった場合に,確率変更処理を行わない」場合があっても,(b)の状態から(d)の状態になる場合のように「特別遊技状態になった場合に,確率変更処理を行う」場合があれば,このような実施例は,「特別遊技状態になった場合に,確率変更処理を行う」ものであるから,訂正前の特許請求の範囲に含まれることは明らかである。したがって,請求人の主張は採用することができない。

以上のとおり,訂正事項5が認められない旨の主張は採用することができないから,訂正事項5が認められないことを根拠とした,訂正事項1?4,7?9,11,13?17が認められない旨の主張も採用することができない。

(2)訂正事項5について
訂正事項5は,特許明細書の請求項3の「前記確率制御手段は,前記通常遊技状態においては前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数および有価価値の付与回数のうち少なくとも一方とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し,該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が,1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を制御することを特徴とする,請求項1または請求項2に記載の遊技機。」のうち,「有価価値の付与数および有価価値の付与回数のうち少なくとも一方」との選択的記載を「有価価値の付与数」に限定して請求項1に繰り上げ,訂正前の請求項1の「確率制御手段」が「前記比較結果に基づいて,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとなることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率も併せて制御することにより,前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを前記標準値との比較によって変動させて前記通常遊技状態を前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えて前記通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内に保つための確率制御手段」であることを限定したものであり,訂正前の「前記特別遊技状態となった場合に,」を「前記小役高確率状態からビッグボーナス遊技状態となった場合に,」と限定するものである。
そして,請求項3から請求項1への繰り上げは,請求項1の発明特定事項を限定するものであって特許請求の範囲の減縮に該当する。
また,請求項3から請求項1へ繰り上げた以外の訂正事項5である「前記比較結果に基づいて,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとなることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率も併せて制御することにより,前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを前記標準値との比較によって変動させて前記通常遊技状態を前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えて前記通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内に保つための確率制御手段」及び「前記小役高確率状態からビッグボーナス遊技状態となった場合に,」は,特許明細書の【0057】の「以上のように構成することにより,小役判定モードが「通常時」よりも「高確率時」の方が,小役の発生確率が高くなり」の記載,同【0086】の「本実施の形態では,小役発生確率についてのみ標準値との比較によって制御するようにしたので,通常ゲームにおける払出率を所定範囲内に保ちながら,ビッグボーナスやレギュラーボーナスの発生についてはランダム値Rの抽出タイミングと設定値によって制御されることとなり,高設定でもボーナス発生回数が多いとは限らず,また低設定でも少ないとは限らなくなって遊技者に対しゲームの興趣を持続させることのできる遊技機とすることができる。」との記載,同【0084】の「次に,S175Gに進み,小役判定モードが「高確率時」になっているか否かの判断がなされ,なっていない場合にはS175Hに進み,S175Fにより算出した算出値が0.4(通常時における下限値)未満であるか否かの判断がなされ,0.4未満の場合にはS175Iにより,小役判定モードを「高確率時」にセットした後S175Lに進む。一方,算出値が0.4以上であった場合には,そのままS175Lに進む。S175Gの判定結果,小役判定モードが「高確率時」になっている場合にはS175Jに進み,S175Fにより算出した算出値が0.5(高確率時における上限値)以上であるか否かの判断がなされる。そして,0.5以上の場合にはS175Kに進み,小役判定モードを「通常時」にセットした後S175Lに進む。一方,S175Jにより,算出値が0.5未満であると判断された場合にはそのままS175Lに進む。このように,小役判定モードが通常時の場合において小役の払出率が40%を割った場合に小役判定モードが「高確率時」に更新される。また,小役判定モードが「高確率時」の場合において小役の払出率が50%に達すれば,小役判定モードを「通常時」に復帰させる制御が行なわれる。」との記載,同【0103】の 「図11(d)に示されるテーブルのうち,小役15枚に対応する領域は,図11(a),(b)に示されるテーブルの小役15枚に対応する領域よりも大きい。このことは,ビッグボーナス時の小役当選値(払出数15枚)の数がビッグボーナス時ではない時の小役当選値(払出数15枚)の数よりも多いことを意味する。これにより,前記特別遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様(たとえば,有効ライン上において「CCC」または「DDD」)となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させる確率制御手段が開示されている。」との記載,同【0104】の「さらに,図11(d)に示されるテーブルのうち,小役8枚に対応する領域は,図11(a),(b)に示されるテーブルの小役8枚に対応する領域よりも大きい。このことは,ビッグボーナス時の小役当選値(払出数8枚)の数がビッグボーナス時ではない時の小役当選値(払出数8枚)の数よりも多いことを意味する。これにより,前記確率制御手段は,前記特別遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が,予め複数種類定められた特定の表示態様のうち,1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様とは別の所定の特定の表示態様(たとえば,有効ライン上において「EEE」)となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率をも向上させることが開示されている。」との記載,同【0105】の「さらに,図11(d)に示されるテーブルのうち,小役3枚に対応する領域は,図11(b)に示されるテーブルの小役3枚に対応する領域よりも小さい。このことは,ビッグボーナス時の小役当選値(払出数3枚)の数がビッグボーナス時ではない時の小役当選値(払出数3枚)の数よりも少ないことを意味する。これにより,前記確率制御手段は,前記特別遊技状態となった場合に,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様(たとえば,有効ライン上において左図柄のみ「F」)に関しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させることが開示されている。」との記載及び図9,11,16によれば,特許明細書に実質的に記載されたものである。
そうすると,訂正事項5は,特許明細書に記載された事項内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)訂正事項1について
訂正事項1は,「特別遊技状態用識別情報」を「ビッグボーナス識別情報」と限定するものである。
そして,特許明細書の【0002】には「特別遊技状態用識別情報が導出表示されることにより,遊技者にとって特に有利な特別遊技状態(たとえば,ビッグボーナスゲームが提供される状態)となるものがあった。」と記載され,同【0098】には「ビッグボーナスゲームによって特別遊技状態が開示されている。」と記載され,同【0024】には「可変表示装置70の停止時の表示結果が賭数に応じた有効ライン(当りライン)上において「AAA」となればビッグボーナスゲームが開始されるとともにコインが15枚払出される。」と記載されているから,訂正事項1に係る限定は特許明細書に実質的に記載されたものである。
そうすると,訂正事項1は,特許明細書に記載された事項内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(4)訂正事項2について
訂正事項2は,「特別遊技状態」を「ビッグボーナス遊技状態」と限定するものである。
そして,特許明細書の【0098】には「ビッグボーナスゲームによって特別遊技状態が開示されている。」と記載されているから,訂正事項2に係る限定は特許明細書に実質的に記載されたものである。
そうすると,訂正事項2は,特許明細書に記載された事項内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(5)訂正事項3について
訂正事項3は,「前記入賞の発生を許容するか否かを決定する決定手段」を「前記入賞の発生を許容するか否かを,ランダム値を用いて所定の演算を行なった演算結果と所定の当選値とを比較することにより決定する決定手段」と限定するものである。
そして,特許明細書の【0054】には「次にS66に進み,格納されているランダム値Rを用いて所定の演算を行なう処理がなされる。その所定の演算とは,ランダム値Rに対し所定の値を加算したり減算したり乗じたり除したりあるいはランダム値Rを2乗または3乗したり,あるいは所定の関数にランダム値Rを代入して答えを算出したりする演算である。次にS67により,その演算結果を,投入数・設定値・小役判定モードに応じた当選許容値と比較する処理が行なわれる。」と記載されているから,訂正事項3に係る限定は特許明細書に実質的に記載されたものである。
そうすると,訂正事項3は,特許明細書に記載された事項内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(6)訂正事項4について
訂正事項4は,「予め複数種類定められた特定の表示態様」を「予め複数種類定められた小役入賞の発生のための予め複数種類定められた特定の表示態様」と,「所定の有価価値を付与」を「特定の表示態様の種類に応じて予め定められた数の有価価値を付与」と限定するものである。
そして,特許明細書の【0024】には「さらに有効ライン上において「CCC」または「DDD」となれば小役の図柄の組合せが成立してコインが15枚払出される。有効ライン上において「EEE」となれば小役が成立してコインが8枚払出される。有効ライン上において左図柄と中図柄とが共に「F」となれば小役が成立して6枚のコインが払出される。また,有効ライン上において左図柄のみ「F」となれば小役が成立して3枚のコインが払出される。」と記載されているから,訂正事項4に係る限定は特許明細書に実質的に記載されたものである。
そうすると,訂正事項4は,特許明細書に記載された事項内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(7)訂正事項6について
訂正事項6に係る訂正は,【請求項3】を削除するものであって,特許請求の範囲の減縮に該当する。

(8)訂正事項7?18について
訂正事項7?18は,訂正事項1?5に係る【請求項1】の訂正又は訂正事項6に係る【請求項3】の削除との整合を図るため,発明の詳細な説明を訂正するものであるから,明りょうでない記載の釈明に該当する。
また,訂正事項15のうち,「S58A」を「S58」とする訂正は誤記の訂正に該当する。
更に,訂正事項17のうち,「その特定の表示態様を導出表示させることが可能なゲームが通常遊技状態において時間的に偏って提供されてしまう不都合を極力防止でき,複数の遊技者が時間を変えて1台の遊技機で遊技した場合に,通常遊技状態において或る遊技者に多くの有価価値が付与されて他の遊技者に有価価値があまり付与されないという不公平な事態が生ずることを極力防止できる。」は,特許明細書の【0110】の「その特定の表示態様を導出表示させることが可能なゲームが時間的に偏って提供されてしまう不都合を極力防止でき,複数の遊技者が時間を変えて1台の遊技機で遊技した場合に,或る遊技者に多くの有価価値が付与されて他の遊技者に有価価値があまり付与されないという不公平な事態が生ずることを極力防止できる。」と記載されているから,当該訂正事項は特許明細書に記載されたものである。

3.小括

以上のとおりであるから,平成21年8月20日付けの訂正は,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,又は明りょうでない記載の釈明を目的とし,特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明については願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり,誤記の訂正については願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
したがって,上記訂正は,平成6年法律116号附則6条1項の規定によりなお従前のものとされた同法による改正前の特許法134条2項ただし書に適合し,特許法134条の2第5項において準用する同改正前の126条2項の規定に適合するので,当該訂正を認める。

第4.本件特許発明

上記のとおり訂正を認めるので,本件特許発明は,本件訂正により訂正された明細書(以下,「訂正明細書」という。)及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された次のとおりのもの(以下,「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)と認める。
「 【請求項1】 遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり,所定のビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を含み,該可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置の表示結果が所定の表示態様となった場合に所定の入賞が発生する遊技機であって,
前記遊技機は,遊技者にとって特に有利な遊技状態であるビッグボーナス遊技状態と,前記ビッグボーナス遊技状態よりも低い所定の範囲の払出比率で遊技が行なわれる通常遊技状態とを有し,
前記1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数である賭数を入力するための賭数入力手段と,
前記可変表示装置により前記ビッグボーナス識別情報が導出表示されることにより,前記ビッグボーナス遊技状態に制御可能な遊技制御手段と,
前記入賞の発生を許容するか否かを,ランダム値を用いて所定の演算を行った演算結果と所定の当選値とを比較することにより決定する決定手段と,
前記可変表示装置を制御する手段であって,前記決定手段の決定内容に基づいた制御が可能な可変表示制御手段と,
前記可変表示装置の表示結果を判定する判定手段と,
前記可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた小役入賞の発生のための予め複数種類定められた特定の表示態様のうちのいずれかとなった場合に特定の表示態様の種類に応じて予め定められた数の有価価値を付与する価値付与手段と,
前記通常遊技状態において,前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し,該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が,1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を制御し,さらに,前記比較結果に基づいて,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとなることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率も併せて制御することにより,前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを前記標準値との比較によって変動させて前記通常遊技状態を前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えて前記通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内に保つための確率制御手段とを含み,
該確率制御手段は,前記小役高確率状態から前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させ,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させることを特徴とする,遊技機。
【請求項2】 前記確率制御手段は,前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類定められた特定の表示態様のうち,1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様とは別の所定の特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率をも向上させることを特徴とする,請求項1に記載の遊技機。 」

第5.本件特許発明にかかる検討

1.無効理由1について(分割要件違反,特許法29条)

(1)請求人の主張
請求人は,審判請求書において,本件特許に係る特許出願は,原出願(特願2000-229525号)の分割出願として出願されたものであるが,その分割は適法になされたものではなく,出願日の遡及は認められず,本件特許出願日は平成12年8月28日であり,本件特許発明(訂正前の請求項1?3)は,本件特許出願前に頒布された原々々々出願の公開特許公報(甲第8号証,特開平6-327809号)に記載されたものであるから,特許法29条1項3号もしくは同条2項に該当する旨主張している。
被請求人の平成21年8月20日付け訂正請求を受けて,請求人は,平成21年12月3日付け弁駁書(6?8頁)において,仮に訂正請求が認められるとすると,審判請求書で指摘した3つの分割要件違反のうちの分割要件違反の1及び2については解消することは認めるが,分割要件違反の3は解消しない旨主張している。
そして,分割要件違反の3に係る主張は,小役の発生確率を変動させることについて原出願の当初明細書には「投入枚数が3枚」「設定値が4」の場合の処理が記載されているのみであり,記載が全くない「投入枚数が1枚又は2枚」「設定値が1?3,5,6」の場合について「該確率制御手段は,前記特別遊技状態となった場合に,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させる」ものであることを読み取ることができないから,訂正前の請求項1に係る発明の「該確率制御手段は,前記特別遊技状態となった場合に,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させる」との構成は原出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内でないものとなっている,というものである。また,本件特許発明1については,訂正後の特許請求の範囲の記載のうち具体的にどの部分が分割要件違反となるか指摘はないものの,訂正前と同様の理由で分割要件違反である旨主張している。

(2)分割要件違反に関する検討
上記のとおり訂正を認めるので,分割要件違反の3について検討する。
(2-1)原出願当初明細書の記載事項
・「表示状態が変化可能な可変表示装置を有し,該可変表示装置が表示制御されて表示結果が導出表示された後に1ゲームが終了する遊技機であって,
前記1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数である賭数を入力するための賭数入力手段と,
前記可変表示装置を制御する表示制御手段と,
前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の有価価値を付与する価値付与手段と,
前記賭数入力手段により入力された入力数の累積値と前記価値付与手段により付与された有価価値の累積値および有価価値の付与回数の累積値のうち少なくとも一方とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し,該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が特定の表示結果となる確率を制御する確率制御手段とを含むことを特徴とする,遊技機。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
・「次にS66に進み,格納されているランダム値Rを用いて所定の演算を行なう処理がなされる。その所定の演算とは,ランダム値Rに対し所定の値を加算したり減算したり乗じたり除したりあるいはランダム値Rを2乗または3乗したり,あるいは所定の関数にランダム値Rを代入して答えを算出したりする演算である。次にS67により,その演算結果を,投入数・設定値・小役判定モードに応じた当選許容値と比較する処理が行なわれる。」(【0047】)
・「この当選許容値は,たとえば図11に示されているように,ビッグボーナスゲーム(BB)当選許容値,レギュラーボーナスゲーム(RB)当選許容値,再ゲーム当選許容値,小役当選許容値の4種類から構成されている。この各当選許容値は,テーブルの形でROM47に記憶されている。図11(a)に示された当選許容値は,3枚賭けで小役判定モードが「通常時」で確率設定値が「4」のときを示している。この小役判定モードは,スロットマシン1による遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値と比較して,その標準値よりも高い場合は「通常時」に設定され,標準値よりも低い場合は「高確率時」に設定されるものであり,標準値に従って小役発生確率をフィードバック制御するために用いられるものである。「確率設定値」とは,前述したキースイッチの操作に従って設定された値のことである(S9?S13参照)。この図11(a)に示すように,S66による演算値が,ビッグボーナスゲーム当選許容値b0未満の場合にはビッグボーナスゲーム当選に該当し,b_(0)以上でレギュラーボーナスゲーム当選許容値b_(1)未満の場合にはレギュラーボーナスゲームに該当し,b_(1)以上で再ゲーム当選許容値b_(2)未満の場合には再ゲーム当選に該当し,b_(2)以上で15枚小役当選許容値b_(3)未満の場合にはコインを15枚払出す小役当選に該当し,b_(3)以上で8枚小役当選許容値b_(4)未満の場合にはコインを8枚払出す小役当選に該当し,b_(4)以上で6枚小役当選許容値b_(5)未満の場合にはコインを6枚払出す小役当選に該当し,b_(5)以上で3枚小役当選許容値b_(6)未満の場合にはコインを3枚払出す小役当選に該当し,b_(6)以上の場合にははずれに該当する。なお,図11(a)に示す,A_(34),B_(34),C_(31),D_(31),E_(31),F_(31),G_(11)は,図10(a),(b)に示された値である。図10(a)の一番左の列に示された数字1?6は,確率設定値を示し,一番上の行に示された1,2,3の数字は,コインの投入枚数すなわち賭数を示す。また,図10(b)の一番上の行に示された1,2,3はコインの投入枚数すなわち賭数を示し,その下の行に示された「通常」,「高確率」,「BB」は,小役判定モードが通常時か高確率時かビッグボーナス時かを示している。そして,図11(a)に示した場合は,3枚賭けで,小役判定モードが通常時で,確率設定値が「4」である場合であるために,図10(a)の設定「4」で投入数が「3」に該当する欄に記載された数値,すなわち,ビッグボーナス当選許容値としてA_(34)が,レギュラーボーナスゲーム当選許容値としてB_(34)が用いられる。また,図10(b)において,投入数が「3」で小役判定モードが通常時の欄に記載された数値,すなわち,15枚のコインを払出す小役当選許容値としてC_(31),8枚のコインを払出す小役当選許容値としてD_(31),6枚のコインを払出す小役当選許容値としてE_(31),3枚のコインを払出す小役当選許容値としてF_(31),再ゲーム当選許容値としてG_(11)が用いられる。なお,この図10に示す(a),(b)に示されたデータは,テーブルの形でROM47に記憶されている。」(【0048】)
・「図11(b)は,3枚賭けで,小役判定モードが「高確率時」で,確率設定値が「4」の場合を示している。この場合には,図10に従えば,ビッグボーナスゲーム当選許容値b_(0)=A_(34),レギュラーボーナスゲーム当選許容値b_(1)=b_(0)+B_(34),再ゲーム当選許容値b_(2)=b_(1)+G_(11),コイン15枚を払出す小役当選許容値b_(3)=b_(2)+C_(32),コイン8枚を払出す小役当選許容値b_(4)=b_(3)+D_(32),コイン6枚を払出す小役当選許容値b_(5)=b_(4)+E_(32),コイン3枚を払出す小役当選許容値b_(6)=b_(5)+F_(32)となる。また,図11(c)は,3枚賭け,小役判定モードが「高確率時」,ビッグボーナス当選フラグセット中あるいはレギュラーボーナス当選フラグセット中の場合が示されている。この場合には,ビッグボーナス当選許容値とボーナス当選許容値とが存在しない。(d)は,3枚賭けで,小役判定モードが「ビッグボーナス時」の場合が示されている。この場合は,ビッグボーナス当選許容値と再ゲーム当選許容値とが存在しない。またこの場合のボーナスゲーム当選許容値は,図10(b)の一番下の行の数値が用いられる。なお,RMAXは,ランダム値Rを用いた演算結果がとり得る上限値がある。(【0049】)
・「以上のように構成することにより,小役判定モードが「通常時」よりも「高確率時」の方が,小役の発生確率が高くなり,さらに,小役判定モードが「ビッグボーナス時」の場合にはさらに小役発生確率が高くなるとともにボーナスゲーム発生確率も高くなる。また,1枚賭けよりも2枚賭け,2枚賭けよりも3枚賭けの方がビッグボーナスゲーム発生確率,ボーナスゲーム発生確率,小役発生確率,再ゲーム発生確率が高くなる。」(【0050】)
・「S175Eでは,投入数カウンタの値が累積投入数に加算され,払出予定数の値が累積払出数に加算される処理が行なわれる。次にS175Fに進み,累積払出数/累積投入数を算出する処理が行なわれ,スロットマシン1による価値付与状況を算出する処理が行なわれる。(【0076】)
・「次に,S175Gに進み,小役判定モードが「高確率時」になっているか否かの判断がなされ,なっていない場合にはS175Hに進み,S175Fにより算出した算出値が0.4(通常時における下限値)未満であるか否かの判断がなされ,0.4未満の場合にはS175Iにより,小役判定モードを「高確率時」にセットした後S175Lに進む。一方,算出値が0.4以上であった場合には,そのままS175Lに進む。S175Gの判定結果,小役判定モードが「高確率時」になっている場合にはS175Jに進み,S175Fにより算出した算出値が0.5(高確率時における上限値)以上であるか否かの判断がなされる。そして,0.5以上の場合にはS175Kに進み,小役判定モードを「通常時」にセットした後S175Lに進む。一方,S175Jにより,算出値が0.5未満であると判断された場合にはそのままS175Lに進む。このように,小役判定モードが通常時の場合において小役の払出率が40%を割った場合に小役判定モードが「高確率時」に更新される。また,小役判定モードが「高確率時」の場合において小役の払出率が50%に達すれば,小役判定モードを「通常時」に復帰させる制御が行なわれる。(【0077】)
・図10には「ROMに記憶されている各種当選許容値のテーブルデータ」が図示されている。
・図11には,
図11(a):「3枚賭け 小役判定モード=通常時 設定=4」
図11(b):「3枚賭け 小役判定モード=高確率時 設定=4」
図11(c):「3枚賭け 小役判定モード=高確率時 BBorRB当選フラグセット中」
図11(d):「3枚賭け 小役判定モード=ビッグボーナス時
に場合分けして,「各種当選許容値の領域」が図示されている。
・ビッグボーナス及びレギュラーボーナスに対応する当選許容値の領域は,0?A_(34)及びA_(34)+1?B_(34)で同じ大きさの領域であり,図11(a)と図11(b)においても同じ大きさの領域として図示されている。
また,小役15枚及び8枚に対応する当選許容値の領域(以下,それぞれ「15枚役当選領域」,「8枚役当選領域」という。)は,図11(a)におけるものより図(b)におけるものの方が大きく図示されている。
・「15枚役当選領域」,「8枚役当選領域」は,図11(b)におけるものより図(d)におけるものの方が大きく図示されているとともに,小役3枚に対応する当選許容値の領域(以下,「3枚役当選領域」という。)は,図11(b)におけるものより図(d)におけるものの方が小さく図示されている。

(2-2)判断
本件特許発明1,2は,前記第4記載のとおりである。
そして,本件特許発明1の構成中,「遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり,所定のビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を含み,該可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置の表示結果が所定の表示態様となった場合に所定の入賞が発生する遊技機であって,前記遊技機は,遊技者にとって特に有利な遊技状態であるビッグボーナス遊技状態と,前記ビッグボーナス遊技状態よりも低い所定の範囲の払出比率で遊技が行なわれる通常遊技状態とを有し,前記1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数である賭数を入力するための賭数入力手段と,前記可変表示装置により前記ビッグボーナス識別情報が導出表示されることにより,前記ビッグボーナス遊技状態に制御可能な遊技制御手段と,前記入賞の発生を許容するか否かを,ランダム値を用いて所定の演算を行った演算結果と所定の当選値とを比較することにより決定する決定手段と,前記可変表示装置を制御する手段であって,前記決定手段の決定内容に基づいた制御が可能な可変表示制御手段と,前記可変表示装置の表示結果を判定する判定手段と,前記可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた小役入賞の発生のための予め複数種類定められた特定の表示態様のうちのいずれかとなった場合に特定の表示態様の種類に応じて予め定められた数の有価価値を付与する価値付与手段と,前記通常遊技状態において,前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し,該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が,1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を制御し,さらに,前記比較結果に基づいて,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとなることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率も併せて制御することにより,前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを前記標準値との比較によって変動させて前記通常遊技状態を前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えて前記通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内に保つための確率制御手段とを含む」との構成は,原出願当初明細書等に記載されていることは明らかであって,当事者間に争いもない。
次に,本件特許発明1の構成中,「該確率制御手段は,前記小役高確率状態から前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させ,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させる」(このように確率を変更する制御を,以下,「確率変更制御」という」。)との構成は,上記各記載事項によれば,少なくとも「投入枚数が3枚」「設定値が4」の場合については原出願当初明細書等に記載されていることは明らかであって,当事者間に争いもない。
そこで,「確率変更制御」に関し「投入枚数が3枚」「設定値が4」の場合と限定していないことにより本件特許発明1が原出願当初明細書等に記載した事項の範囲内でないものとなっているか否かについて検討する。
原出願当初明細書等には,「確率変更制御」に関連して,小役高確率状態(すなわち図11(b)の状態)からビッグボーナス遊技状態(すなわち図(d)の状態)となった場合に「15枚当選領域」を大きくして15枚当選役の当選確率を向上させ,「3枚役当選領域」を小さくして3枚当選役の当選確率を低下させることが記載されている。そして,このように当選確率を向上,低下させることは「投入枚数」及び「設定値」がどのようになっているかによって直接影響されるものでないこと,「投入枚数」及び「設定値」についての規定がなくとも「確率変更制御」が成立することは,原出願当初明細書等の記載から明らかであり,「投入枚数が3枚」「設定値が4」等,「投入枚数」及び「設定値」を規定することが「確率変更制御」に必須なものと解すべき理由もない。そして,原出願当初明細書において,「投入枚数が3枚」「設定値が4」としたのは,「確率変更制御」を実施例に基づいて説明するにあたって,その実施例で設定されている条件を例示して記載したものに過ぎないと解される。
そうすると,原出願当初明細書において,技術思想として,「投入枚数」及び「設定値」がどのようなものであるかを限定する必要のない「確率変更制御」が,原出願当初明細書等に記載されていると認められるから,本件特許発明1及びそれを引用して限定する本件特許発明2は原出願当初明細書等に記載されていると認められる。
以上により,本件特許に係る特許出願は,原出願(特願2000-229525号)の分割出願として出願されたものであるが,その分割は適法になされたものではないから出願日の遡及は認められない,とすることはできず,請求人の主張は採用することができない。

(3)小括
以上のとおり,分割は適法になされたものであり,出願日の遡及は認められるから,甲第8号証は本件特許出願前頒布されたものに該当せず,本件特許発明1,2は特許法29条1項3号もしくは同条2項に該当するとすることはできない。
したがって,無効理由1は理由がない。

2.無効理由2について(特許法29条2項)

本件特許発明は,甲第1?5,7号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に成し得たものであり,特許法29条2項により無効とされるべきものである,と主張するので,検討する。なお,甲第6号証は「フラグ」が入賞の発生を許容するか否かを示す情報であることが技術情報であることの例(審判請求書84頁)である。

(1)甲第1?7号証の記載事項
甲第1号証には,以下の事項が記載されている。
・「パネル表示部10内の左方には賭け数表示部11(11a?11e)が設けられ,各賭け数表示部11(11a?11e)には「5」,「10」,「15」の賭け数(図示省略)が表示され,賭け数がセットされたときにそれら各賭け数表示部11(11a?11e)がその賭け数に対応して点灯するようになっている。また賭け数表示部11(11a?11e)に表示された賭け数に対応する組合せ表示ラインa?c(図2)が設けられている。また,中段の組合せ表示ラインa?aの右端にはボーナスゲーム(後述)時に点灯するボーナスゲーム表示部10rが設けられ,各可変表示窓10b,10c,10dの下部にはストップ操作可能時に点灯するストップ表示部10g,10h,10iが設置されている。」(【0008】)
・「前面枠100の前面側上端寄りには大役物(ビッグゲーム,ボーナスゲーム)の確定時に点滅する大役物発生表示部20が設けられ,前面側周囲をコ字状に囲むように装飾枠30が取り付けられている。前面枠100の前面側中段部の操作部115前面側の左寄りには回収球抜きスイッチ操作棒(図示省略)を通す回収球抜き用孔37(図3)が設けられている。同操作部115前面側の中央には各可変表示窓10b,10c,10d中の可変表示ドラム(後述)をストップさせるためのストップボタン22a,22b,22cが押圧操作自在に設けられている。そして,その左側には,可変表示ゲームの開始(内部の可変表示ドラム(後述)の回転開始)操作を行うためのスタート装置90,賭け数をセットするための取込ボタン24a,および精算/完了ボタン29aがそれぞれ外部操作自在に設けられている。また,その右側にはオート/マニュアル切換ボタン28aが外部操作自在に設けられている。前記スタート装置90先端部のスタート操作用把手94内にはスタートランプ(後述)が設置されている。」(【0010】)
・「そして,遊技は次のようにして行なわれる。先ず,上皿71中に遊技球(図示省略)を入れると,その遊技球が取込口26を介して球取込装置300の導入樋(後述)中に流入する。そして,取込ボタン24a中のランプが点滅するとともに,情報表示部10aには,“取込みボタンとイッチを押して下さい。”の表示と“オートを希望するときにはオート/マニュアル切換ボタンを押して下さい。”の表示がなされる。この状態で,球の取込みをマニュアル或いはオートのいずれにするかを遊技者が決め,マニュアルを希望する場合はオート/マニュアル切換ボタン28aを押さなくて良いが,オートを希望する場合にはそのオート/マニュアル切換ボタン28aを押す。その結果,マニュアルを選択したときには,取込ボタン24aを押すごとに,取込音が発せられて,上皿71から実球が取込口26を介して一定個数(例えば,5個)ずつ取り込まれ得る状態となる。が,オートを選択したときには,上皿71から,予め実球が取込口26を介して所定個数(例えば,250個)の範囲内でクレジットとして取り込まれる。その取り込まれた球数がメイン制御装置250の記憶部に記憶され(クレジットに入れられ)その記憶数(クレジット数)がクレジット数表示部10Sに数字表示される。そして,取込ボタン24aが押されるごとに,その記憶数の中から5個ずつ取り込まれ得る状態となる。」(【0019】)
・「この状態で,遊技者が希望する賭け数(例えば,5個単位で,5個,10個,15個)分に対応した回数(賭け数5個につき1回)だけ取込ボタン24aを押すと,その押した回数に対応した賭け数(例えば,5個単位)の球が,マニュアルのときには実球で上皿71の中から,オートのときには記憶(クレジット)の中から,それぞれ取り込まれる。そして,その取込みの終了後に,スタート操作用把手94中のランプが点灯する。クレジットの中から取り込まれたときには,メイン制御装置250のクレジットの記憶数がその取り込まれた分だけ減算され,その減算後のクレジット数がクレジット表示部10Sに数字表示される。そして,そのいずれの場合にも,その賭け数に対応した賭け数表示部11(11a?11e)が点灯され,情報表示部10aに“スタート操作をしてください”の表示がなされる。」(【0020】)
・「この状態で,遊技者がスタート操作用把手94を握ってスタート装置90を操作すると,スピーカからスタート音が発せられてスタート操作用把手94中のスタートランプ(後述)が消灯する。そして,内部の3つの可変表示ドラム(後述)がそれぞれ異なった速度での回転を開始して回転音が発せられ,それに伴って可変表示窓10b,10c,10d中の表示の変化が開始される。その開始のときから所定時間経過すると,ストップ表示部15a,15b,15c中のランプが点灯し,さらに所定時間が経過すると,左,中,右の順に可変表示ドラム(後述)が停止されて可変表示窓10b,10c,10d中の表示が確定される。ただし,その所定時間の経過前であっても,一定時間が経過して情報表示部10aに“ストップスイッチを押して下さい。”の表示が現われ,かつ,ストップ表示部15a,15b,15c中のランプが点灯してストップボタン22a,22b,22cの操作が可能となってから,遊技者によってストップボタン(22a,22b,22c)が押圧操作されると,スピーカ260からストップ音が発せられてその押圧操作されたストップボタン(22a,22b,22c)上の可変表示窓(10b,10c,10d)中の可変表示ドラムの回転が停止され,その結果,その可変表示窓(10b,10c,10d)中の表示の変化が停止されて確定する。そのストップボタン(22a,22b,22c)の押す順序はいずれの順に行なってもよい。いずれの場合も,可変表示窓(10b,10c,10d)中の表示の変化が停止されると,その停止ごとに対応するストップ表示部(15a,15b,15c)中のランプが消灯される。」(【0021】)
・「遊技者が上記操作を繰り返すことによって次々とゲームが行なわれるが,そのゲームの結果,停止時における可変表示窓10b,10c,10d中の表示の組合せ(そのゲームの開始時に遊技者が取込スイッチ24aを押圧操作することによって指定された組合せ表示ライン(a?c)に沿った表示の組合わせに限る。)がスコア表示部10fに表示された賞態様(役)のいずれかと一致すると,賞態様成立表示としてその成立した組合せ表示ライン(a?cのいずれか)を示す賭け数表示部(11a?11e)が点滅され,マニュアルのときには,その賞態様(役)に応じた数の賞球が実球で上皿71又は下皿80中に排出される。なお,オートでクレジットの記憶個数が所定個数(例えば,250個)に達していないときには,クレジットの記憶個数の加算として与えられてその加算後の記憶個数がクレジット表示部10rに表示される。2つ以上の賞態様(役)に該当したときには,各賞態様(役)に対する賞球数を合算した合計数の賞球が与えられる。賞球の排出時にはスピーカ260から賞球排出音が発せられる。」(【0022】)
・「そのゲームの結果,特に,可変表示窓10b,10c,10d中の表示の組合せが“ビッグチャンス”を発生させる表示の組合せ(この実施例では,「7,7,7」の組合せ)となったときには,“ビッグチャンス”が発生してビッグチャンス表示部10e中のランプが点灯される。と同時に,“ビッグチャンス”の発生を知らせる効果音が発せられて所定数(例えば,90個)の賞球排出が行なわれ,しかる後,次のような“ビッグチャンスゲーム”に移行される。このビッグチャンスの発生時には情報表示部10aに,“ビッグチャンスおめでとうございます。”の表示と,ボーナスゲームの発生し得る回数(ボーナスゲームの残りの回数),例えば「ボーナスゲームの残り3」の表示がなされる。」(【0024】)
・「この場合のビッグチャンスゲームは多くの賞球獲得のチャンスを与える特別ゲーム状態を作り出すゲームで,この実施例では,3つのボーナスゲーム発生のチャンスが与えられる。ここに,ボーナスゲームはそのビッグチャンスのゲーム期間中に,例えば,中央の入賞ラインa?a上に“寿”の文字が3つ並ぶことにより発生されるゲームである。このボーナスゲームが発生したときには,ボーナスゲーム表示部10rが点灯されて,1ゲームにつき賭け数が1単位(この実施例では5個)掛けとなり,各可変表示ドラム(後述)ごとの個別的ゲームを所定回数(例えば,最高12ゲームまでで,その12ゲーム以内に当りが6回でたときにはその時点まで。)行うチャンスが与えられる。」(【0025】)
・「前記ビッグチャンスのゲームは可変表示ゲームの結果としてビッグチャンスを発生させる表示態様が成立したときに遊技者に賞球獲得の大きなチャンスを与えるために行なわれるゲームで,例えば,図53に示す流れに沿ったゲームが行なわれる。即ち,このビッグチャンスのゲーム時には,通常ゲーム時に比べて小役発生の確率がアップされるとともに,ボーナスゲーム発生の可能性が生ずる。」(【0158】)
・「前記ビッグチャンス,レギュラーボーナスおよび小役を発生させる各種表示の組合せは例えば次のようになっている。即ち,ビッグチャンスは“7”,“7”,“7”の3つの数字が揃ったとき(1)に発生し,レギュラーボーナスは“かぶとの絵”が3つ揃う(2)か又は“富士山の絵”が3つ揃った(3)ときに発生する。そして,ビッグチャンスのときの賞球数の総計は,例えば,最高1800個で,該ビッグチャンスのボーナスゲーム時における個別ゲームの1回“当り”ごとの賞球数は75個である。レギュラーボーナスのときの賞球数の総計は,例えば,最高450個で,該ビッグチャンスのボーナスゲーム時における個別ゲームの1回“当り”ごとの賞球数は75個である。」(【0165】)
・「小役は“俵の絵”が3つ揃ったとき(4),“亀の絵”が3つ揃ったとき(5),左と中の表示が“亀の絵”で右の表示が“かぶとの絵”のとき(6),“鶴の絵”が3つ揃ったとき(7),左と中の表示が“鶴の絵”で右の表示が“かぶとの絵”のとき(8),“鼓の絵”が3つ揃ったとき(9),左と中の表示が“鼓の絵”の表示であるとき(10),左と中の表示が“かぶとの絵”の表示であるとき(11),左の表示が“鼓の絵”の表示であるとき(12)等に発生する。そして,(4)?(6)の小役のときの賞球数は,例えば75個,(7)又は(8)の小役のときの賞球数は,例えば50個,(9)又は(8)の小役のときの賞球数は,例えば,40個,(11)の小役のときの賞球数は,例えば25個,(12)の小役のときの賞球数は,例えば10個である。」(【0166】)
・「図80には,メイン制御装置250によって行われるメイン制御処理の前半部分手順を,図81にはその後半部分の手順を示す。このメイン制御処理としては,賭け球取込処理,可変表示ドラムの回転制御処理,ボーナスゲームへの移行処理,小役集中への移行処理,可変表示ドラムの停止制御処理,役確定分の払出し処理等が行われる。このメイン制御処理が開始されると,まずステップS100でイニシャル処理を行ってから,ステップS102,S104で順に賭け球取込処理,分岐処理を行う。そして,その分岐処理のとき,ステップS100Aでスタートスイッチ23がオン(ON)されると,ステップS106で可変表示ドラム667,677,687の回転制御を行ってから次のステップS108に移行する。ステップS108ではボーナスゲーム中であるか否かを判定する。その結果,ボーナスゲーム中でないと判定したときには,ステップS110でボーナス判定処理をしてからステップS114に移行する。が,ボーナスゲーム中であると判定したときには,ステップS112で設定値内(ボーナス)の小役確率利用の処理を行って,ステップS130(図81)に移行する。」(【0220】)
・「ステップS114ではステップS110におけるボーナス判定処理の結果として合格(ボーナスゲームが発生)したか否かを判定し,合格(ボーナスゲームが発生)しなかったと判定したときにはステップS116(図81)に移行し,合格(ボーナスゲームが発生)したと判定したときにはステップS118でボーナスフラグ成立の処理を行ってからステップS136(図81)に移行する。ステップS116(図81)では小役の集中役のゲーム中であるか否かを判定し,小役の集中役のゲーム中でないと判定したときにはステップS122に移行する。」(【0221】)
・「ステップS120では小役の集中役のゲームが終了したか否かを判定し,終了したと判定したときにはステップS124に移行し,終了していないと判定したときにはステップS128で設定値内(小役集中)の小役確率利用の処理を行ってからステップS130に移行する。ステップS122では小役集中役の設定値を消化したか否かを判定し,消化していないと判定したときにはステップS126で設定値内(通常)の小役確率利用の処理をしてからステップS130に移行し,消化したと判定したときにはステップS124に移行する。ステップS124では小役集中役の判定の結果が合格であったか否かを判定し,合格でなかったと判定したときにはステップS126で設定値内(通常)の小役確率の利用処理を行なってステップS130に移行するが,合格したと判定したときにはステップS128で設定値内(小役集中)の小役確率利用の処理を行ってからステップS130に移行する。」(【0222】)
・「ステップS130では小役判定の結果が合格であるか(小役が発生したか)否かを判定し,合格しなかったと判定したときにはステップS132でボーナスフラグ,小役フラグの不成立処理を行ってからステップS136に移行し,合格したと判定したときにはステップS134で小役フラグの成立処理を行ってからステップS136に移行する。ステップS136では可変表示ドラム667,677,687の可変表示タイマがタイムアップしたか否かを判定し,タイムアップしていないと判定したときにはステップS138に移行し,タイムアップしたと判定したときにはステップS140で可変表示ドラム667,677,687の停止制御を行ってステップS142に移行する。ステップS138ではストップスイッチ(42),(43),(44)がオンしたか否かを判定し,オンしないと判定したときにはステップS136に戻り,オンしたと判定したときにはステップS140で可変表示ドラム667,677,687の停止処理を行ってステップS142に移行する。ステップS142では役が確定したか否かを判定し,役が確定していないと判定したときにはそのままステップS102(図81)に戻るが,役が確定したときにはステップS144でその役の確定分に対して球の払い出し処理を行ってからステップS102(図81)に戻る。」(【0223】)
・「なお,上記実施例では,パチンコ球を用いたスロットマシンの如き遊技装置について説明したが,それだけに限定せず,パチンコ機,コインを用いたスロットマシン等,基枠(後壁板がある箱型の基枠,後壁板の無い基枠等も含む。)に前面枠が開閉自在に取り付けられた遊技装置はすべて含む。」(【0242】)

甲第2号証には,以下の事項が記載されている。
・6頁左下部の「CHERRY BAR払出表」には,スイカの図柄が3個揃った役の払出枚数は「15枚,ベルの図柄が3個揃った役の払出枚数は「8枚」,プラム役の払出枚数は「6枚」,チェリー役の払出枚数は「2枚」であることが図示されている。
・12頁下部の「チェリーバー小役確率表」には,「平常時」における「3枚がけ」かつ「設定1-5」の条件の場合にスイカ役となる確率は「1/102.4」,「ビッグ中」に同条件で同役となる確率は「1/1.78」と図示されている。「平常時」における同条件の場合にベル役となる確率は「1/1638」であるのに対し,「ビッグ中」に同条件で同役となる確率は「1/16383」と図示されている。「平常時」における同条件の場合にプラム役となる確率は「1/14.3」であるのに対し,「ビッグ中」に同条件で同役となる確率は「1/1.78」と図示されている。「平常時」における同条件の場合にチェリー役となる確率は「1/41」であるのに対し,「ビッグ中」に同条件で同役となる確率は「1/409」と図示されている。

甲第3号証には,以下の事項が記載されている。
・76頁左上の囲み内には,チェリーが3個揃った役の払出枚数は「15枚」であり,プラム役の払出枚数は「5枚」であり,単チェリー役の払出枚数は「1枚」であることが図示されている。
・「通常ゲーム時の各役のフラグが立つ確率は以下の通りだ。
15枚チェリー 約0.4883%
プラム 約13.3057%
オレンジ 直接フラグは立たない
単チェリー 約0.4883%」(77頁2段右欄1?6行)
・「今までやってきた計算が,通常時の期待値であるが,セブンラッシュにはいると,その確率が大きく変わる。それに合わせて,期待値も大きく変わってくる。その確率は,右下の表の通りだ。」(77頁2段左欄1?5行)
・77頁右下の「7ラッシュ中の期待値」には,「15枚チェリー」の「出現率」は「6.6772%」,同様に「プラム」は「0.1343%」,「単チェリー」は「0.0122%」であることが図示されている。

甲第4号証には,以下の事項が記載されている。なお,甲第4号証のうち手続補正書における記載を引用する。
・「【課題を解決するための手段】そこで,本発明は上記目的を達成するためのものであり,複数の回転体による組み合せゲームを電気的制御装置により遊技制御する電子制御式ゲーム機において,ゲーム機の前面に臨み,複数種類の識別表示部を配した複数の回転体を,ゲーム用遊技媒体による検出信号を受けると共に,スタート操作手段からのスタート信号に基づいて駆動回転させ,上記複数の回転体に対応して設けられたストップ操作手段からのストップ信号に基づいて対応する回転体を夫々停止させ,上記複数の回転体が停止したときの識別表示部による組み合せ状態によって発生する賞態様として,発生状態となるのは極めて難しいが発生状態となったとき遊技者にとって大きな利益を発生させる特大賞態様と,特大賞態様と比較すれば発生状態となり易く,その発生の難易に応じて複数段階の利益を夫々に発生させている通常賞態様とを設定し,停止した複数の回転体による識別表示部の組み合せ状態を判定すると共に,上記設定されたいずれかの賞態様となったとき,各賞態様に対応して設定された当該利益を付与させ,各回転体の停止時における停止位置の制御によって上記各賞態様の発生状態を電気的に制御するようにして,上記賞態様の発生確率の電気的調整制御と,上記特大賞態様の強制発生制御を可能とすると共に,当該発生確率を電気的に調整制御される複数段階の調整制御設定と,当該特大賞態様を必要に応じて強制的に発生させる強制発生指令とを外部操作に基づいて行えるようにしたことを特徴とする。」(【0004】)
・「即ち,各回転体6_(1),6_(2),6_(3)の指示部が指す表示部7_(1),7_(2),7_(3)がいずれか1つの帯域8_(1),8_(2),8_(3),8_(4)内にすべて位置していれば,「当り」となって通常賞態様を構成し,2以上の帯域に分散して位置すると,「外れ」となって投入したコインが没収される。」(【0012】)
・「コインを3枚投入して1ゲームを行った結果,各指示部6_(1)′,6_(2)′,6_(3)′が指す表示部が全て第1帯域8_(1)内であれば15枚,第2帯域で8_(2)内であれば3枚,第3帯域内8_(3)であれば10枚,第4帯域8_(4)内であれば6枚のコインが賞として排出される。」(【0014】)
・「一方,コインを投入してゲームを行ったとき,各指示部6_(1)′,6_(2)′,6_(3)′が指す表示部が全て特定表示部7_(1)′,7_(2)′,7_(3)′となったら,特大賞態様となる。」(【0016】)
・「この特大賞態様の例としては,例えばコインを投入しないでも,或いは1枚のコインを投入してスタートスイッチ9を操作すると,各回転体6_(1),6_(2),6_(3)が高速変換し,遊技者が各ストップスイッチ11_(1),11_(2),11_(3)を順次操作して各回転体6_(1),6_(2),6_(3)を止めると,指示部6_(1)′,6_(2)′,6_(3)′が指す表示部に記載されている記号に対応する総数のコインを遊技者に排出する。」(【0017】)
・「例えば,第1の回転部5_(1)において「4」の表示部7_(1)を回転体6_(1)の指示部6_(1)′が指し,第2回転部5_(2)において「3」の表示部7_(2)を,第3の回転部5_(3)において「7」の表示部7_(3)を各指示部6_(2)′,6_(3)′が指す様に回転体6_(2),6_(3)が止まれば,駆動源13の作動により14枚のコインが受皿14に排出される。この特大賞態様は,コインを1枚投入してゲームを行った結果発生した場合には,上記遊技を1回,コインを2枚投入して発生した場合には2回,コインを3枚投入して発生した場合には3回行える様にしてあり,各回とも各回転部において指示部が指した表示部に対応する数の総和のコインが特大賞態様の賞として遊技者に排出される。」(【0018】)
・「従って,特大賞態様は通常賞態様に比較して多数枚のコインを遊技者に与えることになり,遊技者にとって有利であるが遊技店側では損失となるので,この特大賞態様の発生時期を電気的に制御することにより,遊技者の利益と遊技店の利益とのバランスをとるようにするのである。」(【0019】)
・「ゲーム機1は,電気的制御装置15により遊技媒体の投入に基づくゲーム内容を制御したり,賞態様を発生させるので,上記した特大賞態様は遊技者の操作による自然発生,外部からの操作による強制発生,電気的制御装置15にプログラムさせた通りに発生させる制御発生の3種類が有る。また,通常賞態様は,その発生の難易に応じて複数の利益を付与するが,電気的制御装置15に設定した確率で発生する。」(【0020】)
・「上記自然発生は遊技者がゲームして停止操作したとき生じる偶然的発生で,強制発生はゲーム機1に設けた操作部を必要に応じて操作したときの強制発生指令により発生するもので,例えば保守点検時又は販売時に特大賞態様が発生することを確認するために利用し,制御発生は電気的制御装置15のプログラムに基づいて遊技の進行時に発生する。従って,遊技者のゲーム時に特大賞態様が発生するのは自然発生,制御発生であり,特に遊技者に興趣を与える合理的なサービスを行うために,制御発生によってゲーム機1の賞態様の発生時期を調整することが望ましい。」(【0021】)
・「一方,遊技者が各ゲーム機1で遊技を行うと,遊技により投入したコイン枚数の積算値と,賞として排出したコイン枚数の積算値とを電気的制御装置15が記憶して割数を演算し,この演算割数と設定した割数とを比較する。そして,比較した結果,遊技による演算割数が設定した割数より高い場合には,電気的制御装置15が遊技者の行う各ゲームにおいて各回転体6_(1),6_(2),6_(3)の停止位置を制御し,通常賞態様の高得点の賞態様や特大賞態様の発生,或いは特大賞態様の発生だけを制御して,演算割数が設定割数の例えば1割以内の誤差となるまで継続する。」(【0027】)
・「これに対し,遊技による演算割数が設定した割数より低い場合には,電気的制御装置15が遊技者のゲーム状態を制御し,特に通常賞態様において高得点の賞態様が発生し易い様にして,演算割数が設定した割数の1割以内の誤差となる様にする。」(【0028】)
・「一方,特大賞態様の発生確率,即ち特大賞態様の発生時点では,遊技者がゲーム用コインを投入することにより,設定した割数が異なっていれば勿論のこと,設定した割数が同一でも各ゲーム機1毎に変化させる。例えばゲーム機1の電気的制御装置15に設定した割数に基づいて1日30回の特大賞態様がランダムに発生する様にプログラムしたとすると,開店後遊技者の1個目の遊技用コインを投入することにより第1回目の特大賞態様の発生時点を修正し,2個目の遊技用コイン投入により第2回目の特大賞態様の発生時点を修正する。この様にすると,遊技店の開店後,30個の遊技用コインが投入されると,1日分の30回の特大賞態様発生時点が全て修正されることになる。」(【0029】)
・「この実施例のように様に特大賞態様の個々の発生時点を予めプログラムされた割数に基づく設定時に対して加減算することにより修正し,例えば30回の特大賞態様の発生時を開店後,遊技者が30回のゲームを行うことにより個々に修正すれば,割数を同一に設定した複数のゲーム機1であっても,各ゲーム機1の特大賞態様の発生時点が個々に異なることになり,特に長時間の遊技者に特大賞態様の発生時点を悟られることがない。そして,通常賞態様の発生状態の調整及び特大賞態様の発生確率の修正は,各ゲーム機1が備えている電気的制御装置15が処理する。」(【0033】)
・「そして,遊技店の開店後において遊技者が適正コインを投入口2に投入すると,コイン検出器2′からの信号がカウンタ23を介して割数演算回路17及び両比較回路20,21に与えられると共に,レジスタ24に供給される。コイン検出器2′からの信号で割数演算回路17は出力を発信して,第1比較回路20,第2比較回路21に入力を与える。」(【0035】)
・「これに対し,入賞態様判定回路34が各センサ33_(1),33_(2),33_(3)からの入力により通常賞態様が発生していると判定すれば,・・・通常賞態様の発生の難易に応じた数の賞コインはコインカウンタ38が計数し,計数した信号がカウンタ36に減算値として与えられ,又,カウンタ39を介して割数演算回路17に与えられる。割数演算回路17は,各カウンタ23,39からの信号を比較して入賞率を計算し,制御発生における通常賞態様の発生確率を制御する。」(【0042】)
・「即ち,通常賞態様の発生確率は,第2比較回路21からの停止位置制御信号に基づいて制御する。制御が必要な場合には,各ストップスイッチ11_(1),11_(2),11_(3)の操作タイミングに対し,各停止作動源32_(1),32_(2),32_(3)の作動タイミングを微小時間だけ遅延させることにより,各回転体6_(1),6_(2),6_(3)の停止位置を制御する。勿論,制御の必要がない場合には,各ストップスイッチ11_(1),11_(2),11_(3)の操作と各停止作動源32_(1),32_(2),32_(3)の作動タイミングを一致させれば,通常賞態様は自然発生する。」(【0043】)
・「特大賞態様における特別ゲームは,コインを1枚投入してゲームした結果,特大賞態様が発生すれば1回,コインを2枚投入した場合は2回,コインを3枚投入した場合は3回宛行うことができる。」(【0046】)
・「この特別ゲームは特別ゲーム処理回路40がゲーム保持回路26,ストップ処理回路22,入賞態様判定回路34を作動状態にすることにより発生し,ゲーム保持回路26により駆動部28が駆動して各回転体6_(1),6_(2),6_(3)が高速回転する。この状態で遊技者が各ストップスイッチ11_(1),11_(2),11_(3)を操作すると,ストップ処理回路22,ドライバ31を介して各停止作動源32_(1),32_(2),32_(3)が作動し,各回転部5_(1),5_(2),5_(3)の回転体6_(1),6_(2),6_(3)が個々に止まる。」(【0047】)
・「各回転体が止まって各指示部6_(1)′,6_(2)′,6_(3)′が各表示部7_(1),7_(2),7_(3)のいずれかを指すと,各センサ33_(1),33_(2),33_(3)が位置を検出し,各センサ33_(1),33_(2),33_(3)からの入力により入力態様判定回路34が第2賞態様を判定して得点決定回路35に賞コイン枚数を決定させ,コイン枚数をカウンタ36に与えて駆動源13を駆動させる。」(【0048】)
・「駆動源13が駆動すると,賞コインが遊技者に排出され,このコイン数をコインカウンタ38が検出してカウンタ36,39に伝える。カウンタ36はコインカウンタ38からの信号を減算信号として受入れて得点決定回路35からの設定信号を減算し,カウンタ39はコインカウンタ38からの信号を割数演算回路17に供給する。そして,カウンタ36が帰零するとゲーム保持回路26,ストップ処理回路22,入賞態様判定回路34,得点決定回路35等をクリヤして再度ゲームを行える様にしたり,特別ゲームが2回以上に設定されていれば再び特別ゲームを行える状態にする。」(【0049】)
・「この様に本実施例はゲーム機1において通常賞態様と特大賞態様とを設定し,又,予め外部操作により賞態様が発生する確率を設定して第1賞態様発生メモリ回路19及び第2賞態様発生メモリ回路18に記憶させ,設定された確率に基づいて通常賞態様,特大賞態様の発生状態を制御する。また,本実施例は,遊技者が投入するゲーム用コイン数と賞として排出するコイン数とをカウンタを介して割数演算回路17に供給し,設定された割数と上記両コイン数による割数とが大きく変ると,賞態様の発生状態を変えて両割数の値を近づける。又,遊技者が投入するコインにより特大賞態様の発生時点を不規則にする。」(【0050】)

甲第5号証には,以下の事項が記載されている。
・「本発明は上述の問題点に鑑みてなされたもので,入賞が時間的にかたよることなく,入賞発生がある期間毎に均等化されるようにしたスロツトマシンを提供することを目的とする。このような本発明スロツトマシンは,マイクロコンピユータの管制のもとに,ゲーム実行回数と入賞発生の回数を積算して記憶するそれぞれの記憶手段を設け,所定ゲーム回数毎に積算された入賞発生回数を予め設定された標準入賞回数とを比較し,この比較出力により入賞の出現を調整できるようにしたことを特徴とするものである。」(第2頁左上欄第12行?右上欄第2行)
・「すなわち,前記マイクロコンピユータ30はゲームが1回実行される毎にゲーム数カウンタ50にアツプ信号を出力してゲーム数カウンタ50はこれを積算記憶し,また前記判定による入賞の度毎に入賞カウンタ51にアツプ信号を出力して入賞カウンタ51はこれを積算記憶する。」(第2頁右下欄第5?10行)
・「このコンパレータ55の作動は,入賞カウンタ51に積算記憶されたカウント値(リミット値内での入賞回数)と標準入賞回数と標準入賞回数が設定された設定手段54の値とを比較し,その大小信号をマイクロコンピュータ30に出力する。この信号を受けたマイクロコンピユータ30は,次回以降のゲーム処理においてパルスモータ16ないし18へのパルス数の制御によつて“入賞→はずれ”あるいは“はずれ→入賞”の制御を行なう。」(第3頁左上欄第1?9行)
・「ゲーム終了時には常にゲーム数カウンタをアツプし,入賞の場合は入賞カウンタをアツプする。この後に,ゲーム数カウンタとリミツト値との比較を行ない,一致した場合に入賞カウンタと標準入賞数とを比較する。」(第3頁右上欄第10?14行)
・「なお,上述の実施例において用いられているゲーム数カウンタ50に代え,ゲーム毎に投入されるメダルの枚数を積算記憶するメダル数カウンタを用いて,ここから得られるメダル枚数カウント値をゲーム数カウント値としてもよい。」(第3頁左下欄第1?5行)

甲第6号証には,以下の事項が記載されている。
・「一方,予定停止図柄が左=中=右となっている場合には制御はS74に進むが,S74においては大当りフラグがセットされ,さらに大当りインタバルタイマをセットする処理が行なわれる。大当りインタバルタイマは,たとえば4秒程度の時間を計時するものであり,大当りが発生することに伴う遊技者の期待感を盛上げるためのものである。大当りフラグは,他の処理においてこのフラグを参照することにより,大当り制御を行なうか否かを判別するためのものである。S74の後制御はS75に進み,はずれの場合と同様に右図柄停止フラグがクリアされ,さらにリーチフラグがクリアされてサブルーチンプログラムが終了する。図6,7,8に示されたフローチャートによるプログラムが,制御手段に対応する。」(【0059】)

甲第7号証には,以下の事項が記載されている。
・「ドアパネル20には3個の窓21が設けられており,この窓2lを通して本体10内で回転される3個のリールを各々観察することができる。」(第3頁左上欄第10?13行)
・「遊技者が1?3個のメダルを投入してスタートレバー26を操作すると,本体10内で3個のリールが一斉に回転し,一定時間が経過してストップ操作が有効化されると,ストップランプ27が点灯してストップボタン25の操作が有効化されたことを表示する。」(第3頁左上欄第15?20行)
・「各窓21A?21Cからは,各リールのシンボルマークSが各々3個ずつ観察されるようになっている。」(第3頁左上欄第11?13行)
・「ゲーム開始後,例えばスタートレバー操作後の所定のタイミング信号(この発生時点で各リールが定常回転に達しているのが望ましい)により,その時点で乱数値RAM80に設定された乱数値をそのゲームの乱数値として決定する。こうして決定された乱数値は,第9図のフローチャートに従い,後述する入賞確率テーブルと照合され,大ヒットに該当する数値であれば大ヒットリクエスト信号の発生,中ヒットに該当する数値であれば中ヒットリクエスト信号の発生というように,小ヒットまでの判断処理がなされ,いずれのヒットリクエスト信号が発生されたか,あるいはヒットリクエストなしかがチェックされる。」(第5頁左上欄第18行?右上欄第11行)
・「ストップボタンが押されてから限られた時間内にリールを停止させ,しかも可能なかぎりヒットリクエストに応じたシンボルマークの組み合わせでリールを停止させるようにする。まず,ストップボタンの操作後,シンボルマークが例えば4個分移動するまでの間にリールを停止させるようにする。そして,ストップボタンが押された時点でのリールの位置から,これに後続しているシンボルマーク4個までの計5個のシンボルマークが何であるかをチェックする。このようにシンボルマークをチェックし,すでにセットアップされているヒットリクエストを満足するシンボルマークの組み合わせを得るために必要なシンボルマークがその範囲内にあれば,そこでリールを停止させる。なお,このような処理は各リールについて行われるのはもちろんである。」(第6頁左下欄第6行?右上欄第2行)

(2)甲1発明について
甲第1号証の上記記載事項を参酌すれば,甲第1号証には以下の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「遊技者が希望する賭け数分に対応した回数だけ取込ボタン24aを押すと,その押した回数に対応した賭け数の球が取り込まれてスタート操作用把手94中のランプが点灯し,遊技者がスタート操作用把手94を握ってスタート装置90を操作すると,内部の3つの可変表示ドラムが回転を開始して,それに伴って可変表示窓10b,10c,10d中の表示の変化が開始され,所定時間経過すると,ストップ表示部15a,15b,15c中のランプが点灯し,さらに所定時間が経過すると,左,中,右の順に可変表示ドラムが停止されて可変表示窓10b,10c,10d中の表示が確定され,遊技者が上記操作を繰り返すことによって次々とゲームが行なわれるが,そのゲームの結果,停止時における可変表示窓10b,10c,10d中の表示の組合せがスコア表示部10fに表示された賞態様(役)のいずれかと一致すると,その賞態様(役)に応じた数の賞球が実球で上皿71又は下皿80中に排出されるとともに,特に,表示の組合せが“ビッグチャンス”を発生させる表示の組合せ(「7,7,7」の組合せ)となったときには,“ビッグチャンス”が発生して,しかる後,“ビッグチャンスゲーム”に移行される遊技機であって,
ステップS110におけるボーナス判定処理の結果として合格したと判定したときにはステップS118でボーナスフラグ成立の処理を行ってから,また,ステップS130における小役判定の結果として合格したと判定したときにはステップS134で小役フラグの成立処理を行ってから,可変表示ドラム667,677,687の停止制御後,ステップS142では役が確定したか否かを判定し役が確定したときにはステップS144でその役の確定分に対して球の払い出し処理を行うものであり,
前記ビッグチャンスのゲームは,可変表示ゲームの結果としてビッグチャンスを発生させる表示態様が成立したときに遊技者に賞球獲得の大きなチャンスを与えるために行なわれるゲームで,このビッグチャンスのゲーム時には,通常ゲーム時に比べて小役発生の確率がアップされるとともに,ボーナスゲーム発生の可能性が生ずるものであり,
小役は“俵の絵”が3つ揃ったとき(4),“亀の絵”が3つ揃ったとき(5),左と中の表示が“亀の絵”で右の表示が“かぶとの絵”のとき(6),“鶴の絵”が3つ揃ったとき(7),左と中の表示が“鶴の絵”で右の表示が“かぶとの絵”のとき(8),“鼓の絵”が3つ揃ったとき(9),左と中の表示が“鼓の絵”の表示であるとき(10),左と中の表示が“かぶとの絵”の表示であるとき(11),左の表示が“鼓の絵”の表示であるとき(12)等に発生し,(4)?(6)の小役のときの賞球数は,例えば75個,(7)又は(8)の小役のときの賞球数は,例えば50個,(9)又は(8)の小役のときの賞球数は,例えば,40個,(11)の小役のときの賞球数は,例えば25個,(12)の小役のときの賞球数は,例えば10個である遊技機。」

(3)対比
甲1発明の「賭け数」は本件特許発明1の「賭数」に相当し,以下同様に,「ゲーム」は「1ゲーム」に,「“ビッグチャンス”を発生させる表示」及び「7」は「所定のビッグボーナス識別情報」に,「ビッグチャンス」は「ビッグボーナス」に,「ビッグチャンスゲーム」は「ビッグボーナス遊技状態」に,「通常ゲーム」は「通常遊技状態」に,「球」及び「賞球」は「有価価値」に,それぞれ相当する。
また,「7」,「俵の絵」等の「可変表示窓10b,10c,10d中の表示」は「複数種類の識別情報」に相当する。
そして、甲1発明について,以下のことがいえる。
ア.「遊技者が希望する賭け数分に対応した回数だけ取込ボタン24aを押すと,その押した回数に対応した賭け数の球が取り込まれて」ゲームが行われるものであるから,甲1発明は,本件特許発明1の「遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能」及び「前記1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数である賭数を入力するための賭数入力手段」に相当する構成を実質的に具備するものである。
イ.「内部の3つの可変表示ドラムが回転を開始して,それに伴って可変表示窓10b,10c,10d中の表示の変化が開始され,・・・所定時間が経過すると,左,中,右の順に可変表示ドラムが停止されて可変表示窓10b,10c,10d中の表示が確定され」るものであり,「表示」として「“ビッグチャンス”を発生させる表示」を含むから,甲1発明は,本件特許発明1の「所定のビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置」に相当する構成を実質的に具備し,その可変表示装置を制御する手段すなわち「前記可変表示装置を制御する手段」を当然具備するものである。
ウ.甲1発明は,「左,中,右の順に可変表示ドラムが停止されて可変表示窓10b,10c,10d中の表示が確定され,遊技者が上記操作を繰り返すことによって次々とゲームが行なわれる」ものであるから,「可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了」するものといえる。更に,甲1発明は,「そのゲームの結果,停止時における可変表示窓10b,10c,10d中の表示の組合せがスコア表示部10fに表示された賞態様(役)のいずれかと一致すると,その賞態様(役)に応じた数の賞球が実球で上皿71又は下皿80中に排出される」ものであるから,「可変表示装置の表示結果が所定の表示態様となった場合に所定の入賞が発生する」ものといえる。
そうすると,甲1発明は,本件特許発明1の「該可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置の表示結果が所定の表示態様となった場合に所定の入賞が発生する遊技機」に相当する構成を実質的に具備するものである。
エ.「ビッグチャンスのゲームは,可変表示ゲームの結果としてビッグチャンスを発生させる表示態様が成立したときに遊技者に賞球獲得の大きなチャンスを与えるために行なわれるゲームで,このビッグチャンスのゲーム時には,通常ゲーム時に比べて小役発生の確率がアップされる」ものであるから,甲1発明は,「遊技者にとって特に有利な遊技状態であるビッグボーナス遊技状態」を具備するものであり,甲1発明の「通常のゲーム」においてはビッグチャンスのゲーム時よりも「低い所定の範囲の払出比率で遊技が行なわれる」ことは明らかである。
そうすると,甲1発明は,本件特許発明1の「前記遊技機は,遊技者にとって特に有利な遊技状態であるビッグボーナス遊技状態と,前記ビッグボーナス遊技状態よりも低い所定の範囲の払出比率で遊技が行なわれる通常遊技状態とを有し,」に相当する構成を実質的に具備するものである。
オ.甲1発明は,「表示の組合せが“ビッグチャンス”を発生させる表示の組合せ(「7,7,7」の組合せ)となったときには,“ビッグチャンス”が発生して,しかる後,“ビッグチャンスゲーム”に移行される」ものであり,そのような制御を行う手段を当然具備するものであるから,本件特許発明1の「前記可変表示装置により前記ビッグボーナス識別情報が導出表示されることにより,前記ビッグボーナス遊技状態に制御可能な遊技制御手段」に相当する構成を実質的に具備するものである。
カ.甲1発明は,「ステップS110におけるボーナス判定処理の結果として合格したと判定したときにはステップS118でボーナスフラグ成立の処理」及び「ステップS130における小役判定の結果として合格したと判定したときにはステップS134で小役フラグの成立処理」を行うものであるが,ここで,本件出願時の技術常識(参考として甲第6号証参照)から「フラグを成立」は入賞の発生を許容することを意味していることは明らかであるから,甲1発明は,本件特許発明1の「前記入賞の発生を許容するか否かを,決定する」に相当する構成を実質的に具備し,そのための手段すなわち「決定手段」も当然に具備するものである。
キ.甲1発明は,「可変表示ドラム667,677,687の停止制御後,・・・役が確定したか否かを判定」するものであるが,「そのゲームの結果,停止時における可変表示窓10b,10c,10d中の表示の組合せがスコア表示部10fに表示された賞態様(役)のいずれかと一致すると,」との構成からみて,本件特許発明1の「前記可変表示装置の表示結果を判定する」に相当する構成を実質的に具備し,そのための手段すなわち「判定手段」も当然に具備するものである。
ク.甲1発明は,「そのゲームの結果,停止時における可変表示窓10b,10c,10d中の表示の組合せがスコア表示部10fに表示された賞態様(役)のいずれかと一致すると,その賞態様(役)に応じた数の賞球が実球で上皿71又は下皿80中に排出される」ものであり,「小役は“俵の絵”が3つ揃ったとき(4),“亀の絵”が3つ揃ったとき(5),左と中の表示が“亀の絵”で右の表示が“かぶとの絵”のとき(6),“鶴の絵”が3つ揃ったとき(7),左と中の表示が“鶴の絵”で右の表示が“かぶとの絵”のとき(8),“鼓の絵”が3つ揃ったとき(9),左と中の表示が“鼓の絵”の表示であるとき(10),左と中の表示が“かぶとの絵”の表示であるとき(11),左の表示が“鼓の絵”の表示であるとき(12)等に発生し,(4)?(6)の小役のときの賞球数は,例えば75個,(7)又は(8)の小役のときの賞球数は,例えば50個,(9)又は(8)の小役のときの賞球数は,例えば,40個,(11)の小役のときの賞球数は,例えば25個,(12)の小役のときの賞球数は,例えば10個である」。そして,「“俵の絵”が3つ揃ったとき」等は「予め複数種類定められた小役入賞の発生のための予め複数種類定められた特定の表示態様」ということができるから,本件特許発明1の「前記可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた小役入賞の発生のための予め複数種類定められた特定の表示態様のうちのいずれかとなった場合に特定の表示態様の種類に応じて予め定められた数の有価価値を付与する」に相当する構成を実質的に具備するものであり,そのための手段すなわち「価値付与手段」も当然に具備するものである。
ケ.甲1発明は,「ビッグチャンスのゲーム時には,通常ゲーム時に比べて小役発生の確率がアップされるとともに,ボーナスゲーム発生の可能性が生ずるもの」であるから,「確率制御手段は,ビッグボーナス遊技状態となった場合に,可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となることを許容する旨が決定手段により決定される確率を向上させる」点で,本件特許発明1と共通している。

よって,本件特許発明1と甲1発明とは
「遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり,所定のビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を含み,該可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置の表示結果が所定の表示態様となった場合に所定の入賞が発生する遊技機であって,
前記遊技機は,遊技者にとって特に有利な遊技状態であるビッグボーナス遊技状態と,前記ビッグボーナス遊技状態よりも低い所定の範囲の払出比率で遊技が行なわれる通常遊技状態とを有し,
前記1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数である賭数を入力するための賭数入力手段と,
前記可変表示装置により前記ビッグボーナス識別情報が導出表示されることにより,前記ビッグボーナス遊技状態に制御可能な遊技制御手段と,
前記入賞の発生を許容するか否かを,決定する決定手段と,
前記可変表示装置を制御する手段と,
前記可変表示装置の表示結果を判定する判定手段と,
前記可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた小役入賞の発生のための予め複数種類定められた特定の表示態様のうちのいずれかとなった場合に特定の表示態様の種類に応じて予め定められた数の有価価値を付与する価値付与手段と,
確率制御手段とを含み,
確率制御手段は,ビッグボーナス遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となることを許容する旨が決定手段により決定される確率を向上させる,遊技機。」の点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]
「前記入賞の発生を許容するか否かを,決定する決定手段」が,本件特許発明1では「ランダム値を用いて所定の演算を行った演算結果と所定の当選値とを比較することにより」決定しているのに対し,甲1発明ではどのように決定しているか不明である点。
[相違点2]
可変表示制御手段が,本件特許発明1では「前記決定手段の決定内容に基づいた制御が可能な」ものであるのに対し,甲1発明ではそのような構成を有するか不明な点。
[相違点3]
「確率制御手段」が,本件特許発明1では「前記通常遊技状態において,前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し,該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が,1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を制御」するものであるのに対し,甲1発明ではそのような構成でない点。
[相違点4]
「確率制御手段」が,本件特許発明1では「前記比較結果に基づいて,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとなることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率も併せて制御することにより,前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを前記標準値との比較によって変動させて前記通常遊技状態を前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えて前記通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内に保つための」ものであるのに対し,甲1発明ではそのような構成でない点。
[相違点5]
「確率制御手段」は,本件特許発明1では「前記小役高確率状態から前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させ,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させる」のに対し,甲1発明では「ビッグボーナス遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となることを許容する旨が決定手段により決定される確率を向上させる」点。

(4)相違点についての検討
[相違点1]について
甲第7号証には「例えばスタートレバー操作後の所定のタイミング信号により,その時点で・・・そのゲームの乱数値として決定する。こうして決定された乱数値は,・・・後述する入賞確率テーブルと照合され,大ヒットに該当する数値であれば大ヒットリクエスト信号の発生,中ヒットに該当する数値であれば中ヒットリクエスト信号の発生というように,小ヒットまでの判断処理がなされ,いずれのヒットリクエスト信号が発生されたか,あるいはヒットリクエストなしかがチェックされる。」(第5頁左上欄第18行?右上欄第11行)と記載されている。また,周知例として提出された甲第15証(実開昭62-84484号のマイクロフィルム)には,「スタート信号発生回路32からのスタート信号によってサンプリング回路49が作動し,乱数発生回路50からの乱数値をランダムなタイミングでサンプリングする。判定回路51は,こうしてサンプリングされた乱数値を確率テーブル52と照合し,その乱数値がどのような入賞に該当する値であるか判定する。」(第9頁第15?18行)及び「確率テーブル52は,一定の数値範囲内の乱数列を例えば4つの領域に分割して,各々の領域ごとに大ヒット,中ヒット,小ヒット,さらに外れの割付が行われている。」(第10頁第1?4行)と記載されている。
所定の契機で取得されたランダム値(乱数値)と当選値を比較して入賞の発生を許容するか否かを決定することは,甲第7号証,甲第15号証に示されるように従来周知の技術手段とは認められるものの,当該従来周知の技術手段はランダム値を用いて所定の演算を行うものではない。また,ランダム値を用いて所定の演算を行う点は請求人の提出した他の各甲号証にも記載がないものであって,相違点1に係る「ランダム値を用いて所定の演算を行った演算結果と所定の当選値とを比較する」を従来周知の技術手段とすることはできない。
請求人は,当選を決定するために,ランダムな乱数値を用いることは,本件特許出願前の周知の慣用手段に過ぎず,その乱数の処理方法として,演算,比較,読み取り,判定などの手段を用いることは,設計上の選択的事項である旨主張している(口頭審理陳述要領書第10頁第10?14行)。しかし,所定の契機で取得されたランダム値(乱数値)と当選値を比較して入賞の発生を許容するか否かを決定することが従来周知の技術手段であることは前述のとおりであり,比較,読み取り(「取得」),判定(「入賞の発生を許容するか否かを決定」)などの手段を用いることは想到容易ということができるとしても,当該周知技術によって「演算」を行う手段を用いることを設計上の選択的事項として想到容易とすることはできない。
以上のとおりであるから,相違点1に係る本件特許発明1の構成を当業者が容易になし得たとすることはできない。

[相違点2]について
甲第7号証の「ゲーム開始後,例えばスタートレバー操作後の所定のタイミング信号(この発生時点で各リールが定常回転に達しているのが望ましい)により,その時点で乱数値RAM80に設定された乱数値をそのゲームの乱数値として決定する。こうして決定された乱数値は,第9図のフローチャートに従い,後述する入賞確率テーブルと照合され,大ヒットに該当する数値であれば大ヒットリクエスト信号の発生,中ヒットに該当する数値であれば中ヒットリクエスト信号の発生というように,小ヒットまでの判断処理がなされ,いずれのヒットリクエスト信号が発生されたか,あるいはヒットリクエストなしかがチェックされる。」(第5頁左上欄第18行?右上欄第11行)及び「ストップボタンが押されてから限られた時間内にリールを停止させ,しかも可能なかぎりヒットリクエストに応じたシンボルマークの組み合わせでリールを停止させるようにする。まず,ストップボタンの操作後,シンボルマークが例えば4個分移動するまでの間にリールを停止させるようにする。そして,ストップボタンが押された時点でのリールの位置から,これに後続しているシンボルマーク4個までの計5個のシンボルマークが何であるかをチェックする.このようにシンボルマークをチェックし,すでにセットアップされているヒットリクエストを満足するシンボルマークの組み合わせを得るために必要なシンボルマークがその範囲内にあれば,そこでリールを停止させる.なお,このような処理は各リールについて行われるのはもちろんである。」第6頁左下欄第6行?右上欄第2行)の記載によれば,甲第7号証には,遊技機において,乱数値に基づいて決定されてセットアップされているヒットリクエストを満足するシンボルマークの組み合わせを得るために必要なシンボルマークが,ストップボタンが押された時点でのリールの位置から所定の範囲内にあれば,そこでリールを停止させることが記載されており,これによれば,決定手段の決定内容に基づいて可変表示装置を制御するものということができる。
そうすると,甲第7号証の遊技機は甲1発明と同一の技術分野に属するものであり,甲1発明において甲第7号証に記載された技術的事項を適用し,相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは,当業者であれば想到容易である。

[相違点3]について
甲第4号証は「遊技により投入したコイン枚数の積算値と,賞として排出したコイン枚数の積算値とを電気的制御装置15が記憶して割数を演算し,この演算割数と設定した割数とを比較する」(【0027】)ものであるが,ここで,「遊技により投入したコイン枚数」,「賞として排出したコイン枚数」,「(電気的制御装置15が記憶して演算する)演算割数」及び「設定した割数」は,本件特許発明1の「前記賭数入力手段により入力された入力数」,「前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数」,「価値付与状況」及び「予め定められた標準値」に相当することは明らかであるから,甲第4号証には「前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較」することが実質的に記載されている。
また,「高得点の賞態様」は,高い得点であればよく,最大の得点を必ずしも意味するものではないが,高得点の典型的なものは最大の得点であるから,甲第4号証に接した当業者にとって「高得点の賞態様」として最大の得点が想起されることは明らかである。そうすると,甲第4号証の「高得点の賞態様」は,本件特許発明1の「1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様」に相当する。更に,「遊技による演算割数が設定した割数より低い場合には,通常賞態様において高得点の賞態様が発生し易い様にして」(【0028】)及び「通常賞態様は,その発生の難易に応じて複数の利益を付与するが,電気的制御装置15に設定した確率で発生する。」(【0020】)との記載からみて,甲第4号証には「該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が,1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を制御」することが実質的に記載されている。
更に,「特大賞態様は通常賞態様に比較して多数枚のコインを遊技者に与えることになり,遊技者にとって有利」(【0019】)なものであるから,「特大賞態様」における特別ゲームは本件特許発明の「ビッグボーナス遊技状態」に相当し,「特大賞態様」における特別ゲームとなっていない遊技状態は本件特許発明1の「通常遊技状態」に相当するものであり,上記のように確率が制御されるのは特別ゲームとなっていない遊技状態すなわち「通常遊技状態」においてである。
以上によれば,甲第4号証には,本件特許発明1の「前記通常遊技状態において,前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し,該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が,1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を制御し」の構成に相当する技術的事項が実質的に記載されていると認められる。
したがって,甲第4号証の遊技媒体(コイン)を使用して遊技を行うゲーム機は甲1発明と同じ又は極めて近接した技術分野に属するものであり,甲1発明において甲第4号証に記載された技術的事項を適用し,相違点3に係る本件特許発明1の構成とすることは,当業者にとって想到容易である。

[相違点4]について
ア.甲第4号証の「遊技により投入したコイン枚数の積算値と,賞として排出したコイン枚数の積算値とを電気的制御装置15が記憶して割数を演算し,この演算割数と設定した割数とを比較する。そして,比較した結果,遊技による演算割数が設定した割数より高い場合には,電気的制御装置15が遊技者の行う各ゲームにおいて各回転体6_(1),6_(2),6_(3)の停止位置を制御し,通常賞態様の高得点の賞態様や特大賞態様の発生,或いは特大賞態様の発生だけを制御して,演算割数が設定割数の例えば1割以内の誤差となるまで継続する。」(【0027】)及び「遊技による演算割数が設定した割数より低い場合には,電気的制御装置15が遊技者のゲーム状態を制御し,特に通常賞態様において高得点の賞態様が発生し易い様にして,演算割数が設定した割数の1割以内の誤差となる様にする。」(【0028】)との記載によれば,甲第4号証における「通常遊技状態」は,少なくとも「通常賞態様において高得点の賞態様が発生し易い」状態と,そうでない状態があり,このような状態では「通常賞態様は,その発生の難易に応じて複数の利益を付与するが,電気的制御装置15に設定した確率で発生する。」(【0020】)との記載から「確率」が異なっているものと認められる。そして,「通常賞態様」は本件特許発明1の「小役」に相当することは明らかであるから,「通常賞態様において高得点の賞態様が発生し易い」状態及びそうでない状態はそれぞれ「小役高確率状態」及び「小役低確率状態」ということができ,この2つの状態の切り換えは,演算割数と設定割数との比較結果に基づいて行われるものであって,演算割数を設定割数の例えば1割以内に保つものである。
そうすると,甲第4号証には,相違点4のうち,「小役入賞の発生確率を前記標準値との比較によって変動させて前記通常遊技状態を前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えて価値付与状況を所定範囲内に保つ」ことが実質的に記載されている。
イ.小役入賞の発生確率を変更するのに際し,甲第4号証においては「高得点の賞態様が発生し易い様に」確率を制御しており,この「高得点の賞態様」が「1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれか」も含むものか不明である。
しかし,一般に遊技機において,「1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様」の表示結果による小役(以下,「最大小役」という。)と,これ以外の小役(以下,「他の小役」という。)は,遊技者への払出枚数が異なる点をさておき,技術的に格別の差異はないから,遊技者への有価価値付与と遊技店の利益を考慮して,一単位(例,一営業日,一定のゲーム数等)における各小役の発生割合とそれによる総払出枚数を設計すればよいものである。
そうすると,小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えるため小役入賞の発生確率を変更するに際し,確率を変更する対象として「最大小役」のみに限定すべき理由もなく,「他の小役」の発生確率を変更することに何らの技術的困難性もないから,「他の小役」の発生確率を併せて変更することを採用するか否かは設計上の事項にすぎないというべきである。
なお,小役低確率状態と小役高確率状態との切換えの時ではないが,甲第2号証及び甲第3号証では,「最大小役」の発生確率を変更する時に「他の小役」の発生確率を変更しており,「最大小役」の発生確率を変更する時に「他の小役」の発生確率を変更することが従来周知であって設計事項であることを裏付けている。
ウ.甲第4号証においては,【0035】【0042】【0046】?【0049】の記載からみて,賞態様の発生確率を制御するための割数を算出するデータとしての投入コイン数及び払出コイン数は,コインが投入されたゲーム及びコインが払出されたゲームがどのような遊技状態(特別ゲームか否か)か区別することなく,積算しているものと認められる。そして,当該割数に基づいて,「遊技による演算割数が設定した割数より高い場合には,電気的制御装置15が遊技者の行う各ゲームにおいて各回転体6_(1),6_(2),6_(3)の停止位置を制御し,通常賞態様の高得点の賞態様や特大賞態様の発生,或いは特大賞態様の発生だけを制御して」(【0027】)又は「遊技による演算割数が設定した割数より低い場合には,電気的制御装置15が遊技者のゲーム状態を制御し,特に通常賞態様において高得点の賞態様が発生し易い様にして」(【0028】),演算割数を所定範囲内に保つものである。そうすると,甲第4号証においては,遊技状態に関係なく,割数すなわち価値付与状況を所定範囲内に保っているといえる。
ここで,「通常賞態様の高得点の賞態様や特大賞態様の発生,或いは特大賞態様の発生だけを制御」(【0027】)について検討すると,特大賞態様の発生は,「この実施例のように様に特大賞態様の個々の発生時点を予めプログラムされた割数に基づく設定時に対して加減算することにより修正」(【0033】)と記載されているように,修正はされるものの特大賞態様の発生時点は予め決定されるものであり,ランダム値によるものではないと解される。そして,上記のように「遊技による演算割数が設定した割数より高い場合」に特大賞態様の発生(だけ)を制御する時に具体的にどのように制御するかは不明であるが,高くなっている演算割数を低くするため特大賞態様の発生を制御するものであるから,特大賞態様の発生状況を変動させている点において甲第4号証は「小役入賞の発生確率のみ」を変動させて価値付与状況(割数)を所定の範囲内にするという本件特許発明1と技術思想を異にするものである。
なお,仮に,「特大賞態様の発生の制御」が特大賞態様の発生確率の制御を意味するならば,甲第4号証は,特大賞態様の発生確率の変動を行うものとなるから,「小役入賞の発生確率のみ」を変動させているということはできない。
そうすると,本件特許発明1の「前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを・・・変動させ」る点及び「前記通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内に保つ」点は,甲第4号証には記載されておらず,かつ,設計的事項ということもできない。
以上のとおりであるから,相違点4に係る本件特許発明1の構成を想到容易とすることはできない。
また,甲第4号証以外の請求人提出の各甲号証によっても想到容易とすることはできない。
エ.以上によれば,相違点4に係る本件特許発明1の構成は,当業者にとって想到容易ということができない。
そして,この点により,「本実施の形態では,小役発生確率についてのみ標準値との比較によって制御するようにしたので,通常ゲームにおける払出率を所定範囲内に保ちながら,ビッグボーナスやレギュラーボーナスの発生についてはランダム値Rの抽出タイミングと設定値によって制御されることとなり,高設定でもボーナス発生回数が多いとは限らず,また低設定でも少ないとは限らなくなって遊技者に対しゲームの興趣を持続させることのできる遊技機とすることができる。」(【0086】)という 訂正明細書記載の作用効果を奏するものである。

[相違点5]について
甲第2号証において,「スイカ」の図柄が3枚揃った役は,払出枚数は15枚であって,「1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様」ということができる。そして,「チェリーバー小役確率表」には,「スイカ」の図柄が3枚揃った役となる確率は,「平常時」「3枚がけ 設定1-5」において「1/102.4」で,「ビッグ中」「3枚がけ 設定1-5」において「1/1.78」であることが記載されている。また,「ベル」の図柄が3枚揃った役は,払出枚数は8枚であって,「スイカ」の図柄が3枚揃った役より払出枚数が少ないから,「1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様」ということができる。そして,「チェリーバー小役確率表」には,「ベル」の図柄が3枚揃った役となる確率は,「平常時」「3枚がけ 設定1-5」において「1/1638」で,「ビッグ中」「3枚がけ 設定1-5」において「1/16383」であることが記載されている。
そうすると,甲第2号証には,相違点5に係る本件特許発明1の「前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させ,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させる」に相当する構成が実質的に記載されている。
しかしながら,甲第2号証において,上記のように確率を変更するのは「平常時」から「ビッグ中」になった場合であるが,「平常時」に「小役高確率状態」が存在する旨の記載あるいは示唆はない。
したがって,相違点5に係る本件特許発明1のうち「小役高確率状態からビッグボーナス遊技状態となった場合に」(確率を変更する)は,甲第2号証には記載されておらず,かつ,設計事項ということもできない。
以上のとおりであるから,相違点5に係る本件特許発明1の構成を想到容易とすることはできない。
また,甲第2号証以外の請求人提出の各甲号証によっても想到容易とすることはできない。

(5)小括
以上によれば,[相違点1],[相違点4]及び[相違点5]について想到容易とすることができないから,本件特許発明1は,甲1発明及び甲第2?5,7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできず,本件特許発明1の本件特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものでない。
また,本件特許発明2は,本件特許発明1に限定を付したものであるから,当業者が容易に想到できたものとすることはできず,本件特許発明2の本件特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものでない。
したがって,無効理由2は理由がない。

第6.むすび

以上のとおりであるから,本件特許は,無効理由1,2に理由がないから,請求人の主張及び証拠方法によっては,無効とすることができない。
審判に関する費用については,特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により,全額を請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり、所定のビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を含み、該可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置の表示結果が所定の表示態様となった場合に所定の入賞が発生する遊技機であって、
前記遊技機は、遊技者にとって特に有利な遊技状態であるビッグボーナス遊技状態と、前記ビッグボーナス遊技状態よりも低い所定の範囲の払出比率で遊技が行なわれる通常遊技状態とを有し、
前記1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数である賭数を入力するための賭数入力手段と、
前記可変表示装置により前記ビッグボーナス識別情報が導出表示されることにより、前記ビッグボーナス遊技状態に制御可能な遊技制御手段と、
前記入賞の発生を許容するか否かを、ランダム値を用いて所定の演算を行なった演算結果と所定の当選値とを比較することにより決定する決定手段と、
前記可変表示装置を制御する手段であって、前記決定手段の決定内容に基づいた制御が可能な可変表示制御手段と、
前記可変表示装置の表示結果を判定する判定手段と、
前記可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた小役入賞の発生のための予め複数種類定められた特定の表示態様のうちのいずれかとなった場合に特定の表示態様の種類に応じて予め定められた数の有価価値を付与する価値付与手段と、
前記通常遊技状態において、前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し、該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が、1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を制御し、さらに、前記比較結果に基づいて、前記可変表示装置の表示結果が、前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとなることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率も併せて制御することにより、前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを前記標準値との比較によって変動させて前記通常遊技状態を前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えて前記通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内に保つための確率制御手段とを含み、
該確率制御手段は、前記小役高確率状態から前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に、前記可変表示装置の表示結果が、前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させ、前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては、特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させることを特徴とする、遊技機。
【請求項2】前記確率制御手段は、前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に、前記可変表示装置の表示結果が、前記複数種類定められた特定の表示態様のうち、1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様とは別の所定の特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率をも向上させることを特徴とする、請求項1に記載の遊技機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スロットマシン等で代表される遊技機に関し、詳しくは、遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり、所定のビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を含み、該可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置の表示結果が所定の表示態様となった場合に所定の入賞が発生する遊技機に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の遊技機において、従来から一般的に知られているものに、たとえば、コイン等の遊技者所有の有価価値を投入して1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を遊技者が入力し、次に所定のスタート操作を行なうことにより可変表示装置が可変開始された後停止され、その可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となった場合に景品コインの払出等の所定の有価価値が遊技者に付与されて1ゲームが終了するように構成されたものがあった。また、この種の遊技機の中には、可変表示装置によりビッグボーナス識別情報が導出表示されることにより、遊技者にとって特に有利なビッグボーナス遊技状態(たとえば、ビッグボーナスゲームが提供される状態)となるものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この種の従来の遊技機においては、ビッグボーナス遊技状態中のゲームで入賞が発生した場合に遊技者に付与される有価価値の大きさが比較的小さく、遊技者の立場からしてビッグボーナス遊技状態の魅力が今一歩不足する感があった。
【0004】
本発明は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、ビッグボーナス遊技状態中のゲームで入賞が発生した場合に比較的大きな有価価値が遊技者に付与されるようにしてビッグボーナス遊技状態の魅力を向上させることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明は、遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり、所定のビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を含み、該可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置の表示結果が所定の表示態様となった場合に所定の入賞が発生する遊技機であって、
前記遊技機は、遊技者にとって特に有利な遊技状態であるビッグボーナス遊技状態と、前記ビッグボーナス遊技状態よりも低い所定の範囲の払出比率で遊技が行なわれる通常遊技状態とを有し、
前記1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数である賭数を入力するための賭数入力手段と、
前記可変表示装置により前記ビッグボーナス識別情報が導出表示されることにより、前記ビッグボーナス遊技状態に制御可能な遊技制御手段と、
前記入賞の発生を許容するか否かを、ランダム値を用いて所定の演算を行なった演算結果と所定の当選値とを比較することにより決定する決定手段と、
前記可変表示装置を制御する手段であって、前記決定手段の決定内容に基づいた制御が可能な可変表示制御手段と、
前記可変表示装置の表示結果を判定する判定手段と、
前記可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた小役入賞の発生のための予め複数種類定められた特定の表示態様のうちのいずれかとなった場合に特定の表示態様の種類に応じて予め定められた数の有価価値を付与する価値付与手段と、
前記通常遊技状態において、前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し、該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が、1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を制御し、さらに、前記比較結果に基づいて、前記可変表示装置の表示結果が、前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとなることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率も併せて制御することにより、前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを前記標準値との比較によって変動させて前記通常遊技状態を前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えて前記通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内に保つための確率制御手段とを含み、
該確率制御手段は、前記小役高確率状態から前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に、前記可変表示装置の表示結果が、前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させ、前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては、特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記確率制御手段は、前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に、前記可変表示装置の表示結果が、前記複数種類定められた特定の表示態様のうち、1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様とは別の所定の特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率をも向上させることを特徴とする。
【0009】
【作用】
請求項1に記載の本発明によれば、賭数入力手段により、1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数である賭数が入力される。前記可変表示装置により前記ビッグボーナス識別情報が導出表示されると、遊技制御手段の働きにより、前記ビッグボーナス遊技状態に制御される。決定手段の働きにより、入賞の発生を許容するか否かが、ランダム値を用いて所定の演算を行なった演算結果と所定の当選値とを比較することにより決定される。可変表示制御手段の働きにより、前記決定手段の決定内容に基づいて前記可変表示装置が制御される。判定手段の働きにより、前記可変表示装置の表示結果が判定される。価値付与手段の働きにより、可変表示制御手段により制御される可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた小役入賞の発生のための予め複数種類定められた特定の表示態様のうちのいずれかとなった場合に特定の表示態様の種類に応じて予め定められた数の有価価値が遊技者に付与される。さらに、確率制御手段の働きにより、前記通常遊技状態において、前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し、該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が、1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率が制御され、さらに、前記比較結果に基づいて、前記可変表示装置の表示結果が、前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとなることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率も併せて制御されることにより、前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを前記標準値との比較によって変動させて前記通常遊技状態が前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えられて前記通常遊技状態における価値付与状況が所定範囲内に保たれる。さらに、前記小役高確率状態から前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に、確率制御手段の働きにより、前記可変表示装置の表示結果が、前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させる制御が行なわれる。さらに、前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に、前記確率制御手段の働きにより、前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては、特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させる制御が行なわれる。
【0010】
請求項2に記載の本発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に、前記確率制御手段の働きにより、前記可変表示装置の表示結果が、1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様とは別の所定の特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率をも向上させる制御が行なわれる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係るスロットマシンの一例を示す全体正面図である。スロットマシン1の機枠1Aにはカバー部材の一例の前面枠1Bが開閉自在に設けられており、その前面枠の上方部分の前面側の所定箇所には表示窓71が設けられている。この表示窓71には、可変表示装置70(図2参照)によって可変表示される図柄等の識別情報を遊技者に視認させるための可変表示部5L、5C,5Rが設けられている。この左可変表示部5L,中可変表示部5C,右可変表示部5Rは、それぞれに上下3段に識別情報を可変表示可能な大きさに構成されている。前面枠1Bは、通常時は閉成状態で施錠されており、遊技場の係員が所定の鍵をドア開閉用鍵穴3aに挿入して操作することにより解錠されて前面枠1Bが開成可能となる。そして、前面枠1Bの開閉状態がドアスイッチ44により検出される。
【0015】
遊技者が遊技を行なう場合には、投入指示ランプ19が点灯または点滅しているときに、遊技者が価値物体の一例のコインをコイン投入口18から投入する。この投入指示ランプ19は、コインが3枚投入された時点(後述するボーナスゲームの中においては1枚投入された時点)で消灯する。遊技者がコインを投入してスタートレバー12を押圧操作すれば、可変表示装置70が可変開始されて各可変表示部5L?5Rにより複数種類の識別情報が可変表示される。次に、遊技者が各ストップボタン9L,9C,9Rを押圧操作すれば、それに対応する各可変表示部5L,5C,5Rの可変表示が停止されるように構成されている。なお、遊技者がいずれのストップボタン9L?9Rをも押圧操作しなければ、所定の時間の経過により可変表示装置70が自動的に停止制御される。この可変表示装置70が可変開始されてから停止する1回の可変停止により1ゲームが終了し、可変停止時の表示結果が後述するように特定の識別情報になれば所定の遊技価値が付与可能となる。
【0016】
後述するクレジットゲームではない通常のゲーム(コインゲーム)の場合において、遊技者が1枚のコインをコイン投入口18から投入してスタートレバー12を押圧操作すれば、可変表示部5L?5Rにおける中段の横1列の有効ライン(当りライン)が有効となる。可変表示装置70の停止時に表示される識別情報が、この中段の横1列の有効ライン上において予め定められた特定の識別情報の組合せが成立した場合に、後述するビッグボーナスゲームやボーナスゲームの開始あるいは所定枚数のコインの払出し等の所定の遊技価値の付与が可能な状態となる。一方、遊技者がコインを2枚コイン投入口18に投入した状態でスタートレバー12を押圧操作すれば、可変表示部5L?5Rにおける横3列の有効ラインが有効となり、可変表示装置70の停止時の表示結果がこの横3列の有効ラインのいずれかのライン上において特定の識別情報の組合せが成立した場合に、所定の遊技価値が付与可能な状態となる。さらに、遊技者が3枚のコインをコイン投入口18に投入した状態でスタートレバー12を押圧操作すれば、可変表示部5L?5Rにおける横3列と斜め対角線上に2列の合計5本の有効ラインが有効となり、この5本の有効ラインにおけるいずれかのライン上において特定の識別情報の組合せが成立すれば、所定の遊技価値が付与可能な状態となる。すなわち、遊技者が1枚のコインを投入してスタートレバー12を押圧操作すればいわゆる1枚賭の遊技となり、1本の有効ラインが有効となり、2枚のコインを投入してスタートレバー12を押圧操作すればいわゆる2枚賭の遊技となり、3本の有効ラインが有効となり、3枚のコインを投入してスタートボタン12を押圧操作すれば、いわゆる3枚賭の遊技となり5本の有効ラインすべてが有効となる。
【0017】
本実施の形態におけるスロットマシン1は、いわゆるクレジットゲームもできるように構成されている。クレジットゲームとは、予め大量のコインを投入して有価価値として蓄積しておき、あるいは賞品として付与されるコインを有価価値として蓄積しておき、いちいちコインを投入することなくその予め蓄積されている有価価値を使用して遊技を行なうゲームである。遊技者はゲーム切替ボタン16を1回押圧操作することにより通常のゲームからクレジットゲームに切換えることができ、さらにこのゲーム切替ボタン16を再度押圧操作すればクレジットゲームから通常のゲームに切換えることができる。クレジットゲームの場合には、合計コイン50枚分の価値を予め記憶させておくことができ、クレジット操作ボタン14を1回押圧操作することにより前述した1枚賭のゲームとなり、クレジット操作ボタン14を2回押圧することにより前述した2枚賭のゲームとなり、クレジット操作ボタンを3回押圧操作することにより前述した3枚賭のゲームとなる。なお、それぞれの賭数に対応してクレジット操作ボタンを設け、1枚賭用クレジット操作ボタンを押圧することにより1枚賭のゲームとなり、2枚賭用クレジット操作ボタンを押圧することにより2枚賭のゲームとなり、3枚賭用クレジット操作ボタンを押圧することにより3枚賭のゲームができるように構成してもよい。スタートレバー12とコイン投入口18またはクレジット操作ボタン12とにより、前記1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数である賭数を入力するための賭数入力手段が構成されている。
【0018】
図中21?23は有効ライン表示ランプであり、前述した賭数に応じて有効となる有効ラインに対応する有効ライン表示ランプのみが点灯または点滅し、どの有効ラインが有効になっているかを遊技者が認識できるように構成されている。11L,11C,11Rはそれぞれに左操作有効ランプ,中操作有効ランプ,右操作有効ランプであり、それぞれに対応するストップボタン9L,9C,9Rの押圧操作を有効に受付ける状態になった旨を点灯または点滅表示するためのものである。なお、この操作有効の報知は、ランプ表示等に加えてあるいはそれに代えて、音により報知するようにしてもよい。また、ランプ等を点滅状態から点灯状態に切換えたり、あるいは色を変えることで報知してもよい。図中25はゲーム回数表示器であり、後述するビッグボーナスゲームカウンタやボーナスゲームカウンタの値を表示し、現在実行しているビッグボーナスゲームやボーナスゲームの回数を切替表示し得るように構成されている。26はクレジット表示器であり、クレジットゲーム時における記憶されている有価価値としてのコインの枚数を表示するためのものである。27は払出数表示器であり、入賞が成立した場合に付与されるコイン枚数を表示するためのものである。なお、クレジットゲームではない通常のゲームの場合には入賞が成立した場合には所定枚数(たとえば15枚)のコインがコイン払出口29から、コイン貯留皿30に払出され、クレジットゲームの場合には記憶上限(50枚)を越えない範囲内で付与されるコイン枚数が記憶される。なお、その記憶の上限(50枚)を越える場合にはその越えるコインがコイン貯留皿30内に払出される。
【0019】
スロットマシン1の前面側における表示窓71の下方には前面パネル2が設けられている。また、後述するビッグボーナスゲームが終了してゲームオーバーとなった場合でかつ後述するゲームオーバー有りのモードになっている場合には、リセット操作を行なわない限り再びゲームの続行可能な状態にはならないのであり、そのリセット操作はリセット用鍵穴3bに所定のキーを挿入して反時計回り方向へ操作することにより行なわれる。このリセット用鍵穴3bの反時計回り方向への操作がリセットスイッチ4により検出され、その検出出力に基づいてスロットマシン1がリセットされて再びゲームが可能となる。また、図中28はスピーカであり、入賞時やビッグボーナスゲーム時、ボーナスゲーム時における効果音の発生や異常時における警報音の発生等が行なわれる。また、スロットマシン1の前面側における表示窓71の上方には、遊技効果ランプ24が複数設けられており、ビッグボーナスゲームやボーナスゲームの発生時に点灯または点滅表示される。また、図中20はゲームオーバーランプであり、スロットマシンが打止(ゲームオーバー)になったときに点灯または点滅表示される。前述したように、スタートレバー12の押圧操作以前に何枚コインがコイン投入口18から投入されたかあるいはクレジットゲームにおいてはクレジット操作ボタン14が何回押圧操作されたかによってスロットマシン1の1ゲームにおけるゲーム結果に対する賭数が決定されるのである。図中64は再ゲーム表示ランプであり、後述するように再ゲームが可能となった場合に点灯表示される。
【0020】
図2は、スロットマシンの一部内部構造を示す全体背面図である。可変表示装置70は、複数(図面では3個)のリール6L,6C,6Rを有し、それぞれのリール6L,6C,6Rにはステッピングモータからなるリール駆動モータ7L,7C,7Rが設けられており、それぞれのリール駆動モータ7L?7Rによりそれぞれのリール6L?6Rが回転,停止するように構成されている。この各リール6L?6Rの外周には、図3に示すような複数種類の図柄からなる識別情報が描かれている。そして、このリール外周に描かれていた識別情報が前記可変表示部5L?5Rにより可変表示されるように構成されている。図中8L,8C,8Rはリール位置検出センサであり、各リールの基準位置を検出するものであり、各リール6L?6Rが1回転するたびに基準位置がこのリール位置検出センサ8L?8Rにより検出されて検出出力が導出される。遊技者がストップボタン9L,9C,9Rを押圧操作すればその操作がストップスイッチ10L,10C,10Rにより検出される。遊技者がゲーム切替ボタン16を押圧操作すればその操作がゲーム切替スイッチ17により検出される。遊技者がスタートレバー12を押圧操作すればその操作がスタートスイッチ13により検出される。遊技者がクレジット操作ボタン14を押圧操作すればその操作がクレジットスイッチ15により検出される。遊技場の管理者等が所持する特定のキーを使用して確率設定用のキー操作が行なわれればキースイッチ43によりそれが検出され、その状態でドアスイッチ44(たとえばマイクロスイッチで構成されている)が能動化され、遊技場の管理者等がその能動化されたドアスイッチ44を操作することにより入賞確率を変更設定することが可能となるように構成されている。図中24は遊技効果ランプであり、25はゲーム回数表示器であり、26はクレジット表示器であり、27は払出数表示器であり、21?23は有効ライン表示ランプである。なお、払出数表示器27は、後述するようにエラーが発生したときのエラー原因を特定するエラーコードも表示する。
【0021】
コイン投入口18から投入されたコインはコイン径路31を通ってコインセレクタ32に誘導される。コインセレクタ32では、投入されたコインが適正なコインかまたは偽コイン等の不適正なコインかを判別し、不適正なコインである場合には流路切換ソレノイド33を励磁して流路を切換え、その不適正コインを返却径路34を通してコイン払出口29(図1参照)から返却する。一方、投入コインが適正なコインである場合にはその適正コインをコイン取込径路35側に誘導してそのコインをコイン貯留タンク37に取込んで貯留する。コイン取込径路35には賭数入力検出手段の一例の投入コインセンサ36が設けられており、このコイン取込径路35を通過するコインがこの投入コインセンサ36により検出される。一方、クレジットゲームではない通常ゲーム時において3枚を越えるコインが投入された場合またクレジットゲーム時においてクレジット数が50に達している場合には流路切換ソレノイド33が励磁されて流路が切換わりその4枚目以降の投入コインが返却径路34を通って返却される。
【0022】
コインホッパー37が満タンとなり、それ以上コインを貯留できなくなった余剰コインは、余剰コイン誘導径路40を通って余剰コイン貯留タンク41に貯留される。この余剰コイン貯留タンク41には満タンセンサ42がが設けられており、この余剰コイン貯留タンク41が満タンになればそれが満タンセンサ42により検出されてその検出出力に基づいて満タンになった旨の報知等が行なわれるエラー処理が行なわれる。遊技場の係員はその満タンになった旨の報知に基づいて満タンになったスロットマシン1の余剰コイン貯留タンク41内のコインを回収する。
【0023】
コインホッパー37の下方部分には、コイン払出モータ38が設けられており、このコイン払出モータ38が回転することによりコインホッパー37内のコインがコイン払出口29から1枚宛コイン貯留皿30内に排出される。その排出されるコインが払出コインセンサ39により検出され、所定枚数(たとえば15枚)の払出コインが検出された時点でコイン払出モータ38が停止制御される。なお、クレジットゲームの場合において、クレジット得点として記憶されているコイン枚数がその記憶の上限枚数(たとえば50枚)を越える場合には、その越えるコインがコイン払出モータ38によりコイン貯留皿30内に払出される。図中45はスロットマシンを制御する制御部であり、マイクロコンピュータ等を含む。なお、図中65は電源スイッチであり、これによりスロットマシン1の電源のON,OFFが可能となる。また、電源スイッチ65,キースイッチ43は、前面枠1Bを開成することにより前面側から操作可能に構成されている。
【0024】
図3は、左,中,右の各リールの外周に描かれた識別情報としての図柄(シンボルマーク)を示す展開図である。図3の左側に示した数字は図柄番号であり、0?20の21個の図柄(シンボルマーク)が各リールの外周に付されている。図3の(a)は左リール6L(図2参照)の外周に描かれた図柄を示したものであり、(b)は中リール6Cの外周に描かれた図柄を示した図であり、(c)は右リール6Rの外周に描かれた図柄を示した図である。可変表示装置70の停止時の表示結果が賭数に応じた有効ライン(当りライン)上において「AAA」となればビッグボーナスゲームが開始されるとともにコインが15枚払出される。一方、有効な有効ライン上において「BBB」となればボーナスゲームが開始されるとともにコインが15枚払出される。さらに有効ライン上において「CCC」または「DDD」となれば小役の図柄の組合せが成立してコインが15枚払出される。有効ライン上において「EEE」となれば小役が成立してコインが8枚払出される。有効ライン上において左図柄と中図柄とが共に「F」となれば小役が成立して6枚のコインが払出される。また、有効ライン上において左図柄のみ「F」となれば小役が成立して3枚のコインが払出される。
【0025】
さらに、ビッグボーナスゲーム中あるいはボーナスゲーム中ではない通常ゲーム中に、当りライン上に「G」すなわち「JAC」が3つ揃えば、再ゲームが成立して後述するようにコイン投入等を行なうことなくスタート操作を行なうのみで再度可変表示装置70が可変開始される。また、ビッグボーナスゲーム中にこの「G」が有効ライン上に3つ揃えばボーナスゲームの開始が行なわれる。また、ボーナスゲーム中にこの「G」が当りライン上に3つ揃えばボーナスゲーム中の入賞となりコインが15枚払出される。なお、ボーナスゲーム中に入賞が発生する有効な当りラインは可変表示部における中段の横一列のみである。また、賭数に応じた有効ラインが複数本存在する場合において前述したコインが払出される図柄の組合せが複数本の有効ライン上において同時に成立した場合には、各有効ライン上の図柄の組合せによって付与されるコイン枚数の合計枚数に相当するコインが付与されるのが原則である。しかし、1ゲームにおいて付与されるコインの上限が15枚と定められているために、15枚を超える場合にはその16枚目以降のコインが無効となる。
【0026】
図4は、各リール6L,6C,6Rの側面図である。各リール6L,6C,6Rの外周は、各リール6L,6C,6Rの回転中心(リール駆動モータ7L,7C,7Rの駆動軸の軸心に相当する)を中心とした円周方向が所定中心角ごとに21の領域に分けられ、その各領域には、各領域を1つの図柄の範囲として図3に示される各図柄が描かれている。
【0027】
図4に示される0?20の数字は、図3に示される各図柄の図柄番号0?20に相当するものであり、各図柄は、図4の破線にて示される位置をそのセンター位置として描かれている。図4の左側に示される円弧は、各可変表示部5L,5C,5Rの表示領域であり、図4から明らかなように、各可変表示部5L,5C,5Rには、縦方向に3つの図柄が表示される。
【0028】
各リール6L,6C,6Rの円周方向の所定位置には、切欠きや突起等よりなるリール基準位置6La,6Ca,6Raが各々形成されており、そのリール基準位置よりも内周側には各リール基準位置6La,6Ca,6Raを検出するための各リール位置センサ8L,8C,8Rが設けられている。各リール位置センサ8L,8C,8Rはリール6L,6C,6Rが回転した場合、各リール基準位置6La,6Ca,6Raが通過するごとにそれらを検出する。
【0029】
図5は、本発明のスロットマシンに用いられている制御回路を示すブロック図である。
【0030】
制御回路は、制御中枢としての制御部(マイクロコンピュータを含む)45を含む。制御部45は、以下に述べるようなスロットマシン1の動作を制御する機能を有する。制御部45は、たとえば数チップのLSIで構成されており、その中には、制御動作を所定の手順で実行することのできるCPU46とCPU46の動作プログラムを格納するROM47と、必要なデータの書込みおよび読出しができるRAM48とが含まれている。さらに、CPU46と外部回路との信号の整合性をとるためのI/Oポート49と、電源投入時等にCPU46にリセットパルスを与える初期リセット回路51と、CPU46にクロック信号を与えるクロック発生回路52と、クロック発生回路52からのクロック信号を分周して割込パルスを定期的にCPU46に与えるパルス分周回路(割込パルス発生回路)53と、CPU46からのアドレスデータをデコードするアドレスデコード回路54とを含む。
【0031】
CPU46はパルス分周回路53から定期的に与えられる割込パルスに従って、割込制御ルーチンの動作を実行することが可能となる。また、アドレスデコード回路54はCPU46からのアドレスデータをデコードし、ROM47,RAM48,I/Oポート49,サウンドジェネレータ50にそれぞれチップセレクト信号を与える。
【0032】
この実施の形態では、ROM47は、その内容の書換え、すなわち、必要が生じた場合にはその中に格納されたCPU46のためのプログラムを変更することができるように、プログラマブルROM47が用いられている。そして、CPU46は、ROM47内に格納されたプログラムに従って、かつ、以下に述べる各制御信号の入力に応答して、前述したリール駆動モータや各種表示ランプ等に対し制御信号を与える。
【0033】
まず、遊技場の管理者等によってドアスイッチ44が操作された場合には、その操作信号がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に与えられる。所定のキーによりキースイッチ43がキー操作された場合には、その操作信号がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。このキースイッチにより、ゲームモードと確率設定モードの切換えが行なわれ、確率設定モードになっている場合には、ドアスイッチ44の検出出力に基づいて後述するように当りの確率が入力設定される。リセットスイッチ4が所定のキーにより操作された場合にはその操作信号がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。ゲーム切換ボタン16の押圧操作がゲーム切替スイッチ17により検出され、その検出信号がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。クレジット操作ボタン14の操作がクレジットスイッチ15により検出され、その検出出力がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。スタートレバー12の押圧操作がスタートスイッチ13により検出され、その検出出力がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。左ストップボタン9L,中ストップボタン9C,右ストップボタン9Rのそれぞれの検出信号が左ストップスイッチ10L,中ストップスイッチ10C,右ストップスイッチ10Rにより検出され、それぞれの検出信号がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。コイン投入口18から投入されたコインが投入コインセンサ36により検出され、その検出出力がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。コイン払出モータ38(図2参照)によりコインが払出された場合にはその払出コインが払出しコインセンサ39により検出されて、その検出出力がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。余剰コイン貯留タンク41が貯留コインにより満タンになれば満タンセンサ42によりその旨検出され、その検出出力がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。左リール6L,中リール6C,右リール6Rが回転してそれぞれのリールの基準位値(切欠き等が形成されている)が左リール位置センサ8L,中リール位置センサ8C,右リール位置センサ8Rより検出されれば、それぞれの検出信号がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。
【0034】
制御部45は次の各種機器に対し制御信号を出力する。まず、モータ回路56を介して、左リール駆動モータ7L,中リール駆動モータ7C,右リール駆動モータ7Rにそれぞれリール駆動用制御信号(ステッピングモータ用のステップ信号)を出力する。モータ回路57を介してコイン払出モータ38にコイン払出用制御信号を出力する。ソレノイド回路58を介して流路切換ソレノイド33にソレノイド励磁用制御信号を出力する。LED回路59を介してゲーム回数表示器25,クレジット表示器26,払出数表示器27にそれぞれ表示用制御信号を出力する。ランプ回路60を介して遊技効果ランプ24,投入指示ランプ19,有効ライン表示ランプ21,22,23,左操作有効ランプ11L,中操作有効ランプ11C,右操作有効ランプ11R,ゲームオーバーランプ20,再ゲーム表示ランプ64にそれぞれランプ制御用信号を出力する。サウンドジェネレータ50,アンプ61を介してスピーカ28に音発生用制御信号を出力する。なお、前述した各種機器や制御回路には電源回路62から所定の直流電流が供給される。また、RAM48にはバックアップ電源63から記憶保持のための電流が供給されるように構成されており、停電時により電源回路62からの電流の供給が行なわれなくなっても、確率設定値や遊技状態を所定期間記憶しておくことができるように構成されている。
【0035】
図6ないし図9,図12ないし図17は、図5に示した制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。
【0036】
図6(a)は電源投入時に行なわれる処理プログラムである。スロットマシンの電源投入は、遊技場の営業開始時に行なわれる場合と、遊技場の営業中にたとえば停電等により一旦電源が立下がり再び停電が復旧した場合等のように営業中に行なわれる場合とが考えられる。図6において、まずステップS(以下単にSという)1において、リセットスイッチがONか否かの判断が行なわれる。このリセットスイッチ4はゲームオーバー(打止め)を機能するようにセットするか機能しないようにセットするかの選択設定に用いられるものであり、リセットスイッチ4がONになっていればS3よりゲームオーバー無のモードに設定されてゲームオーバー(打止め)が機能しないように設定される。一方、リセットスイッチ4がOFFになっておればS2によりゲームオーバー有のモードにセットされてゲームオーバー(打止め)が機能するように設定される。なお、打止有無の選択を専用のスイッチで設定するようにしてもよい。次にS4に進み、キースイッチがONになっているか否かの判断が行なわれる。キースイッチ43がONの場合には確率設定モードでありキースイッチ43がOFFの場合にはゲームモードに設定されている状態であり、キースイッチがOFFの場合にはS5にすすみ、RAMが正常であるか否かの判断が行なわれ、正常である場合にはスロットマシンが電源遮断時の遊技状態に復帰する。つまり、図4に示したRAM48は、停電時等においてはバックアップ電源63によりバックアップされているために、後述するS33ないしS200のステップのうち、停電発生時点等の電源立下がり時点に実行していたプログラムのステップをこのRAM48が記憶しており、S5によりYESの判断がなされた場合にはその記憶している電源遮断時のステップにプログラム制御が復帰するのである。
【0037】
一方、プログラムの暴走時等においては、S5によりNOの判断がなされてS6に進み、RAMが初期化されるとともに、入賞確率の設定値が初期化される。このS6による入賞確率の初期化は、たとえば設定値「3」となるように初期化される。設定値は、後述するように、一番低い確率である「1」から一番高い確率である「6」までの6段階用意されており、このS6による初期化により、ほぼ平均的な確率である「3」に初期化される。その結果、スロットマシンがプログラム暴走等により初期化された場合にはほぼ平均的な確率に設定されるために、プログラム暴走等を原因とした初期化を境にして入賞確率が極端に高い設定値に切替わったりまたは極端に低い設定値に切替わったりする極端な変化を防止できる利点がある。
【0038】
一方、キースイッチ43がONすなわち確率設定モードに操作されている場合にはS7に進み、投入コイン流路を返却側に切替えて投入コインが返却されるように制御される。次にS8に進み、スタート操作があったか否かの判断が行なわれ、ない場合にはS10に進む。S10では、ドアスイッチ操作があったか否かの判断がなされ、ない場合にはS13により現時点での確率の設定値をたとえば払出数表示器27で表示してS8に戻る。なお、専用の設定値表示器を設けてもよい。
【0039】
このS8ないしS13の巡回途中で、遊技場の経営者や係員がドアスイッチ44(図1参照)を1回操作すれば、S10によりYESの判断がなされてS11に進み、確率の設定値が「1」歩進される。次にS12Aに進み、現時点での設定値が「7」であるか否かの判断がなされる。この確率の設定値の上限は「6」と定められているために、設定値が「7」になった場合にはS12Bに進み、設定値を再度「1」にする処理が行なわれS13に進む。一方、設定値が「7」になっていない場合には直接S13に進み、現時点での設定値の表示が行なわれる。遊技場の係員は、S13による確率の設定値の表示を見ながら所望の設定値になるようにドアスイッチ44を操作する。そして所望の設定値になれば、キースイッチ43をOFFに切替えてゲームモードに切替え、次にスタートレバー12(図1参照)を操作してスタートスイッチ13をONにすることによりS8によりYESの判断がなされる。その結果、既にキースイッチ43がOFFに切替えられているためにS14に進み、RAMの初期化,確率の設定値の確定,設定表示のクリアの処理がなされる。次に、S14Aにより、初期値としてコインの累積投入数と累積払出数とがそれぞれ「100」と「50」とに設定される。これにより、通常ゲーム時における小役の標準払出率が50/100×100%=50%となる。次にゲームスタート処理に移行する。
【0040】
図6(b)はランダムカウンタ更新処理の割込プログラムを示すフローチャートである。この図6(b)に示す割込プログラムは前述したパルス分周回路53から定期的に入力されるパルス信号に基づいて行なわれるものであり、たとえば4msec毎に1回ずつ実行される。まずS15により、ランダムカウンタの値Rを所定の数N加算更新する処理が行なわれる。次にS16に進み、ランダムカウンタの値Rが予め定められた最大値以上になったか否かの判断が行なわれ、未だに最大値以上になっていない場合にはS18に進み、1ゲームが終了したか否かの判断が行なわれる。この1ゲームは可変表示装置の停止時の表示結果コインが何ら払出されない場合にはその可変表示装置の停止時点で終了するがコインが払出される場合にはコインの払出しが終了した段階で1ゲームが終了する。1ゲームが終了していない場合にはそのまま割込プログラムが終了し、次回の割込待ちとなる。
【0041】
一方、ランダムカウンタの値Rが最大値以上となっている場合にはS17に進み、ランダムカウンタの値Rをその最大値だけ減算更新する処理が行なわれた後にS18に進む。次に今回の割込プログラムが1ゲームが終了するタイミングで行なわれる場合にはS18によりYESの判断がなされてS19に進み、ランダムカウンタの値Rに基づきS15にて加算更新する値Nを変更する処理が行なわれる。この加算数Nは、予め設定されている複数種類の素数でかつ前記最大値をその素数で除した場合の商が整数にならないような素数の中から1つ選択されてS19により変更される。加算数Nはこのように設定することにより、ランダムカウンタの値Rが万遍なくあらゆる数値を取り得る状態となる。また、1ゲームが終了するごとにS19により加算数Nは他の素数に変更するために、ランダムカウンタの値Rがランダムの値となり、このランダムカウンタの値に基づいて後述する入賞か否かの決定を行なう場合にランダムな決定を行なうことができる利点がある。
【0042】
図7(a)はエラーチェック処理を示す割込みプログラムのフローチャートである。まずS20により払出すべきコインが欠乏したコイン切れ状態であるか否かの判断がなされる。コイン切れ状態でないと判断された場合にはS21に進み、投入コインが詰まったか否かの判断が行なわれる。投入コインが詰まっていない場合にはS22に進み、投入コインが余剰コイン貯留タンク41(図2参照)内で満タンとなったか否かの判断がなされ、満タンになっていない場合にはS23に進み、コインホッパー37(図2参照)から払出されるコインが詰まったか否かの判断がなされ、詰まっていない場合にはS24に進みエラー中であるか否かの判断がなされてエラー中でない場合には割込プログラムが終了する。
【0043】
そして、払出したコインの枚数である払出数が1ゲームの終了の結果払出すべきコインの枚数である払出予定数に達しておらず、かつ、コイン払出モータ38が回転中にもかかわらず一定時間内にコインの払出が検出されない場合には、コイン切れと判定されてS20によりYESの判断がなされ、S25により、エラーコード「HE」が払出数表示器27(図1参照)により表示される。一方、投入されたコインがコイン取込径路35内で詰まり、投入コインセンサ36(図2参照)が一定時間以上連続的にコインを検出している状態となった場合には、S22によりYESの判断がなされてS26によりエラーコード「CE」が表示される。また、余剰コイン貯留タンク41内に投入コインが満タンとなり満タンセンサ42(図2参照)が満タン検出すれば、S22によりYESの判断がなされてS27に進み、エラーコード「CO」が払出数表示器27により表示される。コインホッパー37から払出されるコインが詰まり払出コインセンサ39(図2参照)が一定時間以上連続的にコインを検出した状態となった場合には、S23によりYESの判断がなされてS28に進み、エラーコード「HJ」が払出数表示器27により表示される。後述するS85Hの判断の結果モータエラーが生じた場合にはS23AによりYESの判断がなされてS28Aに進み、エラーコード「EE」が払出数表示器27により表示される。さらに、前記S20ないしS23によりエラーである旨の判定がなされた後、後述するS32によりそのエラーコードがクリアされるまでの期間中、S24によりYESの判断がなされてS29に進み、前記S25ないしS28Aのいずれかにより表示されているエラーコードの表示が引続き続行される。つまり、S29によるエラーコードの表示は、遊技場の係員によりエラー原因が取除かれた後においても、開成状態にある前面枠1Bが閉成されて後述するS32によりエラーコードがクリアされるまでは引続きエラーコードの表示が続行されるのである。
【0044】
S25,S26,S27,S28,S28AあるいはS29の処理がなされた後に、S30に進み、スロットマシンのゲームを中断させ、エラー音をスピーカ28から発生させる処理が行なわれる。
【0045】
スピーカ28からエラー音が発せられていることを遊技場の係員が聞きつければ、その遊技場の係員はスロットマシンのエラー原因を取除くべく、前面枠1Bを開成させ、さらに、払出数表示器27により表示されているエラーコードから発生しているエラー原因の種類を識別し、エラー原因の種類に応じた作業を行なって発生しているエラー原因を取除く。そして、その作業が終了した後に遊技場の係員は前面枠1Bを閉じる。すると、ドアスイッチ44が、前面枠1Bの閉じられたことを検出し、それに応じてS31によりYESの判断がなされる。その結果、制御はS32に進み、払出数表示器27により表示されるエラーコードがクリアされ、エラー音が停止され、中断発生時のゲーム状態からゲームが再開される。なお、前面材1Bを実際に閉成するのではなくドアスッチ44を指等で押圧操作することによりドアスイッチ44から検出出力を導出させてS31によりYESの判断を行なわせてもよい。
【0046】
図7(b)および図8はゲームスタート処理を示すフローチャートである。S33により、流路切換ソレノイド33(図2参照)を制御して投入コインの流路を取込側に切換える処理が行なわれ、S34に進み、ゲーム切換操作があったか否かの判断が行なわれる。ゲーム切換操作がない場合にはS40に進むが、遊技者がゲーム切替ボタン16を押圧操作した場合にはS35に進み、今現在クレジットゲームモードになっているか否かの判断が行なわれ、なっていない場合にはS36によりクレジットゲームモードとする処理が行なわれる。一方、既にクレジットゲームモードになっている場合にはS37に進み、コインゲームモードにする処理が行なわれ、S38に進み、クレジットカウンタが「0」であるか否かの判断が行なわれる。このクレジットカウンタとは、クレジットゲーム時において賞品として付与されるコインの枚数や遊技者が投入したコイン枚数を計数して記憶しておくためのものであり、後述するS60,S179により「1」ずつ加算更新されるとともに、後述のS39,S56により「1」ずつ減算更新される。このクレジットカウンタが「0」の場合にはS40に進むが、「1」以上の場合にはS39に進み、コインを1枚払出すとともにクレジットカウンタを「1」減算更新する処理がなされてS38に戻る。このS39の処理をクレジットカウンタが「0」になるまで繰返して行ないクレジットカウンタのカウント値に相当する枚数だけのコインが払出し制御される。つまり、クレジットゲームモードとなっている状態で遊技者が切換え操作してコインゲームモードにした場合には、そのクレジットゲーム時において加算記憶されているクレジットカウンタの値に相当する枚数のコインを遊技者側に払出す必要があるため、このS39により払出し制御を行なうのである。一方、現時点でコインゲームモードになっている状態で遊技者がゲーム切替ボタンを押圧操作すればS36に進み、クレジットゲームモードに設定される。
【0047】
次にS40に進み、スタート操作があったか否かの判断がなされ、未だにスタートレバー12(図1参照)が押圧操作されていない場合にはS41に進み、投入数カウンタが「3」であるか否かの判断が行なわれる。この投入数カウンタとは、1ゲームを行なうに際し遊技者がコイン投入口18から投入したコインの枚数あるいはクレジットゲーム中におけるクレジット操作ボタン14を遊技者が押圧操作した操作回数を計数して1ゲームにおけるゲーム結果に賭ける賭数を設定するためのものであり、後述するS57により「1」ずつ加算更新され、図示しないが、次のゲーム開始時にS33に関連してクリアされる。この投入数カウンタのカウント値に応じて賭数が入力設定され、その賭数すなわち投入数カウンタのカウント値が「1」の場合には有効となる有効ライン(当りライン)が1本に設定され、カウント値が「2」の場合には3本に設定され、カウント値が「3」の場合には5本に設定される。この投入数カウンタのカウント値の上限は「3]に設定されている。S41により投入数カウンタのカウント値がその上限である「3」になっていない場合にはS42に進み、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断が行なわれる。このボーナスゲームフラグとは、可変表示装置の停止時の表示結果に基づいてボーナスゲーム(レギュラーボーナスゲーム)が実際に開始される状態となった時にS162,S169によりセットされ、そのボーナスゲームが終了した場合にS188によりクリアされるものである。そして、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS47に進むが、セットされている場合にはS43に進み、投入数カウンタが「0」であるか否かの判断が行なわれ、「0」の場合にはS47に進み、「1」以上の場合にはS44に進む。つまり、ボーナスゲームの場合には、前述したように可変表示装置の組合せの有効ラインが1本のみ有効となるために、1枚賭のゲームしか認められず、そのために、投入数カウンタが「1」を越える値にならないように制御するのである。S44では、クレジットゲームモードになっているか否かの判断が行なわれ、クレジットゲームモードになっていない場合にはS46に進み、投入コイン流路を返却側に切換えてその後投入されたコインを返却する処理が行なわれた後にS40に進む。一方、クレジットゲームモードになっている場合にはS45に進み、クレジットカウンタが既にその上限値である「50」になっているか否かの判断が行なわれ、「50」になっている場合にはそれ以上クレジットカウンタの加算更新が行なえないためにS46に進み、投入されたコインを返却する処理が行なわれる。
【0048】
S47では、コイン投入があったか否かの判断が行なわれ、あった場合にはS48に進み、投入数カウンタが既にその上限である「3」になっているか否かの判断が行なわれ、既に「3」になっている場合にはS60に進み、クレジットカウンタに「1」加算する処理が行なわれてS40に戻る。一方、投入数カウンタが「3」になっていない場合にはS49に進み、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS57に進み、投入数カウンタのカウント値にまだ余裕があるためにそのカウント値に「1」を加算する処理が行なわれる。ボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS50に進み、投入数カウンタが「0」であるか否かの判断が行なわれる。ボーナスゲームの場合には前述したように投入数カウンタの上限値が「1」となるために、投入数カウンタが「1」である場合にはS60に進み、クレジットカウンタに投入されたコインの枚数である「1」を加算する処理が行なわれるのである。次にS58に進み、前述したランダムカウンタ更新処理に従って加算更新されているランダムカウンタの値Rを呼出して格納する処理が行なわれる。次にS59Aに進み、払出予定数と払出数を「0」にする処理が行なわれてS59Bに進む。払出予定数とは、可変表示装置の停止時の表示結果に基づいて入賞が決定された場合に、その入賞の種類に応じて遊技者に払出すコインの枚数のことであり、払出数とは、入賞に基づいて実際に払出されたコインの枚数のことである。
【0049】
S59Bでは、投入数カウンタが「0」であるか否かの判断が行なわれ、「0」の場合にはS59Cに進み、前回の1ゲームを行なう際に投入されたコイン枚数に応じた有効ラインが点灯されてS40に戻る。一方、今回の1ゲームを行なうに際してコインが投入されておれば、投入数カウンタが「0」でないためにS59Dに進み、投入数カウンタに応じた有効ラインの表示が行なわれてS40に戻る。この有効ラインの表示は、投入数カウンタの値が「1」である場合には中央の横1列を表示する有効ライン表示ランプ21のみが点灯され、投入数カウンタが「2」の場合には横3列の有効ラインが表示する有効ライン表示ランプ21,22が点灯され、投入数カウンタが「3」の場合には横3列および斜め対角線上に2列の5本の有効ラインを表示する有効ライン表示ランプ21?23のすべてが点灯表示される。
【0050】
次に、S47によりコインの投入がないと判断された場合にはS51に進み、クレジットカウンタが「0」であるか否かの判断が行なわれ、「0」でない場合にはS52に進み、クレジット操作があったか否かの判断が行なわれ、クレジット操作がない場合にはS59Bに進む。一方、クレジットカウンタが「0」の場合にはS52による判断を行なうことなく直接S59Bに進む。これは、クレジットカウンタが「0」の場合にはいくら遊技者がクレジット操作ボタン14を押圧操作してクレジット操作を行なったとしても、そのクレジットカウンタのカウント値を使用してのゲームを行なうことができないために、クレジット操作があったか否かという判断を行うこと自体無駄となるためである。次にクレジット操作があった場合にはS53に進み、投入数カウンタが「3」になっているか否かの判断が行なわれ、既にその上限値である「3」になっている場合にはクレジット操作を無視してS59Bに進む。一方、「3」になっていない場合にはS54に進み、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、ボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS55に進み、投入数カウンタが「0」であるか否かの判断が行なわれ、投入数カウンタがボーナスゲーム時における上限値である「1」になっている場合にはクレジット操作を無視してS59Bに進む。一方、投入数カウンタが「0」の場合またはボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS56に進み、クレジットカウンタを「1」減算更新した後にS57に進み、投入数カウンタに「1」を加算する処理が行なわれる。
【0051】
以上説明したように、1ゲームにおけるゲーム結果に賭ける賭数を入力設定するべく遊技者がコインをコイン投入口18から投入するごとにS58によりランダムカウンタのランダム値Rが読出される。そして、遊技者がコインを1枚だけコイン投入口18に投入して1ゲームをスタートさせた場合には、その1枚の投入コインに基づいて読出されたランダム値Rが格納されてそのランダム値Rを利用して可変表示装置の可変停止時の価値付与内容が事前決定される。一方、遊技者がコイン投入口18から2枚コインを投入すれば、1枚目のコインの投入に基づいて読出されたランダム値Rが消去されて2枚目のコインの投入に基づいて読出されたランダム値Rに更新され、その更新されたランダム値Rが格納される。そして遊技者がスタート操作すれば、その格納されたランダム値Rを利用して可変表示装置の可変停止時の価値付与内容が事前決定される。さらに、遊技者がコイン投入口18から3枚のコインを投入すれば、1枚目のコインの投入に基づいて読出されたランダム値Rが2枚目のコインの投入に基づいて読出されたランダム値Rに更新され、その更新されたランダム値Rがさらに3枚目のコインの投入に基づいて読出されたランダム値Rに更新され、その最終的に更新されたランダム値Rが格納されて可変表示装置の可変停止時の価値付与内容の事前決定に利用される。なお、ランダム値Rの抽出をスタート操作により行なうようにしてもよい。一方、クレジットゲーム時において遊技者が賭数を設定入力するべくクレジット操作ボタン14を押圧操作するごとに3回を限度としてS58によりランダムカウンタのランダム値Rが読出されて格納される。このランダム値Rの格納も、前述と同様に、ランダム値Rが2回読出されれば、1回目に読出されたランダム値Rが2回目に読出されたランダム値Rに更新されて格納され、ランダム値Rが3回読出されれば、2回目に読出されたランダム値Rがその3回目に読出されたランダム値Rに更新されて最後のランダム値Rが格納されることになる。
【0052】
次に、遊技者がスタートレバー12を押圧操作すればS40によりYESの判断がなされてS61に進み、投入数カウンタが「0」であるか否かの判断がなされ、「0」の場合にはS41に進むが、「1」以上の場合にはS62に進み、流路切換ソレノイド33を制御して投入コイン流路を返却側に切換え、以降のリール回転制御に移行する。このS62の処理の結果、それ以降投入されたコインはコイン貯留皿30内に返却されることになる。
【0053】
図9および図12は、リール回転処理のプログラムを示すフローチャートである。まずS63より1ゲームタイマが終了しているか否かの判断が行なわれる。この1ゲームタイマとは、1ゲームが開始されてから終了するまで最低限経過しておかなければならない時間(たとえば4.1秒)を計時するためのものであり、S65によりセットされる。なお、1ゲームタイマにセットする時間を賭数に応じて変化させ、賭数が1枚賭、2枚賭の場合には、3枚賭の場合よりも短い時間をセットするようにしてもよい。1ゲームタイマが終了していない場合にはS64に進み、タイマ終了待ち音がスピーカ28から発生されて1ゲームタイマが終了していない旨を遊技者に報知する。一方、1ゲームタイマが終了すれば、S65に進み、1ゲームタイマが新たにセットされ、操作無効タイマがセットされ、全リールの回転が開始される。この操作無効タイマとは、前述したように、ストップボタン9L,9C,9Rを操作してもその操作を無効とする時間を計時するためのタイマである。
【0054】
次にS66に進み、格納されているランダム値Rを用いて所定の演算を行なう処理がなされる。その所定の演算とは、ランダム値Rに対し所定の値を加算したり減算したり乗じたり除したりあるいはランダム値Rを2乗または3乗したり、あるいは所定の関数にランダム値Rを代入して答えを算出したりする演算である。次にS67により、その演算結果を、投入数・設定値・小役判定モードに応じた当選許容値と比較する処理が行なわれる。
【0055】
この当選許容値は、たとえば図11に示されているように、ビッグボーナスゲーム(BB)当選許容値,レギュラーボーナスゲーム(RB)当選許容値,再ゲーム当選許容値,小役当選許容値の4種類から構成されている。この各当選許容値は、テーブルの形でROM47に記憶されている。図11(a)に示された当選許容値は、3枚賭で小役判定モードが「通常時」で確率設定値が「4」のときを示している。この小役判定モードは、スロットマシン1による遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値と比較して、その標準値よりも高い場合は「通常時」に設定され、標準値よりも低い場合は「高確率時」に設定されるものであり、標準値に従って小役発生確率をフィードバック制御するために用いられるものである。「確率設定値」とは、前述したキースイッチの操作に従って設定された値のことである(S9?S13参照)。この図11(a)に示すように、S66による演算値が、ビッグボーナスゲーム当選許容値b_(0)未満の場合にはビッグボーナスゲーム当選に該当し、b_(0)以上でレギュラーボーナスゲーム当選許容値b1未満の場合にはレギュラーボーナスゲームに該当し、b_(1)以上で再ゲーム当選許容値b_(2)未満の場合には再ゲーム当選に該当し、b_(2)以上で15枚小役当選許容値b_(3)未満の場合にはコインを15枚払出す小役当選に該当し、b_(3)以上で8枚小役当選許容値b_(4)未満の場合にはコインを8枚払出す小役当選に該当し、b_(4)以上で6枚小役当選許容値b_(5)未満の場合にはコインを6枚払出す小役当選に該当し、b_(5)以上で3枚小役当選許容値b_(6)未満の場合にはコインを3枚払出す小役当選に該当し、b_(6)以上の場合にははずれに該当する。なお、図11(a)に示す、A_(34),B_(34),C_(31),D_(31),E_(31),F_(31),G_(11)は、図10(a),(b)に示された値である。図10(a)の一番左の列に示された数字1?6は、確率設定値を示し、一番上の行に示された1,2,3の数字は、コインの投入枚数すなわち賭数を示す。また、図10(b)の一番上の行に示された1,2,3はコインの投入枚数すなわち賭数を示し、その下の行に示された「通常」,「高確率」,「BB」は、小役判定モードが通常時か高確率時かビッグボーナス時かを示している。そして、図11(a)に示した場合は、3枚賭で、小役判定モードが通常時で、確率設定値が「4」である場合であるために、図10(a)の設定「4」で投入数が「3」に該当する欄に記載された数値、すなわち、ビッグボーナス当選許容値としてA_(34)が、レギュラーボーナスゲーム当選許容値としてB_(34)が用いられる。また、図10(b)において、投入数が「3」で小役判定モードが通常時の欄に記載された数値、すなわち、15枚のコインを払出す小役当選許容値としてC_(31)、8枚のコインを払出す小役当選許容値としてD_(31)、6枚のコインを払出す小役当選許容値としてE_(31)、3枚のコインを払出す小役当選許容値としてF_(31)、再ゲーム当選許容値としてG_(11)が用いられる。なお、この図10に示す(a),(b)に示されたデータは、テーブルの形でROM47に記憶されている。
【0056】
図11(b)は、3枚賭で、小役判定モードが「高確率時」で、確率設定値が「4」の場合を示している。この場合には、図10に従えば、ビッグボーナスゲーム当選許容値b_(0)=A_(34)、レギュラーボーナスゲーム当選許容値b_(1)=b_(0)+B_(34)、再ゲーム当選許容値b_(2)=b_(1)+G_(11)、コイン15枚を払出す小役当選許容値b_(3)=b_(2)+C_(32)、コイン8枚を払出す小役当選許容値b_(4)=b_(3)+D_(32)、コイン6枚を払出す小役当選許容値b_(5)=b_(4)+E_(32)、コイン3枚を払出す小役当選許容値b_(6)=b_(5)+F_(32)となる。また、図11(c)は、3枚賭、小役判定モードが「高確率時」、ビッグボーナス当選フラグセット中あるいはレギュラーボーナス当選フラグセット中の場合が示されている。この場合には、ビッグボーナス当選許容値とボーナス当選許容値とが存在しない。(d)は、3枚賭で、小役判定モードが「ビッグボーナス時」の場合が示されている。この場合は、ビッグボーナス当選許容値と再ゲーム当選許容値とが存在しない。またこの場合のボーナスゲーム当選許容値は、図10(b)の一番下の行の数値が用いられる。なお、R_(MAX)は、ランダム値Rを用いた演算結果がとり得る上限値がある。
【0057】
以上のように構成することにより、小役判定モードが「通常時」よりも「高確率時」の方が、小役の発生確率が高くなり、さらに、小役判定モードが「ビッグボーナス時」の場合にはさらに小役発生確率が高くなるとともにボーナスゲーム発生確率も高くなる。また、1枚賭よりも2枚賭、2枚賭よりも3枚賭の方がビッグボーナスゲーム発生確率,ボーナスゲーム発生確率,小役発生確率,再ゲーム発生確率が高くなる。
【0058】
次にS68に進み、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS71に進み、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS74に進む。S74では、リール回転音をスピーカ28から発生させ、次にS75に進み、ビッグボーナス当選フラグあるいはボーナス当選フラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、既にセットされている場合にはS81に進むが、セットされていない場合にはS76に進む。
【0059】
S76では、前記S67による比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果がビッグボーナス当選許容値に含まれているか否かすなわち0≦演算結果<b_(0)であるか否かの判断がなされ、含まれている場合にはS77に進み、ビッグボーナス当選フラグがセットされてS80に進む。一方、前記S67による比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果がビッグボーナス当選許容値ではないがボーナス当選許容値に含まれている場合(b_(0)≦演算結果b_(1))には、S78によりYESの判断がなされてS79に進み、ボーナス当選フラグがセットされてS80に進む。S80では、遊技効果ランプ24(図1参照)を点灯開始させる処理がなされ、次にS85に進む。S80の処理により、ビッグボーナスあるいはボーナス当選した旨の報知が行なわれる。なお、S80による遊技効果ランプ24の点灯に代えて、専用の表示器を設けてビッグボーナス当選あるいはボーナス当選が生じた旨を報知するようにしてもよく、また、スピーカ28から所定の音を発生させて報知するようにしてもよい。このS80の処理の結果、遊技者がビッグボーナス当選あるいはボーナス当選したことを認識する状態となるが、後述するように、可変表示状態の停止制御中にリーチ状態となったとしてもビッグボーナス当選あるいはボーナス当選していない限りリーチ音の発生が行なわれないために(S108?S110)、ビッグボーナスゲームあるいはボーナスゲームとなる可能性がないにもかかわらずリーチ状態の報知が行なわれることによる遊技者の不快感を防止し得る。
【0060】
S78によりNOの判断がなされた場合にS81に進み、S67の比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果が再ゲーム当選許容値に含まれているか否かの判断がなされ、含まれていない場合にはS83に進むが、含まれている場合(b_(1)≦演算結果<b_(2))にはS82に進み、再ゲーム当選フラグがセットされてS85に進む。このS82による再ゲーム当選フラグのセットにより、後述するように、コインを投入することなくスタート操作により自動的に可変表示装置が可変開始されて再ゲームできるように制御される。S83ではS67の比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果が各小役当選許容値に含まれているか否かの判断がなされ、含まれていない場合にはそのままS85に進むが、含まれている場合(b_(2)≦演算結果<b_(3),b_(4),b_(5),b_(6))にはS84に進み、含まれている小役の種類に相当する当選フラグがセットされてS85に進む。
【0061】
次に、ボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS68によりYESの判断がなされてS69に進み、S67の比較結果、ランダム値Rの演算結果がJAC入賞許容値に含まれているか否かの判断がなされる。つまり、S68によりYESの判断がなされるということはスロットマシンのゲーム状態がボーナスゲーム中であるということであり、ボーナスゲーム中の可変表示装置の可変停止時の表示結果が「JAC」の停止図柄となった場合には前述したように、ボーナスゲーム中における入賞が発生してコインが15枚払出可能となるのであり、S69により、ボーナスゲーム中における入賞を発生させるか否かを判定しているのである。そして、S69によりNOの判断がなされた場合にはそのままS85に進むが、YESの判断がなされた場合にはS70に進み、JAC入賞フラグがセットされる。その結果、後述するように、ボーナスゲーム中における入賞を発生させる制御がなされる。
【0062】
一方、ボーナスゲームフラグではなくビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS71によりYESの判断がなされてS72に進み、S67による比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果がボーナスゲーム許容値に含まれているか否かの判断がなされる。スロットマシンのゲーム状態がビッグボーナス中において、可変表示装置の可変停止時の表示結果が「JAC」の停止図柄の組合せになった場合には、前述したようにビッグボーナスゲーム中におけるボーナスゲームが開始されるのであり、そのために、S72により、ビッグボーナスゲーム中におけるボーナスゲームを発生させるか否かの判定が行なわれるのである。そして、S72によりNOの判断がなされた場合にはS83に進むが、YESの判断がなされた場合にはS73に進み、JAC入賞フラグがセットされてS85に進む。
【0063】
次にS85では、操作無効タイマが終了したか否かの判断がなされ、終了するまで待機する。なお、この操作無効タイマにセットされる時間はS68?S84の処理を行なうのに必要な時間以上の長さの時間(たとえば1秒)である。そして操作無効タイマが終了すればS86に進み、リール停止タイマをセットし、操作有効ランプ11L,11C,11R(図1参照)を点灯する制御が行なわれる。
【0064】
次に、S85Aでは、左リール基準位置が検出されたか否かの判断がなされ、検出されない場合にはS85Cに進み、中リール基準位置が検出されたか否かの判断がなされ、検出されない場合にはS85Eに進み、右リール基準位置が検出されたか否かの判断がなされ、検出されない場合にはS85Gに進み、左,中,右基準位置検出フラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS85Hに進み、操作無効タイマが終了したか否かの判断がなされ、終了していない場合にはS85Aに戻る。このS85AないしS85Hのループの巡回途中で、左リール基準位置6Laが左リール位置センサ8Lにより検出されれば、S85Bに進み、左基準位置検出フラグがセットされる。また、中リール基準位置6Caが中リール位置センサ8Cにより検出されれば、S85Dに進み、中基準位置検出フラグがセットされる。また、右リール基準位置6Raが右リール位置センサ8Rにより検出されれば、S85Fに進み、右基準位置検出フラグがセットされる。そして、左,中,右のすべての基準位置検出フラグがセットされれば、S85GによりYESの判断がなされてS85Iに進む。一方、左,中,右のリール基準位置が検出されることなく前記S65によりセットされた操作無効タイマが終了した場合には、リールが回転されていないかまたはリール位置センサが故障していることが想定されるために、モータエラーとなりエラー発生時の動作に移行する。
【0065】
S85Iでは、操作無効タイマが終了するまで待機し、終了した段階でS86に進み、リールのストップ操作が有効化される。このように、各リールの基準位置が検出された後操作無効タイマが終了してからストップ操作が有効化される。また、S85Iの代わりに、S85Jのように、リールを回転するステッピングモータの送りステップ数が所定値になったか否かを判断し、なるまで待機し、なった段階でS86に進むようにしてもよい。S86では、リール停止タイマがセットされ、操作有効ランプ11L,11C,11R(図1参照)を点灯する制御が行なわれる。リール停止タイマとは、遊技者がストップボタン9L?9Rをまったく操作しなかった場合に所定時間を計時してリールを自動的に停止させるためのタイマである。次にS87に進み、全リールが停止したか否かの判断がなされ、未だに停止していない場合にはS88に進み、リール停止タイマが終了したか否かの判断がなされる。リール停止タイマが終了したと判断されればS95に進み、左,中,右リールの停止フラグがセットされてS96に進む。一方、リール停止タイマが終了していない場合にはS89に進み、左リール停止操作があったか否かの判断がなされ、ない場合にはS91により中リール停止操作があったか否かの判断がなされ、ない場合にはS93により右リール停止操作があったか否かの判断がなされ、ない場合にはS96に進む。一方、遊技者が左停止ボタン9Lを押圧操作すればS89によりYESの判断がなされてS90に進み、左リール停止フラグがセットされて左リールが停止制御される。次に遊技者が中停止ボタン9Cを押圧操作すればS91によりYESの判断がなされてS92に進み、中リール停止フラグがセットされて中リールが停止制御される。遊技者が右停止ボタン9Rを押圧操作すればS93によりYESの判断がなされてS94に進み、右リール停止フラグがセットされて右リールが停止制御される。次に、遊技者が各停止ボタン9L,9C,9Rの2つ以上を同時に押圧操作した場合を説明する。たとえば、遊技者が左停止ボタン9Lと中停止ボタン9Cとを同時に押圧操作した場合には、まずS89によりYESの判断がなされてS90に進み左停止フラグがセットされて後述するように左リールが停止制御されるとともにS91によりYESの判断がなされてS92に進み、中リール停止フラグがセットされて後述するように中リールが停止制御される。このように遊技者が複数の停止ボタンを同時に押圧操作したとしても、その押圧操作された停止ボタンに相当するリールが停止制御されるのであり、いずれか一方のボタンの停止操作が無効にされてしまう不都合がない。これは、停止ボタン9L、9C、9Rの3つを同時に押圧操作した場合も同様である。
【0066】
次にS96により左リール停止フラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS100により中リール停止フラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS104により右リール停止フラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS108に進む。左リール停止フラグがセットされている場合にはS97に進み、左リールが回転中であるか否かの判断がなされ、回転中である場合にはS98によりリール停止制御が行なわれた後にS99に進み、左リール停止フラグがクリアされる。一方既に左リールが停止している場合にはS97によりNOの判断がなされて直接S99に進む。中リールおよび右リールについても左リールで説明したS96ないしS99と同様の処理が行なわれるために、ここでは説明の繰返しを省略する。次に、すべてのリールが停止した段階でS87によりYESの判断がなされて図16に示す入賞判定の処理に移行する。
【0067】
一方、S104によりNOの判断がなされた場合にはS108に進み、停止しているいずれか2つのリールにより表示されている図柄がリーチ状態の図柄になっているか否かの判断がなされる。リーチ状態とは、複数の可変表示部5L,5C,5Rのうちのいずれか1つがまだ可変表示している段階で、既に停止している可変表示部の表示結果が、「AAA」,「BBB」等の特定の識別情報の組合せとなる条件を満たす所定表示状態となっている場合を意味する。そして、S108によりリーチ状態でないと判断された場合にはS87に進むが、リーチ状態であると判断された場合にはS109に進み、ビッグボーナス当選フラグまたはボーナス当選フラグがセットされているか否かの判断がなされ、いずれもセットされていない場合にはS87に進むが、いずれかがセットされている場合にはS110に進み、リーチ音をスピーカ28から発生させた後にS87に進む。このリーチ音が発せられることにより、遊技者が現在可変表示している可変表示部の停止時の表示結果次第で前記特定の識別情報の組合せが成立するかもしれないという遊技者の期待感を効果的に盛り上げることができる。なお、スピーカ28からリーチ音を発生させることに加えてあるいはそれに代えてリーチ状態が発生した旨の表示を行なうようにしてもよい。また、ビッグボーナス当選フラグセット時にのみリーチ時の報知を行なうようにしてもよいし、どちらかの当選フラグがセットされている方のリーチ時にのみ報知を行なうようにしてもよい。
【0068】
図13ないし図15は、S98、S102、S106により定義されたリール停止制御の具体的内容を示すフローチャートである。まずS111により、現在の図柄番号を確認する処理が行なわれる。この図柄番号は前述したように0?20(図3参照)の21個あり、リール駆動モータ(ステッピングモータ)7L、7C、7Rの送りステップ数とリール位置センサ8L、8C、8Rの基準位置検出信号とに基づいて確認される。次にS112によりボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされる。ボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS113に進み、他の2つのリールが停止しているか否かの判断が行なわれる。他の2つのリールとは、現時点で停止制御を行なわんとしているリール以外のリールを意味する。そして、他の2つのリールがまだ停止していない段階ではS120に進み、S111により確認した現在の図柄番号から4図柄先以内にあるJAC図柄を有効となっている有効ライン上に停止させる制御が行なわれ、S152に進む。スロットマシンの場合には、停止制御の仕方が不自然にならないようにするために遊技者がストップボタン9L,9C,9Rを押圧操作してから0.2秒程度のある限られた非常に短い所定時間内に対応するリールを停止させなければならず、その非常に短い所定時間内にリールが回転できる回転角度が4図柄分程度となっている。ゆえに、ストップボタンが押圧操作されてから4図柄以上先にあるJAC図柄を有効な有効ライン上に停止制御させることは不可能であるために、S120により、4図柄先以内にJAC図柄がある場合にJAC図柄を有効ライン上に停止制御させるのである。なお、図3に示すように、現在の図柄番号がJAC図柄でない場合において、その現在の図柄番号から4図柄先の範囲内に必ずJAC図柄が存在するように図柄配列が構成されている。このように現在停止せんとするリールが最後のリールでない場合にはJAC入賞フラグがセットされているか否かにかかわらず有効となっている有効ライン上にJAC図柄を停止させるように制御されるのであり、これにより遊技者は期待を持って以降のリールの停止を注視するようになる。次にS152に進み、操作有効ランプ11L,11C,11Rのうち停止されたリールに対応する操作有効ランプを消灯するとともにリール停止音をスピーカ28から発する制御が行なわれ、S99,S103あるいはS107のいずれかにリターンする。
【0069】
ボーナスゲームフラグがセットされかつ他の2つのリールが停止しいる場合には、S104に進み、JAC入賞フラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされている場合にのみS120に進み、セットされていない場合にはS115に進む。S115では、現在の図柄番号から4図柄先以内にあるJAC図柄を有効となっている有効ライン上から外して停止し、その後S152に進む。つまり、JAC入賞フラグがセットされていないために、有効となっている有効ライン上にJAC図柄の組合せを成立させる訳にはいかず、ゆえにJAC図柄を有効となっている有効ラインから強制的にずらして停止させるのである。
【0070】
次に、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS116に進み、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、ビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS117に進み、JAC入賞フラグがセットされているか否かの判断がなされ、JAC入賞フラグがセットされている場合にはS118に進み、他のリールが停止しているか否かの判断がなされる。そして他のリールが停止していない段階では前記S120に進み、前述と同様にJAC図柄を有効となっている有効ライン上に停止させる制御が行なわれる。一方、他のリールが既に停止している場合にはS119に進み、現在の図柄番号から4図柄先以内にあるJAC図柄を停止しているリールのJAC図柄の有効ライン上に停止させ、有効となっている有効ライン上にJAC図柄の組合せが成立するように停止制御し、その後S152に進む。
【0071】
一方、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合およびJAC入賞フラグがセットされていない場合にはS121に進み、再ゲーム当選フラグがセットされているか否かの判断が行なわれる。再ゲーム当選フラグがセットされている場合にはS122に進み、他のリールが停止しているか否かの判断がなされ、他のリールがまだ停止していない場合にはS123に進み、現在の図柄番号から4図柄先以内にあるJAC図柄を停止しているJAC図柄の有効ライン上に揃えて停止させる制御がなされてS152に進む。一方、他のリールが停止している場合にS124に進み、現在の図柄番号から4図柄先内にあるJAC図柄を停止しているJAC図柄の有効ライン上に揃えて停止させる制御がなされてS152に進む。
【0072】
一方、再ゲーム当選フラグがセットされていない場合にはS125に進み、ビッグボーナス当選フラグがセットされているか否かの判断が行なわれる。ビッグボーナス当選フラグがセットされている場合にはS126に進み、他のリールが停止しているか否かの判断がなされ、他のリールがまだ停止していない場合にはS127に進み、現在の図柄番号から4図柄先以内にビッグボーナス図柄(本実施の形態ではA)があるか否かの判断がなされ、ある場合にはS128によりビッグボーナス図柄を有効ライン上に停止させた後S152に進む。一方、現在の図柄番号から4図柄先以内にビッグボーナス図柄がない場合にはその回のゲームにおけるビッグボーナスゲームの開始を諦めてS139に進む。なお、S127によりNOの判断がなされた場合においても、ビッグボーナス当選フラグは引続きセットされたままの状態であるために次回のゲームにおいて再度ビッグボーナス図柄を有効ライン上に停止させんとする制御が試みられ、実際にビッグボーナス図柄が有効ライン上に停止するまでその試みが繰返し実行される。
【0073】
次に、S126により他のリールが停止していると判断された場合にはS129に進み、有効ライン上にビッグボーナス図柄があるか否かの判断がなされ、ある場合にはS130に進み、停止しているビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止できるビッグボーナス図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否かの判断がなされ、ある場合にS131に進み、ビッグボーナス図柄を停止しているリールのビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止させる制御が行なわれる。一方、S130により、停止しているビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止できるビッグボーナス図柄が4図柄先以内にないと判断された場合には、前述と同様にその回のビッグボーナスゲームの開始を諦めてS139に進み、次回のゲームにおいて再度ビッグボーナスゲームの開始が行なわれるような可変表示装置の停止制御が試みられる。
【0074】
ビッグボーナス当選フラグがセットされていない場合にはS132に進み、ボーナス当選フラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、ボーナス当選フラグがセットされている場合にはS133に進み、他のリールが停止しているか否かの判断がなされる。他のリールが停止していない段階ではS134に進み、現在の図柄番号から4図柄先以内にボーナス図柄(本実施の形態ではB)があるか否かの判断がなされ、ある場合にはS135に進みボーナス図柄を有効となっている有効ライン上に停止させる制御が行なわれ、S152に進む。一方、S134によりボーナス図柄がないと判断された場合にはS152に進む。次に、S133により他のリールが既に停止していると判断された場合にはS136に進み、有効ライン上にボーナス図柄があるか否かの判断がなされ、ない場合にはS139に進む。一方、有効ライン上にボーナス図柄がある場合にはS137に進み、停止しているボーナス図柄の有効ライン上に停止できるボーナス図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否かの判断がなされ、ない場合にはS139に進むがある場合にはS138に進み、ボーナス図柄を停止しているリールのボーナス図柄の有効ライン上に停止する制御がなされてS152に進む。
【0075】
一方、S132によりボーナス当選フラグがセットされていないと判断された場合にはS139に進み、小役当選フラグがセットされているか否かの判断がなされ、小役当選フラグがセットされていると判断された場合にはS140に進み、他のリールが停止しているか否かの判断がなされ、まだ他のリールが停止していない段階ではS144に進む。S144では、セットされた小役当選フラグの種類に対応する小役図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否かの判断がなされ、ない場合にはS146に進みただちにリールを停止させてS152に進む。一方、S144により小役図柄があると判断された場合にはS145に進み、その小役図柄を有効ライン上に停止させる制御が行なわれてS152に進む。次に、他のリールが停止している段階ではS140によりYESの判断がなされS141に進み、有効ライン上に小役図柄があるか否かの判断がなされ、ない場合にはS147に進むがある場合にはS142に進み、停止している小役図柄の有効ライン上に停止できる小役図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否かの判断がなされ、ない場合にはS147に進むがある場合にはS143に進み、その小役図柄を停止しているリールの小役図柄の有効ライン上に停止する制御が行なわれた後S152に進む。
【0076】
S139により小役当選フラグがセットされていないと判断された場合にはS147に進む。S147では、他の2つのリールが停止しているか否かの判断がなされ、まだ停止していない段階ではS149に進み、現在停止させようとしているリールが左リールか否かの判断がなされ、左リールでない場合にはS150によりただちに停止制御した後S152に進むが、左リールであった場合にはS151に進み、単図柄Fが有効ライン上に停止しないように停止制御した後にS152に進む。つまりS139により小役当選フラグがセットされていないと判断されたにもかかわらず有効ライン上に単図柄Fが停止したのでは小役入賞が成立してしまうために、S151により、単図柄Fを有効ライン上に停止しないように強制的にずらして停止させるのである。また、他の2つのリールが既に停止している段階でS147によりYESの判断がなされてS148に進み、いずれの図柄も有効ライン上に揃わないように停止制御した後にS152に進む。このように、いずれの当選もなかった場合には、1番目,2番目に停止されるリールは、遊技者の停止操作が検出されることにより(S89,S91,S93)ほとんど瞬時に停止されるため、タイミングを図りながらストップボタン9L,9C,9Rを操作する技術に優れた遊技者の場合には、1番目,2番目に停止されるリールを頻繁にリーチ状態に停止させることが可能になる。そして、そのたびにリーチ音を発生させたのでは、騒々しく耳障りとなるが、本実施の形態では、S109に示したように、ビッグボーナス,ボーナス当選フラグがセットされているときのみリーチ音を発生させているために耳障りとなる不都合もない。小役当選フラグがセットされている場合には1ゲームの終了時点でその小役当選フラグをクリアする処理が行なわれる(S200参照)。ゆえに、小役当選フラグがセットされているにもかかわらずその回のゲームにおいてリールの図柄配列の関係上その小役当選フラグの種類に応じた小役図柄を有効ライン上に揃えることができなかった場合には、その小役当選フラグがクリアされて小役当選が無効となるのであり、次回のゲームにその小役当選フラグを引継いで次回のゲームにおいて小役図柄を有効ライン上に揃えるという制御は行なわないのである。
【0077】
前記S63ないしS152により、前記可変表示装置を制御する可変表示制御手段が構成されている。
【0078】
図16は、入賞判定処理のプログラムを示すフローチャートである。まずS153により、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS159に進み、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされてセットされていない場合にS163に進み、有効ライン上に入賞があったか否かの判断がなされる。有効ライン上に入賞がなかった場合にはS164に進み、払出予定数を「0」にセットした後に、図16に示すコイン払出制御に移行する。一方、S163により有効ライン上に入賞があったと判断された場合にはS165に進み、入賞した有効ラインに対応する有効ライン表示ランプを点滅させる。なお複数の有効ライン上に入賞が生じたときには、その入賞の生じた有効ラインを点滅させる。次にS166に進み、その入賞がビッグボーナス入賞であるか否かの判断がなされる。ビッグボーナス入賞でないと判断された場合にはS168に進み、その入賞がボーナス入賞であるか否かの判断がなされ、ボーナス入賞でないと判断された場合にはS170により再ゲーム入賞であるか否かの判断がなされる。S170により再ゲーム入賞でないと判断された場合にはその入賞は小役入賞であるため、S175に進み、払出予定数を小役に対応する値にセットした後図17に示すコイン払出処理に移行する。
【0079】
S166によりビッグボーナス入賞であると判断された場合にはS167に進み、各小役当選判定値をビッグボーナス時の値にし、ビッグボーナスゲームカウンタを「30」にセットし、ボーナス回数カウンタを「3」にセットし、ビッグボーナス当選フラグをクリアし、払出し予定数を「15」にセットし、ビッグボーナスゲームフラグをセットし、遊技効果ランプを第1態様で点滅させ、ビッグボーナス音をスピーカから発生させる処理が行なわれる。この各小役当選判定値をビッグボーナス時の値にセットして各小役当選判定値の個数を大幅に増やす制御がなされるために、各小役当選の確率が大幅に向上し、ビッグボーナスゲーム時においては高確率で小役図柄が揃うように制御される。なお、ビッグボーナスゲーム中においては特に小役当選の判定を行なうことなく、複数種類の小役当選フラグのうち所定のものを毎ゲームセットするようにしてもよい。一方、S168によりボーナス入賞であると判断された場合にはS169に進み、ボーナスゲームカウンタを「12」にセットし、JAC入賞カウンタを「8」にセットし、ボーナス当選フラグをクリアし、払出し予定数を「15」にセットし、ボーナスゲームフラグをセットし、遊技効果ランプを第2態様で点滅させ、ボーナス音をスピーカから発生させる処理が行なわれる。
【0080】
次に、ボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS153によりYESの判断がなされてS154に進み、ボーナスゲームカウンタを「1」減算し、S155に進み、有効ライン上にJAC入賞があるか否かの判断がなされ、ない場合には払出し予定数を「0」にセットしてコイン払出し制御に移行する。一方、有効ライン上にJAC入賞がある場合にはS156に進み、払出し予定数を「15」にセットし、JAC入賞カウンタを「1」減算し、S157により、入賞した有効ラインに相当する有効ライン表示ランプを点滅させた後コイン払出し制御に移行する。
【0081】
次に、ビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS159によりYESの判断がなされてS160に進み、ビッグボーナスゲームカウンタを「1」減算し、S161により有効ラインにJAC入賞があるか否かの判断がなされ、ない場合にはS163に進むが、ある場合にはS162に進む。S162では、ボーナスゲームカウンタを「12」にセットし、JAC入賞カウンタを「8」にセットし、ボーナスゲームフラグをセットし、払出し予定数を「8」にセットし、遊技効果ランプを第2態様で点滅させ、ボーナス音をスピーカから発生させる。このように、前記S169はビッグボーナスゲームでない通常ゲーム時においてボーナスゲームが開始された時に行なわれる処理であり、S162の方は、ビッグボーナスゲームが開始されている段階でボーナスゲームが成立したときに行なわれる処理である。
【0082】
一方、S170により再ゲーム入賞であると判断された場合にはS171に進み、ランダムカウンタのランダム値R(図6参照)を格納する処理がなされ、S172により、再ゲーム表示ランプ64を点灯または点滅させて再ゲーム表示を行なうとともに再ゲーム音をスピーカ28から発生させる処理がなされる。次にS173に進み、スタート操作があったか否かの判断がなされ、あるまで待機する。そして、遊技者がスタートレバー12を操作することにより制御がS174に進み、再ゲーム当選フラグがクリアされた後図9に示すリール回転処理に移行する。その結果、図7と図8に示したプログラムが実行されることなくリールの回転制御が行なわれるために、賭数の追加入力が受け付けられることなく前回既に入力されている賭数が持ち越されて再ゲームが行なわれる。
【0083】
S175Aにより、払出予定数が小役対応値(図11の15,8,6または3)にセットされた後、S175Bに進み、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされている場合には図17に示すコイン払出処理に移行する。一方、セットされていない場合にはS175Cに進み、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされている場合にはS17に示すコイン払出制御に移行する。そして、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS175Eに進む。なお、S175Dは、後述する別実施の形態の場合に挿入されるステップである。S175Eでは、投入数カウンタの値が累積投入数に加算され、払出予定数の値が累積払出数に加算される処理が行なわれる。次にS175Fに進み、累積払出数/累積投入数を算出する処理が行なわれ、スロットマシン1による価値付与状況を算出する処理が行なわれる。このように、本実施の形態では、ビッグボーナスゲーム当選フラグがセットされていても、累積払出数および累積投入数の計算が行なわれる。仮にビッグボーナスゲーム当選フラグがセットされている場合に累積払出数および累積投入数の計算を行なわないようにした場合には、ビッグボーナスゲーム当選フラグがセットされてから実際にビッグボーナスゲームの図柄がそろってビッグボーナスゲームが発生するまでの間、払出率の安定性が損なわれる。しかし本実施の形態のようにその間も累積払出数および累積投入数の計算を行なうことにより、そうした不都合を防止することができる。
【0084】
次に、S175Gに進み、小役判定モードが「高確率時」になっているか否かの判断がなされ、なっていない場合にはS175Hに進み、S175Fにより算出した算出値が0.4(通常時における下限値)未満であるか否かの判断がなされ、0.4未満の場合にはS175Iにより、小役判定モードを「高確率時」にセットした後S175Lに進む。一方、算出値が0.4以上であった場合には、そのままS175Lに進む。S175Gの判定結果、小役判定モードが「高確率時」になっている場合にはS175Jに進み、S175Fにより算出した算出値が0.5(高確率時における上限値)以上であるか否かの判断がなされる。そして、0.5以上の場合にはS175Kに進み、小役判定モードを「通常時」にセットした後S175Lに進む。一方、S175Jにより、算出値が0.5未満であると判断された場合にはそのままS175Lに進む。このように、小役判定モードが通常時の場合において小役の払出率が40%を割った場合に小役判定モードが「高確率時」に更新される。また、小役判定モードが「高確率時」の場合において小役の払出率が50%に達すれば、小役判定モードを「通常時」に復帰させる制御が行なわれる。
【0085】
次にS175Lでは、累積投入数が「300」以上であるか否かの判断がなされ、以上でない場合にはそのまま図17に示すコイン払出制御に移行するが、以上の場合にはS175Mに進み、累積投入数,累積払出数をそれぞれ1/2の値に修正(小数点以下切上げ)する処理がなされた後にコイン払出制御に移行する。このS175L,S175Mの処理は、ゲーム数が多くなったときに累積投入数と累積払出数とがあまりにも大きな値になり過ぎるのを防止するための処理である。
【0086】
コインの払出状況すなわち価値付与状況の算出方法は、S175Fに示した実施の形態に限定されるものではない。たとえば、(累積投入数-累積払出数)/ゲーム数 を算出するようにしてもよい。また、コインの累積払出数の代わりに累積払出回数を用いてもよく、あるいは、累積払出数と累積払出回数との両方を用いて算出してもよい。さらには、コインの投入数に応じて加算し、コインの払出数に応じて減算する加減算カウンタを設け、その加減算カウンタの値を算出値とするようにしてもよい。本実施の形態では、小役発生確率についてのみ標準値との比較によって制御するようにしたので、通常ゲームにおける払出率を所定範囲内に保ちながら、ビッグボーナスやレギュラーボーナスの発生についてはランダム値Rの抽出タイミングと設定値によって制御されることとなり、高設定でもボーナス発生回数が多いとは限らず、また低設定でも少ないとは限らなくなって遊技者に対しゲームの興趣を持続させることのできる遊技機とすることができる。
【0087】
図16に示した実施の形態では、S175Fによる払出率の算出を行なうに際し、ビッグボーナスゲーム,レギュラーボーナスゲームを除く通常のゲーム時におけるコイン投入数,コイン払出数に基づいて算出するようにしたが、それに代えて、ビッグボーナスゲーム,レギュラーボーナスゲームにおけるコイン投入数,コイン払出数をも含めて算出するようにしてもよい。また、S175Fの算出,S175H,S175Jの判定を、コインの累積投入数が所定値に達した場合にのみ行なうようにしてもよい。
【0088】
次に、S175Dのステップが挿入された別実施の形態を説明する。この別実施の形態は、通常ゲーム時において、3枚賭を行なった場合にのみ小役の確率制御を行なうものであり、S175Dにより、投入数カウンタが「3」の場合にのみS175Eに進んで小役の確率制御を行ない、投入数カウンタが「3」でない場合にはそのままコイン払出制御に移行する。この別実施の形態の場合には、図10(b)におけるコイン投入数「1」と「2」の場合の「高確率」の欄の各小役当選許容値C_(12),D_(12),E_(12),F_(12),C_(22),D_(22),E_(22),F_(22)が不要となる。前記S175EないしS175Mにより、賭数入力手段により入力された入力数の累積値と価値付与手段により付与された有価価値の累積値および有価価値の付与回数の累積値のうち少なくとも一方とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し、該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる確率を制御する確率制御手段が構成されている。
【0089】
図17は、コイン払出制御のプログラムを示すフローチャートである。まずS176により、払出数が払出予定数に達したか否かの判断がなされ、達していない場合にはS177に進み、クレジットゲームモードであるか否かの判断がなされ、クレジットゲームモードでない場合にはS180に進み、コインを1枚払出しそれに応じて払出数を「1」歩進した後S176に戻る。一方、クレジットゲームモードになっている場合にはS178に進み、クレジットカウンタがその上限値である「50」になっているか否かの判断がなされ、なっている場合にはS180に進みコインの払出を行なうが、なっていない場合すなわちまだクレジットカウンタの記憶に余裕がある場合にはS179に進み、クレジットカウンタを「1」歩進するとともに、それに応じて払出数を「1」歩進した後S176に戻る。このS177ないしS180の処理を、払出数=払出予定数になるまで繰返し実行してそのたびにコインの払出あるいはクレジットカウンタへの加算処理が行なわれ、払出数が払出予定数に達した段階でS181に進む。
【0090】
S181では、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされ、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS182に進み、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされ、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS200に進み、JAC入賞フラグをクリアし、小役当選フラグをクリアし、前回投入数を投入数カウンタの値に更新し、投入数カウンタをクリアして図7(b)に示すゲームスタート処理に戻る。一方、ボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS185に進み、JAC入賞カウンタが「0」になったか否かの判断がなされ、なっている場合にはS186によりボーナスゲームカウンタがクリアされた後、S188により、JAC入賞カウンタがクリアされ、ボーナスゲームフラグがクリアされる。一方、JAC入賞カウンタが「0」でない場合にはS187に進み、ボーナスゲームカウンタが「0」であるか否かの判断がなされ、「0」の場合にはS188に進むが、「0」でない場合にはS200に進み、JAC入賞フラグがクリアされ、小役当選フラグがクリアされて図7(b)に示すゲームスタート処理に戻る。このように、ボーナスゲームカウンタが「0」になった段階またはJAC入賞カウンタが「0」になった段階でボーナスゲームフラグがクリアされてボーナスゲームが終了する。
【0091】
次に、S189では、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS190により遊技効果ランプ24を消灯する処理がなされてS200に進む。一方、ビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS191に進み、ボーナス回数カウンタを「1」ディクリメントする処理がなされ、S192により、ボーナス回数カウンタが「0」になったか否かの判断がなされる。ボーナス回数カウンタが「0」になっていない場合にS193に進み、遊技効果ランプを第1態様で点滅させ、ビッグボーナス音をスピーカ28から発生させる処理がなされてS200に進む。一方、ボーナス回数カウンタが「0」になっている場合にはS194に進み、ビッグボーナスゲームカウンタをクリアした後S195に進む。
【0092】
一方、ボーナスゲームフラグがセットされておらずかつビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合には、S183に進み、ビッグボーナスゲームカウンタが「0」であるか否かの判断がなされ、「0」でない場合にはS200に進むが、「0」である場合にはS184に進み、ボーナス回数カウンタをクリアする処理がなされてS195に進む。S195では、ビッグボーナスゲームフラグをクリアしてビッグボーナスゲームを終了させるとともに、小役判定モードを「通常時」にし、累積投入数を「100」にし、累積払出数を「50」にし、遊技効果ランプを消灯する処理が行なわれる。つまりビッグボーナスゲームカウンタが「0」になった段階あるいはボーナス回数カウンタが「0」になった段階でビッグボーナスゲームが終了するのであり、それ以降通常のゲームとなるために、小役当選判定モードを「通常時」に復帰させるとともに、累積投入数と累積払出数とを初期値(S14A参照)に戻す制御が行なわれるのである。
【0093】
次にS196に進み、ゲームオーバー有にセットされているか否かの判断が行なわれる。電源投入時にリセットスイッチ4がONに操作されている場合には前述したようにゲームオーバー無にセットされ(S3参照)、リセットスイッチ4がOFFに操作された場合には前述したようにゲームオーバー有にセットされるのであり(S2参照)、このS196により、ゲームオーバーの有無を判定し、ゲームオーバー無の場合にはS200に進み、以降図7(b)に示すゲームスタートに戻り、ゲームスタート処理が開始される。一方、ゲームオーバー有と判断された場合にはS197に進み、コード「OF」を払出数表示器27により表示するとともにゲームオーバー音をスピーカ28から発生させる処理が行なわれる。これにより、スロットマシンがゲームオーバー(打止め状態)となる。そして、S198に進み、リセット操作があるか否かの判断がなされ、あるまでS197の処理が続行される。そして、遊技場の係員がリセット用鍵孔3bに所定の鍵を挿入してリセットスイッチ4を操作すれば、S198によりYESの判断がなされてS199に進み、「OF」のコード表示がクリアされ、ゲームオーバー音が停止された後S200に進む。このように構成することにより、遊技場の営業形態に応じて、スロットマシンが打止状態に達した段階でそのたびに景品交換を行なわせる遊技場においては打止選択手段により打止手段を機能させるように選択しておけばよく、一方、スロットマシンが打止め状態に達しても景品交換させることなく引続きゲームを続行させるいわゆる無定量方式を採用している遊技場においては、打止選択手段により打止手段が機能しないように選択すればよい。
【0094】
このような遊技場の営業形態に合わせてスロットマシンの打止めに関する制御を行なう他の方法としては、次のようなものがある。
【0095】
図17に示したS195の処理の次に、たとえば自動リセット用タイマをセットし、次にコード「OF」の表示とゲームオーバー音を発生する処理を行ない、次にゲームオーバーの有無を判定するステップを用意する。そして、ゲームオーバー無と判断された場合には、自動リセット用タイマが終了したか否かの判断を行なうステップに進み、タイマが終了していない場合には再び前記コード「OF」を表示しかつゲームオーバー音を発生するステップに戻る。そして、自動リセット用タイマが終了した段階でコード表示のクリア,ゲームオーバー音の停止を行なう処理を実行し、次に図17に示すS200に戻る。一方、ゲームオーバーの有無を判定するステップにおいて、ゲームオーバー有と判断された場合には、リセット操作の有無を判定するステップに移行する。そしてリセット操作がないと判断された場合には前記コード「OF」を表示しかつゲームオーバー音を発生する処理に戻る。そして、リセット操作有と判断された場合には前記コード表示クリア,ゲームオーバー音を停止する処理に進み、その後図16のS200に進む。
【0096】
つまり、前記S1ないしS3により、ゲームオーバー無に設定されている場合には、自動リセット用タイマが終了するまで待って、終了した段階で自動的にゲームオーバーを表わす旨のコード表示をクリアしてゲームオーバー音を停止させてゲームスタート処理に戻るようにし、ゲームオーバー有が設定されている場合には、リセットスイッチ4の操作があるまでゲームオーバーを表わすコード表示を行ないゲームオーバー音をスピーカから発生させる打止め状態を持続させるようにする。また、前記リセット操作があるか否かの判定を行なうステップとコード表示をクリアしかつゲームオーバー音を停止させる処理ステップとにより、手動操作により打止解除を行なう手動打止解除手段が構成されている。また、前記S1ないしS3により、前記自動打止解除手段による打止解除と前記手動打止解除手段による打止解除とのうちいずれか一方を選択する打止解除態様選択手段が構成されている。この別実施の形態によれば、ゲームオーバー無のモードになっている場合に、ビッグボーナスゲームが終了すれば一旦ゲームオーバー(打止状態)となり、所定時間が経過することにより自動的にゲームオーバーが解除されるため、ゲームオーバーとなっている所定時間だけゲームが行なわれない状態となる。その結果、ホール用管理コンピュータにより投入コイン等の利益情報や景品コイン等の不利益情報を集計する際にゲームが行なわれないゲームオーバー状態を区切りにしてゲームオーバー解除から次のゲームオーバーまであるいはビッグボーナスゲーム開始からゲームオーバーまでを一単位にして情報の集計を行なうことも可能となる。
【0097】
なお、本発明は、コインの代わりにパチンコ玉を使用してゲームを行なうタイプのスロットマシンでもよい。その場合には、賭数入力手段は、遊技者が投入したパチンコ玉の個数を賭数として検出するものとなる。また、カード等の記録媒体を挿入し、その記録媒体の記録情報によって特定される遊技者所有の有価価値を使用してゲームが行なわれるスロットマシンでもよい。この場合には、前記遊技者所有の有価価値の一部を賭数として使用するための遊技者の操作を検出する操作検出手段が賭数入力手段となる。さらに、ストップボタンをなくして所定時間の経過により可変表示装置が自動停止するものあるいは、スタートレバーをなくして、賭数の入力により可変表示装置が可変開始するものでもよい。前記S175A、S176ないしS200と、コインホッパー37,コイン払出モータ38,払出コインセンサ39により、前記可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた特定の表示態様のうちのいずれかとなった場合に所定の有価価値を付与する価値付与手段が構成されている。この価値付与手段は、コインを賞品として払わすものに代えて、たとえば、パチンコ玉を払出したり、得点を加算してゲーム終了時にその得点を記録した記録媒体を払出したりするものでもよい。なお、可変表示装置は、回転リール式に代えて、CRT,液晶,LED,エレクトロルミネセンス等からなる電気的表示装置により図柄を可変表示するものや、図柄が描かれた複数枚の円板が回転して可変表示するもの、図柄が描かれたベルトが移動するもの、あるいは、いわゆるリーフ式のもの等、可変表示装置の種類はどのようなものでもよい。また、可変表示部の数は3個に限定されるものではない。
【0098】
なお、可変表示装置70によって所定のビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置が開示されている。ビッグボーナスゲームによってビッグボーナス遊技状態が開示されている。コイン投入口18およびクレジット操作ボタン14によって1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数である賭数を入力するための賭数入力手段が構成されている。
【0099】
図16のステップS163,S166,S167,S168,S196によって前記可変表示装置により前記ビッグボーナス識別情報が導出表示されることにより、前記ビッグボーナス遊技状態に制御可能な遊技制御手段が構成されている。
【0100】
図8のS58,図9のS66,S67,S69,S70,S72,S73,S76,S77,S78,S79,S81,S82,S83およびS84により前記入賞の発生を許容するか否かを、ランダム値を用いて所定の演算を行なった演算結果と所定の当選値とを比較することにより決定する決定手段が構成されている。
【0101】
図13のS114、S119,S120,S124,S128,S131,S135,S138,S143,およびS145によって前記可変表示装置を制御する手段であって、前記決定手段の決定内容に基づいた制御が可能な可変表示制御手段が構成されている。
【0102】
図16のS153,S155,S159,S161,S163,S166,S168,S170により前記可変表示装置の表示結果を判定する判定手段が構成されている。
【0103】
図11(d)に示されるテーブルのうち、小役15枚に対応する領域は、図11(a),(b)に示されるテーブルの小役15枚に対応する領域よりも大きい。このことは、ビッグボーナス時の小役当選値(払出数15枚)の数がビッグボーナス時ではない時の小役当選値(払出数15枚)の数よりも多いことを意味する。これにより、前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に、前記可変表示装置の表示結果が、前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様(たとえば、有効ライン上において「CCC」または「DDD」)となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させる確率制御手段が開示されている。
【0104】
さらに、図11(d)に示されるテーブルのうち、小役8枚に対応する領域は、図11(a),(b)に示されるテーブルの小役8枚に対応する領域よりも大きい。このことは、ビッグボーナス時の小役当選値(払出数8枚)の数がビッグボーナス時ではない時の小役当選値(払出数8枚)の数よりも多いことを意味する。これにより、前記確率制御手段は、前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に、前記可変表示装置の表示結果が、予め複数種類定められた特定の表示態様のうち、1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様とは別の所定の特定の表示態様(たとえば、有効ライン上において「EEE」)となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率をも向上させることが開示されている。
【0105】
さらに、図11(d)に示されるテーブルのうち、小役3枚に対応する領域は、図11(b)に示されるテーブルの小役3枚に対応する領域よりも小さい。このことは、ビッグボーナス時の小役当選値(払出数3枚)の数がビッグボーナス時ではない時の小役当選値(払出数3枚)の数よりも少ないことを意味する。これにより、前記確率制御手段は、前記小役高確率状態から前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に、前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様(たとえば、有効ライン上において左図柄のみ「F」)に関しては、特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させることが開示されている。
【0106】
図16のS175E?S175K、および図11(a),(b)により、前記確率制御手段は、前記通常遊技状態においては前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し、該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が、1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される、特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を制御することが開示されている。
【0107】
【発明の効果】
請求項1に記載の本発明によれば、ビッグボーナス遊技状態中のゲームでは、1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が得られる入賞が発生しやすくなるため、ビッグボーナス遊技状態において遊技者が獲得できる有価価値が大きくなる。これにより、ビッグボーナス遊技状態の魅力を向上させることができる。また、ビッグボーナス遊技状態中のゲームでは、最大の有価価値が得られる入賞が発生しやすくなる一方、それとは別の入賞が発生しにくくなるため、ビッグボーナス遊技状態における入賞率を適正化することができる。また、通常遊技状態においては、遊技者への価値付与状況と予め定められた標準値とが比較され、その比較結果に基づいて可変表示装置の表示結果が1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値を付与する特定の表示態様となることを許容する旨が決定手段により決定される確率が制御され、さらに、前記比較結果に基づいて、可変表示装置の表示結果が、前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとなることを許容する旨が決定手段により決定される確率も併せて制御されることにより、前記複数種類の小役入賞の発生確率のみが前記標準値との比較によって変動して通常遊技状態が小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えられて通常遊技状態における価値付与状況が所定範囲内に保たれるために、その特定の表示態様を導出表示させることが可能なゲームが通常遊技状態において時間的に偏って提供されてしまう不都合を極力防止でき、複数の遊技者が時間を変えて1台の遊技機で遊技した場合に、通常遊技状態において或る遊技者に多くの有価価値が付与されて他の遊技者に有価価値があまり付与されないという不公平な事態が生ずることを極力防止できる。
【0108】
請求項2に記載の本発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、ビッグボーナス遊技状態中のゲームでは、最大の有価価値が得られる入賞に加えて、それとは別の入賞も発生しやすくなるため、ビッグボーナス遊技状態において遊技者が獲得できる有価価値がより一層大きくなり、ビッグボーナス遊技状態の魅力をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】遊技機の一例のスロットマシンの全体正面図である。
【図2】スロットマシンの一部内部構造を示す全体背面図である。
【図3】リールの外周に描かれた識別情報としての図柄を示す展開図である。
【図4】各リールの側面図である。
【図5】スロットマシンに用いられる制御回路を示すブロック図である。
【図6】電源投入時に行なわれる処理プログラムおよびランダムカウンタ更新処理の割込プログラムを示すフローチャートである。
【図7】エラーチェック処理の割込プログラムおよびゲームスタート処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図8】ゲームスタート処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図9】リール回転処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図10】ROMに記憶されている各種当選許容値のテーブルデータを示す図である。
【図11】各種当選許容値の領域を示す図である。
【図12】リール回転処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図13】リール停止処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図14】リール停止処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図15】リール停止処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図16】入賞判定処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図17】コイン払出処理のプログラムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 遊技機の一例のスロットマシン、70 可変表示装置、6L,6C,6R リール、5L,5C,5R 可変表示部、18 賭数入力手段の一部を構成するコイン投入口、12 賭数入力手段の一部を構成するスタートレバー、14 賭数入力手段の一部を構成するクレジット操作ボタン、36 投入コインセンサ、13 スタートスイッチ、45 制御部、43 キースイッチ、44 ドアスイッチ、8L,8C,8R リール位置センサ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2010-05-18 
結審通知日 2010-05-20 
審決日 2010-06-01 
出願番号 特願2000-258258(P2000-258258)
審決分類 P 1 113・ 113- YA (A63F)
P 1 113・ 121- YA (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 仁志  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 川島 陵司
井上 昌宏
登録日 2006-04-21 
登録番号 特許第3795311号(P3795311)
発明の名称 遊技機  
代理人 塚本 豊  
代理人 塚本 豊  
代理人 振角 正一  
代理人 中田 雅彦  
代理人 池垣 彰彦  
代理人 深見 久郎  
代理人 森田 俊雄  
代理人 中田 雅彦  
代理人 川下 清  
代理人 梁瀬 右司  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  

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