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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23Q
管理番号 1241792
審判番号 不服2010-1630  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-26 
確定日 2011-08-11 
事件の表示 特願2002-228751「切削加工方法及び切削油」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月 3日出願公開、特開2003- 94283〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本件発明
本件出願は平成14年8月6日の出願(特許法第44条第1項による原出願の出願日 同9年9月2日)であって、同21年10月21日付で拒絶査定されたものである。これに対し、平成22年1月26日に本件審判が請求されるとともに、同日付で明細書を補正対象書類とする手続補正書が提出され、当審の同22年9月27日付審尋に対して同22年11月26日に回答書が提出された後、当審の同23年2月15日付拒絶理由通知に対して同23年4月19日に意見書と手続補正書が提出されたものである。
本件出願の請求項1に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、平成23年4月19日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
「不水溶性切削油を使用する加工時に、水溶液を加工箇所の周囲に噴霧または噴射するようにした切削加工方法であって、使用後の不水溶性切削油および水溶液を、滞留時間が5分以上の容積を有する一の回収槽に回収貯留して、比重差に基づいて不水溶性切削油とその他の水溶液とを、不水溶性切削油の水分含有率が5%以下になるように分離し、それぞれを前記切削加工に再使用するようにしたことを特徴とする切削加工方法。」(以下、「本件発明」という。)

2.当審の拒絶理由の概要
当審による平成23年2月15日付の拒絶理由通知の概要は、本件出願の請求項1に係る発明が、本件出願の原出願の出願日前に国内において頒布された刊行物である、実願昭58-69743号(実開昭59-176749号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.刊行物記載の発明
刊行物には、次の記載が認められる。
a.(実用新案登録請求の範囲)
「研削点に対するトイシの移動方向手前側において油性研削液をトイシ面に対して略直角方向に吹き付ける油性研削液供給パイプと、ワークに対して少なくともその一方から水溶性研削液を吹き付ける水溶性研削液供給パイプとを設けたことを特徴とする研削液の供給装置。」
b.(明細書第2ページ第15行?第3ページ第20行)
「第1、2図は、いずれも一般的な研削盤に施した本考案の実施例を示すものであって、図中符号1は図示しないタンクからポンプを介してトイシ車3に油性の研削液を供給する研削液パイプで、その先端1aはトイシ車3の研削点より回転方向手前側に位置してトイシ車面3aに対しほぼ直角方向か若干回転方向に開口している。符号2は、水溶性研削液をワーク4に供給する研削液パイプで、ワーク4の形状、大きさ等に応じて一方向もしくは多方向(第2図)から研削液をワーク4に吹き付けられるように構成されている。なお、図中符号5は、テーブル6上に凹設した研削液排出口の樋で、この樋5から図示しないタンク内に捕集された研削液は、遠心分離法、あるいは沈澱法等により再び水溶性研削液と油性研削液に分離されて再使用される。
以上のように構成された実施例において、いま各研削液パイプ1,2からトイシ車3とワーク4にそれぞれ油性及び水溶性の研削液を供給すると、油性研削液はトイシ面3aに直接吹き付けられてトイシ面3a上の空気層に沿ってトイシとワーク4間に介入し、ここで自己の持つ優れた潤滑特性を発揮して良好な研削処理に供される。また、水溶性研削液はワーク4に直接供給されてその発熱をおさえ、ワークの加工精度を高めるとともに火災の発生を未然に防止する。」
c.(明細書第4ページ第8?13行)
「しかも、油性研削液をトイシ面に略直角方向から吹き付けるようにしたので、回転中のトイシ面に発生する層流に沿わせて十分な量の研削液を研削点に供給することが可能となり、油性研削液の特性をさらに発揮させて良好な研削作用をもたらすことができる。」
d.(第1図)
水溶性加工液をワーク4に供給する研削液パイプ2が、トイシ車3とワーク4が接触する研削点の近傍に水溶性研削液を噴射すること、及び、使用後の油性研削液と水溶性研削液とが一緒になって樋5を通ってタンクに捕集されること、が理解されると認める。

上記において、水溶性研削液を研削点の近傍に噴射することは、「加工箇所の周囲に噴射する」、ともいうことができるものである。また、タンクに捕集された研削液を遠心分離法あるいは沈澱法により水溶性研削液と油性研削液とに分離することが、2つの研削液の比重差を利用して分離するものであり、特に沈澱法ではタンク内に研削液が滞留する間に分離するものであることは、当業者にとって周知の事項である。
そこで、上記摘記事項を、技術常識を考慮しつつ、本件発明の記載に沿って整理すると、刊行物には次の発明が記載されていると認められる。
「油性研削液を使用する加工時に、水溶性研削液を加工箇所の周囲に噴射するようにした研削加工方法であって、使用後の油性研削液および水溶性研削液を、タンクに回収貯留して、比重差に基づいて油性研削液と水溶性研削液とを分離し、それぞれを前記研削加工に再使用するようにした研削加工方法。」(以下、「刊行物記載発明」という。)

4.対比
本件発明と刊行物記載発明とを対比すると、前者の「切削加工方法」と後者の「研削加工方法」とは、いずれも加工液を供給しつつ材料を除去する加工方法である限りにおいて共通し、後者の「油性研削液」及び「水溶性研削液」は、それぞれ不水溶性及び水溶性の加工液である限りにおいて、前者の「不水溶性切削液」及び「水溶液」と共通する。また、後者の「タンク」が前者の「回収槽」に相当することは明白である。
したがって、両者は以下の点で一致及び相違すると認められる。
<一致点>
「不水溶性加工液を使用する加工時に、水溶性加工液を加工箇所の周囲に噴射するようにした加工方法であって、使用後の不水溶性加工液および水溶性加工液を、回収槽に回収貯留して、比重差に基づいて不水溶性加工液と水溶性加工液とを分離し、それぞれを前記加工に再使用するようにした加工方法。」である点。
<相違点1>
前者は「切削加工方法」であるのに対し、後者は「研削加工方法」であり、これに伴って、加工液は前者では「不水溶性切削液」及び「水溶液」であるのに対して後者では「油性研削液」及び「水溶性研削液」である点。
<相違点2>
使用後の不水溶性加工液および水溶性加工液の分離は、前者では「滞留時間が5分以上の容積を有する一の回収槽に回収貯留して、不水溶性加工液の水分含有率が5%以下になるように分離」するものであるのに対し、後者では回収槽の容積、回収槽の数及び不水溶性加工液の水分含有率について特定がない点。

5.相違点についての当審の判断
5.1 <相違点1>について
切削加工、研削加工のいずれにおいても、加工液は加工点の冷却と潤滑、ならびに加工屑の除去の作用を行うものであって、根本的に同じものであることは当業者間で普通に知られた事項である。
したがって、研削加工に関する刊行物記載発明を切削加工にも適用することは、当業者が容易に想到し得るものであり、加工液を「油性研削液」及び「水溶性研削液」に代えて「不水溶性切削液」及び「水溶液」とすることは、研削加工から切削加工への転換に伴って名称を変更したにすぎず、刊行物記載発明の「油性研削液」及び「水溶性研削液」は本件発明の「不水溶性切削液」及び「水溶液」に相当するものである。

5.2 <相違点2>について
刊行物記載発明では、摘記事項dに示されるように、不水溶性及び水溶性の加工液が一緒に樋を通って回収槽に捕集されるのであるから、「一の回収槽」に回収貯留されることは自明である。
不水溶性切削液及び水溶液が再利用に際して、粘度等、それぞれの性能を維持するためには、それぞれが加工開始当初の組成になるべく近い状態を保つようにすることが要求されることは、当業者が容易に理解し得るところである。一方、分離に要する時間や設備を考慮すると、完ぺきな分離が実用的でないことも、当業者であれば容易に理解し得る。そして、不水溶性切削液中の水分含有率を5%以下に特定することに格別の臨界的意義も認められない。したがって、分離後の不水溶性切削油の水分含有率を5%以下とすることは、これらの要因を勘案して当業者が適宜選択し得る、設計的事項にすぎない。
沈澱法などの、比重差に基づいた分離法においては、時間とともに分離が進行するため、十分な分離が生じるためには一定以上の滞留時間を要することは当業者間の常識である。そうしてみると、回収槽内で十分な分離が生じるためには、回収された切削液が回収槽内に一定時間以上滞留する必要があり、回収槽には切削液の時間当たり使用量と滞留時間とにより定まる一定以上の容積が必要となることは、当業者にとって自明である。回収槽を、滞留時間が5分以上の容積とすることは、不水溶性切削液と水溶液との分離の進行速度、及び求められる分離度、すなわち不水溶性切削液中の水分含有率によって定まる必要滞留時間に応じて当業者が適宜設計し得る事項である。
なお、請求人は平成23年4月19日付意見書において、概略、「本件発明において、不水溶性切削油の水分含有率が5%以下になるように分離するための条件として、滞留時間が5分以上の容積を有する一の回収槽に不水溶性切削油と水溶液を回収貯留している理由は、不水溶性切削油は、水分含有量に応じて粘度が上昇するとともに、塊状水分によって工具が欠ける恐れがあるので、上述した分離手段を採用することで、不水溶性切削油の粘度上昇と塊状水分による工具の欠けを効率的に防止することにある。本件発明では、不水溶性切削油中の水分含有率の増加と粘度上昇の関係(問題点1)、及び不水溶性切削油中の水分含有率の増加と不水溶性切削油中の塊状水分の増加による工具の欠けの危険性との関係(問題点2)を把握したうえで、それを解決するために上記の相違点に係る分離手段を採用している。本件発明では、ただ漠然と不水溶性切削油と水溶液を再利用しようとするのではなく、再利用する際に生じる具体的な上記問題点(1)と(2)を把握し、それを解決するため上記相違点に係る分離手段を採用したのである。ところが、刊行物には、回収槽に回収した不水溶性切削油と水溶液の分離手段について、具体的な技術手段が一切記載されておらず、上記相違点に係る分離手段は当業者の設計的事項でもない。したがって、刊行物の記載事項に基づいて、当業者が上記相違点に係る分離手段を容易に想到し得る動機付けとなる記載はない。」と主張しているので、これについて検討すると、上記問題点(1)と(2)は不水溶性切削油中の水分含有率を下げることにより対処可能であるところ、「滞留時間が5分以上の容積を有する一の回収槽に不水溶性切削油と水溶液を回収貯留」することによる比重差に基づく静的な分離に、例えば遠心分離法など比重差に基づく動的な分離等の他の方法によって同等の水分含有率となるよう分離することに対して、作用効果上、何らかの差異があるとは認められないため、<相違点2>に係る発明特定事項が刊行物の記載事項に基づいて容易に想到し得るものではない、との主張を採用することはできない。

5.3 まとめ
本件発明には、刊行物記載発明に基づいて普通に予測される範囲を超える格別の作用効果を見出すこともできないから、本件発明は刊行物記載発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、当審の拒絶理由に示したとおり、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
.
 
審理終結日 2011-06-08 
結審通知日 2011-06-14 
審決日 2011-06-27 
出願番号 特願2002-228751(P2002-228751)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 義彦  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 菅澤 洋二
刈間 宏信
発明の名称 切削加工方法及び切削油  
代理人 高崎 真行  
代理人 向江 正幸  
代理人 福島 三雄  
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