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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28F
管理番号 1241871
審判番号 不服2010-11586  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-31 
確定日 2011-08-10 
事件の表示 特願2003-327179号「熱交換器用チューブ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月14日出願公開、特開2006-336873号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成15年9月19日(優先権主張 平成14年10月2日)の出願であって、平成22年2月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成22年5月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成22年5月31日付け手続補正(以下「本件補正」という。)について

本件補正は、本件補正前の平成21年10月2日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項8を削除し、請求項2ないし7を、請求項1ないし6に繰り上げたものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものに該当する。

第3.本願発明について
1.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明は、平成22年5月31日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「所定の長さを有する扁平なチューブ本体に、チューブ長さ方向に延びる複数の冷媒通路が、チューブ幅方向に並列配置に形成される熱交換器用チューブにおいて、
前記チューブ本体の幅を「W」、前記冷媒通路の総断面積を「Ac」、前記チューブ本体の総断面積(冷媒通路部分を含む)を「At」、前記チューブ本体の外周囲長を「L」及び前記冷媒通路の総内周囲長を「P」としたとき、下記の関係式(イ)?(ハ):
W=6?18mm …(イ)
Ac/At×100=50?70 …(ロ)
P/L×100=350?450 …(ハ)
が成立するよう構成されるとともに、
下記の関係式(ニ):
P/W×100=750?850 …(ニ)
が成立するよう構成されてなることを特徴とする熱交換器用チューブ。」

2.引用刊行物とその記載
刊行物:国際公開第02/42706号

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された刊行物には、熱交換器用チューブ及び熱交換器に関して以下の記載がある。

ア.「本第1発明は、所定の長さを有する扁平なチューブ本体に、チューブ長さ方向に延びる複数の冷媒通路が、チューブ幅方向に並列配置に形成される熱交換器用チューブにおいて、前記チューブ本体の総断面積(冷媒通路部分を含む)を「At」、前記冷媒通路の総断面積を「Ac」、前記チューブ本体の外周囲長を「L」、前記冷媒通路の総内周囲長を「P」としたとき、Ac/At×100=30?55、P/L×100=150?325の関係が成立するよう設定されてなるものを要旨としている。
本発明の熱交換器用チューブにおける構成の一例を、図面を用いて詳細に説明すると、第1図及び第2図に示すように、本発明における熱交換器用チューブ(1)は、例えば上記従来の第16図及び第17図に示すマルチフロータイプの熱交換器と同様な熱交換器の熱交換用チューブとして使用されるものであり、長尺なアルミニウム押出成形品等により構成されている。
この熱交換器用チューブ(1)は、高さ(H)が幅(W)よりも小さい扁平なチューブ本体(2)を有している。
チューブ本体(2)には、チューブ長さ方向に沿って延びる断面矩形状の複数の冷媒通路(5)がチューブ幅方向に並列状に形成されている。
ここで、上記したように、本発明の熱交換器用チューブ(1)においては、第5図に示すように、チューブ本体(2)の総断面積(冷媒通路部分を含む)を「At」、冷媒通路の総断面積を「Ac」、チューブ本体(2)の外周囲長を「L」、冷媒通路(5)の総内周囲長を「P」としたとき、Ac/At×100を30?55、P/L×100を150?325に設定する必要がある。
すなわち、Ac/Atが30%未満の場合、冷媒の通路抵抗が大きくなり、圧力損失が大きくなるとともに、チューブ重量の高重量化を来す恐れがある。逆にAc/Atが55%を超える場合、流路断面積が増大し、チューブ内における冷媒の流速が低下し、熱伝達率が減少する。なお、Ac/Atが55%以下の場合には、チューブ内の流速が低下していても、チューブ内周囲長「P」を十分確保することにより、優れた熱性能を得ることができる。 またP/Lが150%未満の場合、伝熱性が低下し、熱交換器として十分な熱性能が得られない。つまり、P/Lが150%以上のとき、Ac/Atが30%未満であれば冷媒圧損が著しく上昇するものの、Ac/Atを30%以上に設定することにより、この冷媒圧損の上昇を抑制することができる。
またP/Lが325%よりも大きくなると、アルミニウム押出チューブの場合、押出金型が緻密な形状となりチューブ製造が困難になる恐れがある。更に3次元形状加工方法や連通孔(冷媒通路)をロールフォーミング等で形成する方法であっても、金型が緻密な形状となりチューブ製造が困難になる恐れがある。」(明細書第2ページ第25行?第4ページ第8行、下線部は当審にて付与。以下同様。)

イ.「また本第1発明においては、前記チューブ本体の幅を「W」として、W=10?20mmの関係が成立するよう設定されてなる構成を採用するのが望ましい。
すなわちチューブ本体(2)の幅(W)が大き過ぎるものでは、装置の大型化を来し、また幅(W)が小さ過ぎるものでは、十分な伝熱性を確保するのが困難になる恐れがある。」(明細書第5ページ第8?12行)

ウ.「1.所定の長さを有する扁平なチューブ本体に、チューブ長さ方向に延びる複数の冷媒通路が、チューブ幅方向に並列配置に形成される熱交換器用チューブにおいて、
前記チューブ本体の総断面積(冷媒通路部分を含む)を「At」、前記冷媒通路の総断面積を「Ac」、前記チューブ本体の外周囲長を「L」、前記冷媒通路の総内周囲長を「P」としたとき、
Ac/At×100=30?55、P/L×100=150?325の関係が成立するよう設定されてなることを特徴とする熱交換器用チューブ。」(請求の範囲の欄、明細書第18ページ第3?10行)

エ.「5.前記チューブ本体の幅を「W」として、W=10?20mmの関係が成立するよう設定されてなる請求の範囲第1項記載の熱交換器用チューブ」(請求の範囲の欄、明細書第18ページ第21?22行)

オ.表1(明細書第13ページ)、表2(明細書第15ページ)には、「P/W」の値が記載されており、実施例において、P/W=3.32から6.5(実施例における最小値につき表1の実施例3及び、表2の実施例8を参照。また、実施例における最大値につき、表1の実施例1、4及び、表2の実施例9を参照)の範囲をとりうることを示している。

以上のア.?エ.の記載と、オ.の表1、表2から把握できる事項を総合すると、刊行物には以下の発明が記載されている。(なお、オ.P/W=3.32は、P/W×100=332に、P/W=6.5はP/W×100=650と換算して表記した。)

「所定の長さを有する扁平なチューブ本体に、チューブ長さ方向に延びる複数の冷媒通路が、チューブ幅方向に並列配置に形成される熱交換器用チューブにおいて、チューブ本体の幅を「W」、冷媒通路の総断面積を「Ac」、チューブ本体の総断面積(冷媒通路部分を含む)を「At」、前記チューブ本体の外周囲長を「L」、前記冷媒通路の総内周囲長を「P」としたとき、下記の関係式
W=10?20mm
Ac/At×100=30?55
P/L×100=150?325
が成立するように構成され、
P/W×100=332?650である熱交換器用チューブ。」(以下「引用発明」という。)

3.発明の対比
本願発明と、引用発明とを対比すると、引用発明においては、「W=10?20mm」であるのに対し、本願発明においては、「W=6?18mm」であるから、両者は、W=10?18mmの範囲において一致する。さらに、引用発明においては、「Ac/At×100=30?55」であり、本願発明においては、「Ac/At×100=50?70」であるから、両者は、Ac/At×100=50?55の範囲において一致する。
よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「所定の長さを有する扁平なチューブ本体に、チューブ長さ方向に延びる複数の冷媒通路が、チューブ幅方向に並列配置に形成される熱交換器用チューブにおいて、前記チューブ本体の幅を「W」、前記冷媒通路の総断面積を「Ac」、前記チューブ本体の総断面積(冷媒通路部分を含む)を「At」、前記チューブ本体の外周囲長を「L」、前記冷媒通路の総内周囲長を「P」としたとき、下記の関係式
W=10?18mm
Ac/At×100=50?55が成立するように構成された熱交換器用チューブ。」

[相違点1]
本願発明においては、「P/L×100=350?450」であるのに対し、引用発明においては、「P/L×100=150?325」である点。

[相違点2]
本願発明においては、「P/W×100=750?850」であるのに対し、引用発明においては、「P/W×100=332?650」である点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について判断する。

[相違点1について]
刊行物には、「P/Lが150%未満の場合、伝熱性が低下し、熱交換器として十分な熱性能が得られない。」及び、「チューブ内周長「P」を十分確保することにより、優れた熱性能を得ることができる。」(2.(1)ア.参照)と、良好な伝熱性や熱性能を確保するために「P」の値を大きくすることに関する記載がある。
また、刊行物には、「P/Lが325%よりも大きくなると・・金型が緻密な形状となりチューブ製造が困難になる恐れがある。」(2.(1)ア.参照)と記載されているが、仮に、P/Lが上限である325%を超えたとしても、単に、「チューブ製造が困難になる恐れがある」程度のことであり、P/Lの上限である325%には臨界的意義は認められないから、熱交換器の伝熱性を向上させるために、P/Lが325%(P/L×100が325)を超えることを必ずしも阻害するものとはいえない。
よって、引用発明において、熱交換器用チューブにおいて、伝熱性の向上のために、冷媒通路の総内周囲長「P」をより大きいものとすることにより、上記相違点1に係る本願発明とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

[相違点2について]
刊行物には、「チューブ内周長「P」を十分確保することにより、優れた熱性能を得ることができる。」(2.(1)ア.参照)と、良好な伝熱性や熱性能を確保するために「P」の値を大きくすることに関しての記載があり、引用発明において、熱交換器用チューブにおいて、上記刊行物に記載の技術思想を適用して、冷媒通路の総内周囲長「P」をより大きいものすることにより、上記相違点2に係る本願発明とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
あるいは、チューブ本体の外周囲長「L」は、チューブ本体の幅「W」×2+チューブ本体の高さ「H」×2に、ほぼ相当するが、扁平なチューブ本体の高さ「H」が、チューブ本体の外周囲長「L」、チューブ本体の幅「W」に対して十分小さな値であることを考慮するならば、チューブ本体の外周囲長「L」は、チューブ本体の幅「W」のおおよそ2倍である。このことからみて、上記[相違点1について]で検討したように、P/L×100=350?450とすることが当業者であれば容易になし得たものであれば、P/W×100が、P/L×100のおおよそ2倍である750?850程度の値をとりうることも、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明により得られる効果も、引用発明から当業者であれば予測できた範囲のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.結び
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-27 
結審通知日 2011-06-07 
審決日 2011-06-20 
出願番号 特願2003-327179(P2003-327179)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F28F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柿沼 善一  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 青木 良憲
松下 聡
発明の名称 熱交換器用チューブ  
代理人 清水 義仁  
代理人 高田 健市  
代理人 清水 久義  

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