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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01L
管理番号 1241923
審判番号 不服2009-19816  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-15 
確定日 2011-08-12 
事件の表示 平成11年特許願第236703号「半導体圧力センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月 6日出願公開、特開2001- 59787〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年8月24日の出願であって、明細書及び図面について平成21年1月6日付けで補正がなされ(以下、「補正1」という。)、明細書について平成21年4月13日付けで補正がなされ(以下、「補正2」という。)、平成21年7月9日付け補正却下の決定により補正2を却下するとともに、同日付けで拒絶査定がなされ(送達:同年7月15日)、これに対し、同年10月15日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び図面についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
その後、当審より平成22年8月19日付け審尋書により審尋をしたところ、請求人より、同年10月25日付け回答書の提出があった。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。
(本件補正前)
「半導体のセンサ素子と、このセンサ素子を収容したセンサケースと、このセンサケースが取り付けられ上記センサ素子よりも大きいセンサ用回路基板と、このセンサ用回路基板に設けられ上記センサ素子の出力が接続されるセンサ用回路と、上記センサ素子が取り付けられた側とは反対側の上記センサ用回路基板面に表面実装され上記センサ素子の大気圧導入部よりも大きいLSIとを備え、上記センサ素子の上記大気圧導入部が対面した部分の上記センサ用回路基板には一つの透孔のみが形成され、上記一つの透孔が上記LSIの裏面に対面していることを特徴とする半導体圧力センサ。」
(本件補正後)
「半導体のセンサ素子と、このセンサ素子が内部に一体に固定されたセンサケースと、このセンサケースが取り付けられ上記センサ素子よりも大きいセンサ用回路基板と、このセンサ用回路基板の表裏面に形成された導体による回路パターンとその回路パターンに接続された電子素子とから成り上記センサ素子の出力が接続されるセンサ用回路と、上記センサ素子が取り付けられた側とは反対側の上記センサ用回路基板面に隙間を空けて表面実装され上記センサ素子の大気圧導入部よりも大きいLSIとを備え、上記センサ素子を内蔵した上記センサケースが上記センサ用回路基板に表面実装され、上記センサ素子の外表面側の上記大気圧導入部が対面した部分の上記センサ用回路基板には、上記センサ素子と対面した透孔が形成され、上記センサ素子と上記LSIが、上記大気圧導入部と上記センサ用回路基板の上記透孔を介して、上記LSIの裏面中央部で対面するとともに、上記センサ用回路基板の上記透孔全体が上記LSIにより覆われていることを特徴とする半導体圧力センサ。」(下線は補正箇所を明示するために当審で付した。)。

この補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である
(ア)「センサ素子を収容した」を「センサ素子が内部に一体に固定された」と補正し、
(イ)「このセンサ用回路基板に設けられ」を「このセンサ用回路基板の表裏面に形成された導体による回路パターンとその回路パターンに接続された電子素子とから成り」と補正し、
(ウ)「表面実装され」を「隙間を空けて表面実装され」と補正し、
(エ)「センサ素子を内蔵した上記センサケースが上記センサ用回路基板に表面実装され、」を加入し、
(オ)「センサ素子の上記大気圧導入部」を「センサ素子の外表面側の上記大気圧導入部」と補正し、
(カ)「一つの透孔のみ」を「センサ素子と対面した透孔」と補正し、
(キ)「一つの透孔が上記LSIの裏面に対面している」を「センサ素子と上記LSIが、上記大気圧導入部と上記センサ用回路基板の上記透孔を介して、上記LSIの裏面中央部で対面するとともに、上記センサ用回路基板の上記透孔全体が上記LSIにより覆われている」と補正するものである。
よって、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(2)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である.実願平05-015491号(実開平07-043522号)のCD-ROM(以下「引用例」という。)には、「圧力センサー」(考案の名称)に関し、次の事項(a)ないし(f)が図面とともに記載されている。
(a)「【0002】【背景技術】図12には、静電容量式の圧力センサーの従来の一例である圧力センサー900が示されている(特開平2-189435号公報参照)。圧力センサー900 は、有底円筒状のケーシング901 を備え、このケーシング901 内にOリング902 を介して圧力変換素子903 が装着されている。この圧力変換素子903 は、厚肉の基板904 と、測定流体の圧力により変形する薄肉のダイヤフラム905 とを備え、これらの基板904 とダイヤフラム905 とは接合部906 を介して互いに平行に所定間隔を置いて配置されている。基板904 とダイヤフラム905とが対向する面には、それぞれ対向電極907,908 が設けられてコンデンサー909が形成され、このコンデンサー909 に発生する静電容量の変化により測定流体の圧力を検出できるようになっている。
【0003】基板904 とダイヤフラム905 との間には、空間910 が形成され、この空間910は真空とされている。また、ダイヤフラム905 を挟んで空間910 の反対側には、空間911 が形成され、ここにはポート912 から測定流体が導入されるようになっている。基板904 の背面側には、ケーシング901 の開口部分を塞ぐように設置された電気コネクター913 により空間914 が形成されており、この空間914 は、ゴム等の封止用材料915,916 で密封されている。空間914 には、屈曲した回路基板917 が設けられ、この回路基板917 の内側表面上には計測回路918 が設けられている。計測回路918 は、各対向電極907,908に接続されていてコンデンサー909 の静電容量の変化を計測するものであり、集積回路ユニット、抵抗器、コンデンサ等により構成されている。また、計測回路918 は、電源供給用、接地結合用、出力信号取り出し用等のコネクター端子919に接続されている。」
(b)「【0009】【実施例】以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。図1から図6には、本考案の第一実施例に係る静電容量式の圧力変換素子10が示されている。図1において、圧力変換素子10は、図示されない圧力センサーの内部に装着され、測定流体の圧力を検出するために、その圧力を電気的な出力信号に変換するものである。圧力変換素子10は、偏平な円柱状の外形の本体10A を有し、この本体10A は、セラミック製の厚肉の基板11と、セラミック製で測定流体の圧力により変形する薄肉のダイヤフラム12とを備え、これらの基板11とダイヤフラム12とは接合部20を介して互いに平行に所定間隔を置いて配置されている。基板11とダイヤフラム12との対向面13, 14間には、リング状の接合部20に囲まれるように空間30が形成されている。」
(c)「【0012】基板11の背面15(対向面13とは反対側の面)には、ワンチップIC60が搭載されている。このワンチップIC60は、詳細は後述するように、C-MOSのASIC(カスタムIC)であって各静電容量CM, CR, CSの変化を計測する計測回路65(後述の図5参照)を内蔵している。また、基板11の背面15には、このワンチップIC60を直接に搭載するための電極パターン40が印刷形成されている。
図3には、電極パターン40の詳細構成が示されており、(A)は、ワンチップIC60を搭載する前の状態であり、(B)は、ワンチップIC60を搭載した後の状態である。
電極パターン40は、基板11の背面15の外縁部にリング状に形成された回路パス63A を備え、この回路パス63A の図中右側部分の内側突出部に基板11側のシールド電極33用の電極端子43が電気的導通状態で形成されている。
一方、回路パス63A の内側において、基板11側の中央電極31、リファレンス電極32用の各電極端子41, 42およびダイヤフラム12側の共通電極34用の電極端子44がそれぞれスポット状に形成され、これらの各電極端子41, 42, 44からそれぞれ鍵形の各回路パス61, 62, 64が形成され、その先端はワンチップIC60の足(ピン)の位置に導かれている。
この際、共通電極34用の電極端子44および回路パス64の周囲には、所定間隔をおいて回路パス63B が設けられ、この回路パス63B は、リング状の回路パス63A の図中左側部分の内側に接続されて回路パス63A と一体化されている。また、回路パス63B は、回路パス64の先端の両側に位置するワンチップIC60の足の位置を通過するように配置され、ワンチップIC60の接地用端子に接続されるようになっている。これらのシールド電極33用の電極端子43と導通された各回路パス63A,63B は、接地されている。
したがって、中央電極31用の電極端子41を含む回路パス61およびリファレンス電極32用の電極端子42を含む回路パス62と、共通電極34用の電極端子44を含む回路パス64とは、接地電極としての回路パス63A,63B により互いに隔離された配置状態となっている。このため、これらの間の絶縁抵抗低下によるリーク電流の増加の影響を低減できるようになっている。」
(d)「【0013】各電極端子41, 42, 43, 44は、図1に示すように、それぞれ基板11を貫通するように設けられた電極穴45, 46, 47, 48に形成された導通部51, 52, 53, 54により、それぞれ中央電極31、リファレンス電極32、シールド電極33、および共通電極34に導通される接続用端子39と導通している。
この際、各導通部51, 52, 53, 54は各電極穴45, 46, 47, 48の内壁面にそれぞれ設けられており、各穴の中心には、スルーホールが形成されている。このうち電極穴48のスルーホールは後述する導電ペースト25により塞がれているが、残りの電極穴45, 46, 47のスルーホールのうち少なくとも一つは両側の入口を開放されており、空間30に外部の大気を導くことができるようになっている。」
(e)「【0024】続いて、製造工程(3)において、各対向面13、14が向かい合うように基板11とダイヤフラム12とを合わせ、低融点ガラス23を焼成してこれらを接合する。焼成温度は、約600?700℃である。その後、製造工程(4)において、電極穴48に形成されたスルーホールを通して導電ペースト25(図3参照、当審注:図4の誤記と認める。)を細い線の先等に付けて空間24に挿入し、これを焼成して共通電極34と基板11の背面15に設けられたその電極端子44との導通を行う。焼成は、通常600℃以下の温度で行う。最後に、製造工程(5)において、基板11の背面15の各回路パス61?64の一端が集中する箇所、すなわちワンチップIC60の足の位置に相当する箇所に、ワンチップIC60の内部の計測回路65を接続するためのピンをハンダ付けして立て、ここにワンチップIC60を搭載する。」
(f)「【0031】・・・そして、低圧ポートである各電極穴45, 46, 47に形成されたスルーホールのうちの少なくとも一つの入口部分を除いて、電極パターン40を覆うように基板11の背面15に溶融樹脂等を滴下して閉塞する処理、いわゆるポッティングを施すことで、厳しい環境においても使用可能なものとすることができる。ポッティング材料には、ポリウレタン樹脂等を用いることができる。・・・」

まず、引用例は静電容量式の圧力センサーに係り、基板11側に設けられた中央電極31、リファレンス電極32及びシールド電極33、空間30、並びにダイヤフラム12側に設けられた共通電極34がセンサー部としてのコンデンサを形成するから、この部分を、以下、圧力センサ素子と呼ぶこととし、また、電極パターン40とワンチップIC60とから成る部分をセンサ用回路と呼ぶこととする。
してみると、上記記載(b)ないし(e)、及び図1ないし3の記載より、
ア 「静電容量式の圧力センサ素子と、上記圧力センサ素子と同程度の大きさの基板11と、この基板11の背面15に形成された電極パターン40とその電極パターン40に接続されたワンチップIC60とから成り上記圧力センサ素子の出力が接続されるセンサ用回路と、上記基板11の背面15に搭載され上記圧力センサ素子の空間30よりも小さいワンチップIC60とを備え、上記圧力センサ素子の対向面13側の上記空間30が対面した部分の上記基板11には、上記圧力センサ素子を構成する共通電極34と対面した電極穴45が形成され、上記圧力センサ素子と上記ワンチップIC60が、上記ワンチップIC60の裏面で対面している静電容量式の圧力センサー。」との技術事項が読み取れる。

次に、図3(A)で図示された電極穴45に設けられた電極端子41が、ワンチップIC60搭載後の図3(B)では、ワンチップIC60の周辺部に隠れて見えなくなっていることから、上記記載(c)及び図1ないし図3の記載より、
イ 「圧力センサ素子とワンチップIC60が、基板11の電極穴45を介して、ワンチップIC60の裏面周辺部で対面するとともに、電極穴45の全体がワンチップIC60により覆われている。」との技術事項が見て取れる。

次に、図1に示された圧力変換素子10は、図12に示された圧力センサーに組み込まれ、全体として静電容量式の圧力センサーとなるから、上記記載(a)及び図12の記載より、
ウ 「圧力センサ素子を備えた圧力変換素子10が内部に装着されたケーシング901と、上記圧力センサ素子を備えた圧力変換素子10を内蔵した上記ケーシング901が基板11を囲むように設けられた静電容量式の圧力センサー。」との技術事項が読み取れる。

次に、記載(d)によれば、基板11に設けられた電極穴45,46,47のうち、少なくとも一つは両側の入り口を開放している、というのであるから、ワンチップIC60に覆われた電極穴45が両側の入り口が開放されたスルーホールとなっている態様も開示されていると解される。
また、上記記載(f)の「そして、低圧ポートである各電極穴45, 46, 47に形成されたスルーホールのうちの少なくとも一つの入口部分を除いて、電極パターン40を覆うように基板11の背面15に溶融樹脂等を滴下して閉塞する処理、いわゆるポッティングを施すことで、厳しい環境においても使用可能なものとすることができる。」との記載について検討すると、ポッティング処理は、ワンチップIC60の搭載後に行われるものと認められるから、電極穴46,47は、樹脂等により閉塞され得るものである。よって、少なくともワンチップIC60に覆われた電極穴45は、ポッティング処理による閉塞を免れることとなる。
また、記載(e)によれば、「ワンチップIC60の足の位置に相当する箇所に、ワンチップIC60の内部の計測回路65を接続するためのピンをハンダ付けして立て、ここにワンチップIC60を搭載する。」というのであるから、基板11に搭載されたワンチップIC60と基板11との間には、空気が流通する程度の隙間が存在すると解される。
よって、上記記載(d)、(e)、(f)及び図1、3の記載より、
エ 「ワンチップIC60が基板11の背面15に隙間を空けて表面に搭載され、上記基板11には、圧力センサ素子を構成する共通電極34と対面した電極穴45のスルーホールが形成され、上記圧力センサ素子と上記ワンチップIC60が、空間30と上記基板11の上記電極穴45のスルーホールを介して、上記ワンチップIC60の裏面で対面する。」との技術事項が読み取れる。

以上の技術事項アないしエを総合勘案すると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
「静電容量式の圧力センサ素子と、この圧力センサ素子を備えた圧力変換素子10が内部に装着されたケーシング901と、このケーシング901が取り付けられ上記圧力センサ素子と同程度の大きさの基板11と、この基板11の背面15に形成された電極パターン40とその電極パターン40に接続されたワンチップIC60とから成り上記圧力センサ素子の出力が接続されるセンサ用回路と、上記基板11の背面15に隙間を空けて表面に搭載され上記圧力センサ素子の空間30よりも小さいワンチップIC60とを備え、上記圧力センサ素子を備えた圧力変換素子10を内蔵した上記ケーシング901が上記基板11を囲むように設けられ、上記圧力センサ素子の対向面13側の上記空間30が対面した部分の上記基板11には、上記圧力センサ素子を構成する共通電極34と対面した電極穴45のスルーホールが形成され、上記圧力センサ素子と上記ワンチップIC60が、上記空間30と上記基板11の上記電極穴45のスルーホールを介して、上記ワンチップIC60の裏面周辺部で対面するとともに、上記基板11の上記電極穴45のスルーホール全体が上記ワンチップIC60により覆われている静電容量式の圧力センサー。」(以下、「引用発明1」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1における、「ケーシング901」、「基板11」、「電極パターン40」、「表面に搭載され」、「ワンチップIC60」、「対向面13側」、「空間30」、及び「電極穴45のスルーホール」は、本願補正発明の、「センサケース」、「センサ用回路基板」、「導体による回路パターン」、「表面実装され」、「LSI」、「外表面側」、「大気圧導入部」、及び「透孔」にそれぞれ相当する。
イ 引用発明1における「静電容量式の圧力センサ素子」も、本願補正発明における「半導体のセンサ素子」も、共に、「センサ素子」である点で共通し、同様に、引用発明1における「静電容量式の圧力センサー」も、本願補正発明における「半導体圧力センサ」も、共に、「圧力センサ」である点で共通する。
ウ 本願補正発明における「センサ素子が内部に一体に固定されたセンサケース」について、検討する。
この点について、上記回答書は、「ここで言う「一体」は、上記の通り、同一の材料で一体成形されたような構造を指すものではなく、固定的に設けられたことを言うものである。従って、センサ素子がセンサケースに固定的に取り付けられていることは、上記の出願当初の記載から明らかであり、当業者にとって自明の事項であると言える。従って、センサケースとセンサ素子が一体に設けられていることは、当業者であれば自明なことであり、疑う余地はない。」と説明しており、要すれば、本願補正発明における「内部に一体に固定された」は、「固定的に設けられた」という程度の意味と解される。
ところで、引用発明1においては、「圧力センサ素子が内部に装着されたケーシング」であるところ、ここでの「内部に装着された」は、当然に、内部に固定的に装着されたと解される。
したがって、引用発明1における「この圧力センサ素子が内部に装着されたケーシング」は、本願補正発明における「このセンサ素子が内部に一体に固定されたセンサケース」に相当するといえる。
エ 前記相当関係アを踏まえると、引用発明1における「このケーシング901が取り付けられ上記圧力センサ素子と同程度の大きさの基板11」も、本願補正発明における「このセンサケースが取り付けられ上記センサ素子よりも大きいセンサ用回路基板」も、共に、「このセンサケースが取り付けられたセンサ用回路基板」である点で共通する。
オ また、引用発明1における「この基板11の背面15に形成された電極パターン40とその電極パターン40に接続されたワンチップIC60とから成り上記圧力センサ素子の出力が接続されるセンサ回路」も、本願補正発明における「このセンサ用回路基板の表裏面に形成された回路パターンとその回路パターンに接続された電子素子とから成り上記センサ素子の出力が接続されるセンサ用回路」も、共に、「このセンサ用回路基板面に形成された回路パターンとその回路パターンに接続された電子素子とから成り上記センサ素子の出力が接続されるセンサ用回路」である点で共通する。
カ また、引用発明1における「上記基板11の背面15に隙間を空けて表面に搭載され上記圧力センサ素子の空間30よりも小さいワンチップIC60」も、本願補正発明における「上記センサ素子が取り付けられた側とは反対側の上記センサ用回路基板面に隙間を空けて表面実装され上記センサ素子の大気圧導入部よりも大きいLSI」も、共に、「上記センサ用回路基板面に隙間を空けて表面実装されたLSI」である点で共通する。
キ また、引用発明1における「上記圧力センサ素子を備えた圧力変換素子10を内蔵した上記ケーシング901が上記基板11を囲むように設けられ、」も、本願補正発明における「上記センサ素子を内蔵した上記センサケースが上記センサ用回路基板に表面実装され、」も、共に、「上記センサ素子を内蔵した上記センサケースが上記センサ用回路基板に実装され、」ている点で共通する。
ク また、引用発明1における「上記圧力センサ素子の対向面13側の上記空間30が対面した部分の上記基板11には、上記圧力センサ素子を構成する共通電極34と対面した電極穴45のスルーホールが形成され」ている点は、本願補正発明における「上記センサ素子の外表面側の上記大気圧導入部が対面した部分の上記センサ用回路基板には、上記センサ素子と対面した透孔が形成され」ている点に相当する。
ケ さらに、引用発明1における「上記圧力センサ素子と上記ワンチップIC60が、上記空間30と上記基板11の上記電極穴45のスルーホールを介して、上記ワンチップIC60の裏面で対面するとともに、上記基板11の上記電極穴45のスルーホール全体が上記ワンチップIC60により覆われている」も、本願補正発明における「上記センサ素子と上記LSIが、上記大気圧導入部と上記センサ用回路基板の上記透孔を介して、上記LSIの裏面中央部で対面するとともに、上記センサ用回路基板の上記透孔全体が上記LSIにより覆われている」も、共に、「上記センサ素子と上記LSIが、上記大気圧導入部と上記センサ用回路基板の上記透孔を介して、上記LSIの裏面で対面するとともに、上記センサ用回路基板の上記透孔全体が上記LSIにより覆われている」点で共通する。

してみると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「センサ素子と、このセンサ素子が内部に一体に固定されたセンサケースと、このセンサケースが取り付けられたセンサ用回路基板と、このセンサ用回路基板面に形成された導体による回路パターンとその回路パターンに接続された電子部品とから成り上記センサ素子の出力が接続されるセンサ用回路と、上記センサ用回路基板面に隙間を空けて表面実装されたLSIとを備え、上記センサ素子を内蔵した上記センサケースが上記センサ用回路基板に実装され、上記センサ素子の外表面側の上記大気圧導入部が対面した部分の上記センサ用回路基板には、上記センサ素子と対面した透孔が形成され、上記センサ素子と上記LSIが、上記大気圧導入部と上記センサ用回路基板の上記透孔を介して、上記LSIの裏面で対面するとともに、上記センサ用回路基板の上記透孔全体が上記LSIにより覆われている圧力センサ。」
(相違点)
・相違点1:圧力センサの種類が、
本願補正発明では、半導体の圧力センサであるのに対し、引用発明1では、静電容量式の圧力センサである点。
・相違点2:センサ素子とセンサ用回路基板の大小関係について、
本願補正発明では、センサ用回路基板の大きさはセンサ素子よりも大きいとしているが、引用発明1では、両者の大きさは同程度である点。
・相違点3:センサ用回路について、
本願補正発明では、「このセンサ用回路基板の表裏面に形成された導体による回路パターンとその回路パターンに接続された電子素子とから成り上記センサ素子の出力が接続されるセンサ用回路と、上記センサ素子が取り付けられた側とは反対側の上記センサ用回路基板面に隙間を空けて表面実装され上記センサ素子の大気圧導入部よりも大きいLSIとを備え」とあるように、センサ用回路として、LSIとは別に電子素子を設け、LSIが取り付けられた基板面とは反対側の面に該電子素子を取り付けると共に、該電子素子を取り付けた面にも回路パターンを形成したのに対し、引用発明1では、ワンチップIC60(本願補正発明における「LSI」に相当する。以下、同様。)単独でセンサ回路を構成している点。
・相違点4「センサケースとセンサ用回路基板との関係について、
本願補正発明では、センサケースはセンサ用回路基板に表面実装されているのに対し、引用発明1では、センサ用回路基板を囲むように設けられている点。
・相違点5:大気圧導入部とLSIとの大小関係について、
本願補正発明では、LSIは大気圧導入部よりも大きいとしているが、引用発明1では、逆に、ワンチップIC60(LSI)は、空間30(大気圧導入部)よりも小さい点。
・相違点6:LSIと透孔との位置関係について、
本願補正発明では、透孔はLSIの中央部に位置するのに対し、引用発明1では、電極穴45のスルーホール(透孔)は、ワンチップIC60(LSI)の周辺部に位置する点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1、相違点2について、
相違点1と相違点2とを併せて検討する。
圧力をセンシングする部分に半導体を用いた半導体圧力センサは、例えば、原審で引用された下記周知文献1や周知文献2からも明らかなように、周知技術である。そして、この種の半導体圧力センサにおいては、圧力をセンシングする部分を何らかの回路基板上に形成するから、必然的に、回路基板の大きさはセンサ素子よりも大きいものとならざるを得ない。

イ 相違点3について
この種の圧力センサにおいて、基板の表面や裏面の空いたスペースに電子素子を配置することは周知技術である。この点については、基板表面に複数の電子素子を配置したものとして、下記周知文献2を、基板裏面に複数の電子素子を配置したものとして原審で引用された下記周知文献3を、それぞれ参照のこと。
そして、LSIやIC等の必要な電子素子は、必要に応じて複数の電子素子を用いても差し支えなく(周知文献2,3でも複数の電子素子を用いている。)、また、電子素子は基板の表裏を問わず、空いたスペースに配置すれば良いから、引用発明1において、ワンチップIC60(LSI)とは別の電子素子を、ワンチップIC60が設けられた背面15とは反対側の面に設けても良いことは、当業者ならば明らかである。そして、この場合、反対側の面にも、必然的に回路パターンが形成されることとなる。

ウ 相違点4について、
この種の圧力センサにおいて、センサケースを基板の表面に実装する構成とすることは周知の技術でもあり(原審で引用された下記周知文献1を参照のこと。)、引用発明1のようにセンサケースを基板を囲むように設けるか、本願補正発明のように基板の表面に実装するようにするかは、圧力センサとしての製品の実施化に際し、適宜なし得る設計的事項である。

エ 相違点5について、
本願補正発明や引用発明1において、大気圧導入部の機能は、外乱による圧力変動に対して参照圧力となる大気圧導入部の圧力を大気圧に維持することにあり、そのために大気圧導入部は、必要な大きさを有していれば足りる。つまり、大気圧導入部の大きさは、本願補正発明で言えば、大気が導かれる部分である透孔、センサ素子(圧力センサ素子)及び圧力導入筒14(ポート912)の大きさに依存すべきものであって、LSI(ワンチップIC60)との大小関係は技術的に何ら意味がない。LSIは、透孔を覆うに足る大きさがあれば十分なのである。
してみると、LSIと大気圧導入部との大小関係をどうするかは、まさに、当業者が実施の際、適宜採用し得る設計的事項といえる。

オ 相違点6について、
前記したように、本願補正発明は、透孔をLSIで覆うことにより透孔を介して侵入するほこり等の侵入を防ごうとするものであるところ、そのためにはなるべく大きな面積で透孔を覆うことが効果的であることは、その原理上明らかであるから、引用発明1において、ワンチップIC60(LSI)の周辺部に位置する電極穴45(透孔)を、ワンチップIC60(LSI)の中央部に位置するようにすることは、当業者が容易に推考し得たことである。

そして、本願補正発明が明細書に記載の効果を奏することは、引用発明1及び周知技術から当業者が十分に予測可能なものであって格別のものであるとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、補正1によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。
「半導体のセンサ素子と、このセンサ素子を収容したセンサケースと、このセンサケースが取り付けられ上記センサ素子よりも大きいセンサ用回路基板と、このセンサ用回路基板に設けられ上記センサ素子の出力が接続されるセンサ用回路と、上記センサ素子が取り付けられた側とは反対側の上記センサ用回路基板面に表面実装され上記センサ素子の大気圧導入部よりも大きいLSIとを備え、上記センサ素子の上記大気圧導入部が対面した部分の上記センサ用回路基板には一つの透孔が形成され、上記一つの透孔が上記LSIの裏面に対面していることを特徴とする半導体圧力センサ。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例記載の事項・発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例記載の事項は、上記「2.(2)引用例記載の事項・引用発明」に記載したとおりである。
そして、上記記載(f)の「そして、低圧ポートである各電極穴45, 46, 47に形成されたスルーホールのうちの少なくとも一つの入口部分を除いて、電極パターン40を覆うように基板11の背面15に溶融樹脂等を滴下して閉塞する処理、いわゆるポッティングを施すことで、厳しい環境においても使用可能なものとすることができる。」との記載について検討すると、ポッティング処理は、ワンチップIC60の搭載後に行われるものと認められるから、電極穴46,47は、樹脂等により閉塞され得るものである。よって、ワンチップIC60に覆われた電極穴45のみが、ポッティング処理による閉塞を免れることとなる。なお、電極穴48は、導電ペースト25により塞がれている(記載(d))。
してみると、ポッティング処理を施した場合を考慮すると、引用例から以下の発明を認定できる。
「静電容量式の圧力センサ素子と、この圧力センサ素子を備えた圧力変換素子10が内部に装着されたケーシング901と、このケーシング901が取り付けられ上記圧力センサ素子と同程度の大きさの基板11と、この基板11に設けられ上記圧力センサ素子の出力が接続されるセンサ用回路と、上記基板11の背面15に搭載され上記圧力センサ素子の空間30よりも小さいワンチップIC60とを備え、上記圧力センサ素子の対向面13側の上記空間30が対面した部分の上記基板11には電極穴45ないし48が形成され、このうち、電極穴46ないし48は閉塞され、電極穴45のみがスルーホールとなり、上記電極穴45のスルーホールが上記ワンチップIC60の裏面に対面している静電容量式の圧力センサー。」(以下、「引用発明2」という。)

(2)対比
前記「2.(3)対比」に倣って、本願発明と引用発明2とを対比すると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「センサ素子と、このセンサ素子を収容したセンサケースと、このセンサケースが取り付けられたセンサ用回路基板と、このセンサ用回路基板に設けられ上記センサ素子の出力が接続されるセンサ用回路と、上記センサ用回路基板面に表面実装されたLSIとを備え、上記センサ素子の上記大気圧導入部が対面した部分の上記センサ用回路基板には一つの透孔のみが形成され、上記一つの透孔が上記LSIの裏面に対面している圧力センサ。」
(相違点)
・相違点1:圧力センサの種類が、
本願発明では、半導体の圧力センサであるのに対し、引用発明2では、静電容量式の圧力センサである点。
・相違点2:センサ素子とセンサ用回路基板の大小関係について、
本願発明では、センサ用回路基板の大きさはセンサ素子よりも大きいとしているが、引用発明2では、両者の大きさは同程度である点。
・相違点3:大気圧導入部とLSIの大小関係について、
本願発明では、LSIは大気圧導入部よりも大きいとしているが、引用発明2では、逆に、ワンチップIC60(LSI)は、空間30(大気圧導入部)よりも小さい点。

(3)判断
ア 相違点1、相違点2について、
前記「2.(4)判断 ア」で説示したとおりである。
イ 相違点3について、
前記「2.(4)判断 エ」で説示したとおりである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


・周知文献1:特開平8-201197号公報、特に、半導体圧力センサチップ1、パッケージ本体3、母基板8に留意のこと。
・周知文献2:特開平5-332863号公報、特に、圧力センサチップ20、実装基板11、実装部品12に留意のこと。
・周知文献3:特開平10-239193号公報、特に、基板3、電子部品5に留意のこと。
 
審理終結日 2011-06-14 
結審通知日 2011-06-16 
審決日 2011-06-29 
出願番号 特願平11-236703
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01L)
P 1 8・ 575- Z (G01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 健太公文代 康祐越川 康弘  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 山川 雅也
大熊 靖夫
発明の名称 半導体圧力センサ  
代理人 廣澤 勲  

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