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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B05C
管理番号 1242276
審判番号 不服2010-9540  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-06 
確定日 2011-08-22 
事件の表示 平成11年特許願第 86743号「ダイヘッド保持装置およびその運転方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月10日出願公開、特開2000-279865〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年3月29日の出願であって、平成20年10月8日付けの拒絶理由通知に対して平成20年12月9日付けで意見書及び手続補正書が提出され、さらに平成21年6月18日付けの拒絶理由通知に対して平成21年8月20日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年1月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年5月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に明細書について補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成22年11月22日付けの書面による審尋がなされ、平成23年1月20日付けで回答書が提出されたものである。

第2.平成22年5月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年5月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
(1)本件補正の内容
平成22年5月6日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成21年8月20日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記(a)を、下記(b)と補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
ベースと、
ベース上に摺動自在に設けられた下段フレームと、
下段フレームに摺動自在に設けられ、サポートロールに巻付けられたウェブに対してコーティングを施すダイヘッドを保持するダイヘッド搭載架台が取り付けられた上段フレームとを備え、
下段フレームに調節ねじを設け、ベースに調節ねじに当接するストッパを設けてベースに対する下段フレームの位置決めを行ない、準備位置から距離Aだけベースに対して下段フレームがサポートロール側へ前進しベースのストッパに下段フレームの調節ねじが当接して、下段フレームはウェブにダイヘッドが当接しない安全な位置に停止し、上段フレームが下段フレームに対して更に距離Bだけ移動してコーティング位置まで前進することを特徴とするダイヘッド保持装置。
【請求項2】
ベースと、
ベース上に摺動自在に設けられた下段フレームと、
下段フレームに摺動自在に設けられ、サポートロールに巻付けられたウェブに対してコーティングを施すダイヘッドを保持するダイヘッド搭載架台が取り付けられた上段フレームとを備え、
下段フレームに調節ねじを設け、ベースに調節ねじに当接するストッパを設けてベースに対する下段フレームの位置決めを行ない、準備位置から距離Aだけベースに対して下段フレームがサポートロール側へ前進し、ベースのストッパに下段フレームの調節ねじが当接して、下段フレームはウェブにダイヘッドが当接しない安全な位置に停止し、上段フレームが下段フレームに対して更に距離Bだけ移動してコーティング位置まで前進するダイヘッド保持装置の運転方法において、
準備位置から下段フレームをベースに対してサポートロール側へ、調節ねじがストッパに当接するまで距離Aだけ前進させ、下段フレームをウェブにダイヘッドが当接しない安全な位置に停止させ、
上段フレームを下段フレームに対して更に距離Bだけ移動させてコーティング位置まで前進させ、
ウェブに対してダイヘッドがコーティングを施し、
ウェブの紙継ぎ部分がダイヘッドを通過する場合、下段フレームをベースに対して距離Aだけ紙継ぎ後退位置まで後退させることを特徴とする運転方法。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
ベースと、
ベース上に摺動自在に設けられた下段フレームと、
下段フレームに摺動自在に設けられ、サポートロールに巻付けられたウェブに対してコーティングを施すダイヘッドを保持するダイヘッド搭載架台が取り付けられた上段フレームとを備え、
下段フレームに調節ねじを設け、ベースに調節ねじに当接するストッパを設けてベースに対する下段フレームの位置決めを行ない、準備位置から距離Aだけベースに対して下段フレームがサポートロール側へ前進しベースのストッパに下段フレームの調節ねじが当接して、下段フレームはウェブにダイヘッドが当接しない安全な位置に停止し、上段フレームが下段フレームに対して更に距離Bだけ移動してコーティング位置まで前進することを特徴とするダイヘッド保持装置。
【請求項2】
ベースと、
ベース上に摺動自在に設けられた下段フレームと、
下段フレームに摺動自在に設けられ、サポートロールに巻付けられたウェブに対してコーティングを施すダイヘッドを保持するダイヘッド搭載架台が取り付けられた上段フレームとを備え、
下段フレームに調節ねじを設け、ベースに調節ねじに当接するストッパを設けてベースに対する下段フレームの位置決めを行ない、準備位置から距離Aだけベースに対して下段フレームがサポートロール側へ前進し、ベースのストッパに下段フレームの調節ねじが当接して、下段フレームはウェブにダイヘッドが当接しない安全な位置に停止し、上段フレームが下段フレームに対して更に距離Bだけ移動してコーティング位置まで前進するダイヘッド保持装置の運転方法において、
準備位置から下段フレームをベースに対してサポートロール側へ、調節ねじがストッパに当接するまで距離Aだけ前進させ、下段フレームをウェブにダイヘッドが当接しない安全な位置に停止させ、
上段フレームを下段フレームに対して更に距離Bだけ移動させてコーティング位置まで前進させ、
ウェブに対してダイヘッドがコーティングを施し、
ウェブの紙継ぎ部分がダイヘッドを通過する場合、下段フレームをベースに対して距離Aだけ紙継ぎ後退位置まで後退させ、ウェブの紙継ぎ部分がダイヘッドを通過した後、下段フレームをベースに対して調節ねじがストッパに当接するまで距離Aだけ前進させることを特徴とする運転方法。」(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付した。)

(2)本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項2におけるウェブの紙継ぎ部分がダイヘッドを通過する場合の運転の方法について、「ウェブの紙継ぎ部分がダイヘッドを通過した後、下段フレームをベースに対して調節ねじがストッパに当接するまで距離Aだけ前進させる」ことを限定するものであることから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.本件補正の適否についての判断
本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(1)引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された特開平10-244199号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の記載がある。

ア.「【0025】また、上記ダイ(6)は、バックアップロール(2)との離間距離を高精度に調整するため、水平移動可能に構成される。更に、この場合、金属ウェブ(W)の継目を避けるためのダイ(6)の後退操作や金属ウェブ(W)表面に付着した異物の回避操作を迅速に行い、かつ、ダイ(6)のリップ(64c)と金属ウェブ(W)又はバックアップロール(2)との離間距離を一層高精度に調整するため、ダイ(6)は、水平方向について少なくとも2段階に機能する水平移動機構によって移動可能に構成される。すなわち、ダイ(6)の水平移動機構は、リップ(64c)からバックアップロール(2)の表面までの離間距離を大きな範囲で調整する水平粗動機構と、微小な範囲で調整する水平微動機構とから構成される。」(段落【0025】)

イ.「【0026】上記の水平粗動機構は、移動ベース(7)の移動機構として構成される。具体的には、ダイベース(8)と共にダイ(6)を搭載した上記の移動ベース(7)は、フレーム(1)から伸長された水平フレーム(11)上のリニアガイド(12)に搭載される。そして、移動ベース(7)は、水平フレーム(11)側に取り付けられたシリンダ装置(73)(図中、ロッドのみ図示)の進退により、ダイベース(8)及びダイ(6)と共にバックアップロール(2)に対して接近離間する方向へ比較的速い速度で且つ所定の範囲で移動する様になされている。」(段落【0026】)

ウ.「【0028】また、上記の水平微動機構は、ダイベース(8)上におけるダイ(6)の移動機構として構成される。具体的には、ダイ(6)のダイ本体(6a)及び支持ブロック(6b)は、各々、共通のダイベース(8)上にリニアガイド(82)を介して搭載される。そして、ダイ(6)は、ダイベース(8)に取り付けられたシリンダ装置(83)の進退により、バックアップロール(2)に対して接近離間する方向へ移動する様になされている。
【0029】更に、バックアップロール(2)側のダイベース(8)の前半部は、上方に支柱(80)を立設した櫓構造を備えており、ダイ(6)のダイ本体(6a)は、支柱(80)の内側に挿入された状態に配置される。しかも、バックアップロール(2)と反対側に位置する支柱(80)の側面は、バックアップロール(2)側に傾斜した傾斜面に形成される。そして、一側面が上記の傾斜面と同一傾斜角度で形成されたコッター(85)が、支柱(80)と幅広の支持ブロック(6b)の間に挿入される。
【0030】コッター(85)は、ダイベース(8)の支柱(80)上端の水平な梁から下方へ垂直に伸長されたスクリューバーに吊持される。斯かるスクリューバーは、支柱(80)上端の梁に取り付けられたサーボモーターによって回動し、コッター(85)は、スクリューバーの回動によって昇降する様になされている。すなわち、ダイ(6)は、シリンダ装置(83)の後退により、ダイベース(8)の支柱(80)側に押圧され、ダイベース(8)上における最前進位置が規定され、そして、コッター(85)の昇降により、バックアップロール(2)に対して接近離間する方向、すなわち、水平方向に0.001?5mmの範囲で微小移動する様になされている。」(段落【0028】ないし【0030】)

エ.「【0036】なお、図示しないが、オポジット又はオフセットによる塗工操作におけるダイ(6)のリップ(64c)と金属ウェブ(W)の離間距離、‥‥(中略)‥‥は、移動ベース(7)側およびダイベース(8)側にそれぞれ付設された光センサーによって検出され、別途設けられたプログラムコントラーラ(「プログラムコントラーラ」は「プログラムコントローラ」の誤記と認める。)等の制御装置による‥‥(中略)‥‥シリンダ装置(83)及びシリンダ装置(73)の制御によって調整される。」(段落【0036】)

オ.「【0038】オポジットによる塗工操作を行う場合、昇降可能なダイは、リップからの塗料の吐出方向がバックアップロールの水平な直径に略沿った状態に位置する。その際、ダイベース(8)は、ジャッキ(84)の作動を制御されることにより、上下動してダイ本体(6a)のリップ(64c)を所定の高さに位置させる。また、移動ベース(7)は、シリンダ装置(73)の作動を制御されることにより、所定位置まで水平移動する。しかも、ダイ(6)は、シリンダ装置(83)の作動を制御されることにより、バックアップロール側に押圧されると共に、コッター(85)の上下動の制御により、最前進位置が規定される。その結果、ダイ(6)のリップ(64c)先端は、バックアップロール(2)(金属ウェブ(W)表面)から水平方向に一定距離、例えば0.01?1.0mmだけ離間した状態に高精度に調整される。」(段落【0038】)

カ.「【0045】更に、本発明のダイコータにおいては、塗工操作中、金属ウェブ(W)の継ぎ目が通過する場合や金属ウェブ(W)表面に付着した塵芥などの異物がリップ(64c)に引っ掛かった場合、上記の水平粗動機構が迅速にダイ(6)を回避させ、そして、継ぎ目や異物が通過した後は、水平粗動機構が素早くダイ(6)を所定の塗工位置に復帰させ、かつ、水平微動機構がリップ(64c)から金属ウェブ(W)表面までの距離を正確に設定する。従って、本発明のダイコータは、金属シート(W)の接続部分を通過させる等の付帯操作において、金属シート(W)の供給ラインを停止させる必要がなく、極めて効率的に運転できる。」(段落【0045】)

(2)引用文献記載の事項
上記(1)ア.ないしカ.並びに図面の記載から、以下の事項がわかる。

キ.水平フレーム11上にダイベース8が摺動自在に設けられ、水平粗動機構によって移動可能に構成されているとともに、ダイ本体6aを保持する支持ブロック6bが取り付けられたダイ6が、ダイベース8に摺動自在に設けられ、水平微動機構によって移動可能に構成され、ダイ本体6aはバックアップロール2に巻き付けられた金属ウェブWにコーティングを施すものであること。

(3)引用発明
上記(1)ア.ないしカ.、上記(2)キ.並びに図面の記載から、引用文献には以下の発明が記載されているといえる。
「水平フレーム11と、
水平フレーム11上に摺動自在に設けられ、水平粗動機構によって移動可能に構成されたダイベース8と、
ダイベース8に摺動自在に設けられ、水平微動機構によって移動可能に構成され、バックアップロール2に巻き付けられた金属ウェブWに対してコーティングを施すダイ本体6aを保持する支持ブロック6bが取り付けられたダイ6とを備え、
金属ウェブWの継ぎ目が通過するときに、水平粗動機構が迅速にダイ6を回避させた後、水平粗動機構が素早くダイ6を所定の塗工位置に復帰させ、かつ、水平微動機構がリップ64cから金属ウェブWまでの距離を正確に設定する、ダイ本体6aを保持する装置。」(以下、「引用発明」という。)

(4)対比
本願補正発明と引用発明を対比すると、引用発明における「水平フレーム11」は、その構造や機能からみて、本願補正発明における「ベース」に相当し、同様に、「ダイベース8」は「下段フレーム」に、「ダイ6」は「上段フレーム」に、「ダイ本体6a」は「ダイヘッド」に、「支持ブロック6b」は「ダイヘッド搭載架台」に、「バックアップロール2」は「サポートロール」に、「金属ウェブW」は「ウェブ」に、「ダイ本体6aを保持する装置」は「ダイヘッド保持装置」にそれぞれ相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明は、
「ベースと、ベース上に摺動自在に設けられた下段フレームと、下段フレームに摺動自在に設けられ、サポートロールに巻付けられたウェブに対してコーティングを施すダイヘッドを保持するダイヘッド搭載架台が取り付けられた上段フレームとを備えたダイヘッド保持装置。」で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
(A)相違点A
本願補正発明においては、「準備位置から距離Aだけベースに対して下段フレームがサポートロール側へ前進し」、「下段フレームはウェブにダイヘッドが当接しない安全な位置に停止し」、「上段フレームが下段フレームに対して更に距離Bだけ移動してコーティング位置まで前進する」構成を有するのに対し、引用発明においては、「水平粗動機構が素早くダイ6を回避位置から所定の塗工位置に復帰させ、かつ、水平微動機構がリップ64cから金属ウェブWまでの距離を正確に設定する」点(以下、「相違点A」という。)。
(B)相違点B
本願補正発明においては、「下段フレームに調節ねじを設け、ベースに調節ねじに当接するストッパを設けてベースに対する下段フレームの位置決めを行い」、「準備位置から距離Aだけベースに対して下段フレームがサポートロール側に前進し」たときに、「ベースのストッパに下段フレームの調節ネジが当接」するのに対し、引用発明においては、調節ねじ及びストッパに相当する構成がない点(以下、「相違点B」という。)。

(5)判断
相違点A及びBについて検討する。

(A)相違点Aについて
引用発明において「水平粗動機構」は水平フレーム11に対しダイベース8を移動させるものであるところ、「水平粗動機構が素早くダイ6を回避位置から所定の塗工位置に復帰させ」る動きは、本願補正発明において、「ベースに対して下段フレームがサポートローラ側へ前進」する構成に対応する。また、引用発明において「水平微動機構」はダイベース8に対してダイ6を移動させるものであるところ、「水平微動機構がリップ64cから金属ウェブWまでの距離を正確に設定する」動きは、本願補正発明において、「上段フレームが下段フレームに対して」「移動してコーティング位置まで前進する」構成に対応する。
また、引用発明における「リップ(64c)からバックアップロール(2)の表面までの離間距離を大きな範囲で調整する水平粗動機構と、微小な範囲で調整する水平微動機構」(上記2.(1)ア.)という両機構の機能の違いからみて、また、「水平微動機構がリップ64cから金属ウェブWまでの距離を正確に設定する」構成から考えて、引用発明における「所定の塗工位置」は、金属ウェブにダイ本体6aが当接しない安全な位置であると認められる。そして、その後「水平微動機構がリップ64cから金属ウェブWまでの距離を正確に設定」した位置に移動して、コーティングが行われるものと認められる。
一方、本願補正発明において、「距離A」及び「距離B」はそれらの具体的な量に技術的な意義があるものではなく、下段フレームが「準備位置」から「ウェブにダイヘッドが当接しない安全な位置」へ、また「ウェブにダイヘッドが当接しない安全な位置」から「コーティング位置」へと、位置を変えることに技術的な意義があるものと認められる。
以上より、本願補正発明において「準備位置から距離Aだけベースに対して下段フレームがサポートロール側へ前進し」、「下段フレームはウェブにダイヘッドが当接しない安全な位置に停止し」、「上段フレームが下段フレームに対して更に距離Bだけ移動してコーティング位置まで前進する」構成は、引用発明において「ダイ6を回避位置から所定の塗工位置に復帰させ」、金属ウェブにダイ本体6aが当接しない安全な位置にダイベース8が停止し、「水平微動機構がリップ64cから金属ウェブWまでの距離を正確に設定」したコーティング位置に移動することと、実質的には違いがないといえる。
したがって、引用発明において、ダイ6の回避位置から所定の塗工位置までの移動距離を距離A、所定塗工位置からコーティング位置までの移動距離を距離Bとして、相違点Aに係る本願補正発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得たものである。

(B)相違点Bについて
ダイヘッド保持装置において、摺動機構に調節ねじと該調節ねじに当接するストッパを設けて、ダイヘッドとウェブとの位置合わせを行うことは周知技術(例えば、特開平9-220503号公報(段落【0022】及び図1)及び特開平6-238220号公報(段落【0027】及び図4)等参照、以下、「周知技術」という。)であることから、相違点Bに係る本願補正発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得たものである。

また、本願補正発明を全体として検討しても、引用発明及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

以上から、本願補正発明は、引用発明並びに上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、本件補正後の請求項2に係る発明において、「ウェブの紙継ぎ部分がダイヘッドを通過する場合、下段フレームをベースに対して距離Aだけ紙継ぎ後退位置まで後退させ、ウェブの紙継ぎ部分がダイヘッドを通過した後、下段フレームをベースに対して調節ねじがストッパに当接するまで距離Aだけ前進させる」点についても、引用発明(特に「金属ウェブWの継ぎ目が通過するときに、水平粗動機構が迅速にダイ6を回避させた後、水平粗動機構が素早くダイ6を所定の塗工位置に復帰させ、かつ、水平微動機構がリップ64cから金属ウェブWまでの距離を正確に設定する」点)及び周知技術から、当業者が容易に想到し得たものであるから、本件補正後の請求項2に係る発明も、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明
前記のとおり、平成22年5月6日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1に係る発明は、平成20年12月9日付け及び平成21年8月20日付けの手続補正書によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された上記(第2.の[理由]の1.(1)(a)【請求項1】)のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

2.引用文献の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開平10-244199号公報)に記載された引用発明は、前記第2.の[理由]2.(3)に記載したとおりである。

3.対比・判断
平成22年5月6日付けの手続補正書による手続補正で、請求項1は補正されなかったから、本願発明は、本願補正発明と同じものである。
したがって、本願発明は、本願補正発明と同様に、前記第2.の[理由]2.(5)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-27 
結審通知日 2011-06-28 
審決日 2011-07-11 
出願番号 特願平11-86743
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B05C)
P 1 8・ 575- Z (B05C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 昌人  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 金澤 俊郎
安井 寿儀
発明の名称 ダイヘッド保持装置およびその運転方法  
代理人 磯貝 克臣  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 永井 浩之  
代理人 勝沼 宏仁  

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