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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B |
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管理番号 | 1242709 |
審判番号 | 不服2010-8435 |
総通号数 | 142 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-04-21 |
確定日 | 2011-09-01 |
事件の表示 | 特願2004-370735「撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月 6日出願公開、特開2006-178148〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成16年12月22日の出願であって、平成21年12月7日に手続補正がなされ、平成22年2月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ、その後、平成23年3月16日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年5月13日付けで回答書が提出されたものである。 第2 平成22年4月21日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成22年4月21日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の請求項1に記載された発明 平成22年4月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として、以下のように補正された。 「交換レンズがとりつけられるレンズマウント部と、 ティルトアオリ、またはスィングアオリにおける前記交換レンズのレンズ軸に垂直な回転軸と前記レンズマウント部とを前記レンズ軸方向に相対移動させて前記交換レンズの第2主点が前記回転軸を通る位置関係にする移動手段と、 前記第2主点の位置に関する情報を検出するレンズ情報読取部と、 前記回転軸の位置に関する情報を検出するティルト軸マウント間距離情報読取部と、 前記第2主点の位置、前記回転軸の位置に基づいて前記第2主点が前記回転軸を通る位置関係にあるか否かを判断する制御手段とを備え、前記第2主点の位置に関する情報は、前記レンズマウント部と、前記第2主点との第1距離であることを特徴とするティルトアオリ、スィングアオリの少なくとも一方が可能な撮影装置本体。」 そこで、本願の補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 2.引用刊行物 (1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平6-342179号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (1a)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、撮影レンズの少くとも一部をティルトさせるレンズティルト機構をレンズ鏡筒に有するとともに該レンズティルト機構を制御する制御手段を有しているカメラに関する。」 (1b)「【0026】図5は本実施例のティルト可能な撮影光学系を表した図である。よく知られているように、一部のレンズのみが移動することで合焦動作をする撮影光学系では、一部のレンズが移動することにより該光学系の主点位置が変化し、フィルム面に結像される像もレンズのティルト動作に伴いズレてしまう。そこで、このような欠点を排除するために、本実施例のレンズは全体繰り出しで合焦動作を行い、レンズの主点位置hを中心にティルトするように構成されている。従って、合焦動作でレンズがx繰り出すと(b)ティルト駆動モーターもxだけ繰り出して、ティルト駆動モーターの軸がh’の位置に移動するようになっている。すなわち、本実施例の撮影光学系の構成によれば、合焦動作に伴うフィルム面上での像のズレを無くすことができる。(a)は撮影光学系の位置が最短の状態で撮影距離が無限の時を示している。(b)は合焦動作により該光学系をxだけ繰り出した状態を示し、主点位置がhからh’に移動している。(c)は(b)で繰り出された位置でh’を中心に該光学系をティルトさせた状態を示している。」 (1c)「【0084】本実施例では、焦点距離が固定のレンズであったが、ズームレンズでティルトしても像のズレの無い光学系を使用すればズームレンズにも適用でき、またシャッタースピードもパラメーターの1つとして制御変数の一員に加えても問題はない。また、3つのモードしか記述していないが、それ以外のモードのあるカメラやレンズ交換式カメラに適用できることは言うまでもない。」 これらの記載事項及び図面を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。 「撮影レンズの少くとも一部をティルトさせるレンズティルト機構をレンズ鏡筒に有するとともに該レンズティルト機構を制御する制御手段を有しているカメラにおいて、 レンズは全体繰り出しで合焦動作を行い、ティルト駆動モーターもレンズの繰り出し量だけ繰り出して、ティルト駆動モーターの軸がレンズの主点位置に移動し、 レンズの主点位置を中心にティルトするように構成されているカメラ。」(以下「引用発明」という。) 3.対比 補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「ティルト」、「ティルト駆動モーターの軸」、「レンズの主点位置」及び「カメラ」は、それぞれ、補正発明の「ティルトアオリ」、「レンズ軸に垂直な回転軸」、「レンズの第2主点の位置」及び「撮影装置本体」に相当する。 また、引用発明の「レンズは全体繰り出しで合焦動作を行い、ティルト駆動モーターもレンズの繰り出し量だけ繰り出して、ティルト駆動モーターの軸がレンズの主点位置に移動」することと補正発明の「レンズ軸に垂直な回転軸と前記レンズマウント部とを前記レンズ軸方向に相対移動させて前記交換レンズの第2主点が前記回転軸を通る位置関係にする」こととは、ともに「レンズ軸に垂直な回転軸とレンズとをレンズ軸方向に相対移動させてレンズの第2主点が回転軸を通る位置関係にする」点で共通している。 そして、引用発明が、ティルト駆動モーターの軸の位置及びレンズの主点位置を認識していることは明らかであるから、「回転軸の位置に関する情報を検出する情報読取部」及び「第2主点の位置、回転軸の位置に基づいて第2主点が回転軸を通る位置関係にあるか否かを判断する制御手段」を備えていることは明らかである。 してみると、両者は、 「ティルトアオリレンズのレンズ軸に垂直な回転軸とレンズとを前記レンズ軸方向に相対移動させて前記レンズの第2主点が前記回転軸を通る位置関係にする移動手段と、 回転軸の位置に関する情報を検出する情報読取部と、 前記第2主点の位置、前記回転軸の位置に基づいて前記第2主点が前記回転軸を通る位置関係にあるか否かを判断する制御手段とを備える、ティルトアオリが可能な撮影装置本体。」 の点で一致し、次の各点で相違している。 (相違点1) 補正発明が、レンズが交換可能であって、交換レンズがとりつけられるレンズマウント部、及び第2主点の位置に関する情報を検出するレンズ情報読取部を有しているのに対して、引用発明は、そのような構成を有していない点。 (相違点2) 補正発明では、回転軸の位置に関する情報がティルト軸マウント間距離であって、第2主点の位置に関する情報はレンズマウント部と第2主点との第1距離であるのに対して、引用発明は、それぞれがどのような距離であるのか明らかでない点。 4.判断 上記各相違点について検討する。 (相違点1について) ティルトアオリが可能なカメラにおいて、レンズマウントを用いてレンズを交換可能に構成することは、ごく普通に行われている周知技術(特開2000-19578号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2)参照)である。引用文献1にも、引用発明をレンズ交換式カメラに適用できる旨の記載(上記摘記事項(1c)参照)があり、引用発明のレンズを、レンズマウントを用いて交換可能なものとすることは、当業者が適宜選択しうる事項である。 また、レンズ交換式カメラにおいて、レンズが異なればその主点位置が異なることは当業者の技術常識(必要なら実願昭56-26245号(実開昭57-139905号)のマイクロフィルム参照)であって、引用発明のレンズを交換可能に構成する場合に、レンズの主点位置に関する情報を検出する手段を設けることに、格別の技術的困難性はない。 してみると、引用発明に相違点1に係る構成を付加することは、当業者が容易になし得る事項である。 (相違点2について) 各部材の相対的な位置情報を用いて制御する構成において、基準となる位置をどこに設定するかは、任意に決定しうる事項である。補正発明も引用発明も、ともに、回転軸と第2主点の位置関係は相対的なものであるから、これらの位置情報としてどのようなものを採用するかは、当業者が適宜決定しうる事項である。 したがって、引用発明に相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。 そして、補正発明全体の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。 第3 本願発明について 平成22年4月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成21年12月7日付けの手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「交換レンズがとりつけられるレンズマウント部と、 ティルトアオリ、またはスィングアオリにおける前記交換レンズのレンズ軸に垂直な回転軸と前記レンズマウント部とを前記レンズ軸方向に相対移動させて前記交換レンズの第2主点が前記回転軸を通る位置関係にする移動手段と、 前記第2主点の位置に関する情報を検出するレンズ情報読取部と、 前記回転軸の位置に関する情報を検出するティルト軸マウント間距離情報読取部と、 前記第2主点の位置、前記回転軸の位置に基づいて前記第2主点が前記回転軸を通る位置関係にあるか否かを判断する制御手段とを備えたことを特徴とするティルトアオリ、スィングアオリの少なくとも一方が可能な撮影装置本体。」(以下「本願発明」という。) 1.引用刊行物 引用文献1及びその記載事項は、前記「第2」の「2.」に記載したとおりである。 2.対比・判断 本願発明は、前記「第2」で検討した補正発明の「前記第2主点の位置に関する情報は、前記レンズマウント部と、前記第2主点との第1距離である」という事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「第2」の「4.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-04 |
結審通知日 | 2011-07-05 |
審決日 | 2011-07-19 |
出願番号 | 特願2004-370735(P2004-370735) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03B)
P 1 8・ 575- Z (G03B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 菊岡 智代 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
吉川 陽吾 森林 克郎 |
発明の名称 | 撮影装置 |
代理人 | 松浦 孝 |
代理人 | 小倉 洋樹 |
代理人 | 虎山 滋郎 |
代理人 | 坪内 伸 |