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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する F16H |
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管理番号 | 1243444 |
審判番号 | 訂正2011-390076 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2011-06-29 |
確定日 | 2011-09-01 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第4580877号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第4580877号に係る特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第4580877号に係る発明は、平成18年2月6日に特許出願され、平成22年9月3日に特許権の設定登録がされたものであって、その後、平成23年6月29日付けで本件訂正審判の請求がされたものである。 2.請求の要旨 本件訂正審判の請求の要旨は、特許第4580877号の特許請求の範囲を審判請求書に添付した特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものである。 その訂正内容は、次のとおりである。 (訂正事項1) 請求項2に、 「請求項1に記載されたデファレンシャル装置であって、 前記中間伝達部材の端部の外周と前記静止側の収容部材との間には前記軸受けに隣接してオイルシール83が設けられていることを特徴とするデファレンシャル装置。」 とあるのを、 「請求項1に記載されたデファレンシャル装置であって、 前記中間伝達部材の軸方向端側の外周と前記静止側の収容部材との間には前記軸受けに隣接してオイルシールが設けられていることを特徴とするデファレンシャル装置。」 と訂正する(下線部は訂正箇所を示す。)。 3.当審の判断 そこで、訂正事項1について検討すると、訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項2の記載が、本件特許明細書の段落【0007】の「請求項2のデファレンシャル装置は、請求項1に記載されたデファレンシャル装置であって、前記中間伝達部材の軸方向端側の外周と前記静止側の収容部材との間には前記軸受けに隣接してオイルシールが設けられていることを特徴とする。」との記載と整合していないことから、両者の整合を図るために、請求項2に記載された「前記中間伝達部材の端部の」を「前記中間伝達部材の軸方向端側の」と訂正し、「オイルシール83」を「オイルシール」と訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、願書に添付された明細書の段落【0024】には「回転ケース5(中間伝達部材)」と記載され、段落【0025】には「回転ケース5をデフキャリヤ15(静止側収容部材)に支持する一対のベアリング17,17(軸受け)を有し」と記載され、段落【0029】には「デフキャリヤ15は、・・・(省略)・・・左右の支持壁33,35(静止側収容部材を構成する部材)などから構成されており」と記載され、段落【0034】には「左右の支持壁33,35と回転ケース5との間にはシール83が配置され」と記載され、段落【0036】には「キャリヤ本体25の内部でシール91とシール83とOリング85,87とによって区画された空間103にはデフオイルが封入されており」と記載されており、また、願書に添付された図面の例えば図2には、回転ケース5の軸方向端側の外周と支持壁33,35との間にベアリング17に隣接してオイル用のシール83が設けられている点が図示されていることからみて、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。 また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項及び第4項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 デファレンシャル装置 【技術分野】 【0001】 この発明は、一対のクラッチ機構を介して一対の車輪にそれぞれ原動機の駆動力を配分するように構成されたデファレンシャル装置に関する。 【背景技術】 【0002】 特許文献1に記載されたデファレンシャル装置は、左右一対のクラッチ装置を備えており、左車輪には左側のクラッチ装置を介して、また、右車輪には右側のクラッチ装置を介してそれぞれ原動機の駆動力を伝達するように構成されている。 【特許文献1】特開平10-311404号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 上記のような構成のデファレンシャル装置では、一対のクラッチ装置を装備したことにより、極めて大きい駆動力配分比調整機能が得られるという利点がある反面、2セットのクラッチ装置を用いたことに伴って大型化(特に、軸方向に大型化)し、重量が増す傾向があり、小型化と軽量化が求められている。 【0004】 また、一般に、デファレンシャル装置は、動力伝達装置としては、駆動力伝達効率の向上が求められており、そのために、例えば、オイルの粘性による引きずりトルクを低減することが必要であり、また、製品としては、部品点数や組み付け工数の低減によるコスト低減が求められている。 【0005】 そこで、この発明は、一対のクラッチ機構を備えながら、小型化し、軽量化し、コストを低減することができるデファレンシャル装置の提供を目的としている。 【課題を解決するための手段】 【0006】 請求項1のデファレンシャル装置は、原動機の駆動力によって回転する駆動軸と、中間伝達部材と、駆動ギアが前記駆動軸に連結され、被駆動ギアが前記中間伝達部材に連結され、前記駆動軸の回転を前記中間伝達部材に伝達するギア伝動機構と、前記中間伝達部材の回転を一対の車輪側にそれぞれ配分する一対のクラッチ機構とを備えたデファレンシャル装置であって、前記被駆動ギアが連結された前記中間伝達部材の軸方向端側の外周は軸受けを介して静止側の収容部材に支持され、前記クラッチ機構は、前記中間伝達部材の内周に軸方向端側から組み付けられて、前記被駆動ギアの径方向内側に配置され、前記クラッチ機構を押圧するプレッシャーリングが前記軸受けの内周側に配置されていることを特徴とする。 【0007】 請求項2のデファレンシャル装置は、請求項1に記載されたデファレンシャル装置であって、前記中間伝達部材の軸方向端側の外周と前記静止側の収容部材との間には前記軸受けに隣接してオイルシールが設けられていることを特徴とするデファレンシャル装置。 【0012】 請求項1のデファレンシャル装置は、一対のクラッチ機構を用いたことにより、極めて大きい駆動力配分比調整機能が得られ、車両の性能を大幅に向上させることができる上に、下記のように、小型化と、軽量化と、低コスト化が可能である。 【0013】 また、クラッチ機構を被駆動ギアの径方向内側に配置したこの構成では、軸方向で大幅に小型化されており、それだけ車載性が向上している。 【0015】 また、この構成では、中間伝達部材の回転をクラッチ機構に伝達する連結部を被駆動ギアの径方向と両軸受けの径方向と軸方向の少なくともいずれかの内側に配置したことによって軸方向や径方向に小型化されており、それだけ車載性が向上している。 【0016】 請求項2のデファレンシャル装置は、デファレンシャル装置を小型化、軽量化することができる。 【0022】 以下に本発明の実施形態について説明する。 【0023】 <第1実施形態> 図1と図4によって第1実施形態のリヤデフ1(デファレンシャル装置)の説明をする。図1はリヤデフ1を示し、図4はリヤデフ1などが用いられた4輪駆動車の動力系を示している。左右の方向は図1と図4での左右の方向であり、図1の上方はこの4輪駆動車 の前方である。 【0024】 [リヤデフ1の特徴] リヤデフ1は、エンジン(原動機)の駆動力によって回転するドライブピニオンシャフト3(駆動軸)と、回転ケース5(中間伝達部材)と;ドライブピニオンギア7(駆動ギア)がドライブピニオンシャフト3と一体に形成され、リングギア9(被駆動ギア)が回転ケース5に連結され、ドライブピニオンシャフト3の回転を回転ケース5に伝達するギア伝動機構11と;回転ケース5の回転を左右の後輪425,427(車輪)側にそれぞれ配分する一対の多板式メインクラッチ13,13(クラッチ機構)とを備えている。 【0025】 また、リヤデフ1は、メインクラッチ13,13が、リングギア9の径方向内側に配置されており、回転ケース5をデフキャリヤ15(静止側収容部材)に支持する一対のベアリング17,17(軸受け)を有し、メインクラッチ13,13が、両ベアリング17,17の径方向及び軸方向の内側に配置されている。 【0026】 [上記4輪駆動車の動力系の説明] この動力系は、横置きのエンジン401(原動機)と、トランスミッション403と、2-4切替え機構405を有するトランスファ407と、フロントデフ409(エンジンの駆動力を左右の前輪に配分するデファレンシャル装置)と、前車軸411,413と、左右の前輪415,417と、後輪側のプロペラシャフト419と、リヤデフ1(エンジンの駆動力を左右の後輪に配分するデファレンシャル装置)と、後車軸421,423と、左右の後輪425,427などから構成されている。 【0027】 エンジン401の駆動力は、トランスミッション403からフロントデフ409のデフケース429に伝達され、フロントデフ409から前車軸411,413を介して左右の前輪415,417に配分される。また、2-4切替え機構405が連結されていると、デフケース429の回転はトランスファ407からプロペラシャフト419などを介してリヤデフ1に伝達され、リヤデフ1の各メインクラッチ13,13が連結されていると、エンジン401の駆動力は後車軸421,423を介して左右の後輪425,427に配分され、車両は4輪駆動状態になる。 【0028】 また、2-4切替え機構405と各メインクラッチ13,13の連結がそれぞれ解除されると、車両は前輪駆動の2輪駆動状態になり、2-4切替え機構405から回転ケース5までの各動力伝達部材の回転が停止し、振動が低減され、エンジン401の燃費が向上する。 【0029】 [リヤデフ1の構成] リヤデフ1はデフキャリヤ15(静止側の収容部材)に収容されている。デフキャリヤ15は、キャリヤ本体25(静止側収容部材を構成する部材)と、前部カバー27(静止側収容部材を構成する部材)と、左右のカバー29,31(静止側収容部材を構成する部材)と、左右の支持壁33,35(静止側収容部材を構成する部材)などから構成されており、図4のように、カバー27はボルト431(図4)で、カバー29,31はボルト433で、支持壁33,35はボルト435でそれぞれキャリヤ本体25に固定されている。 【0030】 ドライブピニオンシャフト3の前端は中間軸37にスプライン連結され、中間軸37は前後端をボールベアリング39,41でカバー27とキャリヤ本体25とに支持され、中間軸37の前端にスプライン連結されたフランジ43はプロペラシャフト419側に連結されている。ドライブピニオンシャフト3はスラスト力を受けるベアリング45,47によりキャリヤ本体25に支持されており、ドライブピニオンギア7はドライブピニオンシャフト3の後端に形成され、リングギア9はボルト49によって回転ケース5に固定されている。 【0031】 各メインクラッチ13はそれぞれ左右のクラッチ装置19,21の構成要素であり、各クラッチ装置19,21は、メインクラッチ13と、多板式パイロットクラッチ51と、ボールカム53と、カムリング55と、プレッシャーリング57と、アーマチャ59と、ロータ61と、電磁コイル63と、リターンスプリング65と、コントローラなどからそれぞれ構成されている。 【0032】 各メインクラッチ13は、回転ケース5の内周にスプライン連結された一対の中空部材67と、伝達軸69との間にそれぞれ配置されており、回転ケース5に対して径方向内側に、また、軸方向内側に配置されている。各伝達軸69の軸方向内側端部はベアリング71によって中空部材67の内周に支持されている。また、各伝達軸69の軸方向外側端部には左右の駆動軸73,73がスプライン連結されており、各駆動軸73はそれぞれのフランジ75部で後車軸421,423側に連結され、ボールベアリング77によってカバー29,31に支持されている。 【0033】 ボールカム53はカムリング55とプレッシャーリング57との間に設けられており、カムリング55とプレッシャーリング57はいずれも伝達軸69の外周側に軸方向移動自在に支持され、アーマチャ59はロータ61の内周に軸方向移動自在にスプライン連結されている。ロータ61は伝達軸69の外周にスプライン連結されており、電磁コイル63はボールベアリング79により適度なエアギャップを介してロータ61に支持されている。また、プレッシャーリング57とリターンスプリング65との間には相対回転を吸収するニードルベアリング80が配置されている。 【0034】 各駆動軸73と左右のカバー29,31との間にはシール81が配置され、左右の支持壁33,35と回転ケース5との間にはシール83が配置され、キャリヤ本体25とカバー29,31との間にはOリング85が、また、キャリヤ本体25と支持壁33,35との間にはOリング87がそれぞれ配置され、中間軸37とカバー27との間にはシール89が配置され、中間軸37とキャリヤ本体25との間にはシール91が配置されている。カバー29,31にはそれぞれドレン孔93が設けられており、各ドレン孔93はシールワッシャ95とドレンプラグ97とによって密封されている。 【0035】 デフキャリヤ15に設けられたオイル流路99と、駆動軸73と伝達軸69とを通じて設けられオイル流路99と連通したオイル流路101からは低粘度のオイルが強制給油され、ベアリング77,79、メインクラッチ13、パイロットクラッチ51、ボールカム53などを潤滑・冷却する。この低粘度オイルによって、特に、メインクラッチ13とパイロットクラッチ51において各クラッチ板の摺動部が効果的に潤滑・冷却される。 【0036】 また、キャリヤ本体25の内部でシール91とシール83とOリング85,87とによって区画された空間103にはデフオイルが封入されており、ギア伝動機構11(ギア7,9)の噛み合い部及びベアリング17,17を潤滑・冷却し、シール83,91とOリング85,87はデフオイルとクラッチ装置19,21側低粘度オイルとの混ざり合いを防止している。 【0037】 コントローラは、電磁コイル63の励磁、励磁電流の制御、励磁停止などによってクラッチ装置19,21の連結と連結解除などを行い、クラッチ装置19,21を2-4切替え機構405と同時に断続操作する。電磁コイル63が励磁されるとアーマチャ59が吸引され、パイロットクラッチ51が押圧されて締結し、作動したボールカム53のカムスラスト力によりプレッシャーリング57を介しメインクラッチ13が押圧されて締結し、上記のように、駆動力が左右の後輪425,427に伝達され、車両は4輪駆動状態になる。 【0038】 このとき、左右の電磁コイル63の励磁電流を制御し、クラッチ装置19,21の間で後輪425,427側に伝達される駆動力(差動制限力)を調整すれば、車両の回頭性や悪路走破性などを大幅に向上させることができる。 【0039】 また、電磁コイル63の励磁を停止すると、リターンスプリング65によってメインクラッチ13の連結が解除され、上記のように、車両は前輪駆動の2輪駆動状態になる。 【0040】 [リヤデフ1の効果] リヤデフ1は、一対のメインクラッチ13(クラッチ装置19,21)を用いたことにより、上記のように、極めて大きい駆動力配分比調整機能が得られ、車両の性能を大幅に向上させることができる。 【0041】 また、メインクラッチ13をリングギア9の径方向内側に配置したことによって軸方向で大幅に小型化され、車載性が向上している。 【0042】 また、メインクラッチ13を、回転ケース5のベアリング17,17に対し径方向及び軸方向の内側に配置したことにより、径方向と軸方向の両方でさらに小型化され、車載性がさらに向上している。 【0043】 <第2実施形態> 図2と図4によって第2実施形態のリヤデフ201(デファレンシャル装置)の説明をする。左右の方向は図2と図4での左右の方向である。 【0044】 [リヤデフ201の特徴] リヤデフ201は、エンジン(原動機)の駆動力によって回転するドライブピニオンシャフト3(駆動軸)と、回転ケース5(中間伝達部材)と;ドライブピニオンギア7(駆動ギア)がドライブピニオンシャフト3と一体に形成され、リングギア9(被駆動ギア)が回転ケース5に連結され、ドライブピニオンシャフト3の回転を回転ケース5に伝達するギア伝動機構11と;回転ケース5の回転を左右の後輪425,427(車輪)側にそれぞれ配分する一対の多板式メインクラッチ13,13(クラッチ機構)とを備えている。 【0045】 また、リヤデフ201は、メインクラッチ13,13が、リングギア9の径方向内側に配置されており、回転ケース5をデフキャリヤ15(静止側収容部材)に支持する一対のベアリング17,17(軸受け)を有し、メインクラッチ13,13が、両ベアリング17,17の径方向及び軸方向の内側に配置されている。 【0046】 さらに、リヤデフ201では、デフキャリヤ15(静止側の収容部材)に収容されており、回転ケース5とメインクラッチ13とを含むサブアセンブリー範囲を、Oリング203,203(シール)とXリング205,205(シール)とXリング207,207(シール)によって密封構造にすると共に、Xリング207とXリング207の間の空間209と、上記の密封構造部とデフキャリヤ15との間に形成され、ギア伝動機構11を含まない空間211を、それぞれオイルレスの状態にしている。 【0047】 このオイルレス範囲に対応した部分で、キャリヤ本体25と左右のカバー29,31との各接合部からオイル用のシール(リヤデフ1でのOリング85)をそれぞれ取り去っている。 【0048】 [リヤデフ201の構成] 以下、第1実施形態のリヤデフ1との相違点などを説明する。 【0049】 リヤデフ201は、上記のように密封構造にしたことに伴って、内部にオイルレス空間209を設けることが可能になり、また、不要になったOリング85が省かれている。 【0050】 また、密封構造に伴って強制給油が廃止され、その結果、デフキャリヤ15のオイル流路99と駆動軸73と伝達軸69のオイル流路101が廃止されていると共に、カバー29,31のドレン孔93と、シールワッシャ95と、ドレンプラグ97も廃止されている。 【0051】 また、ロータ61は中空部材67にスプライン連結され、ナット213のダブルナット機能によって位置決めされており、Oリング203はこれらロータ61と中空部材67の間でオイル漏れを防止している。 【0052】 また、プレッシャーリング57は伝達軸69に軸方向移動自在にスプライン連結されており、その結果、リヤデフ1で使用されているニードルベアリング80が不要になり、省かれている。 【0053】 また、中空部材67はスナップリング215によって伝達軸69に対し軸方向内側に位置決めされ、カムリング55は伝達軸69に設けられた段差部217によって軸方向外側に位置決めされており、ボールカム53のカムスラスト力とカム反力はスナップリング215と段差部217との間でキャンセルされる。 【0054】 上記のような構成によって、リヤデフ201は、ドライブピニオンシャフト3とドライブピニオンギア7とリングギア9を除いた範囲で、サブアセンブリーされている。 【0055】 [リヤデフ201の効果] リヤデフ201は、リヤデフ1と同等の効果が得られる。 【0056】 また、回転ケース5とメインクラッチ13(クラッチ装置19,21)とを含む上記のサブアセンブリー範囲を、各シール203,205,207を配置して密封構造にし、内部の空間209をオイルレス状態にし、外部の空間211をオイルレス状態にしたことにより、封入オイル量とコストがそれだけ低減されている。 【0057】 また、密封構造に伴って、Oリング85と、オイル流路99,101と、ドレン孔93と、シールワッシャ95と、ドレンプラグ97が省略可能になると共に、軸心給油に必要な構成部材も不要になり、コストと重量が大幅に低減されている。 【0058】 また、軸心給油に必要なデフキャリヤ15(カバー29,31)のオイル流路101が廃止されたことに伴って、カバー29,31が軸方向に短縮されている。2点差線で示したフランジ部75は、短縮されていない状態のフランジ部75の位置を示しており、この短縮分だけ車載性が向上している。 【0059】 また、密封構造にしたサブアセンブリー範囲に低粘度のオイルを封入したことにより、メインクラッチ13及びパイロットクラッチ51でのオイルによる引きずりトルクが軽減され、性能が向上している。 【0060】 また、オイルレスの空間211では、リヤデフ201がデフオイルによる回転抵抗から解放され、性能が向上している。 【0061】 また、オイルレスにしたことによって、デフキャリヤ15を構成するキャリヤ本体25と左右のカバー29,31との各接合部でOリング85を廃止することができ、それだけコストが低減されると共に、オイルレス範囲ではオイル漏れから解放されて信頼性が向上する。 【0062】 これらの効果に加えて、プレッシャーリング57を伝達軸69にスプライン連結させたことにより、ニードルベアリング80が不要になり、それだけ低コストになっている。 【0063】 また、スナップリング215と段差部217とによってボールカム53のカムスラスト力とカム反力をキャンセルするように構成したから、強度のバランスがそれだけ向上している。 【0064】 また、リヤデフ201は、サブアセンブリーされた範囲で、組付けが容易になり、組付けコストが低減されている。 【0065】 <第3実施形態> 図3と図4によって第3実施形態のリヤデフ301(デファレンシャル装置)の説明をする。左右の方向は図3と図4での左右の方向である。 【0066】 以下、第1実施形態のリヤデフ1及び第2実施形態のリヤデフ201との相違点などを説明する。 【0067】 [リヤデフ301の特徴及び構成] リヤデフ301は、リヤデフ201において、デフキャリヤ15の左右の支持壁33,35と回転ケース5との間のシール83を廃止したものであり、従って、空間211はオイルレスになっていない。 【0068】 また、リヤデフ1と同様に、キャリヤ本体25とカバー29,31との間にOリング85が用いられており、カバー29,31にはドレン孔93が設けられ、シールワッシャ95とドレンプラグ97が装着されている。 【0069】 [リヤデフ301の効果] リヤデフ301は、空間211をオイルレス構成にした効果と、Oリング85とドレン孔93とシールワッシャ95とドレンプラグ97を廃止したことによる効果を除いて、リヤデフ201と同等の効果が得られる。 【0070】 また、リヤデフ301は、シール83を廃止したことに伴って軸方向に短縮されている。2点差線で示したフランジ部75はリヤデフ201での実線のフランジ部75の位置であり、このように、リヤデフ201より軸方向にさらに短縮され、この短縮分だけさらに車載性が向上している。 【0071】 <第4実施形態> 図5によって第4実施形態のリヤデフ501(デファレンシャル装置)の説明をする。左右の方向は図5での左右の方向である。 【0072】 [リヤデフ501の特徴] リヤデフ501は、エンジン(原動機)の駆動力によって回転するドライブピニオンシャフト3(駆動軸)と、回転ケース5(中間伝達部材)と;ドライブピニオンギア7(駆動ギア)がドライブピニオンシャフト3と一体に形成され、リングギア9(被駆動ギア)が回転ケース5に連結され、ドライブピニオンシャフト3の回転を回転ケース5に伝達するギア伝動機構11と;回転ケース5の回転を左右の後輪425,427(車輪)側にそれぞれ配分する一対の多板式メインクラッチ13,13(クラッチ機構)とを備えている。 【0073】 メインクラッチ13,13が、リングギア9の径方向内側に配置されており、 回転ケース5をデフキャリヤ15(静止側収容部材)に支持する一対のベアリング17,17(軸受け)を有し、メインクラッチ13,13が、両ベアリング17,17の径方向及び軸方向の内側に配置されている。 【0074】 また、リヤデフ501は、図4の4輪駆動車に、リヤデフ1,201,301と置き換えて用いられている。 【0075】 [リヤデフ501の構成] 以下、第1実施形態のリヤデフ1との相違点などを説明する。 【0076】 各メインクラッチ13はそれぞれ左右のクラッチ装置503,505の構成要素であり、各クラッチ装置503,505は、メインクラッチ13と、ボールカム507と、カムリング509,511と、プレッシャーリング513と、2段の減速ギヤ組515,517と、電動モータ519と、リターンスプリング521と、コントローラなどからそれぞれ構成されている。 【0077】 伝達軸69の軸方向内側端部はベアリング71により中空部材67の内周に支持され、軸方向外側端部はボールベアリング523により左右のカバー29,31に支持されており、中空部材67の内側端部にはボールカム507のカムスラスト力を受けるベアリング525が配置されている。 【0078】 ボールカム507は、カムリング509,511の間に設けられており、軸方向外側のカムリング509はスラスト力を受けるベアリング527などを介して上記ベアリング523側に位置決めされ、軸方向外側のカムリング511はスラスト力を受けるベアリング529とプレッシャーリング513とを介してメインクラッチ13を押圧できるようにされている。 【0079】 減速ギヤ組515は、電動モータ517の出力軸531に形成された小径ギア533と、支持軸535上で回転自在に支持された大径ギア537からなり、減速ギヤ組517は、大径ギア537と一体に形成された小径ギア539と、上記のカムリング509と一体に形成された大径ギア541からなり、各減速ギヤ組515,517は電動モータ517の回転を減速しカムリング509を介してボールカム507に伝達する。 【0080】 電動モータ517はブラケット543に取り付けられており、ブラケット543は左右のカバー29,31に取り付けられている。ブラケット543とカバー29,31との間にはOリング545が配置されている。 【0081】 コントローラは、電動モータ517の作動、反転、停止によってクラッチ装置503,505の連結と連結解除などを行い、クラッチ装置503,505を2-4切替え機構405と同時に断続操作する。電動モータ517を作動させると、そのトルクを受けてボールカム507が作動し、カムスラスト力によりカムリング511とベアリング529とプレッシャーリング513とを介してメインクラッチ13が押圧されて締結し、車両は4輪駆動状態になる。また、電動モータ517を反転させると、リターンスプリング521によってメインクラッチ13の連結が解除され、車両は前輪駆動の2輪駆動状態になる。 【0082】 [リヤデフ501の効果] リヤデフ501は、一対のメインクラッチ13(クラッチ装置503,505)を用いたことにより、極めて大きい駆動力配分比調整機能が得られ、車両の性能を大幅に向上させることができる。 【0083】 また、メインクラッチ13をリングギア9の径方向内側に配置したことによって軸方向で大幅に小型化され、車載性が向上している。 【0084】 また、メインクラッチ13を、回転ケース5のベアリング17,17に対し径方向内側及び軸方向内側に配置したことによって径方向と軸方向の両方でさらに小型化され、車載性がさらに向上している。 【0085】 <参考例> 図6と図7によって第5実施形態のリヤデフ601(デファレンシャル装置)の説明をする。図6はリヤデフ601を示し、図7はリヤデフ601が用いられた4輪駆動車の動力系を示している。左右の方向は図6と図7での左右の方向であり、図6の上方はこの4輪駆動車の前方である。 【0086】 [リヤデフ601の特徴] リヤデフ601は、エンジン(原動機)の駆動力によって回転するドライブピニオンシャフト3(駆動軸)と、回転ケース5(中間伝達部材)と;ドライブピニオンギア7(駆動ギア)がドライブピニオンシャフト3と一体に形成され、リングギア9(被駆動ギア)が回転ケース5に連結され、ドライブピニオンシャフト3の回転を回転ケース5に伝達するギア伝動機構11と;回転ケース5の回転を左右の後輪425,427(車輪)側にそれぞれ配分する一対の多板式メインクラッチ13,13(クラッチ機構)とを備えている。 【0087】 また、リヤデフ601は、回転ケース5をデフキャリヤ15(静止側収容部材)に支持する一対のベアリング17,17(軸受け)を有し、回転ケース5の回転をメインクラッチ13に伝達するボールスプライン603(連結部)を有し、ボールスプライン603が、リングギア9の径方向内側とベアリング17,17の径方向内側及び軸方向内側に配置されている。 【0088】 [上記4輪駆動車の動力系の説明] この動力系は、横置きのエンジン401(原動機)と、トランスミッション403と、トランスファ407と、フロントデフ409(エンジンの駆動力を左右の前輪に配分するデファレンシャル装置)と、前車軸411,413と、左右の前輪415,417と、後輪側のプロペラシャフト419と、リヤデフ601(エンジンの駆動力を左右の後輪に配分するデファレンシャル装置)と、後車軸421,423と、左右の後輪425,427などから構成されている。 【0089】 エンジン401の駆動力は、トランスミッション403からフロントデフ409のデフケース429に伝達され、フロントデフ409から前車軸411,413を介して左右の前輪415,417に配分され、デフケース429の回転はトランスファ407からプロペラシャフト419などを介してリヤデフ601側に伝達される。また、リヤデフ601に内蔵されたカップリング605とリヤデフ601の各メインクラッチ13,13がそれぞれ連結されていると、エンジン401の駆動力は後車軸421,423を介して左右の後輪425,427に配分され、車両は4輪駆動状態になる。 【0090】 また、カップリング605と各メインクラッチ13,13の連結がそれぞれ解除されると、車両は前輪駆動の2輪駆動状態になる。 【0091】 [リヤデフ601の構成] 以下、第1実施形態のリヤデフ1との相違点などを説明する。 【0092】 各メインクラッチ13はそれぞれ左右のクラッチ装置607,609の構成要素であり、各クラッチ装置607,609は、上記のボールスプライン603とカップリング605とを有するリヤデフ601と、メインクラッチ13と、パイロットクラッチ51と、ボールカム53と、カムリング55と、プレッシャーリング57と、アーマチャ59と、ロータ61と、電磁コイル63と、リターンスプリング65と、コントローラなどからそれぞれ構成されている。 【0093】 カップリング605は、中間軸37とドライブピニオンシャフト3との間に配置された多板クラッチ611と、電磁コイル613などから構成されており、上記のようにドライブピニオンシャフト3以下とエンジン401側とを断続する2-4切替え機構として機能する。 【0094】 ボールスプライン603は、中空部材67と伝達軸69とを回転方向に連結すると共に、伝達軸69を左右に移動自在にしており、プレッシャーリング57は伝達軸69に固定されている。また、リターンスプリング65は中空部材67と伝達軸69との間に配置され、伝達軸69とプレッシャーリング57をメインクラッチ13の連結解除方向(軸方向外側)に付勢している。また、メインクラッチ13は、クラッチハウジング615とプレッシャーリング57との間に配置されており、ロータ61は、クラッチハウジング615と駆動軸73にスプライン連結され、これらを回転方向に連結している。伝達軸69と駆動軸73はベアリング617を介して相対回転自在にセンターリングされている。 【0095】 また、電磁コイル63とパイロットクラッチ51とアーマチャ59はメインクラッチ13の径方向内側に配置されており、ボールカム53はパイロットクラッチ51とアーマチャ59の径方向内側に配置されている。 【0096】 コントローラは、電磁コイル63の励磁、励磁電流の制御、励磁停止などによってクラッチ装置607,609の連結と連結解除などを行い、クラッチ装置607,609をカップリング605と同時に断続操作する。電磁コイル63が励磁されるとアーマチャ59が吸引されパイロットクラッチ51が押圧されて締結し、作動したボールカム53のカムスラスト力によりプレッシャーリング57を介しメインクラッチ13が押圧されて締結し、上記のように、駆動力が左右の後輪425,427に伝達され、車両は4輪駆動状態になる。 【0097】 このとき、左右の電磁コイル63の励磁電流を制御し、クラッチ装置607,609の間で後輪425,427側に伝達される駆動力(差動制限力)を調整すれば、車両の回頭性や悪路走破性などを大幅に向上させることができる。 【0098】 また、電磁コイル63の励磁を停止するとリターンスプリング65によってメインクラッチ13の連結が解除され、車両は前輪駆動の2輪駆動状態になる。 【0099】 なお、カップリング605は図7に破線の矢印619で示した個所(トランスファ407の内部)に配置してもよい。 【0100】 [リヤデフ601の効果] リヤデフ601は、一対のメインクラッチ13(クラッチ装置607,609)を用いたことにより、極めて大きい駆動力配分比調整機能が得られ、車両の性能を大幅に向上させることができる。 【0101】 また、回転ケース5の回転をメインクラッチ13に伝達するボールスプライン603をリングギア9の径方向内側及びベアリング17,17の径方向と軸方向の内側に配置したことにより、軸方向及び径方向に小型化され、それだけ車載性が向上している。 【0102】 [本発明の範囲に含まれる他の態様] なお、本発明のデファレンシャル装置において、クラッチ機構は、メインクラッチのような摩擦クラッチの他に、噛み合いクラッチでもよい。 【0103】 また、クラッチ機構を操作するアクチュエータは、電磁コイルや電動モータの他に、例えば、空気式アクチュエータや油圧式アクチュエータのような流体式のアクチュエータでもよい。 【図面の簡単な説明】 【0104】 【図1】第1実施形態のリヤデフ1を示す断面図である。 【図2】第2実施形態のリヤデフ201を示す断面図である。 【図3】第3実施形態のリヤデフ301を示す断面図である。 【図4】リヤデフ1,201,301を用いた4輪駆動車の動力系を示すスケルトン機構図である。 【図5】第4実施形態のリヤデフ501を示す断面図である。 【図6】参考例のリヤデフ601を示す断面図である。 【図7】リヤデフ601を用いた4輪駆動車の動力系を示すスケルトン機構図である。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 原動機の駆動力によって回転する駆動軸と、中間伝達部材と、駆動ギアが前記駆動軸に連結され、被駆動ギアが前記中間伝達部材に連結され、前記駆動軸の回転を前記中間伝達部材に伝達するギア伝動機構と、前記中間伝達部材の回転を一対の車輪側にそれぞれ配分する一対のクラッチ機構とを備えたデファレンシャル装置であって、 前記被駆動ギアが連結された前記中間伝達部材の軸方向端側の外周は軸受けを介して静止側の収容部材に支持され、 前記クラッチ機構は、前記中間伝達部材の内周に軸方向端側から組み付けられて、前記被駆動ギアの径方向内側に配置され、 前記クラッチ機構を押圧するプレッシャーリングが前記軸受けの内周側に配置されていることを特徴とするデファレンシャル装置。 【請求項2】 請求項1に記載されたデファレンシャル装置であって、 前記中間伝達部材の軸方向端側の外周と前記静止側の収容部材との間には前記軸受けに隣接してオイルシールが設けられていることを特徴とするデファレンシャル装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2011-08-23 |
出願番号 | 特願2006-28890(P2006-28890) |
審決分類 |
P
1
41・
853-
Y
(F16H)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 堀内 亮吾 |
特許庁審判長 |
川本 真裕 |
特許庁審判官 |
冨岡 和人 所村 陽一 |
登録日 | 2010-09-03 |
登録番号 | 特許第4580877号(P4580877) |
発明の名称 | デファレンシャル装置 |
代理人 | 高橋 俊一 |
代理人 | 高橋 俊一 |
代理人 | 高松 俊雄 |
代理人 | 岩崎 幸邦 |
代理人 | 岩▲崎▼ 幸邦 |
代理人 | 三好 秀和 |
代理人 | 三好 秀和 |
代理人 | 伊藤 正和 |
代理人 | 伊藤 正和 |
代理人 | 高松 俊雄 |