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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B23K
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 B23K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B23K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23K
管理番号 1243486
審判番号 不服2008-30332  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-28 
確定日 2011-09-14 
事件の表示 特願2003-500307「高温鉛フリーハンダ用組成物、方法およびデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月 5日国際公開、WO02/97145、平成16年11月 4日国内公表、特表2004-533327〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2001年5月28日を国際出願日とする出願であって、 平成20年1月30日付けの拒絶理由通知書が送付され、同年8月5日付けで手続補正がされ、同月26日付けで拒絶査定がされたところ、この査定を不服として、同年11月28日に審判請求がされるとともに、同年12月26日付けで手続補正がされたものであり、当審において平成22年7月22日付けで前置審査報告書に基づく審尋をしたところ、回答書が提出されなかったものであり、さらに、当審において、次に記載する、「第2 平成20年12月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の理由について、平成22年12月20日付けで審尋をしたところ、回答書が提出されなかったものである。

第2 平成20年12月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定

【補正の却下の決定の結論】
平成20年12月26日付けの手続補正を却下する。

【決定の理由】

[1]補正の内容

平成20年12月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の記載を、以下の(A)から(B)とする補正事項を含む。

(A)
「【請求項1】?【請求項18】略
【請求項19】
2wt%から18wt%の量のAg、98wt%から82wt%の量のBi、及び0.1wt%から5.0wt%の量の第3の元素からなる合金を含むハンダ用組成物であって、第3の元素が、Au、Cu、Pt、Sb、Zn、In、Sn、Ni、およびGeからなる群から選択され、前記合金が230℃以上の固相線と400℃以下の液相線を有することを特徴とする組成物。
【請求項20】?【請求項30】略」

(B)
「【請求項1】
2wt%から18wt%の量のAg、98wt%から82wt%の量のBi、及び0.1wt%超から5.0wt%の量の第3の元素からなる合金からなるハンダ用組成物であって、第3の元素が、Au、Pt、Ni、およびGeからなる群から選択され、前記合金が230℃以上の固相線と400℃以下の液相線を有することを特徴とする組成物。
【請求項2】?【請求項8】略」

[2]補正の目的
特許請求の範囲を(A)から(B)にする補正事項は、補正前の請求項19に記載の「0.1wt%から」を「0.1wt%超から」と、「第3の元素が、Au、Cu、Pt、Sb、Zn、In、Sn、Ni、およびGeからなる群から選択され」を「第3の元素が、Au、Pt、Ni、およびGeからなる群から選択され」とするものである。当該補正事項は、補正前の請求項19に記載した特定事項を減縮するものであって、本件補正の前後で、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

[3]独立特許要件について

1.本願補正発明

本願補正発明は、上記[1](B)の請求項1として記載されているとおり、

「2wt%から18wt%の量のAg、98wt%から82wt%の量のBi、及び0.1wt%超から5.0wt%の量の第3の元素からなる合金からなるハンダ用組成物であって、第3の元素が、Au、Pt、Ni、およびGeからなる群から選択され、前記合金が230℃以上の固相線と400℃以下の液相線を有することを特徴とする組成物。」

である。

2.引用刊行物及びその記載事項
原審の拒絶理由において通知した引用刊行物である、特公昭40-7580号公報(以下、「刊行物1」という。)の記載事項を、以下に摘示する。

(1a)
「1 ビスマスと2乃至18重量パーセントの金または2乃至10重量パーセントの銀または1乃至5重量パーセントの金および1乃至5重量パーセントの銀とよりなるを特徴とする硫黄とセレニウムまたはテルルを含む熱電材料を金属板に接合するための比較的に機械的強度が大きくしかも電気抵抗が小さい接合材料をそなえた熱電装置。」(特許請求の範囲)

(1b)
「本発明によれば、ビスマスと2?18重量パーセントの金または2?10重量パーセントの銀あるいは2?10重量パーセントの金と銀の混合物よりなる合金接合材料(鑞)で上記のような熱電素子を接合することによつて改良された熱電装置が得られる。」(公報第1頁右欄第19?23行)

(1c)
「このビスマス 銀接合材料を、275℃乃至350℃の間の温度たとえば320℃に保持して溶融状態にする。・・・(略)・・・
ビスマスに金と銀の両者を組み合わせたものは、同様に具合よく働きかつ金の使用量が少いからより安価である。」(公報第2頁右欄第33?46行)

3.本願補正発明についての当審の判断

(1)刊行物1に記載された発明
刊行物1の摘示(1a)には、「ビスマスと1乃至5重量パーセントの金および1乃至5重量パーセントの銀とよりなるを特徴とする硫黄とセレニウムまたはテルルを含む熱電材料を金属板に接合するための比較的に機械的強度が大きくしかも電気抵抗が小さい接合材料をそなえた熱電装置」が記載されており、摘示(1b)によれば、「ビスマスと1乃至5重量パーセントの金および1乃至5重量パーセントの銀とよりなる」接合材料は、「合金接合材料(鑞)」である。
ここで、摘示(1a)によれば、接合材料は、「ビスマスと1乃至5重量パーセントの金および1乃至5重量パーセントの銀とよりなる」のであるから、ビスマスの割合は、98乃至90重量パーセントであることは明らかである。
以上の記載及び認定事項を、本願補正発明の記載振りに則り整理して記載すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。

『1乃至5重量パーセントの銀、98乃至90重量パーセントのビスマス、及び1乃至5重量パーセントの金からなる合金からなる接合材料(鑞)。』

(2)本願補正発明と刊行物1発明との対比・判断

本願補正発明(前者)と刊行物1発明(後者)とを対比すると、後者の『重量パーセント』、『銀』、『ビスマス』、『金』、『接合材料(鑞)』は、それぞれ前者の「wt%」、「Ag」、「Bi」、「第3の元素」としての「Au」、「ハンダ用組成物」に相当する。
してみると、両者は、

「2wt%から5wt%の量のAg、98wt%から90wt%の量のBi、及び1wt%超から5wt%の量の第3の元素からなる合金からなるハンダ用組成物であって、第3の元素が、Auである組成物。」

で一致するものの、次の点で一応相違する。

本願補正発明では、合金が「230℃以上の固相線と400℃以下の液相線を有する」のに対し、刊行物1発明では、合金からなる接合材料(鑞)が、「230℃以上の固相線と400℃以下の液相線を有する」か否か不明である点。

上記相違点について検討する。
刊行物1の摘示(1c)には、「接合材料を、275℃乃至350℃の間の温度たとえば320℃に保持して溶融状態にする」ことが記載されている。これは、その近傍温度域に固相線、液相線を有することに他ならないから、結局のところ、刊行物1発明も、「230℃以上の固相線と400℃以下の液相線を有する」との特定事項を満たす蓋然性が極めて高い。
また、刊行物1発明の合金からなる接合材料(鑞)は、本件補正発明の組成物と、その組成が同じものを含むから、固相線、液相線の温度についても、同じものを含むといえる。

(3)小活

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本願出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.まとめ

以上のとおりであるから、上記補正事項を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

[1]本願発明
平成20年12月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成20年8月5日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?30に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項19に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「2wt%から18wt%の量のAg、98wt%から82wt%の量のBi、及び0.1wt%から5.0wt%の量の第3の元素からなる合金を含むハンダ用組成物であって、第3の元素が、Au、Cu、Pt、Sb、Zn、In、Sn、Ni、およびGeからなる群から選択され、前記合金が230℃以上の固相線と400℃以下の液相線を有することを特徴とする組成物。」

[2]原査定の理由の概要

原査定の本願発明に対する拒絶の理由の一つは、本願発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。


・先願2.・・・(略)・・・
・先願3.特願2000-175757号(特開2001-353590号)」

[3]先願の出願当初の明細書又は図面の記載事項

先願3の出願当初の明細書又は図面(以下、「先願3の当初明細書」と略す。)には、次の記載がある。

(2a)
「【請求項1】
はんだ組成物100重量%のうち、Biからなる90重量%以上の第1金属元素と、
90重量部以上の前記第1金属元素と9.9重量部以下で2元共晶し得る第2金属元素と、
さらに合計0.1?3.0重量%の第3金属元素と、を含有し、
固相線温度が200℃未満の低融点共晶を含有せず、不可避不純物を除いてPbを含有しないことを特徴とする、はんだ組成物。
【請求項2】
前記第3金属元素は、Sn,Cu,In,Sb,Znよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のはんだ組成物。
【請求項3】
前記第2金属元素は、Agであり、
前記第3金属元素は、はんだ組成物100重量%のうち0.1?0.5重量%からなるSn,0.1?0.3重量%からなるCu,0.1?0.5重量%からなるIn,0.1?3.0重量%からなるSb,0.1?3.0重量%からなるZnよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してなることを特徴とする、請求項1または2に記載のはんだ組成物。
【請求項4】
前記第3金属元素は、さらにGeおよびPよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してなることを特徴とする、請求項3に記載のはんだ組成物。」

(2b)
「【0033】
【実施例】
まず、表1に示す組成からなる実施例1?14ならびに比較例1?12のはんだ組成物を作製した。なお、実施例1?14ならびに比較例1?12のはんだ組成物の熔融特性(固相線温度,液相線温度,固液共存域)を測定し、併せて表1にまとめた。」

(2c)
「【0035】
【表1】



[4]先願3の当初明細書に記載された発明

摘示(2a)には、
「はんだ組成物100重量%のうち、Biからなる90重量%以上の第1金属元素と、
90重量部以上の前記第1金属元素と9.9重量部以下で2元共晶し得る第2金属元素と、
さらに合計0.1?3.0重量%の第3金属元素と、を含有し、
固相線温度が200℃未満の低融点共晶を含有せず、不可避不純物を除いてPbを含有しないことを特徴とする、はんだ組成物」
が記載されており、かつ、「第3金属元素は、Sn,Cu,In,Sb,Znよりなる群から選ばれる少なくとも1種であること」、「第3金属元素は、さらにGeおよびPよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してなること」も記載されている。
そして、摘示(2b)、(2c)には実施例として、はんだ組成、固相線温度、液相線温度があげられており、うち、表1の記載から、実施例1?10,13のはんだ組成はそれぞれ、Biは94.50?97.40質量%、Agは2.50質量%、Sn,Cu,Sb,In,Zn、あるいはこれらにGeを加えたものから選ばれる「第3金属元素」は、0.10?3.00質量%であって、固相線温度は255?264℃、液相線温度は270?318℃である。

以上の記載及び認定事項を、本願補正発明の記載振りに則り整理して記載すると、先願3の当初明細書には次の発明(以下、「先願発明」と略す。)が記載されていると認められる。

『2.50質量%の量のAg、94.50?97.40質量%の量のBi、及び0.10?3.00質量%の量の第3金属元素からなる合金を含むはんだ組成物であって、第3金属元素が、Cu、Sb、Zn、In、Sn、およびGeからなる群から選択され、前記合金が255?264℃の固相線と270?318℃の液相線を有し、不可避不純物を除いてPbを含有しないはんだ組成物。』

[5]対比・判断

本願発明(前者)と先願発明(後者)とを対比すると、後者の『質量%』、『第2金属元素』、『はんだ組成物』はそれぞれ、前者の「重量%」、「第3の元素」、「ハンダ用組成物」に相当する。
してみると、両者は、

「2.50wt%の量のAg、97.40wt%から94.50wt%の量のBi、及び0.10wt%から3.00wt%の量の第3の元素からなる合金を含むハンダ用組成物であって、第3の元素が、Cu、Sb、Zn、In、Sn、およびGeからなる群から選択され、前記合金が255?264℃の固相線と270?318℃の液相線を有することを特徴とする組成物。」

で一致し、両者の間に相違点を見いだすことはできない。

[6]まとめ
上記検討より、本件発明は、先願発明と同一である。
そして、本件出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、原査定は妥当である。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-01 
結審通知日 2011-04-05 
審決日 2011-04-28 
出願番号 特願2003-500307(P2003-500307)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B23K)
P 1 8・ 121- Z (B23K)
P 1 8・ 575- Z (B23K)
P 1 8・ 161- Z (B23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 毅  
特許庁審判長 長者 義久
特許庁審判官 大橋 賢一
植前 充司
発明の名称 高温鉛フリーハンダ用組成物、方法およびデバイス  
代理人 坪倉 道明  
代理人 小野 誠  
代理人 金山 賢教  
代理人 大崎 勝真  
代理人 川口 義雄  
代理人 渡邉 千尋  

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