• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1243675
審判番号 不服2010-12715  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-10 
確定日 2011-09-15 
事件の表示 特願2006-111315「描画装置及び描画方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月15日出願公開、特開2007- 43078〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成18年4月13日(優先日:平成17年7月4日、出願番号:特願2005-194771号)の出願であって、平成21年12月14日付けで手続補正書が提出されたが、平成22年3月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。その後、平成23年4月13日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年6月13日に回答書が提出された。

第2 平成22年6月10日付けの手続補正の補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成22年6月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項に記載された発明
平成22年6月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として、以下のように補正された。
「電子ビームが複数ショットされることにより描画されるパターンのパターンデータを入力し、入力されたパターンデータに応じて、ショットする前記電子ビームの電流密度とショットする最大ショットサイズとを選択する選択部と、
前記選択部により選択された前記電流密度で前記電子ビームを形成し、形成された電子ビームを各ショット毎に前記最大ショットサイズ以下のショットサイズに成形し、成形された電子ビームを試料にショットして前記パターンを描画する描画部と、
を備え、
前記試料の試料面は、可変成形方式により描画するための複数の描画領域に仮想分割され、
前記選択部は、可変成形方式により描画するための複数の描画領域の描画領域毎に前記電流密度と前記最大ショットサイズとを選択することを特徴とする描画装置。」

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

2.引用刊行物

引用文献1:特開平11-219879号公報

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、上記引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子ビームを用いたリソグラフィ技術に係わり、特に繰り返しパターンを一括露光するキャラクタプロジェクション方式(CP方式)と成形ビームでパターンを描画する可変成形ビーム描画方式(VSB方式)を併用してウェハ上にパターンを露光する電子ビーム露光方法と、これを実現するための電子ビーム露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、大規模半導体集積回路(LSI)の高密度化に伴い、電子ビーム等の荷電粒子線を用いる露光装置が、実際に使用されるようになってきた。かかる電子ビーム露光装置は、可変成形ビームを用い、試料面上で荷電粒子線を偏向走査してパターンを描いていく装置で、ソフトであるパターンデータからパターンというハードを作るパターンジェネレート機能を持った装置である。しかし、上記の電子ビーム露光装置は矩形或いは三角形のショットをつなげてパターンを描画するため、一般にパターンサイズが小さくなるほど、単位面積当りの露光ショット数が増加し、スループットが低下する。」
(1b)「【0004】電子ビーム露光装置のウェハ描画時間は、大雑把にはショット時間とショット数の積で表される。レジスト感度を高く、電流密度を大きくしてショット時間を短縮し、ビームサイズを大きくしてショット数を低減すると、描画時間が短くできる。上述の如く数μm□の基本パターンを繰り返し転写していくキャラクタプロジェクション(CP)方式は、ショット数の低減が図れるため、可変成形ビーム(VSB)方式に比べてスループットが高い。
【0005】CP方式は確かに魅力的な方式だが、1回のショットで使う電流量がVSB方式のそれに比べて大きくなるため、クーロン反発によるビームのぼけが大きくなる。CP露光とVSB露光とを使って256MビットDRAM等のクリティカル層のパターンを形成しようとしても、パターンぼけが許容値以下となる電流量で、かつ現在実用化されているレジスト(感度:18μC/cm^(2) )では、優れた解像性は満たすものの、CP露光のメリット(高スループット)は殆ど出てこない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように従来、CP方式とVSB方式を併用してウェハ上に微細パターンを形成する電子ビーム露光方法においては、パターンぼけが許容値以下となる電流量にすると、現在実用化されているレジストで優れた解像性は満たすものの、CP露光のメリット(高スループット)が殆ど出てこなくなる問題があった。
【0007】本発明は、上記の事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、CP及びVSBの両露光をビームぼけによる解像性の劣化を招くことなく行うことができ、かつCP露光のメリットを十分に出してスループットの向上をはかり得る電子ビーム露光方法と、これに使用できる電子ビーム露光装置を提供することにある。」
(1c)「【0009】(2)同一感光材に対するパターン転写を、フォトマスクを用いた光露光と電子ビーム露光の両者で行い、かつ少なくとも光露光の解像限界以下のパターン転写を電子ビーム露光で行う方法であって、電子ビーム露光で行うパターン転写に関し、繰り返しパターンはキャラクタマスクを用いて転写(CP露光)し、繰り返しのないパターン或いは繰り返しが少ないパターンは可変成形ビームを用いて描画(VSB露光)する電子ビーム露光方法において、前記各露光における電子のクーロン反発及び電子光学系収差によるビームぼけが許容値以下となる最大使用可能電流量を決定する第1の工程と、第1の工程により決定された最大使用可能電流量の条件下で、電流密度とビームサイズをパラメータにして対象パターンの描画時間を算出し、該描画時間を最短にする電流密度とビームサイズを決定する第2の工程と、第2の工程により決定された電流密度とビームサイズに電子ビーム条件を調整する第3の工程と、第3の工程により調整された電子ビーム条件の下で、CP露光とVSB露光を切り換えながらパターンを露光する第4の工程とを有することを特徴とする。」
(1d)「【0058】(第2の実施形態)図12は、本発明の第2の実施形態に係わり、同層のミックスアンドマッチリソグラフィで使われる電子ビーム露光方法を説明するためのフロー図である。
【0059】本発明の電子ビーム露光方法を実施するために用いる電子ビーム露光装置は、前記図7と同様であるので、ここでは省略する。以下、図12のフロー図に従ってパターンの描画方法について説明する。予め使用する電子ビーム露光装置の最大ビームサイズで上述した図2を求め、これによって最大電流量を決定しておく(工程1)。本実施形態ではVSB方式の最大電流量を1.25μA、CP法の最大電流量を300nA(VSB方式の約4分の1)と仮定する。
【0060】次に、描画するデバイスパターンを対象に、CP方式を適用する部分とVSB方式を適用する部分とに分離する(工程2)。本実施形態では、RISCプロセッサのゲート層の場合を例として取り上げて説明する。RISCプロセッサのキャッシュメモリ部にCP方式を適用し(但し、使用できるキャラクタ数は最大ビーム寸法5μm□の場合で5個とした)、その他のロジック回路領域については光/EBミックスアンドマッチ用のパターン分離処理を適用した後、EB描画パターンとして分離されたパターンをVSB方式にて描画することとした。
【0061】次に、CP方式及びVSB方式で描画するそれぞれのパターンについて、電流量一定でビームサイズを変えて(合わせて電流密度も変えて)描画したときに描画時間がどのように変わるかを調べる(工程3)。
・・・
【0064】この結果を基に、電子ビーム露光装置の電子光学系の設定(ビームサイズと電流密度)をそれぞれの描画方式に応じて調整し、パターンを露光していく。まず、電子ビーム露光装置の電子光学鏡筒の設定(ビームサイズと電流密度)を調整し、第1の露光条件となるようにする(工程4)。ビームサイズは、第1成形アパーチャ104の開口サイズ、或いは第2成形アパーチャ107の開口サイズを所望のサイズに調整することにより制御することができる。
【0065】次に、レジスト塗布・現像装置でレジストを塗布したウェハ5を搬送機構4に運び、ウェハ5上の全面にデバイスパターンを第1の露光方式にてパターンを露光する(工程5)。第1の露光方式によるパターン露光が終了したら、次に電子ビーム露光装置の電子光学鏡筒の設定(ビームサイズと電流密度)を調整し、第2の露光条件となるようにする(工程6)。最後に、ウェハ5上の全面にデバイスパターンを第2の露光方式にてパターンを露光する(工程7)。
【0066】前記東芝製電子ビーム露光装置EX-8Dの場合、露光条件の調整に要する時間は約10分間である。ウェハ1枚を露光する際に、毎回CP条件とVSB条件を切り替えて露光することも可能だが、毎ウェハ毎に調整する時間が加算されるため、スループットが低下してしまう。そこで、例えば24枚を1バッチとして描画処理する場合、先に第1の露光条件で全てのウェハを露光してしまい、次に露光装置を第2の露光条件に調整した後、第2の露光条件で露光すると効率が良い。
・・・
【0070】このように本実施形態によれば、電流密度とビームサイズをCP及びVSB両露光それぞれについて別々の値を選定することで、一定の焦点深度内でCP及びVSBの両露光のビームぼけがそれぞれ許容値以下になる最大電流値で描画できる。このため、チップ内にCPとVSBパターンが混在するデバイスパターンを解像性の劣化なしに、かつその際のスループットを最大にして、描画することができる。」
(1e)「【0071】(第3の実施形態)図16は、本発明の第3の実施形態に係わり、同層のミックスアンドマッチリソグラフィで使われる電子ビーム露光方法を説明するためのフロー図である。また、本発明の電子ビーム露光方法を実施するために用いる同層ミックスアンドマッチリソグラフィシステムを図17に示す。なお、ここで用いる電子ビーム露光装置2の基本構成は、前記図7に示したものと同様であるので、その詳細は省略する。
【0072】次に、図16のフロー図に従ってパターンの描画方法について説明する。工程1から工程3までは先の第2の実施形態と全く同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0073】本実施形態では、工程3の後に、複数台の電子ビーム露光装置2の電子光学系の設定(ビームサイズと電流密度)を、VSB/CPそれぞれの描画方式に応じて調整する(工程4)。例えば、電子ビーム露光装置2aの電子光学系はVSB条件に、電子ビーム露光装置2bの電子光学系はCP条件に設定し、調整する。ビームサイズと電流密度の調整方法は、第2の実施形態で説明した方法と同様なので、ここでは省略する。」
(1f)「【0082】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、キャラクタプロジェクション(CP)方式と可変成形ビーム(VSB)方式とを用いてパターンを形成する電子ビーム露光方法において、電子のクーロン反発及び電子光学系収差によるビームぼけが許容値以下になるように電子光学系で使用する最大電流量を決定し、最大使用可能電流量の条件下で対象パターンの描画時間を最短にする電流密度とビームサイズを決定し、決定された電流密度とビームサイズに電子ビーム条件を調整し、この電子ビーム条件の下でCP露光とVSB露光を切り換えながらパターンを露光することにより、CP及びVSBの両露光をビームぼけによる解像性の劣化を招くことなく行うことができ、かつCP露光のメリットを十分に出してスループットの向上をはかることが可能となる。」

これらの記載事項及び図面を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「予め使用する電子ビーム露光装置の最大ビームサイズでVSB方式及びCP方式のそれぞれの最大電流量を決定する手段、
描画するデバイスパターンを対象に、CP方式を適用する部分とVSB方式を適用する部分とに分離する手段、及び
CP方式及びVSB方式で描画するそれぞれのパターンについて、電流量一定でビームサイズを変えて(合わせて電流密度も変えて)描画したときに描画時間がどのように変わるかを調べ、この結果を基に、電子ビーム露光装置の電子光学系の設定(ビームサイズと電流密度)をそれぞれの描画方式に応じて調整し、パターンを露光していく手段を有する電子ビーム露光装置。」(以下「引用発明」という。)

3.対比
補正発明と引用発明を比較する。
引用発明の「電子ビーム露光装置」は、補正発明の「描画装置」に相当する。
引用発明の「VSB方式で描画するパターン」が「電子ビームが複数ショットされることにより描画されるパターン」であって「可変成形方式により描画するための」パターンであることは明らかである。
また、引用発明が「描画されるパターンのパターンデータに応じて、電子ビーム露光装置の電子光学系の設定(ビームサイズと電流密度)をVSB方式に応じて調整」する手段を有することは明らかであり、当該手段とともに「最大ビームサイズでVSB方式の最大電流量を決定する手段」は、補正発明の「ショットする前記電子ビームの電流密度とショットする最大ショットサイズとを選択する選択部」に相当する。
したがって、引用発明が「前記選択部により選択された前記電流密度で前記電子ビームを形成し、形成された電子ビームを各ショット毎に前記最大ショットサイズ以下のショットサイズに成形し、成形された電子ビームを試料にショットして前記パターンを描画する描画部」を備えることも明らかである。
そして、上記摘記事項(1d)の段落【0066】及び(1e)の記載を参酌すれば、引用発明が、VSB方式及びCP方式のそれぞれについて独立した構成を採用することができることは明らかである。
してみると両者は、
「電子ビームが複数ショットされることにより描画されるパターンのパターンデータを入力し、入力されたパターンデータに応じて、ショットする前記電子ビームの電流密度とショットする最大ショットサイズとを選択する選択部と、
前記選択部により選択された前記電流密度で前記電子ビームを形成し、形成された電子ビームを各ショット毎に前記最大ショットサイズ以下のショットサイズに成形し、成形された電子ビームを試料にショットして前記パターンを描画する描画部と、
を備えた描画装置。」
の点で一致し、次の点で相違している。

(相違点)
補正発明は、その試料の試料面が、可変成形方式により描画するための複数の描画領域に仮想分割され、選択部は、「前記電流密度と前記最大ショットサイズとを選択する」という制御を可変成形方式により描画するための複数の描画領域の描画領域毎に行うのに対して、引用発明は、そのような特定事項を有していない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
試料面にパターンを描画する装置において、試料面の描画領域が所定の広がりを持つ場合に、描画領域を複数の小領域に便宜的に分割し、分割された小領域毎に制御を行うことは、ごく普通に行われている周知技術である。
引用発明に当該周知技術を適用する点に格別の困難性はない。してみると、上記相違点に係る構成を採用することは、構成の煩雑さや制御しやすさ、スループット等の種々の事項を統合的に勘案して、当業者が適宜決定し得る事項である。

そして、補正発明全体の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.小括
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
平成22年6月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成21年12月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「電子ビームが複数ショットされることにより描画されるパターンのパターンデータを入力し、入力されたパターンデータに応じて、ショットする前記電子ビームの電流密度とショットする最大ショットサイズとを選択する選択部と、
前記選択部により選択された前記電流密度で前記電子ビームを形成し、形成された電子ビームを各ショット毎に前記最大ショットサイズ以下のショットサイズに成形し、成形された電子ビームを試料にショットして前記パターンを描画する描画部と、
を備え、
前記試料の試料面は、複数の描画領域に仮想分割され、
前記選択部は、描画領域毎に前記電流密度と前記最大ショットサイズとを選択することを特徴とする描画装置。」(以下「本願発明」という。)

1.引用刊行物
原査定に引用され、本願出願前に頒布された刊行物及びその記載内容は、前記「第2」の「2.」に記載したとおりである。

2.対比
本願発明は、前記「第2」で検討した補正発明から「可変成形方式により描画するための」という事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に限定したものに相当する補正発明が、前記「第2」の「4.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-13 
結審通知日 2011-07-19 
審決日 2011-08-01 
出願番号 特願2006-111315(P2006-111315)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保田 創秋田 将行  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 樋口 信宏
伊藤 幸仙
発明の名称 描画装置及び描画方法  
代理人 池上 徹真  
代理人 須藤 章  
代理人 松山 允之  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ