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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010800038 審決 特許
不服200719300 審決 特許
不服200731056 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1243693
審判番号 不服2007-27004  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-03 
確定日 2011-09-16 
事件の表示 特願2001-548090「向上された薬物濃度を与える医薬組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成13年7月5日国際公開、WO01/47495、平成15年6月10日国内公表、特表2003-518485〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2000年12月1日(パリ条約による優先権主張 1999年12月23日、米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成19年4月17日付けで手続補正がなされ、同年7月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年11月1日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年11月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年11月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の概略
本件補正により、特許請求の範囲は、
補正前(平成19年4月17日付け手続補正書を参照。)の
「【請求項1】
(a)医薬的に受容可能な溶解度改良型の薬物であって、薬物の当該溶解度改良型が、結晶質の高度に溶解性の塩の形態、高エネルギー結晶質の形態、非晶質、並びに当該薬物及び可溶化剤の混合物からなる群から選択されるものである薬物;と
(b)酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である濃度向上(enhancing)ポリマー;
との物理的混合物を含み、当該濃度向上ポリマーと当該薬物が、0.01?5の薬物対ポリマー重量比で存在する、医薬組成物。
【請求項2】
前記薬物がジプラシドンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記濃度向上ポリマーと前記薬物が、0.05?2.5の薬物対ポリマー重量比で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記高度に溶解性の塩の形態が、より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する、請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
(a)医薬的に受容可能な溶解度改良型の薬物であって、薬物の当該溶解度改良型が、結晶質の高度に溶解性の塩の形態、高エネルギー結晶質の形態、非晶質、並びに当該薬物及び可溶化剤の混合物からなる群から選択されるものである薬物;及び
(b)酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である濃度向上ポリマー;
を含む組合せ物であって、当該濃度向上ポリマーと当該薬物が、0.01?5の薬物対ポリマー重量比で組み合わされる組合せ物。
【請求項6】
前記薬物がジプラシドンである、請求項5に記載の組合せ物。
【請求項7】
当該濃度向上ポリマーと当該薬物が、0.05?2.5の薬物対ポリマー重量比で組合わされる、請求項5又は6に記載の組合せ物。
【請求項8】
前記高度に溶解性の塩の形態が、より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する、請求項5?7のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項9】
前記薬物と前記濃度向上ポリマーとを別個に投与するための、請求項5?8のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項10】
前記薬物と前記濃度向上ポリマーとを同時に投与するための、請求項5?8のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項11】
前記薬物と前記濃度向上ポリマーとの物理的混合物を含む組成物である、請求項5?8のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項12】
溶解度改良型の固体の薬物であって、薬物の当該溶解度改良型が、結晶質の高度に溶解性の塩の形態、高エネルギー結晶質の形態、非晶質、並びに当該薬物及び可溶化剤の混合物からなる群から選択されるものである薬物と、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である濃度向上ポリマーとを、0.01?5の薬物対ポリマー重量比で使用環境へ投与するこ
とによって形成される水溶液であって:
(a)それぞれの前記薬物及び前記濃度向上ポリマーが、前記溶液中に少なくとも一部分溶解し;そして
(b)前記溶解された薬物の少なくとも一部分が、複数の薬物及びポリマーのアセンブリー中の前記ポリマーの少なくとも一部分に伴なわれ、前記アセンブリーは、10ないし1000ナノメートルの大きさを有する水溶液。
【請求項13】
前記薬物がジプラシドンである、請求項12に記載の水溶液。
【請求項14】
当該濃度向上ポリマーと当該薬物を0.05?2.5の薬物対ポリマー重量比で投与することによって形成される、請求項12又は13に記載の水溶液。
【請求項15】
前記高度に溶解性の塩の形態が、より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する、請求項12?14のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項16】
前記使用環境が、in vivoである、請求項12?15のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項17】
前記使用環境が、動物の胃腸管、皮下隙、膣管、肺管、動脈及び静脈血管、並びに筋肉内組織からなる群から選択される、請求項16に記載の溶液。
【請求項18】
前記使用環境が、in vitroである、請求項12?15のいずれか1項に記載の溶液。」
から、補正後(平成19年11月1日付け手続補正書を参照。)の
「【請求項1】
(a)医薬的に受容可能な溶解度改良型の薬物であって、薬物の当該溶解度改良型が、結晶質の高度に溶解性の塩の形態、高エネルギー結晶質の形態、及び非晶質からなる群から選択されるものである薬物;と
(b)酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である濃度向上(enhancing)ポリマー;
との物理的混合物を含み、当該濃度向上ポリマーと当該薬物が、0.01?5の薬物対ポリマー重量比で存在し、
当該結晶質の高度に溶解性の塩の形態及び当該高エネルギー結晶質の形態の各々は、リン酸緩衝生理食塩水又はModel Fasted Duodenal溶液中に放出された場合、少なくとも一時的に当該溶液における薬物の平衡濃度の少なくとも1.25倍の薬物の濃度を与え、そして
当該高度に溶解性の塩の形態は、当該薬物が塩基性である場合、より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記濃度向上ポリマーと前記薬物が、0.05?2.5の薬物対ポリマー重量比で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)医薬的に受容可能な溶解度改良型の薬物であって、薬物の当該溶解度改良型が、結晶質の高度に溶解性の塩の形態、高エネルギー結晶質の形態及び非晶質からなる群から選択されるものである薬物;及び
(b)酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である濃度向上ポリマー;
を含む組合せ物であって、当該濃度向上ポリマーと当該薬物が、0.01?5の薬物対ポリマー重量比で組み合わされ、
当該結晶質の高度に溶解性の塩の形態及び当該高エネルギー結晶質の形態の各々は、リン酸緩衝生理食塩水又はModel Fasted Duodenal溶液中に放出された場合、少なくとも一時的に当該溶液における薬物の平衡濃度の少なくとも1.25倍の薬物の濃度を与え、そして
当該高度に溶解性の塩の形態は、当該薬物が塩基性である場合、より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する、組合せ物。
【請求項4】
当該濃度向上ポリマーと当該薬物が、0.05?2.5の薬物対ポリマー重量比で組合わされる、請求項3に記載の組合せ物。
【請求項5】
前記薬物と前記濃度向上ポリマーとを別個に投与するための、請求項3又は4に記載の組合せ物。
【請求項6】
前記薬物と前記濃度向上ポリマーとを同時に投与するための、請求項3又は4に記載の組合せ物。
【請求項7】
前記薬物と前記濃度向上ポリマーとの物理的混合物を含む組成物である、請求項3又は4に記載の組合せ物。
【請求項8】
溶解度改良型の固体の薬物であって、薬物の当該溶解度改良型が、結晶質の高度に溶解性の塩の形態、高エネルギー結晶質の形態及び非晶質からなる群から選択されるものである薬物と、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である濃度向上ポリマーとを、0.01?5の薬物対ポリマー重量比で、ヒトを除く動物のin vivo環境又はin vitro環境である使用環境へ投与することによって形成される水溶液であって:
(a)それぞれの前記薬物及び前記濃度向上ポリマーが、前記溶液中に少なくとも一部分溶解し;そして
(b)前記溶解された薬物の少なくとも一部分が、複数の薬物及びポリマーのアセンブリー中の前記ポリマーの少なくとも一部分に伴なわれ、前記アセンブリーは、10ないし1000ナノメートルの大きさを有し、
当該結晶質の高度に溶解性の塩の形態及び当該高エネルギー結晶質の形態の各々は、リン酸緩衝生理食塩水又はModel Fasted Duodenal溶液中に放出された場合、少なくとも一時的に当該溶液における薬物の平衡濃度の少なくとも1.25倍の薬物の濃度を与え、そして
当該高度に溶解性の塩の形態は、当該薬物が塩基性である場合、より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する、水溶液。
【請求項9】
当該濃度向上ポリマーと当該薬物を0.05?2.5の薬物対ポリマー重量比で投与することによって形成される、請求項8に記載の水溶液。
【請求項10】
前記使用環境が、in vivoである、請求項8又は9のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項11】
前記使用環境が、動物の胃腸管、皮下隙、膣管、肺管、動脈及び静脈血管、並びに筋肉内組織からなる群から選択される、請求項10に記載の溶液。
【請求項12】
前記使用環境が、in vitroである、請求項8又は9に記載の溶液。」
と補正された。

(2)補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1に係る発明における
(あ)薬物の溶解度改良型の選択肢の中から、「薬物及び可溶化剤の混合物」を削除し、
(い)薬物の溶解度改良型の選択肢の中で、「結晶質の高度に溶解性の塩の形態」と「高エネルギー結晶質の形態」とに対して、「リン酸緩衝生理食塩水又はModel Fasted Duodenal溶液中に放出された場合、少なくとも一時的に当該溶液における薬物の平衡濃度の少なくとも1.25倍の薬物の濃度を与え」という限定を付加し、
(う)「高度に溶解性の塩の形態」に対しては、さらに、「塩基性である場合、より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する」という限定も付加して、
補正後の請求項1とするものと認められる。
そして、薬物の溶解度改良型の選択肢の一つを削除し((あ)参照。))、薬物の溶解度改良型の選択肢の中の二つに対して、濃度についての数値限定を付加し((い)参照。)、さらに、その一つに対しては、溶解度についての数値限定も付加する((う)参照。)この補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(3)(i)?(iii)の点から検討する。
(i)
1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開昭63-14724号公報(原査定の引用文献2。以下、「引用例A」という。)には、以下の事項が記載されている。

A-1
「結晶状のプラゾシンと腸溶性基剤・・・とを含有することを特徴するプラゾシン製剤。」(特許請求の範囲)

A-2
「塩酸プラゾシンは、水に難溶性の薬物で・・・。特公昭60-4188号明細書には、塩酸プラゾシンの結晶形として、・・・α体、β体、γ体及び無水物、・・・水和物及び塩酸プラゾシンメタノレートが存在することが示されている。またこれらの結晶形のなかでは、・・・溶解性が比較的高いα体のみが普通錠や注射剤に使用されることが示されている。」(第1頁右下欄第1?11行)

A-3
「本発明者らは、プラゾシンの溶解性を高め、生物学的利用率が改善された製剤を開発するための研究を進めた・・・。そしてさらに研究を進めた結果、意外にも結晶状のプラゾシンを・・・特定の腸溶性基剤と配合することにより、結晶形の如何にかかわらず溶解性が塩酸プラゾシンのα体よりも良好な製剤が得られることを見出した。」(第1頁右下欄第15行?第2頁左上欄第5行)

A-4
「塩酸プラゾシンを用いる場合は、α体、β体、γ体などのいずれの結晶形でもよく・・・」(第2頁左上欄第16?18行)

A-5
「本発明に用いられる腸溶性基剤は、・・・ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS・・・)、カルボキシメチルエチルセルロース・・・等があげられる。」(第2頁右上欄第11?20行)

A-6
「本発明の製剤を製造するに際しては、例えば塩酸プラゾシン微細粉末に、腸溶性基剤を粉末又は溶液にして添加して混合する。この際、必要に応じて・・・、賦形剤、・・・を添加することができる。混合は常法により乳鉢、V型混合機、コーンミキサー等を用いて行う。」(第2頁右上欄最下行?左下欄第6行)

A-7
「こうして得られた混合物をそのまま又は結合剤、・・・等を添加して常法により細粒剤、顆粒剤、・・・等にすることができる。
賦形剤としては、例えば乳糖、・・・結晶セルロース、・・・等が好ましい。また結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース、・・・等が好ましい。」(第2頁左下欄下から第4行?右下欄第5行)

A-8
「実施例1
塩酸プラゾシン(無水体) 1部
カルボキシメチルエチルセルロース 10部
乳糖 81部 結晶セルロース 6部
前記の成分をバーチカルグラニュレータ・・・に入れて混合粉末とした。この粉末に5%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液40部を加えて練合し、造粒したのち乾燥して顆粒を得た。」(第3頁左上欄第2?11行)

2)対比
上記引用例Aは、A-1?А-3の記載によれば、水難溶性の薬物プラゾシンの溶解性を高め生物学的利用率を改善することを目的とするもので、結晶状の薬物プラゾシンと腸溶性基剤とを組み合わせることで、溶解性が比較的高い結晶形のα体よりも溶解性が良好になることを見出したものであって、さらに、A-5?A-8の記載より、塩酸プラゾシン(無水体)1部、腸溶性基剤(カルボキシメチルエチルセルロース)10部、及び、賦形剤(乳糖、結晶セルロース)を混合し粉末にして、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース)を加え、練合、造粒、乾燥して顆粒の医薬組成物を得るというものである。
よって、引用例Aには、
「結晶状の薬物プラゾシン、腸溶性基剤及び賦形剤の混合粉末に、結合剤を加え、練合、造粒、乾燥してなるものであって、当該腸溶性基剤と当該薬物が、0.1(1部÷10部)の薬物対腸溶性基剤重量比で存在する医薬組成物。」
が記載されているといえる(以下、「引用発明A」という。)。

本願補正発明と引用発明Aとを対比する。
引用発明Aにおける医薬組成物の形成手段は、薬物、腸溶性基剤及び賦形剤を混合し粉末にした後、結合剤を加え、練合、造粒、乾燥してなるものであり、配合成分を混ぜ合わせていくことから、「物理的混合」であるといえ、引用発明Aにおける医薬組成物には、結晶状の薬物と腸溶性基剤との「物理的混合物」が含まれるといえる。
また、引用発明Aにおける「腸溶性基剤」は、薬物の溶解性を良好にするもの、つまり、薬物の濃度を向上させるものであるといえるから、本願補正発明における、「濃度向上(enhancing)ポリマー」に相当するといえる。
よって、両者は、
「(a)医薬的に受容可能な薬物であって、結晶質の形態である薬物;と
(b)濃度向上(enhancing)ポリマー;
との物理的混合物を含み、当該濃度向上ポリマーと当該薬物が、0.1の薬物対ポリマー重量比で存在する、医薬組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]本願補正発明では、結晶質の形態の薬物は、「結晶質の高度に溶解性の塩の形態」又は「高エネルギー結晶質の形態」である「溶解度改良型」のものであって、「リン酸緩衝生理食塩水又はModel Fasted Duodenal溶液中に放出された場合、少なくとも一時的に当該溶液における薬物の平衡濃度の少なくとも1.25倍の薬物の濃度を与え」るものであり、さらに、「結晶質の高度に溶解性の塩の形態」であって、「塩基性である場合」、「より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する」のに対し、引用発明Aには、結晶質の形態の薬物に対して、このような特定はされていない点。
[相違点2]本願補正発明では、濃度向上(enhancing)ポリマーとして、「酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)」を採用するのに対し、引用発明Aでは、これらポリマーは具体的に採用していない点。

3)当審の判断
[相違点1]について
本願補正発明の「高エネルギー結晶質の形態」に関して、本願明細書中には、「例えば、高溶解度多形体」(【0035】)、「・・・薬物の最大濃度を与える結晶形であることを意味する。」(【0069】)と記載されており、これら記載より、「高エネルギー結晶質の形態」とは、高い溶解性を示す結晶形のことであるといえる。
そこで、引用例Aの薬物の結晶形に関する記載箇所をみれば、A-4には、薬物としては、無水体に限らず、α体等の結晶形も用いられることが記載されており、また、先行技術文献(特公昭60-4188号公報)を挙げてプラゾシンの従来技術について説明するA-2の記載より、溶解性が良好なα体を普通錠に用いることは、当業者に周知の技術であるといえる。
さらに、この挙げられた先行技術文献を参照すれば、プラゾシンのα体を水に溶解させた場合、約1.5mg/mlの最大溶解量を示した後、約1.0mg/mlの溶解量で一定になる(つまり、平衡になる)こと(第12欄第41行?第13欄第14行、FIG.5参照。)、及び、プラゾシンのα体を米国薬局方人工胃液(SGJ)に溶解させた場合、約120μg/mlの最大溶解量を示した後、約30μg/ml前後で一定になる(つまり、平衡になる)こと(第13欄第15?23行、FIG.6参照。)が記載されている。
そして、これら記載より、プラゾシンのα体は、水中に放出された場合、少なくとも一時的に平衡濃度の約1.5倍(約1.5mg/ml÷約1.0mg/ml)の濃度を示すといえ、また、SGJ中に放出された場合は、少なくとも一時的に平衡濃度の約4倍(約120μg/ml÷約30μg/ml)の濃度を示すといえる。
ここで、本願補正発明における薬物濃度の規定で用いられる「リン酸緩衝生理食塩水」及び「Model Fasted Duodenal溶液」の二種の溶液の成分(本願明細書の【0044】参照。)と、上記先行技術文献に記載の溶液の成分とをみれば、薬物の溶解特性が大幅に異なるような成分差はないといえるから、α体であれば、本願補正発明で用いられる上記二種の溶液中でも同様に、平衡濃度の約1.5?4倍前後の濃度を示す、つまり、平衡濃度の少なくとも1.25倍の濃度を示すといえる。
よって、引用発明Aにおいて、製剤中の薬物の溶出性をさらに向上させるために、良好な溶解性を示し普通錠に既に用いられてもいる、結晶形α体を採用すること、つまり、「高エネルギー結晶質の形態」の「溶解度改良型」の薬物であって、「リン酸緩衝生理食塩水又はModel Fasted Duodenal溶液中に放出された場合、少なくとも一時的に当該溶液における薬物の平衡濃度の少なくとも1.25倍の薬物の濃度を与え」るものを採用することは、当業者が容易になし得ることである。

[相違点2]について
引用例AのA-5には、濃度向上ポリマーとして、「カルボキシメチルエチルセルロース」と共に「ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)」も採用できることが記載されているから、
引用発明Aにおいて、溶解性の向上のために、この特性に関係する該ポリマーの種類について検討して、HPMCASを採用することは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明が奏する効果について検討すると、引用例AのA-3には、薬物と濃度向上ポリマーとを組み合わせることで、溶解性が良好なα体を単独で使用するよりも、溶解性が良好になることが記載されているから、本願補正発明が奏する効果は、当業者が予測し得る程度のものであるといえる。

なお、審判請求人は、審判請求書に対する平成19年12月6日付けの手続補正書(方式)において、引用例A(原査定の引用文献2)に記載された発明に対して、「引用文献2から、本願発明で定義する高度に溶解性の塩を含む溶解度改良型の薬物と、特定の濃度向上ポリマーとを組み合わせて、向上した溶解曲線下面積(AUC)等の薬物としての全体的な向上をもたらす本願発明に想到することは容易ではありません」と主張する。
しかし、上記したように、引用例Aには、溶解性が高い結晶形α体を用いることが記載されており、そして、これは、本願補正発明における「高エネルギー結晶質の形態」に相当するといえるから、この主張は採用できない。

したがって、本願補正発明は、引用例Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(ii)
1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例A、及び、その主な記載事項は、上記「2.(3)(i)1)」に記載したとおりである。


原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平2-149518号公報(原査定の引用文献3。以下、「引用例B」という。)には、以下の事項が記載されている。

B-1
「DDBと溶解促進物質との混合粉砕粉末又は固体分散粉末を含有することを特徴とする肝疾患治療用経口供与用薬剤。」(特許請求の範囲第1項)

B-2
「DDBと溶解促進物質とシクロデキストリンとの混合粉砕粉末又は固体分散粉末を含有することを特徴とする肝疾患治療用経口投与用薬剤。」(特許請求の範囲第2項)

B-3
「溶解促進物質が ヒドロキシプロピルメチルセルロース、・・・である請求項1、2、3又は4記載の経口投与用薬剤」(特許請求の範囲第5項)

B-4
「〔従来の技術〕
DDBは・・・有用な薬物である。しかしながら、この薬物は水への溶解性が著しく低いため、これを通常の手段で経口用薬剤に調製しても、薬剤からの薬物の溶出が極めて悪く、従って大部分の薬効成分は利用されないままに体外に排出されてしまう。」(第1頁右下欄下から第5行?第2頁左上欄第3行)

B-5
「本発明者らは、上記のような従来のDDB製剤の欠点を解決するために・・・DDBをある種の溶解促進物質と共に混合粉砕するとDDBの溶解性が著しく向上し、これをそのままカプセル剤・・・等の剤型に成型してもその溶解性がほとんど低下しないことを見出した。」(第2頁右上欄第2?8行)

B-6
「・・・本発明においては、これにシクロデキストリン、特に安価な・・・マルトシル-β-シクロデキストリン等の分岐シクロデキストリンを併用することにより、これら溶解促進物質の使用量を大巾に低減できることを見出した。」(第2頁左下欄第12?18行)

B-7
「実施例1 DDB2gとヒドロキシプロピルメチルセルロース・・・10gを試料粉砕機・・・を用いて2時間混合粉砕し、・・・散剤を得た。」(第3頁左上欄下から第9行?下から第5行)

B-8
「実施例4 DDB2g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース・・・1g及びマルトシル-β-シクロデキストリン7.0gを試料粉砕機・・・を用いて2時間混合粉砕し、・・・散剤を得た。」(第3頁右上欄第8?13行)


原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平9-309828号公報(原査定の理由5。以下、「引用例C」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【従来技術】・・・一般に、難溶性薬物の溶解性改善のためには、・・・結晶多形・・・などの方法が知られ・・・」(【0002】)

2)対比
引用例Bは、B-1、B-3?B-5、B-7の記載より、水難溶性の薬物DDBの溶解性を高めることを目的とするもので、薬物DDBと溶解促進物質ヒドロキシプロピルメチルセルロースとを混合粉砕又は固体分散して、粉末にすることで、溶解性が著しく向上することを見出したものであって、さらに、B-7の記載より、当該溶解促進物質ヒドロキシプロピルメチルセルロースと当該薬物DDBが0.2(2g÷10g)の薬物対ポリマー重量比で存在するものが記載されているといえるから、引用例Bには、
「薬物DDBと溶解促進物質ヒドロキシプロピルメチルセルロースとの混合粉砕粉末又は固体分散粉末からなり、当該溶解促進物質と当該薬物が、0.2の薬物対ポリマー重量比で存在する、医薬組成物。」
が記載されているといえる(以下、「引用発明B」という。)。

本願補正発明と引用発明Bとを対比する。
引用発明Bにおける粉末の形成手段は、混合粉砕又は固体分散によるものであるから「物理的混合」であるといえ、引用発明Bにおける医薬組成物には、薬物と溶解促進物質との「物理的混合物」が含まれるといえる。
また、引用発明Bの溶解促進物質は、薬物の溶解性を良好にするもの、つまり、薬物の濃度を向上させるものであるといえるから、本願補正発明における、「濃度向上(enhancing)ポリマー」に相当するといえる。
よって、両者は、
「(a)医薬的に受容可能な薬物;と
(b)ヒドロキシプロピルセルロース(HPMC)である濃度向上(enhancing)ポリマー;
との物理的混合物を含み、当該濃度向上ポリマーと当該薬物が、0.2の薬物対ポリマー重量比で存在する、医薬組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]本願補正発明では、薬物は、「医薬的に受容可能な溶解度改良型の薬物であって、薬物の当該溶解度改良型が、結晶質の高度に溶解性の塩の形態、高エネルギー結晶質の形態、及び非晶質からなる群から選択されるもの」で、「当該結晶質の高度に溶解性の塩の形態及び当該高エネルギー結晶質の形態の各々は、リン酸緩衝生理食塩水又はModel Fasted Duodenal溶液中に放出された場合、少なくとも一時的に当該溶液における薬物の平衡濃度の少なくとも1.25倍の薬物の濃度を与え、そして当該高度に溶解性の塩の形態は、当該薬物が塩基性である場合、より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する」ものであるの対し、引用例Bには、薬物についてこのような特定はされていない点。

3)当審の判断
[相違点]について
難溶性の薬物の溶解性を高めるために、薬物の中から、溶解性の高い結晶形を採用することは、引用例AのA-2、及び、引用例Cにも記載されるように、当業者に周知の技術にすぎず、そして、上記「2.(3)(i)3)[相違点1]について」で述べたように、薬物の中から溶解性の高い結晶形を採用すれば、平衡濃度よりも1.25倍以上の濃度は示せるといえる。
よって、引用発明Bにおいて、薬物の溶解性を向上させるために、薬物として、最も高い溶解性を示す結晶形を採用すること、つまり、「高エネルギー結晶質の形態」の「溶解度改良型」の薬物であって、「リン酸緩衝生理食塩水又はModel Fasted Duodenal溶液中に放出された場合、少なくとも一時的に当該溶液における薬物の平衡濃度の少なくとも1.25倍の薬物の濃度を与え」るものを採用することは、当業者が容易になし得ることである。

また、本願補正発明が奏する効果について検討しても、引用例BのB-5には、薬物と濃度向上ポリマーとを組み合わせることで、薬物の溶解性が向上することが記載されており、引用例AのA-3には、濃度向上ポリマーを配合することで、溶解性が高い結晶形の薬物単独よりも溶解性が良好になることが記載されており、引用例Cには、結晶多形の方法により、溶解性を改善できることが記載されており、本願補正発明が奏する効果は、これら記載事項により、当業者が予測し得る程度のものであるといえる。

したがって、本願補正発明は、引用例B及び引用例A、Cに記載されるような当業者に周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(iii)
本願補正発明は、「結晶質の高度に溶解性の塩の形態」を薬物の溶解度改良型の選択肢の一つにし、さらに、「当該高度に溶解性の塩の形態は、当該薬物が塩基性である場合、より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する」と特定するものである(下線は、当審で付した。)。
ここで、上記「より可溶性の結晶質の遊離塩基」という記載の「より可溶性」とは、何かと比べて判断するものであるといえるが、上記本願補正発明の記載からでは、何と比べるのかが把握できない。
よって、「より可溶性の結晶質の遊離塩基」という記載は明りょうな記載であるとはいえず、「結晶質の高度に溶解性の塩の形態」であると判断するのに必要な基準が不明確である。
したがって、本願補正発明における薬物の溶解度改良型の選択肢の中で、「結晶質の高度に溶解性の塩の形態」に関しては、発明が不明確であるといえ、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(4)むすび
上記(i)?(iii)のとおり、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において準用する同法第53条第1項の規定により、却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成19年11月1日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明は、平成19年4月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。
「(a)医薬的に受容可能な溶解度改良型の薬物であって、薬物の当該溶解度改良型が、結晶質の高度に溶解性の塩の形態、高エネルギー結晶質の形態、非晶質、並びに当該薬物及び可溶化剤の混合物からなる群から選択されるものである薬物;と
(b)酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である濃度向上(enhancing)ポリマー;
との物理的混合物を含み、当該濃度向上ポリマーと当該薬物が、0.01?5の薬物対ポリマー重量比で存在する、医薬組成物。」

(1)(i)?(iii)の点から検討する。
(i)
1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例A、及び、その主な記載事項は、上記「2.(3)(i)1)」に記載したとおりである。

2)対比・判断
本願発明は、
(あ)前記2.で検討した本願補正発明における薬物の溶解度改良型の選択肢に、「薬物及び可溶化剤の混合物」を加え、
(い)本願補正発明から、「結晶質の高度に溶解性の塩の形態」及び「高エネルギー結晶質の形態」の限定事項である「リン酸緩衝生理食塩水又はModel Fasted Duodenal溶液中に放出された場合、少なくとも一時的に当該溶液における薬物の平衡濃度の少なくとも1.25倍の薬物の濃度を与え」との構成を省いたものであり、さらに、
(う)「高度に溶解性の塩の形態」の限定事項である「塩基性である場合、より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する」との構成を省いたものである。
そうすると、薬物の溶解度改良型の選択肢として、「高エネルギー結晶質の形態」を選択した場合に、本願発明の構成要件を全て含み、さらに、他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)(i)」に記載したとおり、引用例Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ii)
1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例B、及び、その主な記載事項は、上記「2.(3)(ii)1)」に記載したとおりである。

2)対比・判断
引用例Bには、B-2、B-3、B-6、B-8の記載より、薬物DDB2g、溶解促進物質ヒドロキシプロピルメチルセルロース1g、及び、 溶解促進物質シクロデキストリンとの混合粉砕粉末又は固体分散粉末を含有する薬剤が記載されているといえるから、引用例Bには、
「薬物DDB、溶解促進物質シクロデキストリン、及び、溶解促進物質ヒドロキシプロピルメチルセルロースとの混合粉末又は固体分散粉末からなり、当該溶解促進物質シクロデキストリンと当該薬物が、2(2g÷1g)の薬物対溶解促進物質シクロデキストリン重量比で存在する、医薬組成物。」
が記載されているといえる(以下、「引用発明b」という。)。

本願発明と引用発明bとを対比する。
上記「2.(3)(ii)2)」で述べたように、引用発明bにおける 溶解促進物質ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、本願発明における「ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である濃度向上(enhancing)ポリマー」に相当し、また、「物理的混合物」を含むものであるといえる。
さらに、引用発明bの溶解促進物質シクロデキストリンは、薬物の溶解性を促進させることから、本願発明の「可溶化剤」に相当し、そして、薬物と可溶化剤とが組み合わさることから、「溶解度改良型」であるといえる。
よって、両者は、
「(a)医薬的に受容可能な溶解度改良型の薬物であって、薬物の当該溶解度改良型が、当該薬物及び可溶化剤の混合物からなる群から選択されるものである薬物;と
(b)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である濃度向上(enhancing)ポリマー;
との物理的混合物を含み、当該濃度向上ポリマーと当該薬物が、2の薬物対ポリマー重量比で存在する、医薬組成物。」
である点で一致し、相違点はない。
よって、本願発明は、引用例Bに記載された発明である。

(iii)
本願発明は、薬物の溶解度改良型として、「結晶質の高度に溶解性の塩の形態」及び「高エネルギー結晶質の形態」を選択肢にするものであるが、「高度に溶解性」、「高エネルギー」程度の事項では、比較の基準や程度が不明確であるから、「溶解度改良型」に該当する範囲を明確に特定することができないことになり、本願発明に含まれる薬物の範囲を定めることができず、本願発明は不明確である。
よって、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)むすび
上記(i)?(iii)のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用例Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができず、また、引用例Bに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、さらに、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-22 
結審通知日 2011-04-25 
審決日 2011-05-09 
出願番号 特願2001-548090(P2001-548090)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新留 素子  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 大久保 元浩
平井 裕彰
発明の名称 向上された薬物濃度を与える医薬組成物  
代理人 富田 博行  
代理人 千葉 昭男  
代理人 社本 一夫  
代理人 小林 泰  
代理人 梶田 剛  
代理人 小野 新次郎  

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