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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1243696
審判番号 不服2008-10938  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-30 
確定日 2011-09-16 
事件の表示 特願2003-159412「水処理に伴う加圧気液の残圧を利用した廃圧利用発電方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月24日出願公開、特開2004-358344〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年6月4日の出願であって、平成20年1月4日付けの拒絶理由が通知され、同年3月6日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年3月26日付けで拒絶査定された。
これに対し、同年4月30日に拒絶査定不服審判請求がなされ、同年5月30日に明細書に係る手続補正書が提出され、同年7月11日に請求の理由に係る手続補正書が提出されたものであり、その後、平成22年11月11日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋がなされ、これに対する回答書が平成23年2月7日に提出されている。

2.平成20年5月30日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年5月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲(平成20年3月6日付け手続補正書により補正されたもの)を、以下のようにする補正を含むものである。
(補正前)
「【請求項1】 ラインアトマイザー装置を用いたオゾンによる上水、下水及び工場排水の高度処理において、該ラインアトマイザーの加圧状態から大気圧にまで減圧するに際して、インライン発電を実施することを特徴とする水処理に伴う加圧気液の残圧を利用したことを特徴とする廃圧利用発電方法。」を、
(補正後)
「【請求項1】 ラインアトマイザー装置を用いた酸素及びオゾンによる、下水、工場排水及び土水の処理において、該ラインアトマイザーの加圧状態から大気圧にまで減圧するに際して、インライン発電を実施することを特徴とする水処理に伴う加圧気液の残圧を利用する廃圧利用発電法。」とする。
(当審注:アンダーラインが補正箇所)

(2)補正の目的について
上記補正は、下記補正事項A?Cに示す補正を行うものである。

・補正事項A
供給される気体を「オゾン」から「酸素及びオゾン」に変更する。

・補正事項B
被処理液を「上水、下水及び工場排水」から「下水、工場排水及び土水」に変更する。

・補正事項C
処理のレベルを「高度処理」から「処理」に変更する。

上記補正事項A及びBは、補正前の発明特定事項に対して、新たな並列する概念の特定事項を追加し、同Cは、補正前の発明特定事項を拡張するものであって、いずれも発明特定事項を変更する補正であり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当せず、「請求項の削除」、「誤記の訂正」、「明りょうでない記載の釈明」のいずれにも該当しないことも明らかである。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)独立特許要件について
本件補正は、上記(2)で述べたとおり、補正の目的が不適法であるため、補正却下されるべきものであるが、仮に、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものとして、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)について、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)についてさらに検討する。

(3-1)本件補正発明
「【請求項1】 ラインアトマイザー装置を用いた酸素及びオゾンによる、下水、工場排水及び土水の処理において、該ラインアトマイザーの加圧状態から大気圧にまで減圧するに際して、インライン発電を実施することを特徴とする水処理に伴う加圧気液の残圧を利用する廃圧利用発電法。」

(3-2)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2000-312891号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「加圧ポンプを備えて被処理水を供給する被処理水供給系と、
所要濃度のオゾンを発生させるオゾン発生手段と、
発生したオゾンを被処理水供給系の加圧ポンプ上流側に注入するオゾン注入手段と、
供給された被処理水を加圧下でオゾン処理するオゾン反応部と、を有する加圧オゾン処理システムにおいて、
該オゾン反応部の後段に設置され、該オゾン反応部の圧力エネルギを電気エネルギに変換して回収する発電手段を備えた・・・エネルギ回収型加圧オゾン処理システム。」(特許請求の範囲【請求項1】)
(イ)「図1は本発明に係るエネルギ回収型加圧オゾン処理システムの第1実施形態を示す基本的なシステム構成図である。図1において、符号3はエネルギ回収型加圧オゾン処理システムのオゾン処理手段である密閉構造のオゾン反応部を示す。このオゾン反応部3は高圧に耐えうる圧力容器となっており、処理時には大気圧を越える圧力、好ましくは3atg以上、より好ましくは5atg以上の圧力がかかる構造である。」(段落【0018】)
(ウ)「オゾン発生手段5としては、放電によってオゾンガスを発生させるオゾナイザが用いられる。被処理水の水質によっても異なるが、オゾナイザの発生濃度は高いほど望ましく、100g/Nm^(3)級以上のオゾンガスを発生できるオゾナイザが好適である。
オゾン発生手段5によって発生したオゾンガス6はオゾン注入手段4によって被処理水に注入される。オゾン注入手段4としては散気管やインジェクタを用いることができる。また、加圧ポンプ2として気体を吸引できるポンプ、例えば渦流ポンプを使用し、オゾン注入手段4を加圧ポンプ2と一体化した構造も可能である。」(段落【0019】?【0020】)
(エ)「被処理水1は加圧ポンプ2によって前段の処理装置からオゾン注入手段4を経由してオゾン反応部3に供給される。被処理水1としては、上水や雨水,河川水,湖水,下水,地下水,廃棄物処理場浸出水がある。・・・」(段落【0021】)
(オ)「オゾン反応部3の後段には発電手段7を設ける。発電手段7は水力発電機を使用し、オゾン反応部3から流出する水が持つ圧力エネルギを電気エネルギとして回収する。・・・発電手段7の流出部はオゾン接触部より低い圧力、通常は常圧となっており、オゾン反応が終了してかつ圧力エネルギを回収された処理水8は次段の処理装置に流入する。
理論的には、水の持つ位置エネルギP_(0)(kW)は流量Q(m^(3)/s)と水位差H(m)を用いて次式で求めることができる。
【数3】P_(0)=9.8・Q・H
また、発電機の出力P_(1)(kW)は、水車効率η_(w)と発電機効率η_(g)を用いて次式で求められる。
【数4】P_(1)=η_(w)・η_(g)・P_(0)一般的な装置において、水車効率η_(w)は0.85?0.93、発電機効率η_(g)は0.90?0.98である。単純に計算すると、η_(w)・η_(g)の値は0.77?0.91となる。すなわち、水の持つ位置エネルギのうち、77?91%は電気エネルギに変換できる。本発明の加圧オゾン処理システムでは、オゾン反応部3内部の圧力が上式の水位差Hに相当する。従って、圧力下にある被処理水を損失なしで発電手段7の水車に与えることができれば、圧力エネルギの77?91%を回収することができる。」(段落【0027】?【0030】)

(3-3)引用発明
(a)引用文献1には、記載事項(ア)に、「加圧ポンプを備えて被処理水を供給する被処理水供給系と、
所要濃度のオゾンを発生させるオゾン発生手段と、
発生したオゾンを被処理水供給系の加圧ポンプ上流側に注入するオゾン注入手段と、
供給された被処理水を加圧下でオゾン処理するオゾン反応部と、を有する加圧オゾン処理システムにおいて、
該オゾン反応部の後段に設置され、該オゾン反応部の圧力エネルギを電気エネルギに変換して回収する発電手段を備えた・・・エネルギ回収型加圧オゾン処理システム。」が記載されており、引用文献1では、「加圧ポンプを備えて被処理水を供給する被処理水供給系と、所要濃度のオゾンを発生させるオゾン発生手段と、発生したオゾンを被処理水供給系の加圧ポンプ上流側に注入するオゾン注入手段と、供給された被処理水を加圧下でオゾン処理するオゾン反応部と、を有する加圧オゾン処理システム」を用いて、「被処理水を加圧下でオゾン処理」しているといえる。
(b)上記「被処理水」として、記載事項(エ)に、「上水や雨水,河川水,湖水,下水,地下水,廃棄物処理場浸出水」が例示されている。
(c)上記「加圧オゾン処理システム」における、「該オゾン反応部の後段に設置され、該オゾン反応部の圧力エネルギを電気エネルギに変換して回収する発電手段」について、加圧下でオゾン処理されてから発電を行うまでの流れについてみてみると、引用文献1には、「加圧下でオゾン処理した際の圧力エネルギを電気エネルギに変換して回収する発電を行うエネルギ回収型加圧オゾン処理」「方法」が実質的に記載されているといえる。
(d)上記(c)の「加圧下でオゾン処理した際の圧力エネルギを電気エネルギに変換して回収する発電を行う」ことについて、記載事項(オ)には、「オゾン反応部3の後段には発電手段7を設ける。発電手段7は水力発電機を使用し、オゾン反応部3から流出する水が持つ圧力エネルギを電気エネルギとして回収する。・・・発電手段7の流出部はオゾン接触部より低い圧力、通常は常圧となっており、オゾン反応が終了してかつ圧力エネルギを回収された処理水8は次段の処理装置に流入する。」と記載されており、加圧下でオゾン処理した際の加圧状態から常圧にまで減圧する際の圧力エネルギを電気エネルギに変換しているといえる。

(e)上記(a)?(d)の検討を踏まえ、記載事項(ア)?(オ)の事項を本願発明の記載ぶりに則して整理すると、引用文献1には、「加圧ポンプを備えて上水や雨水、河川水、湖水、下水、地下水、廃棄物処理場浸出水を供給する被処理水供給系と、所要濃度のオゾンを発生させるオゾン発生手段と、発生したオゾンを被処理水供給系の加圧ポンプ上流側に注入するオゾン注入手段と、供給された上水や雨水、河川水、湖水、下水、地下水、廃棄物処理場浸出水を加圧下でオゾン処理するオゾン反応部と、を有する加圧オゾン処理システムを用いた上水や雨水、河川水、湖水、下水、地下水、廃棄物処理場浸出水の加圧オゾン処理において、加圧下でオゾン処理した際の加圧状態から常圧にまで減圧する際の圧力エネルギを電気エネルギに変換して回収する発電を行うエネルギ回収型加圧オゾン処理方法。」なる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3-4)対比・判断
本件補正発明と引用発明とを比較する。
(a)引用発明において、被処理水として供給される「上水や雨水、河川水、湖水、下水、地下水、廃棄物処理場浸出水」は、本件補正発明の「下水、工場排水及び土水」に相当する。
(b)本件補正発明は、「ラインアトマイザーの加圧状態から大気圧にまで減圧するに際して、インライン発電を実施する」ことから、本件補正発明が「下水、工場排水及び土水」を「ラインアトマイザー装置」を用いて「酸素及びオゾン」によって処理する際に、加圧しているといえる。
してみると、引用発明が「上水や雨水、河川水、湖水、下水、地下水、廃棄物処理場浸出水」を「加圧オゾン処理システム」を用いて「加圧オゾン処理」することは、本件補正発明が「下水、工場排水及び土水」を「ラインアトマイザー装置」を用いて「酸素及びオゾン」によって処理することと、「下水、工場排水及び土水」を「オゾン」によって加圧処理する点で共通する。
(c)引用文献1には、記載事項(オ)に、「オゾン反応部3の後段には発電手段7を設ける。」と記載されており、加圧オゾン処理システムの処理ライン内に発電手段を設けているといえるから、その発電形態は「インライン発電」であるといえる。してみると、引用発明の「加圧状態から常圧にまで減圧する際の圧力エネルギを電気エネルギに変換して回収する発電を行う」ことは、本件補正発明の「加圧状態から大気圧にまで減圧するに際して、インライン発電を実施する」ことに相当する。
(d)そして、引用発明の「加圧下でオゾン処理した際の加圧状態から常圧にまで減圧する際の圧力エネルギを電気エネルギに変換して回収する発電を行う」ことでエネルギを回収することは、本件補正発明の「水処理に伴う加圧気液の残圧を利用する廃圧利用発電法」であるといえる。

上記(a)?(d)を踏まえると、両者は、
「オゾンによる、下水、工場排水及び土水の加圧処理において、加圧状態から大気圧にまで減圧するに際して、インライン発電を実施することを特徴とする水処理に伴う加圧気液の残圧を利用する廃圧利用発電法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点A
本件補正発明は、「ラインアトマイザー装置」を用いて「下水、工場排水及び土水の加圧処理」を行うのに対し、引用発明では該「ラインアトマイザー装置」を用いることについて特定されていない点。

・相違点B
本件補正発明は「酸素及びオゾン」による、「下水、工場排水及び土水の加圧処理」であるのに対し、引用発明では、「オゾン」のみによって加圧処理している点。

上記相違点A、Bについて検討する。
・相違点A
本件補正発明の「ラインアトマイザー装置」について、本願明細書段落【0009】には、「本発明で利用することが望ましい気液混合装置(ラインアトマイザー装置)」と記載されており、「ラインアトマイザー装置」とは「気液混合装置」のことを指すと認められる。
この「気液混合装置」について、本願明細書段落【0009】には、「気液混合装置(ラインアトマイザー装置)は、ガスロック、エアロックを起こすことなく気体と液体との混合体を送給することができる気液圧送ポンプと、超音波及びキャビテーションを発生させる機能を備えたアトマイザーと、酸素および/またはオゾンを供給する装置により構成される。」と記載されており、「気液圧送ポンプ」、「アトマイザー」、「酸素および/またはオゾンを供給する装置」により構成されているといえる。
一方、引用発明の「加圧オゾン処理システム」は、「加圧ポンプ」、「オゾン反応部」、「オゾン発生手段」を有し、「上水や雨水、河川水、湖水、下水、地下水、廃棄物処理場浸出水」に「オゾン」を注入して「加圧下でオゾン処理」するものであるから、その態様は「気液混合装置」であるといえる。
そこで、上記「気液圧送ポンプ」、「アトマイザー」、「酸素および/またはオゾンを供給する装置」と、引用発明の「加圧ポンプ」、「オゾン反応部」、「オゾン発生手段」とを比較してみる。

(A-1)「気液圧送ポンプ」と「加圧ポンプ」について
上記「気液圧送ポンプ」について、本願明細書段落【0011】には、「兵神装備株式会社より市販されている「モーノポンプ」」と記載されている。この「モーノポンプ」は、同【0012】に、「図2に示すように、断面が長円形である雌ネジ状空間が穿たれたステーター10内の雌ネジ状の空間内を、ピッチの大きな螺旋状で断面が円形で螺旋状をなすローター11が回転することによって、ステーターとローターとにより形成される空隙が順次移動し、その空隙内に存在する物質が移動していくタイプの定量送給ポンプである。」と記載されており、このような構造のポンプは、例えば、特開2002-52330号公報の段落【0017】及び【図3】に記載される、「容積型ポンプ」のことであるといえる。
一方、引用発明の「加圧ポンプ」は、上記記載事項(ウ)に、「加圧ポンプ2として気体を吸引できるポンプ、例えば渦流ポンプを使用し、オゾン注入手段4を加圧ポンプ2と一体化した構造も可能である。」と記載されており、「渦流ポンプ」を用いているといえる。
水処理設備に用いる気液圧送ポンプとして、「容積型ポンプ」を用いることは、上記特開2002-52330号公報の段落【0017】及び【図3】に記載される通り、本願出願前周知であるから、引用発明の「加圧ポンプ」として、「渦流ポンプ」に代えて、周知の「容積型ポンプ」を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(A-2)「アトマイザー」と「オゾン反応部」について
上記「アトマイザー」について、本願明細書段落【0009】には、「超音波及びキャビテーションを発生させる機能」を備えると記載されるとともに、同段落には、「アトマイザーの例として、「オゾン反応装置」(特許文献3参照)に用いられている「撹拌装置」を挙げることができる。」と記載され、同【0010】に、「その撹拌装置(気液ミキサー)は、図1に示すようなものである。図1において、チューブ1の流体流入側に、ほぼ相似形の2枚の半楕円形の翼盤2を配し、翼盤2の弦側側縁3を互いに向き合わせ、チューブの軸心に対して対称的に交差させ、交差部より流体流入側に位置する2枚の翼盤2の弦側側縁3間を、チューブの横断面をほぼ2等分する三角形の仕切板4で閉塞し、翼盤の弧状縁部(翼盤2の弦側側縁3と反対側の縁部)をチューブ1の内周壁6に固着して形成してなる変流部と、該変流部に続くチューブ1の内周壁6に、頭頂部をチューブの軸心方向に向けた半球状の頭部7と、逆載頭円錐台状の脚部8とにより一体成形された1個以上の突起物9を、チューブ1の軸芯に対して放射状に配して形成されてなる反応部とにより構成される。」と記載されており、このような構造の「アトマイザー」とは、本願明細書でいう特許文献3(特開平7-124577号公報)の段落【0018】及び【図3】に記載されるような「撹拌装置」のことであるといえる。
一方、引用発明の「オゾン反応部」は、記載事項(イ)に、「このオゾン反応部3は高圧に耐えうる圧力容器となっており、処理時には大気圧を越える圧力、好ましくは3atg以上、より好ましくは5atg以上の圧力がかかる構造である。」と記載されているが、上記「超音波及びキャビテーションを発生させる機能」を備える点については特段の記載がない。
しかしながら、水処理設備に用いる「撹拌装置」として、「超音波及びキャビテーションを発生させる機能」を備えた「撹拌装置」を用いることは、特開平7-124577号公報(上記「特許文献3」、段落【0011】、【図3】を参照)、特開平10-66850号公報(段落【0018】、【図3】を参照)等に記載されるとおり、本願出願前周知であるから、引用発明の「オゾン反応部」として、周知の「超音波及びキャビテーションを発生させる機能」を備えた「撹拌装置」を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(A-3)「酸素および/またはオゾンを供給する装置」と「オゾン発生手段」について
上記「酸素および/またはオゾンを供給する装置」について、本願明細書段落【0013】には、「酸素および/またはオゾンを供給する装置としては、酸素の供給とオゾン生成とを調節できるオゾン生成機等が利用できる。例えば、誘電体上に電極を形成したオゾン発生素子と、このオゾン発生素子に高周波交流電圧を印加する高周波高電圧電源を有し、オゾン発生素子に酸素含有ガスを供給しつつ、この電源の電圧および/または周波数を調整機で操作することによりオゾンの発生量が調整可能となる。」と記載されている。
一方、引用発明の「オゾン発生手段」は、記載事項(ウ)に、「オゾン発生手段5としては、放電によってオゾンガスを発生させるオゾナイザが用いられる。」と記載されている。この「オゾナイザ」とは、例えば、化学大辞典編集委員会編,“化学大辞典2”,共立出版株式会社,1997年9月20日,縮刷版第36刷,p.162?163に記載されるように、感応コイルに周波数50?500サイクルの5?25kVの交流電圧を印加して無声放電させ、酸素または空気から、オゾンと酸素または空気の混合物を得るものであるから、引用発明の「オゾン発生手段」は、上記「酸素および/またはオゾンを供給する装置」に相当するといえる。

上記(A-1)?(A-3)の検討を踏まえると、引用発明の「加圧オゾン処理システム」として、周知の「容積型ポンプ」、及び「超音波及びキャビテーションを発生させる機能」を備えた「撹拌装置」を採用することで、相違点Aに係る本件補正発明の特定事項をなすことは、当業者が困難なく想到し得ることである。

・相違点Bについて
上記(A-3)で述べたとおり、引用発明の「オゾン発生手段」は、上記「酸素および/またはオゾンを供給する装置」に相当するものである。
したがって、上記「オゾン発生手段」によって「オゾンと酸素」を発生させているといえるから、引用発明の「発生したオゾンを被処理水供給系の加圧ポンプ上流側に注入」し、「加圧下でオゾン処理する」ことは、実質的に「発生したオゾン及び酸素を被処理水供給系の加圧ポンプ上流側に注入」し、「加圧下でオゾン及び酸素処理する」ことであるといえる。
してみると、上記相違点Bは実質的な相違点とはなり得ない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件補正発明は、本願出願前に頒布された引用文献1に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により出願の際に独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成20年5月30日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年3月6日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】 ラインアトマイザー装置を用いたオゾンによる上水、下水及び工場排水の高度処理において、該ラインアトマイザーの加圧状態から大気圧にまで減圧するに際して、インライン発電を実施することを特徴とする水処理に伴う加圧気液の残圧を利用したことを特徴とする廃圧利用発電方法。」

本願発明は、上記本件補正発明から、供給される気体を「酸素及びオゾン」から「オゾン」に、被処理液を「下水、工場排水及び土水」から「上水、下水及び工場排水」に、処理のレベルを「処理」から「高度処理」に、それぞれ変更するものである。

4.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1、およびその記載事項は、上記2.(3-2)に記載したとおりである。

5.引用発明
引用発明については、上記2.(3-3)で述べたとおりである。

6.対比・判断
本願発明と引用発明とを比較する。
(a)引用発明において、被処理水として供給される「上水や雨水、河川水、湖水、下水、地下水、廃棄物処理場浸出水」は、本願発明の「上水、下水及び工場排水」に相当する。
(b)本願発明は、「ラインアトマイザーの加圧状態から大気圧にまで減圧するに際して、インライン発電を実施する」ことから、本願発明が「上水、下水及び工場排水」を「ラインアトマイザー装置」を用いて「オゾン」によって高度処理する際に、加圧しているといえる。
してみると、引用発明が「上水や雨水、河川水、湖水、下水、地下水、廃棄物処理場浸出水」を「加圧オゾン処理システム」を用いて「加圧オゾン処理」することは、本願発明が「上水、下水及び工場排水」を「ラインアトマイザー装置」を用いて「オゾン」によって「高度処理」することと、「上水、下水及び工場排水」を「オゾン」によって加圧処理する点で共通する。
(c)引用文献1には、記載事項(オ)に、「オゾン反応部3の後段には発電手段7を設ける。」と記載されており、加圧オゾン処理システムの処理ライン内に発電手段を設けているといえるから、その発電形態は「インライン発電」であるといえる。してみると、引用発明の「加圧状態から常圧にまで減圧する際の圧力エネルギを電気エネルギに変換して回収する発電を行う」ことは、本願発明の「加圧状態から大気圧にまで減圧するに際して、インライン発電を実施する」ことに相当する。
(d)そして、引用発明の「加圧下でオゾン処理した際の加圧状態から常圧にまで減圧する際の圧力エネルギを電気エネルギに変換して回収する発電を行う」ことでエネルギを回収することは、本願発明の「水処理に伴う加圧気液の残圧を利用する廃圧利用発電法」であるといえる。

上記(a)?(d)を踏まえると、両者は、
「オゾンによる、上水、下水及び工場排水の加圧処理において、加圧状態から大気圧にまで減圧するに際して、インライン発電を実施することを特徴とする水処理に伴う加圧気液の残圧を利用する廃圧利用発電法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点C
本願発明は、「ラインアトマイザー装置」を用いて「上水、下水及び工場排水」の加圧処理を行うのに対し、引用発明では該「ラインアトマイザー装置」を用いることについて特定されていない点。

・相違点D
本願発明は、「オゾンによる上水、下水及び工場排水の高度処理」であるのに対し、引用発明では「高度処理」について特定されていない点。

上記相違点C、Dについて検討する。
・相違点C
上記2.(3-4)の相違点Aの検討で述べたとおりである。

・相違点D
本願発明の「高度処理」について、本願明細書の段落【0007】には、「ラインアトマイザー(作動圧0.3?5.4MPa)装置を用いたオゾンによる上水及び排水の高度処理」と記載され、同段落【0008】には、「下水、工場の排水及び上水に加圧状態でオゾン等を作用させる高度処理」と記載されており、本願の「高度処理」とは、下水、工場の排水及び上水に加圧状態でオゾンを作用させることであるといえる。
一方、引用発明は、「供給された上水や雨水、河川水、湖水、下水、地下水、廃棄物処理場浸出水を加圧下でオゾン処理する」ものである。上記記載事項(イ)には、「このオゾン反応部3は高圧に耐えうる圧力容器となっており、処理時には大気圧を越える圧力、好ましくは3atg以上、より好ましくは5atg以上の圧力がかかる構造である。」と記載されており、前記「3atg」、「5atg」は、SI単位系に換算すると、それぞれ「0.3MPe」、「0.5MPe」(当審注:「Pe」はISOでのゲージ圧)であり、これらを絶対圧に換算すると、それぞれ「0.4MPa」、「0.6MPa」となるから、引用文献1には、「好ましくは0.4MPa以上、より好ましくは0.6MPa以上の圧力」をかけて「オゾン処理」を行うことが開示されているといえる。この「好ましくは0.4MPa以上、より好ましくは0.6MPa以上の圧力」は、上記「作動圧0.3?5.4MPa」の範囲内であるから、引用発明の「加圧下でオゾン処理する」ことは「高度処理」であるといえる。
してみると、上記相違点Dは実質的な相違点とはなり得ない。

よって、本願発明は、本願出願前に頒布された引用文献1に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された引用文献1に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶されるべきものである。

よって、上記のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-22 
結審通知日 2011-07-25 
審決日 2011-08-05 
出願番号 特願2003-159412(P2003-159412)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (C02F)
P 1 8・ 571- Z (C02F)
P 1 8・ 574- Z (C02F)
P 1 8・ 575- Z (C02F)
P 1 8・ 573- Z (C02F)
P 1 8・ 121- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小久保 勝伊  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 中澤 登
吉川 潤
発明の名称 水処理に伴う加圧気液の残圧を利用した廃圧利用発電方法  
代理人 嶋崎 英一郎  
代理人 嶋崎 英一郎  
代理人 河野 尚孝  
代理人 河野 尚孝  
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