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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800236 審決 特許
不服20045852 審決 特許
不服2005361 審決 特許
不服200524685 審決 特許
不服2006724 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1244017
審判番号 不服2009-390  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-05 
確定日 2011-09-20 
事件の表示 平成 9年特許願第532553号「ヒト腫瘍壊死因子δおよびε」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月18日国際公開、WO97/33902、平成13年 2月 6日国内公表、特表2001-501453〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,1996年(平成8年)3月14日を国際出願日とする出願であって,平成20年7月15日付で特許請求の範囲についての手続補正がなされたが,平成20年9月29日付で拒絶査定がなされ,これに対し,平成21年1月5日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年2月3日付で特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

第2 平成21年2月3日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年2月3日付の手続補正を却下する。

[理由]
1 平成21年2月3日付の手続補正

本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,平成20年7月15日付で補正された,
「以下からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含む,単離されたポリヌクレオチド:
(a)以下のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド:

;
(b)以下のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド:

;
(C)(a)または(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドに,ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって,免疫応答を刺激し得る,ポリペプチドをコードする,ポリヌクレオチド;
(d)1?10個のアミノ酸の置換,付加または欠失によって,(a)または(b)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドから誘導される,ポリペプチドであって,免疫応答を刺激し得る,ポリペプチドをコードする,ポリヌクレオチド;
(e)(a),(b),(c)または(d)のポリヌクレオチドに相補的であるポリヌクレオチド;および
(f)(a),(b),(c),(d)または(e)のポリヌクレオチドの少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド。」から,

「以下からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含む,単離されたポリヌクレオチド:
(a)以下のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド:
【化1】

;
(b)以下のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド:
【化2】

;
(C)(a)または(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドに,ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって,免疫応答を刺激する能力を有する,ポリペプチドをコードする,ポリヌクレオチド;
(d)1?10個のアミノ酸の置換,付加または欠失によって,(a)または(b)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドから誘導される,ポリペプチドであって,免疫応答を刺激する能力を有する,ポリペプチドをコードする,ポリヌクレオチド;
(e)(a),(b),(c)または(d)のポリヌクレオチドに相補的であるポリヌクレオチド;および
(f)(a),(b),(c),(d)または(e)のポリヌクレオチドの少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド。」に補正された。

本件補正は,補正前の請求項1において発明特定事項であった「免疫応答を刺激し得る」を,「免疫応答を刺激する能力を有する」に変更するものである。しかし,両者は表現こそ異なるが,実質的な意味内容に変わりはないものである。
これについて,請求人は,審判請求書において,本件補正は,「請求項1をより明確にする補正」であると主張しているが,より明確にすることと,明りょうでない記載を釈明することは異なるものである。すなわち,「明りょうでない記載の釈明」とは,その文理上はそれ自体意味の明らかでない記載など,明細書,特許請求の範囲又は図面の記載に不備を生じさせている記載について,それ本来の意味内容を明らかにすることであり(審判便覧54-10),「明りょうでない記載の釈明」を目的とする補正は,拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限られている(特許法第17条の2第4項第4号(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前のもの))。
本件補正前の「免疫応答を刺激し得る」という記載はそれ自体で明りょうであり,それについて特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていないとの拒絶の理由も通知されていない。
したがって,本件補正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことは明らかである。また,実質的な意味内容を変更するものでもないから,特許請求の範囲の限定的減縮,誤記の訂正,又は請求項の削除を目的とするものにも該当しない。
したがって,本件補正は,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明

平成21年2月3日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?30に係る発明は,平成20年7月15日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?30に記載された事項により特定されるものであり,そのうち,請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)は,以下のとおりのものである。

「以下からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含む,単離されたポリヌクレオチド:
(a)以下のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド:

;
(b)以下のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド:

;
(C)(a)または(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドに,ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって,免疫応答を刺激し得る,ポリペプチドをコードする,ポリヌクレオチド;
(d)1?10個のアミノ酸の置換,付加または欠失によって,(a)または(b)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドから誘導される,ポリペプチドであって,免疫応答を刺激し得る,ポリペプチドをコードする,ポリヌクレオチド;
(e)(a),(b),(c)または(d)のポリヌクレオチドに相補的であるポリヌクレオチド;および
(f)(a),(b),(c),(d)または(e)のポリヌクレオチドの少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド。」

第4 原査定における拒絶の理由

原査定の拒絶の理由となった,平成20年1月7日付で通知した拒絶理由の概要は,本願発明1に係るポリペプチドまたはポリヌクレオチドについて,本願明細書の記載をみても,アミノ酸配列分析に起因する推定に留まっており,該ポリペプチドまたはポリヌクレオチドが具体的な有用性(機能)を有すると高い蓋然性をもって判断できる具体的で明確かつ客観的な根拠は本願明細書中に何ら記載されていないから,本願発明1は特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしておらず,また,本願発明1について,発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない,というものである。

第5 当審の判断

1 はじめに
一般に,化学物質の発明は,新規で,産業上利用できる化学物質(すなわち有用性のある化学物質)を提供することにその本質があると解され,その化学物質が遺伝子等の,元来,自然界に存在する物質であって,その有用性が不明である場合には,単に存在を明らかにした,確認したというだけでは発見にとどまるものであり,自然界に存在した状態から分離し,一定の加工を加えたとしても,物の発明としては,いまだ産業上利用できる化学物質を提供したとはいえないものというべきであり,その有用性が明らかにされることで,初めて産業上利用できる発明として成立したものと認められるものと解すべきである(知財高判平成17年10月19日判決(平成17年(行ケ)第10013号)。
そして,遺伝子関連の化学物質発明においてその有用性が明らかにされる必要があることは,明細書の発明の詳細な説明の記載要領を規定した特許法第36条第4項実施可能要件についても同様である。なぜならば,当業者が,当該化学物質の発明を実施するためには,出願当時の技術常識に基づいて,その発明に係る物質を製造することができ,かつ,これを使用することができなければならないところ,発明の詳細な説明中に有用性が明らかにされていなければ,当該発明に係る物質を使用することはできないからである。

本願発明1は,ポリヌクレオチドに係るものであるが,その選択肢(a)?(d)のポリヌクレオチドは,ポリペプチドをコードするものであるので,本願明細書中に当該ポリペプチドの「有用性」が明らかにされているか否かが問題となる。そこで,以下検討する

2 本願明細書の記載
「新規のTNFδおよびTNFεと呼ばれる,図1および図2に示されるアミノ酸配列とヒトTNFαおよびTNFβのような腫瘍壊死因子ファミリー中の他のタンパク質の既知のアミノ酸配列との間の相同性によって腫瘍壊死因子リガンドであると仮説的に同定されている新規のポリペプチドを提供することが本発明の目的である。」(3頁16?20行)と記載され,
「本発明のヒトTNFδは,寄託されたクローンにおけるヒトTNFδをコードするcDNAの配列決定の結果によって示されるように,TNFリガンドスーパーファミリーの他のタンパク質に構造的に関連する。このようにして得られたcDNA配列を,図1に示す。これは,推定分子量約25.871kDaを有する約233アミノ酸残基のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む。このタンパク質は,公知のタンパク質のうち,TNFαに最も高い相同性を示す。図1のTNFδの全アミノ酸配列は,TNFαのアミノ酸配列に対して約38%の同一性を有する。」(15頁14?20行)と記載され,
「本発明のヒトTNFεは,寄託されたクローンにおけるヒトTNFεをコードするcDNAの配列決定の結果によって示されるように,TNFリガンドスーパーファミリーの他のタンパク質に構造的に関連する。このようにして得られたcDNA配列を,図2に示す。TNFε配列は,図1に示されるTNFδの配列とほとんど同一であり,最初の50アミノ酸およびアミノ酸86からアミノ酸92を含むTNFδの領域を含まない。従って,TNFεは,TNFδのスプライシング改変体である。TNFεは,168アミノ酸残基を含み,そして図2の配列は,N-末端疎水性領域を全く含まないTNFεの成熟タンパク質を示す。このタンパク質は,TNFαに対して最も高い相同性を示す。図2のTNFεは,TNFαのアミノ酸配列に対して約20%の同一性を有する。」(15頁26行?16頁5行)と記載され,
「本発明のポリペプチドは,新生物形成(例えば,腫瘍細胞増殖)を阻害するために使用され得る。本発明のポリペプチドは,アポトーシスおよび特定の細胞への細胞障害性を介して腫瘍の破壊を担い得る。本発明のポリペプチドはまた,接着細胞(例えば,LFA-1)のアップレギュレーションを誘導し,それゆえ,創傷治癒のために使用され得る。本発明のポリペプチドはまた,増殖促進活性を必要とする疾患(例えば,再狭窄)の処置のために使用され得る。なぜなら,本発明のポリペプチドは,内皮起源の細胞における増殖効果を有するからである。それゆえ,本発明のポリペプチドはまた,内皮細胞発達において血管新生を調節するために使用され得る。本発明のポリペプチドはまた,T細胞の活性化を刺激し,それゆえ,種々の寄生虫感染,細菌感染,およびウイルス感染に対する免疫応答を刺激するために使用され得る。本発明のポリペプチドはまた,この点において,自己免疫疾患を処置および/または予防するために自己応答性のT細胞を排除するために使用され得る。自己免疫疾患の例には,I型糖尿病が挙げられる。」(40頁16?29行)と記載されている。
そして,本願発明1の選択肢(a)のアミノ酸配列は図1のアミノ酸配列に一致し,その選択肢(b)のアミノ酸配列は図2のアミノ酸配列に一致するから,本願発明1に係るポリペプチドはTNFδ又はTNFεに相当するものと認められるが,その活性について,具体的な実験によって確認したことは記載されていない。

3 有用性についての判断
(1)本願明細書等について
上記した発明の詳細な説明に記載された本願発明1に係るポリペプチドの機能は,いずれも具体的実験により確認されたものではなく,そのアミノ酸配列と従来知られているアミノ酸配列との比較により,相同性の高いとされたヒトTNFαの知られた機能から予測されるものにすぎないものであり,しかも,本願発明1に係るポリペプチドとTNFαのアミノ酸配列の相同性は約20?38%にすぎず,同じ機能と推定できるほど配列相同性が高いとは到底いえないものであるから,本願発明1に係るポリペプチドの有用性を明らかにしたというには程遠いものある。
したがって,本願明細書の記載と本願出願日における技術常識からは,本願発明1に係るポリペプチドについて,技術的に意味のある特定の用途が推認できるとはいえず,その有用性が明らかとはいえない。よって,本願発明1が,産業上利用できる発明として成立したものとも,その実施をすることができる程度に明確かつ十分に,発明の詳細な説明の記載がなされているものとも認められない。

(2)請求人の主張について
請求人は,審判請求書等において,甲8?10号証(甲10は甲6に同じ)を挙げて,本願発明1に係るポリペプチドは,TNFリガンドスーパーファミリーに属するものであり,免疫応答を刺激し得る機能を有するはずであるから,その有用性を認識できたと主張している。
そこで,甲8?10号証をみると,例えば甲10号証には,TNFリガンドスーパーファミリーには,TNF,LTα,LTβ,CD27L,CD30L,CD40L,4-1BBL,OX40L及びFASLがあり(3378頁右欄19?21行),これらは全て活性化されたT細胞で発現され,T細胞の増殖を誘導し,T細胞媒介性の免疫応答を刺激し得ることは記載されているが(3381頁右欄1?12行),これらリガンドの発現はそれぞれ独特であり,T細胞の活性化において各リガンドは異なる役割を果たしていることも記載され,例えば,CD30Lは,TNF,CD27L,CD40L及び4-1BBLに比べて,誘導速度が遅い点が指摘されている(3381頁12?15行)。さらに,甲8及び9号証には,T細胞分布に与える影響や,誘導に必要な条件の違いにより,T細胞媒介性の免疫応答において,各リガンドは区別される役割を果たしていることも記載されている(甲8の82頁本文29?37行,甲9の146頁右欄5?12行)。
そして,甲10号証には,TNF,LTα,CD40LはB細胞の増殖や抗体の産生を誘導し,TNF,CD30L,4-1BBLは活性化マクロファージで発現され,TNF,LTα,CD30L及びCD40Lは細胞凝集を誘導し,ICAM-1のような接着分子をアップレギュレーションし,CD30L及びCD40LはB7-1のような共刺激分子を発現させることが記載されており(3381頁18行?3382頁3行),さらに,TNF,LTα,CD30L,4-1BBL及びFASLには,このファミリーに独特な細胞死(アポトーシス)を誘導する機能があることも記載されている(3382頁左欄11行?右欄2行)。
これらの記載からすれば,TNFリガンドスーパーファミリーであれば,T細胞媒介性の免疫応答を刺激し得る機能を有する可能性はあるものの,TNFリガンドスーパーファミリーには他にも,B細胞の増殖,抗体の産生,接着分子や共刺激分子の産生,細胞死の誘導など,免疫応答に関わる様々な機能があり,これらの機能は全てのメンバーに共通するものではないから,B細胞の増殖,抗体の産生,接着分子や共刺激分子の産生,細胞死の誘導などの機能とは異なり,TNFリガンドスーパーファミリーであれば,必ずT細胞媒介性の免疫応答を刺激し得る機能を有しているとする合理的理由もなく,本願発明1に係るポリペプチドが,必ずT細胞媒介性の免疫応答を刺激し得る機能を有するということはできない。
また仮に,本願発明1に係るポリペプチドが,T細胞媒介性の免疫応答を刺激し得る機能を有したとしても,本願出願日に知られているTNFリガンドスーパーファミリーは,上記したように,T細胞媒介性の免疫応答において,各リガンドは区別される役割を果たしているのであり,単に「T細胞媒介性の免疫応答を刺激し得る」というだけでは,多様な生体反応を含む免疫応答のどれをどのようなT細胞がどのように刺激し得るのかが明らかになっていないのであり,この点が明らかにされなければ具体的には何に使用できるかが理解されないものである。
したがって,本願発明1に係るポリペプチドが,TNFリガンドスーパーファミリーに属するとしても,その使用ができるような有用性が認識できたとは認められない。

さらに,請求人は甲1?2号証を挙げて,本願発明1に係るポリペプチドは,B細胞及びT細胞を活性化し,その活性化によってT細胞及びB細胞が媒介する免疫応答を刺激し得ることは確認されており,その有用性は明らかであると主張している。
しかし,甲1?2号証は本願出願後に頒布された文献であり,本願出願時において当業者に知られているものではないから,有用性を示す証拠として採用できない。
仮にこれらの文献を考慮したとしても,甲1号証に示されているヒトAPRILは,本願のTNFδのN末端側に17個のアミノ酸が付加されたものであり,両者は構造を同じくするポリペプチドではない。そして,N末端から17個のアミノ酸を削除すれば,元と同じ機能を有しているとはいえないものである。また,甲1?2号証には,本願のTNFεに関する記載は何もない。
したがって,仮に甲1?2号証を考慮しても,本願発明1に係るポリペプチドの有用性が確認されたとはいえない。

(3)欠失置換付加体について
本願発明1は,その選択肢(a)及び(b)にあるアミノ酸配列を含むポリペプ
チドをコードするポリヌクレオチドだけではなく,その選択肢(C)又は(d)にあるように,「相補的なポリヌクレオチドに,ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」や,「1?10個のアミノ酸の置換,付加または欠失によって誘導される・・・ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」を含むものであり,これらは,当該アミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸残基が,欠失されたり,置換されたり,または付加されたものを含むものである。
しかし,そもそも選択肢(a)及び(b)にあるアミノ酸配列を含むポリペプチドがどのような機能を有しているのか明らかにされていないことは,上記したとおりであるから,それからさらに1又は数個のアミノ酸残基を欠失置換付加させたものを含む,これらのポリペプチドがどのような機能を有しているのか明らかでないことはいうまでもないことである。
これらの欠失置換付加を含むポリペプチドは一応「免疫応答を刺激し得る」ものに限定されてはいるが,上記したように,単に「免疫応答を刺激し得る」というだけでは具体的に何に使用できるのか明らかにされているとはいえないから,その有用性を理解することはできない。

したがって,本願発明1は,産業上利用することができる発明であるとはいえず,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので,特許を受けることができないし,また,発明の詳細な説明の記載が,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

第6 むすび

以上のとおり,本願は,請求項1に係る発明について,特許法第29条第1項柱書に規定する要件,及び,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-26 
結審通知日 2011-04-27 
審決日 2011-05-10 
出願番号 特願平9-532553
審決分類 P 1 8・ 14- Z (C12N)
P 1 8・ 536- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 真由美阪野 誠司  
特許庁審判長 平田 和男
特許庁審判官 鵜飼 健
引地 進
発明の名称 ヒト腫瘍壊死因子δおよびε  
代理人 山本 秀策  
代理人 安村 高明  
代理人 森下 夏樹  

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