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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41M
管理番号 1244152
審判番号 不服2010-15021  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-06 
確定日 2011-09-28 
事件の表示 特願2000-131294「厚膜で印刷されたプラスチック製容器及びプラスチック容器への厚膜印刷方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 6日出願公開、特開2001-310543〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年4月28日の出願であって、平成22年2月12日に手続補正がなされ、同年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その請求と同時に手続補正がなされ、当審において、平成23年4月26日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)の通知がなされ、同年7月7日に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成23年7月7日になされた手続補正により補正された明細書の記載からみて、明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4にそれぞれ記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「紫外線硬化型インキを使用し、スクリーン印刷方式で250μm?500μmの膜厚で直接印刷する方法であって、スクリーン版に塗布された感光剤の厚さが40μm?500μmであり、スクリーンが40?200メッシュであり、スクリーンの線径が40?250μmであることを特徴とするプラスチック容器の印刷方法。」

第3 引用刊行物及び引用発明
1 当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-318564号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(1) 「【請求項1】 プラスチック中空容器の外側表面に、顔料を含まない紫外線硬化型のインキによるスクリーン印刷によって部分印刷層を形成し、これを紫外線によって硬化させ、膜厚60μm以上の内容物識別マークを形成することをを特徴とするプラスチック中空容器に対する内容物識別マークの形成方法。
【請求項2】 40?150メッシュのスクリーンを使用する請求項1に記載のプラスチック中空容器に対する内容物識別マークの形成方法。
【請求項3】 2回以上の重ね塗りを行なう請求項1又は請求項2に記載のプラスチック中空容器に対する内容物識別マークの形成方法。」

(2)上記(1)から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「プラスチック中空容器の外側表面に、顔料を含まない紫外線硬化型のインキによるスクリーン印刷によって部分印刷層を形成し、これを紫外線によって硬化させ、膜厚60μm以上の内容物識別マークを形成するプラスチック中空容器に対する内容物識別マークの形成方法であって、
40?150メッシュのスクリーンを使用するプラスチック中空容器に対する内容物識別マークの形成方法。」

2 当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-171344号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が図とともに記載されている。

「【0018】点字を表す突起13は、アクリル系樹脂の紫外線硬化用インクをシルクスクリーンを用いたスクリーン印刷法により印刷した後に紫外線を照射することにより形成される。この突起13は断面山型状をなし、その高さは0.5mm程度である。ここで、この発明でいう突起を形成する樹脂とは、点字として構成可能な合成樹脂をいう。
【0019】次に、この点字付き基板の製造方法について説明する。図2に示すように、自動ドアとAUTODOORの文字15、16が印刷された基板11上にはポリオールとポリイソシアネートより形成されるウレタン樹脂が塗布され、常温で硬化されて透明樹脂層12が形成される。続いて、図3に示すように、透明樹脂層12が被覆形成された基板11上に0.5mmの厚さのシルクスクリーン19を配置する。このシルクスクリーン19にはマスキング剤(乳剤)でマスキングされ、円孔状の突起形成用孔20が形成されている。この突起形成用孔20は、点字の文字を形成するように所定位置において一定の大きさを有している。
【0020】そして、このシルクスクリーン19を用いてアクリル系樹脂の紫外線硬化用インクをスクリーン印刷することにより、図4に示すように、透明樹脂層12上に突起形成用孔20に対応する樹脂液の突部21が形成される。アクリル系樹脂の紫外線硬化用インクは、アクリル樹脂などの感光性樹脂、ウレタンアクリレートなどの感光性モノマー、光重合開始剤及び顔料などよりなっている。この紫外線硬化用インクは、3000?30000センチポイズ(cps )の高粘度調整されている。
【0021】この樹脂液の突部21は、樹脂液がその粘性によって中心から周縁へ流れるとともに、樹脂液の表面張力により断面山型状となり、その高さは突起形成用孔20の深さのほぼ半分、すなわち約0.25mmとなる。アクリル系樹脂の紫外線硬化用インクは粘度が高いため、突起13の高さを高く、形状を断面山型状に形成し易くなっている。続いて、紫外線照射装置により樹脂液の突部21の上方から紫外線(UV)を照射すると、樹脂液の突部21が硬化して図5に示すベース突起22が形成される。
【0022】次に、図5に示すように、ベース突起22が形成された透明樹脂層12上に再度シルクスクリーン19を配置してアクリル系樹脂の紫外線硬化用インクをスクリーン印刷することにより、ベース突起22上に突起形成用孔20に対応して樹脂液が塗布形成される。このとき、樹脂液はベース突起22上の中心から周縁へ流れる。その状態で、紫外線照射装置を用いて紫外線を5?6秒間照射することにより、図1に示すように、ベース突起22上の樹脂液が硬化して点字を構成する突起13が形成される。この突起13は、高さが約0.5mmで、断面山型状をなしている。」

3 当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-270160号公報(以下「引用例3」という。)には、以下の事項が図とともに記載されている。

(1)「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係るプリント配線板用のクリーム半田印刷用版は、金属繊維から成るスクリーンメッシュで形成して成ることを特徴とするものである。また本発明にあって、スクリーンメッシュは40?150メッシュ、オープニングが100?500μm、乳剤も含むスクリーン全体の厚みが200?300μmであることを特徴とするものである。
【0007】以下、本発明を詳細に説明する。スクリーンメッシュは金属繊維からなる網で形成されるものであり、金属繊維としてはステンレス、アモルファス金属、ニッケル、銅など各種の繊維を用いることができる。このスクリーンメッシュの網目は40?150メッシュの範囲で且つオープニングが100?500μmの範囲であることが好ましい。150メッシュを超えた細かい網目では、印刷時にクリーム半田の詰まりが発生して版の通過性が悪くなり、また40メッシュ未満の網目では乳剤の保持性に劣って印刷時に乳剤欠けが発生するおそれがある。オープニングは網目の開口幅寸法を意味するものであるが、100μm未満では印刷時にクリーム半田の詰まりが発生して版の通過性が悪くなり、また500μmを超える網目では乳剤の保持性に劣って印刷時に乳剤欠けが発生するおそれがある。
【0008】この金属繊維から成るスクリーンメッシュをフレームに張って感光性の乳剤を塗布し、焼付露光して所定箇所の乳剤を硬化させると共に次いで現像液に浸漬して未硬化の乳剤を溶解させることによって、半田付けをおこなう箇所を開孔させたクリーム半田印刷用版を作成することができる。図2はこのクリーム半田印刷用版Aのスクリーンを拡大して示した断面図であり、半田付けをおこなう箇所を除いてスクリーンメッシュ1の網目を乳剤2で塞ぐことによって、印刷用孔3を設けたクリーム半田印刷用版Aが作成されるが、乳剤2の厚みとスクリーンメッシュ1の厚みを合わせたスクリーン全体の総厚Tは200?300μmの範囲に設定するのが好ましい。印刷用孔3に充填される量のクリーム半田が吐出されるために、クリーム半田印刷用版Aの総厚Tが厚い程クリーム半田の吐出量が多くなるものであり、総厚Tが200μm未満では半田吐出量が少なく必要とする半田厚みを得ることができない。また逆にクリーム半田印刷用版Aの総厚Tが300μmを超えると半田吐出量が多くなり過ぎてダレが生じるおそれがある。」
(2)「【0011】
【実施例】次に、本発明を実施例によって説明する。
(実施例)線径が60μmのステンレス繊維を織って形成される60メッシュ、オープニング310μmの網目を有するスクリーンメッシュをアルミニウム枠に紗張りし、ポリビニルアルコール水溶液中で酢酸ビニルモノマーを重合して調製されるエマルジョンとジアゾ樹脂からなる感光性乳剤をスクリーンメッシュに塗布し、これを露光・現像することによって、スクリーンメッシュの厚みが150μm、乳剤の厚みが100μmで総厚が250μmのクリーム半田印刷用版を作成した。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明の「プラスチック中空容器」、「紫外線硬化型のインキ」及び「プラスチック中空容器に対する内容物識別マークの形成方法」は、それぞれ、本願発明の「プラスチック容器」、「紫外線硬化型インキ」及び「プラスチック容器の印刷方法」に相当する。

2 引用発明の「プラスチック容器の印刷方法(プラスチック中空容器に対する内容物識別マークの形成方法)」は、プラスチック中空容器の外側表面に、顔料を含まない紫外線硬化型のインキによるスクリーン印刷によって部分印刷層を形成し、これを紫外線によって硬化させ、膜厚60μm以上の内容物識別マークを形成し、40?150メッシュのスクリーンを使用するものであるから、引用発明の「プラスチック容器の印刷方法」と本願発明の「プラスチック容器の印刷方法」とは、「紫外線硬化型インキを使用し、スクリーン印刷方式で所定の膜厚で直接印刷する方法であって、スクリーンが40?200メッシュであるプラスチック容器の印刷方法。」の点で一致する。

3 上記1及び2から、本願発明と引用発明とは、
「紫外線硬化型インキを使用し、スクリーン印刷方式で所定の膜厚で直接印刷する方法であって、スクリーンが40?200メッシュであるプラスチック容器の印刷方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記所定の膜厚が、本願発明では、「250μm?500μm」であるのに対して、
引用発明では、60μm以上である点。

相違点2:
本願発明では、「スクリーン版に塗布された感光剤の厚さが40μm?500μmであり、スクリーンの線径が40?250μmである」のに対して、引用発明では、いずれもそのようなものであるのか明らかでない点。

第5 判断
上記相違点1及び2について検討する。
1 相違点1について
(1)本願明細書の特許請求の範囲には、「【請求項2】 複数回重ね印刷を行うことを特徴とする請求項1に記載のプラスチック容器の印刷方法。」と記載されているから、本願発明は、1回印刷を行うことも、複数回重ね印刷を行うことも含むものである。

(2)引用例1には、「 2回以上の重ね塗りを行なう請求項1又は請求項2に記載のプラスチック中空容器に対する内容物識別マークの形成方法」(上記第3の1(1)参照。)と記載されている。

(3)引用例2には、紫外線硬化型インキを使用し、スクリーン印刷方式で合計2回の印刷で500μm(1回当たり250μm)の膜厚を直接印刷する透明樹脂層の印刷方法(上記第3の2参照。)が記載されている。

(4)引用発明において、具体的な膜厚は、当業者が60μm以上の範囲内において適宜決定すべき設計事項というべきところ、上記(2)及び(3)から、引用発明において、スクリーン印刷方式で、1回の印刷を行い、250μmの膜厚となすこと、あるいは合計2回の印刷を行い、500μmの膜厚となすことは、当業者が適宜なし得た設計上のことである。

(5)上記(4)の「250μmの膜厚」及び「500μmの膜厚」は、いずれも本願発明の「250μm?500μmの膜厚」に相当する。

(6)上記(1)、(4)及び(5)から、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得た設計上のことである。

2 相違点2について
(1)引用例3には、感光剤の厚さが100μmであり、スクリーンの線径が60μmであるスクリーン(上記第3の3(2)参照。)が記載されている。

(2)引用発明において、スクリーンとしてどのようなものを用いるかは、当業者が適宜決定すべき設計事項というべきところ、上記(1)から、引用発明において、スクリーンとして感光剤の厚さが100μm、スクリーンの線径が60μmであるものを用いることは、当業者が適宜なし得た設計上のことである。

(3)上記(2)の「感光剤の厚さが100μm」及び「スクリーンの線径が60μm」は、それぞれ、本願発明の「感光剤の厚さが40μm?500μm」及び「スクリーンの線径が40?250μm」に相当する。

(4)上記(2)及び(3)から、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得た設計上のことである。

3 効果について
本願発明の奏する効果は、当業者が、引用発明の奏する効果、引用例1に記載された事項、引用例2に記載された事項及び引用例3に記載された事項から予測できた程度のものである。

4 まとめ
したがって、本願発明は、当業者が、引用例1に記載された発明、引用例1に記載された事項、引用例2に記載された事項及び引用例3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用例1に記載された発明、引用例1に記載された事項、引用例2に記載された事項及び引用例3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-21 
結審通知日 2011-07-26 
審決日 2011-08-08 
出願番号 特願2000-131294(P2000-131294)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 真介  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 菅野 芳男
桐畑 幸▲廣▼
発明の名称 厚膜で印刷されたプラスチック製容器及びプラスチック容器への厚膜印刷方法  
代理人 熊田 和生  

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