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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1244469
審判番号 不服2008-19022  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-24 
確定日 2011-10-05 
事件の表示 特願2003-178026「光ディスク装置および光ディスクのチルト補正方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月20日出願公開、特開2005- 18819〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年6月23日の出願であって、平成19年10月12日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成20年1月16日付けで手続補正がなされ、同年4月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月24日付けで拒絶査定不服審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年1月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 プッシュプル信号を用いて対物レンズのトラック方向の制御を行う光ディスク装置であって、
所定のトラックにおいて、照射された光がトラックを横断する毎に強度変調されたプッシュプルトラッキングエラー信号を検出するプッシュプルトラッキングエラー信号検出手段と、
該所定のトラックにおいて、該対物レンズのトラック方向のシフト量を検出するシフト量検出手段と、
前記プッシュプルトラッキングエラー信号検出手段により検出されたプッシュプルトラッキングエラー信号のDC成分と前記シフト量検出手段により検出されたシフト量に基づいて、光ディスクに対する対物レンズのチルト量を算出するチルト量算出手段と、
該チルト量算出手段により算出されたチルト量に基づいて、チルト補正を行うチルト補正手段とを有することを特徴とする光ディスク装置。」

3.引用例
これに対して原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-138962号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
(1)「【請求項1】レーザ光源からの光束を対物レンズを介して集光し、光ディスクのトラック上とトラック間に光スポットを照射して情報の記録・再生を行なう光ディスク装置において、
前記光ディスクからの反射光からトラック上のプッシュプル信号とトラック間のプッシュプル信号を検出する信号検出系と、前記対物レンズの位置を検出するレンズ位置センサを有し、前記トラック上のプッシュプル信号とトラック間のプッシュプル信号の和信号と、前記レンズ位置センサにより検出されたレンズ位置信号を用いて、ディスクチルト信号を得ることを特徴とする光ディスク装置。」

(2)「【0015】受光素子10はa?hの8つの受光面から構成されており、各受光面a?hは電流-電圧(I-V)変換アンプ11a?11hに接続され、各受光面a?hからの信号が電圧信号として出力される。尚、受光素子10のa?dがメインスポットによる反射光を受光する受光面であり、再生信号及びフォーカスエラー信号が検出される。また、e,f及びg,hがサブスポットによる反射光を受光する受光面であり、トラッキングエラー信号及びオフセット信号の検出に利用される。また、図中の符号12A?12Dは和動(加算)アンプ、13A?13Eは差動(減算)アンプ、14A,14Bはゲイン調整アンプである。
【0016】ここで、各受光面a?hに対応する検出信号をSa?Shで表すと、和動アンプ12AによるSaとSdの和信号(Sa+Sd)と、和動アンプ12BによるSbとScの和信号(Sb+Sc)の差信号(Sa+Sd)-(Sb+Sc)が差動アンプ13Aによりトラック上のプッシュプル信号として出力される。また、サブスポットによる検出信号Se,SfとSg,Shは、それぞれ差動アンプ13B,13Cにより差信号(Se-Sf),(Sg-Sh)となり、さらに和動アンプ12Cを介して和信号(Se-Sf)+(Sg-Sh)となり、トラック間のプッシュプル信号として出力される。
【0017】そして、トラッキングエラー信号TEは、差動アンプ13Dによって、トラック上のプッシュプル信号と、K倍に設定されたゲイン調整アンプ14Aを介して入力されるトラック間のプッシュプル信号の差信号として、
TE=(Sa+Sd)-(Sb+Sc)-K{(Se-Sf)+(Sg-Sh)}で得られる。一方、対物レンズ6の位置ずれ及び光ディスク7の傾きによって発生するオフセット信号OFは、和動アンプ12Dによって、トラック上のプッシュプル信号と、ゲイン調整アンプ14Bを介して入力されるトラック間のプッシュプル信号の和信号として、
OF=(Sa+Sd)-(Sb+Sc)+K{(Se-Sf)+(Sg-Sh)}で得られる。
【0018】上記オフセット信号OFは対物レンズ6の位置ずれ及び光ディスク7の傾きによって発生する信号であるので、本実施例では、対物レンズ6の位置を検出するレンズ位置センサ(L)18を設け、レンズ位置センサ18からの信号LSとオフセット信号OFを差動アンプ13Eに入力し、オフセット信号OFからレンズ位置信号LSを引くことにより、ディスクチルト信号TSを得ることができる。」

(3)「【0025】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載の光ディスク装置においては、トラック上のプッシュプル信号とトラック間のプッシュプル信号の和信号と、レンズ位置センサにより検出されたレンズ位置信号によってディスクチルト信号を得ることができるので、正確にレンズ位置信号及びディスクチルト信号を検出でき、しかもチルトセンサが不要となり、安価である。」
図1に示される実施例に着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「レーザ光源からの光束を対物レンズを介して集光し、光ディスクのトラック上とトラック間に光スポットを照射して情報の記録・再生を行なう光ディスク装置において、
前記光ディスクからの反射光からトラック上のプッシュプル信号を得る和動アンプ12A,12B及び差動アンプ13Aと、トラック間のプッシュプル信号を検出する差動アンプ13B,13C及び和動アンプ12Cとからなる信号検出系と、
前記対物レンズの位置を検出するレンズ位置センサを有し、
前記トラック上のプッシュプル信号とゲイン調整された前記トラック間のプッシュプル信号の差信号よりトラッキングエラー信号を得る差動アンプ13Dと、
前記トラック上のプッシュプル信号とゲイン調整された前記トラック間のプッシュプル信号の和信号より前記対物レンズの位置ずれ及び前記光ディスクの傾きによって発生するオフセット信号を得る和動アンプ12Dと、前記オフセット信号から前記レンズ位置センサにより検出されたレンズ位置信号を引くことによって、ディスクチルト信号を得る差動アンプ13Eとを有する光ディスク装置。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明における「対物レンズ」、「トラック」、「プッシュプル信号」、「光ディスク装置」は、それぞれ本願発明における「対物レンズ」、「トラック」、「プッシュプル信号」、「光ディスク装置」に相当し、
引用発明における「レーザ光源からの光束を対物レンズを介して集光し、光ディスクのトラック上とトラック間に光スポットを照射して情報の記録・再生を行なう光ディスク装置」、「前記トラック上のプッシュプル信号とゲイン調整された前記トラック間のプッシュプル信号の差信号よりトラッキングエラー信号を得る差動アンプ13D」によれば、「トラッキングエラー信号」は、プッシュプル信号を用いて得られ、対物レンズのトラック方向の制御を行うための信号であることは自明であるから、本願発明と引用発明とは「プッシュプル信号を用いて対物レンズのトラック方向の制御を行う光ディスク装置」である点で一致する。

(2)引用発明における「前記光ディスクからの反射光からトラック上のプッシュプル信号を得る和動アンプ12A,12B及び差動アンプ13Aと、トラック間のプッシュプル信号を検出する差動アンプ13B,13C及び和動アンプ12Cとからなる信号検出系」によれば、「トラック上のプッシュプル信号」はいわゆるMPP信号であり、本願発明における「所定のトラックにおいて、照射された光がトラックを横断する毎に強度変調されたプッシュプルトラッキングエラー信号」に相当する〔この点に関して、本願発明でいう「プッシュプル信号」及び「プッシュプルトラッキングエラー信号」は、本願明細書の段落【0042】の記載によれば、単純な(2分割の受光領域の差信号による)プッシュプル信号に限定されるものではなく、引用発明のMPP信号も含み得ることが明記されている。〕といえ、かかる信号を得る「和動アンプ12A,12B及び差動アンプ13A」が、本願発明における「プッシュプルトラッキングエラー信号検出手段」に相当し、したがって、本願発明と引用発明とは「所定のトラックにおいて、照射された光がトラックを横断する毎に強度変調されたプッシュプルトラッキングエラー信号を検出するプッシュプルトラッキングエラー信号検出手段」を有する点で一致する。

(3)引用発明における「前記対物レンズの位置を検出するレンズ位置センサ」は、検出される対物レンズの「位置」がトラック方向の「シフト量」を意味することは自明といえることであるから、本願発明における「該所定のトラックにおいて、該対物レンズのトラック方向のシフト量を検出するシフト量検出手段」に相当する。

(4)引用発明における「前記トラック上のプッシュプル信号とゲイン調整された前記トラック間のプッシュプル信号の和信号より前記対物レンズの位置ずれ及び前記光ディスクの傾きによって発生するオフセット信号を得る和動アンプ12Dと、前記オフセット信号から前記レンズ位置センサにより検出されたレンズ位置信号を引くことによって、ディスクチルト信号を得る差動アンプ13E」によれば、対物レンズの位置ずれ及び光ディスクの傾きによって発生する「オフセット信号」は、トラック上のプッシュプル信号(いわゆるMPP信号)と、ゲイン調整されたトラック間のプッシュプル信号(いわゆるSPP信号)とを加算して得られたものであり、プッシュプル成分がキャンセルされてDC成分のみが残ったものである(例えば本願において【特許文献1】として提示された特開2002-170265号公報の段落【0029】1?3行の記載及び図14を参照)ことから、本願発明における「プッシュプルトラッキングエラー信号のDC成分」に相当し、引用発明における「ディスクチルト信号」、「差動アンプ13E」は、それぞれ本願発明における光ディスクに対する対物レンズの「チルト量」、「チルト量算出手段」に相当するといえ、結局、本願発明と引用発明とは「前記プッシュプルトラッキングエラー信号検出手段により検出されたプッシュプルトラッキングエラー信号のDC成分と前記シフト量検出手段により検出されたシフト量に基づいて、光ディスクに対する対物レンズのチルト量を算出するチルト量算出手段」を有する点で一致する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「プッシュプル信号を用いて対物レンズのトラック方向の制御を行う光ディスク装置であって、
所定のトラックにおいて、照射された光がトラックを横断する毎に強度変調されたプッシュプルトラッキングエラー信号を検出するプッシュプルトラッキングエラー信号検出手段と、
該所定のトラックにおいて、該対物レンズのトラック方向のシフト量を検出するシフト量検出手段と、
前記プッシュプルトラッキングエラー信号検出手段により検出されたプッシュプルトラッキングエラー信号のDC成分と前記シフト量検出手段により検出されたシフト量に基づいて、光ディスクに対する対物レンズのチルト量を算出するチルト量算出手段とを有することを特徴とする光ディスク装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
チルト量算出手段により算出されたチルト量に基づく制御について、本願発明ではチルト補正手段を有し、チルト補正を行うと特定するのに対し、引用発明ではそのような特定がない点。

5.判断
上記相違点について検討する。
何らかのチルト補正手段を設け、検出されたチルト信号(すなわち算出されたチルト量)に基づいてこれを制御し、チルト補正を行うことは、例えば原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-157553号公報(段落【0102】、図11を参照)、本願において【特許文献1】として提示された特開2002-170265号公報(【請求項1】、段落【0028】?【0031】、図14)、さらには特開平1-312744号公報(1頁左下欄4行?同頁右下欄10行、4頁左下欄9行?5頁左下欄12行、図1?3を参照)に記載のようにごく一般的に採用される周知の技術事項であり、引用発明においても同様に、何らかのチルト補正手段を設け、ディスクチルト信号に基づいてこれを制御することによって直接的にチルトに対する補正を行うようにすることも当業者であれば容易に想到し得ることである。

そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-28 
結審通知日 2011-05-10 
審決日 2011-05-23 
出願番号 特願2003-178026(P2003-178026)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 肇  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 早川 学
井上 信一
発明の名称 光ディスク装置および光ディスクのチルト補正方法  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  

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