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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1244488
審判番号 不服2009-9722  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-05-08 
確定日 2011-10-05 
事件の表示 特願2006-221361「カラー修正システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月25日出願公開、特開2007-282175〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年8月15日の出願(パリ条約の例による優先権主張(特許法第43条の2第1項の世界貿易機関の加盟国の国民)2006年4月4日(TW)台湾)であって、平成20年6月18日付け拒絶理由に対して同年10月27日付けで手続補正がなされ、平成21年2月6日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、上記拒絶査定を不服とする平成21年5月8日の審判請求である。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし36に係る各発明は、平成20年10月27日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記各請求項にそれぞれ記載されるとおりのものと認められるところ、請求項19に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「カラー修正方法は、
画像カラーデータが特定カラーデータであるか非特定カラーデータであるかを識別、
特定カラーデータを修正、
非特定カラーデータを画像出力装置特性内カラーデータ及び画像出力装置特性外カラーデータに分類、
画像出力装置のカラー特性に基づいて画像出力装置特性内カラーデータを拡大調整、並びに、
画像出力装置のカラー特性に基づいて画像出力装置特性外カラーデータを写像調整することを特徴とするカラー修正方法。」

3.刊行物発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-284521号公報(以下「刊行物」という。)には、次に示す(1)ないし(9)が記載されている。

(1)
【0003】
従来の色変換においては、印刷の目的、使用する色空間等が異なる場合には異なる色変換プロファイルを用意する必要があり、リソースを低減することが困難であった。例えば、入力データが示す色を忠実に再現するためには色域マッピングの際に圧縮や拡張を行わずに作成した色変換プロファイルが必要であるし、プリンタの色域を充分に利用する場合には入力データによる色域より広い領域の色を使えるように色域マッピングの際に拡張を行った色変換プロファイルが必要である。また、異なる色空間におけるデータで入力データを構成し、印刷を実行する場合、各色空間に対応した色変換プロファイルを予め作成しておき、適正な色変換プロファイルを参照する必要があった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、印刷の目的、使用する色空間等が異なる場合であっても共通の色変換プロファイルを参照して印刷を実行可能にすることを目的とする。
(段落【0003】)

(2)
【0032】
本実施形態においては、sRGB規格に準拠した色空間での色域より広い色域を持つ拡張RGB空間(eRGBと表記)のeRGBデータとCMYKlclmデータとを対応づけることによってLUTを作成する。尚、LUTは、有限個(例えば173個)の参照点についてeRGBデータとCMYKlclmデータとの対応関係を規定したテーブルである。データは有限個であるが、参照点を参照して補間処理を実施することによって任意の色についてRGBデータとCMYKlclmデータとを対応づけることができる。
(段落【0032】)

(3)
【0035】
プリンタによって印刷を行うために、LUTでは上記eRGBデータとCMYKlclmデータとを対応づける必要があるが、CMYKlclmデータはプリンタの機器依存色であることから、LUTを作成する際には一般にプリンタでの実際の印刷結果を測色する。そして、機器非依存色空間で上記eRGBデータとCMYKlclmデータとによる色を対応づけることによってLUTを作成する。
(段落【0035】)

(4)
【0037】
一方、CMYKlclmデータはインク量を特定するインク値データであって機器依存色である。従って、実際に印刷を行ったパッチを測色機によって測色することによってL*a*b*色空間内の座標値を取得する。測色用のCMYKlclmデータは、複数の色(例えば103個)について予め用意する。
(段落【0037】)

(5)
【0042】
従って、L*a*b*空間の任意の値に対応するeRGBデータおよびCMYKlclmデータを補間演算で算出することができる。複数のデータについてeRGBデータとCMYKlclmデータとを算出し、対応づけるとLUTとなる。尚、画像出力を行う際には肌色や空の青色など、実際の色をそのまま出力するより、人間の記憶色に近い色に変換した方が高画質に見えることが多いので、この類の色については実際の色を記憶色に変換しても良い。すなわち、上述の色域マッピングに際して特定の色は記憶色に対応づける。(段落【0042】)

(6)
【0043】
以上のようにして作成されたLUTにおいて、sRGBデータの色域内かつプリンタの色域内に存在する色は、色域マッピング(色域圧縮や色域拡張等)がなされないのでsRGBデータが示す色をそのまま出力するようなCMYKlclmデータに対応づけることができる。従って、この色については忠実に色再現を実施することができる。
【0044】
一方、sRGBデータの色域外でeRGBデータの色域内に存在する色は、色域圧縮や色域拡張等の色域マッピングなされ、プリンタの色域内の色で色再現される。従って、eRGBデータの色域外であってもプリンタの色域内に色が存在すればその色を利用して豊かな階調表現が可能であるし、eRGBデータの色域内でプリンタの色域外の色を出力不可能とするのではなくマッピングによってプリンタの色域内の色で出力することが可能になる。
(段落【0043】【0044】)

(7)
【0062】
ここでは、図4に示す例に従ってこの条件をより具体的に説明する。図4に示す例においては、色域境界およびL軸等に囲まれる領域を領域A?Hとして区別している。sRGB色空間の色域とプリンタの色域との双方に含まれる色は領域A,Bである。ターゲット色がこの領域に含まれるか否かを判別するためには、例えば、ターゲット色および色域境界の彩度を利用することができる。すなわち、ターゲット色の彩度をCt,sRGB色空間における色域境界の彩度をCs,eRGB色空間における色域境界の彩度をCe,プリンタの色域境界の彩度をCpとして、以下の条件のいずれかを満たすか否かを判別する。
条件1:Ct<CsかつCs<Cp
条件2:Ct<CpかつCp<Cs
【0063】
すなわち、条件1を満たせば領域A,条件2を満たせば領域B内にターゲット色が存在する。ターゲット色がこれらの領域A,B内にある場合は、その色と同一の色をプリンタ20で出力することができる。そこで、ターゲット色がこれら領域A,B内に存在すると判別されたときには、そのターゲット色についてマッピングを行わずにeRGBデータとCMYKlclmデータとを対応づける。この結果、eRGBデータが示す色とCMYKlclmデータによって出力される色とが略同一になり、忠実な色再現が実現される。
【0064】
一方、sRGB色空間の色域外かつeRGB色空間の色域内の領域は、上記図4における領域E,F,Gである。しかし、各領域の外側にプリンタの色域が存在する領域は領域Gである。このように、sRGB色空間の色域外かつeRGB色空間の色域内の領域に含まれる色であり、この領域の外側にプリンタの色域が存在するか否かを判別するためには、例えば、以下の条件を満たすか否かを判別する。
条件3:Ct≧CsかつCt<CeかつCe<Cp
【0065】
ターゲット色がこの領域G内にある場合は、領域H内の色を出力することにより、色相や明度を大幅に変えることなくより彩度の高い色を出力可能である。そこで、領域G内の色については色域拡張を行って領域Hの色も利用する。色域拡張においては、領域G内の色を領域Gおよび領域H内の色に一対一で対応づけることができれば良く、種々のアルゴリズムによって実行可能である。
【0066】
例えば、マッピングによって明度と色相は変動させないこととし、マッピング後の彩度CmをCm=(Ct-Cs)×(Cp-Cs)/(Ce-Cs)として算出する構成等を採用可能である。以上のようにしてマッピングを行ってeRGBデータとCMYKlclmデータとを対応づけると、eRGBデータが示す色より高い彩度を含む色がCMYKlclmデータによって出力され、豊かな階調による色再現が実現される。
【0067】
尚、プリンタの色域外の色は印刷できないため、本実施形態ではeRGB色空間の色域内かつプリンタの色域外の色をプリンタの色域内に圧縮している。また、本実施形態ではsRGB色空間の色域外であるが、eRGB色空間の色域内かつプリンタの色域内の色についてもマッピングを行わず、忠実な色再現を実施できるようにしている。具体的には、以下の条件に基づいてターゲット色が領域C,D,E,Fのいずれに該当するか判別し、マッピングの必要性およびその手法を判断する。
【0068】
条件4:Ct≧CpかつCt<CsかつCp<Cs
条件5:Ct≧CsかつCp<Cs
条件6:Ct≧CsかつCt<CpかつCp<Ce
条件7:Ct≧CpかつCt<CeかつCp<Ce
すなわち、条件4を満たせば、ターゲット色が領域C内に存在する。領域Cでは、ターゲット色がsRGB色空間およびeRGB色空間の色域内に含まれるが、プリンタの色域外である。そこで、当該ターゲット色が指定された画像においても何らかの色を印刷するため、色域圧縮処理を行う。ここで、色域圧縮処理のアルゴリズムとしては、種々のアルゴリズムを採用可能である。例えば、色相を変更せず、明度および彩度を変更してプリンタの色域内の色になるような規則を採用する。また、条件5を満たせば、ターゲット色が領域D内に存在する。領域Dでは、ターゲット色がeRGB色空間の色域内に含まれるが、プリンタの色域外であるため、上記領域Cと同様に色域圧縮処理を行う。ここでも、色域圧縮処理のアルゴリズムとしては、種々のアルゴリズムを採用可能である。
【0069】
さらに、条件6を満たせば、ターゲット色が領域E内に存在する。領域Eでは、ターゲット色がeRGB色空間の色域内であるとともにプリンタの色域内である。従って、このターゲット色を忠実に再現することが可能であり、マッピングは行わない。さらに、条件7を満たせば、ターゲット色が領域F内に存在する。領域Fでは、ターゲット色がeRGB色空間の色域内であるが、プリンタの色域外である。そこで、当該ターゲット色が指定された画像においても何らかの色を印刷するため、色域圧縮処理を行う。ここでも、色域圧縮処理のアルゴリズムとしては、種々のアルゴリズムを採用可能である。
【0070】
以上のように、色域の境界に基づいて色域の重なり具合を判断すれば、一つのLUTによって、異なる目的(忠実な色再現と豊かな階調での色再現)の色変換を実施可能である。また、sRGBデータは、容易にeRGBデータへ変換することができるので、sRGBデータによる入力画像データとeRGBデータによる入力画像データのいずれについても一つのLUTにて色変換を行い、印刷を実行可能である。
(図4の説明である段落【0062】ないし【0070】)

(8)
【0071】
図5は、以上のような処理によって作成されるLUT12dの構成を説明する説明図である。同図においては、RGBデータとCMYKlclmデータとが一対一に対応づけられていることを示している。上述のように、ターゲット色はLUTに登録される複数の参照点に対応しており、上記eRGBデータの色域を網羅する色である。従って、LUT12dに規定されたRGBデータがeRGB色空間のデータであるとすれば、色域圧縮を受けるものの、eRGB色空間の色域に含まれる略全色(Ra1Ga1Ba1?RenGenBen)についてCMYKlclmデータに変換することができる。
【0072】
一方、sRGB色空間はeRGB色空間より狭いので、LUT12dに規定されるRGBデータの一部(Ra1Ga1Ba1?RsnGsnBsn)によってsRGB色空間の色域を網羅することができる。従って、sRGBデータをeRGBデータに変換(sRGBデータが示す色と同じ色を示すeRGBデータを算出する)し、当該eRGBデータをCMYKlclmデータに変換することにより、sRGBデータが示す色を出力するためのCMYKlclmデータを取得することができる。
【0073】
尚、sRGB色空間の色域に対応するRGBデータの一部(図5のRa1Ga1Ba1?RanGanBan)についてはそのデータが示す色をマッピングせずにCMYKlclmデータと対応づけている。従って、このRGBデータについては忠実な色再現を実施可能である。また、sRGB色空間の色域外でeRGB色空間の色域内の色を示すRGBデータは、図5のRe1Ge1Be1?RenGenBenである。この色の一部は、上述のようにeRGB色空間の色域外にマッピングされている。従って、eRGB色空間における色の表現力を超えた豊かな色再現を実施可能である。
【0074】
以上の構成により、入力画像データをRa1Ga1Ba1?RanGanBanの範囲内で構成すれば、忠実な色再現を実施できるし、Ra1Ga1Ba1?RsnGsnBsnに相当するデータを利用すれば、sRGB色空間のデータに基づく印刷を実施することができる。むろん、eRGB色空間のデータに基づく印刷を実施することもできるし、ここで、Re1Ge1Be1?RenGenBenの一部を含む入力画像データを使えば、eRGB色空間における色の表現力を超えた豊かな色再現を実施可能である。
(図5の説明である段落【0071】ないし【0074】)

(9)
【0080】
図7は、印刷制御処理のフローチャートである。印刷制御処理が開始されると、画像データ120aが画像データ取得部210aに取得される。(ステップS200)。同画像データ取得部210aは、画像データ120aの画素数に過不足があるか否かを判別し、過不足がある場合には補間演算によって過不足を補う。色変換部210bは、RGBデータをCMYKlclmデータに変換するモジュールであり、LUT12dの参照点を使用して任意のRGBデータをCMYKlclmデータに変換する。当該CMYKlclmデータが上述の出力画像データに相当する。
【0081】
色変換部210bは、色空間変換部210b1を備えており、上記色変換を実施する前に上記設定された色空間に対応した処理を行う。すなわち、LUT12dに記述されたRGBデータはeRGB色空間のデータであるため、画像データ120aがsRGB色空間のデータである場合には、これをeRGB色空間のデータに変換する必要がある。
【0082】
このため、色空間変換部210b1は、上記画像データ取得部210aが取得した画像データ120aについて設定されていた色空間を判別する(ステップS210)。この色空間がsRGB色空間であると判別(ステップS220)したら、色空間変換部210b1はHDD120に記録されている変換マトリクス120bを参照し、sRGBデータをeRGBデータに変換する。尚、変換マトリクス120bは、sRGBデータをeRGBデータに変換するための3×3行列を示すデータである。
【0083】
ここでは、入力される画像データのRGB値がいずれの色空間に存在するのかを判別することができれば良く、印刷の目的で判断しても良い。例えば、忠実な色再現と豊かな色再現とのいずれかを選択するように構成し、前者であればsRGB色空間のデータであると判断し、後者であればeRGB色空間のデータであると判断する構成等を採用可能である。ステップS220にて色空間がsRGB色空間であると判別されなかった場合およびステップS230にて変換を行った場合には、その時点で得られているRGBデータの色空間がeRGB色空間である。そこで、色変換部210bは、上記LUT12dを参照し、補間演算によって任意のRGBデータをCMYKlclmデータに変換する(ステップS240)。
【0084】
尚、色変換部210bは色補正部210b2を備えており、利用者の指示等によって、色補正を実施することも可能である。すなわち、写真等の印刷においては、実際の被写体の色や画像データが示す色を忠実に再現するよりも彩度を高くするなど所定の色補正を実施した方が高画質に見える場合が多い。例えば、肌色や空の青色など、実際の色をそのまま出力するより、人間の記憶色に近い色に変換した方が高画質に見える。そこで、色補正部210b2においては、利用者の指示等により、色変換前あるいは色変換後の画像データから特定の色を抽出し、他の色に変換する処理を実行する。
【0085】
いずれにしても色変換によって画素毎のCMYKlclmデータが得られたら、ハーフトーン処理部210cは、上記ハーフトーン処理部11aと同様の処理を行ってハーフトーンデータを取得する(ステップS250)。印刷データ生成部210dは、当該ハーフトーンデータを受け取って、プリンタ20で使用される順番に並べ替える並べ替え処理を行う(ステップS260)。この並べ替え処理の後、画像の解像度などの所定の情報を付加して印刷データを生成し、USBI/F190bを介してプリンタ20に出力する(ステップS270)。プリンタ20においては当該印刷データに基づいて画像を印刷する。
(図7の説明である段落【0080】ないし【0085】)

刊行物の上記記載(7)によれば、刊行物の図4に示されるように、ターゲット色Ctが、eRGB色空間内の領域A,Eに存在する場合には、マッピングを行わず、ターゲット色を忠実に再現する。また、ターゲット色Ctが、eRGB色空間内の領域G(プリンタの色域内でもある)に存在する場合には、領域Gおよびプリンタの色域内である領域Hの色に色域拡張して、ターゲット色を豊かな階調で色再現する。さらに、ターゲット色Ctが、プリンタの色域外である領域Fに存在する場合には、プリンタの色域内である領域Eの色に色域圧縮処理して、ターゲット色を何らかの色で再現する。
刊行物の上記記載(8)によれば、刊行物の図5に示されるように、ターゲット色はLUTに登録される複数の参照点に対応しており、eRGBデータの色域を網羅する色であり、LUTに入力されるRGBデータについて、忠実な色再現とeRGB色空間における色の表現力を超えた豊かな色再現とを実施可能である。
刊行物の上記記載(9)によれば、刊行物の図7のステップS240に示されるように、LUTの参照点を使用して任意のRGBデータをCMYKlclmデータに変換する。
刊行物の上記記載(5)によれば、LUTにおいて、肌色や空の青色などの実際の色を記憶色に変換、すなわち、色域マッピングに際して特定の色は記憶色に対応づける。特定の色の場合には記憶色に変換しているところから、領域A,E,F,Gに対する上記色再現は特定の色以外の色に対してなされるものといえる。
したがって、刊行物には、次のとおりの発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。

[刊行物発明]
入力される任意のRGBデータが複数の参照点に対応したLUTは、
上記RGBデータが、特定の色の場合には、記憶色に変換し、
上記RGBデータが、eRGB色空間内の領域A,Eに存在する場合には、マッピングを行わず、入力色を忠実に再現し、
上記RGBデータが、eRGB色空間内の領域G(プリンタの色域内でもある)に存在する場合には、プリンタの色域内である領域Hの色に色域拡張して、入力色を豊かな階調で色再現し、
上記RGBデータが、プリンタの色域外である領域Fに存在する場合には、プリンタの色域内である領域Eの色に色域圧縮処理して、入力色を何らかの色で再現することで、
入力された任意のRGBデータをCMYKlclmデータに変換する変換方法。

4.対比
本願発明と刊行物発明とを対比すると、刊行物発明が対象とする変換方法は、変換に当たって、入力される任意のRGBデータを、記憶色に変換したり、マッピングをしなかったり(すなわち、変更せずそのまま用いる)、色域マッピングとして色域拡張及び色域圧縮を行って、色を修正しているといえるから、本願発明と同じくカラー修正方法といえる。
刊行物発明はLUTを用いており、予めLUTを設定して入力に対応する出力を得るものであるから、上記特定の色、非特定の色についての処理は、入力データをテーブルに対応させることで行っており、本願発明のように、入力データを直接「識別」してその後の処理を異ならせるものではない。したがって、本願発明では、「画像カラーデータが特定カラーデータであるか非特定カラーデータであるかを識別」することに対し、刊行物発明は、そのようにしていない点で相違する。
刊行物発明は、「特定の色の場合には、記憶色に変換」(肌色などを記憶色にする)しているから、「特定カラーデータを修正」するといえる。
刊行物発明は、「特定の色の場合には、記憶色に変換」(肌色などを記憶色にする)する一方で、特定の色ではない色(肌色などではない色)については、領域に基づく処理を行っており、特定の色ではない色(肌色などではない色)は、非特定カラーデータといい得る。
そして、領域に基づく処理は、
領域Fを区別しているから、「非特定画像カラーデータを画像出力装置特性内カラーデータ及び画像出力装置特性外カラーデータに分類」しているといえる。もっとも、この分類も、予め分類してテーブルを設定しておくものであり、入力データを「識別」して分類するものではない。
領域Gについて、領域Hの色に色域拡張しているから、「画像出力装置のカラー特性に基づいて画像出力装置特性内カラーデータを拡大調整」しているといえる。
また、領域Fについて、プリンタの色域内である領域Eの色に色域圧縮処理しているから、「画像出力装置のカラー特性に基づいて画像出力装置特性外カラーデータを調整する」といえる。もっとも、本願発明においては、色域圧縮ではなく、写像調整である点で相違する。

したがって、本願発明と刊行物発明との一致点、相違点は次のとおりであると認められる。
〈一致点〉
両者は、
「カラー修正方法は、
特定カラーデータを修正、
非特定画像カラーデータを画像出力装置特性内カラーデータ及び画像出力装置特性外カラーデータに分類、
画像出力装置のカラー特性に基づいて画像出力装置特性内カラーデータを拡大調整、並びに、
画像出力装置のカラー特性に基づいて画像出力装置特性外カラーデータを調整することを特徴とするカラー修正方法。」である点で一致する。

〈相違点〉
相違点(1)
本願発明では、「画像カラーデータが特定カラーデータであるか非特定カラーデータであるかを識別」することに対し、刊行物発明は、そのようにしていない点、そのため、分類を、本願発明では「識別」して分類することに対し、刊行物発明はそのようにしていない点。

相違点(2)
画像出力装置特性外カラーデータを調整が、本願発明においては写像調整であるのに対して、刊行物発明においては色域圧縮である点。

5.判断
相違点(1)について
刊行物発明はLUTを用いて色の修正を行っているところ、色修正を行う手法として、入力データを直接識別して処理を異ならせることが、拒絶理由に引用された特開2004-297617号公報(図1及びその説明である段落0048,0049,0059,0060)に記載されており、刊行物発明において、LUTを用いることに代えて、入力データを直接識別して処理を異ならせるようにすることは、当業者が容易に想到できることといえ、刊行物発明でLUTを設定しておくことで、特定カラーデータであるか非特定カラーデータであるかの区別による変換内容の区別、および、分類を、特定カラーデータであるか非特定カラーデータであるを識別し、識別したデータを分類するようにして、本願発明の相違点(1)に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できることといえる。

相違点(2)について
刊行物発明においては色域圧縮の具体的な圧縮方法は記載されていないが、プリンタの色域外の色をプリンタの色域境界の色に変換する圧縮処理が拒絶理由に引用された特開2002-152535号公報(段落【0004】、図6(A)及びその説明である段落【0006】)又は同じく引用された特開平10-70669号公報(図6(a)及びその説明である段落【0023】)に記載され、これらの圧縮処理は、本願発明における写像調整と同じことを行っている。
したがって、刊行物発明における色域圧縮を写像調整とすることは、当業者が容易になし得ることである。

以上のとおり、上記各相違点に係る本願発明の構成は当業者が容易に想到できるものであり、その構成から、本願発明の効果も当業者が予測できるものといえる。

6.請求人の主張についての検討
請求人は刊行物(拒絶理由での引用文献1)について、次のとおり主張している。
「引用文献1はその図4に示されるように、その一対一の対応の技術手段は範囲が比較的大きい領域Hを範囲が比較的小さい領域Gに対応させている。審査官殿は引用文献1の明細書の〔0065〕と図4に記載の技術手段により本願の拡張技術手段が記載されていると指摘されているが、引用文献1の明細書の〔0065〕及び図4に記載の技術手段はカラーデータを縮小するものであり、カラーデータを拡張させるものではない。ゆえに引用文献1には本願の拡張調整ユニットの技術手段は記載されておらず、これにより本願発明の拡張調整ユニットは引用文献1に記載されていない。」
この主張において、「比較的大きい領域Hを範囲が比較的小さい領域Gに対応」は「カラーデータを縮小するもの」としているが、これは、上記3.のとおり、領域G内の色を領域Gおよび領域Hの色に色域拡張するものであって、縮小するものではない。請求人の主張は、刊行物(引用文献1)の記載内容に基づかない請求人独自の見解であって、これが誤りであることは明白であって、採用できない。

7.むすび
以上のとおり、本願の請求項19に係る発明は、刊行物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項に係る発明について特に検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-26 
結審通知日 2011-05-10 
審決日 2011-05-23 
出願番号 特願2006-221361(P2006-221361)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 國分 直樹  
特許庁審判長 奥村 元宏
特許庁審判官 梅本 達雄
小池 正彦
発明の名称 カラー修正システム及び方法  
代理人 手島 直彦  
代理人 竹本 松司  
代理人 魚住 高博  
代理人 白石 光男  
代理人 杉山 秀雄  
代理人 湯田 浩一  

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