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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1244511
審判番号 不服2010-3950  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-24 
確定日 2011-10-06 
事件の表示 特願2008-220223「レピータ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月 8日出願公開、特開2010- 80991〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年8月28日の出願であって、平成21年7月24日付けの拒絶の理由の通知に対して、同年10月2日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたが、同年11月18日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成22年2月24日に審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年2月24日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「基地局と無線端末間の通信を中継するレピータであって、
基地局と通信を実行するドナー部と、
無線端末と通信を実行するリモート部とを備え、
前記ドナー部と前記リモート部とは、データ転送のための第1通信路と、フレームの送信タイミングを通知するための第2通信路とで接続され、
前記ドナー部は、前記基地局からのプリアンブルを含む信号を受信し、受信した信号に基づいて、データの送受信に係るフレームの開始のタイミングを決定するための同期を確立し、
前記ドナー部は、前記第2通信路を介して、前記リモート部にフレームの開始のタイミングを特定するための基準となるタイミングを通知し、
前記リモート部は、前記第2通信路を介して、通知されたタイミングに基づいて、前記ドナー部がプリアンブルを受信するタイミングで、リモート部が発信するプリアンブルが無線端末において受信されるように、プリアンブルを含む同期確立のためのフレームを発信する
ことを特徴とするレピータ。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特開2008-48218号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

A.「【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳述する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることはいうまでもない。
〔A〕一実施形態の説明
図1は本発明の一実施形態に係る無線通信システムの構成を示すブロック図で、この図1に示す無線通信システムは、無線基地局(BS:Base Station)1と、携帯電話やノートPC等の無線通信機能を具備する無線端末としての移動局(MS:Mobile Station)3と、これらのBS1とMS3との間に配置された中継(リレー)局(RS:Relay Station)2とをそなえて構成され、本実施形態においても、RS2は、BS1からみればMSに相当し、またMS3からみればBSに相当するように動作し、BS1又はMS3が送信した無線(RF)信号を一旦受信し、必要な処理(リレー処理)を行なってMS3又はBS1のために送信する。
【0028】
なお、この図1では、BS1,RS2,MS3をそれぞれ1台ずつしか図示していないが、いずれも2台以上存在していてもよい。また、この図1に示すようにBS1とMS3との間で無線信号がRS2を1つだけ経由する1段接続の形態のほか、図13により後述するように、2台以上のRS2が直列に無線接続(マルチホップ接続)される形態もあるし、図20により後述するように、2台以上のRS2が1台のBS1に対して並列に無線接続される形態もある。
【0029】
さらに、本実施形態では、BS1とRS2との間及びRS2とMS3との間において、それぞれ、例えば、WiMAXに準拠した通信方式、即ち、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式やOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)方式における所定フォーマットの無線フレーム(以下、単に「フレーム」ともいう)によって下りリンク及び上りリンクの通信が行なわれることを想定し、また、MS3での制御メッセージやユーザデータ(以下、それぞれ単に「メッセージ」、「データ」ともいう)の受信又は送信タイミングは、BS1(又はRS2)によって指定(管理)されるシステム形態を前提とする。」

B.「【0036】
一方、本実施形態のRS2は、その要部に着目すると、例えば図3に示すように、受信アンテナ20、受信部21、送信部22、送信アンテナ23、抽出部24、要求部25、タイミング制御部26、保持部27及び通知部28をそなえて構成される。
ここで、受信アンテナ20は、BS1又はMS3若しくは他のRS2からのRF信号を受信するものであり、受信部21は、この受信アンテナ20で受信されたRF信号について所要の受信処理を施すものである。
【0037】
このため、当該受信部21は、例えば、RF受信機(Rx)211と信号処理部212とをそなえて構成され、BS1におけるものと同様に、RF受信機211は、受信アンテナ20で受信されたRF信号について、ベースバンド周波数への周波数変換(ダウンコンバート)やディジタル信号処理のためのディジタル信号へのAD変換などを含む所要の無線受信処理を施すものである。
【0038】
信号処理部212は、このRF受信機211により得られたベースバンドディジタル信号について、少なくとも復調処理や復号処理を含む所要のディジタル信号処理を施すもので、当該信号処理後の信号はMS3へのリレーのために送信部22(信号処理部221)に入力されるようになっている。
また、送信部22は、MS3又はBS1若しくは他のRS2宛の送信信号を生成するもので、例えば、信号処理部221とRF送信機(Tx)222とをそなえて構成され、信号処理部221は、MS3又はBS1へ送信すべき信号(メッセージやデータなど)の符号化(畳込み符号やターボ符号等の誤り訂正符号化)処理、所定フォーマットの送信フレーム(OFDMフレームやOFDMAフレーム)の生成処理、QPSKや16QAM等による変調処理などを含む所要のディジタル信号処理を行なうものであり、RF送信機222は、この信号処理部221により得られた送信信号(ディジタルベースバンド信号)について、アナログ信号へのDA(Digital to Analog)変換や送信RF信号への周波数変換(アップコンバート)などを含む所要の無線送信処理を施すものである。
【0039】
送信アンテナ23は、この送信部22にて得られた送信信号をMS3又はBS1若しくは他のRS2に向けて空間に放射するものである。
抽出部24は、受信部21(信号処理部212)で処理されたBS1又は他のRS2からの送信フレームに設定されているフレーム番号(OFDMAフレームの場合なら前記DL-MAPに設定されている)やタイムラグ情報を抽出(検出)する機能を具備するものであり、要求部25は、他のRS2のタイムラグ情報を取得するため、送信部22を介して他のRS2への問い合わせを行なうもので、例えば、RS2の起動時等において、問い合わせ内容に応じた情報を含む信号(フレーム)が信号処理部221にて生成されて問い合わせメッセージ(制御メッセージ)として送信アンテナ23から送信されるようになっている。なお、問い合わせ先からの応答(タイムラグ情報)は、受信アンテナ20で受信され受信部21を介して抽出部24に抽出されて保持部27に保持される。
【0040】
タイミング制御部26は、保持部27に保持されたタイムラグ情報に基づいてMS3又は他のRS2でのメッセージやデータの受信又は送信タイミングを決定、管理し、当該タイミングに従って送信部22(信号処理部221)又は受信部21(信号処理部212)の処理を制御する機能や、BS1の送信フレーム番号と自身(RS2)の送信フレーム番号との同期をとるために、送信部22(信号処理部221)を制御して、抽出部24で抽出されたフレーム番号を自身(RS2)の送信フレームに設定する機能を具備するものである。例えば、図19?図23により後述するように、RS2にてメッセージやデータの送信タイミングを調整する必要がある場合には、送信部22(信号処理部221)に対して送信フレームの送信タイミング制御を行なう。
【0041】
保持部27は、前記抽出部24で抽出された他のRS2のタイムラグ情報(図15?図18により後述)を保持するものであり、通知部28は、MS3又はBS1若しくは他のRS2に通知すべき情報を生成するもので、その通知内容に応じた情報を含む信号(フレーム)が信号処理部221にて生成されて通知メッセージ(制御メッセージ)として送信アンテナ23から送信されるようになっている。通知メッセージとしては、例えば、図16?図18により後述するように、保持部27で保持している自身又は他のRS2のタイムラグ情報若しくはそれらの累積値を、送信部22を介して他のRS2又はBS1に通知するメッセージなどがある。」

C.「【0054】
(A4)BS1及びRS2の送信フレーム番号同期
MS3での予定受信(又は送信)タイミングや周期の開始時点を、タイミングを通知するメッセージをMS3が受信した時点からのオフセットで相対的に決定するのではなく、例えばフレーム番号とオフセットフレーム数などで絶対的に決定する場合には、BS1とRS2でのフレーム番号の管理が合っていないと、前述したようにMS3で算出される開始時点と、BS1が想定するMS3での開始時点とがずれてしまう。
【0055】
そこで、RS2では、抽出部24により、BS1が送信するフレームのフレーム番号を抽出し、タイミング制御部26により、BS1のフレーム送信と同期して、RS2がリレー送信するフレームに同じフレーム番号を設定する。これにより、BS1およびMS3で決定される受信または送信タイミングの開始時点を一致させることが可能となる。
図6は、BS1およびRS2がそれぞれ送信するフレームのフレーム番号を一致させる例を示す図である。
【0056】
BS1は、通常、起動後に一定周期で無線フレーム(例えば、OFDMAフレーム)の送信を行なう(ステップS31,S32)。各無線フレームには、MS3等がフレームを識別するためのフレーム番号が前記DL-MAPに設定され、送信毎にインクリメントされる。RS2では、起動後(ステップS33)、フレーム番号を単純に初期値から設定し、自身の独立なタイミングでフレームを送信するのではなく、例えば、抽出部24にて、まず自身が接続すべきBS1を検出し、そのBS1が送信しているフレームの送信タイミングを検出し、同期を行なう(ステップS34)。同期を行なう方法としては、例えばMS3がBS1に同期するのと同様に、BS1が送信するフレームのプリアンブル情報を抽出するなどの方法が考えられる。
【0057】
次に、RS2は、BS1から受信したフレーム(ステップS35)に設定されているフレーム番号を抽出部24により抽出し、タイミング制御部26により、上記検出したBS1のフレーム送信に同期したタイミングで、BS1の送信フレームと同じフレーム番号を設定したフレームの送信を行なう(ステップS36)。
このようにして、BS1から送信するフレームのフレーム番号とRS2から中継送信するフレームのフレーム番号とを同期させることにより、フレーム番号に基づいて前記の受信又は送信タイミングが決定(管理)されるような場合においても、正しい受信又は送信タイミング制御を実現することが可能となる。
【0058】
なお、図6ではRS2における同期やフレーム番号の抽出を1回だけ行なっているが、例えば毎フレームなど繰り返し行なってもよい。また図6では、BS1の起動後にRS2が起動されているが、先にRS2が起動されており、後からBS1が起動されたことを検出した時点で上記のフレーム同期およびフレーム番号抽出、設定を行なってもよい。
また、2台以上のRS2が多段(直列)接続される場合は、上記BS1をRS2に読み替え、上記RS2を他のRS2に読み替えて、適用すればよい。」

D.引用例の図3には、RS2の要部が図示されており、受信部21の信号処理部212から送信部22の信号処理部へ矢印が描かれている。

以上の記載によれば、この引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「受信アンテナ20、受信部21、送信部22、送信アンテナ23、抽出部24、要求部25、タイミング制御部26、保持部27及び通知部28をそなえて構成され、無線基地局(BS1)又は移動局(MS3)が送信した無線(RF)信号を一旦受信し、必要な処理(リレー処理)を行なってMS3又はBS1のために送信する中継局(RS2)において、
BS1とRS2との間及びRS2とMS3との間において、WiMAXに準拠した通信方式のフレームによって下りリンク及び上りリンクの通信が行なわれ、
受信アンテナ20は、BS1又はMS3若しくは他のRS2からのRF信号を受信するものであり、受信部21は、RF受信機(Rx)211と信号処理部212とをそなえて構成され、RF受信機211は、受信アンテナ20で受信されたRF信号について、ベースバンド周波数への周波数変換(ダウンコンバート)やディジタル信号処理のためのディジタル信号へのAD変換などを含む所要の無線受信処理を施すものであり、信号処理部212は、このRF受信機211により得られたベースバンドディジタル信号について、少なくとも復調処理や復号処理を含む所要のディジタル信号処理を施すもので、当該信号処理後の信号はMS3へのリレーのために送信部22(信号処理部221)に入力されるようになっており、
送信部22は、MS3又はBS1若しくは他のRS2宛の送信信号を生成するもので、信号処理部221とRF送信機(Tx)222とをそなえて構成され、信号処理部221は、MS3又はBS1へ送信すべき信号(メッセージやデータなど)の符号化処理などを含む所要のディジタル信号処理を行なうものであり、RF送信機222は、この信号処理部221により得られた送信信号(ディジタルベースバンド信号)について、所要の無線送信処理を施すものであり、
抽出部24は、受信部21(信号処理部212)で処理されたBS1又は他のRS2からの送信フレームに設定されているフレーム番号を抽出(検出)する機能を具備するものであり、
タイミング制御部26は、BS1の送信フレーム番号と自身(RS2)の送信フレーム番号との同期をとるために、送信部22(信号処理部221)を制御して、抽出部24で抽出されたフレーム番号を自身(RS2)の送信フレームに設定する機能を具備するものであり、RS2にてメッセージやデータの送信タイミングを調整する必要がある場合には、送信部22(信号処理部221)に対して送信フレームの送信タイミング制御を行い、
RS2では、起動後、フレーム番号を単純に初期値から設定し、自身の独立なタイミングでフレームを送信するのではなく、抽出部24にて、まず自身が接続すべきBS1を検出し、そのBS1が送信しているフレームの送信タイミングを検出し、同期を行ない、同期を行なう方法としては、MS3がBS1に同期するのと同様に、BS1が送信するフレームのプリアンブル情報を抽出するなどの方法が考えられ、次に、RS2は、BS1から受信したフレームに設定されているフレーム番号を抽出部24により抽出し、タイミング制御部26により、上記検出したBS1のフレーム送信に同期したタイミングで、BS1の送信フレームと同じフレーム番号を設定したフレームの送信を行なうRS2。」

4.対比
本願発明と引用発明を対比する。

引用発明の「無線基地局(BS1)」、「移動局(MS3)」は、本願発明の「基地局」、「無線端末」にそれぞれ相当する。引用発明の「中継局(RS2)」は、「無線基地局(BS1)又は移動局(MS3)が送信した無線(RF)信号を一旦受信し、必要な処理(リレー処理)を行なってMS3又はBS1のために送信する」ので、本願発明の「基地局と無線端末間の通信を中継するレピータ」に対応する。

引用発明の「受信部21」は、受信アンテナ20でBS1又はMS3若しくは他のRS2から受信したRF信号を処理するので、本願発明の「基地局と通信を実行するドナー部」と基地局と通信を実行するドナー部である点で共通する。

引用発明の「送信部22」は、「MS3又はBS1若しくは他のRS2宛の送信信号を生成するもの」であるので、本願発明の「無線端末と通信を実行するリモート部」と無線端末と通信を実行するリモート部である点で共通する。

引用発明において、「受信部21」は、RF受信機(Rx)211と信号処理部212とを備え、「信号処理部212は、このRF受信機211により得られたベースバンドディジタル信号について、少なくとも復調処理や復号処理を含む所要のディジタル信号処理を施すもので、当該信号処理後の信号はMS3へのリレーのために送信部22(信号処理部221)に入力される」ことと、引用例の摘記事項Dから、「受信部21」と「送信部22」とは信号処理後の信号が伝送される通信路で接続されていることは明らかであり、引用発明の「受信部21」と「送信部22」とは、データ転送のための第1通信路で接続されているといえる。

引用発明において、「RS2では、起動後、フレーム番号を単純に初期値から設定し、自身の独立なタイミングでフレームを送信するのではなく、抽出部24にて、まず自身が接続すべきBS1を検出し、そのBS1が送信しているフレームの送信タイミングを検出し、同期を行ない、同期を行なう方法としては、MS3がBS1に同期するのと同様に、BS1が送信するフレームのプリアンブル情報を抽出するなどの方法が考えられ、次に、RS2は、BS1から受信したフレームに設定されているフレーム番号を抽出部24により抽出し、タイミング制御部26により、上記検出したBS1のフレーム送信に同期したタイミングで、BS1の送信フレームと同じフレーム番号を設定したフレームの送信を行な」い、「タイミング制御部26」は、「送信部22(信号処理部221)に対して送信フレームの送信タイミング制御を行」うものであるので、引用発明の「タイミング制御部26」と「送信部22」は、フレームの送信タイミングを通知するための通信路で接続されていることは明らかであり、本願発明の「ドナー部と前記リモート部とは、」「フレームの送信タイミングを通知するための第2通信路とで接続され」、ることと、リモート部は、フレームの送信タイミングを通知するための第2の通信路に接続される点で共通する。

また、引用発明の「抽出部24」と「タイミング制御部26」によって上記同期処理を行う中継局(RS2)と、本願発明の「ドナー部は、前記基地局からのプリアンブルを含む信号を受信し、受信した信号に基づいて、データの送受信に係るフレームの開始のタイミングを決定するための同期を確立し、」「ドナー部は、前記第2通信路を介して、前記リモート部にフレームの開始のタイミングを特定するための基準となるタイミングを通知」する「レピータ」とは、前記基地局からのプリアンブルを含む信号を受信し、受信した信号に基づいて、データの送受信に係るフレームの開始のタイミングを決定するための同期を確立し、前記第2通信路を介して、前記リモート部にフレームの開始のタイミングを特定するための基準となるタイミングを通知するレピータである点で共通する。

引用発明において、「同期を行なう方法としては、MS3がBS1に同期するのと同様に、BS1が送信するフレームのプリアンブル情報を抽出するなどの方法が考えられ」、「RS2は、BS1から受信したフレームに設定されているフレーム番号を抽出部24により抽出し、タイミング制御部26により、上記検出したBS1のフレーム送信に同期したタイミングで、BS1の送信フレームと同じフレーム番号を設定したフレームの送信を行なう」ものであり、また、送信機22からのフレームは、WiMAXに準拠した通信方式のフレームであり、同期確立のためのプリアンブルが送信されることは明らかであるので、引用発明の「送信部22」は、前記第2通信路を介して、通知されたタイミングに基づいて、受信部21がプリアンブルを受信するタイミングで、送信部22が発信するプリアンブルが移動局(MS3)において受信されるように、プリアンブルを含む同期確立のためのフレームを発信するといえる。

したがって、両者は、
「基地局と無線端末間の通信を中継するレピータであって、
基地局と通信を実行するドナー部と、
無線端末と通信を実行するリモート部とを備え、
前記ドナー部と前記リモート部とは、データ転送のための第1通信路で接続され、前記リモート部は、フレームの送信タイミングを通知するための第2通信路に接続され、
前記基地局からのプリアンブルを含む信号を受信し、受信した信号に基づいて、データの送受信に係るフレームの開始のタイミングを決定するための同期を確立し、
前記第2通信路を介して、前記リモート部にフレームの開始のタイミングを特定するための基準となるタイミングを通知し、
前記リモート部は、前記第2通信路を介して、通知されたタイミングに基づいて、前記ドナー部がプリアンブルを受信するタイミングで、リモート部が発信するプリアンブルが無線端末において受信されるように、プリアンブルを含む同期確立のためのフレームを発信する
ことを特徴とするレピータ。」
で一致するものであり、次の点で相違している。

[相違点1]
本願発明では、ドナー部は基地局と通信を実行し、リモート部は無線端末と通信を実行するものであるのに対し、引用発明ではドナー部は、基地局と通信を実行し、リモート部は、無線端末と通信を実行するものであるものの、ドナー部は無線端末と、リモート部は基地局とも通信を行うものである点。

[相違点2]
本願発明では、「ドナー部」と「リモート部」とは、フレームの送信タイミングを通知するための第2通信路で接続されるのに対し、引用発明では、「タイミング制御部26」と「リモート部」とは、フレームの送信タイミングを通知するための第2通信路で接続されているものの、「ドナー部」は第2の通信路で接続されていない点。

[相違点3]
本願発明では、「ドナー部」が、基地局からのプリアンブルを含む信号を受信し、受信した信号に基づいて、データの送受信に係るフレームの開始のタイミングを決定するための同期を確立し、前記第2通信路を介して、リモート部にフレームの開始のタイミングを特定するための基準となるタイミングを通知するのに対し、引用発明では、「ドナー部」は、基地局からのプリアンブルを含む信号を受信するものの、受信した信号に基づいて、データの送受信に係るフレームの開始のタイミングを決定するための同期を確立し、前記第2通信路を介して、リモート部にフレームの開始のタイミングを特定するための基準となるタイミングを通知するのは「抽出部24」と「タイミング制御部26」である点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。

[相違点1]について
移動体通信用の中継局において、一方の無線機を基地局との通信用として、他方の無線機を無線端末用とすることは周知技術(例えば、原査定の拒絶の理由で引用された特開2008-48414号公報の「中継局230の2つの無線通信器は、異なるチャネルが割り当てられているだけでなく、異なるタイプの無線通信器であってもよい。より具体的には、無線通信器236aは基地局210との通信に使用するエンドポイント型の無線通信器であり、無線通信器236bは、エンドポイント220a、220bとの通信に使用する基地局型の無線通信器であってもよい。」(【0029】段落)という記載、特開2003-87162号公報の「PHSレピータ基地局RSは、主要な構成要素としてアンテナ10を備える対移動局無線部20と、アンテナ40を備える対基地局無線部30と、制御部100と、記憶部200とを備える。」(【0012】段落)という記載、参照)であり、引用発明において、ドナー部を基地局とのみ通信するようにし、リモート部を無線端末とのみ通信するように構成することは当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2]及び[相違点3]について
通信機を構成する各機能ブロックをどのような機能に分割するかは当業者の設計的事項であり、引用発明において、中継局(RS2)の「抽出部24」、「タイミング制御部26」の機能を「ドナー部」に持たせ、本願発明のように、「ドナー部」と「リモート部」とが、フレームの送信タイミングを通知するための第2通信路で接続され、「ドナー部」が、受信した信号に基づいて、データの送受信に係るフレームの開始のタイミングを決定するための同期を確立し、「ドナー部」が、前記第2通信路を介して、リモート部にフレームの開始のタイミングを特定するための基準となるタイミングを通知する構成とすることに格別な点はない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-27 
結審通知日 2011-08-02 
審決日 2011-08-24 
出願番号 特願2008-220223(P2008-220223)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桑江 晃  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 青木 健
安久 司郎
発明の名称 レピータ  

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