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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1244580
審判番号 不服2010-11121  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-24 
確定日 2011-10-03 
事件の表示 特願2004-245685「データ処理システム、その制御方法、記録媒体、プログラム及び情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 9日出願公開、特開2006- 67116〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年8月25日の出願であって、平成21年8月12日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成21年10月13日付けで手続補正がなされたが、平成22年2月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年5月24日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成22年5月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年5月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項15は、
「【請求項15】
印刷手段によってデータを印刷する印刷機能と送信手段によってデータを送信する送信機能とを含む複数の機能のうちのいずれかの選択をユーザインタフェースを介して受け付ける選択手段と、
前記選択手段によって前記送信機能が選択された場合に、送信する前記データのデータサイズの情報を報知手段により報知した後に前記データの送信を前記送信手段に実行させ、前記選択手段によって前記印刷機能が選択された場合に、印刷する前記データのデータサイズの情報を前記報知手段により報知すること無しに前記データの印刷を前記印刷手段に実行させる制御手段と、を有することを特徴とするデータ処理システム。」
と補正された。

2.補正の適否
上記補正は、本件補正前の請求項15に係る発明の「前記データ」について、「送信機能が選択された場合」は「送信する前記データ」であること、及び「印刷機能が選択された場合」は「印刷する前記データ」であることを限定するものであるから、発明を特定するために必要な事項を限定するものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、本件補正後の前記請求項15に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて以下に検討する。

(1)刊行物発明
原査定の拒絶の理由で引用された特開平10-40354号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに次のア?エの事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータと、ファクシミリ,プリンタ,及びイメージスキャナ等の複合周辺装置とをデータ通信可能に接続した通信システムに関する。」

イ 「【0034】図1はこの発明の一実施形態である通信システムの構成を示す図である。ファクシミリ装置等の複合周辺装置(MFP)1は、バイセントロニクスケーブル等の通信ケーブル3を介してパーソナルコンピュータ(PC)2と接続し、アナログ(PSTN)又はデジタル(ISDN)等の公衆回線網5を介して他のファクシミリ装置4とファクシミリ通信可能に接続している。【0035】PC2は、通信ケーブル6を介してローカルエリアネットワーク(LAN)9と接続し、そのLAN9上には他のパーソナルコンピュータ(PC)7や、レーザプリンタ等のプリンタ8が接続されている。
【0036】そして、MFP1は通常のファクシミリ機能によってファクシミリ装置4との間で画情報のファクシミリ送受信を行なうと共に、各機能ユニットがバイセントロニクスケーブル等の通信ケーブル3によって接続されたPC2のスキャナ,プリンタ,モデムとして機能することもできる。」

ウ 「【0037】図2は、図1に示した複合周辺装置の内部構成を示すブロック図である。このMFP1は、制御部11,システムメモリ12,パラメータメモリ13,スキャナ14,プロッタ15,操作パネル16,符号化復号化部17,画像蓄積装置18,モデム19,ネットワークコントロールユニット(NCU)20,パーソナルコンピュータインタフェース(PC・I/F)21,及びシステムバス22からなる。
【0038】制御部11は、CPU,ROM,及びRAM等からなるマイクロコンピュータであり、この複合周辺装置の各部の制御処理,ファクシミリ伝送制御手順処理,及びこの発明に係る各種の処理を行なうシステム制御部である。システムメモリ12は、制御部11が実行する制御処理プログラム及び処理プログラムを実行するときに必要な各種データなどを記憶すると共に、制御部11のワークエリアを構成するメモリである。
【0039】パラメータメモリ13は、G3ファクシミリ装置に固有な各種の情報を記憶するためのメモリである。スキャナ14は、原稿から所定の解像度で原稿像を操作して各種画像処理を行なう画像読取装置である。
【0040】プロッタ15は、スキャナ14によって画像処理されたデータ又は他のファクシミリ装置4から受信したデータを所定の解像度で記録紙に記録するレーザプリンタ,インクジェットプリンタ等の印刷装置である。操作パネル16は、この複合周辺装置1を操作するための各種の操作キーを備えたキーボード等の操作部と、各種メッセージを表示するLCD等のディスプレイである表示部とからなる。
【0041】符号化復号化部17は、画信号を符号化圧縮するとともに、符号化圧縮されている画情報を元の画信号に復号化する処理を行なう。画像蓄積装置18は、符号化圧縮された状態の画情報を記憶するためのハードディスク装置,光ディスク装置等の記憶装置である。
【0042】モデム19は、G3ファクシミリのモデム機能を実現するためのものであり、伝送手順信号をやり取りするための低速モデム機能(V.21モデム),及び主に画情報をやり取りするための高速モデム機能(V.29モデム,V.27terモデム)を備えている。【0043】NCU20は、この複合周辺装置1を公衆回線に接続するためのものであり、自動発着信機能を備えた網制御装置である。PC・I/F21は、この複合周辺装置1をPC2にデータ通信可能に接続するためのインタフェースである。」

エ 「【0093】次に、上記PC2側で画信号をファクシミリ送信するときの通信時間を確認できるようにする処理について説明する。図7はそのときの処理を示すフローチャートである。
【0094】この処理は、予めPC側に複数種類の2値化処理アルゴリズムと画像処理パラメータとを記憶しておく。そして、MFPが、ステップ(図中「S」で示す)61で初期化処理を実行し、ステップ62へ進んでファクシミリ送信(FAX)と複写(Copy)のいずれかの動作モードを設定し、ステップ63へ進んで原稿読み取り開始か否かを判断する。
【0095】ステップ63の判断で原稿読み取り開始なら、ステップ64へ進んで原稿読み取りを行ない、その読み取った画信号を量子化し、ステップ65へ進んでその量子化後の多値レベルにしてPCへデータ伝送し、ステップ66へ進む。
【0096】ステップ66?73(図中破線枠で囲む)の処理はPC側の処理であり、PCは複合周辺装置から画信号を受信すると、ステップ66でその画信号を記憶部に格納し、ステップ67へ進んで予め記憶されている複数種類の2値化処理のアルゴリズムと画像処理パラメータの中から最適の2値化処理アルゴリズムと画像処理パラメータと選択して設定する。また、この設定は操作者の入力指定又はPCの制御部が自動的に判断した画信号の任意の領域毎(例えば、写真画像と文字画像)に行なう。
【0097】そして、ステップ68へ進んでそのアルゴリズムとパラメータとによって画信号に2値化画像処理を施し、ステップ69へ進んで画信号の圧縮データ量とファクシミリ送信時の所要通信時間とを算出し、ステップ70へ進んでその2値化画信号と圧縮データ量と所要通信時間とを表示部に表示し、ステップ71へ進んで2値化画像品質とデータ量と通信時間とがそれぞれOKであるか否かの総合判定がOKである指示が入力されたか否かを判断する。【0098】ステップ71の判断でOK指示がなければ、ステップ72へ進んで操作者による画像処理の内容の微調整を行なった後、再びステップ68へ進んで再度選択されたアルゴリズムとパラメータとによって2値化処理をし、OK指示があればステップ73へ進んでMFPへ2値化画信号をデータ伝送して、ステップ74へ進む。【0099】ステップ74からは再び複合周辺装置側の処理であり、ステップ74でFAX送信モードか否かを判断して、FAX送信モードならステップ75へ進んで2値化画信号を符号化し、ステップ76へ進んでNCUによってモデムを介して宛先へファクシミリ送信処理をして、この処理を終了する。また、ステップ74の判断でコピーモードならステップ77へ進んで2値化画信号をコピー処理して、この処理を終了する。
【0100】この処理では、PC2の制御部31が記憶部34に記憶した画信号の内容に基づいて、その任意領域単位に複数種類の2値化処理アルゴリズムと画像処理パラメータの中から最適なアルゴリズムとパラメータを選択し、その選択したアルゴリズムに基づいて2値化処理を行なう。
【0101】そして、その2値化後の画信号の圧縮データ量とファクシミリ送信時の所要通信時間を算出し、表示部33に2値化後の画像と共に、圧縮データ量と所要通信時間を表示して、操作者によって入力部32から画像処理の微調整の指示入力があると、その指示内容に応じて画像処理の内容をチューニングして再度2値化処理とデータ量と通信時間の算出処理を実行する。
【0102】このようにして、PC2側で2値化処理後の画信号の圧縮データ量と複合周辺装置1によるファクシミリ送信時の所要通信時間(送信時間)とを算出して表示部33に表示するので、PC2側の操作者は送信時間を確認しながら画像処理の内容を設定することができる。
【0103】したがって、例えば、中間調画像の場合には、画像品質と送信時間は背反する傾向にあるが、その両者をファクシミリ送信に先立って確認することができ、そのどちらを優先するかを選択することができ、操作者の意向に反った良好なファクシミリ送信を容易に行なうことができる。」

以上の記載から、刊行物には以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。

「パーソナルコンピュータ等のコンピュータと、ファクシミリ,プリンタ,及びイメージスキャナ等の複合周辺装置とをデータ通信可能に接続した通信システムであって、
ファクシミリ装置等の複合周辺装置(MFP)1は、通信ケーブル3を介してパーソナルコンピュータ(PC)2と接続し、公衆回線網5を介して他のファクシミリ装置4とファクシミリ通信可能に接続しており、MFP1は通常のファクシミリ機能によって他のファクシミリ装置4との間で画情報のファクシミリ送受信を行なうと共に、各機能ユニットが通信ケーブル3によって接続されたPC2のスキャナ,プリンタ,モデムとして機能することもできるものであり、スキャナ14によって画像処理されたデータ又は他のファクシミリ装置4から受信したデータを所定の解像度で記録紙に記録するレーザプリンタ,インクジェットプリンタ等の印刷装置であるプロッタ15、画情報をやり取りするための高速モデム機能を備えているモデム19、この複合周辺装置1を公衆回線に接続するためのものであり、自動発着信機能を備えた網制御装置であるNCU20を備え、
PC2側で画信号をファクシミリ送信するときの通信時間を確認できるようにする処理として、MFPが、ファクシミリ送信(FAX)と複写(Copy)のいずれかの動作モードを設定し、原稿読み取り開始なら原稿読み取りを行ない、その読み取った画信号を量子化し、その量子化後の多値レベルにしてPCへデータ伝送し、
PCは複合周辺装置から画信号を受信すると、その画信号を記憶部に格納し、予め記憶されている複数種類の2値化処理のアルゴリズムと画像処理パラメータの中から最適の2値化処理アルゴリズムと画像処理パラメータと選択して、そのアルゴリズムとパラメータとによって画信号に2値化画像処理を施し、画信号の圧縮データ量とファクシミリ送信時の所要通信時間とを算出し、その2値化画信号と圧縮データ量と所要通信時間とを表示部に表示し、2値化画像品質とデータ量と通信時間とがそれぞれOKであるか否かの総合判定がOKである指示が入力されたか否かを判断して、OK指示があればMFPへ2値化画信号をデータ伝送して、
複合周辺装置側は、FAX送信モードか否かを判断して、FAX送信モードなら2値化画信号を符号化し、NCUによってモデムを介して宛先へファクシミリ送信処理をして、この処理を終了する
ことを特徴とする通信システム。」

(2)対比
本願補正発明と刊行物発明とを対比する。

a.刊行物発明の「複合周辺装置(MFP)1」は、「通常のファクシミリ機能によってファクシミリ装置4との間で画情報のファクシミリ送受信を行なう」と共に、通信ケーブル3によって接続されたPC2の「プリンタ」としても機能するものであるから、「印刷手段によってデータを印刷する印刷機能と送信手段によってデータを送信する送信機能とを含む複数の機能」を有する点で本願補正発明と共通する。ここで、刊行物発明の「プロッタ15」は本願補正発明の「印刷手段」に、刊行物発明の「モデム19」及び「NCU20」は本願補正発明の「送信手段」に、それぞれ相当するものであり、刊行物発明の「ファクシミリ機能」が本願補正発明の「送信機能」に相当するものである。
また、刊行物発明の「複合周辺装置(MFP)1」は印刷機能と送信機能を含む複数の機能を有するものであるから、「複合周辺装置(MFP)1」を「プリンタ」として機能する際には、当然に「印刷機能」を選択しており、また、「ファクシミリ機能」によってファクシミリ送信を行う際には、当然に「送信機能」を選択しているといえる。
それゆえ、本願補正発明と刊行物発明とは、「印刷手段によってデータを印刷する印刷機能と送信手段によってデータを送信する送信機能とを含む複数の機能のうちのいずれかの選択」を受け付け、「前記送信機能が選択された場合に」「前記データの送信を前記送信手段に実行させ」、「前記印刷機能が選択された場合に」「前記データの印刷を前記印刷手段に実行させる」点で共通する。

b.刊行物発明において「複合周辺装置(MFP)1」で行われる「画信号をファクシミリ送信する」処理は、MFPで「ファクシミリ送信(FAX)と複写(Copy)のいずれかの動作モードを設定し」た後、原稿読み取りによって読み取った画信号を量子化してPCへデータ伝送し、PCにおいて、「予め記憶されている複数種類」の中から選択された「2値化処理のアルゴリズムと画像処理パラメータ」とによって画信号に2値化画像処理を施し、画信号の「圧縮データ量」を算出して「表示部」に表示する処理を含むものであるから、この処理は本願補正発明の「送信する前記データのデータサイズの情報を報知手段により報知」する処理であって、刊行物発明の「圧縮データ量」は本願補正発明の「送信する前記データのデータサイズ」に相当するといえる。
加えて、刊行物発明は、「圧縮データ量」を表示した後に「2値化画像品質とデータ量と通信時間とがそれぞれOKであるか否かの総合判定がOKである指示が入力されたか否かを判断して」、OK指示がある場合にMFPへ2値化画信号をデータ伝送して、MFPで2値化画信号を符号化してファクシミリ送信処理を行うものであるから、刊行物発明は「データサイズの情報を報知手段により報知した後に前記データの送信を前記送信手段に実行させ」る点でも本願補正発明と共通する。
それゆえ、本願補正発明と刊行物発明とは、「前記送信機能が選択された場合に、送信する前記データのデータサイズの情報を報知手段により報知した後に前記データの送信を前記送信手段に実行させ」る点で共通する。

したがって、本願補正発明と刊行物発明は、以下の点で一致し、以下の相違点を有する。

[一致点]
印刷手段によってデータを印刷する印刷機能と送信手段によってデータを送信する送信機能とを含む複数の機能のうちのいずれかの選択を受け付ける選択手段と、
前記選択手段によって前記送信機能が選択された場合に、送信する前記データのデータサイズの情報を報知手段により報知した後に前記データの送信を前記送信手段に実行させ、前記選択手段によって前記印刷機能が選択された場合に、前記データの印刷を前記印刷手段に実行させる制御手段と、を有することを特徴とするデータ処理システム。

[相違点1]
本願補正発明は、印刷機能と送信機能とを含む複数の機能のうちのいずれかの選択を「ユーザインタフェースを介して受け付ける」選択手段を有しているのに対し、刊行物発明は、印刷機能と送信機能とを含む複数の機能を有する「複合周辺装置(MFP)1」で実行される機能を選択しているとはいえても、機能の選択を「ユーザインタフェースを介して受け付ける」ことまでは明記されていない点。

[相違点2]
本願補正発明は、「前記選択手段によって前記印刷機能が選択された場合に、印刷する前記データのデータサイズの情報を前記報知手段により報知すること無しに前記データの印刷を前記印刷手段に実行させる」ものであるのに対し、刊行物発明の「複合周辺装置(MFP)1」は、印刷機能が選択されてデータの印刷が行われる際に、「印刷する前記データのデータサイズの情報を前記報知手段により報知すること無しに」印刷が行われるか否かについては明記されていない点。

(3)相違点に対する判断
[相違点1について]
刊行物発明の「複合周辺装置(MFP)1」について、該MFPが有するファクシミリやスキャナ、プリンタ等の複数の機能のうちいずれの機能によって該MFPを動作させるかは、該MFPを使用するユーザが当然選択することであって、ユーザが複数の機能のうち一を選択する際に、周知のユーザインタフェースを用いて選択を行うようにすることも、当業者が普通になし得ることである。
そのため、刊行物発明において、周知のユーザインタフェースを用いて機能の選択を行うようにすることにより、本願補正発明の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点2について]
一般的なプリンタにおいて、印刷するデータのデータサイズを報知することなく印刷を実行するよう制御させることは、ごく普通に行われていることであるし、また、印刷するデータのデータサイズを報知する場合に比べて、報知しない場合の方が処理負担が低減されるという効果についても、当業者であれば当然に予想し得る効果にすぎない。
そのため、刊行物発明の印刷機能を有する「複合周辺装置(MFP)1」において、装置の処理負担を抑えるために、印刷するデータのデータサイズを報知することなく印刷処理を行うことにより、本願補正発明の上記相違点2に係る構成とすることも、当業者が適宜なし得ることである。

そして、これらの相違点1及び2は相互に関連した事項ではなく、また、上記各相違点を総合的に考慮しても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず、また本願補正案発明の効果についてみても、引用発明及び上記周知技術から予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるともいえない。

よって、本願補正発明は、刊行物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明の認定
平成22年5月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年10月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1から28に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項15に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項15】
印刷手段によってデータを印刷する印刷機能と送信手段によってデータを送信する送信機能とを含む複数の機能のうちのいずれかの選択をユーザインタフェースを介して受け付ける選択手段と、
前記選択手段によって前記送信機能が選択された場合に、前記データのデータサイズの情報を報知手段により報知した後に前記データの送信を前記送信手段に実行させ、前記選択手段によって前記印刷機能が選択された場合に、前記データのデータサイズの情報を前記報知手段により報知すること無しに前記データの印刷を前記印刷手段に実行させる制御手段と、
を有することを特徴とするデータ処理システム。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物、及び、その記載事項は、前記第2の2.(1)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明の「前記データ」に対する限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2で判断したとおり、刊行物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、同様の理由により、刊行物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.まとめ
以上のとおり、本願の請求項15に係る発明は、刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-04 
結審通知日 2011-08-08 
審決日 2011-08-22 
出願番号 特願2004-245685(P2004-245685)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加内 慎也  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 千葉 輝久
古川 哲也
発明の名称 データ処理システム、その制御方法、記録媒体、プログラム及び情報処理装置  
代理人 大塚 康徳  
代理人 下山 治  
代理人 永川 行光  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  

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