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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B25F
管理番号 1244607
審判番号 不服2010-21767  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-28 
確定日 2011-10-05 
事件の表示 特願2005- 32939「トリガースイッチ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月24日出願公開、特開2006-218560〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成17年2月9日の特許出願であって、同22年1月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月5日に手続補正がなされ、同年6月24日付けで拒絶査定がされ、同年9月28日に本件審判の請求とともに手続補正がなされ、当審において同23年5月31日付けで拒絶理由が通知され、同年7月19日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年7月19日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりと認められる。

「操作部の摺動操作に基づいてケース内部のスイッチ機構をスイッチング操作するトリガースイッチであって、
前記ケースを覆うカバーの外側側壁面に形成した制御素子配置部に制御素子を収納し、この制御素子を含むカバー及びケースの外側側面に亘って覆う構成の放熱板を備え、
前記カバーの外側側壁面に形成された制御素子配置部は、前記制御素子を前記カバーの外側で配置するための内側と遮断され、前記制御素子の厚み分だけ窪ませた凹部を形成した構成とし、
前記放熱板は、略コ字型形状に形成され、連結部に連結され前記カバーの側壁面を覆う大きさに形成された一方の面と、前記連結部に連結され前記ケースの側壁面を覆う大きさに形成された他方の面とからなり、
前記一方の面の内側の面が前記制御素子配置部であるところの前記凹部に収納されている前記制御素子の表面に直接接触するようにしたことを特徴とするトリガースイッチ。」

3.刊行物記載の発明
(1)刊行物1
これに対し、本願出願前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された特開2001-110271号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.段落0008
「【0008】
【発明の実施の形態】本発明にかかる実施形態を図1ないし図12の添付図面に従って説明する。本実施形態にかかるトリガースイッチは、図1に示すように、大略、ケース11およびカバー16からなるハウジング10と、このハウジング10に組み込まれる操作軸20、中間部材30、および、切換えレバー50で構成されている。」

イ.段落0016?0020
「【0016】・・・。ついで、回転速度制御用FET45を前記固定接点端子32およびプリント基板43等に電気接続する。
【0017】最後に、図10に示すように、前記ケース11にカバー16を嵌合した後、突出する操作軸20の先端に操作レバー60を圧入する。さらに、前記カバー16の開口部17から露出する前記FET45に、屈曲した金属製放熱板61をネジ62で固定することにより、組立作業が完了する。
【0018】次に、前述の構成を有するトリガースイッチの動作について説明する。まず、モータを正回転させる場合には、切替えレバー50を回転させることにより、可動接点53を固定接点40a,44aに接触させるとともに、可動接点54を固定接点41b,42aに接触させる。そして、操作レバー20(当審注、正しくは「操作レバー60」)が全く引き込まれていない場合には、ブレーキ端子24が第1切替え端子42および固定接点端子32の起立片32cに接触しており、可動接点35a,36aが固定接点37a,32aから開離している(図12(a))。
【0019】そして、操作レバー60を少し引き込んで操作すると、遊び分のストローク後に、ブレーキ端子24が第1切替え端子42および固定接点端子32の起立片32cから開離し、ブレーキスイッチがオフとなる。さらに、操作レバー60を引き込むと、保持プレート23の第1保持部23aが第1可動接触片35から離れるとともに、プランジャ部21の下面が第1可動接触片35を押し下げ、可動接点35aが固定接点37aに接触する(図12(b))。このため、直流電源から直流モータ(図示せず)に電流が流れてドリルが正回転を開始する。これとともに、操作レバー60の引き込み量に応じてプランジャ部21のブラシ26がプリント基板43の抵抗体上を摺動し、摺動位置に対応した電流が回転速度制御用FET45を介して直流モータに供給され、操作レバー60の引き込み量に応じた回転速度で直流モータが回転する。
【0020】さらに、操作レバー60を引き込み、引き込み量を最大にすると、プランジャ部21の保持プレート23の第2保持部23bが第2可動接触片36から離れるとともに、プランジャ部21の下面が第2可動接触片36を押し下げる。このため、可動接点36aが固定接点32aに接触し、直流モータと直流電源とが直結され、直流モータが全速で回転する。」

ウ.図1、図10
ケース11を覆うカバー16の外側側壁面に、回転速度制御用FET45が収納される開口部17が形成されていること、
回転速度制御用FET45を含むカバー16及びケース11の外側側面を放熱板61が覆っていること、
放熱板61は、略コ字型形状に形成され、連結部に連結されカバー16の側壁面を覆う大きさに形成された一方の面と、連結部に連結されケース11の側壁面を覆うように形成された他方の面とを有していること、
が看取できる。

ここで、上記イ.の段落0018?0020の記載から、刊行物1記載のトリガースイッチは、スイッチ機構を有し、操作レバー60と一体の操作軸20により、スイッチング操作されていることが理解される。
また、上記イ.の段落0017「カバー16の開口部17から露出する前記FET45に、屈曲した金属製放熱板61をネジ62で固定する」なる記載、図10の記載から、放熱板61の一方の面の内側の面が開口部17に収納されている回転速度制御用FET45の表面に直接接触することは明らかである。

これらを、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「操作軸20の摺動操作に基づいてケース11内部のスイッチ機構をスイッチング操作するトリガースイッチであって、
前記ケース11を覆うカバー16の外側側壁面に形成した開口部17に回転速度制御用FET45を収納し、この回転速度制御用FET45を含むカバー16及びケース11の外側側面に亘って覆う構成の放熱板61を備え、
前記放熱板61は、略コ字型形状に形成され、連結部に連結され前記カバー16の側壁面を覆う大きさに形成された一方の面と、前記連結部に連結され前記ケース11の側壁面を覆うように形成された他方の面とからなり、
前記一方の面の内側の面が前記開口部17に収納されている前記回転速度制御用FET45の表面に直接接触するようにしたトリガースイッチ。」

(2)刊行物2
同じく、実願昭63-51098号(実開平1-155229号)のマイクロフイルム(以下「刊行物2」という。)には、次のように記載されている。

ア.第7ページ第7行?第8ページ第14行
「ところで、この種のパワートランジスタ14は一般に発熱しやすいため、上下より熱吸収性の良好な例えばアルミニウム合金等の金属製の上・下部放熱カバー15、16で覆って、パワートランジスタ14の発熱を吸収するようにしている。
上部放熱カバー15は、下面を開放した箱形状に設けられ、該カバーに形成した下面凹部15aに上述のパワートランジスタ14の上部を嵌合保持させた状態で、放熱に有効なリベット26を用いて、該上部放熱カバー15にパワートランジスタ14をカシメ固定して取付けている。そして、下部放熱カバー16を収納包囲した状態で、この上部放熱カバー15の両側面に開口した角孔27…が、後述するスイッチケース13の外側面に突設する側面突起28…に係合して、スイッチケース13上に一体に嵌着される。この場合、上部放熱カバー15は、放熱性を高めるため、水平面側のみならず垂直面側の面積を十分に大きくとって設けると共に、箱形状にてスイッチ全休をカバーする如く設けて、防塵性能も同時に高めるように形成している。
下部放熱カバー16は、コ形状の開放部を下向きにして設けられ、該カバーに形成した上面凹部16aに上述のパワートランジスタ14の下部を嵌合保持させ、かつ該カバー16の両側垂片の側面に開口した角孔29…が、同様に後述するスイッチケース13の外側面に突出する側面突起30に係合してスイッチケース13上に嵌着される。」

イ.第2図?第4図
スイッチケース13を下部放熱カバー16が覆うこと、
下部放熱カバー16及びスイッチケース13を、上部放熱カバー15が覆うこと、
上面凹部16aは、下部放熱カバー16の内側と遮断され、窪ませた凹部であること、
が看取できる。

上記記載を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ整理すると、刊行物2には、以下の事項(以下「刊行物2事項」という。)が記載されていると認める。

「スイッチケース13を覆う下部放熱カバー16の上部位置に形成した上面凹部16aにパワートランジスタ14の下部を嵌合保持し、このパワートランジスタ14を含む下部放熱カバー16及びスイッチケース13を覆う構成の上部放熱カバー15を備え、前記下部放熱カバー16の上部位置に形成した上面凹部16aは、パワートランジスタ14を下部放熱カバー16の外側で配置するための内側と遮断され、窪ませた凹部である、防塵性能を高めたスイッチ。」

4.対比・判断
刊行物1発明の「操作軸20」は本願発明の「操作部」に相当し、同様に、「回転速度制御用FET45」は「制御素子」に相当する。
刊行物1発明の「開口部17」と、本願発明の「制御素子配置部」とは、「制御素子保持部」である限りにおいて一致する。
刊行物1発明の「側壁面を覆うように形成された他方の面」と、本願発明の「側壁面を覆う大きさに形成された他方の面」とは、「側壁面を覆うように形成された他方の面」である限りにおいて一致する。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「操作部の摺動操作に基づいてケース内部のスイッチ機構をスイッチング操作するトリガースイッチであって、
前記ケースを覆うカバーの外側側壁面に形成した制御素子保持部に制御素子を収納し、この制御素子を含むカバー及びケースの外側側面に亘って覆う構成の放熱板を備え、
前記放熱板は、略コ字型形状に形成され、連結部に連結され前記カバーの側壁面を覆う大きさに形成された一方の面と、前記連結部に連結され前記ケースの側壁面を覆うように形成された他方の面とからなり、
前記一方の面の内側の面が前記制御素子保持部に収納されている前記制御素子の表面に直接接触するようにしたトリガースイッチ。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:「制御素子保持部」について、本願発明では「制御素子を前記カバーの外側で配置するための内側と遮断され、前記制御素子の厚み分だけ窪ませた凹部を形成した構成」であるが、刊行物1発明では「開口部17」である点。
相違点2:「側壁面を覆うように形成された他方の面」について、本願発明では「側壁面を覆う大きさに形成された他方の面」であるが、刊行物1発明ではそのようなものでない点。

相違点1について検討する。
刊行物2事項は、上記のとおりであり、「下部放熱カバー16」は本願発明の「カバー」に、「パワートランジスタ14」は「制御素子」に、相当するものである。
すなわち、刊行物2事項により、「カバーの上部位置に形成した凹部に、制御素子の下部を嵌合保持し、凹部は、制御素子をカバーの外側で配置するための内側と遮断され、窪ませた凹部である」構造が理解できる。
そして、かかる構造により、凹部を設けず、制御素子をカバーの上面に載置するものと比べ、上下方向に高さが小さくなることは、構造上明らかであるから、刊行物2事項に接した当業者は、凹部に嵌合させる構造を採用することで、小型化に寄与することが理解できる。

刊行物1発明においても、小型化は、一般的課題であるから、刊行物2事項の適用を試みる動機が存在する。
刊行物2事項を適用するにあたり、小型化の効果を一層高めるには、凹部を深くし、制御素子の厚み分とすることが最適であることは、当業者が容易に理解できるから、必要に応じてなしうる事項にすぎない。
よって、刊行物1発明の「開口部17」を、刊行物2事項を踏まえ、「制御素子を前記カバーの外側で配置するための内側と遮断され、前記制御素子の厚み分だけ窪ませた凹部を形成した構成」とすることに、困難性は認められない。

請求人は、意見書で、凹部の位置の差違を主張するが、凹部に嵌合保持させる構造は、上下方向のみならず、左右方向、すなわち側面においても適用可能であり、同様な効果があることは明らかである。
請求人はまた、刊行物2事項は「防塵性能」に関するものであるから、刊行物1発明に適用できない旨主張するが、明記された課題にかかわらず、刊行物2事項の構造上、刊行物2事項が小型化に寄与することは理解可能である。
よつて、請求人の主張は根拠がない。

相違点2について検討する。
放熱板の大きさは、放熱効果を勘案して定められるところ、ケースからの放熱効果を高めるため「側壁面を覆う大きさに形成された他方の面」とることに、困難性は認められない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

5.むすび
本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-29 
結審通知日 2011-08-02 
審決日 2011-08-16 
出願番号 特願2005-32939(P2005-32939)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B25F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森本 哲也  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 刈間 宏信
長屋 陽二郎
発明の名称 トリガースイッチ  
代理人 佐々木 功  
代理人 川村 恭子  

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