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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61H
審判 全部無効 2項進歩性  A61H
審判 全部無効 特29条の2  A61H
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61H
管理番号 1244986
審判番号 無効2006-80229  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-11-02 
確定日 2011-10-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3806396号「手揉機能付施療機」の特許無効審判事件についてされた平成20年8月19日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10345号、平成21年8月31日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯
(1)本件特許第3806396号に係る発明についての出願は、平成14年11月28日の出願であって、平成18年5月19日に特許権の設定登録がなされたものである
(2)これに対し、請求人は平成18年11月2日に本件特許無効審判を請求した。
(3)被請求人は平成19年1月22日付けで訂正請求書及び答弁書を提出し、一方、請求人は平成19年3月20日付けで弁駁書を提出した。
(4)平成19年4月10日付けで当審より訂正拒絶理由を通知したところ、被請求人は平成19年5月11日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
(5)その後、請求人及び被請求人は平成19年6月1日付けでそれぞれ口頭審理陳述要領書を提出し、さらに、被請求人は同日付けで上申書を提出し、同日に口頭審理が行われた。
(6)さらに、請求人は平成19年6月19日付けで、また、被請求人は平成19年7月12日付けで、それぞれ上申書を提出した。
(7)その後、平成19年8月24日付けで「特許第3806396号の請求項1ないし6に係る発明についての特許を無効とする。」との審決がされたところ、知的財産高等裁判所において、審決取消の判決(平成19年(行ケ)第10333号、平成20年4月24日判決言渡)(以下、「一次判決」という。)がなされ、一次判決は確定した。
(8)その後、請求人は平成20年7月7日付けで、また、被請求人は平成20年7月9日付けで、それぞれ上申書を提出した。
(9)その後、平成20年8月19日付けで「訂正を認める。特許第3806396号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。」との審決がされた。ここで、平成19年5月11日付けで補正された、平成19年1月22日付け訂正請求において、特許請求の範囲についてする訂正のうち請求項2を削除する訂正については、該訂正を認めた平成20年8月19日付け審決の送達により、形式的に確定した。
(10)その後、知的財産高等裁判所において、再度審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10345号、平成21年8月31日判決言渡)(以下、「二次判決という。)がなされ、二次判決は確定した。
(11)さらに、請求人は平成21年10月22日付けで上申書を提出した。

2 訂正の可否
(1)訂正の内容
本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、平成19年5月11日付けで補正された訂正明細書(以下、「訂正明細書」という。)のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容のうち、上記形式的に確定した訂正(訂正事項b)を除外すると以下のとおりである。

・訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の「前記立上り壁の内側部には膨縮袋を配設して、肘掛部上に人体手部を安定的に保持させて、立上り壁内側部に配設された膨縮袋と肘掛部の上面間で人体手部に空圧施療を付与させるようにした事を特徴とする手揉機能付施療機。」との記載を、「前記立上り壁の内側部には膨縮袋を配設すると共に、前記肘掛部の上面に二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群を配設して、前記肘掛部の上面に配設した膨縮袋群は、圧縮空気給排装置からの給気によって膨縮袋の肘幅方向の外側一端よりも内側他端が立ち上がるように配設され、前記膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させて、立上り壁内側部に配設された膨縮袋と肘掛部の上面に配設された膨縮袋群とを対設させた膨縮袋間で人体手部に空圧施療を付与させるようにした事を特徴とする手揉機能付施療機。」と訂正する。

・訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3の「前記両肘掛部に配設される膨縮袋」との記載を、「前記立上り壁の内側部に配設される膨縮袋」と訂正すると共に、「請求項1又は請求項2」との記載を、「請求項1」と訂正する。

・訂正事項d
特許請求の範囲の請求項4の「請求項1乃至請求項3」との記載を、「請求項1又は請求項2」と訂正する。

・訂正事項e
特許請求の範囲の請求項5の「振動させるに振動部材」との記載を、「振動させる振動部材」と訂正すると共に、「請求項1乃至請求項2」との記載を、「請求項1」と訂正する。

・訂正事項f
特許請求の範囲の請求項6の「請求項1又は請求項2」との記載を、「請求項1」と訂正する。

・訂正事項g
特許請求の範囲の請求項2を削除したことに伴い、請求項3以下の項数を繰り上げる。

・訂正事項h
訂正事項aの訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、段落【0009】を
「【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の手揉機能付施療機は、椅子本体の両肘掛部の上面適所に人体手部を各々載脱自在でこれらに空圧施療を付与し得るよう、椅子本体の両肘掛部に膨縮袋を各々対設し、且つ各膨縮袋に圧縮空気給排装置からの給排気を伝達するホースを各々連通状に介設してなる圧縮空気給排気手段を具備させた手揉機能付用施療機であって、該手揉機能付用施療機の各肘掛部は、肘幅方向外側に弧状形成された立上り壁を立設して、肘掛部の上面をこの弧状の立上り壁で覆って人体手部の外面形状に沿う形状の肘掛部に各々形成されており、且つ、前記立上り壁の内側部には膨縮袋を配設すると共に、前記肘掛部の上面に二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群を配設して、前記肘掛部の上面に配設した膨縮袋群は、圧縮空気給排装置からの給気によって膨縮袋の肘幅方向の外側一端よりも内側他端が立ち上がるように配設され、前記膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させて、立上り壁内側部に配設された膨縮袋と肘掛部の上面に配設された膨縮袋群とを対設させた膨縮袋間で人体手部に効率良い空圧施療を行なわせ事ができるようにする事を特徴とするものである。」と訂正する。

・訂正事項i
訂正事項cの訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、段落【0012】の「前記両肘掛部に配設される膨縮袋」との記載を、「前記立上り壁の内側部に配設される膨縮袋」と訂正する。

・訂正事項j
訂正事項eの訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、段落【0014】、【0020】、【0046】の「振動させるに振動部材」との記載を、「振動させる振動部材」と訂正する。

・訂正事項k
発明の詳細な説明の段落【0004】の「吸排気」との記載を、「給排気」と訂正する。

・訂正事項l
発明の詳細な説明の段落【0041】の「弧状形性」との記載を、「弧状形成」と訂正する。

・訂正事項m
訂正事項bの訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、段落【0011】を削除し、以下の段落番号を繰り上げる。

(2)訂正の可否に対する判断
・訂正事項aについて
訂正事項aは、訂正前の「肘掛部」に関して、「前記肘掛部の上面に二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群を配設して、前記肘掛部の上面に配設した膨縮袋群は、圧縮空気給排装置からの給気によって膨縮袋の肘幅方向の外側一端よりも内側他端が立ち上がるように配設され、前記膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させて、立上り壁内側部に配設された膨縮袋と肘掛部の上面に配設された膨縮袋群とを対設させた膨縮袋間で人体手部に空圧施療を付与させるようにした」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
また、「肘掛部の上面に二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群を配設」する構成は本件特許明細書に記載されているといえるものであり(一次判決第24頁第5?7行参照)、本件特許明細書に接した当業者であれば、「膨出袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させ」ることにより「肘掛部上に人体手部を安定的に保持させ」ることができることが容易に把握できるものというべきであるから(一次判決第26頁第22?25行参照)、訂正事項aの訂正は特許明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

・訂正事項cについて
訂正事項cは、「膨縮袋」が配設される箇所を「前記両肘掛部」から「前記立上り壁の内側部」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
また、膨縮袋が立上り壁の内側部に配設されることは、特許明細書の段落【0025】に、「弧状に曲折した固定板11の上部左右の少なくとも曲折側一側(立上り壁の内側部)に膨縮袋12を配設すれば良い」と記載されていることから、特許明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、「請求項1又は請求項2」との記載を、「請求項1」とする訂正は、形式的に確定している特許請求の範囲の請求項2を削除する訂正に伴い整合性を図るための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

・訂正事項eについて
訂正事項eは、特許請求の範囲の請求項5の「振動させるに振動部材」を、「振動させる振動部材」と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的としたものであることは明らかであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、「請求項1乃至請求項2」との記載を、「請求項1」とする訂正は、形式的に確定している特許請求の範囲の請求項2を削除する訂正に伴い整合性を図るための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

・訂正事項d、f、gについて
訂正事項d、f、gは、形式的に確定している特許請求の範囲の請求項2を削除する訂正に伴い整合性を図るための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

・訂正事項h?jについて
訂正事項h?jは、訂正事項a、c、eの訂正に伴い特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

・訂正事項kについて
訂正事項kは、発明の詳細な説明の段落【0004】の「吸排気」を、「給排気」と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的としたものであることは明らかであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

・訂正事項lについて
訂正事項lは、発明の詳細な説明の段落【0041】の「弧状形性」を、「弧状形成」と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的としたものであることは明らかであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

・訂正事項mについて
訂正事項mは、形式的に確定している特許請求の範囲の請求項2を削除する訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、段落【0011】を削除し、以下の段落番号を繰り上げる訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

以上のとおりであるから、訂正事項a?mは、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項、第4項の規定に適合するので、本件訂正のうち、既に確定した訂正以外の訂正を認める。

3 請求人の主張
請求人は、「特許第3806396号の特許を無効とする。」旨の審決を求め、証拠方法として以下の甲第1号証?甲第21号証を提出し、無効とすべき理由を次のように主張している。なお、上記のとおり本件訂正が確定ないし認められたことに対応させるため、審判請求書における請求項の項数を訂正して記載した。
(1)理由1
本件特許の請求項1?5に係る発明は、「安定的に保持」の意味する内容が不明確であり、特許を受けようとする発明が不明確である。したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。
(2)理由2
本件特許明細書の発明の詳細な説明は、どのような構成をもって人体手部を「安定的に保持」しているのかが理解できるように記載されていないので、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。したがって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。
(3)理由3
本件特許の請求項1?5に係る発明は、甲第4号証又は甲第7号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一である。したがって、本件特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
(4)理由4
本件特許の請求項1,5に係る発明は、甲第6号証及び甲第8号証に記載された発明に基いて、本件特許の請求項2及び3に係る発明は、甲第6号証、甲第8号証及び甲第10号証に記載された発明に基いて、本件特許の請求項4に係る発明は、甲第6号証、甲第8号証及び甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。

[証拠方法]
・甲第1号証:特許第3806396号公報(本件特許明細書)
・甲第2号証:平成18年3月31日付け意見書
・甲第3号証:特開2003-310683号公報
・甲第4号証:特開2004-97459号公報
・甲第5号証:特開2001-112829号公報
・甲第6号証:特開2001-204776号公報
・甲第7号証:特開2003-260099号公報
・甲第8号証:特開昭50-136994号公報
・甲第9号証:平成14年(行ケ)第427号審決取消請求事件判決
・甲第10号証:特開2002-28208号公報
・甲第11号証:特開平11-128291号公報
・甲第12号証:特開平10-118143号公報
・甲第13号証:特開平10-80453号公報
・甲第14号証:特開2001-120617号公報
・甲第15号証:特開平5-285182号公報
・甲第16号証:特開平10-179675号公報
・甲第17号証:特開2002-301125号公報
・甲第18号証:特開平7-124210号公報
・甲第19号証:特開平8-89540号公報
・甲第20号証:特開2001-333951号公報
・甲第21号証:特開2001-327565号公報

4 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。」旨の審決を求め、本件訂正の請求をするとともに、下記の理由から、本件特許は無効とされるべきものではない旨を主張している。
(1)理由1に対して
訂正明細書の特許請求の範囲の記載によれば、「安定的に保持」の意味する内容は明確であるから、訂正後の請求項1?5に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。
(2)理由2に対して
訂正明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、「安定的に保持」の意味する内容が不明確であるということはなく、また、どのような構成をもって人体手部を「安定的に保持」しているのかも明らかであるから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものではない。
(3)理由3に対して
訂正後の請求項1?5に係る発明は、甲第4号証又は甲第7号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一ではないから、本件特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。
(4)理由4に対して
訂正後の請求項1に係る発明は、甲第6号証及び甲第8号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。また、訂正後の請求項1に係る発明の構成要件を全て含む訂正後の請求項2?5に係る発明も、当然に甲第6号証及び甲第8号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

5 本件発明
上記のとおり、本件訂正は確定ないし認められたので、本件特許の請求項1?5に係る発明(以下順に、「本件発明1」?「本件発明5」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

(1)本件発明1
「【請求項1】 椅子本体の両肘掛部の上面適所に人体手部を各々載脱自在でこれらに空圧施療を付与し得るよう、椅子本体の両肘掛部に膨縮袋を各々配設し、且つ各膨縮袋に圧縮空気給排装置からの給排気を伝達するホースを各々連通状に介設してなる圧縮空気給排気手段を具備させた手揉機能付用施療機であって、該手揉機能付用施療機の各肘掛部は、肘幅方向外側に弧状形成された立上り壁を立設して、肘掛部の上面をこの弧状の立上り壁で覆って人体手部の外面形状に沿う形状の肘掛部に各々形成されており、且つ、前記立上り壁の内側部には膨縮袋を配設すると共に、前記肘掛部の上面に二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群を配設して、前記肘掛部の上面に配設した膨縮袋群は、圧縮空気給排装置からの給気によって膨縮袋の肘幅方向の外側一端よりも内側他端が立ち上がるように配設され、前記膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させて、立上り壁内側部に配設された膨縮袋と肘掛部の上面に配設された膨縮袋群とを対設させた膨縮袋間で人体手部に空圧施療を付与させるようにした事を特徴とする手揉機能付施療機。」
(2)本件発明2
「【請求項2】 前記立上り壁の内側部に配設される膨縮袋が、二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群である事を特徴とする請求項1に記載の手揉機能付施療機。」
(3)本件発明3
「【請求項3】 前記両肘掛部に配設される膨縮袋の人体手部当接側に、膨縮施療を強度に付与し得る施療突起を配設した事を特徴とする請求項1又は請求項2記載の手揉機能付施療機。」
(4)本件発明4
「【請求項4】 前記両肘掛部の適所に、両肘掛部上面を振動させる振動部材を配備させた事を特徴とする請求項1記載の手揉機能付施療機。」
(5)本件発明5
「【請求項5】 前記肘掛部の人体手部指先対応位置或いは指先近郊の上面適所に、圧縮空気給排装置に接続される外部電源を配備させた事を特徴とする請求項1記載の手揉機能付施療機。」

6 無効理由に対する当審の判断
(1)理由1について
本件特許明細書に接した当業者であれば、「膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させ」ることにより、「肘掛部上に人体手部を安定的に保持させ」ることができることが容易に把握できるものというべきである(一次判決26頁20?23行参照)。そして、本件発明1は「膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させ」るものであるとともに、そのための構成として「肘掛部の上面に二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群を配設して、前記肘掛部の上面に配設した膨縮袋群は、圧縮空気給排装置からの給気によって膨縮袋の肘幅方向の外側一端よりも内側他端が立ち上がるように配設され」るものである。また本件発明2?5も本件発明1を引用する発明であるから、本件発明1?5が「肘掛部上に人体手部を安定的に保持させ」るものであることは明らかであり、本件発明1?5について、「安定的に保持」の意味する内容が不明確とは言えない。
したがって、本件特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

(2)理由2について
上記のとおり本件特許明細書に接した当業者であれば、「膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させ」ることにより、「肘掛部上に人体手部を安定的に保持させ」ることができることが容易に把握できる。そして、訂正明細書の発明の詳細な説明には、【課題を解決するための手段】として、「膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させ」るものであることはもとより、そのための構成として「肘掛部の上面に二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群を配設して、前記肘掛部の上面に配設した膨縮袋群は、圧縮空気給排装置からの給気によって膨縮袋の肘幅方向の外側一端よりも内側他端が立ち上がるように配設され」るものである、「手揉機能付施療機」が記載されている。そうすると、訂正明細書の発明の詳細な説明には、どのような構成をもって人体手部を「安定的に保持」しているのかが理解できるように記載されていると言うべきである。
したがって、本件特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

(3)理由3について
(3-1)甲第4号証及び甲第7号証の記載内容
甲第4号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、次の事項が記載されている。
(ア)「(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るマッサージ機の構成を示す斜視図である。図1に示す如く、本実施の形態1に係るマッサージ機1は、椅子型をなしており、座部2,背凭れ部3,フットレスト4,及びアームレスト5から主として構成されている。・・・」(段落【0019】)
(イ)「図3は、本発明の実施の形態1に係るマッサージ機1のアームレスト5の構成を示す正面図である。図3に示す如く、アームレスト5は、支持台部16,回動部17,空気袋18,及びローラ19,20から主として構成されており、以下に説明するように、前述したフットレスト4を、2つの凹状円弧面12の間の稜線で分割した一方と略同様の構成となっている。
支持台部16は、その上面が、軸方向を前後方向とした1つの凹状円弧面21によって形成されており、この凹状円弧面21によって被施療者の前腕を支持するようになっている。また、凹状円弧面21には、空気袋22が固着されており、空気袋22に空気を供給することによって、空気袋22が膨張し、被施療者の前腕に刺激を与えることができるようになっている。また、空気袋22の表面には、前述した温熱子13aと同様の構成の温熱子22aが設けられている。」(段落【0032】及び【0033】)
(ウ)「図11は、本発明の実施の形態3に係るマッサージ機が備えるアームレストの構成を示す正面図である。図11に示す如く、アームレスト58は、支持台部59,回動部60,空気袋61,62,及び施療子63から主として構成されており、以下に説明するように、前述したフットレスト44を、支持台部59の中央の稜線で分割した一方と略同様の構成となっている。
支持台部59は、一側端が上方へ突出しており、その頂点から他側端へ向けてなだらかな凹状に傾斜した略板状をなしている。このような支持台部59は、上方へ突出した一側端がマッサージ機の内側に位置するように、基台2b(図1参照)に取り付けられている。
また、支持台部59の他側端は上方へ向いた平坦面となっている。そして、この部分が空気袋61の取付面64とされている。空気袋61,62は、前述した空気袋47,48と同様の構成とされている。
支持台部59の上面は、凹状に形成された凹状面65となっており、この凹状面65が本発明の支持面を構成している。このような凹状面65は、被施療者の前腕を支持するようになっており、その表面には空気袋66が固着されている。この空気袋66を膨張させることによって、被施療者の前腕に刺激を与えることが可能である。
また、凹状面65と取付面64との接続箇所には、上方へ突出した部分が設けられており、この部分に枢軸67が貫通している。このような枢軸67には、回動可能に回動部60が取り付けられている。回動部60は、枢軸67との枢着箇所より上方に凹状の円弧面68を有しており、この円弧面68に施療子49と同様の構成の施療子63が取り付けられている。」(段落【0082】?【0086】)
(エ)図1からみて、アームレスト5は椅子型のマッサージ機1の両肘掛部の上面に設けられている点。

これらの記載事項および図示内容を総合すると、甲第4号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、
「椅子型のマッサージ機の両肘掛部の上面にアームレストを設け、アームレストは、支持台部59,回動部60,施療子63を備え、支持台部59の上面は、凹状に形成された凹状面65となっており、凹状面65は、被施療者の前腕を支持するようになっており、その表面には空気袋66が固着され、この空気袋66を膨張させることによって、被施療者の前腕に刺激を与えることが可能であり、支持台部59に回動可能に回動部60が取り付けられ、回動部60は、上方に凹状の円弧面68を有しており、この円弧面68に施療子63が取り付けられている、マッサージ機。」(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。

また、甲第7号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、次の事項が記載されている。
(オ)「・・・図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態に係るマッサージ機1は、椅子型をなしており、被施療者が着座するための座部2と、被施療者の上半身を支持するための背凭れ部3と、被施療者の足置きとして用いられるフットレスト4とから主として構成されている。」(段落【0015】)
(カ)「このような背凭れ部3の前方であって、座部2の両側部の上方には、2つの肘掛け部25が設けられている。図4は、本発明の実施の形態1に係るマッサージ機1の肘掛け部25の構成を示す正面図であり、図5は、その使用例を示す斜視図である。肘掛け部25は、板状の部材を円弧状に湾曲させた如き形状をなすカバー部25aと、該カバー部25aの内側に設けられたクッション部25bとから構成されている。このような肘掛け部25は、一般的な成人の前腕より若干長く、図1に示す如く、被施療者がマッサージ機1に着座したときに、被施療者の肘、前腕、及び手等を覆うように保持することが可能である。」(段落【0029】)
(キ)「このような肘掛け部25は、クッション部25bに複数の空気袋25cが内蔵されている(図4参照)。更に具体的に説明すると、図4に示す如く、肘掛け部25は正面視において略U字型をなしており、使用状態のときに、被施療者の前腕の外側部分(手の甲に連なる部分)、内側部分(手のひらに連なる部分)、及び横側部分(手の小指側に連なる部分)に夫々刺激を与えるべく、そのU字の両内側部分及び内底部分の3箇所に、空気袋25cが設けられている。」(段落【0031】)

これらの記載事項および図示内容を総合すると、甲第7号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、
「椅子型のマッサージ機の2つの肘掛け部25は、被施療者がマッサージ機1に着座したときに、被施療者の肘、前腕、及び手等を覆うように保持することが可能であり、正面視において略U字型をなしており、使用状態のときに、被施療者の前腕の外側部分(手の甲に連なる部分)、内側部分(手のひらに連なる部分)、及び横側部分(手の小指側に連なる部分)に夫々刺激を与えるべく、そのU字の両内側部分及び内底部分の3箇所に、空気袋25cが設けられている、マッサージ機」(以下、「甲7発明」という。)が記載されている。

(3-2)本件発明1について
本件発明1と甲4発明及び甲7発明とを対比すると、少なくとも本件発明1の「前記肘掛部の上面に配設した膨縮袋群は、圧縮空気給排装置からの給気によって膨縮袋の肘幅方向の外側一端よりも内側他端が立ち上がるように配設され、前記膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させて、立上り壁内側部に配設された膨縮袋と肘掛部の上面に配設された膨縮袋群とを対設させた膨縮袋間で人体手部に空圧施療を付与させるようにした」点については、甲4発明及び甲7発明のいずれも備えていない。
そして、本件発明1は上記点に係る特定事項を備えることにより、肘掛部上面に形成された膨縮袋群は、内側他端の立ち上がりによって肘掛部上に人体手部を安定的に保持させるとともに、膨縮袋を対設して配置し、両側から挟持して圧迫感のある施療を実施できるとの機能及び効果を奏することができる。(二次判決19頁23行?20頁2行参照)
そうすると、上記点に係る特定事項は課題解決のための具体化手段における微差とはいえないから、本件発明1は甲4発明及び甲7発明のいずれとも同一ではないし、実質的に同一ともいえない。

(3-3)本件発明2?5について
本件発明2?5は、本件発明1を引用し、さらにその発明特定事項を限定したものである。本件発明1が甲4発明又は甲7発明と同一ではないし、実質的に同一ともいえない以上、本件発明1の発明特定事項を全て具備した本件発明2?5も、甲4発明又は甲7発明と同一ではないし、実質的に同一ともいえない。

(3-4)小括
以上のとおり、本件発明1?5は、甲4発明又は甲7発明と同一ではないから、本件特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

(4)理由4について
(4-1)甲第6,8号証の記載内容
甲第6号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ク)「この椅子20の基本的な構成としては、座部21と、この座部21の両側に設けられた肘掛け部22と、座部21の後端に設けられた傾斜可能な背凭れ部23とを備えている。座部21と背凭れ部23のそれぞれ内部適所には、複数の空気袋(図示せず)が配置されている。」(段落【0014】)
(ケ)「この椅子20には、座部21と背凭れ部23の内部に設置された複数の空気袋に圧縮空気を供給し、及び空気袋に供給された圧縮空気を排気する圧縮空気給排気機構(図示せず)が設けられている。この圧縮空気給排気機構により、座部21と背凭れ部23の内部に設置された複数の空気袋に圧縮空気を供給排気する。」(段落【0015】)
(コ)「本実施形態のマッサージ機10では、更に肘掛け部22の上部に設けられた腕保持部24を備えている。腕保持部24は、使用者の腕を両側から挟むようにU字状の凹部25を形成する保持壁部24a、24bを備え、各保持壁部内にも前述したと同様な空気袋(図示せず)が配置されている。 この腕保持部24でも、これを構成している各保持壁部24a、24b内の空気袋に圧縮空気を供給排気することにより膨張と収縮を起こさせて保持壁部間の凹部25に入れられた使用者の腕を保持壁部24a、24bの外装布を介して挟み込むようにして圧迫し、またこの圧迫を解放することによりマッサージを行うようにされている。
この腕保持部24を構成する各保持壁部24a、24b内に設置される空気袋への圧縮空気の給排気機構は、前述した座部21及び背凭れ部23の内部に設置された空気袋に圧縮空気を給排気する機構をそのまま使用することができる。」(段落【0017】?【0019】)
(サ)「この表示パネル11には、図5に示されるように足裏形状12a、12bが表示され、椅子20に座って足部を足乗せ台40に乗せて足裏のマッサージを行っている時の状態を表示する。具体的には、押圧突起部45、46の上下動作又は擦り動作により足裏に痛みを感じた時、その位置で使用者がコントローラ13の所定スイッチを押すと、そのコントローラ13からの信号を受けて図示しない制御装置が表示パネル11に表示されている足裏形状12a、12bの該当位置にマーカを表示する。」(段落【0033】)
(シ)図1には、一対の保持壁部24a、24bが肘掛け部22,22の上面に対向して略垂直に立設されている点が図示されている。
(ス)図1には、コントローラ13が肘掛け部22,22の上面における、使用者の指先近郊に配備されている点が図示されている。

上記(コ)に摘記したように、肘掛け部22の上部に設けられた腕保持部24はU字状の凹部25を形成する一対の保持壁部24a、24bを備えているので、「両肘掛け部22,22の上面適所に使用者の腕を各々載脱自在」であることは明らかであり、また、保持壁部24a、24bにより使用者の腕を肘掛け部22,22上に「安定的に保持」することができるものということができる。
また、同じく上記(コ)に摘記したように、肘掛け部の22の各保持壁部内には空気袋が配設されており、空気袋に圧縮空気を供給排気することにより使用者の腕を保持壁部24a,24bの外装布を介して挟み込むようにしてマッサージを行うようにされているのであるから、「一対の保持壁部24a,24b内側部に各々空気袋を対設し」、「一対の保持壁部24a,24b内側部に対設された空気袋間で使用者の腕にマッサージを行うように」していることは明らかである。

これらの記載事項および図示内容を総合すると、甲第6号証には、
「椅子20の両肘掛け部22,22の上面適所に使用者の腕を各々載脱自在でこれらにマッサージを行い得るよう、椅子20の両肘掛け部22,22に空気袋を各々配設し、且つ各空気袋に圧縮空気を供給し、及び空気袋に供給された圧縮空気を排気する圧縮空気給排気機構を具備させたマッサージ機であって、該マッサージ機の各肘掛け部22,22は、U字状の凹部25を形成する略垂直に立設された一対の保持壁部24a,24bを備え、且つ、前記一対の保持壁部24a,24b内側部に各々空気袋を対設して、肘掛け部22,22上に使用者の腕を安定的に保持させて、前記一対の保持壁部24a,24b内側部に対設された空気袋間で使用者の腕にマッサージを行うようにしたマッサージ機。」(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。

甲第8号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(セ)「身体の脚部、腕部等を抱持し得るように形成される抱持枠27と、その抱持枠27を開閉する開閉作動装置dと、前記抱持枠27の相対向する内面に取付けられ、流体圧の給排により伸縮作動を繰り返すようにした少なくとも一対の指圧筒28,29と、前記抱持枠27を支持する支持部材15をその抱持枠27とゝもに、前記指圧筒28,29の伸縮方向と略直交する方向に往復動させる抱持枠横往復動装置bとを少なくとも有する指圧装置。」(1ページ左下欄4?12行)
(ソ)「本発明は身体、主として脚部、腕等の筋肉を効果的に指圧する指圧装置に関するものである。」(1ページ左下欄14?15行)
(タ)「従来の指圧装置にあつては単に指圧頭を身体に向けて間歇的に押圧するようにしているだけなので、身体が指圧力の作用方向に逃げてしまい指圧効果が損われ、特に腕部、脚部のように体重をかけにくい部分ではその傾向が大きく、実質的な指圧効果が得られない欠点があつた。」(1ページ右下欄3?8行)
(チ)「取付板23の両端にはそれぞれ本発明の要部をなす一対の指圧部a,aが設けられているが、それらは全く同一の構造を有しているので、その一つについて、その構造を以下に詳細に説明すると、前記取付板23の端部には、これと一体的に固定枠24が形成されており、この固定枠24の一端縁には、これと略同形の可動枠25が、その固定枠24に対して開閉自在に蝶着26されており、前記固定枠24と可動枠25とによつて利用者2の大腿部イを抱持し得る半多角形状の抱持枠27を構成する。固定枠24と可動枠25の相対向する内面には対をなす、蛇腹式の指圧筒28,29が気密状態にして固着され、指圧筒28,29の上端部には、指圧頭30,31がそれぞれ固設されている。指圧筒28,29にはそれぞれ図示しない空気圧生成装置によつて生成された空気圧が導管32を介して給排できるようになつており、指圧筒28,29を伸縮作動させることができる。
各指圧筒28,29に設けられたフランジ33および34と固定枠24および可動枠25に固着した取付片35,36間は屈曲自在な指圧筒保持アーム37,38によつて連結され、その指圧筒保持アーム37,38の内面には指圧頭39,40が固着されている。尚、41および42は固定枠24、および可動枠25に固着したストツパで前記指圧筒保持アーム37,38の不要な方向への回動を抑止するためのものである。」(2ページ右上欄16行?右下欄9行)
(ツ)「次に上記実施例の指圧装置を使用する場合について説明すると、本装置の非作動状態では、流体圧シリンダ43は収縮状態にあつて可動枠25は、固定枠24に対して第2、4図鎖線に示すように開放状態にある。こゝで第1図に示すように指圧台1上に利用者2が仰臥して自己の脚の大腿部イを前記のように開放している抱持枠27内に挿入した後、図示しない運転釦を押すと、流体圧シリンダ43が伸長作動して可動枠25を蝶着部26まわりに閉じ方向に回動して第2?4図に実線で示すように可動枠25を閉成し、固定枠24および可動枠25に固着した指圧筒28,29の指圧頭30,31および指圧筒保持アーム37,38に固着した指圧頭39,40を大腿部イに当接させる。タイマの作動で数秒後、図示しない空気圧生成装置からの圧力空気が導管32,32を通つて指圧筒28,29内に給排されて、指圧筒28,29は伸縮作動を繰り返し数個の指圧頭30,31,39,40を間歇的に大腿部イに押圧することができる。この場合に指圧頭30,39と31,40は大腿部イを挟んで相対向しているので、恰も指圧師が大腿部イを握持して指圧する場合と同じような指圧効果を与えることができる。」(3ページ左上欄3行?右上欄8行)
(テ)第2図及び第3図には、抱持枠27,27は、大腿部イ幅方向外側に半多角形状に形成された可動枠25,25を立設して、固定枠24,24の上面をこの半多角形状の可動枠25,25で覆って大腿部イの外面形状に沿う形状の抱持枠27,27に各々形成されていることが図示されている。また、第2図及び第3図には、一対の抱持枠27,27に指圧筒28,29を各々配設し、抱持枠27,27上に大腿部イを保持させた態様が図示されている。
(ト)第3図には、可動枠25の内側部には先端に指圧頭31が固設された指圧筒29を配設すると共に、固定枠24の上面に先端に指圧頭30が固設された指圧筒28を配設することが図示されている。

これらの記載事項及び図示内容から、甲第8号証には、
「一対の抱持枠27,27に指圧筒28,29を各々配設し、指圧筒28,29に空気圧生成装置によつて生成された空気圧が導管32を介して給排できるようになつている指圧装置であつて、各抱持枠27,27は、大腿部イ幅方向外側に半多角形状に形成された可動枠25,25を立設して、固定枠24,24の上面をこの半多角形状の可動枠25,25で覆って大腿部イの外面形状に沿う形状の抱持枠27,27に各々形成されており、且つ、可動枠25,25の内側部には先端に指圧頭31が固設された指圧筒29を配設すると共に、固定枠24,24の上面に先端に指圧頭30が固設された指圧筒28を配設し、抱持枠27,27上に大腿部イを保持させて、指圧頭31と指圧頭30との間で大腿部イを握持して指圧する指圧装置。」(以下、「甲8発明」という。)が記載されていると認められる。

(4-2)本件発明1について
(i)対比
本件発明1と甲6発明とを対比すると、後者における「椅子20」はその機能又は構造からみて、前者における「椅子本体」に相当し、以下同様に、「肘掛け部22,22」が「肘掛部」に、「使用者の腕」が「人体手部」に、「マッサージ」が「空圧施療」に、「行い得る」が「付与し得る」に、「空気袋」が「膨縮袋」に、「各空気袋に圧縮空気を供給し、及び空気袋に供給された圧縮空気を排気する圧縮空気給排気機構」が「各膨縮袋に圧縮空気給排装置からの給排気を伝達するホースを各々連通状に介設してなる圧縮空気給排気手段」に、「マッサージ機」が「手揉機能付用施療機」及び「手揉機能付施療機」に、それぞれ相当する。
また、甲6発明における「一対の保持壁部24a,24b」のうち、一方の「保持壁部24b」は、甲第6号証の図1を参酌すると肘掛部の肘幅方向外側に立設された「外側壁」といえるから、本件発明1の「肘幅方向外側に弧状形成された立上り壁」とは「肘幅方向外側に形成された外側壁」である点で共通しているといえる。さらに、甲6発明における他方の「保持壁部24a」の内側部は、甲第6号証の図1を参酌すると「保持壁部24b」に対向する対向面といえるから、本件発明1の「肘掛部の上面」とは「外側壁に対向する対向面」である点で共通しているといえる。そして、甲6発明における「保持壁部24b」の内側部に空気袋を設けた点と、本件発明1における「立上り壁の内側部には膨縮袋を配設」した点とは「外側壁の内側部には膨縮袋を配設」した点で共通し、甲6発明における「保持壁部24a」の内側部に空気袋を設けた点と、本件発明1における「肘掛部の上面に二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群を配設」した点とは「外側壁に対向する対向面に膨縮袋を配設」した点で共通している。
また、甲6発明の「一対の保持壁部24a,24b内側部に対設された空気袋間で使用者の腕にマッサージを行う」点と本件発明1の「立上り壁内側部に配設された膨縮袋と肘掛部の上面に配設された膨縮袋群とを対設させた膨縮袋間で人体手部に空圧施療を付与させるようにした」点とは、「外側壁内側部に配設された膨縮袋と外側壁の対向面に配設された膨縮袋間で人体手部に空圧施療を付与させるようにした」点で共通しているといえる。

してみると、両者は、本件発明1の用語を用いて表現すると、
「椅子本体の両肘掛部の上面適所に人体手部を各々載脱自在でこれらに空圧施療を付与し得るよう、椅子本体の両肘掛部に膨縮袋を各々配設し、且つ各膨縮袋に圧縮空気給排装置からの給排気を伝達するホースを各々連通状に介設してなる圧縮空気給排気手段を具備させた手揉機能付用施療機であって、該手揉機能付用施療機の各肘掛部は、肘幅方向外側に形成された外側壁を立設して、外側壁に対向する対向面を各々形成されており、且つ、前記外側壁の内側部には膨縮袋を配設すると共に、前記外側壁に対向する対向面に膨縮袋を配設して肘掛部上に人体手部を安定的に保持させて、外側壁内側部に配設された膨縮袋と外側壁の対向面に配設された膨縮袋間で人体手部に空圧施療を付与させるようにした手揉機能付施療機。」
の点で一致し、以下の点で相違する(かっこ内は甲第6号証に記載された対応する用語を示す。)。

相違点1:本件発明1では、外側壁及び外側壁に対向する対向面は、弧状形成された立上り壁及び肘掛部の上面であり、各肘掛部は、肘掛部の上面をこの弧状の立上り壁で覆って人体手部の外面形状に沿う形状に形成されているのに対して、甲6発明では、外側壁(保持壁部24b)及び外側壁と対向する対向面(保持壁部24aの内側部)は、略垂直に立設されており、その他の特定事項を備えていない点。
相違点2:本件発明1では、外側壁に対向する対向面に配設されている膨縮袋は、二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群であり、圧縮空気給排装置からの給気によって膨縮袋の肘幅方向の外側一端よりも内側他端が立ち上がるように配設され、前記膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させて、立上り壁内側部に配設された膨縮袋と肘掛部の上面に配設された膨縮袋群とを対設させた膨縮袋間で人体手部に空圧施療を付与させるようにしているのに対し、甲6発明では、外側壁に対向する対向面に配設した膨縮袋は膨縮袋群ではなく、その他の特定事項を備えていない点。

(ii)判断
そこで、上記相違点について検討する。
(相違点1について)
甲8発明の抱持枠は脚部や腕部を抱持するとともに、抱持枠自身も振幅運動して、位置の移動を伴い、患部に指圧作用ともみ作用を施すものであって、単に肘を載せる部分である肘掛部に相当するとはいえない。そして、甲8発明には、その他に本件発明1の肘掛部に相当する特定事項の記載も、それを示唆する記載もない。
また、甲8発明の指圧頭は、本件発明1の肘掛部上面に配設した膨縮袋群のように、内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させる機能を有するものでない。そして、甲8発明には、その他に上記機能についての記載も、それを示唆する記載もない。
そうすると、甲6発明に甲8発明を適用しても、外側壁に対向する対向面を「肘掛部の上面」として相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたものとはいえない。(二次判決25頁24行?38頁8行参照)

(相違点2について)
甲8発明及び甲第12?14,17?20,21,22号証に記載された技術事項を検討しても、甲8発明及び甲各号証には、「肘掛部の上面に配設した膨縮袋群は、圧縮空気給排装置からの給気によって膨縮袋の肘幅方向の外側一端よりも内側他端が立ち上がるように配設され、前記膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させ」る構成についての記載も、それを示唆する記載もない。
したがって、該構成が周知の技術事項であるともいえない。
そうすると、甲6発明及び甲8発明に基づきさらに周知の技術事項を考慮しても、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたものとはいえない。(二次判決17頁14行?25頁23行参照)

以上のとおり、本件発明1は、甲6発明及び甲8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4-3)本件発明2?5について
本件発明2?5は、本件発明1を引用し、さらにその発明特定事項を限定したものである。本件発明1が甲6発明及び甲8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1の発明特定事項を全て具備した本件発明2?5も、本件発明1が甲6発明及び甲8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4-4)小括
以上のとおり、本件発明1?5は、甲6発明及び甲8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(5)なお、さらに請求人は平成20年7月7日付け上申書及び平成21年10月22日付け上申書において、本件特許の請求項1?6に係る発明は、甲第3号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるから、本件特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである旨主張しているので、この点についても検討しておく。

(5-1)甲第3号証の記載内容
甲第3号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、次の事項が記載されている。
(ナ)「(実施の形態3)図7は、本発明の実施の形態3に係るマッサージ機の構成を示す斜視図である。本実施の形態3に係るマッサージ機22は、座部17の両側部に、肘掛け部23が夫々設けられている。この肘掛け部23は、略前後方向に延びており、上下に若干湾曲した如き棒状をなしており、その上面を被施療者の腕置きとして利用することが可能となっている。また、肘掛け部23の上方には、被施療者の前腕を保持するための保持部24が配されている。
図8は、肘掛け部23及び保持部24を幅方向へ切断したときの断面図である。図8に示すように、肘掛け部23の下部には、該肘掛け部23の長手方向へ沿って、ガイドレール25が設けられている。このガイドレール25は、上下方向を厚さ方向とした略板状をなしており、その厚さ方向中間部分に、扁平な空隙部25aが設けられている。この空隙部25aは、ガイドレールの外側面、即ち、座部17の反対側の側面にて開口しており、また、空隙部25aの座部17側の端部は、その空隙の厚みが他の部分よりも拡大された拡大部25bとなっている。この拡大部25bは、横方向へ所定長さだけ設けられている。
このような空隙部25aには、保持部24が有する移動部材24aが挿入されている。移動部材24aは、空隙部25aの薄い空隙部分よりも若干薄い板を、略直角に屈曲させた如き形状をなしており、略水平な板状の部分と、略鉛直な板状の部分とから主として構成されている。移動部材24aの略水平な板状の部分は、空隙部25aに係入せしめられている。また、この移動部材24aの略水平な板状の部分の先端部は、他の部分より厚みを増してあるストッパ24bとされており、このストッパ24bが前述した空隙部25aの拡大部25b内に配されている。ストッパ24bの厚さは、拡大部25bの厚さよりも薄く、空隙部25aの拡大部25b以外の部分よりも厚くされている。また、ストッパ24bの横方向の長さは、拡大部25bの横方向の長さよりも短くされている。従って、移動部材24aは、ストッパ24bが、拡大部25bの両側端に当接する範囲内で、横方向へ移動することが可能となっている。
また、移動部材24aの前後方向の長さは、空隙部25aの前後方向の長さよりも短くされている。これによって、移動部材24aは、その前後端が空隙部25aの前後端に当接する範囲内で、前後方向へ移動することが可能となっている。
このような移動部材24aの略鉛直な板状の部分の上端部は、ガイド部材24cに接続されている。ガイド部材24cは、板状部材が略円弧状に湾曲された如き形状をなしており、その湾曲の中心軸方向が略前後方向とされている。また、ガイド部材24cの長手方向(軸長方向)の中間部分には、円弧の円周方向へ長い切り欠き部24dが設けられている(図7参照)。
ガイド部材24cの湾曲内側には、保持部分26が配されている。この保持部分26は、幅方向に切断したときの断面視において略C字状の略半円筒形状をなしており、その外面がガイド部材24cの内面に略密接された状態となっている。
保持部分26は、外殻部26a及び空気袋26b,26cによって主として構成されている。外殻部26aは、幅方向の断面視において略C字状の湾曲板状をなしており、比較的硬度が高い材料によって形成されている。また、外殻部26aの長さ方向(前後方向)中間部分の外面には、突起26dが設けられている。この突起26dは、ガイド部材24cの切り欠き部24dの幅よりも若干短い幅とされており、その頭部において幅が拡大されている。このような突起26dは、切り欠き部24dを貫通しており、その頭によって抜け止めがされた状態で、切り欠き部24dに係合されている。従って、保持部分26は、突起26dが切り欠き部24d内で移動することが可能な範囲内で、湾曲の円周方向へ移動することが可能である。
また、外殻部26aの内面の略全面に亘って、空気袋26bが設けられている。また、この空気袋26bの表面には、複数の空気袋26cが設けられている。かかる空気袋26b,26cは、夫々ポンプ、電磁弁等からなる、座部17又は背凭れ部18に設けられた給排気装置(図示せず)にエアホース(図示せず)によって接続されており、給排気装置の動作によって膨張・収縮することが可能となっている。また、空気袋26bと空気袋26cとは夫々独立に膨張・収縮するように構成されている。このような構成により、空気袋26cが膨張・収縮することによって、被施療者の上腕部に圧迫刺激を与えたり、それを解放することができ、空気袋26bが膨張・収縮することによって、空気袋26cによる刺激の強さを調節することができる。」(段落【0062】?【0069】参照)
(ニ)図7には、実施の形態3に係るマッサージ機22と保持部24が図示されている。
(ヌ)図8には、実施の形態3に係る保持部24が、断面視において略C字状の略半円筒形状をなしており、その下方部分の空気袋26bの表面に複数の空気袋26cが配設されている点が図示されている。
(ネ)図7,8からみて、保持部24に対し、被施療者の前腕を載脱自在であることは明らかである。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、甲第3号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、
「椅子本体の両肘掛け部23の上方に配設された両保持部24に被施療者の前腕を各々載脱自在でこれらに空圧施療を付与し得るよう、両保持部24の内面の略全面に亘って空気袋26bが設けられ、空気袋26bの表面に空気袋26cを各々設け、且つ各空気袋26b及び26cが給排気装置にエアホースによって接続されたマッサージ機22であって、各保持部分24は、断面視において略C字状の略半円筒形状をなしており、且つ、保持部24の上方部分の空気袋26bの表面には空気袋26cを設けると共に、保持部24の下方部分の空気袋24bの表面に複数の空気袋26cを設け、空気袋26bと空気袋26cとは夫々独立に膨張・収縮するように構成され、空気袋26cが膨張・収縮することによって、被施療者の上腕部に圧迫刺激を与えたり、それを解放することができる、マッサージ機22。」(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。

(5-2)本件発明1について
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「肘掛け部23」及び「保持部24」については上記記載事項(ナ)において、「この肘掛け部23は、略前後方向に延びており、上下に若干湾曲した如き棒状をなしており、その上面を被施療者の腕置きとして利用することが可能となっている。また、肘掛け部23の上方には、被施療者の前腕を保持するための保持部24が配されている。」「図8に示すように、肘掛け部23の下部には、該肘掛け部23の長手方向へ沿って、ガイドレール25が設けられている。このガイドレール25は、上下方向を厚さ方向とした略板状をなしており、その厚さ方向中間部分に、扁平な空隙部25aが設けられている。」「このような空隙部25aには、保持部24が有する移動部材24aが挿入されている。」「移動部材24aは、・・・範囲内で、横方向へ移動することが可能となっている。」「移動部材24aは、その前後端が空隙部25aの前後端に当接する範囲内で、前後方向へ移動することが可能となっている。」「このような移動部材24aの略鉛直な板状の部分の上端部は、ガイド部材24cに接続されている。」「ガイド部材24cの湾曲内側には、保持部分26が配されている。」「保持部分26は、・・・範囲内で、湾曲の円周方向へ移動することが可能である。」等と記載されていることからみて、「肘掛け部23」は腕置きとして利用できる固定部材であり、「保持部24」は「肘掛け部23」に対して横方向、前後方向、円周方向に移動する部材である。
一方本件発明1の「肘掛部」は椅子本体に固定された部材であるから、本件発明1の「肘掛部」に相当する甲3発明の部材は「肘掛け部23」であって、「保持部24」ではない。
そうすると、甲3発明において、保持部24の下方部分の空気袋24bの表面に設けた複数の空気袋26cが、図8から見てその左右方向外側一端よりも内側他端が隆起していることから、本件発明1の膨縮袋群に一部相当するとしても、前記空気袋26cは保持部24に設けられたものであって、本件発明1の「肘掛部」に相当する甲3発明の「肘掛け部23」に設けられたものではない。
また、甲3発明の空気袋26cはそれが「膨張・収縮することによって、被施療者の上腕部に圧迫刺激を与えたり、それを解放することができ」るとの機能を奏するものであって、被施療者の前腕を安定的に保持させる点については甲第3号証に何ら記載あるいは示唆がない。かえって、上記記載事項(ナ)に記載されるように保持部分26は円周方向で移動するものであって、図8の矢印のうち上方に移動した場合には内側の先端部が隆起しなくなり、腕が脱落しやすくなることもありうることからみて、必ずしも前腕を安定的に保持させるとの機能を奏し得るものではない。
したがって、結局甲3発明は、本件発明1が備える、「各肘掛部は、肘幅方向外側に弧状形成された立上り壁を立設して、肘掛部の上面をこの弧状の立上り壁で覆って人体手部の外面形状に沿う形状の肘掛部に各々形成されており、且つ、前記立上り壁の内側部には膨縮袋を配設すると共に、前記肘掛部の上面に二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群を配設して、前記肘掛部の上面に配設した膨縮袋群は、圧縮空気給排装置からの給気によって膨縮袋の肘幅方向の外側一端よりも内側他端が立ち上がるように配設され、前記膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させて、立上り壁内側部に配設された膨縮袋と肘掛部の上面に配設された膨縮袋群とを対設させた膨縮袋間で人体手部に空圧施療を付与させるようにした」点を備えていない点で本件発明1と相違するものであり、この相違点が課題解決のための具体化手段における微差とはいえないから、両者は同一ではないし、実質的に同一ともいえない。

(5-3)本件発明2?5について
本件発明2?5は、本件発明1を引用し、さらにその発明特定事項を限定したものである。本件発明1が甲3発明と同一ではないし、実質的に同一ともいえない以上、本件発明1の発明特定事項を全て具備した本件発明2?5も、甲3発明と同一ではないし、実質的に同一ともいえない。

(5-4)小括
以上のとおり、本件発明1?5は、甲3発明と同一ではないから、本件特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

7 むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件発明1?5の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については,特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
手揉機能付施療機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子本体の両肘掛部の上面適所に人体手部を各々載脱自在でこれらに空圧施療を付与し得るよう、椅子本体の両肘掛部に膨縮袋を各々配設し、且つ各膨縮袋に圧縮空気給排装置からの給排気を伝達するホースを各々連通状に介設してなる圧縮空気給排気手段を具備させた手揉機能付用施療機であって、該手揉機能付用施療機の各肘掛部は、肘幅方向外側に弧状形成された立上り壁を立設して、肘掛部の上面をこの弧状の立上り壁で覆って人体手部の外面形状に沿う形状の肘掛部に各々形成されており、且つ、前記立上り壁の内側部には膨縮袋を配設すると共に、前記肘掛部の上面に二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群を配設して、前記肘掛部の上面に配設した膨縮袋群は、圧縮空気給排装置からの給気によって膨縮袋の肘幅方向の外側一端よりも内側他端が立ち上がるように配設され、前記膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させて、立上り壁内側部に配設された膨縮袋と肘掛部の上面に配設された膨縮袋群とを対設させた膨縮袋間で人体手部に空圧施療を付与させるようにした事を特徴とする手揉機能付施療機。
【請求項2】
前記立上り壁の内側部に配設される膨縮袋が、二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群である事を特徴とする請求項1に記載の手揉機能付施療機。
【請求項3】
前記両肘掛部に配設される膨縮袋の人体手部当接側に、膨縮施療を強度に付与し得る施療突起を配設した事を特徴とする請求項1又は請求項2記載の手揉機能付施療機。
【請求項4】
前記両肘掛部の適所に、両肘掛部上面を振動させる振動部材を配備させた事を特徴とする請求項1記載の手揉機能付施療機。
【請求項5】
前記肘掛部の人体手部指先対応位置或いは指先近郊の上面適所に、圧縮空気給排装置に接続される外部電源を配備させた事を特徴とする請求項1記載の手揉機能付施療機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、圧縮空気の給排に応じて膨脹・収縮する膨縮機構によって、施療者の手部に断続的に圧迫を加えて施療を行なう機構を備えた手揉機能付施療機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の椅子式マッサージ機は、例えば、空気圧利用式のものにおいては、リクライニング可能な背凭れ部に、人体の腰部や背部や頸部をマッサージする為に、空気圧変化によって膨脹・収縮する袋体を内装し、また、座部に、臀部や大腿部をマッサージする為の前記同様の袋体を、内装して構成したものが一般的に知られている。
【0003】
また、近年においては、前記のような構成に加えて、脚部をマッサージする為の上記同様の袋体を内装した出没可能な脚載せ部を設けて構成した椅子式空気圧マッサージ機も周知のものとなっている。
【0004】
上記のような椅子式空気圧マッサージ機においては、上記人体各部位に対応するように配設された各々の袋体に空気の給排気を行わせるよう、これにホースを介して圧縮空気給排装置を連通させる必要がある。
【0005】
またこの圧縮空気給排装置は、例えば座部の下などに内装されるよう設置されるのであるが、該給排装置から給排される圧縮空気は、前記ホースを介して袋体を膨脹及び収縮させ、上記人体各部位を断続的に圧迫してマッサージを行なうことができ、揉み玉やローラー等によるマッサージに比較して、摩擦の少ないマッサージができるようにしている。
【0006】
また、上記椅子式空気圧マッサージ機を採用した椅子の、背凭れ部にリクライニング機構を設け、脚載せ部に出没機構を設けることにより、使用者の身体を略水平な状態にでき、この状態で空気圧マッサージを行えるため、比較的快適な状態でのマッサージを行う事ができる。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種従来の椅子式空気圧マッサージ機においては、空気圧変化によって膨脹及び収縮する袋体を背凭れ部や座部の他、他部位に亘って配設させることができ、これら各袋体に空気を給排気させて、それぞれ、人体の、腰部や背部の他、頸部や臀部或は大腿部や脚部に適度な空気圧マッサージを施す事ができるのであるが、人体の局部における、特に手部に対する空気圧マッサージを施す事ができず、またこのような手部を専門的にマッサージできるような局部専用マッサージ機も開発されていないのが現状である。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、手部及び腕部を安定的に載設して、手部や腕部に対する効果的な空圧施療を行える手揉機能付施療機を提供する事を目的としてなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の手揉機能付施療機は、椅子本体の両肘掛部の上面適所に人体手部を各々載脱自在でこれらに空圧施療を付与し得るよう、椅子本体の両肘掛部に膨縮袋を各々対設し、且つ各膨縮袋に圧縮空気給排装置からの給排気を伝達するホースを各々連通状に介設してなる圧縮空気給排気手段を具備させた手揉機能付用施療機であって、該手揉機能付用施療機の各肘掛部は、肘幅方向外側に弧状形成された立上り壁を立設して、肘掛部の上面をこの弧状の立上り壁で覆って人体手部の外面形状に沿う形状の肘掛部に各々形成されており、且つ、前記立上り壁の内側部には膨縮袋を配設すると共に、前記肘掛部の上面に二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群を配設して、前記肘掛部の上面に配設した膨縮袋群は、圧縮空気給排装置からの給気によって膨縮袋の肘幅方向の外側一端よりも内側他端が立ち上がるように配設され、前記膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させて、立上り壁内側部に配設された膨縮袋と肘掛部の上面に配設された膨縮袋群とを対設させた膨縮袋間で人体手部に効率良い空圧施療を行なわせ事ができるようにする事を特徴とするものである。
【0010】
また本発明の手揉機能付施療機は、前記圧縮空気給排気手段を、両肘掛部の各立上り壁に配設される膨縮袋と、各膨縮袋に各々ホースを介して連通される圧縮空気給排装置とで構成し、肘掛部の人体手部指先対応位置或いは指先近郊の上面適所に、圧縮空気給排装置に接続される外部電源を配備させて、人体手部を両肘掛部上面に安定的に保持させて立上り壁側の膨縮袋により手部側方を効率良く空圧施療を行なわせる事ができるようにした事を特徴とするものである。
【0011】
更にまた本発明の手揉機能付施療機は、前記立上り壁の内側部に配設される膨縮袋が、二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群に構成し、手部に強度な空圧施療を効率良く行なわせる事ができるようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の手揉機能付施療機は、前記両肘掛部に配設される膨縮袋の人体手部当接側に施療突起を配設し、手部に強度な空圧施療を適格に付与する事ができるように構成した事を特徴とするものでもある。
【0013】
更に本発明の手揉機能付施療機は、前記両肘掛部上面を振動させる振動部材を適所に配備させ、手部に振動部材による振動施療と膨縮袋による圧空施療とを同時或いは単独で任意に行なわせる事ができるよう構成した事を特徴とする。
【0014】
よって、本発明の手揉機能付施療機は、上記のように構成することにより次のような作用をもたらす。
先ず、本発明の手揉機能付施療機においては、肘幅方向一側の肘幅方向外側に弧状形成された立上り壁を設け、肘掛部の上面をこの弧状の立上り壁で覆って人体手部の外面形状に沿う形状の肘掛部に各々形成された肘掛部を両側に設けた椅子本体の上面適所に、人体手部を各々載脱自在で該人体手部に膨縮施療を付与し得る圧縮空気給排気手段を配設している為、施療者は着座状態で人体手部を両肘掛部上面に安定的に保持させて、人体手部及び腕部の上側面から効率良く空圧施療する事ができる。
【0015】
また、本発明の手揉機能付施療機は、圧縮空気給排気手段を、両肘掛部の肘幅方向外側に立設された弧状の立上り壁と、これに配設される膨縮袋と、各膨縮袋に各々ホースを介して連通される圧縮空気給排装置とで構成している為、立上り壁側の膨縮袋により人体手部及び腕部を上側面から効率良く空圧施療を行なわせる事ができる。
【0016】
更に本発明の手揉機能付施療機は、前記圧縮空気給排気手段を、両肘掛部の肘幅方向外側に立設された弧状の各立上り壁に配設される膨縮袋及び肘幅方向内側底部に配設される膨縮袋と、両各膨縮袋に各々ホースを介して連通される圧縮空気給排装置とで構成している為、人体手部を立上り壁側の膨縮袋と肘幅方向内側底部に配設される膨縮袋により両側から挟持して、人体手部及び腕部を上側面と内側底面下部から効率良く空圧施療・空圧挟持施療・空圧押上施療を行なわせる事ができる。
【0017】
更に、本発明の手揉機能付施療機は、両肘掛部に配設される膨縮袋が、二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群に構成している為、人体手部及び腕部を膨縮袋群の膨縮袋で順次相乗的に挟持して強度で圧迫感のある空圧施療を効率良く行なわせる事ができるのである。
【0018】
また、本発明の手揉機能付施療機は、前記両肘掛部に配設される膨縮袋の人体手部当接側に施療突起を配設している為、膨縮袋の人体手部当接側が膨張した場合にこの施療突起が該手部や腕部に当接し、これによる強度な空圧施療を適格に付与する事ができる。
【0019】
更に本発明の手揉機能付施療機は、前記両肘掛部上面を振動させる振動部材を適所に配備させている為、施療者が膨縮袋の膨縮動作や振動部材の振動動作を任意に選択して、これらを同時或いは単独で作動させる事で、人体手部や腕部に振動部材による振動施療と膨縮袋による圧空施療と、これら両者による振動空圧施療を適宜に選択実施させる事ができる。
【0020】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の手揉機能付施療機を、図面に示す一実施形態に基づいてこれを詳細に説明する。
図1は、本発明の手揉機能付施療機の一実施形態を示す説明図であり、図2は本発明の手揉機能付施療機における圧縮空気給排気手段の膨縮袋が収縮した一実施形態を示す説明図であり、図3は本発明の手揉機能付施療機における圧縮空気給排気手段の膨縮袋が膨張した一実施形態を示す説明図であり、図4乃至図9は本発明の手揉機能付施療機における圧縮空気給排気手段を備えた肘掛部の一実施形態を示す説明図であり、図10は本発明の手揉機能付施療機の一実施形態を示す説明図であり、図11は本発明の手揉機能付施療機の一実施形態を示す斜視図であり、図12及び図13は本発明の手揉機能付施療機の一実施形態を示す使用状態図である。
【0021】
すなわち、本発明の手揉機能付施療機1は、図10及び図11に示したように、肘幅方向外側(肘幅方向一側)に弧状形成された立上り壁211を設けた肘掛部21を椅子本体2の両側に設けており、その肘掛部21の上面に人体手部3を各々載脱自在で該人体手部2に膨縮施療を付与し得るよう、圧縮空気給排気手段(膨縮袋12と、各膨縮袋12・12に各々ホース13・13を介して連通される圧縮空気給排装置14)を配設して成り、施療者が着座状態で人体手部3を両肘掛部21・21上面に安定的に保持させて、人体手部3及び腕部の上側面から効率良く空圧施療する事ができるよう構成したものである。
【0022】
また、前記手揉機能付施療機1は、図1に示したように、椅子本体2の両肘掛部21・21の上面適所に固定板11を配設し、該固定板11の上部左右の少なくとも一側に膨縮袋12を配設し、要すれば、該固定板11の上部左右に一定間隔を存して膨縮袋12・12を対設して、これらを各肘掛部21の内部に内装しており、且つ、椅子本体2の座部下部に外部電源(図示せず)に接続される圧縮空気給排装置14を配設し、該装置14と各膨縮袋12・12間に各々ホース13・13を介設して、圧縮空気給排装置14からの給排気をホース13・13を介して各膨縮袋12・12に連繋させ、各膨縮袋12・12を所定の時間毎のサイクルで繰り返し膨縮させる事ができるようにしている。
【0023】
そして、前記図1で示した固定板11の一側を弧状に曲折して肘掛部21の上面をこの弧状の立上り壁211で覆って人体手部の外面形状に沿う形状の空間部を有する釣針形状に立設させた状態にして、これを肘掛部21に内装させる事で、図10及び図11のような外形状に形成できるものであり、このような状態にする事で施療者は図12及び図13に示したような着座状態で両肘掛部21・21上の人体手部3をその上側面から空圧施療行なうようにする事ができるのである。
【0024】
また、前記椅子本体2の両肘掛部21・21の上面適所に配設される膨縮袋12は、前述したように、弧状に曲折した固定板11の上部左右の少なくとも曲折側一側(立上り壁の内側部)に膨縮袋12を配設すれば良いが、該固定板11の上部左右に一定間隔を存して一対の膨縮袋12・12を対設させたり、図2及び図3に示したように、固定板11の上部左右に一定間隔を存して重合状に膨縮袋12・12・12・12(膨縮袋群)を夫々対設させたりする事で、これらに圧縮空気給排気装置14からの圧空を給排気させて膨縮させ、使用者の人体手部3及び腕部を一側上面側と他側下部側の両側から順次挟持して、圧迫感のある施療を実施する事ができるようになる。
【0025】
図4乃至図6は、前記肘幅方向外側に弧状形成された立上り壁211を設けた肘掛部21の一実施形態を示すものであり、上記したように椅子本体2に配設された立上り壁211内に、該立上り壁211を有する肘掛部21の上面形状に沿設するよう弧状曲折された固定板11と該固定板11の立上り壁211内側部に固定配備された膨縮袋12を内装し、該膨縮袋12には圧縮空気給排装置14からの圧空を給排気させる為のホース13が連通状に介設されている。
【0026】
また、図7乃至図9は、前記肘幅方向外側に弧状形成された立上り壁211を設けた肘掛部21の他の実施形態を示すものであり、上記したように椅子本体2に配設された立上り壁211内に、該立上り壁211を有する肘掛部21の上面形状に沿設するよう弧状曲折された固定板11と該固定板11の立上り壁211内側部に固定配備された膨縮袋12及び肘掛部21の肘幅方向内側底部に配設される膨縮袋12とを内装し、両各膨縮袋12・12には圧縮空気給排装置14からの圧空を給排気させる為のホース13が各々連通状に介設されている。
【0027】
尚、前記固定板11は、膨縮袋12を配設する際に肘掛部21上面に安定した状態で固定配備させる為のものであるが、その配置場所が安定している場合にはこれを設ける必要はない。
【0028】
また図4乃至図9における15は、前記肘掛部21上面を振動させる為の振動部材であり、図面においては。肘掛部21の中間部に配設したものを例示した。
【0029】
該振動部材15は、肘掛部21上面を振動させるものであれば錘部材を駆動モータに偏心状に設けたものや電磁式のもの等のどのようなものであっても良く、また、その取付位置も適宜に決定される。
【0030】
上記した振動部材15を設けた場合には、施療者が膨縮袋12の膨縮動作や振動部材15の振動動作を任意に選択する事により、これらを同時或いは単独で作動させる事ができ、具体的には、振動部材15による振動施療と膨縮袋12による圧空施療と、これら両者による振動空圧施療を施療者の人体手部3や腕部に適宜に選択実施させる事ができる。
【0031】
22は、圧縮空気給排装置14に接続されるリモコンスイッチ等の外部電源であり、図13ではこの外部電源22を一側の肘掛部21内側に配設した場合を例示しているが、施療者に容易で安全な電源切替を行なわせる事ができるようにする為に、肘掛部21上面適所或いは肘掛部21の人体手部3指先位置対応位置やその近郊に配備させる事が好ましい。
【0032】
尚、前記膨縮袋12は、弾性を有し、空気漏れ防止に有効なポリウレタン等の素材や膨らみ過ぎ防止に有効な6ーナイロン等の合成繊維で袋状に構成されるものであり、例えば、内層の素材に空気漏れ防止に有効なポリウレタン等の合成繊維を使用し、また、外層の素材に膨らみ過ぎ防止に有効な6ーナイロン等の合成繊維を用いて、内外二層を有する袋体としても良い。
【0033】
12aは、前記膨縮袋12の上面部に配設された施療突起であり、該施療突起12aを配備させる事で、膨縮袋12の人体手部3当接側が膨張した場合にこの施療突起12aが該手部3や腕部に当接し、これによる強度な空圧施療を適格に付与する事ができるようになる。
【0034】
尚、該施療突起12aは、施療袋12上面に一定間隔毎に配備してもよく、また不規則的に設けてもよく、更にその形状や構成も限定されるものではない。
【0035】
前記ホース13は、ビニール材等の合成樹脂を中空状に形成されており、該ホース13の基端を圧縮給排気装置14に接続すると共にその至端を前記膨縮袋12に接続し、前記膨縮袋12に圧縮給排気装置14からの給排気を伝達してこれを膨縮させるための仲介をなすものである。
【0036】
前記圧縮空気給排装置14は、例えば、電動エアーコンプレッサ等の空気圧縮機構を内蔵した装置であり、前記ホース13を介して上記膨縮袋12へ圧縮空気を給排気させるためのものである。
【0037】
前記圧縮空気給排装置14は、前述したようにホース13を介して膨縮袋12に連通するよう構成されているが、該圧縮空気給排装置14にロータリバルブ等の給排通路選択切替手段を設ける事で、該給排装置14の給排気口からの給排気を施療者が選択できるようにする事もでき、これにより、各膨縮袋12・12の給排気順を任意に変化させるようにする事もできる。
【0038】
また、前記のように給排通路選択切替手段を設ける場合には、前記給排気制御装置(図示せず)のロータリバルブ等の給排通路選択切替手段を制御する電子回路等の制御手段を内蔵させて構成する。
【0039】
よって、上記した本発明の手揉機能付施療機1を使用するにあっては、施療者が椅子本体2の座部に着座して人体手部3を肘掛部21上に載設し、圧縮空気給排装置14に接続されるリモコンスイッチ等の外部電源22を入力するだけで該電源22からの電力供給により、人体手部3及び腕部の一側上面側から効率良く適宜の空圧施療を行なわせる事ができるのである。
【0040】
【発明の効果】
よって、本発明の手揉機能付施療機は、肘幅方向外側に弧状形成された立上り壁を設けた肘掛部を両側に設けた椅子本体の上面適所に、人体手部を安定した状態に各々載脱自在で該人体手部に膨縮施療を付与し得る圧縮空気給排気手段を配設している為、施療者は着座状態で人体手部を肘掛部に載設して電源を入力するだけで、従来のマッサージ機では行い得ない人体手部及び腕部への適度で快適な空圧施療を一側上面側から効率良く行う事ができる。
【0041】
また、本発明の手揉機能付施療機は、圧縮空気給排気手段を、両肘掛部の各立上り壁に配設される膨縮袋と、各膨縮袋に各々ホースを介して連通される圧縮空気給排装置とで構成している為、施療者は着座状態で人体手部を肘掛部に載設して電源を入力するだけで、立上り壁側の膨縮袋により、従来のマッサージ機では行い得ない人体手部及び腕部への一側上面側からの適度で快適な空圧施療を効率良く行う事ができる。
【0042】
更に本発明の手揉機能付施療機は、前記圧縮空気給排気手段を、両肘掛部の弧状形成された各立上り壁に配設される膨縮袋及び肘幅方向他側に配設される膨縮袋と、両各膨縮袋に各々ホースを介して連通される圧縮空気給排装置とで構成している為、施療者は着座状態で人体手部を肘掛部に載設して電源を入力するだけで、人体手部や腕部を立上り壁側の膨縮袋と肘幅方向内側底部に配設される膨縮袋により外側上面側と内側下方との両側から挟持して、従来のマッサージ機では行なえない人体手部及び腕部への適度で快適な空圧施療・空圧挟持施療・空圧押上施療を両側から効率良く行なわせる事ができる。
【0043】
更に、本発明の手揉機能付施療機は、両肘掛部に配設される膨縮袋が、二以上の膨縮袋を重合させた膨縮袋群に構成している為、膨縮袋群の各膨縮袋で順次相乗的に挟持して、従来のマッサージ機では行なえない人体手部及び腕部への強度で圧迫感のある空圧施療を効率良く行なわせる事ができる。
【0044】
また、本発明の手揉機能付施療機は、前記両肘掛部に配設される膨縮袋の人体手部当接側に施療突起を配設している為、膨縮袋の人体手部当接側が膨張した場合にこの施療突起が該手部や腕部に当接し、これによる強度な空圧施療を適格に付与する事ができるようになる。
【0045】
更に本発明の手揉機能付施療機は、前記両肘掛部上面を振動させる振動部材を適所に配備させている為、施療者が膨縮袋の膨縮動作や振動部材の振動動作を任意に選択して、これらを同時或いは単独で作動させる事で、従来のマッサージ機では行なえない人体手部や腕部への振動部材による振動施療と膨縮袋による圧空施療や、これら両者による振動空圧施療を適宜に選択実施させる事ができる。
【0046】
更に、本発明の手揉機能付施療機は、前記圧縮空気給排気手段の膨縮袋を、両肘掛部の上面適所に配設し、圧縮空気給排装置にロータリバルブ等の給排通路選択切替手段を設け、これを制御する電子回路等の制御手段を内蔵させる構成にして、これらを圧縮空気給排気装置で適宜に膨縮するよう給排機させる構成にできる為、該吸排装置の給排機口からの給排気を施療者が適宜に選択でき、各膨縮袋の給排気順を任意に変化させて施療者の好みの施療を選択使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の手揉機能付施療機の一実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明の手揉機能付施療機における圧縮空気給排機手段の膨縮袋が収縮した一実施形態を示す説明図である。
【図3】本発明の手揉機能付施療機における圧縮空気給排気手段の膨縮袋が膨張した一実施形態を示す説明図である。
【図4】本発明の手揉機能付施療機における圧縮空気給排気手段を備えた肘掛部の実施形態を示す説明図である。
【図5】本発明の手揉機能付施療機における圧縮空気給排気手段を備えた肘掛部の実施形態を示す説明図である。
【図6】本発明の手揉機能付施療機における圧縮空気給排気手段を備えた肘掛部の実施形態を示す説明図である。
【図7】本発明の手揉機能付施療機における圧縮空気給排気手段を備えた肘掛部の実施形態を示す説明図である。
【図8】本発明の手揉機能付施療機における圧縮空気給排気手段を備えた肘掛部の実施形態を示す説明図である。
【図9】本発明の手揉機能付施療機における圧縮空気給排気手段を備えた肘掛部の実施形態を示す説明図である。
【図10】本発明の手揉機能付施療機の一実施形態を示す説明図である。
【図11】本発明の手揉機能付施療機の一実施形態を示す斜視図である。
【図12】本発明の手揉機能付施療機の一実施形態を示す使用状態図である。
【図13】本発明の手揉機能付施療機の一実施形態を示す使用状態図である。
【符号の説明】
1 手揉機能付施療機
11 固定板
12 膨縮袋(圧縮空気給排気手段)
12a 施療突起
13 ホース(圧縮空気給排気手段)
14 圧縮空気給排装置(圧縮空気給排気手段)
15 振動部材
2 椅子本体
21 肘掛部
211 立上り壁
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-07-28 
結審通知日 2007-08-13 
審決日 2010-02-02 
出願番号 特願2002-344827(P2002-344827)
審決分類 P 1 113・ 536- YA (A61H)
P 1 113・ 537- YA (A61H)
P 1 113・ 16- YA (A61H)
P 1 113・ 121- YA (A61H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷川 一郎  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 豊永 茂弘
黒石 孝志
登録日 2006-05-19 
登録番号 特許第3806396号(P3806396)
発明の名称 手揉機能付施療機  
代理人 森田 拓生  
代理人 上野 康成  
代理人 森田 拓生  
代理人 上野 康成  
代理人 辻本 一義  
代理人 窪田 雅也  
代理人 種市 傑  
代理人 角田 嘉宏  
代理人 辻本 一義  
代理人 窪田 雅也  
代理人 種市 傑  
代理人 辻本 希世士  
代理人 辻本 希世士  

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