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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B
管理番号 1245152
審判番号 不服2008-2722  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-07 
確定日 2011-10-13 
事件の表示 平成 9年特許願第369501号「布貼り成形品の再処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月21日出願公開、特開平11-192676〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成9年12月26日の出願であって、平成19年12月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年2月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年3月10日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成23年5月6日付けで拒絶理由が通知され、同年7月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成23年7月10日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂あるいはポリスチレン樹脂、ABS樹脂、変性ポリフェニレン樹脂より選ばれる熱可塑性樹脂(A)からなる成形品の表面に、
熱可塑性樹脂(A)と相溶性を有しないナイロンまたはポリエステルより構成される耐熱性の高い熱可塑性樹脂(B)の繊維からなる不織布を貼着した布貼り成形品の再処理方法であって、
前記熱可塑性樹脂(B)の繊維からなる不織布が貼着された成形品を細かく粉砕した粉砕物を押出機に投入し、
繊維を構成する耐熱性の高い前記熱可塑性樹脂(B)の融点温度からそれより50℃高い温度の範囲の温度で溶融混練して、熱可塑性樹脂(B)が熱可塑性樹脂(A)の中にミクロ状に分散したブレンド樹脂として押出機から押し出して一旦粒状化してからバージン樹脂あるいは塊状繊維を含まない粉砕物等の再生樹脂にブレンドし、
前記粒状化してからバージン樹脂あるいは塊状繊維を含まない粉砕物等の再生樹脂にブレンドしたブレンド樹脂(C)と、熱可塑性樹脂(A)と相溶性を有しない前記熱可塑性樹脂(B)の繊維からなる不織布を分割金型に配置するとともに、
前記熱可塑性樹脂(B)の融点温度未満である熱可塑性樹脂(A)の成形温度で前記ブレンド樹脂(C)を熱可塑性樹脂(B)が未溶融の状態で成形することにより、
剛性を有する成形品の表面に不織布を一体に貼着させる
ことを特徴とする布貼り成形品の再処理方法」

第3 引用文献
1.当審の拒絶の理由に引用された特開平4-267110号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】 プロピレン成分及び/又はエチレン成分を50重量%以上含むポリオレフィン系熱可塑性樹脂からなるソリッド形態の基材シート、上記ポリオレフィン系熱可塑性樹脂からなる発泡体形態の基材シート又は上記ソリッド形態の基材シートと上記発泡体形態の基材シートとを積層してなる基材シートに、熱可塑性樹脂繊維からなる織布又は不織布を表皮材として積層したシート状の積層体を熱成形する工程において発生する廃物を再生利用する方法であって、上記廃物を、このものから表皮材の繊維を実質的に除くことなく、細片に裁断し、この細片を、これに上記基材シートの原料樹脂を追加し又は追加することなく、混練押出機に投入して上記の基材シートの樹脂及び表皮材の繊維樹脂の融点以上で混練し、上記繊維の樹脂と基材シートの樹脂とが相互溶解するか、又は繊維の樹脂が基材シートの樹脂中に20μm 以下の大きさの相分離体状で分散するまで混練し、これをペレットとして回収し、このペレットを上記ソリッド形態の基材シート、発泡体形態の基材シート又はこれら両シートを積層してなる基材シートの製造に使用することを特徴とする積層体の加工時廃物の再生利用法。」
(2)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、積層体の加工時廃物の再生利用法、一層詳しくは、ポリオレフィン系樹脂を素材とするシート状の基材に、熱可塑性樹脂繊維からなる織布、不織布を表皮材として積層してなる、例えば自動車内装品等に使用して好適なシート状積層体を熱成形したときに発生するトリミングロスのような廃物を回収し、再生利用する方法に係わるものである。」
(3)「【0015】本発明の積層体を形成する表皮材としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリスチレン繊維、ポリアクリル繊維のような熱可塑性樹脂繊維の織布又は不織布が用いられる。これら表皮材を基材シートに積層するには、これら基材シートを構成する樹脂の融点以下で(融点-30℃)以上の範囲、好ましくは融点以下で(融点-20℃)以上の温度範囲に基材シートを保持した状態で表皮材を重ねて加圧し、例えば、1.5?5kg/cm^(2) のロール圧力下でロールに通し積層する。 また、表皮材と基材シートとは、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンラバー、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂等よりなる接着剤を用いて積層してもよい。
【0016】上記のようにして、基材シートと表皮材との積層によって得られた積層体は、その基材シートを構成する樹脂の融点以下で(融点-30℃)以上、好ましくは融点以下で(融点-20℃)以上の範囲内の温度において、所望形状に熱成形される。熱成形時の加熱方法としては、任意の方法が採用でき、例えば熱風加熱法、赤外線ヒーター、遠赤外線ヒーターなどによる輻射加熱方法が挙げられる。また熱成形法としては真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法又はスタンピング成形法等が用いられる。」
(4)「【0019】
以上のようにして混練押出機から得られたペレットは前記の積層品を製造するための基材シートの製造原料として用いられる。回収品の細片に未使用のポリオレフィン系樹脂を追加して得られたペレットはそのまゝ基材シートの製造に用いることができる。未使用のポリオレフィン系樹脂を追加せず、回収品の細片のみから得られたペレットを用いる場合には、シート製造のための押出機に、未使用のポリオレフィン系樹脂を併せて供給してもよい。」
(5)「【0021】
【実施例】次に本発明の実施例を説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これら実施例に制限されるものでない。
実施例1
この実施例ではポリプロピレン(MFRが1.1g/10分、密度が0.90g/cm^(3) 、融点160℃)からなる厚さ1.8mmのソリッドシートを基材シートとし、これに、ポリエチレンフタレート(融点約250℃)の繊維からなる不織布(厚さは目付重量で表わして200g/m^(2))を表皮材として積層したシート状の積層体を、真空圧空成形する工程で発生したトリミングロスを再生利用する。この廃物をこれから表皮材を分別することなく、裁断機を用いてさいの目状(5mm×5mm)の細片に裁断する(以下、この処理を裁断処理という)。この細片において、基材シートの樹脂量対表皮材の繊維の樹脂量の重量割合は90対10である。
【0022】上記の細片に対し、更に上記基材シートの製造に用いたポリプロピレンペレット(未使用のもの)を50対50の重量割合で混和する。この混和物における表皮材の繊維の樹脂含有量は5重量%である。この混和物を二軸の混練押出機(スクリュー径40mm)に供給し、加工温度が最高270℃となる条件で混練し、直径3mm、長さ5mmのペレットを製造した。以下、この処理を混練融合化処理という。
【0023】得られたペレットにおいては、廃物の表皮材部分の繊維樹脂が、廃物の基材シート部分のポリプロピレンと追加した未使用ポリプロピレンとの融合体中に20μm 以下の大きさの相分離体状で分散していた。なお、この状態は、サンプルを顕微鏡で観察し、20μm 以上の相分離体が実質的にないかどうかを調べて判断する。
【0024】以上のようにして得られたペレットを、711mm幅のT-ダイを取付けた単軸押出機(スクリュー径40mm)にて、加工温度(押出温度)を最高210℃とし、成形温度170℃でシート状に押出成形した(以下、この操作をシート化処理という)。得られたシートの厚さは1.8mmである。このシートは、基材シートとされ、表皮材と積層されて再利用される。」

これらの記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ポリプロピレンからなる基材シートに、融点約250℃のポリエチレンテレフタレートの繊維からなる不織布を表皮材として積層した積層体を熱成形する工程において発生する廃物を再生利用する方法であって、
廃物から表皮材を分別することなく裁断処理した細片に未使用のポリプロピレンペレットを混和し、この混和物を混練押出機に投入し、
加工温度が最高270℃となる条件で混練して、繊維樹脂が、廃物の基材シート部分のポリプロピレンと追加した未使用ポリプロピレンとの融合体中に20μm以下の大きさの相分離体状で分散したペレットを製造し、
このペレットを押出温度を最高210℃とし、成形温度170℃でシート状に押出成形し、得られた基材シートが表皮材と積層される
廃物を再生利用する方法。」

2.当審の拒絶の理由に引用された特公昭63-51088号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「第1図において、1、2は分割形式の金型であり、3は押出ヘツド4より押出されるパリスンである。」(4欄20?22行)
(2)「中空体の成形にあたつては、第1図に示すように、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性プラスチツクを押出機(図示せず)で溶融混練し、押出ヘツド4から溶融状のパリスン3を対向離間した金型1、2間に押出す。」(4欄43行?5欄3行)
(3)「この成形時において、金型2とパリスン3との間に位置する繊維シート7の一方の面は膨張するパリスン3に接触し、起毛17を有する他方の面はキヤビテイ2a,2bに接触し、パリスン3の膨張圧及び溶融状態にあるパリスン3の保有する熱(100℃?280℃)と粘着性によつて繊維シート7はパリスン3の表面に密に熱圧着して積層されるとともに、圧縮部1c、2cによつて繊維シート7はパリスン3とともに圧縮され、かつ同時に熱溶着して積層される」(5欄16?26行)
(4)「中空状構造物は、前記実施例として示したプラスチツク容器のほか・・・アームレスト、ヘツドレスト、ダクト等自動車の内装材、さらに各種ハウジング部材等である。」(6欄22?26行)
(5)「上記繊維シート層7a、7b、7cを形成する繊維シート7は・・・ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維・・・不織布や剪毛して表面が起毛した布地である。」(6欄32?41行)

3.当審の拒絶の理由に引用された特開昭55-109659号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「従来、たとえば車輌のドアの内側には、ABS樹脂等の合成樹脂からなる化粧板が装着されている。」(1頁左下欄下から5?3行)
(2)「また前記布地3としては、ナイロン系織物および同系不織布、ポリエステル系織物および同系不織布、アクリル系織物および同系不織布等の合成繊維を始め、毛織物、綿織物、皮革であつてもよく」(2頁左上欄9?13行)
(3)「前記樹脂成形品1の成形にあたつては、第4、5図に示すように可動型8の固定型5との当り面、いわゆるパーテイング面に、布地3をその表面をパーテイング面に向けて接着テープ12で取付け、この布地3取付後、可動型8を固定型5に向けて前進させて固定型5に合わせ強固な型締めを行なつた後、加熱筒9のノズル10を固定型5のスプールブツシユ6に密着させ、ノズル10からスプルー7内に加熱筒9内で加熱されて融解した樹脂材料を圧入する。これによつて融解した樹脂材料が金型5、8内に射出され布地3に機械的、化学的に成形結合する。」(2頁左下欄下から3行?同頁右下欄8行)

第4 対比
引用発明の「ポリプロピレン」、「基材シート」、「ポリエチレンテレフタレート」、「積層体」は、それぞれ、本願発明の「高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂あるいはポリスチレン樹脂、ABS樹脂、変性ポリフェニレン樹脂より選ばれる熱可塑性樹脂(A)」、「成形品」、「熱可塑性樹脂(A)と相溶性を有しないナイロンまたはポリエステルより構成される耐熱性の高い熱可塑性樹脂(B)」、「布貼り成形品」に相当する。
本願発明の「布貼り成形品の再処理方法」が、布貼り成形品の成形時に生じる捨てバリ部の再処理方法を含む(本願明細書【0006】参照。)ことを勘案すれば、引用発明の「積層体を熱成形する工程において発生する廃物」も、本願発明の「布貼り成形品」に相当し、引用発明の「積層体を熱成形する工程において発生する廃物を再生利用する方法」は、本願発明の「布貼り成形品の再処理方法」に相当する。
引用発明の「廃物から表皮材を分別することなく裁断処理した細片」は、本願発明の「熱可塑性樹脂(B)の繊維からなる不織布が貼着された成形品を細かく粉砕した粉砕物」に相当し、引用発明の「混練押出機」は、本願発明の「押出機」に相当する。
引用発明の「ペレットを製造」する工程に関し、引用発明が「未使用のポリプロピレンペレットを混和」している点は別として、引用発明の「加工温度が最高270℃となる条件で混練」は、本願発明の「繊維を構成する耐熱性の高い前記熱可塑性樹脂(B)の融点温度からそれより50℃高い温度の範囲の温度で溶融混練」に相当し、引用発明の、「繊維樹脂が、廃物の基材シート部分のポリプロピレンと追加した未使用ポリプロピレンとの融合体中に20μm以下の大きさの相分離体状で分散した」は、本願発明の「熱可塑性樹脂(B)が熱可塑性樹脂(A)の中にミクロ状に分散した」に相当し、引用発明の「ペレットを製造」する工程は、本願発明の「ブレンド樹脂として押出機から押し出して一旦粒状化」する工程に相当する。
更に、引用発明の「押出温度を最高210℃とし、成形温度170℃で」は、本願発明の「熱可塑性樹脂(B)の融点温度未満である熱可塑性樹脂(A)の成形温度で」および「熱可塑性樹脂(B)が未溶融の状態で」に相当し、引用発明の「未使用のポリプロピレンペレット」は本願発明の「バージン樹脂」に相当するから、引用発明の「ペレット」は、少なくとも、「再処理対象に由来する樹脂と、バージン樹脂あるいは塊状繊維を含まない粉砕物等の再生樹脂とをブレンドしたブレンド樹脂(C’)」である点で、本願発明の「ブレンド樹脂(C)」と共通し、引用発明の「シート状に押出成形し、得られた基材シートが表皮材と積層される」は、少なくとも「成形し、かつ、剛性を有する成形品の表面に不織布を一体に貼着させる」点で、本願発明の「成形することにより、剛性を有する成形品の表面に不織布を一体に貼着させる」と共通する。

よって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂あるいはポリスチレン樹脂、ABS樹脂、変性ポリフェニレン樹脂より選ばれる熱可塑性樹脂(A)からなる成形品の表面に、
熱可塑性樹脂(A)と相溶性を有しないナイロンまたはポリエステルより構成される耐熱性の高い熱可塑性樹脂(B)の繊維からなる不織布を貼着した布貼り成形品の再処理方法であって、
前記熱可塑性樹脂(B)の繊維からなる不織布が貼着された成形品を細かく粉砕した粉砕物を押出機に投入し、
繊維を構成する耐熱性の高い前記熱可塑性樹脂(B)の融点温度からそれより50℃高い温度の範囲の温度で溶融混練して、熱可塑性樹脂(B)が熱可塑性樹脂(A)の中にミクロ状に分散したブレンド樹脂として押出機から押し出して一旦粒状化し、
前記熱可塑性樹脂(B)の融点温度未満である熱可塑性樹脂(A)の成形温度で、再処理対象に由来する樹脂と、バージン樹脂あるいは塊状繊維を含まない粉砕物等の再生樹脂とをブレンドしたブレンド樹脂(C’)を熱可塑性樹脂(B)が未溶融の状態で成形し、かつ、剛性を有する成形品の表面に不織布を一体に貼着させる
布貼り成形品の再処理方法」

[相違点1]
本願発明が、「押出機から押し出して一旦粒状化してからバージン樹脂あるいは塊状繊維を含まない粉砕物等の再生樹脂にブレンドし、前記粒状化してからバージン樹脂あるいは塊状繊維を含まない粉砕物等の再生樹脂にブレンドしたブレンド樹脂(C)」とし、「ブレンド樹脂(C)」を成形するのに対し、引用発明が、「細片に未使用のポリプロピレンペレットを混和し、この混和物を混練押出機に投入」してペレットを製造し、「ペレット」を成形する点。

[相違点2]
「剛性を有する成形品の表面に不織布を一体に貼着させる」工程に関し、本願発明が、「熱可塑性樹脂(A)と相溶性を有しない前記熱可塑性樹脂(B)の繊維からなる不織布を分割金型に配置するとともに」ブレンド樹脂(C)を「成形することにより、剛性を有する成形品の表面に不織布を一体に貼着させる」のに対し、引用発明が、ペレットを「シート状に押出成形し、得られた基材シートが表皮材と積層される」点。

第5 判断
1.相違点1について
相違点1は、要するに、未使用のポリプロピレンペレット、すなわち、バージン樹脂を、押出機から押し出して粒状化してからブレンドするか、押出機に投入する前にブレンドするかの相違に帰着する。
そして、引用発明の「ペレット」は、押出機に投入する前にバージン樹脂をブレンドして製造されるものであり、本願発明の「ブレンド樹脂(C)」は、押出機から押し出して粒状化してからバージン樹脂をブレンドしたものであるから、バージン樹脂をブレンドするタイミングについて相違するものの、いずれも、再生処理にあたって成形するための成形材料とされるものである。そして、成形材料との観点から見れば、「再処理対象に由来する樹脂と、バージン樹脂あるいは塊状繊維を含まない粉砕物等の再生樹脂とをブレンドしたブレンド樹脂(C’)」である点で共通しており、バージン樹脂をどのようなタイミングでブレンドするかにより、成形材料として格別異なるものではない。
さらに、引用文献1の段落【0019】の記載によれば、引用発明において、細片に未使用のポリプロピレンペレットを混和することに換えて、細片のみから得られたペレットに未使用のポリプロピレンペレットを併せてシート製造のための押出機に供給することも示唆されている。
してみれば、引用発明において、「細片に未使用のポリプロピレンペレットを混和し、この混和物を混練押出機に投入」してペレットを製造することに換えて、細片を押出機に投入してペレットを製造し、得られたペレットに未使用のポリプロピレンペレットを併せて成形に供するように設計変更することにより、相違点1に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものである。

2.相違点2について
上記「第3」の「2.」および「3.」のとおり、引用文献2、3には、「ナイロン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂の繊維からなる不織布を分割金型に配置するとともに、樹脂を成形することにより、剛性を有する成形品の表面に不織布を一体に貼着させる」技術事項が開示されている。この際、繊維樹脂が溶融しない温度で成形すべきことは当然である。
そして、引用発明の押出成形して得られる基材シートは、不織布を表皮材として積層し、さらに所望形状に熱成形することが予定されているものであること(引用文献1【0016】参照。)、および、引用文献1?3は、いずれも自動車の内装材への適用を開示していること、に照らせば、引用発明の「シート状に押出成形し、得られた基材シートが表皮材と積層される」との工程に換えて、引用文献2、3に示される上記技術事項を採用することにより、相違点2に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものである。

3.効果について
本願発明の効果も、引用文献1?3に記載された発明から予測できる範囲内のものであって格別顕著なものとはいえない。
なお、請求人は、本願発明が、相違点1に係る構成を備えることにより、各種成形法を行う成形機に投入するときに、安定した投入を行うことができ、粒状化されたブレンド樹脂は、バージン樹脂あるいは塊状繊維を含まない粉砕物等の再生樹脂の嵩比重の面で類似するので、成形機内に投入される際にばらつきが生じることがないという効果を得ることができる旨主張するが、引用発明のペレットであっても同様の効果が期待できるから、上記請求人の主張は採用できない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、引用文献1?3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-17 
結審通知日 2011-08-19 
審決日 2011-08-30 
出願番号 特願平9-369501
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 細井 龍史  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 佐野 健治
紀本 孝
発明の名称 布貼り成形品の再処理方法  

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