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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23K |
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管理番号 | 1245218 |
審判番号 | 不服2011-197 |
総通号数 | 144 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-01-05 |
確定日 | 2011-10-14 |
事件の表示 | 特願2000-344164「リフロー装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月24日出願公開、特開2001-198671〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 この出願は、平成12年11月10日(優先権主張平成11年11月12日)の特許出願であって、同22年9月29日付で拒絶査定され、同23年1月5日に同査定の取消を求めて本件審判が請求されたものである。 本件出願の請求項1ないし8に係る発明は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、平成22年4月30日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「炉体と、 この炉体内に設けられワークを載置する載置手段と、 この載置手段に対向して設けられワークを輻射熱で熱する輻射パネルと、 この輻射パネルを加熱する加熱手段と、 この加熱手段および前記輻射パネルを経て前記載置手段のワークに向けて送風する送風手段とを具備し、 前記輻射パネルは、前記送風手段からの風を透過させる透孔を有し、 前記送風手段は、この送風手段により送風され前記加熱手段により加熱され前記輻射パネルの透孔を経た熱風が、ワーク表面の境界空気層を剥離しながらワークに達してワークを加熱する圧力に保たれるように前記輻射パネルの上流側での圧力が設定された ことを特徴とするリフロー装置。」 2 刊行物記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用されたこの出願前に頒布された特開平4-81269号公報(以下「刊行物」という。)には、以下のとおり記載されている。 (1) 5ページ左上欄5-18行 「第1図は本発明のリフロー炉の正面中央断面図である。なお、第1図は炉入口部に従来の赤外線ヒータ4を設けた例を示すが、この赤外線ヒータ4は、熱風吹出し型でなくてもよくまたその設置は必ずしも必要としない。 リフロー炉1は予備加熱ゾーンP、本加熱ゾーンRおよび冷却ゾーンCから成り、リフロー炉内には図示しないプリント基板を矢印A方向に搬送するコンベア2が走行している。本加熱ゾーンRの上下部には一組の面吹出し型ヒータ3、3が長手方向に互いにわずかにずらして設置されており、その間に加熱ガス上向き通路領域(X)、加熱ガス衡突領域(Y)および加熱ガス下向き通路領域(Z)が形成されている。」 (2) 6ページ左上欄3行-7ページ左上欄2行 「第2図は、本発明において利用できる面吹出し型ヒータ3の好適態様を示す略式斜視断面図である。 本発明の面吹出し型ヒー夕10は箱体12の一面に設置された金属の多孔質板13から構成されている。該多孔質板13は気体を容易に通過させるものであれば特定のものに制限されないが、例示すれば、金属を電鋳法で成形して得た三次元メッシュ体(商品名:セルメット)や金属粉を焼結して得た多孔質焼結体等である。多孔質板13の表面にはセラミックス被覆層14が被覆されている。 多孔質板13へのセラミックス被覆層14は溶射によって行うと多孔質板の気孔を詰まらせることなく、多孔質板に強固に被覆させることができる。セラミックスとしてはSi、Ti、Zr、Al等の酸化物系のものがある。多孔質板13の上方には電熱ヒータなどの加熱要素15が蛇行して取付けられている。箱体12の上面、すなわち多孔質板13の設置面と反対側となるところには細長の開口16が穿設されており、該開口16の上流にはファン17が設置されている。ここに設置するファンとしては多数の細長の羽根が円筒状となったクロスファンが適してる。開口16に一辺からファン17に沿ってダクト18が設置されており、該ダクトは多孔質板13を設置した面と隣接したところに開口しており、気体吸入口19を形成している。多孔質板13の面積は気体吸入口19の面積の2倍以上となっている。符号20はファン17を回動させるモータである。 ここで、上記構造を有する本発明の面吹出し型ヒータの加熱形態について説明する。 加熱ヒータ要素である電熱ヒータ15に通電すると、電熱ヒータ15は箱体内を加熱するとともに、多孔質板13を加熱し、加熱された多孔質板13がその表面のセラミックス被覆層14を加熱する。そのため多孔質板13の表面からはセラミックス特有の波長の遠赤外線が放射される。そして、モータ20でファン17を回動させると外部にあった気体は、気体吸入口19から吹い込まれ、箱体12の開口16から箱体内に流入していく。箱体内に流入した気体は電熱ヒータ15、多孔質板13等で熱せられ、多孔質板13の全面から熱風となって吹き出される。 従って、本発明にかかる上述の面吹出し型ヒータは、熱風を吹き出すとともに、遠赤外線を放射して被加熱物を両者で加熱するものであり、高密度実装プリント基板のように電子部品間が狭く、熱容量が各部で異なるものには、それらの相乗作用で均一加熱がより一層効果的に行われる。 一般にクリームはんだは加熱されると、フラックスフュームが発生し、それがリフロー炉のいたるところに付着して取扱時に作業者の手や衣服に付着したり、はんだ付け時のプリント基板に付着して悪影響を与えるものであるが、本発明の面吹出し型ヒータは、金属の多孔質板とその表面に被覆したセラミックスに触媒作用があるため、ここに通過するフラックスフュームは大部分が浄化されてしまうものである。 ここで、本発明の好適態様によれば、上記面吹出し型ヒータを用いることにより遠赤外線が放射され、加熱効率は一層改善される。すなわち、最初に下部の面吹出し型ヒータの多孔質板から吹き出す熱風と放射される遠赤外線でプリント基板の下面が加熱され、さらに少し進むと、上部の面吹出し型ヒータの多孔質板から吹き出す熱風と放射される遠赤外線でプリント基板の上面が加熱され、その間は両側から同時に熱風と遠赤外線とで加熱される。つまり、多孔質板の加熱ガス吹き出し面積が吸入口の面積の2倍以上となっているため、上下部の多孔質板は重なる領域ができ、該領域内ではプリント基板は上下面が熱風と遠赤外線で同時に加熱されることになる。そして、この上下部の多孔質板の重なる域を出ると、プリント基板は上部の多孔質板からの加熱を受ける。従って、上下部一対の面吹出し型ヒータ間を通過するプリント基板は、下面・上下面・上面順で連続して順次加熱される。 このようにして予備加熱ゾーンPでは、プリント基板は約150℃に熱せられ本加熱の準備に入る。そして、同様の加熱が本加熱ゾーンRでも行われ、プリント基板は約230℃に熱せられてクリームはんだが溶融する。」 また、上記摘記事項(2)中の「該多孔質板13は気体を容易に通過させるもの」及び「そして、モータ20でファン17を回動させると外部にあった気体は、気体吸入口19から吹い込まれ、箱体12の開口16から箱体内に流入していく。箱体内に流入した気体は電熱ヒータ15、多孔質板13等で熱せられ、多孔質板13の全面から熱風となって吹き出される。従って、本発明にかかる上述の面吹出し型ヒータは、熱風を吹き出すとともに、遠赤外線を放射して被加熱物を両者で加熱するものであり、高密度実装プリント基板のように電子部品間が狭く、熱容量か各部で異なるものには、それらの相乗作用で均一加熱がよりー層効果的に行われる。」より、多孔質板(13)は、ファン(17)からの風を容易に透過させる透孔を有し、このファン(17)により送風され電熱ヒータ(15)により加熱され多孔質板(13)の透孔を経た熱風が、ワークを加熱することは、明らかである。 以上のとおりであるので、刊行物には、次の事項が記載されていると認める。 「上下部に設置された一組の面吹出し型ヒータ(10)と、 この一組の面吹出し型ヒータ(10)内に設けられプリント基板を搬送するコンベア(2)と、 このコンベア(2)に対向して設けられプリント基板を遠赤外線で加熱する、表面にセラミックス被覆層(14)が被覆された多孔質板(13)と、 この多孔質板(13)を加熱する電熱ヒータ(15)と、 この電熱ヒータ(15)および前記多孔質板(13)を経て前記コンベア(2)のプリント基板に向けて送風するファン(17)とを具備し、 前記多孔質板(13)は、前記ファン(17)からの風を容易に透過させる透孔を有し、 このファン(17)により送風され前記電熱ヒータ(15)により加熱され前記多孔質板(13)の透孔を経た熱風が、ワークを加熱する リフロー炉。」(以下「刊行物記載の発明」という。) 3 対比 本願発明と刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「上下部に設置された一組の面吹出し型ヒータ」は、本願発明の「炉体」に相当し、以下同様に、「プリント基板を搬送するコンベア」は「ワークを載置する載置手段」に、「遠赤外線で加熱する表面にセラミックス被覆層が被覆された多孔質板」は「輻射熱で熱する輻射パネル」に、「電熱ヒータ」は「加熱手段」に、「ファン」は「送風手段」に、「リフロー炉」は「リフロー装置」にそれぞれ相当しているので、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 (1) 一致点 「炉体と、 この炉体内に設けられワークを載置する載置手段と、 この載置手段に対向して設けられワークを輻射熱で熱する輻射パネルと、 この輻射パネルを加熱する加熱手段と、 この加熱手段および前記輻射パネルを経て前記載置手段のワークに向けて送風する送風手段とを具備し、 前記輻射パネルは、前記送風手段からの風を透過させる透孔を有するリフロー装置。」である点。 (2) 相違点 送風手段が、本願発明では、この送風手段により送風され加熱手段により加熱され輻射パネルの透孔を経た熱風が、ワーク表面の境界空気層を剥離しながらワークに達してワークを加熱する圧力に保たれるように前記輻射パネルの上流側での圧力が設定されているのに対し、刊行物記載の発明では、送風手段の圧力がそのように設定されているのか明らかではない点。 4 判断 上記相違点について検討すると、上記2のとおり、刊行物記載の発明は、ファンにより送風され電熱ヒータにより加熱され多孔質板の透孔から吹き出す熱風でプリント基板を加熱するもの、すなわち、送風手段により送風され加熱手段により加熱され輻射パネルの透孔から吹き出す熱風でワークを加熱するものであり、また、多孔質板の透孔は風を容易に透過させるものである。 このように、透孔から吹き出す熱風でワークを加熱するものにおいて、熱風のもつ熱が十分にワークに伝達されるように熱風を吹き出すことは、設計上、当然考慮されるべき事項である。一方、被加熱体への熱伝達を向上させる目的で、被加熱体表面に乱流を発生させ境界層を破壊または剥離することは、熱交換機の分野において従来周知の技術であり、乱流発生のためには熱媒体たる流体の流速を増加することと、流速増加のためには流体の供給圧力を増加すること、は普通に知られた方法である。本願発明において、熱風をプリント基板に吹き付けてこれを加熱することは、熱交換機に該当するものであり、吹き出す熱風の流量、速度、圧力等は必要に応じて適宜決定し得る設計的事項にすぎない。 したがって、刊行物記載の発明において、送風手段が、輻射パネルの透孔を経た熱風が、ワーク表面の境界空気層を剥離しながらワークに達してワークを加熱する圧力に保たれるように、輻射パネルの上流側での圧力を設定することは、当業者が容易に想到することができたものである。 また、本願発明の奏する作用効果は、刊行物記載の発明より当業者が予測できる程度のものであって、格別のものではない。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。 したがって、この出願の請求項2ないし8に係る発明について判断するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 . |
審理終結日 | 2011-08-12 |
結審通知日 | 2011-08-17 |
審決日 | 2011-08-30 |
出願番号 | 特願2000-344164(P2000-344164) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B23K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青木 正博 |
特許庁審判長 |
豊原 邦雄 |
特許庁審判官 |
長屋 陽二郎 千葉 成就 |
発明の名称 | リフロー装置 |
代理人 | 山田 哲也 |
代理人 | 樺澤 襄 |
代理人 | 樺澤 聡 |