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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B
管理番号 1245292
審判番号 不服2010-5989  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-18 
確定日 2011-10-20 
事件の表示 特願2003-358260「塗布組成物および有機EL素子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月12日出願公開、特開2005-123083〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年10月17日の出願であって、平成20年10月3日付けで手続補正がなされ、平成21年9月16日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、同年11月25日付けで手続補正がなされたが、同年12月11日付けで当該補正に対する補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成22年3月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成23年6月9日付けで、平成22年3月18日付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶理由通知がなされた。
これに対し、同年7月29日(受付日)に、手続補正書及び意見書が提出された。

第2 本願発明
1.補正後の発明
平成23年7月29日提出の手続補正により、本願の特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものに補正された。
「所定の基材の表面のうち隔壁により分離された複数の素子空間に対して選択的に、前記素子空間の各々に対応する複数のノズルから流し込まれて塗布される、正孔輸送材料を含む塗布組成物であって、
正孔輸送材料と、水と、エタノールとを含み、前記正孔輸送材料はポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸との混合物であってその含有量が0.95ないし1.05wt%、前記エタノールの含有量が5wt%であってその残余が水であること
を特徴とする塗布組成物。」

2.先願発明
(1)本願の出願日前に出願され、出願後に出願公開(特開2005-93317号公報)された特許出願である、特願2003-327461号(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【0001】
本発明は、有機薄膜のエレクトロルミネッセンス現象を利用した有機薄膜エレクトロルミネッセンス素子、特に有機発光層が高分子蛍光体材料からなる高分子エレクトロルミネッセンス素子(以下、高分子EL素子とする)に関するものである。」
(1b)「【0007】
本発明の課題は、大面積の高分子EL素子を低コストで作成することであり、特に基板表面に凹凸があってもムラになったり発光不良部が発生しない高分子EL素子およびその製造方法を提供することにある。」
(1c)「【0008】
本発明は上記問題点を鑑み成されたものである。スリットコーティング法を用いた場合には、大面積に均一膜の形成が可能であり、高分子発光媒体層を形成する高分子EL素子用塗布液の利用効率もよいことから、この方法によりバックライト、照明等の面発光型の高分子EL素子やディスプレイの作製が可能である。」
(1d)「【0024】
高分子EL素子においては0.1μmという非常に薄い均一膜を形成しなければならないので、そのような薄膜塗工をするためにスリットコータの溶液吐出部の幅は非常に狭くしなければならない。その結果、溶剤の選択によっては発光材料が析出し吐出部で塗布液が詰まり、塗布液が均一に吐出されないために均一膜が形成できない、さらには高分子EL材料のカスが膜面に混入してしまう、といった問題がある。また、吐出をスムーズにしてこの問題を解決しようと塗布液の粘度を下げると、塗布後の膜にムラができてしまうことになる。従って高分子発光媒体層を形成する高分子EL素子用塗布液の蒸気圧や固形分量、粘度を調整することが好ましい。」
(1e)「【0028】
本発明において、高分子発光媒体層4の少なくとも1層をスリットコート法により形成するときに用いる高分子EL用塗布液の溶剤としては、下記の条件を満たせば何を用いてもよい。つまり、25℃において蒸気圧が25mmHg以下の溶剤、例えば、水、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、安息香酸メチル、安息香酸エチル等から選択される溶剤を、合わせて30%以上含めば、これらの単一溶剤(すなわち100%)でも、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル等との混合溶剤でもよい。これらの中でも、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、テトラリンを100%で、あるいは他の溶剤と混合して用いることがより好ましい。
【0029】
前記の単一溶剤あるいは混合溶剤を用いて、正孔輸送材料あるいは高分子蛍光体材料等の発光媒体材料の固形分量が0.05?2wt%になるよう塗布液を調整し、さらにはその塗布液の粘度が25℃において1?10mPa・sの範囲になることが好ましい。」
(1f)「【0030】
上述の溶剤を用いて、上記の割合、粘度になるように調製した高分子EL素子用塗布液は、スリットコーティング法における塗布に用い、均一な薄膜を形成するのに最適である。上述の範囲でない溶剤を用いた場合は塗布液の粘度が適切であっても、溶剤の蒸発が急速に進行しすぎるため発光媒体材料のかすが吐出口に詰まったり、塗布後十分に均一になる前に塗布膜の乾燥が完了してしまうため膜厚が不均一になってしまう。」
(1g)「【0039】
本発明の高分子EL素子用塗布液を用い、隔壁の設けられた基板に高分子発光媒体層をスリットコート法で作成した高分子EL素子の製造の一例を以下図面1?4に従って説明する。
【0040】
透光性基板1である250mm四方のガラス基板上に、あらかじめ透明導電層2としてITO膜の形成されたものを用いた(図2(a))。
【0041】
これにレジストを塗布、プリベーク(70℃)後、フォトマスクを介した露光を行い、現像して未露光部分を除去し、最後にポストベーク(200℃)を行って隔壁3を形成した(図2(b))。形成された隔壁3は高さ10μm、幅100μm、ピッチは500μmであった。
【0042】
これに下記化学式(1)で表されるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸(以下PEDOT/PSSという)の水/イソプロピルアルコール(90/10)の1wt%分散溶液を高分子EL素子用塗布液(a)とし、スリット幅50μmのスリットコータを用いて厚み70nmの層を形成して正孔輸送層4aとした(図2(c))。
【0043】
【化1】



これらの記載事項を含む先願明細書等全体の記載並びに当業者の技術常識を総合的に勘案すれば、先願明細書等には、以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。
「隔壁の設けられた基板に高分子発光媒体層をスリットコート法により形成するときに用いる高分子EL用塗布液であって、
溶剤として、水を30%以上含むエタノールとの混合溶剤を含み、
ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸(以下PEDOT/PSSという)が混合溶剤の0.05?2wt%分散溶液を正孔輸送層とした高分子EL素子用塗布液。」

3.対比
本願発明と先願発明とを比較すると、先願発明の「隔壁の設けられた基板」、「高分子EL用塗布液」及び「正孔輸送層」は、それぞれ、本願発明の「所定の基材」、「塗布組成物」及び「正孔輸送材料」に相当する。
また、先願発明において「溶剤として、水を30%以上含むエタノールとの混合溶剤を含」むことと、本願発明の「水と、エタノールとを含み、前記エタノールの含有量が5wt%であってその残余が水であること」とは、「水と、エタノールとを含み、前記エタノールの含有量が5wt%であってその残余が水であること」で一致している。
同様に、先願発明の「ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸・・・の・・・分散溶液」は、補正発明の「ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸との混合物」に相当するから、先願発明において「ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸(以下PEDOT/PSSという)が混合溶剤の0.05?2wt%分散溶液を正孔輸送層とした」ことと、補正発明において「正孔輸送材料はポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸との混合物であって、その含有量が0.95ないし1.05wt%であ」ることとは、「正孔輸送材料はポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸との混合物であって、その含有量が0.95ないし1.05wt%であ」ることで一致する。
したがって両者は、
「正孔輸送材料と、水と、エタノールとを含み、前記正孔輸送材料はポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸との混合物であってその含有量が0.95ないし1.05wt%、前記エタノールの含有量が5wt%であってその残余が水である塗布組成物。」
の点で一致し、以下の点で、文言上、相違する。

(相違点)
本願発明は、「複数の素子空間に対して選択的に、前記素子空間の各々に対応する複数のノズルから流し込まれて塗布される」(以下「特定用途」という。)塗布組成物であるのに対して、先願発明は、「スリットコート法により形成するときに用いる」(以下「先願用途」という。)塗布組成物である点。

4.判断
上記相違点について検討する。
本願発明が、「もの」の発明であることから、上記特定用途を示す記載は、本願発明に係る塗布組成物の特性を、用途に関する記載を用いて表現したものと認められる。
その特性とは、本願明細書の段落【0007】、【0014】、【0022】等の記載や、上記意見書(上記「第1 手続の経緯」参照)の「これらの発明では、基材表面に対する塗布組成物の接触角を小さく、例えば35°以下(ガラス基板に対しては10°以下)とすることができ、基材表面のうち素子空間に選択的に流し込んで塗布することで正孔輸送層を形成するのに好適な塗布組成物とすることができます。」等の記載を参酌すれば、接触角、すなわち塗布組成物と基材表面との親和性に係るものであることがわかる。
そして、本願発明は、「正孔輸送材料と、水と、エタノールとを含み、前記正孔輸送材料はポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸との混合物であってその含有量が0.95ないし1.05wt%、前記エタノールの含有量が5wt%であってその残余が水である」(以下「特定構成」という。)という具体的構成によって、その特性を実現したものである。
一方、先願発明に係る塗布組成物は、上記先願用途に用いるのに適した特性を示すが、その特性は、上記摘記事項(1d)や(1f)からわかるとおり、適度な粘度や溶剤の蒸発速度に係るものである。
そして、先願発明は、そのような特性を実現するために「溶剤として、水を30%以上含むエタノールとの混合溶剤を含み、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸(以下PEDOT/PSSという)が混合溶剤の0.05?2wt%分散溶液を正孔輸送層とした」という構成を有するものであるところ、その構成は、上記「3.対比」で検討したとおり、本願発明の特定構成と同一の構成を有するものである。
してみると、本願発明の有する(上記特定構成によって実現される)特性と先願発明のそれとは、文言上は異なるものの、同一のものであるということができる。
すなわち、上記相違点は、実質的には相違点ではない。

5.小括
したがって、本願発明は、先願発明と同一であり、しかも、補正発明の発明者が先願発明の発明者と同一ではなく、また、本願出願時点において、本願出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

第3 まとめ
以上のとおりであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-17 
結審通知日 2011-08-23 
審決日 2011-09-05 
出願番号 特願2003-358260(P2003-358260)
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小西 隆  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 伊藤 幸仙
森林 克郎
発明の名称 塗布組成物および有機EL素子の製造方法  
代理人 梁瀬 右司  
代理人 振角 正一  
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