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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1245522
審判番号 不服2007-35298  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-28 
確定日 2011-10-21 
事件の表示 特願2004-534213号「螺旋状相互係止噛み合い案内前進構造」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月18日国際公開、WO2004/021900、平成18年 4月 6日国内公表、特表2006-511252号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.出願の経緯
本願は、2003(平成15)年4月4日(パリ条約による優先権主張 2002年9月6日(US)アメリカ合衆国)の国際出願であって、平成19年2月7日付け拒絶理由通知に対し、平成19年8月9日に特許請求の範囲についての手続補正がなされたが、平成19年9月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年1月25日付けで特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

II.平成20年1月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の結論]
平成20年1月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「間隔が隔てられた一対のアームを持つ開放したレシーバー部材及び前記レシーバー部材を閉鎖するための回転軸線を持つ閉鎖部材を含む医療用インプラントにおいて、
a)螺旋状をなした噛み合うことができ且つ半径方向に相互係止できる第1及び第2の相互係止形態を含み、前記第1及び第2の相互係止形態の各々は、非線形のスラスト面を有し、前記非線形のスラスト面の一方は、他方の相互係止形態の非線形のスラスト面と噛み合い、前記第1相互係止形態は前記閉鎖部材の外面に取り付けられており、前記第1相互係止形態は、前記閉鎖部材から離れた場所において、前記第1相互係止形態が前記閉鎖部材に取り付けられた場所よりも、大きな断面積を有し、
b)前記第2相互係止形態は前記レシーバー部材の前記一対のアームの内面に取り付けられ、前記第2相互係止形態は、前記間隔が隔てられたアームから離れた場所において、前記第2相互係止形態が前記アームに取り付けられた場所よりも、大きな断面積を有し、前記第1及び第2の相互係止形態は前記閉鎖部材を前記レシーバー部材内に組み立てるときに回転させることができ、前記第1及び第2の相互係止形態は、前記閉鎖部材の回転時に前記閉鎖部材を前記レシーバー部材内に案内し且つ前進し、
c)前記第1及び第2の相互係止形態は、前記軸線を通る平面内にその実質的長さに沿って均等な断面を各々有し、
d)前記相互係止形態の前記非線形のスラスト面の各々は、グリップ面を有し、前記グリップ面は、前記相互係止形態が接合されたときに半径方向に互いに重なって、前記アームを前記閉鎖部材に対して半径方向に係止することで、前記相互係止形態は、前記インプラントの組み立て中及び組み立てに続く使用中に前記アームが半径方向に広がらないように作動的に抵抗する、インプラント。」(下線部は補正箇所を示す)

2.補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1及び第2の相互係止形態の各々」に「非線形のスラスト面を有し、前記非線形のスラスト面の一方は、他方の相互係止形態の非線形のスラスト面と噛み合い」との限定、「第1相互係止形態」に「第1相互係止形態は、前記閉鎖部材から離れた場所において、前記第1相互係止形態が前記閉鎖部材に取り付けられた場所よりも、大きな断面積を有し、」との限定、「第2相互係止形態」に「第2相互係止形態は、前記間隔が隔てられたアームから離れた場所において、前記第2相互係止形態が前記アームに取り付けられた場所よりも、大きな断面積を有し、」との限定、及び「相互係止形態」に「相互係止形態の前記非線形のスラスト面の各々は、グリップ面を有し、前記グリップ面は、前記相互係止形態が接合されたときに半径方向に互いに重なって、前記アームを前記閉鎖部材に対して半径方向に係止することで、」との限定を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、
本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)、以下に検討する。

3-1.引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された、特開2002?52030号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

a.「【請求項1】 椎骨の骨塊にネジ留め可能なネジ部分と、実質的にU形状でU脚(6,7)によって限定された補強棒(5)嵌め込み用凹所(4)を有した頭部(3)と、留めネジ(9)を用いて凹所(4)に補強棒(5)を固定するためのU脚(6,7)での雌ネジ部とを有する、背骨に沿って補強棒(5)を固定するための茎ネジ(1)において、
上記雌ネジ部が、留めネジ(9)を引っ張る際にぶつけられるそのネジ面がマイナス角を有するように非対称の鋸歯ネジ部(8,10)であることを特徴とする茎ネジ。…」(【特許請求の範囲】)
b.「【発明の属する技術分野】本発明は、背骨に沿って補強棒を固定するための茎ネジ(Pedikelschraube,固定のために脊柱にねじ止めされるネジ)に関するものである。当該ネジは、椎骨の骨塊(マス)にねじ留め可能なネジ部分と、実質的にU形状でU脚によって限定された補強棒嵌め込み用凹所を有した頭部と、上記凹所での補強棒の固定のためのU脚での雌ネジ部とを有する。」(【0001】)
c.「【発明が解決しようとする課題】このことに由来して、本発明の根拠をなす課題は、ネジ案内スリーブやそれ自体公知の外側リング装置を必要とすることなしに留めネジの引っ張りの際に開き広がりを回避するように茎ネジを作り上げることである。」(【0004】)
d.「【課題を解決するための手段】この課題は本発明によれば、頭部の雌ネジ部が鋸歯ネジとして、留めネジを引っ張る際に当接部として用いられるそのネジ面がマイナスの角度を有するように形成されていることによって解決される。
言い換えれば、このネジ面は引っ込んでいる。これは、留めネジを引っ張る茎ネジの頭部が押し砕かれず、頭部のU脚を内側へ圧縮するパワーモーメントがこれに作用することを結果として伴う。このようにして最適な固定乃至拘束が最も簡単な構造形態で達成される。」(【0005】?【0006】)
e.「図面に描かれた茎ネジ1は、不図示の雄ネジ部を有したシャフト2並びに補強棒5の収容のためのU形状の中央凹所4を有した頭部3を有する。上記凹所は、その内側で雌ネジ部8を担持するU脚6,7によって画定される。
上記凹所4に補強棒5を動かないように固定するために、グラブネジとして形成された留めネジ9が用いられる。当該ネジは頭部の雌ネジ部8に対応する雄ネジ部10を有する。」(【0012】?【0013】)
f.「すでに言及したように、留めネジ9を引っ張る際の問題は、これまで形作られた茎ネジではネジ頭部3のU脚6,7が外方へ押圧され、それによって保持力が低下することになるか、あるいは上に被せられるべきスリーブ等を備えることが必要となるということにある。
本発明にしたがって備えられたネジ部8,10はこの問題を回避する。図3に、本発明に従い備えられた鋸歯ネジ部10が、図2での右側に描かれたネジ部分の拡大抜粋として具体的に説明されている。これから、留めネジ9を引っ張る際に当接・負荷除去面として用いられるそのネジ面11が半径方向12に対して角度βだけ引っ込んでいることが認識される。図3において、面11に垂直に作用する力成分Fnormal、茎ネジの軸線方向に作用する力成分Faxial及び半径方向内方への結果として生じる力成分Fradial、すなわち要するに従来技術に従う茎ネジとは異なり上記留めネジを半径方向内方へ圧縮する力成分が書き入れられる。半径方向力成分Fradialに対してFradial=Faxial・tanβが当てはまる。」(【0014】?【0015】)
g.図1?2の図示内容及び上記摘記事項a、d、eから、引用例1には、間隔を隔てる一対のU脚6,7を持つ開放した頭部3及び頭部3を留めネジ9により閉鎖し、閉鎖するための回転軸線を持つ留めネジ9を含んだ、椎骨にネジ留めする茎ネジ1が記載されている。同じく、茎ネジ1には、留めネジ9の雄ネジ部10とU脚部の雌ネジ部8とが螺旋状をなして噛み合うことができ、半径方向に相互係止できる相互係止形態を含んでいることが記載されている。
h.図1?2の図示内容及び上記摘記事項a、d、eから、引用例1には、雄ネジ部10は、留めネジ9の外面に取り付けられており、雌ネジ部8は一対のU脚6,7の内面に取り付けられており、それぞれ線形のスラスト面を有しており、スラスト面の一方は他方のスラスト面と噛み合っていることが記載されている。
i.図1?2の図示内容及び上記摘記事項a、d、eから、雄ネジ部10と雌ネジ部8とは、相互に係止できる、相互係止形態をなし、軸線を通る平面内にその実質的長さに沿って均等な断面を各々有していることが記載されているといえる。
j.図1?2の図示内容及び上記摘記事項a、d、eから、雄ネジ部10と雌ネジ部8との相互係止形態は、留めネジ9をU脚6、7内に組み立てるときに回転させることができ、また、留めネジ9の回転時に留めネジ9をU脚6、7内に案内し且つ前進させることができるといえる。
k.図1?3の図示内容及び上記摘記事項a、c、d、e、fから、引用例1の雄ネジ部10、雌ネジ部8は、ネジ面11が半径方向12に対して角度βだけ引っ込んでいる、マイナスの角度を有する鋸歯ネジで形成されており、留めネジを半径方向内方へ圧縮する力成分が働くものといえる。それによって、U脚を留めネジに対して半径方向に係止することで、雄ネジ部、雌ネジ部の相互係止形態は、茎ネジの組み立て中及び組み立て中に続く使用中にU脚が半径方向に広がらないように作動的に抵抗する茎ネジであるといえる。

上記記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「間隔を隔てる一対のU脚6,7を持つ開放した頭部3及び頭部3を閉鎖するための回転軸線を持つ留めネジ9を含む椎骨にネジ留めする茎ネジ1において、
ア)螺旋状をなして噛み合うことができ且つ半径方向に相互係止できる雄ネジ部10及び雌ネジ部8を含み、雄ネジ部10及び雌ネジ部8の各々は、線形のスラスト面を有し、線形のスラスト面の一方は、他方のネジ部の線形のスラスト面と噛み合い、雄ネジ部10は留めネジ9の外面に取り付けられており、
イ)雌ネジ部8は頭部3の一対のU脚6、7の内面に取り付けられ、雄ネジ部10、雌ネジ部8の相互係止形態は留めネジ9をU脚6、7内に組み立てるときに回転させることができ、雄ネジ部10、雌ネジ部8の相互係止形態は、留めネジ9の回転時に留めネジ9をU脚6、7内に案内し且つ前進し、
ウ)雄ネジ部10及び雌ネジ部8の相互係止形態は、軸線を通る平面内にその実質的長さに沿って均等な断面を各々有し、
エ)雄ネジ部10及び雌ネジ部8の相互係止形態の線形のスラスト面の各々は、U脚6、7を留めネジ9に対して半径方向に係止することで、相互係止形態は、茎ネジ1の組み立て中及び組み立てに続く使用中にU脚6、7が半径方向に広がらないように作動的に抵抗する、茎ネジ1。」

3-2.引用例2
本願の優先権主張日前に頒布された、ドイツ実用新案第29810798号明細書(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

l.「Die erfindungsgemaesse Osteosynthesevorrichtung besitzt den
wesentlichen Vorteil, dass der Stuetzstab nicht mittels
einer Hutmutter sondern mittels einer Madenschraube im
Gabelkopf festgehalten wird. Die Madenschraube besitzt ein
Aussengewinde und wird in ein Innengewinde des Gabelkopfes
eingeschraubt und drueckt mit ihrem eingeschraubten Ende auf
den Stuetzstab und haelt diesen am Nutgrund fest. Um zu
vermeiden, dass beim Einschrauben und Festziehen der
Madenschraube im Gabelkopf die beiden Schenkel des
Gabelkopfes aufgebogen werden weist das Innengewinde dieser
Schenkel die Form eines Tannenbaumes auf, wobei die dem
Nutgrund zugewandte Flanke des Gewindes von der Achse aus
in radialer Richtung gesehen ansteigt. Die abzustuetzenden
Kraefte, die von der Madenschraube auf den Gabelkopf
uebertragen werden, greifen an dieser in Richtung des
Nutgrundes weisenden Flanke an. Da diese Flanke jedoch nach
aussen ansteigt wird der Gabelkopf nicht nach aussen
aufgebogen sondern die beiden Schenkel werden von der
Madenschraube nach Art einer Schwalbenschwanzverbindung
gehalten und eher nach innen gezogen.
Hierdurch wird der wesentliche Vorteil geschaffen, dass
ohne die Verwendung einer Hutmutter oder eines anderen, die
beiden Schenkel des Gabelkopfes umgreifenden Elements, die
Schenkel selbst beim Einschrauben und Festziehen der
Madenschraube nicht nach aussen aufgebogen werden. Auf diese
Weise koennen relativ hohe Kraefte von der Madenschraube auf
den Stuetzstab uebertragen werden.」(明細書2頁18行?3頁22行:訳文(合議体訳、以下、同様。)
「考案による骨接合装置は、支持棒をキャップナットではなくセットスクリューによってフォークヘッドに固定するという主な利点を有している。セットスクリューは外ネジを有し、フォークヘッドの内ネジに締結され、締結端部によって支持棒を押し込み、溝底部に固定する。フォークヘッドにセットスクリューを締結し、締着するときにフォークヘッドの両方の脚部が曲げられるのを防止するため、脚部の内ネジがモミの木状に形成され、溝底部側のネジフランクが軸から半径方向視で上り勾配となっている。セットスクリューからフォークヘッドに伝達される支持力は、溝底部方向のフランクを把持する。このフランクは外側に勾配が付いているので、フォークヘッドは外側に曲げられず、両方の脚部はセットスクリューによって蟻継ぎ接合形式で保持され、むしろ内側に引っ張られる。
そうすることによって、キャップナットまたはフォークヘッドの両脚部を把持する他の要素を使用しないで、脚部自体がセットスクリューを締結、締着したときに外側に曲げられないという主な利点が形成される。こうして、比較的高い応力がセットスクリューから支持棒に伝えられる。」

m.「Dabei kann die Flanke in radialer Richtung gebogen, mit
Absaetzen oder mit Knicken versehen sein. Derartige,
insbesondere diskrete Abstufungen haben den Vorteil, dass
die Kraefte gezielt in das Gewinde des Gabelkopfes
eingeleitet werden kann.」(明細書5頁6?10行)
「フランクが半径方向で湾曲部、段形部または屈曲部が設けられてもよい。この種の特に離散した段形部は、応力をフォークヘッドのネジに望ましく伝えることができるという利点がある。」
n.「Bei einer weiteren Variante der Erfindung ist vorgesehen,
dass die Innenseiten der Schenkel des Gabelkopfes mit einem
Abschnitt eines Innengewindes versehen sind und das
Innengewinde eine Flanke aufweist, die, ausgehend von der
Achse der Knochenschraube in radialer Richtung gesehen, mit
einer Hinterschneidung versehen ist. Eine derartige
Hinterschneidung kann z.B. eine Stufe sein oder
schwalbenschwanzartig ausgebildet sein.」(明細書5頁20行?6頁5行)
「さらに別形態の考案では、フォークヘッド脚部の内側に内ネジ部を設け、内ネジが骨スクリュー軸の半径方向視でアンダーカットを設けているフランクを有している。この種のアンダーカットは、例えば段形でも蟻継ぎに形成されてもよい。」
o.「Die Figur 1 zeigt ein erstes Ausfuehrungsbeispiel der
erfindungsgemaessen Osteosynthesevorrichtung mit einer
Knochenschraube 1, einem lediglich andeutungsweise
dargestellten Stuetzstab 2 sowie einer Madenschraube 3. Von
der Knochenschraube ist lediglich der Gabelkopf 4
dargestellt, welcher in den Gewindeteil uebergeht, welcher
das in den Knochen einzuschraubende Gewinde aufweist.
Der Gabelkopf 4 weist zwei Schenkel 5 auf, von denen
lediglich einer dargestellt ist. Die beiden Schenkel bilden
eine Nut 6, welche einen Nutgrund 7 aufweist. Dieser
Nutgrund 7 ist mit einer Oberflaechenprofilierung 8
versehen. In der Nut 6 und auf der Oberflaechenprofilierung
8 liegt der Stuetzstab 2 auf und wird von der Madenschraube
3 festgehalten. Diese Madenschraube 3 ist in den Gabelkopf
4 eingeschraubt. Hierfuer weist der Schenkel 5 ein insgesamt
mit 9 bezeichnetes Innengewinde auf. Dieses Innengewinde 9
weist die Form eines Tannenbaums auf, wobei sowohl die dem
Nutgrund 7 zugewandte untere Flanke 10 als auch die obere
Flanke 11 von der Achse 12 der Knochenschraube 1 in
radialer Richtung gesehen ansteigen. Der Steigungswinkelα
der unteren Flanke 10 ist also groesser Null.」(明細書7頁4?24行)
「図1は、骨スクリュー1と、単に概略的に図示した支持棒2と、セットスクリュー3とを有する考案による骨接合装置の第1実施例を示している。骨スクリューを、単に、骨内にねじ込まれるネジを有するネジ部になるフォークヘッド4で表している。
フォークヘッド4は2つの脚部5を有しているが、その内の一方を図示している。両方の脚部は、溝底部7を有する溝6を形成している。この溝底部7は表面形状部8を有している。溝6の表面形状部8に支持棒2は着座し、セットスクリュー3によって固定される。このセットスクリュー3は、フォークヘッド4にねじ込まれている。また、脚部5はすべてに9を付した内ネジを設けている。この内ネジ9はモミの木状で、溝底部7側の下部フランク10も上部フランク11も、骨スクリュー1の軸12から半径方向視で上り勾配となっている。したがって、下部フランク10の勾配角度αは0より大きい。」
p.「Beim Ausfuehrungsbeispiel der Figur 2 besitzt der Gabelkopf
4 der Knochenschraube 1 ebenfalls ein Gewinde, welches
jedoch mit einer ebenen oberen Flanke 11 und einer
stufenartig ausgebildeten unteren Flanke 10 versehen ist.
Die Stufe der unteren Flanke 10 ist derart geformt, dass
sie einen Hinterschnitt 17 bildet. Ueber diesen
Hinterschnitt 17 wird verhindert, insbesondere ueber die
Schulter 18, dass der Schenkel 5 beim Einschrauben der
Madenschraube 3 radial nach aussen gebogen wird. In radialer
Richtung wird also zwischen Gabelkopf 4 und Madenschraube 3
ein Formschluss geschaffen. Ueber diesen Formschluss wird,
wie bereits erwaehnt, ein Ausweichen des Schenkels 5
verhindert.」(明細書8頁22行?9頁11行)
「図2の実施例では、骨スクリュー1のフォークヘッド4も同様にネジを有しているが、平坦な上部フランク11と段状に形成された下部フランク10が設けられている。下部フランク10の段は、アンダーカット17を形成するように設けられている。このアンダーカット17の特に肩部18によって、セットスクリュー3を締め付けたときに脚部5が半径方向外側に曲げられるのを防止している。つまり、半径方向のフォークヘッド4とセットスクリュー3とが係合する。この係合によって、既述のように脚部5の偏位を防止する。」

q.図2及び上記摘記事項l、m、n、o、pから、図2の実施例では、骨スクリュー1のフォークヘッド4の内ネジ9は、段状に形成された下部フランク10とアンダーカット17との連続された、非線形のスラスト面を有して、セットスクリュー3を締め付けた時に、脚部5が半径方向外側に曲げられるのを防止していることが記載されている。段状に形成された下部フランク10とアンダーカット17との連続された、非線形のスラスト面の内ネジ9と噛み合うことから、セットスクリュー3の外ネジは非線形のスラスト面を持ち、相互係止形態をなしているといえる。非線形のスラスト面の各々は互いにグリップするグリップ面を形成し、グリップ面は相互係止形態が接合されたときに半径方向に互いに重なっているといえる。
また、図2及び上記摘記事項pの「アンダーカット17の特に肩部18によって、セットスクリュー3を締め付けたときに脚部5が半径方向外側に曲げられるのを防止している。」から、外ネジ12はセットスクリュー3の外面に取り付けられており、セットスクリュー3から離れた場所において、セットスクリュー3に取り付けられた場所よりも、大きな断面積を有し、また、フォークヘッド4に設けられた内ネジ9は脚部5から離れた場所において、内ネジ9が脚部5に取り付けられた場所よりも、大きな断面積を有しているものと解される。それによって、セットスクリュー3を締め付けた時に、脚部5が半径方向外側に曲げられるのを防止しているものといえる。

上記を総合すると、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「骨接合装置において、
螺旋状をなし噛み合うことができ且つ半径方向に相互に係止できるセットスクリュー3の外ネジ12及びフォークヘッド4に設けられた内ネジ9を含み、内ネジ9は段状に形成された下部フランク10とアンダーカット17との連続された非線形のスラスト面を有し、そのスラスト面とセットスクリュー3の外ネジ12の非線形のスラスト面と噛み合い、外ネジ12はセットスクリュー3の外面に取り付けられており、外ネジ12はセットスクリュー3から離れた場所において、外ネジ12はセットスクリュー3に取り付けられた場所よりも大きな断面積を有し、
内ネジ9はフォークヘッド4の一対の脚部の内面に取り付けられ、内ネジ9は脚部から離れた場所において、内ネジ9は脚部に取り付けられた場所よりも大きな断面積を有し、
外ネジ12及び内ネジ9の相互係止形態はフォークヘッド4内に組み立てるときに回転させることができ、外ネジ12及び内ネジ9の相互係止形態はセットスクリュー3の回転時にセットスクリュー3をフォークヘッド4内に案内し且つ前進し、
相互係止形態の非線形のスラスト面の各々は、グリップ面を有し、グリップ面は、相互係止形態が接合されたときに半径方向に互いに重なって、脚部5をセットスクリュー3に対して半径方向に係止することで、相互係止形態は骨接合装置の組み立て中及び組み立てに続く使用中にフォークヘッド4が半径方向に広がらないように作動的に抵抗する、骨接合装置。」

3-3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「間隔を隔てる一対のU脚6、7」は本願補正発明の「間隔が隔てられた一対のアーム」に相当し、以下、同様に、「頭部3」は「レシーバー部材」に、「留めネジ9」は「閉鎖部材」に、「椎骨にネジ留めする茎ネジ1」及び「茎ネジ1」は「医療用インプラント」及び「インプラント」に相当する。
また、引用発明の「雄ネジ部10」、「雌ネジ部8」はそれぞれ本願補正発明の「第1相互係止形態」、「第2相互係止形態」に相当し、以下、同様に、「雄ネジ部10、雌ネジ部8」は「第1及び第2の相互係止形態」に、「ネジ部」は「相互係止形態」に、「雄ネジ部10、雌ネジ部8の相互係止形態」は「第1及び第2の相互係止形態」に、それぞれ相当する。

引用発明の「雄ネジ部10及び雌ネジ部8の各々は、線形のスラスト面を有し、線形のスラスト面の一方は、他方のネジ部の線形のスラスト面と噛み合い、雄ネジ部10は留めネジ9の外面に取り付けられており、」「雄ネジ部10及び雌ネジ部8の相互係止形態の線形のスラスト面の各々は、U脚6、7を留めネジ9に対して半径方向に係止することで、相互係止形態は、茎ネジ1の組み立て中及び組み立てに続く使用中にU脚6、7が半径方向に広がらないように作動的に抵抗する、茎ネジ1」と、
本願補正発明の「第1及び第2の相互係止形態の各々は、非線形のスラスト面を有し、前記非線形のスラスト面の一方は、他方の相互係止形態の非線形のスラスト面と噛み合い、前記第1相互係止形態は前記閉鎖部材の外面に取り付けられており、」「前記相互係止形態の非線形のスラスト面の各々は、グリップ面を有し、前記グリップ面は、前記相互係止形態が接合されたときに半径方向に互いに重なって、前記アームを前記閉鎖部材に対して半径方向に係止することで、前記相互係止形態は、前記インプラントの組み立て中及び組み立てに続く使用中に前記アームが半径方向に広がらないように作動的に抵抗する、インプラント。」とは、
相互係止形態の各々はスラスト面を有することと、スラスト面の各々は、アームを前記閉鎖部材に対して半径方向に係止することで前記相互形態はインプラントの組み立て中及び組み立てに続く使用中に前記アームが半径方向に広がらないように作動的に抵抗することで共通するから、
「第1及び第2の相互係止形態の各々は、スラスト面を有し、前記スラスト面の一方は、他方の相互係止形態のスラスト面と噛み合い、前記第1相互係止形態が前記閉鎖部材の外面に取り付けられており、」
「前記相互係止形態の前記スラスト面の各々は、前記アームを前記閉鎖部材に対して半径方向に係止することで、前記相互係止形態は、前記インプラントの組み立て中及び組み立てに続く使用中に前記アームが半径方向に広がらないように作動的に抵抗する、インプラント」の点で、本願発明と引用発明とは共通する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると両者は次の点で一致する。
「間隔が隔てられた一対のアームを持つ開放したレシーバー部材及び前記レシーバー部材を閉鎖するための回転軸線を持つ閉鎖部材を含む医療用インプラントにおいて、
a)螺旋状をなした噛み合うことができ且つ半径方向に相互係止できる第1及び第2の相互係止形態を含み、前記第1及び第2の相互係止形態の各々は、スラスト面を有し、前記スラスト面の一方は、他方の相互係止形態のスラスト面と噛み合い、前記第1相互係止形態は前記閉鎖部材の外面に取り付けられており、
b)前記第2相互係止形態は前記レシーバー部材の前記一対のアームの内面に取り付けられ、
前記第1及び第2の相互係止形態は前記閉鎖部材を前記レシーバー部材内に組み立てるときに回転させることができ、前記第1及び第2の相互係止形態は、前記閉鎖部材の回転時に前記閉鎖部材を前記レシーバー部材内に案内し且つ前進し、
c)前記第1及び第2の相互係止形態は、前記軸線を通る平面内にその実質的長さに沿って均等な断面を各々有し、
d)前記相互係止形態のスラスト面の各々は、前記アームを前記閉鎖部材に対して半径方向に係止することで、前記相互係止形態は、前記インプラントの組み立て中及び組み立てに続く使用中に前記アームが半径方向に広がらないように作動的に抵抗する、インプラント。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点>
第1及び第2の相互係止形態の各々について、
本願補正発明の第1及び第2の相互係止形態のスラスト面の各々は非線形であって、グリップ面を有し、グリップ面は相互係止形態が接合されたときに半径方向に互いに重なっており、第1相互係止形態は閉鎖部材から離れた場所において、第1相互係止形態が閉鎖部材に取り付けられた場所よりも、大きな断面積を有し、第2相互係止形態は、間隔が隔てられたアームから離れた場所において、第2相互係止形態がアームの取り付けられた場所よりも、大きな断面積を有しているのに対し、
引用発明のスラスト面の各々は線形であって、線形のスラスト面の各々は、グリップ面を有しておらず、第1相互係止形態が閉鎖部材から離れた場所において、第1相互係止形態が取り付けられた場所よりも断面積が大きいかどうか不明で、第2相互係止形態がアームから離れた場所において、アームに取り付けられた場所よりも、断面積が大きいどうか不明な点。

3-4.判断
<相違点について>
引用発明2の外ネジと内ネジの相互係止形態のスラスト面の各々は、段状に形成された下部フランク10とアンダーカット17との連続された非線形のスラスト面であって、グリップ面を有し、グリップ面は、相互係止形態が接合されたときに半径方向に互いに重なっているものである。
引用発明2の相互係止形態については、「外ネジ12はセットスクリュー3の外面に取り付けられており、外ネジ12はセットスクリュー3から離れた場所において、外ネジ12はセットスクリュー3に取り付けられた場所よりも、大きな断面積を有し、
内ネジ9はフォークヘッド4の一対の脚部の内面に取り付けられ、内ネジ9は脚部から離れた場所において、内ネジ9は脚部に取り付けられた場所よりも大きな断面積を有し」ているものと解される。

引用発明の「椎骨にネジ留めする茎ネジ」、引用発明2の「骨接合装置」のそれぞれは、「インプラント」に相当して、産業上の利用分野が共通し、引用発明の「留めネジの引っ張りの際に開き広がりを回避するように茎ネジを作り上げる」(前記摘記事項c.参照)という課題、引用発明2の「フォークヘッドにセットスクリューを締結し、締着するときにフォークヘッドの両方の脚部が曲げられるのを防止する」(前記摘記事項l.参照)という課題は、「レシーバーのアームが拡がらないようにする」という課題と共通しているから、引用発明2の相互係止形態の発明事項を、引用発明の相互係止形態に適用することができ、本願発明の相違点に係る発明特定事項のようにすることは、当業者であれば、容易に想到し得ることである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び引用発明2に記載された技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は引用発明及び引用発明2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年8月9日付けの手続補正書による明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「間隔が隔てられた一対のアームを持つ開放したレシーバー部材及び前記レシーバー部材を閉鎖するための回転軸線を持つ閉鎖部材を含む医療用インプラントにおいて、
a)螺旋状をなした噛み合うことができ且つ半径方向に相互係止できる第1及び第2の相互係止形態を含み、前記第1相互係止形態は前記閉鎖部材の外面に取り付けられており、
b)前記第2相互係止形態は前記レシーバー部材の前記一対のアームの内面に取り付けられ、前記第1及び第2の相互係止形態は前記閉鎖部材を前記レシーバー部材内に組み立てるときに回転させることができ、前記第1及び第2の相互係止形態は、前記閉鎖部材の回転時に前記閉鎖部材を前記レシーバー部材内に案内し且つ前進し、
c)前記第1及び第2の相互係止形態は、前記軸線を通る平面内にその実質的長さに沿って均等な断面を各々有し、
d)前記相互係止形態は、前記インプラントの組み立て中及び組み立てに続く使用中に前記アームが半径方向に広がらないように作動的に抵抗する、インプラント。」

IV.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、引用例1及びその記載事項は、前記II.3.3-1.、3-2.に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明から、「第1及び第2の相互係止形態の各々」についての限定事項である「非線形のスラスト面を有し、前記非線形のスラスト面の一方は、他方の相互係止形態の非線形のスラスト面と噛み合い」、「第1相互係止形態」についての限定事項である「第1相互係止形態は、前記閉鎖部材から離れた場所において、前記第1相互係止形態が前記閉鎖部材に取り付けられた場所よりも、大きな断面積を有し、」、「第2相互係止形態」についての限定事項「第2相互係止形態は、前記間隔が隔てられたアームから離れた場所において、前記第2相互係止形態が前記アームに取り付けられた場所よりも、大きな断面積を有し、」及び「相互係止形態」についての限定事項「相互係止形態の前記非線形のスラスト面の各々は、グリップ面を有し、前記グリップ面は、前記相互係止形態が接合されたときに半径方向に互いに重なって、前記アームを前記閉鎖部材に対して半径方向に係止することで、」を省いたものである。

本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「間隔を隔てる一対のU脚6、7」は本願補正発明の「間隔が隔てられた一対のアーム」に相当し、以下、同様に、「頭部3」は「レシーバー部材」に、「留めネジ9」は「閉鎖部材」に、「椎骨にネジ留めする茎ネジ1」及び「茎ネジ1」は「医療用インプラント」及び「インプラント」に相当する。
また、引用発明の「雄ネジ部10」、「雌ネジ部8」はそれぞれ本願発明の「第1相互係止形態」、「第2相互係止形態」に相当し、以下、同様に、「雄ネジ部10、雌ネジ部8」は「第1及び第2の相互係止形態」に、「ネジ部」は「相互係止形態」に、「雄ネジ部10、雌ネジ部8の相互係止形態」は「第1及び第2の相互係止形態」に、それぞれ相当する。

そこで、本願発明の用語を用いて表現すると両者は次の点で一致する。
「間隔が隔てられた一対のアームを持つ開放したレシーバー部材及び前記レシーバー部材を閉鎖するための回転軸線を持つ閉鎖部材を含む医療用インプラントにおいて、
a)螺旋状をなした噛み合うことができ且つ半径方向に相互係止できる第1及び第2の相互係止形態を含み、前記第1相互係止形態は前記閉鎖部材の外面に取り付けられており、
b)前記第2相互係止形態は前記レシーバー部材の前記一対のアームの内面に取り付けられ、前記第1及び第2の相互係止形態は前記閉鎖部材を前記レシーバー部材内に組み立てるときに回転させることができ、前記第1及び第2の相互係止形態は、前記閉鎖部材の回転時に前記閉鎖部材を前記レシーバー部材内に案内し且つ前進し、
c)前記第1及び第2の相互係止形態は、前記軸線を通る平面内にその実質的長さに沿って均等な断面を各々有し、
d)前記相互係止形態は、前記インプラントの組み立て中及び組み立てに続く使用中に前記アームが半径方向に広がらないように作動的に抵抗する、インプラント。」

そうすると、引用発明は本願発明と同一で、相違点はないものと認められる。
よって、本願発明は引用発明と同一であって、特許を受けることはできないものである。

VII.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に記載の技術と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることはできないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-30 
結審通知日 2010-07-01 
審決日 2010-07-13 
出願番号 特願2004-534213(P2004-534213)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺澤 忠司  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 増沢 誠一
黒石 孝志
発明の名称 螺旋状相互係止噛み合い案内前進構造  
代理人 富田 博行  
代理人 伊藤 孝美  
代理人 千葉 昭男  
代理人 社本 一夫  
代理人 鐘ヶ江 幸男  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  

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