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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1245666
審判番号 不服2010-17513  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-05 
確定日 2011-10-27 
事件の表示 特願2005-345854「写真シール作成装置および時間管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月14日出願公開、特開2007-148267〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、平成17年11月30日の出願であって、平成21年12月15日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成22年2月10日付けで手続補正がなされ、その後同年5月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ、これに対し、平成23年6月8日付けで審尋がなされ、これに対し、同年8月3日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成22年8月5日付けの手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成22年8月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
〔理由〕
(2-1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書の段落【0009】,【0011】,【0015】及び【0016】を補正するものであって、その内容は、平成22年2月10日付け手続補正書に記載された以下の特許請求の範囲の請求項1(以下「補正前請求項1」という。)
「【請求項1】
撮影作業と、前記撮影作業により得られた画像の編集作業とを利用者に行わせ、前記編集作業により得られた編集済みの画像を印刷したシール紙を提供する写真シール作成装置において、
あらかじめ設定された時間を延長させて前記編集作業を行わせる編集制御手段と、
閉店時刻として設定された時刻より所定の時間だけ前の時刻を設定し、その設定した時刻になったとき、前記編集制御手段により行われる、前記編集作業に対して設定された時間の延長を禁止させ、残りの編集猶予時間の間、前記編集作業を行わせる編集時間管理手段と
を備える写真シール作成装置。」
を、以下の特許請求の範囲の請求項1(以下「補正後請求項1」という。)
「【請求項1】
撮影作業と、前記撮影作業により得られた画像の編集作業とを利用者に行わせ、前記編集作業により得られた編集済みの画像を印刷したシール紙を提供する、前記撮影作業を行う撮影空間と、前記編集作業を行う編集空間とがそれぞれ異なる位置に設けられる写真シール作成装置において、
あらかじめ設定された時間を延長させて前記編集作業を行わせる編集制御手段と、
閉店時刻として設定された時刻より所定の時間だけ前の時刻を設定し、前記撮影空間での前記撮影作業を終え、前記編集空間で前記編集作業を行う第1のユーザに続けて前記撮影空間で前記撮影作業を行う第2のユーザがいない場合であって設定した時刻になったとき、前記編集制御手段により行われる、前記編集作業に対して設定された時間の延長を禁止させ、残りの編集猶予時間の間、前記編集作業を行わせ、前記第2のユーザがいる場合、前記編集制御手段により行われる、前記編集作業に対して設定された時間の延長を禁止させないように、前記編集作業に対して設定された時間を管理する編集時間管理手段と
を備える写真シール作成装置。」
に補正する補正を含むものである。なお、上記補正後の請求項1の記載における下線は、平成22年8月5日付け手続補正書に記載されており、変更箇所を表すものである。

(2-2)新規事項を含む補正か否かについて(特許法第17条の2第3項関連)
上記請求項1に係る補正のうち、以下の補正事項(以下「補正事項1」という。)
「閉店時刻として設定された時刻より所定の時間だけ前の時刻を設定し、前記撮影空間での前記撮影作業を終え、前記編集空間で前記編集作業を行う第1のユーザに続けて前記撮影空間で前記撮影作業を行う第2のユーザがいない場合であって設定した時刻になったとき、前記編集制御手段により行われる、前記編集作業に対して設定された時間の延長を禁止させ、残りの編集猶予時間の間、前記編集作業を行わせ、前記第2のユーザがいる場合、前記編集制御手段により行われる、前記編集作業に対して設定された時間の延長を禁止させないように、前記編集作業に対して設定された時間を管理する編集時間管理手段と」
について検討する。上記補正事項は「編集時間管理手段」が備える機能について補正したものである。
編集時間管理手段は、上記補正事項1の記載から「編集作業に対して設定された時間を管理する」ものであると読み取ることができる。編集作業に対して設定された時間を管理することについては、願書に最初に添付した(以下、「出願当初の」という。)明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)には、以下の記載がある。
(a)「【0085】
図7は、写真シール作成装置1の機能構成例を示すブロック図である。図7に示す機能部のうちの少なくとも一部は、図6の制御装置101により所定のプログラムが実行されることによって実現される。
【0086】
図7に示されるように、写真シール作成装置1においては、設定受付部151、編集時間管理部152、タイマ153、および編集制御部154が実現される。
【0087】
設定受付部151は、図4に示される画面に対して管理者により入力される落書き時間に関する設定と、図5に示される画面に対して管理者により入力される落書き時間の延長機能の制限に関する設定を受け付ける。設定受付部151は、受け付けた設定の内容を表す情報を編集時間管理部152に出力する。
【0088】
編集時間管理部152は、タイマ153から供給される時刻情報を参照し、編集制御部154により行われる編集の時間を管理する。例えば、編集時間管理部152は、編集が開始されてからの時間が標準の制限時間を経過するまで編集制御部154に編集を行わせるとともに、落書き時間の延長を許可することが管理者により設定されている場合、写真シール作成装置1の利用状況などに応じて編集制御部154に時間を延長して編集を行わせる。
【0089】
また、編集時間管理部152は、延長機能の制限が設定されている場合、タイマ153により計時される現在時刻が、閉店時刻として設定された時刻から所定の時間だけ前の時刻になったとき、それ以降の延長機能を禁止するように編集制御部154を制御する。
【0090】
タイマ153は、現在時刻を計時し、現在時刻を表す情報を編集時間管理部152に出力する。」

(b)「【0105】
次に、図10のフローチャートを参照して、図9のステップS15において行われる編集処理について説明する。なお、ここでは、第1編集空間での編集作業を実現する処理について説明するが、第2編集空間での編集作業も同様の処理によって実現される。
【0106】
ステップS21において、編集制御部154は、編集画面を編集用モニタ41に表示させる。
【0107】
図11は、編集画面の例を示す図である。
【0108】
図11に示される編集画面161には、同じグループの2人の利用者が同時に編集作業を行うことができるように、2つの編集画面(編集領域)が用意される。すなわち、編集画面161には、編集作業の残り時間を表す残時間表示部162や、「編集した画像を選んで、ペン、スタンプ、フレームなどを使って落書きしてください。」等の編集作業の進め方を説明するメッセージの他に、各利用者に対する編集画面163と164が表示される。
【0109】
編集画面163には、利用者により選択された編集対象の画像が表示される編集対象画像表示部171、編集対象の画像の候補となる画像がサムネイル表示されるサムネイル画像表示部172、および、ペン、スタンプ、およびフレーム等の各種の編集ツールを選択するときに操作されるボタンが並べて表示されるパレット173が表示される。
【0110】
利用者は、サムネイル画像表示部172に表示される画像の中から編集対象とする画像(編集対象画像表示部171に表示させる画像)を選択し、パレット173にボタンが表示されるものの中から選択した編集ツールを用いて編集対象の画像を編集することができる。
【0111】
一方、編集画面164にも、編集画面163と同様に、編集対象の画像が表示される編集対象画像表示部181、編集対象の画像の候補となる画像がサムネイル表示されるサムネイル画像表示部182、および、各種の編集ツールを選択するときに操作されるボタンが並べて表示されるパレット183が表示される。
【0112】
利用者は、このような編集画面161に対して、タッチペン42A,42Bを用いて、撮影作業により得られた画像に対する編集操作を行う。
【0113】
図10の説明に戻り、ステップS22において、編集制御部154は、編集時間管理部152による制御にしたがって、タッチペン42A,42Bなどを用いて利用者により行われる編集入力を受け付け、利用者による入力に応じて編集対象の画像の編集を行う。
【0114】
ステップS23において、編集時間管理部152は、編集作業が開始されてからの時間が、あらかじめ管理者によって設定された標準の制限時間を経過したか否かを判定する。上述したように、管理者は、図4の設定画面において編集作業の標準の制限時間を設定することができる。
【0115】
編集時間管理部152は、ステップS23において、編集作業が開始されてからの時間が標準の制限時間を経過していない、すなわち、制限時間までの残り時間がまだあると判定した場合、ステップS24に進み、編集の終了が指示されたか否かを判定する。例えば、編集画面には、制限時間の経過前に編集作業を終えるときに操作される終了ボタンも用意される。
【0116】
ステップS24において、終了ボタンが押されていないことから、編集の終了が指示されていないと判定した場合、編集時間管理部152は、ステップS22に戻り、編集制御部154を制御して、利用者による編集入力の受け付けを続行させる。
【0117】
一方、ステップS23において、編集時間管理部152は、編集作業が開始されてからの時間が標準の制限時間を経過した、すなわち、残り時間が0になったと判定した場合、ステップS25に進み、編集が開始されてからの時間が、管理者によりあらかじめ設定された最大の編集時間を経過したか否かを判定する。上述したように、管理者は、図4の設定画面において、編集作業の最大の制限時間を設定することができる。
【0118】
ステップS25において、編集が開始されてからの時間が最大の編集時間を経過していないと判定した場合、編集時間管理部152は、ステップS26に進み、撮影部103による処理の状況を確認して、次の利用者のグループ(いま編集作業を行っている利用者のグループに続けて写真シール作成装置1の利用を開始した利用者のグループ)により撮影が開始されているか否かを判定する。
【0119】
ステップS26において、編集時間管理部152は、次の利用者のグループにより撮影が開始されていないと判定した場合、ステップS27に進み、タイマ153から供給される現在時刻の情報を参照し、計時された時刻が、編集時間の延長が禁止される時刻であるか否かを判定する。上述したように、例えば、計時された時刻が管理者により閉店時刻として設定された時刻から所定の時間だけ前の時刻以降の時刻であるとき、編集時間の延長が禁止される。
【0120】
ステップS27において、編集時間管理部152は、タイマ153により計時された時刻が編集時間の延長が禁止される時刻ではないと判定した場合、ステップS22に戻り、以上の処理を繰り返して実行し、編集制御部154に編集作業を延長して続けさせる。
【0121】
一方、ステップS27において、編集時間管理部152は、タイマ153により計時された時刻が編集時間の延長が禁止される時刻であると判定した場合、ステップS28に進み、編集制御部154を制御して編集時間の延長を禁止させる。このとき、図12に示されるように、「閉店時間となりました。編集を終了いたします。」などのような利用者に対するメッセージが編集画面に表示されるようにしてもよい。
【0122】
編集時間の延長が禁止されたため、編集作業を終了させたとき、編集制御部154は、ステップS29において事後処理を行う。また、終了ボタンが押されたことから、ステップS24において編集の終了が指示されたと判定された場合、ステップS25において、編集が開始されてからの時間が管理者によりあらかじめ設定された最大の編集時間を経過したと判定された場合、または、ステップS26において次の利用者のグループにより撮影が開始されていると判定された場合も同様に、処理はステップS29に進み、事後処理が行われる。
【0123】
ここでは、例えば、編集済みの画像の中からシール紙142に印刷する画像を利用者に選択させる処理や、選択された画像の印刷レイアウトを利用者に選択させる処理が事後処理として行われる。事後処理が終了されたとき、処理は図9のステップS15に戻り、それ以降の処理が行われる。
【0124】
以上の処理により、写真シール作成装置1の管理者は、所望の時刻以降に編集時間の延長機能がはたらくことを防止することができる。
【0125】
なお、制限時間の延長を禁止する以上の処理は、1日の基準を例えば午前6時とし(1日を6時から次の6時までとし)、管理者により設定された閉店時刻から6時までの間は、制限時間の延長を禁止するか否かの判断が編集処理の開始前に行われるようにしてもよい。これは、閉店時刻を基準とした場合、閉店時刻をまたぐような時間に写真シール作成装置1の電源の電断再起動が発生したときには再起動後の次のゲーム起動時に編集時間の延長機能がはたらく状態になってしまうことがあるため、そのような状態になることを防止することを目的として行われるものである。
【0126】
したがって、図4、図5に示されるような状態の設定が行われている場合、6時から、閉店時刻の5分前の23時45分までの間は、通常の運用(設定に応じて編集時間の延長、制限が行われる運用)で写真シール作成装置1は稼動し、23時45分から6時までの間は、編集時間の延長が禁止された運用で写真シール作成装置1は稼動することになる。
【0127】
また、上述した各ステップの処理は、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。」

(c)「



(d)「


上記記載及び図面から、編集時間管理部152の時間管理として、「編集時間管理部152が、ステップS23において編集作業が開始されてからの時間が標準の制限時間を経過したと判定し、次にステップS25で編集が開始されてからの時間が最大の編集時間を経過したと判定し、次にステップS26において次の利用者のグループ(いま編集作業を行っている利用者のグループに続けて写真シール作成装置1の利用を開始した利用者のグループ)により撮影が開始されていると判定された場合、処理がステップS29に進み、事後処理(例えば、編集済みの画像の中からシール紙142に印刷する画像を利用者に選択させる処理や、選択された画像の印刷レイアウトを利用者に選択させる処理)が行われる」ことは読み取ることができる。よって、編集時間管理部152は、ステップS26において次の利用者のグループにより撮影が開始されていると判定された場合は、ステップS23で判定したように標準の制限時間を経過していることから、編集時間の延長をせず、すぐさま編集を終えステップS29の事後処理に移る制御を行っている。これにより、本願発明の目的(段落【0007】及び【0008】参照。)である「閉店間際に、編集作業に対して設定された時間の延長を禁止することができる」ことを達成している。
また、写真シール撮影装置において、編集作業に割り当てられる制限時間がなるべく長い方が利用者に好まれること(段落【0003】及び【0004】参照。)から、次の利用者のグループがいないときは、編集作業に割り当てられる制限時間が所定の時間だけ延長される(段落【0038】及び【0039】参照。)ことが、出願当初の明細書等に記載された発明における技術的事項として認められる。上記編集時間管理部152の時間管理は、次の利用者のグループにより撮影が開始されていると判定された場合は、事後処理に進むというものであるから、上記技術的事項に添う時間管理である。
一方、上記補正事項1は、「編集時間管理手段」が「前記第2のユーザがいる場合、前記編集制御手段により行われる、前記編集作業に対して設定された時間の延長を禁止させないように、前記編集作業に対して設定された時間を管理する」ものであるという事項であるが、この事項による時間の管理を編集時間管理手段が行うと、第2のユーザがいる場合には、時間の延長を禁止させない、言い換えれば時間の延長ができることになる。この場合、上記技術的事項に反する新たな時間管理を導入することとなり、さらに、本願発明の目的に反して、閉店間際であっても第2のユーザがいれば、編集作業に対して設定された時間の延長ができることになってしまう。この場合、本願の解決すべき問題点(発明の詳細な説明の段落【0007】で示されている、「閉店間際に行われた」「延長」という問題点)は解決することができない。また、出願当初の明細書等の記載をみても、編集時間管理部152が、次の利用者のグループにより撮影が開始されていると判定された場合に、時間の延長を許可する旨の動作制御を行っていることは、記載も示唆もなく、又出願当初の明細書等から自明のことでもない。そして、編集時間管理部152以外の編集時間を管理する制御部は、出願当初の明細書等の記載をみても、記載も示唆もなく、又出願当初の明細書等から自明のことでもない。
したがって、上記補正事項1を含む特許請求の範囲の請求項1に関する補正は、出願当初の明細書等に記載した事項ではなく、また、出願当初の明細書に記載した事項から自明な事項であるとはいえず、出願当初の明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでない。ゆえに上記補正は、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内にしたものではない。
よって、上記補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(2-3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成22年8月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成22年2月10日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「撮影作業と、前記撮影作業により得られた画像の編集作業とを利用者に行わせ、前記編集作業により得られた編集済みの画像を印刷したシール紙を提供する写真シール作成装置において、
あらかじめ設定された時間を延長させて前記編集作業を行わせる編集制御手段と、
閉店時刻として設定された時刻より所定の時間だけ前の時刻を設定し、その設定した時刻になったとき、前記編集制御手段により行われる、前記編集作業に対して設定された時間の延長を禁止させ、残りの編集猶予時間の間、前記編集作業を行わせる編集時間管理手段と
を備える写真シール作成装置。」

4.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成17年9月27日に出願され、本願の出願日後である平成19年4月12日に出願公開(特開2007-93703号公報)された特願2005-279576号(以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、以下の技術事項が記載されている。
(a)「【0001】
本発明は、写真撮影装置に関する。」

(b)「【0015】
そこで本発明はこのような問題を解決して、多重接客方式を採用する写真撮影装置において、営業終了時刻の近傍において装置の稼働を円滑に終了させることを目的とする。」

(c)「【0029】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1の写真撮影装置1を、図1?図11を参照しながら説明する。
【0030】
まず、写真撮影装置1の外観構成から説明する。図1は写真撮影装置1を示す側面図、図2は図1に示した編集側筐体8の斜視図である。
【0031】
図1および図2に示すように、写真撮影装置1は、被写体を撮影するカメラ2を備える撮影側筐体3と、この撮影側筐体3におけるカメラ2と対向する位置に距離を置いて設けられている背景ユニット4と、筐体3と背景ユニット4の上部に左右一対の天井フレーム5が架設されて形成される撮影ブース6内に設けられ、被写体であるユーザの撮影ポーズの形成を補助する門型のはしご7と、撮影側筐体3の背面に隣接して設けられている編集側筐体8とを備える。
【0032】
撮影側筐体3における背景ユニット4に対向する側の面には、カメラ2のほか、カメラ2が現在撮影している画像をユーザに対してリアルタイムで表示し、かつ、ユーザからの操作入力を受け付けるとともにデモ画面や撮影操作の手順等をユーザに対して表示する表示手段としてのタッチパネルディスプレイ9(図3参照)と、撮影時にユーザを照射するための複数のストロボ10(図3参照)と、コインを投入するためのコイン投入口と、撮影操作時に音声案内やBGMを出力する撮影側スピーカ11(図3参照)と、後述する指示手段としての稼働終了指示ボタン32(図3参照)とが設けられている。
【0033】
さらに、この撮影側筐体3の外部における一方の側面にはプリント取出口12が設けられ、このプリント取出口12からは、撮影画像と編集入力した画像とを合成した印刷用画像(編集画像を入力しなかった場合には撮影画像)が撮影側筐体3の内部に収納されたプリンタ13(図3参照)によってシールシートなどの印刷媒体14(図3参照)に印刷されたものが排出される。
【0034】
背景ユニット4における撮影側筐体3に対向する側の上部には、撮影時にユーザの背景となる背景カーテン15aを複数種類備えたカーテンユニット15が設けられている。それぞれの背景カーテン15aは、カーテンユニット15内に巻き取られた状態で収納されており、カーテンユニット15は、ユーザからタッチパネルディスプレイ9への操作を介して指定された背景カーテン15aを、背景ユニット4の壁面に沿って垂下させる。
【0035】
一方、編集側筐体8には、撮影ブース6において撮影した画像を表示して付属のタッチペン16によりユーザからの編集入力を受け付けるタブレットディスプレイ17と、編集入力操作時に音声案内やBGMを出力する編集側スピーカ18(図3参照)とが設けられている。なお、図中においては現れていないが、編集側筐体8の反対側にも、タッチペン、タブレットディスプレイ、編集側スピーカが設けられており、異なる2組のユーザが、それぞれが撮影した画像に対して同時に編集処理を行うことが可能とされている。また、図2における19は、撮影ブース6とは異なる箇所に設けられて、ユーザが、撮影された画像に対して編集処理を行う編集ブースである。したがって、本実施の形態の写真撮影装置1は、一つの撮影ブース6と二つの編集ブース19とを備える三重接客方式を採用している。なお、上記の撮影ブース6および編集ブース19の周囲には、ユーザがそれぞれのブースにおいて操作処理を行う際に、他の利用者から画像等の内容が見えないようにするための周囲カーテンが設けられているが、図面の煩雑化を避けるため、図示は省略している。
【0036】
上記の写真撮影装置1は、ユーザからのニーズに対応すべくさまざまな機能、例えば音声案内機能、ストロボ照射光の変更機能などを備えている。これらさまざまの機能を実現するための機能構成を、図3を参照しながら説明する。図3は、写真撮影装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0037】
図3に示すように、写真自動販売装置1は、カメラ2による撮影およびカメラ2によって撮影した画像の転送など、撮影に関するデータ処理である撮影側の処理を実行する撮影用コンピュータ装置20aと、編集処理時にユーザからタブレットディスプレイ17に入力された情報の内容をこのタブレットディスプレイ17に表示するとともに、入力された情報に基づいて編集入力する画像の作成、描画などの編集に関する処理やプリンタ13の印刷に関する処理を実行する画像編集用コンピュータ装置20bと、動作中のコンピュータ装置20a、20bからの指示を受け付けて、接続されている各種装置を制御する制御基板21とを備える。この撮影用コンピュータ装置20aと画像編集用コンピュータ装置20bとは互いに接続され、画像データなどの授受をピアツーピアで行う。
【0038】
この撮影用コンピュータ装置20aは、撮影ブース6にて行われる操作に関する処理を行うため、詳細は後述するが、撮影ブースの利用開始を禁止する禁止手段としてのコイン制御部30(詳細は後述)を制御する機能、ユーザに対して撮影ブースの利用可能時間が終了したことを表示手段としてのタッチパネルディスプレイ9に案内表示させる機能、並びに現在の時刻を計時する計時手段としての現在時刻計時手段、稼働時間を設定する設定手段、計時した現在時刻が稼働時間を越えたのかを判定する判定手段、撮影プレイの経過時間を計時する撮影プレイタイマとしての機能を備え、所定のデータ処理を実行することができる。
【0039】
また、画像編集用コンピュータ装置20bは、編集ブース19にて行われる操作に関する処理を行うため、編集ブース19の利用時間を制御する制御手段、編集プレイの制限時間をカウントする編集プレイタイマ、現在時刻計時手段、判定手段としての機能を備え、所定のデータ処理を実行することができる。」

(d)「【0053】
以上のような構成において、ユーザは、撮影ブース6内において、はしご7を利用するなどして好みの撮影ポーズを形成して写真撮影を行い、撮影が終了すると、撮影した画像が表示される側の編集ブース19に移動し、タッチペン16を用いて、撮影画像が表示されるタブレットディスプレイ17に対して編集処理を行う。そして、編集処理が終わると、ユーザは、編集時に入力した画像と撮影画像とが合成されて生成された印刷用画像がシールシートに印刷されて排出されるプリント取出口12に移動し、出力されるシールシートを取得して写真撮影装置1の利用を終了する。ここで、上記の撮影側の処理、編集側の処理について詳述する。」

(e)「【0061】
なお、この稼働時間の設定は、図8に示すように、曜日ごとに個別に設定できるようにしてもよい。この場合、現在時刻計時手段に連動する曜日保持手段を設け、例えば、月曜日の稼働時間は何時から何時まで、・・・日曜日の稼働時間は何時から何時まで、というように曜日ごとに設定する。このようにすることで、平日、休日、休業日、特異日など、その日によって写真撮影装置1の稼働時間が異なる場合でも、オペレータは、いちいち稼働時間の設定を変更する必要がなくなり、操作性が向上する。また、図示は省略するが、同様にして、暦(カレンダー)のように、月単位で、各日の設定を行えるようにしてもよい。」

(f)「【0066】
S21において、稼働時間の設定が行われていると判断した場合(S21でYES)には、CPU22aが備える判定手段および現在時刻計時手段としての機能により、現在時刻が設定された稼働時間を越えているかを判断する(S22)。越えていないと判断した場合には、処理をS12に戻してコインロックを解除し、S13でタイトルデモ画面を表示して、新たなユーザの利用を待つ。」

(g)「【0073】
次に、編集側の処理について説明する。撮影ブース6において所定の枚数の写真撮影を終えたユーザは、次に、撮影した画像が表示される側の編集ブース19に移動し、編集ブース19において、タブレットディスプレイ17に表示される撮影画像に対し、タッチペン16を用いて編集処理を行う。このとき、画像編集用コンピュータ装置20bのCPU22bはHDD23bに記憶された動作プログラムをメモリ24bに読出して実行することにより、図9に示す手順で編集側の処理を行う。
【0074】
すなわち、図9に示すように、CPU22bは、撮影プレイから始めるよう促す待機画面(図示は省略)をタブレットディスプレイ17に表示する(S51)。上述した撮影側の処理が終了すると、撮影用コンピュータ装置20aから画像編集用コンピュータ装置20bに、撮影画像のデータが転送されて来るので、画像編集用コンピュータ装置20bにおけるCPU22bは、これを受信する(S52)。そして、CPU22bは、所定の編集画面(図示は省略)を表示して(S53)、編集処理を受け付ける、すなわち編集プレイを開始する(S54)。この編集処理では、タッチパネルディスプレイ17に表示されている撮影画像に対し、タッチペン16により、ペン画像、スタンプ画像、背景画像を描画するなどの処理を行うが、この編集処理は、既に公知であるので詳細な説明は省略する。なお、この編集処理を受け付けている間、すなわち編集プレイの間は、CPU22bが有する編集プレイタイマとしての機能により、編集プレイの制限時間のカウントを開始する。この編集ブース19の利用時間の管理に関する処理は、編集処理と同時に行われているが、説明の便宜上、これらの処理を個別に説明する。」

(h)「【0079】
ここで、上述した編集ブース19の利用時間の管理に関する処理を説明する。なお、既に述べたように、写真撮影装置1においては、編集プレイに制限時間が設けられており、別のユーザが撮影プレイをしていない場合などには、編集プレイの制限時間に所定の延長時間が付加されたり、編集プレイの制限時間が無制限に設定されたりして、編集ブース19の利用時間が制御されている。
【0080】
以下においては、編集プレイの制限時間に所定の延長時間が付加される場合と、編集プレイの制限時間に無制限の時間が付加される場合とに分けて、それぞれの場合における編集ブース19の利用時間の管理に関する処理を説明する。」

(i)「【0088】
なお、上記のS75において、延長時間として180秒が付加される場合を説明したが、この延長時間として付加される時間が∞秒である場合が、サービスタイムとして、編集プレイの時間が無制限となる場合であり、以下では図11を参照しながら説明する。
【0089】
図11に示すように、編集画面(図示は省略)がタブレットディスプレイ17に表示されるのを待ち(S91)、編集画面が表示されると(S91でYES)、撮影ブース6にて撮影プレイが行われているか、すなわち次に編集ブースを利用するユーザがいるかを判断する(S92)。
【0090】
S92において、撮影プレイが行われていると判断した場合(S92でYES)には、編集プレイ中のユーザの編集可能時間を無制限にすることは好ましくないので、画像編集用コンピュータ装置20bのCPU22bが備える編集プレイタイマとしての機能により、編集可能時間Aが120秒の状態でカウントダウンを開始する(S95)。
【0091】
そして、「おしまい」ボタンが押されたかを判断し(S96)、押されたと判断した場合(S96でYES)には、利用時間の管理処理を終了して編集プレイを終了する。また、S96において、「おしまい」ボタンが押されていないと判断した場合(S96でNO)には、編集可能時間Aが0になったかを判断する(S97)。S97において、A=0になったと判断した場合(S97でYES)には、利用時間の管理処理を終了して編集プレイを終了する。また、S97でA=0になっていないと判断した場合(S97でNO)には、処理をS96に戻す。なお、上記のS96とS97との処理は先後の順序が逆でもかまわない。
【0092】
一方、S92において、撮影プレイ中ではないと判断した場合(S92でNO)には、稼働時間が設定されているかを判断する(S93)。S93において、稼働時間が設定されていると判断した場合(S93でYES)には、現在時刻が、設定されている稼働時間を越えたかを判断する(S94)。S94において、現在時刻が、設定されている稼働時間を越えたと判断した場合(S94でYES)には、写真撮影装置1の稼働を設定した稼働時間に合わせて終了することができるよう、編集プレイを行うユーザに対してサービスタイムを付加することなく、処理をS95に進める。
【0093】
また、S93において、稼働時間が設定されていないと判断した場合(S93でNO)、もしくはS94において、現在時刻が、設定されている稼働時間を越えていないと判断した場合(S94でNO)には、編集プレイを行うユーザに対し、編集可能時間を無制限にしても、何ら差し支えが無いので、もとの編集可能時間Aに、A+∞秒を代入、すなわち制限時間120秒を無制限にする(S98)。これにより、編集プレイを行うユーザに対して十分な編集時間を提供することができる。
【0094】
そして、次に、稼働時間が設定されているかを判断し(S99)、設定されていないと判断した場合(S99でNO)には、ユーザにより「おしまい」ボタンが押されたかを判断し(S102)、押されていないと判断した場合(S102でNO)には、編集プレイを継続させるべく、処理をS99に戻す。また、S102において、ユーザにより「おしまい」ボタンが押されたと判断した場合(S102でYES)には、利用時間の管理処理を終了して編集プレイを終了する。
【0095】
一方。S99において、稼働時間が設定されていると判断した場合(S99でYES)には、現在時刻が、稼働時間を越えたかを判断する(S100)。S100において、現在時刻が、稼働時間を越えていないと判断した場合(S100でNO)には、処理をS102に進める。また、S100において、現在時刻が、稼働時間を越えたと判断した場合(S100でYES)には、編集可能時間を無制限にしたままであると、ユーザが編集プレイを延々と続けた場合には、写真撮影装置1の稼働を終了させることができないので、画像編集用コンピュータ装置20bのCPU22bが備える制限手段としての機能により、この無制限の状態を解消すべく、編集可能時間Aに150秒を代入する。S101の処理を終えると、処理をS95に進める。このとき、代入する値を150秒とするのは、もともと付与されている制限時間としての120秒を確保するためであり、また、急に制限時間どおりに120秒のカウントダウンを開始すると、無制限のサービスタイムを期待しているユーザが不満を抱く恐れがあり、このようなユーザの不満が生じないようにするためである。なお、S101の処理の際には、閉店時間が過ぎたので無制限のサービスタイムを終了する旨を、音声案内あるいは編集画面上に表示してユーザに伝えることで、ユーザに事情を理解してもらい、ユーザに不満を与えないようにすることが好適である。
【0096】
以上のようにすることで、現在時刻が稼働時間を越えていない場合では、撮影プレイの開始の有無に応じて、可能な限りで編集プレイ中のユーザに対してサービスタイムを与えることができ、また、サービスタイムを与えている状態で、現在時刻が、設定されている稼働時間を越えた場合には、サービスタイムを終了すべく、編集可能時間のカウントダウンを開始するので、ユーザの編集プレイを円滑に終了させることができる。
【0097】
なお、上記においては、撮影側筐体3における背景ユニット4に対向する側の面に、指示手段としての稼働終了指示ボタン32(図3参照)が設けられていることを説明したが、この稼働終了指示ボタン32は、例えば現在時刻が設定されている稼働時間に達していない場合であっても、写真撮影装置1が設置される店舗などの管理人がこの稼働終了指示ボタン32を押すことで、任意のタイミングで利用制限手段を作動させることができる。すなわち、この稼働終了指示ボタン32を押すことで、現在時刻が稼働時間を越えた場合と同様の処理を、撮影用コンピュータ装置20a、画像編集用コンピュータ装置20bにさせることができ、上記任意のタイミングで、写真撮影装置1を円滑に終了させることができる。また、このような稼働終了指示ボタン32を設けることにより、写真撮影装置1の稼働を終了させることができるので、稼働時間をテストモードなどでわざわざ設定する必要がなく、設定の手間を省くことができる。
【0098】
以上のように本発明によると、撮影ブース6と、この撮影ブース6とは異なる箇所に少なくとも一つの編集ブース19とを備えた、多重接客方式を採用する写真撮影装置1において、ユーザによる写真撮影装置1の利用を円滑に終了させることができる。これにより、写真撮影装置1が設置される店舗などにおいては、営業終了時刻の近傍において、遅滞なく閉店作業に取り掛かることができる。また、このようにすることで、写真撮影装置1の電源を強制的に落として写真撮影装置1の稼働を終了する必要もない。」

(j)「【0100】
(実施の形態2)
次に、本発明の写真撮影装置1の実施の形態2を説明する。実施の形態1では稼働時間を設定する際に、稼働時間を、稼働開始時刻から稼働終了時刻までというように時間帯として設定したが、実施の形態2では、稼働時間として稼働終了時刻のみを設定する。したがって、実施の形態1で説明した写真撮影装置1と実施の形態2で説明する写真撮影装置とは、外観構成および機能構成は同様であるので、同じものには同符号を付することでその詳細な説明は省略する。
【0101】
また、上記のように、実施の形態2では、稼働開始時刻の設定は行わないので、図4に示したフローにおけるS25で、撮影側の処理は終了し、S26、S27の処理は行われない。この点を除けば、実施の形態2の写真撮影装置1における、撮影側の処理(図4参照)、テストモード(図5参照)、編集側の処理(図9参照)、および利用時間管理処理(図10および図11参照)は、実施の形態1と同様である。したがって、ここでは、上記の種々の処理についての詳細な説明も省略する。しかしながら、図5に示すテストモードにおいて、S46のときに表示される運営タイマー設定画面(図7および図8参照)が、実施の形態1とは異なるので、以下では、この異なる画面例を参照しながら、稼働時間として稼働終了時刻のみを設定する場合を説明する。
【0102】
実施の形態2においては、テストモード(図5参照)におけるS46にて表示される運営タイマー設定画面は、図12のようになる。図12に示すように、実施の形態2では、撮影用コンピュータ装置20aのCPU22aが備える設定手段としての機能により、稼働終了時刻のみを設定する。このとき、繁華街など午前零時を回っても営業をしている店舗に対応できるように、稼働終了時刻として設定可能な時間の範囲を、例えば、12時00分?29時59分のように設けておく。このようにすることで、例えば、翌朝の午前5時までが営業時間であるような店舗の場合、稼働終了時刻を「29時00分」に設定することができるので、日付が変わる営業時間であっても、稼働終了時刻の設定を簡単に行うことができる。」

上記先願の記載事項及び図面を総合勘案すると、先願には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「ユーザが、撮影ブース6内において、好みの撮影ポーズを形成して写真撮影を行い、撮影が終了すると、撮影した画像が表示される側の編集ブース19に移動し、タッチペン16を用いて、撮影画像が表示されるタブレットディスプレイ17に対して編集処理を行い、編集処理が終わると、編集時に入力した画像と撮影画像とが合成されて生成された印刷用画像がシールシートに印刷されて排出されるプリント取出口12に移動し、出力されるシールシートを取得して利用を終了する、写真撮影装置1において、
写真撮影装置1は、撮影用コンピュータ装置20aと、画像編集用コンピュータ装置20bと、動作中のコンピュータ装置20a、20bからの指示を受け付けて、接続されている各種装置を制御する制御基板21とを備え、
撮影プレイが行われている場合は、編集可能時間Aが120秒でカウントダウンを行い、「おしまい」ボタンが押されるか編集可能時間Aが0になると編集プレイを終了し、
撮影プレイ中でない場合で、稼働時間が設定されており、現在時刻が、設定されている稼働時間を越えたと判断した場合は、編集可能時間Aが120秒の状態でカウントダウンを行い、「おしまい」ボタンが押されるか編集可能時間Aが0になると編集プレイを終了し、
撮影プレイ中でない場合で、稼働時間が設定されており、現在時刻が、設定されている稼働時間を越えていないと判断した場合は、編集可能時間AにA+∞秒を代入して制限時間を無制限にし、編集プレイを継続させ、継続中に「おしまい」ボタンが押されると編集プレイを終了し、また継続中に現在時刻が稼働時間を越えたと判断した場合は、編集可能時間Aに150秒を代入して、カウントダウンを行い、「おしまい」ボタンが押されるか編集可能時間Aが0になると編集プレイを終了する、
という、編集ブース10の利用時間の管理に関する処理を含む編集側の処理を、画像編集用コンピュータ装置20bのCPU22bがHDD23bに記憶された動作プログラムをメモリ24bに読出して実行することにより行い、
稼働時間は、稼働終了時刻のみを設定することにより設定され、
営業終了時刻の近傍において装置の稼働を円滑に終了させる、
写真撮影装置。」

5.対比・判断
本願発明と、先願発明とを対比する。
先願発明における「ユーザ」は、本願発明における「利用者」に相当する。
先願発明における「撮影ブース6内において、好みの撮影ポーズを形成して写真撮影を行」うことは、本願発明における「撮影作業」に相当する。
先願発明における「撮影した画像が表示される側の編集ブース19に移動し、タッチペン16を用いて、撮影画像が表示されるタブレットディスプレイ17に対して編集処理を行」うことは、本願発明における「撮影作業により得られた画像の編集作業」に相当する。
先願発明における「ユーザが、撮影ブース6内において、好みの撮影ポーズを形成して写真撮影を行い、撮影が終了すると、撮影した画像が表示される側の編集ブース19に移動し、タッチペン16を用いて、撮影画像が表示されるタブレットディスプレイ17に対して編集処理を行」うことは、本願発明における「撮影作業と、前記撮影作業により得られた画像の編集作業とを利用者に行わせ」ることに相当する。
先願発明における「編集時に入力した画像と撮影画像とが合成されて生成された印刷用画像がシールシートに印刷されて排出される」ことは、本願発明における「編集作業により得られた編集済みの画像を印刷したシール紙を提供する」ことに相当する。
先願発明における「編集可能時間A」の「120秒」という時間は、本願発明における「あらかじめ設定された時間」に相当する。
先願発明における「撮影プレイ中でない場合で、稼働時間が設定されており、現在時刻が、設定されている稼働時間を越えていないと判断した場合は、編集可能時間AにA+∞秒を代入して制限時間を無制限にし、編集プレイを継続させ」ることは、本願発明における「あらかじめ設定された時間を延長させて」「編集作業を行わせる」ことに相当する。
先願発明における「稼働時間」は、「稼働終了時刻のみを設定することにより設定され」ていることから、本願発明における「設定した時刻」に相当する。
先願発明における「撮影プレイ中でない場合で、稼働時間が設定されており、現在時刻が、設定されている稼働時間を越えていないと判断した場合は、編集可能時間AにA+∞秒を代入して制限時間を無制限にし、編集プレイを継続させ」、「継続中に現在時刻が稼働時間を越えたと判断した場合は、編集可能時間Aに150秒を代入して、カウントダウンを行」うことは、本願発明における「設定した時刻になったとき、」「編集制御手段により行われる、」「編集作業に対して設定された時間の延長を禁止させ、残りの編集猶予時間の間、」「編集作業を行わせる」ことに相当する。
先願発明における「画像編集用コンピュータ装置20bのCPU22b」は、「撮影プレイ中でない場合で、稼働時間が設定されており、現在時刻が、設定されている稼働時間を越えていないと判断した場合は、編集可能時間AにA+∞秒を代入して制限時間を無制限にし、編集プレイを継続させ」、「継続中に現在時刻が稼働時間を越えたと判断した場合は、編集可能時間Aに150秒を代入して、カウントダウンを行」う「という、編集ブース10の利用時間の管理に関する処理を含む編集側の処理を」行うものであるから、本願発明における「編集制御手段」及び「編集時間管理手段」に相当する。
先願発明における「写真撮影装置1」は、本願発明における「写真シール作成装置」に相当する。

すると、本願発明と、先願発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「撮影作業と、前記撮影作業により得られた画像の編集作業とを利用者に行わせ、前記編集作業により得られた編集済みの画像を印刷したシール紙を提供する写真シール作成装置において、
あらかじめ設定された時間を延長させて前記編集作業を行わせる編集制御手段と、
設定した時刻になったとき、前記編集制御手段により行われる、前記編集作業に対して設定された時間の延長を禁止させ、残りの編集猶予時間の間、前記編集作業を行わせる編集時間管理手段と
を備える写真シール作成装置。」

一方で、両者は、次の点で一応相違する。
<一応の相違点>
本願発明では、「設定した時刻」が「閉店時刻として設定された時刻より所定の時間だけ前の時刻」であるのに対して、先願発明では、「設定した時刻」が「稼働終了時刻」であるが、「閉店時刻として設定された時刻より所定の時間だけ前の時刻」であるか不明な点。

上記一応の相違点について判断する。
先願発明は「営業終了時刻の近傍において装置の稼働を円滑に終了させる」という課題を解決するものである。一方、本願発明は「装置が設置される店舗の閉店時刻の間際に編集作業の時間の延長が禁止されるようにすることで、利用者が編集作業を続けることによって閉店の準備を進めることができなくなるといったことを防止する」(段落【0012】参照。)という課題を解決するものである。よって、両者は課題が共通している。
また、装置を稼働させて営業を行う店舗において、閉店時刻に装置が稼働していては、ユーザが閉店時刻になっても店舗から帰らずに装置を使用してしまい閉店できないということは、先願出願時において常識的な事項である。さらに、装置を稼働させる時間が長ければ、ユーザが装置を使用して店舗側に利益をもたらす可能性が高くなることもまた、先願出願時において常識的な事項である。よって、先願発明において、店舗側が装置に対して設定する稼働終了時刻を、閉店時刻を優先して閉店時刻より所定の時間だけ前の時刻を設定するか、利益を優先して閉店時刻と同一とするかは、店舗側の都合に合わせて適宜設定しうる設計的事項にすぎない。つまり、先願発明の「稼働終了時刻」が、「閉店時刻として設定された時刻より所定の時間だけ前の時刻」でないとしても、そのことは、本願発明と共通の課題である「営業終了時刻の近傍において装置の稼働を円滑に終了させる」という課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。
したがって、本願発明は、先願発明と実質的に同一である。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、先願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、先願の発明者が本願の発明者と同一ではなくかつ本願出願時に本願の出願人と先願の出願人とが同一ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-31 
結審通知日 2011-09-01 
審決日 2011-09-13 
出願番号 特願2005-345854(P2005-345854)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G03B)
P 1 8・ 161- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 村田 尚英
伊藤 幸仙
発明の名称 写真シール作成装置および時間管理方法  
代理人 稲本 義雄  

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