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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1245966
審判番号 不服2011-6262  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-22 
確定日 2011-11-01 
事件の表示 特願2007- 98913「手操作入力を統合する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月23日出願公開、特開2007-213599〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年1月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年1月26日(US)米国、1999年1月25日(US)米国)を国際出願日とする特願2000-528974号の一部を平成19年4月4日に新たな特許出願としたものであって、平成22年1月18日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月26日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年11月15日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成23年3月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年7月26日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
入力装置のタッチ感知表面上またはそれを横切る1つ以上のタッチデバイスの制御信号を連続的に生成する方法であって、
当該方法は、
タッチデバイス操作中に前記1つ以上のタッチデバイスの接線方向の速度を測定するステップと、
前記接線方向の速度に基づいて第1の制御信号を生成するステップと、
前記1つ以上のタッチデバイスのリフトオフの直前の前記1つ以上のタッチデバイスの接線方向の加速度の測定値を計算するステップと、
前記加速度の測定値を所定の閾値と比較して、前記加速度の測定値が前記所定の閾値よりも大きい場合に、前記第1の制御信号を連続的に生成するためのモードに入るステップと、
を有する方法。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-332620号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審が付与したものである。

(a)「【要約】
【目的】 パネルスイッチ上で弾き入力動作が行なわれた場合にはカーソルをディスプレイ上で迅速、且つ、飛躍的に移動させることができ、もってカーソル移動の操作性を向上することができるカーソル移動制御装置を提供する。
【構成】 パネルスイッチ上において指等により押下操作された場合、その押下操作が通常の押下動作により行なわれたものであるか、又は、弾き上げ動作により行なわれたものであるかを判断し(S10乃至S22)、弾き上げ動作を伴って押下操作が行なわれたと判断された場合には終点グループにおける各ポイントのX方向及びY方向の平均移動速度に基づいて各X方向タイマ、Y方向タイマにセットされるタイマセット時間を漸増させつつ割り込み処理を行なう(S40乃至S54)とともに、タイマセット時間が所定の設定値以下になった場合にCRTディスプレイ上でカーソルを停止させるように構成する。」

(b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数のスイッチ部が配列されたパネルスイッチ上で指等を介して各スイッチ部のオン位置を移動させることに対応して、CRT等のディスプレイ上に表示されたカーソルの移動制御を行なうカーソル移動制御装置に関し、特に、操作者がパネルスイッチ上で指等を移動する際に、パネルスイッチ上で指等をスライドさせる通常の入力動作と指等を弾き上げる弾き上げ入力動作とを判別し、弾き上げ入力動作が行なわれた場合にはカーソルをディスプレイ上で迅速、且つ、飛躍的に移動させるようにしたカーソル移動制御装置に関するものである。」

(c)「【0006】本発明は前記従来技術の問題点を解消するためになされたものであり、小型化を図ることによりキーボード等の入力装置に配設可能とするとともに、操作者がパネルスイッチ上で指等を移動する際に、パネルスイッチ上で指等をスライドさせる通常の入力動作と指等を弾き上げる弾き上げ入力動作とを判別し、弾き上げ入力動作が行なわれた場合にはカーソルをディスプレイ上で迅速、且つ、飛躍的に移動させることができ、もってカーソル移動の操作性を向上することができるカーソル移動制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため本発明は、複数の導体ラインを形成した一対のフィルム基板と、各フィルム基板間に介挿されるスペーサとを有し、各フィルム基板における各導体ラインがスペーサを介して相互に離間対向してマトリックス状に配設されてなるパネルスイッチと、カーソルを表示可能なディスプレイと、パネルスイッチ上で各導体ラインの接触位置が押下開始位置から押下終了位置まで移動されることに対応してディスプレイ上に表示されたカーソルを移動させるカーソル移動手段とを有するカーソル移動制御装置において、前記押下終了位置で前記各導体ラインの接触が保持されている時間が所定時間以下であるかどうかを判断する第1判断手段と、前記各導体ラインの接触位置が前記押下終了位置の近傍で移動する際に接触位置の移動速度が所定速度以上であるかどうかを判断する第2判断手段と、前記第1判断手段により前記各導体ラインの接触が保持されている時間が所定時間以下であると判断され、かつ、前記第2判断手段により前記接触位置の移動速度が所定速度以上であると判断された場合、前記ディスプレイ上でカーソルを所定距離だけ移動させるに要する時間を算出する時間算出手段と、前記カーソルを所定距離だけ移動させる毎に前記時間算出手段により算出された時間を一定の割合で増加させる時間増加手段とを備え、前記カーソル移動手段は、前記時間増加手段に増加された時間にて前記カーソルを所定距離だけ移動させ、前記時間増加手段により増加された時間が所定時間以上になった場合に、前記カーソルをディスプレイ上で停止させる停止手段をさらに備えた構成とされる。また、更に、各種データを入力するキーボードを有し、前記パネルスイッチはキーボードに配設された構成とされる。
【0008】
【作用】前記構成を有する本発明では、キーボードに配設されたパネルスイッチ上で指等を介して押下操作が行なわれた場合、パネルスイッチにおける各導体ラインの接触位置が押下開始位置から押下終了位置まで移動されることに対応して、ディスプレイ上に表示されたカーソルが移動される。このとき、第1判断手段を介して、押下終了位置にて各導体ラインの接触が保持されている時間が所定時間以下であるかどうか判断され、また同時に、第2判断手段を介して、各導体ラインの接触位置が押下終了位置の近傍で移動する際における移動速度が所定速度以上であるかどうか判断される。
【0009】そして、第1判断手段により各導体ラインの接触が保持されている時間が所定時間以下であると判断され、かつ、第2判断手段により接触位置の移動速度が所定速度以上であると判断された場合には、時間算出手段を介して、ディスプレイ上でカーソルを所定距離だけ移動させるに要する時間が算出される。この後、カーソルを所定距離だけ移動させ、このようにカーソルを所定距離だけ移動させる毎に、時間増加手段を介して時間算出手段により算出された時間を一定の割合で増加させる。そして、カーソル移動手段を介して、時間増加手段により増加された時間に従ってカーソルが所定距離だけ移動される。また、その増加された時間が所定の時間以上になった場合、カーソルは停止手段を介してディスプレイ上で停止されるものである。
【0010】
【実施例】以下、本発明の一実施例に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本実施例に係るカーソル移動制御装置の斜視図であり、かかるカーソル移動制御装置1は、カーソルや各種データを表示可能なCRTディスプレイ2、各種キーが配設されたキーボード3、及び、キーボード3の側部(図1中、右側部)に出入可能に配設されたパネルスイッチ4とから基本的に構成される。
【0011】パネルスイッチ4はカーソルを移動させる際に指等にて押下接触され、その押下開始位置から押下終了位置までの移動距離(パネルスイッチ4でオン状態が連続している間に指等がパネルスイッチ4上を移動する距離)に対応して、CRTディスプレイ2上に表示されたカーソルを移動させるものである。次に、かかるパネルスイッチ4の構成について図2、図3を参照して説明する。図2はパネルスイッチ4の一部を構成するフィルム基板の平面図、図3は2つのフィルム基板を重ね合わせてパネルスイッチ4を構成した状態を示す平面図である。図2において、フィルム基板5はポリエステルフィルム基材6からなり、このフィルム基材6の一面上には銀ペースト等の導電性塗料により印刷形成された複数の導電ライン7(図3に示すように本実施例では14個の導電ライン7が形成されている)が設けられている。また、各導電ライン7の間には、そのライン方向に沿って複数個のドットスペーサ8が形成されており、かかる各ドットスペーサ8は、後述するように、フィルム基板5において導電ライン7が形成された面ともう1つのフィルム基板5において導電ライン7が形成された面とを重ね合わせた際に、両フィルム基板5の導電ライン7相互が接触しないように一定の間隔だけ離間した状態で対向配置させるものである。
【0012】前記のよう構成された一対のフィルム基板5(一方のフィルム基板5にはドットスペーサ8が設けられていない)は、図3に示すように、各導電ライン7が相互に対向し、且つ、各導電ライン7が相互に直交して縦方向の導電ライン7(下側のフィルム基板5に形成されている)と横方向の導電ライン7(上側のフィルム基板5に形成されている)とがマトリックスを形成するように重ね合わせられる。これにより、パネルスイッチ4が構成されるものである。このように構成されたパネルスイッチ4では、一方のフィルム基板5における各導電ライン7からスイッチ検知信号をシリアルに入力するとともに、他方のフィルム基板5における各導電ライン7から出力されるスイッチ検知信号を検出することにより、パネルスイッチ4上において縦方向の導電ライン7と横方向の導電ライン7との接触ポイント(各導電ライン7は、ドットスペーサ8の作用を介して相互の交差ポイントで接触され、パネルスイッチ4が指等で押下された場合には複数個の交差ポイントでオンされる)を検出するものである。従って、パネルスイッチ4上で指等により押下接触され、押下位置が押下開始位置から押下終了位置まで移動した場合には、各縦方向の導電ライン7と各横方向の導電ライン7との接触ポイントが指等の移動に対応して移動されることとなり、かかる接触ポイントの移動状態が一定の時間間隔で検出されるものである。尚、パネルスイッチ4における接触ポイントの検出方法については公知のものであるので、ここではその説明を省略する。
【0013】次に、カーソル移動制御装置1の制御系について図4に基づき説明する。図4はカーソル移動制御装置1の制御ブロック図を示し、制御装置Cを核として構成される。制御装置Cは、バスラインBを介して相互に接続された中央処理装置(以下、CPUと称する)10、RAM11、ROM12、X方向タイマ13、Y方向タイマ14を備えている。ここに、CPU10はROM12に記憶されている各種の制御プログラムに基づいて各種データの演算を行なうものであり、また、RAM11はCPU10により演算されたデータを一時的に記憶するものである。かかるRAM11には、指等をパネルスイッチ4上で押下しつつ移動した際に、パネルスイッチ4上で検出された複数個(本実施例では9個)の各接触ポイント(各接触ポイントは前記のようにパネルスイッチ4を指等で押下した際に各導電ライン7の交差ポイントでオンされる)のそれぞれについてX座標データ、Y座標データ、移動時間データ、後述する包含に関するデータ等を記憶するリングバッファが設けられている。また、RAM11には、各接触ポイントについてROM12に記憶されたスキャニングプログラムに基づいてパネルスイッチ4における各導電ライン7の交差ポイントをスキャンした際に、前回スキャン時においてオンされた複数個の各接触ポイントの位置と数(前回スキャン時のオン領域)、及び、今回スキャン時においてオンされた複数個の各接触ポイントの位置と数(今回スキャン時のオン領域)を記憶するオン領域メモリ等のメモリが設けられている。
【0014】また、ROM12には、図4に示すように、後述する包含値、及び、各接触ポイントの始点グループと終点グループとの間における距離とからリングバッファ内における始点-終点間距離を求めるためのテーブルが記憶されており、更に、図5に示すように、後述する終点グループにおける各接触ポイントの平均移動速度、及び、実際の押下開始位置における接触ポイントと押下終了位置における接触ポイントとの間の距離に基づいて、X方向、Y方向についてのカーソルの移動速度を求めるためのテーブルが記憶されている。また、ROM12には、後述するカーソル移動制御の基本プログラム、パネルスイッチ4上で指等が弾き上げ動作を伴いつつ押下動作が行なわれたかどうかを判断する弾き上げ動作検出プログラム、弾き上げ動作時にカーソルの移動を制御するカーソル移動プログラム、X方向タイマ13の割り込み処理プログラム、Y方向タイマ14の割り込み処理プログラム、その他カーソル移動制御装置1の制御上必要な各種のプログラムが記憶されている。
【0015】更に、X方向タイマ13は、弾き上げ動作時にカーソルのX方向における移動を行なう際に起動されて割り込み処理を行なうためのタイマであり、また、Y方向タイマ14は、同様に弾き上げ動作時にカーソルのY方向における移動を行なう際に起動されて割り込み処理を行なうためのタイマである。
【0016】また、制御装置Cには出力ポート15及び入力ポート16を介してパネルスイッチ4が接続されており、これよりCPU10は、ROM12に記憶されたスキャニングプログラムに基づいて、出力ポート15からスイッチ検知信号をパネルスイッチ4における一方のフィルム基板5の各導電ライン7に出力し、他方のフィルム基板5の各導電ライン7から出力されるスイッチ押下信号(押下されている接触ポイントから出力される)を入力ポート16から取り込む。これにより、CPU10は、パネルスイッチ4上において押下接触されている各接触ポイントの位置(X座標データ、Y座標データ)を検出してメモリに記憶する。更に、制御装置Cには、出力ポート17を介してCRTディスプレイ2が接続されており、CPU10は後述のカーソル移動制御プログラムに基づいてディスプレイ2上に表示されたカーソルの移動制御を行なうものである。
【0017】続いて、前記のように構成されたカーソル移動制御装置1の動作について図7乃至図13に基づき説明する。ここで、パネルスイッチ4は、図12に押下操作状態を示すように、指20により押下開始位置Aから押下終了位置Bまで軌跡Zをもって押下操作されたものとする。また、かかる押下操作の間におけるパネルスイッチ4上でオンされた各ポイントP1乃至P12と各種情報との関係は、図13に示すような関係を有しているものとする。即ち、図13はパネルスイッチ4上でオンされた各ポイントP1乃至P12と各種情報との関係を模式的に示す説明図であり、図13中、各オンポイントP1乃至P12は、指20にてパネルスイッチ4を押下した時には複数個のポイントが同時にオンされることから、オンされた各ポイントのX座標データとY座標データの平均値を求めて各ポイントを代表するポイントとして表わされており、本実施例では4ポイントの平均値を求めて表わしている。これらの各ポイントは、CPU10によるスキャニング動作を介して5msec毎に検出される。
【0018】また、パネル移動箇所数Cは、2個の縦方向導電ライン7間又は2個の横方向導電ライン7間の距離を1ステップとした場合に、前記押下操作中に横切ったステップ数を表わしている。また、バッファ内データDは、前記したように、RAM11のリングバッファ内に記憶されている9個のポイント(押下終了位置BにおけるポイントP12から遡って9個のポイント)に関するデータを意味する。更に、各ポイントP1乃至P12の内、ポイントP12から押下開始方向に遡って4個のポイント(P12、P11、P10、P9)を終点グループEGとし、各4個のポイントのX座標データとY座標データとの平均値により表わされるポイントF(星形マークにて示す)を終点グループEGの代表値とする。また、ポイントP8から押下開始方向に遡って4個のポイント(P8、P7、P6、P5)を始点グループSGとし、各4個のポイントのX座標データとY座標データとの平均値により表わされるポイントH(星形マークにて示す)を始点グループSGの代表値とする。更に、このように求めた終点グループ代表値Fと始点グループSGとの間の距離をJ(ステップ数で表わされる)とする。
【0019】先ず、カーソル移動制御の基本動作について図7に基づき説明する。図7はカーソル移動制御における基本プログラムのフローチャートを示し、先ず、ステップ(以下、Sと略記する)1において、パネルスイッチ4が押下されているかどうか判断される。押下されていない場合(S1:NO)には押下されるまで待機する一方、押下されている場合(S1:YES)にはパネルスイッチ4上の押下位置までカーソルを移動させる(S2)。そして、再度パネルスイッチ4が押下されているかどうか判断され(S3)、パネルスイッチ4が押下されている限り(S3:YES)S2に戻ってカーソルを移動させる。一方、S3にてパネルスイッチ4の押下が終了したと判断された場合(S3:NO)には、後述する弾き上げ動作をもってパネルスイッチ4が押下されたかどうか判断される(S4)。弾き上げ動作の条件を満たさない場合(S4:NO)、カーソル移動を停止した(S5)後S1に戻る。また、弾き上げ動作条件を満たす場合(S4:YES)には、その弾き上げ動作に従って後述するカーソルの連続移動を行う(S6)。この後、パネルスイッチ4が押下されているかどうか判断され(S7)、押下されていない場合(S7:NO)にはS6に戻る一方、押下されている場合(S7:YES)にはカーソルの連続移動を停止した(S8)後、S1に戻る。
【0020】このように、S6において、カーソルの連続移動が行なわれている間にパネルスイッチ4の押下された場合には、カーソルの連続移動の停止が行なわれることから、カーソルを迅速に移動させつつ所望の位置で停止させることが可能となるものである。
【0021】次に、前記S4において行なわれる弾き上げ動作条件の判断処理、前記S6にて行なわれるカーソルの連続移動処理について図8乃至図11に基づき説明する。先ず、前記S4にて行なわれる弾き上げ動作条件の判断処理について図8を参照して説明する。図8は弾き上げ動作条件の検出プログラムのフローチャートであり、S10にて前記した始点グループSGと終点グループEGとの間のグループ間距離Jが計算される。そして、その計算されたグループ間距離Jが2ステップよりも小さいかどうか判断される(S2)。このような判断を行なうのは、グループ間距離Jが2ステップよりも小さい程度の場合には通常のスピードによる入力動作と考えられ、また、グループ間距離Jが2ステップよりも大きい場合には弾き上げ動作が行なわれた確率が高いと考えられることに基づく。従って、グループ間距離Jが2よりも小さい場合(S11:YES)には、弾き上げ動作は行なわれなかったものと判断して処理をリターンする。一方、グループ間距離Jが2ステップ以上である場合(S11:NO)にはS12に移行する。
【0022】S12においては、前記押下開始位置AのポイントP1と押下終了位置BのポイントP12との間の距離が計算され、かかる距離が3ステップよりも小さいかどうか判断される(S13)。かかる判断は、前記S12におけると同様、押下開始位置AのポイントP1と押下終了位置BのポイントP12との間の距離が3ステップ以下の場合には通常のスピードをもって押下操作されたものと考えられるのに対して、かかる距離が3ステップ以上の場合には弾き上げ動作をもって押下操作が行なわれた確率が高いと考えられるからである。従って、ポイントP1とポイントP12間の距離が、3ステップ以下の場合(S13:YES)には弾き上げ動作が行なわれなかったものとして処理をリターンする。一方、各ポイントP1、P12間距離が3ステップ以上の場合(S13:YES)にはS14に移行する。
【0023】S14においては、最終ポイントP12から押下開始方向に遡って5ポイント(ポイントP12、P11、P10、P9、P8)の内、1ステップ移動するのに要した時間が一定値を越した回数が計算される。ここに、一定値としては32msecが設定されている。この後、このように計算された回数が0回以下であるかどうか判断される(S15)。かかるS15は、押下終了位置Bの近傍において前記各ポイントの移動速度を観測することにより、弾き上げ動作が行なわれたかどうかを判断するためのものである。即ち、弾き上げ動作が行なわれる場合には、押下終了位置Bの近傍において各ポイントの移動速度は速くなり、各ポイントが1ステップを移動するための時間は一定時間(32msec)以下と考えられ、これに対して通常のスピードによる押下操作の場合には、押下終了位置Bの近傍で各ポイントの移動速度が低下して1ステップを移動するのに一定時間よりも長い時間を要すると考えられるからである。従って、前記S14にて計算された回数が0以上である場合(S15:YES)には、弾き上げ動作が行なわれなかったものとして処理がリターンされ、また、0以下である場合(S15:NO)には、弾き上げ動作が行なわれたものとしてS16に移行する。
【0024】S16では、押下終了位置BのポイントP12がオンされた時間が計算され、その計算された時間が設定値(32msec)よりも大きいかどうか判断される。この判断は、弾き上げ動作が行なわれた場合には指20が速く動作することから最終ポイントP12がオンされている時間が短く、また、通常の押下動作の場合には指20が最終ポイントP12で比較的長い時間留まっていることを考慮したものである。従って、ポイントP12のオン時間が設定値よりも長い場合(S16:YES)には弾き上げ動作が行なわれなかったものとして処理がリターンされ、一方、ポイントP12のオン時間が設定値よりも短い場合(S16:YES)には弾き上げ動作が行なわれたものとしてS18に移行する。」

(d)「【発明の効果】以上説明した通り本発明は、小型化を図ることによりキーボード等の入力装置に配設可能とするとともに、操作者がパネルスイッチ上で指等を移動する際に、パネルスイッチ上で指等をスライドさせる通常の入力動作と指等を弾き上げる弾き上げ入力動作とを判別し、弾き上げ入力動作が行なわれた場合にはカーソルをディスプレイ上で迅速、且つ、飛躍的に移動させることができ、もってカーソル移動の操作性を向上することができるカーソル移動制御装置を提供することができ、その産業上奏する効果は大である。」

よって、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「パネルスイッチと、カーソルを表示可能なディスプレイと、キーボードに配設されたパネルスイッチ上で指等を介して押下操作が行なわれた場合、パネルスイッチ上で各導体ラインの接触位置が押下開始位置から押下終了位置まで移動されることに対応してディスプレイ上に表示されたカーソルを移動させるカーソル移動手段とを備え、
前記各導体ラインの接触位置が前記押下終了位置の近傍で移動する際に接触位置の移動速度が所定速度以上であるかどうかを判断する判断手段を備え、
操作者が、入力装置に配設されたパネルスイッチ上で指等を移動する際に、パネルスイッチ上で指等をスライドさせる通常の入力動作と指等を弾き上げる弾き上げ入力動作とを判別し、弾き上げ入力動作が行なわれた場合にはカーソルをディスプレイ上で迅速、且つ、飛躍的に移動させることができ、もってカーソル移動の操作性を向上することができるカーソル移動制御装置の制御方法であって、
パネルスイッチが押下されているかどうか判断され、押下されている場合にはパネルスイッチ上の押下位置までカーソルを移動させ、パネルスイッチが押下されている限りカーソルを移動させ、一方、パネルスイッチの押下が終了したと判断された場合には、弾き上げ動作をもってパネルスイッチが押下されたかどうか判断され、弾き上げ動作条件を満たす場合には、その弾き上げ動作に従ってカーソルの連続移動を行うものであり、
最終ポイントP12から押下開始方向に遡って5ポイント(ポイントP12、P11、P10、P9、P8)の内、1ステップ移動するのに要した時間が一定値(32msec)を越した回数が計算され、このように計算された回数が0回以下であるかどうか判断され、
押下終了位置Bの近傍において前記各ポイントの移動速度を観測することにより、弾き上げ動作が行なわれたかどうかを判断し、即ち、弾き上げ動作が行なわれる場合には、押下終了位置Bの近傍において各ポイントの移動速度は速くなり、各ポイントが1ステップを移動するための時間は一定時間(32msec)以下と考えられ、これに対して通常のスピードによる押下操作の場合には、押下終了位置Bの近傍で各ポイントの移動速度が低下して1ステップを移動するのに一定時間よりも長い時間を要すると考えられ、
従って、計算された回数が0以下である場合には、弾き上げ動作が行なわれたものとする、方法。」


4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

本願発明はタッチ感知表面を有し、これによりタッチを検出する入力装置であり、引用発明も入力装置にパネルスイッチが配設され、パネルスイッチに指等が接触することで入力を行う装置であることから、引用発明の「入力装置」及び「入力装置に配設されたパネルスイッチ」は、本願発明の「入力装置」に相当する。
また、本願明細書の段落【0032】を参照すると、本願発明のタッチデバイスとは、マルチ-タッチ表面2に埋め込まれたセンサが検出する対象物を指し、平らにされた手4の全体、指先、親指、てのひら、および他の導電性タッチデバイスを指すものと認められる。一方、引用発明の「指等」は、パネルスイッチに接触した時に検知され得る物体をさすことが明らかであるから、引用発明の「指等」は、本願発明の「タッチデバイス」に相当する。
そして、引用発明は、パネルスイッチ上で指等をスライド又は弾き上げ、この動作を観測するものであり、引用発明の指等がパネルスイッチ上でスライドする動作時には、指等がパネルスイッチ上でパネルスイッチに接触した状態であり、本願発明の「タッチ感知表面上にある」状態に相当する。また、引用発明の指等がパネルスイッチ上で弾き上げる動作時には、指等がパネルスイッチ上空においてパネルスイッチに接触せずに移動した状態となり、本願発明の「タッチ表面上を横切る」状態に相当する。したがって、引用発明は、タッチデバイスが、タッチ感知表面上にあるかまたはタッチ表面上を横切るものであると言える。さらに引用発明は、弾き上げ動作に従ってカーソルの連続移動を行うものであり、カーソル移動のための制御信号を連続的に生成するものであると言える。よって、引用発明と本願発明とは、「入力装置のタッチ感知表面上又はそれを横切る1つ以上のタッチデバイスの制御信号を連続的に生成する方法である」点で一致する。

引用発明は、パネルスイッチ上で各導体ラインの接触位置が押下開始位置から押下終了位置まで移動されることに対応してディスプレイ上に表示されたカーソルを移動させるものであり、タッチデバイスの操作中に、タッチデバイスがパネルスイッチに接しつつ移動する際の移動方向(本願発明の「接線方向」に相当。)の位置の変位を測定するものであると言える。したがって、引用発明と本願発明とは、少なくとも「タッチデバイス操作中に前記1つ以上のタッチデバイスの接線方向の動きを測定するステップを有する」点で共通する。

引用発明は、パネルスイッチ上で各導体ラインの接触位置が押下開始位置から押下終了位置まで移動されることに対応してディスプレイ上に表示されたカーソルを移動させるものであるのに対して、本願発明は前記接線方向の速度に基づいて第1の制御信号を生成するものであるから、引用発明と本願発明とは、少なくとも、タッチデバイスの接線方向の動きに基づいて第1の制御信号を生成するステップを有する点で共通する。

引用発明の「弾き上げ入力動作」における「押下終了」は本願発明の「リフトオフ」に相当し、引用発明のタッチデバイスが「押下終了位置の近傍」にある時点は、本願発明の「リフトオフの直前」に相当する。そして、引用発明は、弾き上げ動作を判断するために、押下終了位置Bの近傍である最終ポイント12から押下開始方向に5ポイント遡った各ポイントでの移動速度を観測するものであるから、引用発明と本願発明とは、前記1つ以上のタッチデバイスのリフトオフの直前の前記1つ以上のタッチデバイスの接線方向の運動に関する測定値を計算するステップを有する点で共通する。

引用発明は、 押下終了位置Bの近傍において接触位置の移動速度を観測することにより、弾き上げ動作が行なわれたかどうかを判断するものであり、弾き上げ動作条件として、押下終了位置近傍の前記5ポイントの内、1ステップ移動するのに要した時間が一定値を超した回数が計算され、このように計算された回数が0回以下である場合には、カーソルの連続移動を行うものである。これは、押下終了位置の近傍の各ポイントにおいて所定速度を超える移動速度であったかどうかを観測し、押下終了位置の近傍の5ポイントすべてにおいて所定速度を超える移動速度であったかどうかを観測するものであると言える。また、カーソルが連続移動する状態をひとつのモードとみなすことができる。したがって、引用発明と本願発明とは、タッチデバイスの運動に関する測定値を所定の閾値と比較して、前記運動に関する測定値が前記所定の閾値よりも大きい場合に、前記第1の制御信号を連続的に生成するためのモードに入るステップを有する点で共通すると言える。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「入力装置のタッチ感知表面上またはそれを横切る1つ以上のタッチデバイスの制御信号を連続的に生成する方法であって、
当該方法は、
タッチデバイス操作中に前記1つ以上のタッチデバイスの接線方向の動きを測定するステップと、
前記接線方向の動きに基づいて第1の制御信号を生成するステップと、
前記1つ以上のタッチデバイスのリフトオフの直前の前記1つ以上のタッチデバイスの接線方向の運動に関する測定値を計算するステップと、
前記運動に関する測定値を所定の閾値と比較して、前記運動に関する測定値が前記所定の閾値よりも大きい場合に、前記第1の制御信号を連続的に生成するためのモードに入るステップと、
を有する方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は、タッチデバイス操作中にタッチデバイスの速度を測定し、該速度に基づいて第1の制御信号を生成するのに対して、
引用発明は、タッチデバイス操作中にタッチデバイスの動き(変位)を測定し、該変位に基づいて第1の制御信号を生成する点。

(相違点2)
第1の制御信号を連続的に生成するためのモードに入るか否かの判断のために、本願発明は、タッチデバイスの加速度の測定値を計算するものであるのに対して、引用発明はタッチデバイスの速度を計算するものである点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
入力装置においてユーザの操作する入力デバイスの速度に基づいて、カーソル移動などの制御をおこなうことは本願優先日前に周知の技術(<1>特開平1-100622号公報第2ページ右上欄、マウスの移動速度を電気的に検出し、検知パルス数をカーソルの移動距離に変換する点、<2>特開平3-71219号公報従来の技術、マウスから送出された単位時間あたりのパルス数に応じた移動速度をカーソルに加える点、<3>特開昭64-9488号公報第4ページ、マウスの移動量に対する移動速度から表示手段におけるカーソルの移動量を決定する点)である。
したがって、引用発明において、タッチデバイスの動き(変位)を測定し、これに基づいて第1の制御信号を生成するのに換えて、タッチデバイスの速度を測定し、該速度に基づいて第1の制御信号を生成するように構成することで、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について
入力装置において、オブジェクトの移動の態様を、ユーザの操作する入力デバイスの速度、あるいは加速度に応じて異ならせることは本願優先日前に周知の技術(<4>特開平9-237175号公報段落【0016】、【0041】、ペン等の操作手段がデジタイザ上に置かれてから離れるまでのストロークにおいて、移動方向と移動速度あるいは移動加速度に従いスクロール方向とスクロール幅を算出して、スクロールを行う点、<5>特開平7-160428号公報段落【0010】?【0013】、図5、カーソル移動監視部51は、オペレーターによりカーソルがゆっくり移動させられたか早く移動させられたかその移動時における速度または加速度と、その移動した方向を検出し、移動領域予測判定部52は、カーソルの方向と速度又は加速度の大きさにより速度又は加速度が大の場合、長距離を移動させようとしている状態と判定し、カーソル32をその検出した方向の延長線上に存在する領域を指定する点、<6>特開平3-269717号公報請求項1、第1図、1回でめくるページ枚数を、ページめくり操作時のマウスの移動速度或いは移動加速度の大きさで変える点)である。
したがって、第1の制御信号を連続的に生成するためのモードに入るか否かの判断のために、引用発明のタッチデバイスの運動に関する測定値(速度)を計算するのに換えて、加速度の測定値を計算するように構成することで、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明が奏する効果は当業者が引用発明及び周知技術から予想できる範囲内のものである。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-01 
結審通知日 2011-06-06 
審決日 2011-06-22 
出願番号 特願2007-98913(P2007-98913)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森田 充功井出 和水  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 安久 司郎
佐藤 匡
発明の名称 手操作入力を統合する方法  
代理人 近藤 直樹  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 大塚 文昭  
代理人 大塚 文昭  
代理人 上杉 浩  
代理人 上杉 浩  
代理人 西島 孝喜  
代理人 須田 洋之  
代理人 須田 洋之  
代理人 西島 孝喜  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 近藤 直樹  

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