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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1246723 |
審判番号 | 不服2008-24911 |
総通号数 | 145 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-29 |
確定日 | 2011-11-09 |
事件の表示 | 特願2005-236287「タッチパネルのスクロール制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月11日出願公開、特開2007- 4762〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成17年8月17日(パリ条約による優先権主張2005年6月23日、台湾)の出願であって、平成20年6月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成20年9月29日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年9月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、平成20年6月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「ディスプレイウインドウを具えた電子製品の入力装置であるタッチパネルに応用されるスクロール制御方法において、 タッチパネル上に少なくとも一つのスクロール機能起動エリアを設定し、スクロール機能起動に供し、該ディスプレイウインドウのスクロールを制御するステップ、 物品の少なくとも一つのスクロール機能起動エリアへの接触を確認し、スクロール機能を起動するステップ、 該物品の移動量を計算してスクロール信号を送出するステップであって、 水平方向の移動量が垂直方向の移動量より大きい時、水平方向のスクロール信号を送出して、該ディスプレイウインドウを水平スクロールするステップ、 水平方向の移動量が垂直方向の移動量より小さい時、垂直方向のスクロール信号を送出して、該ディスプレイウインドウを垂直スクロールするステップ、 を有する、上記該物品の移動量を計算してスクロール信号を送出するステップ、 該物品がタッチパネルより離れる時、該スクロール機能を終了するステップ、 を包含し、該物品が少なくとも一つのスクロール機能起動エリアから滑り出ても、スクロール機能を維持することを特徴とする、タッチパネルのスクロール制御方法。」(下線は補正箇所を示す。) 2.補正の目的 本件補正は、「タッチパネルのスクロール制御方法」を、「ディスプレイウインドウを具えた電子製品の入力装置であるタッチパネルに応用されるスクロール制御方法」と限定し、そして、「スクロール機能を起動するステップ」、「水平方向のスクロール信号を送出するステップ」、「垂直方向のスクロール信号を送出するステップ」を、それぞれ「スクロール機能起動に供し、該ディスプレイウインドウのスクロールを制御するステップ」、「水平方向のスクロール信号を送出して、該ディスプレイウインドウを水平スクロールするステップ」、「垂直方向のスクロール信号を送出して、該ディスプレイウインドウを垂直スクロールするステップ」とするもので、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-198517号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 a)「本発明は、コンピュータ(パーソナルコンピュータ、ワークステーション等)と一体化された表示装置の表示画面、あるいはコンピュータとオンラインで接続された表示装置の表示画面への接触状態および接触座標を検出する接触検出手段を備え、前記表示画面に表示された表示内容を前記接触座標の変化量に応じて変化させる表示装置の表示内容制御方法に関するものである。」(段落【0001】、下線は当審で付与、以下同様) b)「図1は、本発明方法を適用した対話型電子白板システムの実施の形態を示すシステム構成図であり、表示画面へのペン1の接触状態および接触座標を検出する接触検出手段の機能を備えた電子白板型タブレット(以下、電子白板と称す)2と、この電子白板2に文書等のデータを投影表示するプロジェクタ3と、プロジェクタ3に対し表示データを転送するコンピュータ4とを具備して成る。」(段落【0011】) c)「電子白板2には、プロジェクタ3によって例えば図2(a)のような画像22が表示されているものとする。この表示された画像22をスクロールさせるため、電子白板2の表示画面の周縁部(図2(a)?(c)に斜線を付けて示す)には、表示内容切り替え制御部43のスクロール制御機能によってスクロール操作領域21が表示されるようになっている。 【0016】ここで、画像22を画面左方向にスクロールさせたい場合、ペン1を図2(b)に示すように画面下部のスクロール操作領域21に接触させた後、その接触状態を維持したまま画面左方向に移動させるか、あるいは、図2(c)に示すようにペン1を画面右部のスクロール操作領域21に接触させた後、その接触状態を維持したまま画面左方向に移動させる操作を行う。図2(c)の場合、ペン1がスクロール操作領域21に一旦接触した後であるため、ペン1の移動先は、表示領域に侵入しても構わない。なお、図2(c)において符号23は、ペン1の操作者を表わしている。 【0017】ペン1がスクロール操作領域に接触し、その後接触位置が変化すると、接触したことを示すON信号およびペン座標データが電子白板2からコンピュータ4に出力される。【0018】ペン座標入力処理部41は、上述したON信号およびペン座標データを順次取り込み、表示内容切り替え制御部43にON信号が入力されたことを通知する。表示内容切り替え制御部43は、ON信号が入力されたことにより、図3のフローチャートに示すスクロール制御処理プログラムを起動する。 【0019】このスクロール制御処理プログラムでは、まず、ON信号出力時のペン座標データを現在位置(xPrev,yPrev)としてペン位置記憶部42に記憶させる(ステップ31)。次に、ペン1が電子白板2の表示画面から離されたか否かをON/OFF信号によって判定し(ステップ32)、離された場合には処理を終了する。一方、離されていない場合には、ペン座標が変化したか否かによってペン1が移動したか否かを判定し(ステップ33)、ペン1が移動した場合に限り、移動後のペン座標データを移動先位置(xNow,yNow)としてペン位置記憶部42に記憶させる(ステップ34)。【0020】次に、ペン1の座標変化量(xNow-xPrev,yNow-yPrev)を求め、さらにその座標変化量に係数kを乗じてペン1の座標変化量を増幅し、その増幅した座標変化量分だけ画像22を移動させる(ステップ35)。移動の後、(xNow,yNow)をペン1の現在位置(xPrev,yPrev)としてペン位置記憶部42に更新記憶させる(ステップ36)。その後、処理をステップ32に戻し、同様の処理を繰り返す。 【0021】以上のようなスクロール制御によれば、ペン1をスクロール操作領域21に一旦接触させた後、スクロール操作領域内で、あるいはスクロール操作領域から表示領域に向けて所望量だけペン1を移動させると、その移動量に応じて表示画像22が表示領域内でペン1の移動方向にスクロールされる。」(段落【0015】?【0021】) d)「また、スクロール操作領域21に一旦接触した後のペン1の移動量を検出しているため、ペン1の移動先は表示領域に侵入しても何等支障がない。すなわち、表示領域が描画モードになっていた場合に、ペン1の移動先が表示領域に侵入したとしても、スクロールモードでの侵入であるので、表示領域にペン1の軌跡が描画されるといった不具合は生じない。さらに、スクロール操作領域21に一旦接触した後は表示領域をスクロール操作のために積極的に使用できることになるので、スクロール操作領域21の幅はペン1が接触し得る程度の小さな幅で済むことになり、スクロール領域21を表示領域の周縁部に設けたことに起因する表示領域の減少を最小限にすることができる」(段落【0025】) e)「なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で種々変更して構成することができる。例えば、本発明方法の適用する対象は電子白版に限定されるものではなく、液晶表示一体型のタブレットを備えた小型コンピュータにおいても同様に適用することができる。 」(段落【0061】) これらの記載によれば、引用例1には、 「液晶表示一体型のタブレットを備えた小型コンピュータにおいて、表示装置の表示画面への接触状態および接触座標を検出する接触検出手段を備え、前記表示画面に表示された表示内容を前記接触座標の変化量に応じて変化させる表示装置の表示内容制御方法に関するもので、 表示画面の周縁部には、表示内容切り替え制御部のスクロール制御機能によってスクロール操作領域が表示され、 ペンを画面右部のスクロール操作領域に接触させた後、その接触状態を維持したまま画面左方向に移動させる操作を行うことにより、接触したことを示すON信号およびペン座標データがコンピュータに出力され、 ON信号出力時のペン座標データを現在位置(xPrev,yPrev)としてペン位置記憶部に記憶させ、 次に、ペンが表示画面から離されたか否かをON/OFF信号によって判定し、離された場合には処理を終了し、 一方、離されていない場合には、ペン座標が変化したか否かによってペンが移動したか否かを判定し、ペンが移動した場合に限り、移動後のペン座標データを移動先位置(xNow,yNow)としてペン位置記憶部に記憶させ、 次に、ペンの座標変化量(xNow-xPrev,yNow-yPrev)を求め、さらにその座標変化量に係数kを乗じてペンの座標変化量を増幅し、その増幅した座標変化量分だけ画像を移動させ、 そして、スクロール操作領域に一旦接触した後のペンの移動量を検出しているため、ペンの移動先は表示領域に侵入しても何等支障がない、 表示装置の表示内容制御方法。」 の発明(以下「引用例1記載の発明」という。)が開示されていると認めることができる。 4.対比 そこで、本願補正発明と引用例1記載の発明とを比較すると、引用例1記載の発明の「液晶一体型のタブレット」は、本願補正発明の「タッチパネル」に相当し、以下同様に、「スクロール操作領域」は「スクロール機能起動エリア」に、「ペン」は「物品」に、それぞれ相当し、さらに、引用例1記載の発明の「増幅したペン座標変化量」は、その変化量によりX方向(水平方向)及びY方向(垂直方向)に画像を移動(スクロール)させていることから、本願補正発明の「水平方向のスクロール信号」及び「垂直方向のスクロール信号」に相当する。 また、引用例1記載の「ペンが表示画面から離されたか否かをON/OFF信号によって判定し、離された場合には処理を終了」することは、本願補正発明の「物品がタッチパネルより離れる時、該スクロール機能を終了する」ことに相当している。 そして、引用例1記載の発明の「スクロール操作領域に一旦接触した後のペンの移動量を検出しているため、ペンの移動先は表示領域に侵入しても何等支障がない」ことは、本願補正発明の「該物品が少なくとも一つのスクロール機能起動エリアから滑り出ても、スクロール機能を維持すること」と同等である。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> ディスプレイウインドウを具えた電子製品の入力装置であるタッチパネルに応用されるスクロール制御方法において、 タッチパネル上に少なくとも一つのスクロール機能起動エリアを設定し、スクロール機能起動に供し、該ディスプレイウインドウのスクロールを制御するステップ、 物品の少なくとも一つのスクロール機能起動エリアへの接触を確認し、スクロール機能を起動するステップ、 該物品の移動量を計算してスクロール信号を送出するステップであって、 水平方向のスクロール信号を送出し、該ディスプレイウインドウを水平スクロールするステップ、 垂直方向のスクロール信号を送出して、該ディスプレイウインドウを垂直スクロールするステップ、 を有する、上記該物品の移動量を計算してスクロール信号を送出するステップ、 該物品がタッチパネルより離れる時、該スクロール機能を終了するステップ、 を包含し、該物品が少なくとも一つのスクロール機能起動エリアから滑り出ても、スクロール機能を維持することを特徴とする、タッチパネルのスクロール制御方法。 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1> 本願補正発明は、物品の移動量を計算してスクロール信号を送出するステップにおいて、水平方向の移動量が垂直方向の移動量より大きい時、水平方向のスクロール信号を送出し、水平方向の移動量が垂直方向の移動量より小さい時、垂直方向のスクロール信号を送出するのに対し、引用例1記載の発明は、水平方向の移動量、垂直方向の移動量それぞれの移動量に対応した水平方向のスクロール信号及び垂直方向のスクロール信号を送出する点。 5.相違点の判断 <相違点1について> 画面をスクロールさせる際に、そのスクロール方向を、一回の操作で水平及び垂直の両方向にスクロールさせたり、一回の操作で水平、垂直のどちらか一方の方向にスクロールさせたりすることは、画面情報、操作性等を考慮して、適宜採用する事項(特開2003-173239号公報、段落【0004】参照)であり、移動方向を水平、垂直のどちらか一方の方向とする際に、水平方向と垂直方向の移動量等を比べ、割合が大きい方向に移動するようにすることは、周知の技術(前記公報(特開2003-173239号公報)の段落【0019】及び特開平6-214715号公報の段落【0013】から【0020】参照)であることから、引用例1記載の発明に、当該周知技術を用いて相違点1に係る本願補正発明のようにすることに格別の困難性はない。 そして、本願補正発明が奏する作用、効果についてみても、引用文献1記載の発明及び周知の技術から当業者が予想できる程度のものである。 よって、本願補正発明は、引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 6.むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 平成20年9月29日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年6月3日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「タッチパネル上に少なくとも一つのスクロール機能起動エリアを設定し、スクロール機能起動に供するステップ、 物品の少なくとも一つのスクロール機能起動エリアへの接触を確認し、スクロール機能を起動するステップ、 該物品の移動量を計算してスクロール信号を送出するステップであって、 水平方向の移動量が垂直方向の移動量より大きい時、水平方向のスクロール信号を送出するステップ、 水平方向の移動量が垂直方向の移動量より小さい時、垂直方向のスクロール信号を送出するステップ、 を有する、上記該物品の移動量を計算してスクロール信号を送出するステップ、 該物品がタッチパネルより離れる時、該スクロール機能を終了するステップ、 を包含し、該物品が少なくとも一つのスクロール機能起動エリアから滑り出ても、スクロール機能を維持することを特徴とする、タッチパネルのスクロール制御方法。」 第4 引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2の3.引用例」に記載したとおりである。 第5 対比・判断 本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、前記「第2の2.補正の目的」に記載した限定のあるところを削除したものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2の5.相違点の判断」に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-06-09 |
結審通知日 | 2011-06-14 |
審決日 | 2011-06-28 |
出願番号 | 特願2005-236287(P2005-236287) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 日下 善之 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
江口 能弘 大野 克人 |
発明の名称 | タッチパネルのスクロール制御方法 |
代理人 | 湯田 浩一 |
代理人 | 杉山 秀雄 |
代理人 | 竹本 松司 |
代理人 | 白石 光男 |
代理人 | 魚住 高博 |
代理人 | 手島 直彦 |