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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1246740
審判番号 不服2010-13761  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-23 
確定日 2011-11-09 
事件の表示 特願2000-559040「バッチローダーを有する二本アーム・サブストレート取扱いロボット」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月20日国際公開、WO00/02803、平成14年 7月 9日国内公表、特表2002-520830〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年7月9日(パリ条約による優先権主張1998年7月10日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成18年7月4日付けで手続補正がなされ、平成21年2月20日付けで拒絶理由が通知され、平成21年8月24日付けで意見書の提出と共に手続補正がなされたが、平成22年2月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、これと同時に明細書を補正対象とする手続補正(以下、同手続補正を「本件補正」という。)がなされたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
サブストレートを保持するカセットの開放面に向き合う位置に位置づけることが可能なサブストレート取扱いロボットであって、
アーム駆動機構と、
前記アーム駆動機構に接続されている第一の関節状アームと、
前記第一の関節状アームは、第一の上方アームと、前記第一の上方アームにピボット接続された第一の前アームとを有しており、前記アーム駆動機構は前記第一の関節状アームを制御可能に運動させるように動作するものと、
前記第一の関節状アームの前記第一の前アームに接続されている複数サブストレート・バッチローダーと、
前記アーム駆動機構に接続されている第二の関節状アームと、
前記第二の関節状アームは、第二の上方アームと、前記第二の上方アームにピボット接続された第二の前アームとを有しており、前記第二の上方アームおよび前記第二の前アームは、前記第一の前アームおよび前記第一の上方アームとは別個になっており、前記アーム駆動機構は前記第二の関節状アームを制御可能に運動させるように動作し、前記第二の関節状アームは、前記第一の関節状アームとは独立して、動作可能になっているものと、
前記第二の関節状アームの前記第二の前アームに接続されている単一面エンド・エフェクタと、
前記単一面エンド・エフェクタが、前記カセットの中のサブストレートの数を査定するための対象物センサーを含んでいるものとを備えることにより、
前記アーム駆動機構は、前記複数サブストレート・バッチローダーと前記単一面エンド・エフェクタのいずれかまたは両方を、前記カセットからサブストレートを引き出すように位置づけることができるようにしたことを特徴とするサブストレート取扱いロボット。
【請求項2】
前記複数サブストレート・バッチローダーが、垂直に積み上げられた複数のサブストレート取扱いパドルを有することを特徴とする請求項1記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項3】
前記垂直に積み上げられた複数のサブストレート取扱いパドルの各サブストレート取扱いパドルが、真空開口部を有することを特徴とする請求項2記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項4】
前記垂直に積み上げられたサブストレート取扱いパドルの各真空開口部から真空信号を受ける真空センサーをさらに含むことを特徴とする請求項3記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項5】
前記真空センサーに接続され、前記複数サブストレート・バッチローダーが保持するサブストレート数を示すサブストレート装荷数を判定する真空信号インタープリータをさらに含むことを特徴とする請求項4記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項6】
前記真空信号インタープリータが、前記サブストレート装荷数に応じて、前記第一の関節状アームの運動の速度を変えることを特徴とする請求項5記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項7】
前記カセットの中の前記サブストレート数に応じて前記第一の関節状アームと前記第二の関節状アームとを制御して、前記第一の関節状アームと第二の関節状アームとが、サブストレートの数と位置に依存して、前記カセットからサブストレートを所定のシークエンスで除去して、前記複数サブストレート・バッチローダーの完全装荷の使用を最大化するようにするサブストレート装荷シークエンス・コントローラをさらに具備することを特徴とする請求項1記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項8】
保管場所からサブストレートを取り出す方法において、
第一の上方アームと、前記第一の上方アームにピボット接続された第一の前アームとを有する第一の関節状アームに備えられた複数のパドルを含む複数サブストレート・バッチローダーであって、前記第一の前アームにピボット接続されている前記複数サブストレート・バッチローダーを用いて前記保管場所から複数のサブストレートを引き出すステップと、
第二の上方アームと、前記第二の上方アームにピボット接続された第二の前アームとを有する第二の関節状アームに備えられた単一パドルであって、前記第二の関節状アームは前記第一の関節状アームとは別個になっており、前記第二の前アームにピボット接続されている前記単一パドルを用いて前記保管場所から単一のサブストレートを取り出すステップと、
前記単一パドルと前記複数サブストレート・バッチローダーとを共に異なる箇所へ移動するステップと
を具備することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記複数サブストレート・バッチローダーが保持するサブストレート数を示す真空信号を、前記複数サブストレート・バッチローダーから取得するステップを含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記複数サブストレート・バッチローダーが完全に装荷されていないとき、前記複数サブストレート・バッチローダーの運動を変えるステップをさらに含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記保管場所にあるサブストレート数を査定するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記複数サブストレート・バッチローダーの完全装荷を促進するため、前記保管場所から個々のサブストレートを取り出すステップをさらに含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
末端と近接端を有するアームコネクターであって、前記近接端は、前記第一の前アームに結合するように適合されているものと、
前記末端上の第一のスタンドオフと、
前記第一のスタンドオフの上部に載置される第一のパドルであって、前記第一のパドルは、前記第一のスタンドオフ上で端部のスタンドオフとして機能することが可能な第一のパドル台として組み込まれるものと、
前記第一のパドル上に整列された複数のパドルであって、前記複数のパドルの各パドルは、前記第一のスタンドオフと整列する端部のスタンドオフとして機能するパドル台として組み込まれるものと、
各前記パドルの垂直配列を確保するためのパドルキャップと
を備える前記複数サブストレート・バッチローダーを具備することを特徴とする請求項1記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項14】
前記第一のパドル台が別個の高架台部材であることを特徴とする請求項13記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項15】
前記パドルは真空チャンネルを有することを特徴とする請求項13記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項16】
各前記パドルは吸入を行い、そしてサブストレートを前記パドルに固定する真空開口部を有し、
各前記パドル台は、内部真空チャンネルを有し、そして
Oリングが、前記パドル、前記パドル台、前記スタンドオフおよび前記パドルキャップ間の真空チャンネルをシールするものであることを特徴とする請求項13記載のサブストレート取扱いロボット。」
と、補正された。

(2)補正事項
上記補正は、以下の事項からなる。

ア.補正事項1
請求項1に記載された発明を特定する事項である「前記第二の関節状アームの前記第二の前アームに接続されている単一面エンド・エフェクタと」を、「前記第二の関節状アームの前記第二の前アームに接続されている単一面エンド・エフェクタと、
前記単一面エンド・エフェクタが、前記カセットの中のサブストレートの数を査定するための対象物センサーを含んでいるものと」と補正する。

イ.補正事項2
旧請求項7、8を削除し、旧請求項9ないし18を請求項7ないし16とする。

ウ.補正事項3
請求項13(旧請求項15)に記載された発明を特定する事項である「末端と近接端を有するアームコネクターであって、前記近接端は、前記アーム駆動機構に結合するように適合されているもの」を、「末端と近接端を有するアームコネクターであって、前記近接端は、前記第一の前アームに結合するように適合されているもの」と補正する。

エ.補正事項4
請求項15(旧請求項17)に記載された発明を特定する事項である「前記パドルは真空を有する」を、「前記パドルは真空チャンネルを有する」と補正する。

(3)補正の目的
補正事項1は、「単一面エンド・エフェクタ」が「カセットの中のサブストレートの数を査定するための対象物センサーを含んでいる」ことを限定するものであって、これは、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、補正事項2ないし4は、同法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(4)請求項1に係る発明について
そこで、補正事項1に係る本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(4-1)引用刊行物
○引用刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-106402号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「板状体搬送装置」に関して、図面とともに、以下のとおり記載されている。

ア.段落【0001】?【0008】
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、搬送装置に関し、特に、半導体ウェハ等の板状体を搬送するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、半導体ウェハ等の板状体の処理装置においては、処理部に対してロード/アンロードされる板状体をカセット等の収容部に搬送する機構が設けられている。
【0003】このような搬送機構を用いる処理装置のひとつに熱処理装置がある。この熱処理装置は、酸化、拡散、アニールや成膜に用いられる。そして、この装置では複数の板状体、例えば、上記した半導体ウェハをカセットからボートに移し換えてボートを熱処理炉にロードしたり、あるいは、この逆にアンロードされた半導体ウェハをボートからカセットに移し換える操作が行なわれる。
【0004】このため、熱処理装置のロード/アンロード部には、カセットとボートとの間で半導体ウェハを受渡し、所謂、移載するための搬送装置が装備されている。
【0005】ところで、この搬送装置には、複数の半導体ウェハ等の板状体を一括して搬送することにより、半導体製造工程でのスループットを改善することのできる構造が提案されている。
【0006】図13は、上記構造の一例を示しており、この構造は、回転、昇降および進退可能なアーム機構10を備え、このアーム機構10は、アーム先端にたとえば5段の半導体ウェハ載置部を備えている。そして、アーム機構10は、カセット12とボート14との間で半導体ウェハの移載を行なうようになっている。
【0007】また、近年では、上記した構造による一括搬送の他に、一枚の半導体ウェハのみを処理位置あるいは格納位置に向け搬送する枚葉式搬送を行なうこともある。このため、従来では、一括搬送する場合の半導体ウェハの数に相当する枚数の載置部を設けた一括搬送機構と、一枚の半導体のみの載置部を備えた枚葉式搬送機構とを備えた搬送装置が提案されている。
【0008】図6(B)は、上記装置の構造を模式的に示したものであり、この装置は、一括搬送する枚数の搬送アーム20Aが縦方向に配列された一括搬送機構20と、この一括搬送機構20の上部に配置された枚葉搬送アーム22Aを備えた枚葉式搬送機構22とで構成されている。一括搬送用の搬送アーム20Aは、等ピッチを以て配列され、枚葉搬送アーム22Aは、上記一括搬送アーム20Aとはピッチ間隔の設定を特に行なわれない状態で別に設けられている。」

以上によれば、引用刊行物1には、
「半導体ウェハ等の板状体の処理装置において、処理部に対してロード/アンロードされる板状体をカセット等の収容部に搬送するための装置であって、
複数の半導体ウェハ等の板状体を一括して搬送する一括搬送のための、一括搬送する枚数の搬送アーム20Aが縦方向に配列された一括搬送機構20と、
一枚の半導体ウェハのみを処理位置あるいは格納位置に向け搬送する枚葉式搬送を行なうための、上記一括搬送機構20とは別に、上記一括搬送機構20の上部に配置された枚葉搬送アーム22Aを備えた枚葉式搬送機構22とで構成される、板状体搬送装置。」
との発明(以下、「引用刊行物発明1」という。)が開示されていると認められる。

(4-2)対比
そこで、本願補正発明1と引用刊行物発明1とを比較すると、引用刊行物発明1の半導体ウェハ等の板状体は、本件明細書の段落【0002】の記載によれば、「用語サブストレートには、半導体ウェファー、液晶表示装置、フラットパネル表示装置、ディスク駆動装置、その他類似物などの素子が含まれる。」のであるから、本願補正発明1の「サブストレート」と一致している。
そして、引用刊行物発明1の「一括搬送する枚数の搬送アーム20A」は、本願補正発明1の「複数サブストレート・バッチローダー」に相当し、同様に、「枚葉搬送アーム22A」は、「単一面エンド・エフェクタ」に、夫々相当していることは明らかである。
また、引用刊行物発明1が、「半導体ウェハ等の板状体の処理装置において、処理部に対してロード/アンロードされる板状体をカセット等の収容部に搬送する」ものであるから、この搬送によりカセット等の収容部に半導体ウェハ等を収納あるいは引き出す場合、カセットの開放面に向き合う位置に位置づけなければ半導体ウェハ等を収納あるいは引き出すことができないのは自明な事項であるから、引用刊行物発明1の「半導体ウェハ等の板状体の処理装置において、処理部に対してロード/アンロードされる板状体をカセット等の収容部に搬送する」点は、本願補正発明1の「サブストレートを保持するカセットの開放面に向き合う位置に位置づけることが可能」な点、及び、「前記カセットからサブストレートを引き出すように位置づけることができる」点で一致している。

以上のとおりであるから、両者は、

<一致点>
「サブストレートを保持するカセットの開放面に向き合う位置に位置づけることが可能なサブストレート取扱いロボットであって、複数サブストレート・バッチローダーと、単一面エンド・エフェクタと、前記複数サブストレート・バッチローダーと前記単一面エンド・エフェクタのいずれかまたは両方を、前記カセットからサブストレートを引き出すように位置づけることができるようにしたサブストレート取扱いロボット。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願補正発明1では、
「アーム駆動機構と、
前記アーム駆動機構に接続されている第一の関節状アームと、
前記第一の関節状アームは、第一の上方アームと、前記第一の上方アームにピボット接続された第一の前アームとを有しており、前記アーム駆動機構は前記第一の関節状アームを制御可能に運動させるように動作するもの」を備え、
「複数サブストレート・バッチローダー」が、
「第一の関節状アームの前記第一の前アームに接続」され、
「前記アーム駆動機構に接続されている第二の関節状アームと、
前記第二の関節状アームは、第二の上方アームと、前記第二の上方アームにピボット接続された第二の前アームとを有しており、前記第二の上方アームおよび前記第二の前アームは、前記第一の前アームおよび前記第一の上方アームとは別個になっており、前記アーム駆動機構は前記第二の関節状アームを制御可能に運動させるように動作し、前記第二の関節状アームは、前記第一の関節状アームとは独立して、動作可能になっているもの」を備え、
「単一面エンド・エフェクタ」が、
「第二の関節状アームの前記第二の前アームに接続」されているものであるのに対し、
引用刊行物発明1の「板状体搬送装置」は、そのような、「アーム駆動機構」、「関節状アーム」、「上方アーム」、「前アーム」を備えていない点。

<相違点2>
本願補正発明1では、「単一面エンド・エフェクタが、前記カセットの中のサブストレートの数を査定するための対象物センサーを含んでいる」のに対して、引用刊行物発明1はそのような対象物センサーを備えていない点。

(4-3)判断

○ 相違点1について
相違点1について検討すると、2つの関節状アームを有するロボットにおいて、当該2本の関節状アームがそれぞれ関節で接続された上方アームと前アームからなり、それぞれのアームが独立して制御可能であり、さらに、前アームにエンドエフェクタ等が接続されるようなロボットは、以下の各周知例にみられるように周知事項であり、これにより、搬送効率向上が期待できる。
例えば特開平2-83182号公報の「試料を保持するハンドを備えた第1、及び、第2のアームからなるハンドリングユニット」(特許請求の範囲の記載。第1図。)。
特開平5-109866号公報の「第1アームと第2アームと第3アームからなる一方のアーム部の先端に第1ウォンドが、また第4アームと第5アームと第6アームからなる他方のアーム部の先端に第2ウォンドがある、ウェハカセット移載ロボット。」(【要約】の記載。【図1】。)
特開平10-58359号公報の従来例、「第1及び第2ハンドラが配設され、各ハンドラは互いに軸支された基端アーム、中間アーム及び先端アームを組み合わせた多関節アーム構造を有し、先端アームの自由端部には半導体ウェハを載置するためのハンドが形成される。」(【0003】の記載。【図6】。)
また、アームを駆動するための「アーム駆動機構」は、例示するまでもない周知事項である。
そして、本願補正発明1は、相違点1に基づいて、格別な作用・効果を奏するものとも認められない。
してみれば、相違点1に係る発明特定事項の違いは、効率向上という当然の課題に基づき、引用刊行物発明1に周知事項を適用したにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

○ 相違点2について
相違点2について検討すると、サブストレートの数を査定するための対象物センサーは、以下の各周知例にみられるように周知事項であり、これにより、確実な搬送が期待できる。
特開平7-71929号公報の「ウェーハ検知センサを上下動可能にならしめたウェーハ搬送機のチャック部上に取付けるもの。」(【0011】の記載。)
特開平9-17839号公報の「搬送機構には、容器内に収容された基板の有無、位置、枚数を検出するマッピングセンサと、・・・中央位置決めアームが具備される。」(【0040】の記載。)
特開平10-98088号公報の「被処理基板カセット内の被処理基板の枚数をカウントするための被処理基板カウンタ。」(【請求項1】の記載。)
そして、本願補正発明1は、相違点2に基づいて、格別な作用・効果を奏するものとも認められない。
してみれば、相違点2に係る発明特定事項の違いは、引用刊行物発明1に周知事項を適用したにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

以上のとおりであるから、本願補正発明1は、引用刊行物発明1、及び、周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、平成23年3月25日付け回答書において、前置報告書で示された特開平3-227036号公報が、拒絶査定の理由に引用されていない点を主張しているが、上記引用刊行物1である特開平7-106402号公報は、拒絶理由通知にて引用されている刊行物である。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
(1)本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし18に係る発明は、平成21年8月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1ないし18に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明18」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
サブストレートを保持するカセットの開放面に向き合う位置に位置づけることが可能なサブストレート取扱いロボットであって、
アーム駆動機構と、
前記アーム駆動機構に接続されている第一の関節状アームと、
前記第一の関節状アームは、第一の上方アームと、前記第一の上方アームにピボット接続された第一の前アームとを有しており、前記アーム駆動機構は前記第一の関節状アームを制御可能に運動させるように動作するものと、
前記第一の関節状アームの前記第一の前アームに接続されている複数サブストレート・バッチローダーと、
前記アーム駆動機構に接続されている第二の関節状アームと、
前記第二の関節状アームは、第二の上方アームと、前記第二の上方アームにピボット接続された第二の前アームとを有しており、前記第二の上方アームおよび前記第二の前アームは、前記第一の前アームおよび前記第一の上方アームとは別個になっており、前記アーム駆動機構は前記第二の関節状アームを制御可能に運動させるように動作し、前記第二の関節状アームは、前記第一の関節状アームとは独立して、動作可能になっているものと、
前記第二の関節状アームの前記第二の前アームに接続されている単一面エンド・エフェクタとを備えることにより、
前記アーム駆動機構は、前記複数サブストレート・バッチローダーと前記単一面エンド・エフェクタのいずれかまたは両方を、前記カセットからサブストレートを引き出すように位置づけることができるようにしたことを特徴とするサブストレート取扱いロボット。
【請求項2】
前記複数サブストレート・バッチローダーが、垂直に積み上げられた複数のサブストレート取扱いパドルを有することを特徴とする請求項1記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項3】
前記垂直に積み上げられた複数のサブストレート取扱いパドルの各サブストレート取扱いパドルが、真空開口部を有することを特徴とする請求項2記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項4】
前記垂直に積み上げられたサブストレート取扱いパドルの各真空開口部から真空信号を受ける真空センサーをさらに含むことを特徴とする請求項3記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項5】
前記真空センサーに接続され、前記複数サブストレート・バッチローダーが保持するサブストレート数を示すサブストレート装荷数を判定する真空信号インタープリータをさらに含むことを特徴とする請求項4記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項6】
前記真空信号インタープリータが、前記サブストレート装荷数に応じて、前記第一の関節状アームの運動の速度を変えることを特徴とする請求項5記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項7】
前記第二の関節状アームに接続されている対象物センサーをさらに含むことを特徴とする請求項1記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項8】
前記対象物センサーが、前記複数サブストレート・バッチローダーに隣接する前記カセットの中のサブストレート数を査定することを特徴とする請求項7記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項9】
前記カセットの中の前記サブストレート数に応じて前記第一の関節状アームと前記第二の関節状アームとを制御して、前記第一の関節状アームと第二の関節状アームとが、サブストレートの数と位置に依存して、前記カセットからサブストレートを所定のシークエンスで除去して、前記複数サブストレート・バッチローダーの完全装荷の使用を最大化するようにするサブストレート装荷シークエンス・コントローラをさらに具備することを特徴とする請求項8記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項10】
保管場所からサブストレートを取り出す方法において、
第一の上方アームと、前記第一の上方アームにピボット接続された第一の前アームとを有する第一の関節状アームに備えられた複数のパドルを含む複数サブストレート・バッチローダーであって、前記第一の前アームにピボット接続されている前記複数サブストレート・バッチローダーを用いて前記保管場所から複数のサブストレートを引き出すステップと、
第二の上方アームと、前記第二の上方アームにピボット接続された第二の前アームとを有する第二の関節状アームに備えられた単一パドルであって、前記第二の関節状アームは前記第一の関節状アームとは別個になっており、前記第二の前アームにピボット接続されている前記単一パドルを用いて前記保管場所から単一のサブストレートを取り出すステップと、
前記単一パドルと前記複数サブストレート・バッチローダーとを共に異なる箇所へ移動するステップと
を具備することを特徴とする方法。
【請求項11】
前記複数サブストレート・バッチローダーが保持するサブストレート数を示す真空信号を、前記複数サブストレート・バッチローダーから取得するステップを含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記複数サブストレート・バッチローダーが完全に装荷されていないとき、前記複数サブストレート・バッチローダーの運動を変えるステップをさらに含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記保管場所にあるサブストレート数を査定するステップをさらに含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記複数サブストレート・バッチローダーの完全装荷を促進するため、前記保管場所から個々のサブストレートを取り出すステップをさらに含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
末端と近接端を有するアームコネクターであって、前記近接端は、前記アーム駆動機構に結合するように適合されているものと、
前記末端上の第一のスタンドオフと、
前記第一のスタンドオフの上部に載置される第一のパドルであって、前記第一のパドルは、前記第一のスタンドオフ上で端部のスタンドオフとして機能することが可能な第一のパドル台として組み込まれるものと、
前記第一のパドル上に整列された複数のパドルであって、前記複数のパドルの各パドルは、前記第一のスタンドオフと整列する端部のスタンドオフとして機能するパドル台として組み込まれるものと、
各前記パドルの垂直配列を確保するためのパドルキャップと
を備える前記複数サブストレート・バッチローダーを具備することを特徴とする請求項1記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項16】
前記第一のパドル台が別個の高架台部材であることを特徴とする請求項15記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項17】
前記パドルは真空を有することを特徴とする請求項15記載のサブストレート取扱いロボット。
【請求項18】
各前記パドルは吸入を行い、そしてサブストレートを前記パドルに固定する真空開口を有し、
各前記パドル台は、内部真空チャンネルを有し、そして
Oリングが、前記パドル、前記パドル台、前記スタンドオフおよび前記パドルキャップ間の真空チャンネルをシールするものであることを特徴とする請求項15記載のサブストレート取扱いロボット。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物、及び、その記載事項、並びに周知事項は、前記第2.に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明1は、前記第2.で検討した本願補正発明1から、前記第2.(2)に記載した補正事項の特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明1の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記第2.(4)に記載したとおり、引用刊行物発明1、及び、周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用刊行物発明1、及び、周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用刊行物発明1、及び、周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項についてみるまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

(5)付記
請求人は、平成23年3月25日付け回答書において、特許請求の範囲の補正案を提示し、「第一の上方アームは複数のウエハを移動するために円滑な動きと十分なトルクを与える調和駆動機構を介して前記アーム駆動機構に接続され」という事項を、第一の関節状アームの記述に加入する補正を行う意思があると述べているので、この点についても述べる。
多関節ロボットにおいて、アーム基部の駆動機構に、通常、日本の技術用語ではハーモニックドライブと称する「調和駆動機構」を用いることは、出願前周知の事項である。
これは、例えば、
実開昭62-198087号公報「垂直多関節ロボットの旋回駆動機構」
特開昭62-282885号公報「ロボットハンド」
実開昭62-156623号公報「駆動ムラ補償機構装置」
実開昭62-132666号公報「電動機式アクチュエータ」
特開昭62-113941号公報「ハーモニックドライブ減速機の組立て方法」
にみられる。
そして、本願の発明は、この加入事項に基づいて、格別な作用・効果を奏するものとも認められない。
してみれば、この補正案を採用したとしても、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2011-06-08 
結審通知日 2011-06-14 
審決日 2011-06-27 
出願番号 特願2000-559040(P2000-559040)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浅野 麻木土田 嘉一  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 菅澤 洋二
藤井 眞吾
発明の名称 バッチローダーを有する二本アーム・サブストレート取扱いロボット  
代理人 秋元 輝雄  

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