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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1246840
審判番号 不服2009-20985  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-30 
確定日 2011-11-10 
事件の表示 特願2005-259540「まつ毛の少なくとも一つの外辺の合成されたイメージを生成するための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月23日出願公開、特開2006- 79619〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年9月7日(パリ条約による優先権主張2004年9月7日、フランス国)の出願であって、平成20年7月11日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成21年1月16日付けで手続補正がなされたが、平成21年2月26日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成21年6月17日付けで手続補正がなされたが、平成21年6月17日付けでした手続補正は平成21年6月29日付けで補正却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年10月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成21年10月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年10月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正前の本願発明
原審において、平成21年6月17日付けの手続補正は却下されたが、これに対して、本件審判請求において不服は申し立てられていない。
それゆえ、本件補正前の発明は、平成21年1月16日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項に記載されたとおりのものであって、その特許請求の範囲は、次のとおりである。
「 【請求項1】
少なくとも一房のまつ毛の外観をシミュレーションする方法において、該方法が、
ユーザーにより変更され得る少なくとも1のシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値に依存して、該少なくとも一房のまつ毛の少なくとも1の3Dイメージをコンピューターにより作成するステップを含み、
該一房のまつ毛の3Dイメージは、ユーザーの顔の3Dイメージに取り込まれる、ただし上記ユーザーの顔の3Dイメージはユーザーの顔を取り込んだイメージを少なくとも部分的に使用して作成されており、該ユーザーの顔のまつ毛の3Dイメージは消去されている、かつ
コンピューターがユーザーに、マスカラの少なくとも1の特徴及び/又はまつ毛の化粧的処理に関するシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許す上記方法。
【請求項2】
コンピューターがユーザーに、マスカラの少なくとも1の特徴に関するシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コンピューターがユーザーに、まつ毛の化粧的処理の少なくとも1に関するシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
まつ毛の化粧的処理の少なくとも1に関するシミュレーション・パラメーターが、まつ毛を梳くことに関するシミュレーション・パラメーター及び/又はまつ毛をヒートカーリングすることに関するシミュレーション・パラメーターから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
まつ毛の房の3Dイメージが、まつ毛一本ずつ作成されていることを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
まつ毛の房の3Dイメージが、10?300本のまつ毛を含むことを特徴とする、請求項1?5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1のランダムパラメーターが、房、該房を構成するまつ毛の3Dイメージに関するシミュレーション・パラメーター、及びマスカラの少なくとも1の特徴に関するシミュレーション・パラメーターに適用されることを特徴とする、請求項1?6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
コンピューターがユーザーに、房の3Dイメージの少なくとも2の異なる領域のそれぞれにシミュレーション・パラメーターの異なる値を定義することを許す、請求項1?7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
房の3Dイメージの少なくとも1の中央領域、及び該中央領域のそれぞれ一方の側に位置する左及び右の領域上で、異なるシミュレーション・パラメーターが定義されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
コンピューターがユーザーに、房の少なくとも1の3Dイメージのシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許すことを特徴とする、請求項1?9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
シミュレーション・パラメーターが、まつ毛の本数、マスカラの有無、及び房の厚さの1つに関連することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
コンピューターがユーザーに、少なくとも1本のまつ毛に関するシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許すことを特徴とする、請求項1?11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1本のまつ毛に関するシミュレーション・パラメーターが、3Dイメージにおけるまつ毛の曲率、3Dイメージにおけるその長さ、3Dイメージにおけるその太さ、及び皮膚の表面からまつ毛が伸びる方向を定義する、3Dイメージにおける角の少なくとも1を定義することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コンピューターがユーザーに、3Dイメージ上のまつ毛にマスカラを施与するためのアプリケーターを選択することを許すことを特徴とする請求項1?13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
上記方法が、さらに
一房のまつ毛の3Dイメージが表示されているスクリーンと同じスクリーン上に表示されたシミュレーション・パラメーターの値を変更するためのパラメーター設定ツールをコンピューターにより表示するステップ、及び
コンピューターがユーザーに、シミュレーション・パラメーターのいかなる変化にも反応して上記3Dイメージの外観を変更することを許すステップを含む、請求項1?14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
パラメーター設定ツールがカーソルを含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
コンピューターがユーザーに、一房のまつ毛が見られる方向を変更することを許す、請求項1?16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも一房のまつ毛の外観をシミュレーションする装置において、
ユーザーにより変更され得る少なくとも1のシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値に従って、一房のまつ毛の少なくとも1の3Dイメージをコンピューターにより作成するための手段、
ユーザーの顔を取り込んだイメージを少なくとも部分的に使用して作成されたユーザーの顔の3Dイメージのまつ毛を消去し、かつ該一房のまつ毛の3Dイメージをユーザーの顔の3Dイメージに取り込むための手段、及び
ユーザーに、マスカラの少なくとも1の特徴及び/又はまつ毛の化粧的処理に関するシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許すための手段、
を含む装置。
【請求項19】
シミュレーション結果を表示する表示手段をさらに含むことを特徴とする、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
該装置が、3Dイメージを取得するための取得手段をさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
取得手段が、キーボード及びマウスの少なくとも1を含むことを特徴とする、請求項18?20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
表示手段がスクリーンを含むことを特徴とする、請求項18に記載の装置。
【請求項23】
少なくとも1のシミュレーション・パラメーターの値を示すためのカーソルをさらに表示することを特徴とする、請求項18に記載の装置。
【請求項24】
請求項18?23のいずれか1項に記載の装置にネットワークを通じてリンクされているサーバーにおいて、
該装置のユーザーにより遠隔で変更され得る少なくとも1のシミュレーション・パラメーターの少なくとも1に値に従って、一房のまつ毛の少なくとも1の3Dイメージを作成するための手段を含むサーバー。
【請求項25】
サーバーがユーザーに、視野方向を変更することを許すことを特徴とする、請求項24に記載のサーバー。
【請求項26】
一房のまつ毛の複数の3Dイメージを編集する方法において、請求項1?17のいずれか1項に記載の方法を実施することにより該一房のまつ毛の少なくとも2つの3Dイメージを作成するステップを含み、該少なくとも2つの3Dイメージのそれぞれは、少なくとも1のシミュレーション・パラメーターの異なる値と関連付けられているところの方法。
【請求項27】
作成された3Dイメージを、印刷するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
一房のまつ毛を評価する方法において、ユーザーのまつ毛の房を取り込んだ3Dイメージ及び請求項1?17のいずれか1項に記載の方法を実施することにより作成された3Dイメージが比較されるところの方法。
【請求項29】
該2つの3Dイメージが同じスクリーン上に表示された後、比較が行われる得ることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
一房のまつ毛の複数の3Dイメージを含む表示装置において、該複数の3Dイメージのそれぞれが、アプリケーター、処理器具及びマスカラの特徴の少なくとも1に関する少なくとも1のシミュレーション・パラメーターの異なる値と関連付けられている表示装置。
【請求項31】
識別子が複数の3Dイメージの一つと関連付けられていることを特徴とする、請求項30に記載の表示装置。
【請求項32】
少なくとも一房のまつ毛の外観をシミュレーションする方法において、該方法が、ユーザーにより変更され得る少なくとも1のシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値に依存して、一房のまつ毛の少なくとも1の3Dイメージをコンピューターにより作成するステップを含み、該コンピューターがユーザーに、該一房のまつ毛の3Dイメージの少なくとも2の異なる領域のそれぞれに異なるシミュレーション・パラメーターを定義することを許すところの方法。」

2.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は次のとおりとなった。
「 【請求項1】
少なくとも一房のまつ毛の外観をシミュレーションする方法において、該方法が、
ユーザーにより変更され得る少なくとも1のシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値に依存して、該少なくとも一房のまつ毛の少なくとも1の3Dイメージをコンピューターにより作成するステップを含み、
該一房のまつ毛の3Dイメージは、ユーザーの顔の3Dイメージに取り込まれる、ただし上記ユーザーの顔の3Dイメージはユーザーの顔を取り込んだイメージを少なくとも部分的に使用して作成されており、該ユーザーの顔のまつ毛の3Dイメージは消去されている、かつ
コンピューターがユーザーに、マスカラの少なくとも1の特徴及び/又はまつ毛の化粧的処理に関するシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許し、前記コンピューターがユーザーに、前記房の3Dイメージのうちの少なくとも1の3Dイメージのシミュレーション・パラメーターの値のうちの少なくとも1つの値を変更することを許し、該シミュレーション・パラメーターが、まつ毛の本数、マスカラの有無、上記房の太さ、3Dイメージにおけるまつ毛の曲率、3Dイメージにおけるその長さ、3Dイメージにおけるその太さ、及び皮膚の表面からまつ毛が伸びる方向を定義する、3Dイメージにおけるその角の1つに関連する、
上記方法。
【請求項2】
コンピューターがユーザーに、マスカラの少なくとも1の特徴に関するシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コンピューターがユーザーに、まつ毛の化粧的処理の少なくとも1に関するシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
まつ毛の化粧的処理の少なくとも1に関するシミュレーション・パラメーターが、まつ毛を梳くことに関するシミュレーション・パラメーター及び/又はまつ毛をヒートカーリングすることに関するシミュレーション・パラメーターから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
まつ毛の房の3Dイメージが、まつ毛一本ずつ作成されていることを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
まつ毛の房の3Dイメージが、10?300本のまつ毛を含むことを特徴とする、請求項1?5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1のランダムパラメーターが、房、該房を構成するまつ毛の3Dイメージに関するシミュレーション・パラメーター、及びマスカラの少なくとも1の特徴に関するシミュレーション・パラメーターに適用されることを特徴とする、請求項1?6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
コンピューターがユーザーに、房の3Dイメージの少なくとも2の異なる領域のそれぞれにシミュレーション・パラメーターの異なる値を定義することを許す、請求項1?7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
房の3Dイメージの少なくとも1の中央領域、及び該中央領域のそれぞれ一方の側に位置する左及び右の領域上で、異なるシミュレーション・パラメーターが定義されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
コンピューターがユーザーに、少なくとも1本のまつ毛に関するシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許すことを特徴とする、請求項1?9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
コンピューターがユーザーに、3Dイメージ上のまつ毛にマスカラを施与するためのアプリケーターを選択することを許すことを特徴とする、請求項1?10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
上記方法が、さらに
一房のまつ毛の3Dイメージが表示されているスクリーンと同じスクリーン上に表示されたシミュレーション・パラメーターの値を変更するためのパラメーター設定ツールをコンピューターにより表示するステップ、及び
コンピューターがユーザーに、シミュレーション・パラメーターのいかなる変化にも反応して上記3Dイメージの外観を変更することを許すステップ
を含む、請求項1?11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一房のまつ毛の外観をシミュレーションする装置であって、
ユーザーにより変更され得る少なくとも1のシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値に従って、一房のまつ毛の少なくとも1の3Dイメージをコンピューターにより作成するための手段、
ユーザーの顔を取り込んだイメージを少なくとも部分的に使用して作成されたユーザーの顔の3Dイメージのまつ毛を消去し、かつ該一房のまつ毛の3Dイメージをユーザーの顔の3Dイメージに取り込むための手段、及び
ユーザーに、マスカラの少なくとも1の特徴及び/又はまつ毛の化粧的処理に関するシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許すための手段であって、前記コンピューターがユーザーに、房の少なくとも1の3Dイメージのシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許し、該シミュレーション・パラメーターが、まつ毛の本数、マスカラの有無、及び上記房の太さの1つに関連する、前記許すための手段とを含む、前記装置。
【請求項14】
シミュレーション結果を表示する表示手段をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
一房のまつ毛の複数の3Dイメージを編集する方法において、請求項1?12のいずれか1項に記載の方法を実施することにより該一房のまつ毛の少なくとも2つの3Dイメージを作成するステップを含み、該少なくとも2つの3Dイメージのそれぞれは、少なくとも1のシミュレーション・パラメーターの異なる値と関連付けられているところの方法。
【請求項16】
作成された3Dイメージを、印刷するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
一房のまつ毛を評価する方法において、ユーザーのまつ毛の房を取り込んだ3Dイメージ及び請求項1?12のいずれか1項に記載の方法を実施することにより作成された3Dイメージが比較されるところの方法。」

3.補正の適否
本件補正のうち、補正後の請求項1については、補正前の請求項1と請求項10と請求項11と請求項13とを1つにしたものであって、請求項を削除するものといえる。
また、補正後の請求項13については、補正前の請求項18の番号を付け替え、「ユーザーに、マスカラの少なくとも1の特徴及び/又はまつ毛の化粧的処理に関するシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許すための手段」に「前記コンピューターがユーザーに、房の少なくとも1の3Dイメージのシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許し、該シミュレーション・パラメーターが、まつ毛の本数、マスカラの有無、及び上記房の太さの1つに関連する、前記許すための手段」との限定を付加するものであって、発明を特定するために必要な事項を限定する特許請求の範囲の減縮に該当する。
さらに、補正前の請求項16?17、請求項20?25、請求項29?32が削除されている。

上記補正は、特許請求の範囲の一部の請求項を削除する他、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項について限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第1号の請求項の削除、及び同条同項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、特許請求の範囲を減縮するものである本件補正後の請求項13に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか。)について以下に検討する。

4.引用刊行物
(1)原査定の拒絶理由に引用された特開2004-38918号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付した。

(1-1)
「【請求項1】
顔面の3次元画像を使用した分析を可能にする方法であって、少なくとも1つの対象者の顔面を取得した画像を使用して顔面の3次元画像を作成することと、顔面の3次元画像に美的特徴の使用をシミュレーションすることおよび/または美容分析を可能にするように顔面の3次元画像を処理すること、
とを含む方法。」

(1-2)
「【請求項9】
該方法が、さらに、複数の美的特徴の中から美的特徴の選択を可能にすることを含み、3次元画像が、選択した美的特徴の使用をシミュレーションするように修正変更される請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。」

(1-3)
「【請求項25】
請求項1ないし24のいずれか1項に記載の方法を実行するように構築されたプロセッサを具備するシステム。」

(1-4)
「【0026】
同様に、本明細書で使用される「美的特徴」という表現は、美容製品、宝石類、眼鏡、ボディピアス(イアリング、鼻輪および他の形態のピアス)、刺青、および/または、対象者が実施を決断する場合に自身の顔面の外観を変更修正する可能性のある他のいかなる品目、物質、サービスまたは行為も示す。「美容製品」という表現は、個人が美容目的で使用するいかなる製品も示す。メークアップ用美容製品の例は、それに限定されないが、マスカラ、アイシャドウ、アイライナー、ファンデーション、コンシーラー、ブラシ、リップライナー、リップスティック、リップグロス、ヘアカラーリング、および対象者の容姿向上のために使用することができるいかなる物質も含む。」

(1-5)
「【0031】
図3に示していないが、顔面作成用コンピュータプログラムによって、個人は、頭、目、鼻、唇、耳および/または眉の大きさおよび/または形状、および/または、顔面のシミュレーション画像の少なくとも一部の大きさおよび/または形状などの他のパラメータを選択することができる。まずユーザが顔面の画像タイプの生成されたカテゴリーを選択すると、選択すべき同様の選択肢が表示される。」

(1-6)
「【0036】
当該方法は、個人が複数の身体外部の状態のうち少なくとも1つを選択するのを可能にすることと、顔面のシミュレーション画像上での選択された身体外部の状態のシミュレーションを可能にすることを伴ってよい。図2Bは、顔面のシミュレーション画像U.40などにおいて外観に現れる皺の数またはその他の肌の状態が増減するように移動可能な可動制御要素U.92を有するユーザインターフェースを例示している。図2Cは、身体外部の状態を表示する形式のテンプレート(様々な外観の皺U.95、U.96、U.97、U.98など)を選択し、該選択されたテンプレートの身体外部の状態が顔面のシミュレーション画像U.40上に現れるようにすることができるユーザインターフェースを例示している。図2Aの実施例で示されたように顔面部分のテンプレートを用いて顔面のシミュレーション画像U.40を作成する際に、複数の顔面部分のテンプレートのうちの1つを、選択された身体状態のテンプレートに対応する身体状態にさらに重ねて表示することができる。」

(1-7)
「【0126】
「画像」とは、2次元および3次元形式のもののうち、いずれか一方または両方を含む。本発明による特定の実施例において、3次元画像を作成するために異なる視点からの複数の画像を使用することが可能である。より広い意味で、単一の画像を使用することも可能である。「画像」なる用語は、実施形態によって、対象者に関する情報を導出するためまたは視認可能な画像を作成するために使用できる電子画像データ、または視認可能な画像のいずれも含み得る。画像は、対象者の身体の一部に対応する身体画像であってもよく、例えば対象者の顔面全体または対象者の顔面の一部を表すものであってもよい。画像は、対象者の身体の一部を示す詳細な映像(例えばディジタル画像または写真)および/または対象者の身体の一部を等高線で表したトポロジー図であってもよい。画像が、身体外部の状態を表すものであれば、その状態を実際に示す画像であっても、状態を象徴的に表した画像であっても構わない。画像は、実際の画像であっても、シミュレーション画像であってもよい。シミュレーション画像は、完全にまたは一部合成されたコンピュータ画像、既存の画像に基づく画像および保存された対象者の特徴に基づく画像を含み得る。」

(1-8)
「【0132】
ここでいう「身体外部の状態」、「肌の状態」および「実際の状態」とは、肌、歯、毛髪、眉毛、睫毛、体毛、顔面の毛、手の爪および/または足の爪、またはその他の人体外部の一部のうちの少なくとも1つの状態を示すものである。肌の状態の例として、弾力性、乾燥、蜂巣炎、発汗、老化、皺、黒色腫、脱皮、剥離、色の均一性、深い皺、肝斑、鮮明性、線、微小循環、てかり、柔らかさ、滑らかさ、色、きめ、マット、保水性、たるみ、柔軟性、応力、張り、弾力、皮脂の生成、清潔性、透光性、発光性、刺激性、赤色化、血管濾過、血管運動、血管拡張、血管収縮、色素沈着、ソバカス、汚点、脂性、毛穴の分布、毛穴の大きさ、ほくろ、母斑、にきび、黒色にきび、白色にきび、あばた、いぼ、吹出物、腫れ物、水脹れ、傷跡、くすみ、しみ、乾癬および対象者の肌に関する他の特徴を含み得る。毛髪の状態の例として、角質栓、長さ、乾燥度、脂性、ふけ、厚さ、染色、密度、毛根の状態、枝毛、抜毛、薄毛、鱗毛、段化、清潔性および対象者の頭髪に関するその他の特徴を含み得る。手の爪および足の爪の状態の例は、爪真菌症、割爪、剥離、乾癬、発光性、線、斑点、色、光沢、強さ、脆さ、厚さ、ささくれ、長さ、疾患および対象者の爪に関するその他の特徴を含み得る。他の状態の例として、例えば、顔面の部分の大きさや割合、歯の変色、および対象者に関するその他の美的、物理的、生理的または生物学的状態を含み得る。」

(1-9)そうすると、引用刊行物には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。
「顔面の3次元画像を使用した分析を可能にするシステムであって、
少なくとも1つの対象者の顔面を取得した画像を使用して顔面の3次元画像を作成し、
顔面の3次元画像に美的特徴の使用をシミュレーションすることを可能にするように顔面の3次元画像を処理するシステムであり、
前記3次元画像が、選択した美的特徴の使用をシミュレーションするように修正変更されるものであって、
前記美的特徴はマスカラを含み、
顔面作成用コンピュータプログラムによって、頭、目、鼻、唇、耳および/または眉の大きさおよび/または形状などのパラメータを選択することができ、
身体外部の状態を表示する形式のテンプレートを選択し、該選択されたテンプレートの身体外部の状態が顔面のシミュレーション画像上に現れるようにすることができるものであり、
前記画像は、対象者の身体の一部に対応する身体画像であってもよく、例えば対象者の顔面全体または対象者の顔面の一部を表すものであってもよく、
画像が、身体外部の状態を表すものであれば、その状態を実際に示す画像であってもよく、
前記身体外部の状態とは、まつ毛などの状態を示すものである、
システム。」

(2)原査定の拒絶理由に引用された清水康之著「多彩な表現が可能になった3Dフィギュア・アニメーションソフト Poser4 日本語版」(GW、株式会社アイ・ディ・ジーコミュニケーションズ発行、1999年11月1日、第2巻第11号、第96頁?第97頁)(以下、「引用刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
(2-1)
「顔のバリエーションが追加
「Poser4日本語版(以下、Poser4J)」は、簡単操作で表現豊な人体モデルアニメーションが制作できる、3Dフィギュア・アニメーションソフトの新バージョンだ。・・・(中略)・・・パラメータの種類は豊富で、顔の輪郭や彫りの深さ、鼻、唇、まつ毛などを細かく設定できる(画面2)。」

(2-2)上記の記載から、引用刊行物2には、次の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されている。
「パラメータの設定により、まつ毛を細かく設定できる3Dフィギュア・アニメーションソフト。」

5. 対比・判断
(1)本願補正発明と刊行物1発明との対比
刊行物1発明は、「美的特徴」としての「マスカラ」の使用をシミュレーションするものであって、「マスカラ」は「まつ毛」に塗布するものであるから、「まつ毛」の外観を変更するものであることは言うまでもない。
それゆえ、本願補正発明と刊行物1発明とは、「少なくとも一房のまつ毛の外観をシミュレーションする装置」である点で一致する。

刊行物1発明の「画像」は、「対象者の身体の一部に対応する身体画像であってもよく、例えば対象者の顔面全体または対象者の顔面の一部を表すものであってもよく、画像が、身体外部の状態を表すものであれば、その状態を実際に示す画像であってもよく、」とするものであり、目、鼻、唇、耳、眉といった顔面の要素を選択して、選択されたテンプレートの身体外部の状態が顔面のシミュレーション画像上に現れるものである。
また、刊行物1発明においてシミュレートされる画像は3次元画像、すなわち3Dイメージである。
それゆえ、刊行物1発明は、「ユーザーの顔を取り込んだイメージを少なくとも部分的に使用して作成されたユーザーの顔の3Dイメージ」に顔面の要素のイメージを取り込むための手段を備えているということができる。
また、前記顔面の要素は、テンプレートから選択されてシミュレーション画面上に現れるのであるから、元の顔面の要素が引き続き画面上に表示されることはなく、ユーザーの顔の3Dイメージからいったん顔面の要素が消去された上で、新たな顔面の要素がユーザーの顔の3Dイメージに取り込まれるものであるということができる。
すなわち、本願補正発明と刊行物1発明とは、「ユーザーの顔を取り込んだイメージを少なくとも部分的に使用して作成されたユーザーの顔の3Dイメージの顔の要素を消去し新たな顔の要素をユーザーの顔の3Dイメージに取り込むための手段」を備える点で共通する。

本願補正発明における「ユーザーに、マスカラの少なくとも1の特徴及び/又はまつ毛の化粧的処理に関するシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許すための手段」は、「マスカラの少なくとも1の特徴」と「まつ毛の化粧的処理に関するシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値」のいずれか1つを発明特定事項とするものが含まれるから、前記「許すための手段」は、「ユーザーに、マスカラの少なくとも1の特徴を変更することを許すための手段」ととらえることができる。
刊行物1発明は、「マスカラ」の使用をシミュレーションするものであるから、「マスカラの少なくとも1の特徴を変更する」シミュレーションをすることに相違なく、本願補正発明と刊行物1発明とは、「ユーザーに、マスカラの少なくとも1の特徴を変更することを許すための手段」を備える点で一致する。

したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致し、相違する。
[一致点]
「少なくとも一房のまつ毛の外観をシミュレーションする装置であって、
ユーザーの顔を取り込んだイメージを少なくとも部分的に使用して作成されたユーザーの顔の3Dイメージの顔の要素を消去し新たな顔の要素をユーザーの顔の3Dイメージに取り込むための手段、及び
ユーザーに、マスカラの少なくとも1の特徴を変更することを許すための手段とを含む、前記装置。」

[相違点]
本願補正発明は、「ユーザーにより変更され得る少なくとも1のシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値に従って、一房のまつ毛の少なくとも1の3Dイメージをコンピューターにより作成するための手段」と、
「ユーザーの顔の3Dイメージのまつ毛を消去し、かつ該一房のまつ毛の3Dイメージをユーザーの顔の3Dイメージに取り込むための手段」と、
「コンピューターがユーザーに、房の少なくとも1の3Dイメージのシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許し、該シミュレーション・パラメーターが、まつ毛の本数、マスカラの有無、及び上記房の太さの1つに関連する、前記許すための手段」と
を備えるのに対して、
刊行物1発明は、ユーザーの3Dイメージの顔の要素を消去し、新たな顔の要素をユーザーの顔の3Dイメージに取り込むための手段を備えるものの、上記「作成するための手段」、「取り込むための手段」を備えるものではなく、「取り込むための手段」が、ユーザーの顔の3Dイメージのまつ毛を消去し、かつ該一房のまつ毛の3Dイメージをユーザーの顔の3Dイメージに取り込むものではない点。

(2)相違点に対する判断
刊行物2発明は、パラメータの設定によりまつ毛を細かく設定して描くことができるものであり、刊行物1発明において、一房のまつ毛の外観をシミュレーションする際に、刊行物2発明のように、パラメータの設定によりまつ毛の外観を変更できるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、刊行物1発明は、マスカラを含む「美的特徴」が“選択可能”となっていて、ユーザーの3Dイメージの顔の要素を消去し、新たな顔の要素をユーザーの顔の3Dイメージに取り込むための手段を備えるものであるから、ある「美的特徴」を選択すれば、それ以前の「美的特徴」が二重に選択されることはなく、すなわち、刊行物1発明において、刊行物2発明のようにまつ毛の外観を変更する際に、いったん、まつ毛を消去し、その上で新たなまつ毛の3Dイメージを取り込むようにすることはごく自然なことであって格別なことではない。
さらに、まつ毛の本数や、房の太さについては、まつ毛に関して人の印象を決める上で主要な要素であって、まつ毛の外観をシミュレーションしようとしたときに、当業者でなくともパラメータとして採用しようとするものと解され、マスカラの有無については、刊行物1発明がそもそもシミュレーションしようとしているものであるから、シミュレーション・パラメータとして、まつ毛の本数やマスカラの有無や房の太さの一つに関連するパラメータを用いることが格別のものとすることはできない。

そうすると、刊行物1発明において、上記相違点を有しないようなものとすることに格別の創意工夫があったものとすることはできず、当業者であれば、容易になし得たことにすぎない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1発明及び刊行物2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
平成21年10月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年1月16日付けで手続補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?32に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項18に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項18】
少なくとも一房のまつ毛の外観をシミュレーションする装置において、
ユーザーにより変更され得る少なくとも1のシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値に従って、一房のまつ毛の少なくとも1の3Dイメージをコンピューターにより作成するための手段、
ユーザーの顔を取り込んだイメージを少なくとも部分的に使用して作成されたユーザーの顔の3Dイメージのまつ毛を消去し、かつ該一房のまつ毛の3Dイメージをユーザーの顔の3Dイメージに取り込むための手段、及び
ユーザーに、マスカラの少なくとも1の特徴及び/又はまつ毛の化粧的処理に関するシミュレーション・パラメーターの少なくとも1の値を変更することを許すための手段、
を含む装置。」

1.引用刊行物
原審拒絶理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記第2 4.に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明の限定事項である構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2 5.に記載したとおり、刊行物1発明及び刊行物2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1発明及び刊行物2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.まとめ
したがって、本願発明は、刊行物1発明及び刊行物2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-15 
結審通知日 2011-06-17 
審決日 2011-06-28 
出願番号 特願2005-259540(P2005-259540)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅原 道晴相澤 祐介  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 加藤 恵一
古川 哲也
発明の名称 まつ毛の少なくとも一つの外辺の合成されたイメージを生成するための方法及び装置  
代理人 松井 光夫  

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