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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1246868
審判番号 不服2010-18017  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-10 
確定日 2011-11-10 
事件の表示 平成11年特許願第310360号「パチンコ遊技機の遊技部品」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月15日出願公開、特開2001-129176〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成11年10月29日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成21年7月10日に手続補正書が提出され、その後なされた最後の拒絶理由に対応して提出された平成21年12月25日付け手続補正書が却下されるとともに拒絶査定がなされ、当該拒絶査定に対して、平成22年8月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成22年10月19日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、同年12月24日に回答書が提出されている。
そして、審判合議体において平成23年5月25日付けで、平成22年8月10日付け手続補正が却下されるとともに、最後の拒絶理由が通知され、これに対して、平成23年7月28日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第二.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年7月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正前後の本願発明
本件補正前後の特許請求の範囲は次のとおりであり、本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明のことを、以下「本願補正発明」という。

(1)本件補正前の特許請求の範囲(平成21年7月10日)
「【請求項1】 遊技盤(J)前面の遊技領域(19)内において始動入賞口(20)の上方に設置され、かつ該遊技盤(J)の裏側に取着された図柄表示装置(M)の前側に位置し、該図柄表示装置(M)の図柄表示部を透視表示する透視窓部(31)を備えたパチンコ遊技機の遊技部品において、
前記透視窓部(31)の前側下方に形成された球案内部(35)と、
前記透視窓部(31)の前部上方に設けた球通入部(34)と、
前記球案内部(35)および球通入部(34)を連通接続し、前記遊技領域(19)内を落下して球通入部(34)へ入った遊技球を球案内部(35)へ通出する遊技球案内通路(40)と、
前記球案内部(35)の略中央に連設されて、該球案内部(35)から遊技球が通入する球旋回路(42)および該球旋回部(42)の中心に形成されて遊技球の落下を許容する球放出口(43)を備え、該球案内部(35)から球旋回部(42)へ通入した遊技球を、該球旋回路(42)で旋回させた後に球放出口(43)を介して放出落下させ得る球放出部(36)と、
前記球案内部(35)の前側下方に形成され、遊技領域を落下する遊技球が到来して転がり移動可能な傾斜面と、
前記傾斜面に前後に延在するよう形成されて前端部が前記始動入賞口(20)の上方に臨むと共に、前記球放出部(36)の球放出口(43)の真下に位置する球案内溝(44)とを備え、
前記球通入部(34)へ入った遊技球は、前記遊技球案内通路(40)を介して球案内部(35)へ通出され、前記球放出部(36)の球旋回路(42)で旋回された後に前記球放出口(43)を介して前記球案内溝(44)へ落下して、該球案内溝(44)を介して前記始動入賞口(20)側へ放出落下されることを特徴とするパチンコ遊技機の遊技部品。
【請求項2】 前記始動入賞口(20)で入賞検出された入賞球の有効保留数を点灯表示する保留ランプ(46)を、前記遊技球案内部材(40)を通過した遊技球が前記球案内部(35)に通出される球通入口(39)と、前記球放出部(36)との間に全て配設した請求項1記載のパチンコ遊技機の遊技部品。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 遊技盤前面の遊技領域内において始動入賞口の上方に設置され、かつ該遊技盤の裏側に取着された図柄表示装置の前側に位置し、該図柄表示装置の図柄表示部を透視表示する透視窓部を備えたパチンコ遊技機の遊技部品において、
前記透視窓部の前側下方に形成され、該透視窓部に臨む左側壁面に形成された球通入口が開口する球案内部と、
前記透視窓部の前部上方に設けられて球通出口を有する球通入部と、
前記球通入口と球通入部の球通出口とを連通接続し、前記遊技領域内を落下して球通入部へ入った遊技球を球通出口から球通入口へ案内して球案内部へ通出する遊技球案内通路と、
前記球案内部の略中央に連設されて、該球案内部から遊技球が通入する球旋回路および該球旋回路の中心に形成されて遊技球の落下を許容する球放出口を備え、該球案内部から球旋回路へ通入した遊技球を、該球旋回路で旋回させた後に球放出口を介して放出落下させ得る球放出部と、
前記球案内部の前側下方に形成され、遊技領域を落下する遊技球が到来して転がり移動可能な傾斜面と、
前記傾斜面に前後に延在するよう形成されて前端部が前記始動入賞口の上方に臨むと共に、前記球放出部の球放出口の真下に位置する球案内溝とを備え、
前記球通入部へ入った遊技球は、前記遊技球案内通路を介して球案内部へ通出され、前記球放出部の球旋回路で旋回された後に前記球放出口を介して前記球案内溝へ落下して、該球案内溝を介して前記始動入賞口側へ放出落下されるよう構成すると共に、
前記始動入賞口で入賞検出された入賞球の有効保留数を点灯表示する保留ランプは、前記傾斜面の後端部から立設されて前記球案内部の前端部まで延在する壁面に、該球案内部より下方に位置するよう全て配設されると共に、全ての保留ランプが、前記球放出部よりも、前記球通入口が形成された左側壁面側に位置するよう構成される
ことを特徴とするパチンコ遊技機の遊技部品。」
(下線部は補正によって追加又は変更された箇所、ただし、括弧書きによる図番の有無は除外した。)

2.補正要件(目的)の検討
本件補正は、本件補正前の請求項2を削除し、同請求項1に同請求項2の構成を追加するとともに、同請求項1及び2に係る発明の発明特定事項の一部を限定する補正であるから、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第1号及び第2号に該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について独立特許要件の判断を行う。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用文献に記載されている発明
本願出願前に国内において頒布された刊行物である特開平9-276489号公報(以下「引用文献A」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

【0009】図1は、遊技部材の正面および背面を示す説明図、図2は、遊技部材の右側面を示す説明図、図3は、図2におけるA-A線断面およびB-B線断面を示す説明図、図4は、遊技部材の斜視説明図、図5は、遊技部材を一部を切り欠いて示す説明図である。遊技部材1は、合成樹脂製等の複数の部品が組み合わされて形成されている。そして、前方から見ると、幅広の略長方形状であり、中央に開口部37が設けられており、側方から見ると、前方から後方にかけて略3層構造になっている(以下、前方の部分を前層部分aといい、中央の部分を中層部分bといい、後方の部分を後層部分cという)。
【0010】前層部分aは、横長で若干上向きに凸状の水平部2の上面から入賞部3が上方に突出した形状を有している。入賞部3は、内部が中空状になっており、上側には入賞口4が設けられており、両サイドには、それぞれ、飛込口5,5が設けられている。なお、入賞部3の内部において、2つの飛込口5,5は連通しているが、入賞口4は、それらの飛込口5,5とは連通していない。また、入賞部3内部の水平部2上面の略中央には、導球部6が浅い球面状に刻設されている(図5参照)。さらに、水平部2前面の略中央には表示窓7が穿設されており、その内部には小型表示装置8が内蔵されている。
【0011】一方、中層部分bは、上側および両サイドに第1中空路9が形成されている。第1中空路9は、上側の部分が前層部分aの輪郭と略合致しており、中央から両端にかけて下向きに傾斜している。そして、第1中空路9の中央下側の壁面は、屋根形状の第1振分部10になっており、その屋根の稜線は導球部6の中心線と一致している。
【0012】また、中層部分bの第1中空路9の両サイドの下端縁同士は、平板状の第1ステージ11によって繋がれた状態になっている(以下、第1中空路9と第1ステージ11とを合わせて第1通路という)。第1ステージ11は、中央部分が僅かに低く形成されており、最も低い位置が浅く球面状に刻設されて第1排出部12になっている。さらに、第1ステージ11の前端縁には、第1ガード13が垂設されており、その第1ガード13の中央部分(すなわち、第1排出部12の前方)には、第1排出口14が緩い曲率半径の円弧状に刻設されている。なお、中層部分bの最上部には、第1案内体15が設けられており、中層部分bの前面上方に穿設された通過孔38を介して、前層部分aの入賞部3の入賞口4と連通した状態になっている。加えて、中層部分bの前面の上方および下方には、それぞれ2つずつ取付板16,16・・が延設されており、それらの取付板16,16・・には、それぞれネジ挿通孔17が穿設されている。
【0013】後層部分cも中層部分bと同様に、上側および両サイドに第2中空路18が形成されており、上側の部分は、中央から両端にかけて下向きに傾斜している。そして、第2中空路18の中央下側の壁面は、屋根形状を有する第2振分部19になっており、その屋根の稜線は、導球部6の中心線および第1振分部10の稜線と一致している。
【0014】後層部分cの第2中空路18の両サイドの下端縁同士は、平板状の第2ステージ20によって繋がれた状態になっている(以下、第2中空路18と第2ステージ20とを合わせて第2通路という)。第2ステージ20は、第1ステージ11と同様に、中央が僅かに低くなっており、最も低い位置が浅く球面状に刻設されて第2排出部21になっている。その第2排出部21は、遊技球略1個程度の幅に形成されており、第1排出部12の幅よりも狭くなっている。さらに、第2ステージ20の前端縁には、第2ガード22が垂設されており、その第2ガード22の中央部分(すなわち、第2排出部21の前方)には、第2排出部21の幅よりも僅かに狭幅な第2排出口23が設けられている。なお、第2ステージ20の方が第1ステージ11よりも高くなっており、第1排出口14の中心線の位置は、第2排出口23の中心線の位置と一致している。また、後層部分cの最上部にも、第2案内体24が設けられており、前層部分aの入賞部3の入賞口4および中層部分bの第1案内体15と連通した状態になっている。
【0015】遊技部材1が設置されたパチンコ機の一例を図6に示す。パチンコ機34の中央上部には、略円形を有する遊技領域25が設けられており、その遊技領域25の略中央には、遊技部材1が設置されている。なお、パチンコ機34は、遊技領域25の下方に突設された発射ハンドル35を回動操作することによって、上皿36内の遊技球を遊技領域25に打ち込むことができるようになっている。
【0016】遊技部材1は、取付板16,16・・の裏面を遊技盤面に当接させた状態でネジ孔17,17・・の部分が螺着されることによって、遊技領域25に設置されている。また、遊技部材1の中央の開口部37には、液晶画面からなる特別図柄表示部26が設置されており、遊技部材1の第1排出口14の下方には、図柄始動口である普通電動役物27が設置されている。さらに、普通電動役物27の下側には、大入賞口28が設けられており、その大入賞口28の下側には、普通図柄表示部29が設けられている。一方、遊技部材1の両サイドには、普通図柄始動ゲート30,30が設けられている。
【0018】一方、中層部分bの第1振分部10上へ導かれた遊技球が、第1振分部10の屋根の稜線付近を転動し、後層部分cの前面に穿設された第2通過口32を通って後層部分cの第2振分部19上へ導かれる場合もある(なお、パチンコ機34は、導球部6上の遊技球を第1中空路9の左右何れかのサイドに振り分ける確率の方が、第2振分部19上へ導く確率よりも大きくなるように設計されている)。第2振分部19上へ導かれた遊技球は、第2中空路18の左右何れかのサイドに振り分けられる。第2振分部19は、第1振分部10と同様に屋根形状をしているとともに、その屋根の稜線が第1振分部10の屋根の稜線と一致しているので、第2振分部19上まで導かれた遊技球は、第2中空路18の左サイドおよび右サイドに略同じ確率で振り分けられる。そして、第2中空路18の左右何れかのサイドに振り分けられた遊技球は、第2中空路18内を通って、第2ステージ20へと現出し、第2ステージ20上を左右に揺動した後、第2排出部21から第2排出口23を通って下側に位置した第1排出部12へと流下する。しかる後、第1排出口14を通って遊技部材1の外部へと排出される。
【0019】第1排出部12から排出された遊技球は、第1排出部12の下側に設置された特別図柄始動口33に向かって流下し、その内の一部が、特別図柄始動口33の上方に立設された障害釘の間を通過して、特別図柄始動口33に入賞する。なお、第1排出部12は幅広で浅い球面状に形成されているため、第1ステージ11上を揺動した後に第1排出部12から排出された遊技球は、さほど高い確率で特別図柄始動口33に入賞しない。しかしながら、第2排出部21および第2排出口23は、遊技球略1個分の幅に形成されており、第2排出口23を通過した遊技球は、第1排出部12上の略中心を通過して排出されるため、きわめて高い確率で特別図柄始動口33に入賞する。また、遊技部材1内を通過しなかった遊技球も、低い確率ではあるが特別図柄始動口33に入賞する。

摘記した上記の記載等から、引用文献Aには、
「 取付板16の裏面を遊技盤面に当接させた状態で遊技領域25に設置され、中央の開口部37には特別図柄表示部26が設置されており、第1排出口14の下方には図柄始動口である普通電動役物27が設置されているパチンコ機34の遊技部材1において、
該遊技部材1は、前方から見ると幅広の略長方形状であり中央に前記開口部37が設けられ、側方から見ると前層部分a、中層部分b及び後層部分cの3層構造になっており、
前記前層部分aは、内部が中空状で上側に入賞口4が設けられている入賞部3を有し、
前記中層部分bには上側および両サイドに第1中空路9が形成され、該第1中空路9の両サイドの下端縁同士は平板状の第1ステージ11によって繋がれた状態になっており、
前記後層部分cには上側および両サイドに第2中空路18が形成され、該第2中空路18の両サイドの下端縁同士は平板状の第2ステージ20によって繋がれた状態になっており、
前記第2ステージ20は、中央が僅かに低くなっており、最も低い位置が浅く球面状に刻設されて第2排出部21になっており、その第2排出部21は遊技球略1個程度の幅に形成され、さらに、前記第2ステージ20の前端縁には、第2ガード22が垂設されており、その第2ガード22の中央部分には、前記第2排出部21の幅よりも僅かに狭幅な第2排出口23が設けられ、
前記第2ステージ20の方が前記第1ステージ11よりも高くなっており、
前記第1ステージ11は、中央部分が僅かに低く形成されており、最も低い位置が浅く球面状に刻設されて第1排出部12になっているとともに、前記第1ステージ11の前端縁には、第1ガード13が垂設されており、その第1ガード13の中央部分には、前記第1排出口14が緩い曲率半径の円弧状に刻設され、
前記入賞部3から第2振分部19上へ導かれた遊技球は、前記第2中空路18の左右何れかのサイドに振り分けられ、前記第2中空路18内を通って前記第2ステージ20へと現出し、前記第2ステージ20上を左右に揺動した後、前記第2排出部21から前記第2排出口23を通って下側に位置した前記第1排出部12へと流下し、前記第1排出口14を通って排出され、その下側に設置された特別図柄始動口33に向かって流下するパチンコ機34の遊技部材1。」
の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。

(2)本願補正発明と引用発明Aとの対比
本願補正発明と引用発明Aとを比較する。
引用発明Aの「遊技部材1」は、本願補正発明の「遊技部品」に相当し、以下同様に、
「遊技領域25」は「遊技領域」に、
「特別図柄表示部26」は「図柄表示装置」に、
「図柄始動口である普通電動役物27」及び「特別図柄始動口33」は「始動入賞口」に、
「中央の開口部37」は「図柄表示装置の図柄表示部を透視表示する透視窓部」に、
「パチンコ機34」は「パチンコ遊技機」に、
「第2ステージ20」は「球案内部」に、
「入賞部3」は「球通入部」に、
「第1ステージ11」は「遊技領域を落下する遊技球が到来して転がり移動可能な傾斜面」に、それぞれ相当する。
さらに、引用文献Aの記載や図面等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明Aの「遊技領域25」が遊技盤前面にあることは明らかであり、引用発明Aの「第1排出口14」は「遊技部材1」の下部中央にあることが図5から見てとれ、その第1排出口14の下方に図柄始動口である普通電動役物27が設置されているのであるから、引用発明Aの「遊技部材1」は普通電動役物27の上方に設置されたものといえる。
また、引用発明Aの「特別図柄表示部26」は遊技盤面の裏側に位置していることが自明であるから、引用発明Aの「遊技部材1」は遊技盤面の裏側に取着された特別図柄表示部26の前側に位置しているといえる。
そうしてみると、引用発明Aの「パチンコ機34の遊技部材1」は、本願補正発明の「遊技盤前面の遊技領域内において始動入賞口の上方に設置され、かつ該遊技盤の裏側に取着された図柄表示装置の前側に位置し、該図柄表示装置の図柄表示部を透視表示する透視窓部を備えたパチンコ遊技機の遊技部品」に相当するものといえる。

b.引用発明Aの第2ステージ20は第2中空路18の両サイドの下端縁同士を繋いでおり、第2中空路18の両サイドの下端縁は開口部37の下方にあることが図5から明らかであるから、該第2ステージ20は開口部37の前側下方に形成されているものということができる。
また、第2中空路18の両サイドの下端縁は第2ステージ20への遊技球の入口になっているから、開口部37の両サイドの壁面下方に本願補正発明の「球通入口」に相当するものが開口していることも自明である。
そうしてみると、引用発明Aの「第2ステージ20」は、本願補正発明の「前記透視窓部の前側下方に形成され、該透視窓部に臨む左側壁面に形成された球通入口が開口する球案内部」に相当するものといえる。

c.引用発明Aの前層部分aが開口部37の前部上方にあることは図2から明らかであり、その前層部分aは入賞部3を有しているのであるから、入賞部3は開口部37の前部上方に設けられたものといえる。
また、入賞口4に入った遊技球は入賞部3内部を移動して第1中空路9又は第2中空路18へ導かれるのであるから、入賞部3に本願補正発明の「球通出口」に相当する部分があることも自明である。
そうしてみると、引用発明Aの「入賞部3」は、本願補正発明の「前記透視窓部の前部上方に設けられて球通出口を有する球通入部」に相当するものといえる。

d.上記b.及びc.で述べたことを考え合わせると、引用発明Aの「第2中空路18」は、本願補正発明の「前記球通入口と球通入部の球通出口とを連通接続し、前記遊技領域内を落下して球通入部へ入った遊技球を球通出口から球通入口へ案内して球案内部へ通出する遊技球案内通路」に相当するものといえる。

e.引用発明Aの「第2排出部21」は、第2ステージ20中央の最も低い位置に浅く球面状に刻設されているから、第2ステージ20の略中央に連設されているといえる。
また、引用発明Aの「第2排出口23」と本願補正発明の「遊技球の落下を許容する球放出口」は、“遊技球の落下を許容する球出口”である点で共通し、引用発明Aにおいて「第2排出口23を通って流下」することと、本願補正発明において「球放出口を介して放出落下させ得る」ことは、“球出口を介して放出落下させ得る”ことである点で共通するから、引用発明Aの「第2排出部21」及び「第2排出口23」からなる部分と、本願補正発明の「球放出部」は、“前記球案内部の略中央に連設されて、遊技球の落下を許容する球出口を備え、遊技球を、球出口を介して放出落下させ得る球出口部”である点で共通している。

f.引用発明Aの第2ステージ20は第1ステージ11よりも高くなっており、第2ステージ20上を左右に揺動した遊技球は、第2排出口23を通って下側に位置し、第1ステージ11の中央部分に刻設されている第1排出部12へと流下することから、引用発明Aの「第1ステージ11」は第2ステージ20の前側下方に形成されているものといえる。
そうすると、引用発明Aの「第1ステージ11」は、本願補正発明の「前記球案内部の前側下方に形成され、遊技領域を落下する遊技球が到来して転がり移動可能な傾斜面」に相当するものといえる。

g.引用発明Aの第1排出部12は、第1ステージ11の中央部分の最も低い位置が浅く球面状に刻設されており、図4からみて第1ステージ11の前後方向に溝状となっているものと認められる。
また、前記第1排出部12の前端部にあたる部分が第1排出口14となっており、その下側に特別図柄始動口33が設置されているのであるから、第1排出口14は特別図柄始動口33の上方に望むものといえる。
さらに、第2ステージ20へと現出した遊技球が、第2排出口23を通って下側に位置した第1排出部12へと流下すること及び上記e.及びf.で述べたことを考え合わせると、引用発明Aの「第1排出部12」と本願補正発明の「球案内溝」は、“前記傾斜面に前後に延在するよう形成されて前端部が前記始動入賞口の上方に臨むと共に、前記球出口部の球出口の下側に位置する溝”である点で共通している。

h.引用発明Aにおいて「特別図柄始動口33に向かって流下する」ことは、本願補正発明において「始動入賞口側へ放出落下される」ことに相当するから、上記b.?g.で述べたことを考慮すれば、引用発明Aと本願補正発明は、“前記球通入部へ入った遊技球は、前記遊技球案内通路を介して球案内部へ通出され、前記球出口を介して前記球案内溝へ落下して、該球案内溝を介して前記始動入賞口側へ放出落下されるよう構成”されている点で共通している。

以上を総合すると、両者は、
「 遊技盤前面の遊技領域内において始動入賞口の上方に設置され、かつ該遊技盤の裏側に取着された図柄表示装置の前側に位置し、該図柄表示装置の図柄表示部を透視表示する透視窓部を備えたパチンコ遊技機の遊技部品において、
前記透視窓部の前側下方に形成され、該透視窓部に臨む左側壁面に形成された球通入口が開口する球案内部と、
前記透視窓部の前部上方に設けられて球通出口を有する球通入部と、
前記球通入口と球通入部の球通出口とを連通接続し、前記遊技領域内を落下して球通入部へ入った遊技球を球通出口から球通入口へ案内して球案内部へ通出する遊技球案内通路と、
前記球案内部の略中央に連設されて、遊技球の落下を許容する球出口を備え、遊技球を、球出口を介して放出落下させ得る球出口部と、
前記球案内部の前側下方に形成され、遊技領域を落下する遊技球が到来して転がり移動可能な傾斜面と、
前記傾斜面に前後に延在するよう形成されて前端部が前記始動入賞口の上方に臨むと共に、前記球出口部の球出口の下側に位置する溝とを備え、
前記球通入部へ入った遊技球は、前記遊技球案内通路を介して球案内部へ通出され、前記球出口を介して前記溝へ落下して、該溝を介して前記始動入賞口側へ放出落下されるよう構成されるパチンコ遊技機の遊技部品。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明の「球放出部」は「球案内部から遊技球が通入する球旋回路」を備えているのに対し、引用発明Aの「第2排出部21」及び「第2排出口23」からなる部分は「球旋回路」を備えておらず、本願補正発明の「球放出口」は、「球旋回路の中心に形成されて」いるのに対し、引用発明Aの「第2排出口23」は、第2ガード22の中央部分に設けられているものであって球旋回路の中心に形成されたものではない点。

[相違点2]本願補正発明の「球案内溝」は、「球放出口の真下に位置する」のに対し、引用発明Aの「第1排出部12」は、第2排出口23の下側に位置するものの真下に位置するものではない点。

[相違点3]本願補正発明は「前記始動入賞口で入賞検出された入賞球の有効保留数を点灯表示する保留ランプは、前記傾斜面の後端部から立設されて前記球案内部の前端部まで延在する壁面に、該球案内部より下方に位置するよう全て配設されると共に、全ての保留ランプが、前記球放出部よりも、前記球通入口が形成された左側壁面側に位置するよう構成される」のに対し、引用発明Aは、特別図柄始動口33又は普通電動役物27で入賞検出された入賞球の保留に関する構成が明らかでない点。

(3)相違点の判断
[相違点1及び2について]
相違点1及び2は、密接に関連しているので、合わせて検討する。
特開平6-327822号公報(以下「引用文献B」という。)の段落【0010】には、「パチンコ遊技機の遊技盤12に設けられる補助遊技装置14であって、誘導路46、案内路48、案内板50、突起52、選別入賞領域54、一般入賞領域56などによって構成され、第1の入賞領域18に入った遊技球Aが、誘導路46あるいは案内路48に案内されて案内板50上に導かれ、そこで突起52に当ってランダムに方向を変えながら転動することにより、選別入賞領域54あるいは一般入賞領域56の何れかに振り分けられて入る補助遊技装置14」(以下「引用発明B」という。)が記載されており、その補助遊技装置14を示す図3によれば、引用発明Bの「案内路48」は、球通路と中央に球落下孔を有する球旋回部(従来周知のクルーン)よりなるものと認められ、その球落下孔の真下は案内板50上の選別入賞領域54付近であることが見てとれる。
なお、従来周知のクルーンについては、例えば、特開平7-124304号公報(特に、図3、4及び段落【0018】)、特開平4-317678号公報(特に、図15及び段落【0057】)及び特開平5-161743号公報(特に、図6、7及び段落【0020】)を参照。
そして、引用発明A、Bともに、パチンコ遊技機の遊技盤に設けられる遊技用の部材である点で共通しているから、引用発明Aに引用発明Bを適用し、引用発明Aの第2ステージ20における「第2排出部21」及び「第2排出口23」からなる部分の構成を、引用発明Bの「中央に球落下孔を有する球旋回部」に代えるとともに、球落下孔の真下を引用発明Aの「第1排出部12」として、上記相違点1及び2に係る本願補正発明のような構成とすることは、パチンコ遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到し得る。

[相違点3について]
図柄表示装置の近傍に遊技球が転動する領域を設けた遊技用の部材において、図柄表示装置付近に始動入賞口で入賞検出された入賞球の有効保留数を点灯表示する保留ランプを設けることは、例えば、特開平5-161743号公報(特に、図6、8及び段落【0022】【0080】)、特開平10-277221号公報(特に、段落【0032】及び図6、7)及び実願平1-24900号(実開平2-116487号)のマイクロフィルム(特に、明細書13頁10?15行及び第2、3図)に記載されるように、パチンコ遊技機の分野において従来周知の技術(以下「周知技術」という。)であり、保留ランプの設置箇所は当業者が適宜選択し得る事項であるから、引用発明Aの第1ステージ11と第2ステージ20との間の壁面左側に、始動入賞口で入賞検出された入賞球の有効保留数を点灯表示する保留ランプを配置して、上記相違点3に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。
請求人は平成23年7月28日付けの意見書において、「始動入賞口で入賞検出した入賞球の有効検出を点灯表示する保留ランプを、遊技領域から遊技球が到来して転がり移動可能な傾斜面の後端部から立設されて球案内部の前端部まで延在する壁面に、該球案内部より下方に位置するよう全て配設すると共に、全ての保留ランプが、球放出部よりも、遊技球案内通路を通過した遊技球が球案内部に通出される球通入口を形成した壁面側に位置するよう構成」する点について、引用文献A?Gは何ら披瀝も示唆もするものではなく、この構成によって、「球放出部から放出落下する遊技球の始動入賞口に対する入賞態様を目視しながら、殆ど視線移動をすることなく保留ランプの点灯状況を確認できる」という本願補正発明特有の効果が得られる旨主張している。
確かに、引用文献A?Gは本願補正発明の上記保留ランプの構成と同一の構成を開示するものではないが、遊技者にとって関心が高い装置から視線をずらすことなく計数表示を容易に視認することができるようにすることは、特開平7-323119号公報(前置報告書で提示された文献8、特に段落【0007】)や特開昭62-47381号公報(特に、第3頁右上欄第10?19行)に記載されるように、当業者に従来良く知られている課題であるから、引用発明Aに周知技術を適用する際に、遊技中の遊技者にとって関心が高い装置である、特別図柄表示部26、第2ステージ20、第2排出口23及び第1ステージ11のいずれからも近い箇所である第1ステージ11と第2ステージ20との間の壁面左側に保留ランプを配置することは、当業者にとって格別困難なことではない。
また、上記特開平5-161743号公報の図6及び段落【0022】からは、クルーンの下方に入賞個数記憶ランプ45を配置することも見てとれる。

(4)まとめ
以上のように相違点1?3は、いずれも当業者が容易に想到し得るものであり、本願補正発明の作用効果も、引用発明A、引用発明B及び周知技術に基づいて、当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願補正発明は、引用発明A、引用発明B及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成23年7月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」、請求項2に係る発明を「本願発明2」という。)は、平成21年7月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その内容は、上記第二.1.(1)に記載したとおりである。

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用文献記載事項
審判合議体が通知した拒絶理由における引用文献A及びその記載事項は、上記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)本願発明1及び2と引用発明Aとの対比及び判断
本願発明1及び2は、上記「第二.」で検討した本願補正発明から、保留ランプに関する事項を削除するとともに、本願補正発明を特定するために必要な事項である構成についての限定事項の一部を省いたものといえる。
そうすると、本願発明1及び2の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第二.3.(4)」に記載したとおり、引用発明A、引用発明B及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1及び2も、同様の理由により、引用発明A、引用発明B及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明1及び2は、引用発明A、引用発明B及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
本願発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-31 
結審通知日 2011-09-06 
審決日 2011-09-27 
出願番号 特願平11-310360
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 剛史  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 秋山 斉昭
吉村 尚
発明の名称 パチンコ遊技機の遊技部品  
代理人 山田 健司  
代理人 多賀 久直  
代理人 山本 喜幾  

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