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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1247082
審判番号 不服2010-17770  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-06 
確定日 2011-11-17 
事件の表示 特願2008- 34460「画像読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月27日出願公開、特開2009-193429〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年2月15日の出願であって、平成22年6月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成22年8月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年8月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
2-1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「複数の波長の発光色を順次点灯制御して原稿に光を照射する原稿の読み取り幅より長い光源と、原稿の前記読み取り幅の外側に設けられた基準板と、この基準板及び原稿で反射した光を収束するレンズと、このレンズで収束された光を受光し、光電変換する多数の画素を有する受光部と、この受光部で光電変換されたアナログ信号をアナログ・デジタル変換するアナログ・デジタル変換部と、このアナログ・デジタル変換部でデジタル変換された光電変換出力を前記受光部の画素毎に暗時の出力データを生成し均一化補正する黒補正部と、前記光源から照射された光を前記受光部で受光し、画素毎に明時の出力データを生成し均一化補正する白補正部と、この白補正部と前記黒補正部で演算処理した発光色毎に得られた画像データを、前記受光部の同一画素の発光色毎に同期して全ライン画素に亘り出力する色画像位置同期回路部と、この色画像位置同期回路部の出力から分岐させた一方の信号を、前記受光部の同一画素位置における発光色毎のデータがあらかじめ上限値と下限値とを指定した範囲内にある場合に、ドロップアウトデータとして当該画素位置情報を出力する色判定部と、前記色画像位置同期回路部の出力から分岐させた他方の信号を、発光色毎に決められた定数データを乗算したあと前記受光部の同一画素位置データを加算し単色データとして出力する画像モノクロ化回路部と、この画像モノクロ化回路部の出力信号を、前記色判定部の画素位置情報に対応する画素を画像データとして出力されないレベルにデータ置換してから出力するデータ置換部と、前記白補正部又は黒補正部と前記色画像位置同期回路部との間に設けられ、前記基準板で反射した光を読み取った読み取りライン毎の情報を、あらかじめ前記基準板で反射した光を読み取った情報を初期の情報とし、この初期の情報を基準値とする所定の基準値と比較し、前記所定の基準値に漸近するように前記画像データの読み取りライン毎の出力を調整するデジタル可変器とを備え、前記基準板で読み取った情報の出力が前記所定の基準値より高い場合には前記画像データの出力を減少させ、前記基準板で読み取った情報の出力が前記所定の基準値より低い場合には前記画像データの出力を増加させて、前記色画像位置同期回路部の入力レベルを前記所定の基準値における画像データに漸近させながら前記データ置換部のデータを2値化のドロップアウトカラー処理した画像データとして出力する画像読取装置。」
と補正された。
本件補正は、補正前の「前記白補正部又は黒補正部と前記色画像位置同期回路部との間に設けられ、前記基準板で反射した光を読み取った読み取りライン毎の情報を所定の基準値と比較し、前記画像データの読み取りライン毎の出力を調整するデジタル可変器」を「前記白補正部又は黒補正部と前記色画像位置同期回路部との間に設けられ、前記基準板で反射した光を読み取った読み取りライン毎の情報を、あらかじめ前記基準板で反射した光を読み
取った情報を初期の情報とし、この初期の情報を基準値とする所定の基準値と比較し、前記所定の基準値に漸近するように前記画像データの読み取りライン毎の出力を調整するデジタル可変器」とするので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.引用例
2-2-1.引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-303584号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がなされてい
る。

(1)「【背景技術】
【0002】
近年、ドキュメントスキャナはモノクロ機からカラー機に主流が移っている。しかしながらカラーでデータをそのままパソコン等の記憶媒体に記録するには、膨大な記憶容量が必要な上、データ転送量が膨大になり、読み取り速度が低下する問題があるなど、通常の文書を記録保存するにはモノクロ2値で保存することが一般的である。また、カラー機ではカラーデータを扱う機能を生かして、OCR原稿など読み取りで不要な色の付いた罫線など任意の色を白に置き換えるカラードロップアウト機能が付いている。
【0003】
以下、従来のカラードロップアウトについて説明する。
【0004】
図3(a)は従来の赤い罫線で黒文字901が囲まれている原稿を示す
図、図3(b)は図3(a)の赤い罫線カラードロップアウトした場合を示す図、図4(a)は図3(a)のカラードロップアウト前のグレーデータを示す図、図4(b)は図3(b)のカラードロップアウト後のグレーデータの変化を示す図、図5は従来のカラードロップアウト回路のブロック図、図6(a)は従来のカラードロップアウトでのノイズ状のごみが発生するしくみを表した図、図6(b)は図6(a)のカラードロップアウトでの各色の置換データの値を示す図、図7(a)、(b)は従来のカラードロップアウトで、ドロップアウト置換データを大きい値に設定時のノイズ状のゴミが発生するしくみを示す図である。」

(2)「【0005】
ここで、図7において、カラードロップアウト機能ではCCDの出力をR(レッド)だけ、G(グリーン)だけ、B(ブルー)だけを2値化して行う簡単なドロップアウトではなく、任意の色のドロップアウトを行うものがある。その場合任意の色を指定するのに色空間はRGB、YUV、Lab、YIQ、HSV(色相、輝度、明度)などが考えられるが、中でも色範囲指定が容易なため、色空間H(色相),S(輝度),V(明度)が用いられている。
(3)「【0006】
ここで色空間RGBからHSVの変換は、
V=max{R,G,B}
delta=max{R,G,B}-min{R,G,B}
S=delta/V
V=0のとき then H=不定
V≠0のとき、
R=Vのとき H=60*(G-B)/delta
G=Vのとき H=120+60*(B-R)/delta
B=Vのとき H=240+60*(R-G)/delta
さらに
H<0のとき H=H+360
で表される。また、カラーからバイナリーへ変換する方法として一般的に、カラーデータをグレーデータYに変換され、2値化回路であらかじめ設定された閾値と比較されてバイナリデータに変換される。グレーデータYは以下の式で表される。
Y=0.299×R+0.587×G+0.114×B
従来のカラードロップアウト回路では、あらかじめ設定されたHSVの範囲にあるか判定とされると、グレーデータを白レベルに置換することによって2値化回路で閾値よりグレーデータが高くなることによって、バイナリーデータはドロップアウト判定された部分が白になるようになっていた。

(4)「【0007】
図3(a)に示すように、ドロップアウトなしでは罫線100の輝度は白に比べてかなり低いのでバイナリー化されたら黒となってしまう。ところが図3(b)に示すように、赤のドロップアウトをすることで文字のみが黒にバイナリー化され、赤の罫線100は黒にならない。図4(a)、(b)
は、スキャン方向でのグレーデータの変化を示している。ここではRGBのデータの変化は省略している。図4(a)はカラードロップアウト前のグ
レーデータを表し、グレーデータで最初の赤罫線での落ち込みはカラード
ロップアウト判定されて白のグレーデータに置き換えられる。グレーデータの次の落ち込みは黒文字のものなのでカラードロップ判定されないのでそのままとなる。図4(b)はカラードロップアウト回路を通った結果のグレーデータを表し、閾値によって判定されてバイナリー化され、黒の文字のみが黒のバイナリーデータとなる。
【0008】
図5に示すように、ドロップアウトする領域をHSV成分の指定でH上限値をH用上限設定105に、H下限値をH用下限設定106に、S上限値をS用上限設定107に、S下限地をS用下限設定108に、V上限値をV用上限設定109に、V下限値をV用下限設定110にそれぞれ設定してお
く。原稿から読み取られたカラー画像はCCD101からRGBデータとして出力され、ADコンバータ(図示せず)で量子化された後シェーディング補正回路102で補正される。RGBデータからHSV変換回路103でHSV成分をH用比較器113でH成分の領域判定を、S用比較器114でS成分の領域判定を、V用比較器115でV成分の領域判定を行い、AND回路201の出力にはドロップアウトする領域が来るとONになる。さらにRGBデータから輝度変換回路104のデータがドロップアウト判定時の置換用データ118のデータにセレクタ119で置き換わり、輪郭強調回路202を経て2値化回路203でバイナリデータとなる。
【0009】
図6(a)、(b)では、カラードロップアウトで赤をドロップアウトする例を示したもので、黒い文字の回りを赤い罫線に囲まれた原稿から、赤い罫線部分を白に置き換えることによって文字のみがバイナリー化される。」

したがって、引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「ドロップアウトする領域をHSV成分の指定でH上限値をH用上限設定105に、H下限値をH用下限設定106に、S上限値をS用上限設定107に、S下限地をS用下限設定108に、V上限値をV用上限設定109に、V下限値をV用下限設定110にそれぞれ設定しておき、
原稿から読み取られたカラー画像はCCD101からRGBデータとして出力され、ADコンバータで量子化された後シェーディング補正回路102で補正され、
RGBデータからHSV変換回路103でHSV成分に変換して、H用比較器113でH成分の領域判定を、S用比較器114でS成分の領域判定
を、V用比較器115でV成分の領域判定を行い、
H用比較器113、S用比較器114、及びV用比較器115の比較結果が入力されるAND回路201の出力はドロップアウトする領域が来るとONになり、
AND回路201の出力がONになると、RGBデータをグレーに変換する輝度変換回路104のデータがドロップアウト判定時の置換用データ118のデータにセレクタ119で置き換わり、2値化回路203でバイナリ
データとなるカラードロップアウト回路。」

2-2-2.引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-99559号公報(以下、
「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(5)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、画像読取装置に係り、詳しくは、原稿を載置して原稿を読み取るイメージスキャナ、ファクシミリ、複写機及び電子
ファイリングシステム等に用いられる画像読取装置に適用することができ、特に、定型用紙にバックグラウンド印字を行う際、使用者側で単色乃至複数色の色を容易にドロップアウトさせることができる画像読取装置に関す
る。」

(6)「【0013】ところで、装置本体10の読み取り位置A付近には、図3に示す如く、原稿ガラス13上面に添わせたシート上の白色部材31とその白色部材31上を被うシート上の黒色部材32とよりなる押え板33を設けており、搬送ローラ25の手前には、搬送路22内の原稿の有無を検知する検知センサ34を設けている。……
【0014】そして、この間に、画像処理部42を介して画像読取部43で搬送される原稿上の画像を読み取り位置Aで読み取る。即ち、読み取り位置Aで光源14からの光を原稿ガラス13上の原稿に照射し、その反射光を第1ミラー15,第2ミラー16,第3ミラー17で順次照射して、結像レンズ18で光電変換素子19に結像して、原稿上の画像を読み取る。

(7)「【0016】次に、本発明の機能を達成するための仕様としては、画像読取装置に色情報を認識する能力を有することが要求されるので、色情報を認識するために光をR(赤)、G(緑)及びB(青)の3原色に分解して読み取る必要があるが、その方式としては、次の構成を採ればよい。
1(注)フィルターによる色分解方式
図2の結像レンズ18の前に3色のフィルターを設置し、1ライン乃至は1ページ毎に3色フィルターの切換を実施する方式。
2(注)蛍光灯切換えによる色分解方式
図2の光源14に赤色管、緑色管及び青色管の3本の蛍光灯を用い、1ライン乃至は1ページ毎に蛍光灯の点滅を行って色分解を実施する方式。
3(注)カラー光電変換素子による色分解方式
光電変換素子19自体にR.G.B.各色に分解する機能を有する素子を用いる方式。」
(注)原文は○内に数字が記載されたものである。

(8)「【0017】次に、本実施例の画像読取装置の基本動作を説明す
る。本実施例の原稿を載置して原稿を読取る画像読取装置では、実読取動作の前にプリスキャン処理を行い、原稿全体のレイアウトの確認を実施する。このプリスキャン処理を行う際、バックグラウンドのみ印刷されている画像領域を指定し、バックグラウンド印字の除去のための前処理として、多値フルカラーでの読取り、印字色、濃度の情報を記憶する。ここでの記憶情報
は、1(注)多値レベル信号の平均値、R0 バー,G0 バー,B0 バーと、2(注)多値レベル信号の標準偏差、σR0, σG0,σB0である。なお、指定する画像領域は、オペレータの指示に基づくが、上記情報の確からしさを向上させるために、できるだけ広範囲であるのが望ましい。
【0018】そして、以上の記憶情報を基に、次の(1)式の演算式に基づき、Max(X0 ),Min(X0 )を算出する。
【0019】
【数1】


【0020】次に、実読取動作時、読取られた多値画像デジタルデータ
Rx ,Gx ,Bx に対し、Max(X0 ),Min(X0 )と大小比較を実施
し、次の(2)式の条件を満足する場合のみ、Rx =Gx =Bx =0に変
換する。これにより、定型用紙にバックグラウンド印字を行う際、入力データのみを自動的に抽出することができる。
【0021】
【数2】


(注)原文は○内に数字が記載されたものである。

2-2-3.引用例3
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-223418号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(9)「【0014】電子式複写装置等に使用される画像読取装置では出力のばらつきを補正するため図8で説明した信号補正(黒補正及び白補正)が行われる。現状において、固体ラインセンサ97の出力のばらつきは、基本的にはCCD(電荷転送素子)の構造自体のばらつきによってはそれほど生じない。出力のばらつきは、主に受光部1の各センサにおいて発生してい
る。
【0015】固体ラインセンサ97で受光素子(画素)に欠陥があると、その画素の出力にばらつきが生じる。出力のばらつきの原因は、大きく分けて2つあり、1つは暗時出力(暗電圧)のばらつきであり、他の1つは感度のばらつきである。前者の暗電圧のばらつきの補正は、黒補正(ブラックコレクション)呼ばれている。
【0016】黒補正はラインセンサに特有の信号補正である。即ち、2次元のイメージセンサであるエリアセンサでは、黒補正を行うには画素数が多すぎ必要なメモリが大規模すぎてしまうこと、また欠陥があっても2次元画像の1画素分しかその欠陥が現れないので実用上問題とならないことから、一般に黒補正は行われない。これに対して、ラインセンサでは、1次元センサを機械的走査して2次元原稿を読み取るので、1画素の暗示出力むらが結果として出力画像上に直線状のすじとなって現れるため、実用上一切許されない。
【0017】このため黒補正は、固体ラインセンサ97を使用する光学式画像読取装置において、画像を取り込む際の前処理の一環としてとして行われる。
【0018】図9に示すような画像読取装置において、CCDラインセンサ97の後段には、この出力を増幅する適当な増幅器8,増幅された出力をアナログ-ディジタル変換するA/D変換装置9,これに接続された黒補正回路10及び白補正回路11が順に接続されている。黒補正回路10は、ス
イッチ14,黒補正用ラインメモリ12及び加算器15を有している。一
方、白補正回路11は、スイッチ16,白補正用ラインメモリ13及び割算器17を有している。
【0019】図9の回路において、図8の手順S74,S75(黒補正及び白補正)は次のようになる。スイッチ14を黒補正用ラインメモリ12側に切り換えて、光源(図示せず。)を消灯した状態でCCDラインセンサ97の全ての画素(例えば、1?2048番の画素)の出力を、アンプ8及びA/D変換装置9を介して順番に(1?2048番の)黒基準レベルのデータとして黒補正用ラインメモリ109に記憶する。その後、スイッチ14を加算回路15側に切り換える。光源を点灯して原稿(図示せず。)を読み取ったCCDラインセンサ97から出力される画像データから、黒補正用ラインメモリ12に記憶された黒基準レベルデータを減算する。このようにして、暗示出力のばらつきの補正である黒補正がなされる。
【0020】黒補正の後に通常は白補正(感度補正,シェーディング補正とも言う。)が行なわれる。白補正は、光源のシェーディング(光量むら)及び個々のホトダイオードの感度のばらつきを補正することで、100%光量出力の下で画像読取装置に内蔵された白基準板を測定し黒補正されたR,
G,Bのデータをそれぞれ白補正用ラインメモリ13に白基準レベルのデータとして記憶する。
【0021】次に、スイッチ16を切り換えて黒補正回路10からの黒補正後の画像データを割算器17に送り、このデータを白補正用ラインメモリ13に蓄積された白基準レベルデータで徐算する。元来同じデータであるので1又は0の正規化されたデータが得られ、こうして白補正がなされる。」

2-2-4.周知例
前置報告書(平成23年3月3日付けの審尋に記載)において周知例として引用された特開2001-136383号公報(以下、「周知例」とい
う。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(10)「【0006】本発明の目的は、原稿を搬送しながら画像を読取っても、シェーディング補正を常に一定の状態で行い、高精度なシェーディング補正を行うことができる画像読取装置を提供することである。」

(11)「【0010】本発明に従えば、シェーディング補正手段が基準用白板に基づくシェーディング補正データを作成する際に、領域外白板からの画像も読取って白板レベル記憶手段に信号レベルを記憶しておく。シェー
ディング補正を行う際に、アンプ回路の増幅利得およびオフセットの補正
を、白板レベル記憶手段に記憶されている信号レベルを目標として行うの
で、シェーディング補正を行う際の信号レベルを、基準用白板について補正データを作成する際の条件に合わせ、シェーディング補正の精度を高めることができる。
【0011】また本発明で前記基準用白板は、前記原稿の搬送経路に、その表面上を原稿が通過し、原稿搬送方向に垂直な幅方向の長さが、読取り可能な最大の原稿の幅よりも大きくなるように設置され、前記領域外白板は、該基準用白板で、読取り可能な最大の原稿が通過する部分の外方となる部分であることを特徴とする。」

2-3.対比
引用発明の「CCD101」は、原稿の画像を読み取る機能で、本願補正発明の「受光部」と共通するものである。
引用発明の「ADコンバータ」は、CCD101から出力されたRGB
データをとして量子化するものであるから、本願補正発明の「アナログ・デジタル変換部」に対応する。
引用発明の「シェーディング補正回路102」も、本願補正発明の「黒補正部」、「白補正部」及び「デジタル可変器」も、画像データの補正を行うものであるから、補正手段ということができる。
引用発明の「ドロップアウトする領域をHSV成分の指定でH上限値をH用上限設定105に、H下限値をH用下限設定106に、S上限値をS用上限設定107に、S下限地をS用下限設定108に、V上限値をV用上限設定109に、V下限値をV用下限設定110にそれぞれ設定しておき」及び「RGBデータからHSV変換回路103でHSV成分に変換され、H用比較器113でH成分の領域判定を、S用比較器114でS成分の領域判定
を、V用比較器115でV成分の領域判定を行い」とすること、及び「H用比較器113、S用比較器114、及びV用比較器115の比較結果が入力されるAND回路201」は、色成分のデータがあらかじめ上限値と下限値とを指定した範囲内にある場合に、ドロップアウトデータとして当該画素位置情報を出力する機能の点で、本願補正発明の「色判定部」と共通するものである。
引用発明の「輝度変換回路104」は、色成分のデータを単色データとして出力する機能の点で、本願補正発明の「画像モノクロ化回路部」と共通するものである。
引用発明の「セレクタ119」は、ドロップアウトする領域が来るとド
ロップアウト判定時の置換用データに置き換わるようにするものであるか
ら、色判定部の画素位置情報に対応する画素を画像データとして出力されないレベルにデータ置換してから出力する機能の点で、本願補正発明の「データ置換部」と共通するものである。
引用発明は、原稿から読み取れたカラー画像を、2値化回路203でバイナリデータとするカラードロップアウト回路であるから、2値化のドロップアウトカラー処理した画像データを出力する画像読取装置といえるものである。
したがって、本願補正発明と引用発明とを対比すると、次の点で一致す
る。

「原稿の光を受光し、光電変換する多数の画素を有する受光部と、
この受光部で光電変換されたアナログ信号をアナログ・デジタル変換するアナログ・デジタル変換部と、
このアナログ・デジタル変換部でデジタル変換された光電変換出力を補正する補正手段と、
色成分のデータがあらかじめ上限値と下限値とを指定した範囲内にある場合に、ドロップアウトデータとして当該画素位置情報を出力する色判定部
と、
色成分のデータを単色データとして出力する画像モノクロ化回路部と、
この画像モノクロ化回路部の出力信号を、前記色判定部の画素位置情報に対応する画素を画像データとして出力されないレベルにデータ置換してから出力するデータ置換部と、
前記データ置換部のデータを2値化のドロップアウトカラー処理した画像データとして出力する画像読取装置。」

また次の点で相違する。

相違点1
本願補正発明は、「複数の波長の発光色を順次点灯制御して原稿に光を照射する原稿の読み取り幅より長い光源」と、「画像データを、前記受光部の同一画素の発光色毎に同期して全ライン画素に亘り出力する色画像位置同期回路部」とを備えているのに対して、引用発明ではどのようにして、CCD101からRGBデータを出力するものか、明らかでない点。

相違点2
本願補正発明は、原稿で反射した光を受光するものであるが、引用発明は反射光であることの特定がない点。

相違点3
本願補正発明は、光を収束するレンズを備えているが、引用発明はレンズについての特定がない点。

相違点4
本願補正発明は、補正手段が、「受光部の画素毎に暗時の出力データを生成し均一化補正する黒補正部」、「光源から照射された光を前記受光部で受光し、画素毎に明時の出力データを生成し均一化補正する白補正部」、及び「前記白補正部又は黒補正部と前記色画像位置同期回路部との間に設けら
れ、前記基準板で反射した光を読み取った読み取りライン毎の情報を、あらかじめ前記基準板で反射した光を読み取った情報を初期の情報とし、この初期の情報を基準値とする所定の基準値と比較し、前記所定の基準値に漸近するように前記画像データの読み取りライン毎の出力を調整するデジタル可変器とを備え、
前記基準板で読み取った情報の出力が前記所定の基準値より高い場合には前記画像データの出力を減少させ、前記基準板で読み取った情報の出力が前記所定の基準値より低い場合には前記画像データの出力を増加させて、前記色画像位置同期回路部の入力レベルを前記所定の基準値における画像データに漸近」させるものであるのに対して、引用発明は「シェーディング補正回路102」である点。

相違点5
引用発明は、RGBデータからHSV変換回路103でHSV成分に変換してドロップアウトする領域を判定しているのに対して、本願補正発明は、発光色毎のデータ(実施例ではRGBデータである。)を変換することなく色判定部で処理する点。

相違点6
本願補正発明は、画像モノクロ化回路部が、発光色毎に決められた定数
データを乗算したあと前記受光部の同一画素位置データを加算し単色データとして出力するのに対して、引用発明は、輝度変換回路104が、どのようにしてRGBデータを単色データであるグレーに変換するのか明らかでない点。


2-4.相違点に対する判断
相違点1について
前記(7)に記載されているように、カラー画像の読み取りには種々の方式があり、「2蛍光灯切換えによる色分解方式」として示されているよう
に、複数の波長の発光色を順次点灯制御して原稿に光を照射して、発光色毎に画像データを得ることに格別の点はない。
また、画像データを処理する場合に、各色のデータが同時に必要になることは、例えば、前記(8)の【数2】のように普通のことであり、各色の
データを同時に得るために、本願補正発明の「画像データを、前記受光部の同一画素の発光色毎に同期して全ライン画素に亘り出力する色画像位置同期回路部」のような処理を行うことは、前記「2蛍光灯切換えによる色分解方式」の採用にともない、当業者が当然に行うことにすぎない。
さらに、原稿の読み取り幅より短い光源を用いることは考えられないし、現実には存在しない理想的な光源でなければ、その端部では光量の低下やむら等の問題があるから、原稿の読み取り幅より長い光源とすることにも、格別の点はない。

相違点2について
原稿で反射した光を受光することで、画像を読み取ることは、例えば、前記(6)にも記載されているように周知のことである。

相違点3について
光を収束するレンズを備え、このレンズで収束された光を受光することは周知のことである。

相違点4について
画像読取装置で出力のばらつきを補正するため黒補正及び白補正を行うことは、前記(9)にも記載されているように周知のことである。
また、領域外白板から読取った信号レベルを記憶しておき、この信号レベルを目標として増幅利得の補正を行うことも、前記(11)に記載されているように周知のことであし、補正をデジタル処理で行うことや黒補正及び白補正の後に行うことにも格別の点はない。
したがって、引用発明において補正手段を、本願補正発明のような黒補正部、白補正部、及びデジタル可変器とすることに困難な点はない。

相違点5について
前記(2)に記載されているように、カラードロップアウトの処理を行う色空間は任意であり、引用発明が、RGBデータからHSV成分に変換して判定を行っているのは、その記載のとおり色範囲指定が容易なためといえ、RGBデータからHSV成分に変換することが必須のことではなく、RGBデータのまま処理してもよいことはもちろんである。

相違点6について
前記(3)には、グレーデータを
「Y=0.299×R+0.587×G+0.114×B」
で表すことが記載されており、引用発明の「輝度変換回路104」においても、色毎に決められた定数データを乗算したあと加算する処理とすることに格別の点はない。

以上のように、各相違点には格別の点はなく、引用発明において各相違点を本願補正発明のようにすることに困難な点はないから、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-5.むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成22年8月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年5月11日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「複数の波長の発光色を順次点灯制御して原稿に光を照射する原稿の読み取り幅より長い光源と、原稿の前記読み取り幅の外側に設けられた基準板と、この基準板及び原稿で反射した光を収束するレンズと、このレンズで収束された光を受光し、光電変換する多数の画素を有する受光部と、この受光部で光電変換されたアナログ信号をアナログ・デジタル変換するアナログ・デジタル変換部と、このアナログ・デジタル変換部でデジタル変換された光電変換出力を前記受光部の画素毎に暗時の出力データを生成し均一化補正する黒補正部と、前記光源から照射された光を前記受光部で受光し、画素毎に明時の出力データを生成し均一化補正する白補正部と、この白補正部と前記黒補正部で演算処理した発光色毎に得られた画像データを、前記受光部の同一画素の発光色毎に同期して全ライン画素に亘り出力する色画像位置同期回路部と、この色画像位置同期回路部の出力から分岐させた一方の信号を、前記受光部の同一画素位置における発光色毎のデータがあらかじめ上限値と下限値とを指定した範囲内にある場合に、ドロップアウトデータとして当該画素位置情報を出力する色判定部と、前記色画像位置同期回路部の出力から分岐させた他方の信号を、発光色毎に決められた定数データを乗算したあと前記受光部の同一画素位置データを加算し単色データとして出力する画像モノクロ化回路部と、この画像モノクロ化回路部の出力信号を、前記色判定部の画素位置情報に対応する画素を画像データとして出力されないレベルにデータ置換してから出力するデータ置換部と、前記白補正部又は黒補正部と前記色画像位置同期回路部との間に設けられ、前記基準板で反射した光を読み取った読み取りライン毎の情報を所定の基準値と比較し、前記画像データの読み取りライン毎の出力を調整するデジタル可変器とを備え、前記基準板で読み
取った情報の出力が所定の基準値より高い場合には前記画像データの出力を減少させ、前記基準板で読み取った情報の出力が所定の基準値より低い場合には前記画像データの出力を増加させて、前記色画像位置同期回路部の入力レベルを所定の基準値における画像データに漸近させながら前記データ置換部のデータを2値化のドロップアウトカラー処理した画像データとして出力する画像読取装置。」

原査定の拒絶の理由に引用された引用例1-3の記載事項は、前記のとおりである。
そして、本願発明は、本願補正発明の「前記白補正部又は黒補正部と前記色画像位置同期回路部との間に設けられ、前記基準板で反射した光を読み
取った読み取りライン毎の情報を、あらかじめ前記基準板で反射した光を読み取った情報を初期の情報とし、この初期の情報を基準値とする所定の基準値と比較し、前記所定の基準値に漸近するように前記画像データの読み取りライン毎の出力を調整するデジタル可変器」が、「前記白補正部又は黒補正部と前記色画像位置同期回路部との間に設けられ、前記基準板で反射した光を読み取った読み取りライン毎の情報を所定の基準値と比較し、前記画像
データの読み取りライン毎の出力を調整するデジタル可変器」とするものであるから、本願補正発明と同様、引用発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-14 
結審通知日 2011-09-20 
審決日 2011-10-03 
出願番号 特願2008-34460(P2008-34460)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐田 宏史  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 千葉 輝久
板橋 通孝
発明の名称 画像読取装置  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 村上 加奈子  
代理人 中鶴 一隆  
代理人 高橋 省吾  

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