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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1247487
審判番号 不服2009-5039  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-06 
確定日 2011-11-24 
事件の表示 特願2003-72846「容器入り飲料、その製造方法及び飲料の香味改善方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月7日出願公開、特開2004-275112〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年3月17日の出願であって、その請求項1ないし19に係る発明は、平成21年3月6日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。

「【請求項1】容器入り飲料であって、容器内に飲料とこれと気体を混合するための、容器の容量に対して5%以上のヘッドスペースを有し、
容器が栓または蓋を有する密閉可能な容器であり、ヘッドスペースの気体が不活性なガスである、容器入り飲料。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物1ないし3(原査定の引用文献1ないし3)には以下の事項がそれぞれ記載されている。

(1)刊行物1:米国特許出願公開第6159513号明細書の記載事項の日本語訳
(1a)「実施例1
この実施例では、容器12は、22オンスの容器であり、正確な量のアルコールと混合されたときに「ブラッディー マリー」のような味の香料が混合された12オンスのノンアルコール飲料が予め満たされた。約10オンスの空のヘッドスペースは、容器中の混合飲料の上部に残る。混合飲料を予め満たした後、シール26が容器の口を封止するために容器の首14の上に適用される。ろ過器20は、シール26上にはめ込まれ、最後に蓋16が、首14上にねじ込まれる。収縮ラップのような安全シールが蓋16と首14上に適用される。
予め満たされた容器20を受け取ったとき、消費者は、蓋16、ろ過器20、シール26をはずす。消費者は、パッケージのラベルの指示に従い、容器の空のヘッドスペースをウォッカと氷で満たす。消費者がアルコールと混合飲料の比率について幾らかの自由があるようにしているが、10オンスのヘッドスペースは、フレーバーを損なうほどアルコールを入れることを避けるように選択されている。ウォッカと氷を入れた後、容器20に蓋16がねじ込まれる。容器はシェイクされ、容器からそのまま、又はろ過器を通して注ぐことにより消費者のために支度ができる。」(第6欄下から22?1行)

(2)刊行物2:特開昭60-248132号公報の記載事項
(2a)「本発明の目的は、保存時特にホットベンダーにおける保存時に褐変やフレーバー劣化が生じない密閉容器入り緑茶飲料およびその製造方法を提供することにある。」(第2頁右上欄19行?左下欄2行)
(2b)「上記目的を達成するには、容器に充填する茶液中の溶存酸素量を一定量以下に規定するとともに容器のヘッドスペース中の酸素量も一定量以下に規定する必要がある。」(第2頁左下欄12?15行)
(2c)「本発明の方法の一つの特徴は、容器内の酸素を不活性ガスにより追い出し、容器内の酸素量を一定量以下に押さえる」(第2頁右下欄14?18行)

(3)刊行物3:特開平9-252752号公報の記載事項
(3a)「【請求項1】 内容物を充填する前の容器を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とすること、を特徴とする高品質容器入り飲料の製造方法。
【請求項2】 更に、フィラータンク内のヘッドスペース部分も窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とすること、を特徴とする請求項1に記載の製造方法。」
(3b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、飲料(液状ないし流動性食品を含む)を長期間に亘って良好な風味、香味、品質等すぐれた味覚を維持する、高品質容器入り飲料の製造に関するものである。本発明は、従来達成し得なかった徹底した酸化防止策を採用するのに成功したものであって、本発明によって容器に充填された飲料は長期間に亘って作りたての味と香りと食感を有するきわめて品質のすぐれたものである。」

3 対比・判断
上記刊行物1の記載事項から、刊行物1には、
「22オンスの容器に、香料が混合された12オンスのノンアルコール混合飲料が予め満たされ、約10オンスの空のヘッドスペースが容器中の混合飲料の上部に残り、シールと蓋で容器の口が密閉された容器入り混合飲料」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

そこで、本願発明と刊行物1発明とを比較する。
(ア)刊行物1発明の「約10オンスの空のヘッドスペース」は、容器の容量22オンスに対して約45%であり、本願発明の「これと」つまり「飲料と」「気体を混合するための容器の容量に対して5%以上のヘッドスペース」とは、容器の容量に対して5%以上のヘッドスペースである点で共通する。
(イ)刊行物1発明の「シールと蓋で容器の口が密閉された容器」は、本願発明の「栓または蓋を有する密閉可能な容器」に相当する。
(ウ)刊行物1発明の「空のヘッドスペース」は、飲料がないスペースであり、容器入り混合飲料の作り方からみて、空気のような気体があることは明らかであるから、本願発明の「ヘッドスペースの気体が不活性なガスである」こととは、ヘッドスペースに気体がある点で共通する。

したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。
(一致点)
容器入り飲料であって、容器内に容器の容量に対して5%以上のヘッドスペースを有し、容器が栓または蓋を有する密閉可能な容器であり、ヘッドスペースに気体がある容器入り飲料である点。

(相違点1)
本願発明では、ヘッドスペースが、容器内の飲料と気体とを混合するためのものであるのに対して、刊行物1発明では、その目的を規定していない点。

(相違点2)
ヘッドスペースにある気体が、本願発明では、不活性ガスであるのに対して、刊行物1発明では、気体の種類は規定していない点。

そこで、上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
刊行物1には、容器入り混合飲料を受け取った消費者が、開封後、容器内の香料が混合されたノンアルコール混合飲料中にウォッカと氷を入れて、シェイクすることが記載されている。そして、シェイカーでカクテルを作る場合、シェイカーに材料をいれ、氷をシェイカーの8分目ぐらいまで入れてシェイクすることは、例えば、伊藤正之監修、「スタンダード・カクテル」、(株)創元社、1989年、第42?43頁(審査における拒絶理由の引用文献5)にも記載されるとおり本願出願前周知であり、シェイカーの上部に残った2分目の空間の空気がシェイクにより材料と混合されることは技術常識といえる。
そうすると、刊行物1に記載された、刊行物1発明を消費者が使用する方法を考慮すると、10オンスのヘッドスペースは、ウォッカと氷を入れるスペースとしてだけでなく、容器内の飲料と気体とを混合するためのものでもあるといえる。
そうすると相違点1は、実質的な相違点ではない。

(相違点2について)
刊行物2、3にも記載されるとおり、容器入り飲料のヘッドスペースの気体を不活性ガスとして品質を守ることは、本願出願前の周知技術であるから、刊行物1発明において、容器中の飲料の品質保持のために、ヘッドスペースの気体を不活性ガスとすることは当業者が容易になし得たことといえる。

そして、本願発明の効果は、刊行物1の記載事項及び周知技術から予測し得たものであり、格別顕著なものとはいえいない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-29 
結審通知日 2011-09-30 
審決日 2011-10-12 
出願番号 特願2003-72846(P2003-72846)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 晴絵  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 ▲高▼岡 裕美
郡山 順
発明の名称 容器入り飲料、その製造方法及び飲料の香味改善方法  
代理人 中村 充利  
代理人 社本 一夫  
代理人 梶田 剛  
代理人 野▲崎▼ 久子  
代理人 押鴨 涼子  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  
代理人 小林 泰  
代理人 廣瀬 しのぶ  
代理人 山本 修  
代理人 小笠原 有紀  
代理人 江尻 ひろ子  
代理人 中田 尚志  
代理人 千葉 昭男  
代理人 山崎 幸作  
代理人 泉谷 玲子  

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