• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1247528
審判番号 不服2010-19900  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-03 
確定日 2011-11-24 
事件の表示 特願2000- 55234「プリント配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月 7日出願公開、特開2001-244636〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成12年3月1日の出願であって、平成21年8月27日付けで拒絶理由が通知され、平成21年10月29日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成22年3月18日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成22年4月21日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年6月3日付けで前記平成22年4月21日付け手続補正書による補正を却下する補正の却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年9月3日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に、同日付けで明細書を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成23年4月26日付けで書面による審尋がなされ、これに対して平成23年7月6日付けで回答書が提出されたものである。


第2 平成22年9月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年9月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)平成22年9月3日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成21年10月29日付けの手続補正書によって補正された)特許請求の範囲の以下の(a)に示す請求項1ないし5を、(b)に示す請求項1に補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 コア基板上に、導体回路と層間樹脂絶縁層とが交互に積層されたプリント配線板において、
コア基板の内部には、表面及び裏面の導体回路を接続する外層スルーホールが形成され、
該外層スルーホールの内部には、粒子状物質を含む外層樹脂充填材が充填され、
該外層樹脂充填材の内部には内層スルーホール用貫通孔が形成され、
該内層スルーホール用貫通孔の内部には、めっきが充填されることで内層スルーホールが形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】 前記粒子状物質は、無機粒子、有機樹脂粒子の中から選ばれるいずれか少なくとも1種類以上からなることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】 前記内層スルーホールは信号線として用いられ、前記外層スルーホールは、アース線又は電源線として用いられる請求項1又は請求項2のプリント配線板。
【請求項4】 前記めっきは銅から成る請求項1?3のいずれか1のプリント配線板。
【請求項5】 前記内層スルーホール用貫通孔はレーザにより形成されている請求項1?請求項4のいずれか1のプリント配線板。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 コア基板上に、導体回路と層間樹脂絶縁層とが交互に積層されたプリント配線板において、
コア基板の内部には、表面及び裏面の導体回路を接続する外層スルーホールが形成され、
該外層スルーホールの内部には、粒子状物質を含む外層樹脂充填材が充填され、
該外層樹脂充填材の内部にはレーザで開口径50?200μmの内層スルーホール用貫通孔が形成され、
該内層スルーホール用貫通孔の内部には、銅めっきが充填されることで内層スルーホールが形成され、
前記粒子状物質は、無機粒子、有機樹脂粒子の中から選ばれるいずれか少なくとも1種類以上からなり、
前記内層スルーホールは信号線として用いられ、前記外層スルーホールは、アース線又は電源線として用いられることを特徴とするプリント配線板。」(なお、下線は補正箇所を明示するために当審で付したものである。)

(2)本件補正の目的
特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「内層スルーホール用貫通孔が形成され」を「レーザで開口径50?200μmの内層スルーホール用貫通孔が形成され」と限定し、「めっき」を「銅めっき」と限定するとともに、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「粒子状物質」について「前記粒子状物質は、無機粒子、有機樹脂粒子の中から選ばれるいずれか少なくとも1種類以上からなり」と限定し、「内層スルーホール」について「前記内層スルーホールは信号線として用いられ」と限定し、「外層スルーホール」について「前記外層スルーホールは、アース線又は電源線として用いられる」と限定するものである。
したがって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 本件補正の適否についての判断
本件補正における請求項1に関する補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2-1 特開2000-4080号公報(平成12年1月7日公開。以下、「引用文献」という。)
(1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献には、例えば、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付した。)

(a)「【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するためには、本発明では、ビアホールと内層接続用パッド及びビアホールと信号経由用導通接続穴上に形成された接続用パッドに接続させるビアホール付き薄膜多層印刷配線板にあって、低誘電率を有する多層シールド板5を用い、これの所定位置に第1貫通穴6を穿穴し、この穴6内壁に、シールド電気銅めっきよりシールド導体としての金属層を付与し、シールド導通接続穴10を形成後フォトエッチング法により前記金属層からなる第1,第2接続用パッド9・9Aを形成し、前記シールド導通接続穴10の穴内に第1穴埋め樹脂8を形成し、これらの表裏上に第1めっき永久レジスト層12を形成しかる後、前記シールド導通接続穴10の内壁に接触しなく、かつ、前記シールド導通接続穴10との間に前記第1穴埋め樹脂8の層間部が保持されるように第2貫通穴6Aを穿穴して、これらの表裏に無電解銅めっきを施し、信号経由用導通接続穴14,第3接続用パッド9B等を設け、この穴14内に第2穴埋め樹脂15を形成する。そうして第2めっき永久レジスト層12Aを形成後、この表裏に無電解銅めっきを用い、第4接続用パッド9Cと前記導通接続穴14上に前記穴10内径よりも小さい径の接続用パッド13を形成し得、この表裏上にめっき触媒入りエポキシ接着フィルム16を加熱加圧し一体化多層構造に構成し、これにイメジングにて炭酸ガスレーザを用い、所定位置にビア半貫通穴17・18を穿設後第3めっき永久レジスト層19を形成して、前記ビア半貫通穴17・18内壁に無電解銅めっきを施し、ビアホール20A・20B・20C・20D,外層回路21・22等を設け得、ビアホールランド24A・24B長さも短縮して接続部の占有面積を小さく、また高速化対応にも優れ、さらに薄膜化及び高実装密度化を実現することにより、本発明の薄膜多層印刷配線板25が達成されるものである。(段落【0012】)

(b)「【0013】
【発明の実施の形態】本発明は、低誘電率をもつ多層シールド板5を用い、これにシールド導通接続穴10を形成、この穴10内に絶縁体8を設けた後に、表裏上に接続用パッド9・9Aを形成し、前記シールド導体接続穴ランドの表裏上に、第1めっきレジスト層12(SR-3000)を形成して、前記シールド導通接続穴10の内径に接触しないように第2貫通穴6Aを設け、これに無電解銅めっきを施し第3接続用パッド9B及び信号経由導通接続穴14等を形成し、この穴14内に絶縁体15を設け、第2めっき永久レジスト層12Aを形成しかる後に、無電解銅めっきを施し、第4接続用パッド9C及び前記信号経由導通接続穴14上に前記穴10内径よりも小さい径の接続用パッド13を形成する。
【0014】そうして、この表裏上にCC-41用めっき触媒入りエポキシ接着フィルム16(厚さ50μm)を重ね合わせ、加圧加熱して積層一体化して多層構造を構成し得、これに選択的にテーパ角17A・18A約13?15度範囲に横励起型大気圧型炭酸ガスレーザを用い、ビームエネルギー密度15?30J/平方センチメートル範囲で、イメジングにてビア半貫通穴17・18を穿設する。次いで最外層になる第3めっき永久レジスト層19を形成した後に、無電解銅めっきを施し、外層回路21・22超微径(上径80?150μm)のビアホール20A・20B・20C・20D及び短縮化したビアホールランド24A・24Bを形成し得、電子部品(SMD)23を固定する占有面積をより一層小さく形成し、さらに信号処理の高速化及び高実装密度化に優れ得、より一層有利となる効果が達成できる薄膜多層印刷配線板25である。」(段落【0013】及び【0014】)

(c)「【0016】図2は、この実施例に係る薄膜多層印刷配線板25の構造を示す断面図である。先ず、この図2に示すように、内層グランド導体1,内層電源導体2,内層銅箔3,絶縁層4等から構成される低誘電率を有する多層シールド板5(日立化成工業(株)社製商品名:MCL-E-67S,板厚1.0mm)の所定位置に、自動穴明け機(日立精工(株)製:MARK100)を用いて穴径1.0?1.4mmの第1貫通穴6を穿穴した後、水平方式によるダイレクト電解銅めっきまたは化学めっきと電解銅めっきを併用による厚さ20?25μmのシールドめっき層からなるシールド導通接続穴10を形成し、この穴内に第1穴埋め樹脂8を充填(スクリーン印刷法)・硬化する。
【0017】次いで、フォトエッチング法を用い、所定の内層回路からなる第1,第2接続用パッド9・9A,前記第1穴埋め樹脂8層及び前記シールド導通接続穴10ランドとを設けた後、この表裏面上に第1めっき永久レジスト層12(日立化成工業(株)社製商品名:フォテックSR-3000,厚み約35μm)を加圧加熱ローラー付を真空ラミネーター(日立エーアイシー(株)社製商品名:HLM-V570)によりラミネート形成する。
【0018】次いで、図3に示すように、前記シールド導通接続穴10の内壁に接触しないように所定位置に自動穴明け機(日立精工(株)製)を用いてステップ穴加工式で径0.3?0.8mmの第2貫通穴6Aを穿穴した後、この穴6A内壁と前記接続用パッド9BとにCC-41めっき液による無電解銅めっき(日立エーアイシー(株)製商品名:CC-41めっき)を施し第3接続用パッド9Bや信号経由導通接続穴14とが得られ、この穴14内に絶縁体となる第2穴埋め樹脂15を充填して硬化させる。
【0019】また本実施例では、信号経由導通接続穴14内外両周面に第1,第2穴埋め樹脂8・15よりなる絶縁体を形成しているため信号経由導通接続穴14の金属めっき層14Aは、熱応力によって導通接続穴14の軸方向に伸縮される場合に、この金属めっき層14Aの中間部が太鼓形状に膨らんだり、マイクロクラック等が生じることを防止でき、前記金属めっき層14Aの疲労がより一層軽減されバレルクラックが生じ難くなる効果がある。
【0020】そうして、これを接続信頼性確認をホットオイル試験において評価すると、本実施例の信号経由導通接続穴14の金属めっき層14Aは、300サイクル数以上確保できるが従来技術に係る信号経由導通接続穴40の金属めっき層40Aは、約100?150サイクル数以下の結果であり、従来の金属めっき層40部の疲労は、高くかつ、バレルラックが発生しやすい構造である。」(段落【0016】ないし【0020】)

(d)「【0021】次いで、図4に示すように、表裏上に厚さ34μm程の第2めっき永久レジスト層12Aを前記に記載した日立エーアイシー(株)製の加圧加熱ローラー付真空ラミネーターを用いて、ラミネート形成する。しかる後にCC-41めっき液(日立エーアイシー(株)製)により、めっき厚さ30?35μmの第4接続用パッド9C及び前記絶縁体15入り信号経由導通接続穴14上に接続用パッド13とを形成する。この接続用パッド13径は、前記シールド導通接続穴10の内径よりも小さく、さらに前記第2貫通穴6A径よりも大きく形成するものである。
【0022】次いで、図5に示すように、前記第4接続用パッド9C及び前記接続用パッド13上を粗化・黒化処理し表裏に厚さ50μmのめっき触媒入りエポキシ接着フィルム16(日立化成工業(株)社製商品名:HA-21FC+AS-3000)を配し、加圧加熱して、一体化多層構造に構成する。この多層構造の構成は、例えば、真空プレス機や常圧下プレス機が用いられ、この成形諸条件としては、温度170℃?180℃,圧力30?40kg/平方センチメートルで60分間加熱加圧して接着する。
【0023】次に実施例のビアホール20A,20B,20C,20Dのビア半貫通穴17・18を穿穴する場合に、テーパ角17A・18Aを13度・14度・15度にし、前記接続用パッド9C及び信号経由導通接続穴14上に形成した接続用パッド13に到達する深さまで穿穴する。この炭酸ガスレーザ加工としては、例えば、横励起型大気圧型炭酸ガスレーザでイメジングを用い短パルスでビア半貫通穴17・18を所定位置に穿穴する方法がある。
(中略)
【0025】次いで、表裏に第3めっき永久レジスト層19(日立化成工業(株)社製商品名:SR-3000,厚さ34μm)を常圧加圧加熱ローラ付き真空ラミネーター(日立エーアイシー(株)社製商品名:HLM-V570)を用い、ラミネートした後硬化し、この表裏上に厚さ20?25μmの無電解めっき(日立エーアイシー(株)社製商品名:CC-41めっき液)を施し、最外層回路21・22とビアホール20A・20B・20C・20Dを形成し電子部品(SMD)23固定用ビアホールランド24A・24Bを約5%程短縮化形成し得、また内外層の層間接続信頼性に優れ、さらに高実装密度化及び信号処理の高速化が達成でき得る本発明の薄膜多層印刷配線板25である。
【0026】次いで、本実施例(図5)に半田クリームをスクリーン印刷法を用い塗布して、約340℃のフュージング炉よりはんだ層24を形成する。
【0027】次いで、図1に示すように、前記図5に電子部品(SMD)23を搭載し、ビアホールランド24A・24Bにはんだ24固定した本発明の薄膜多層印刷配線板25の模式断面図である。」(段落【0021】ないし【0027】)

(e)「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に電子部品の搭載を示す模式断面図。
【図2】本発明の実施例の製造工程を示す断面図。
【図3】本発明の実施例の製造工程を示す断面図。
【図4】本発明の実施例の製造工程を示す断面図。
【図5】本発明の実施例の製造工程を示す断面図。
【図6】従来技術に係る実施例を示す模式断面図。
【符号の説明】
1…内層グランド導体 2…内層電源導体 3…内層銅箔 4…絶縁層
5…低誘電率を有する多層シールド板 6…第1貫通穴 6A…第2貫通穴
8…第1穴埋め樹脂 9…第1接続用パッド 9A…第2接続用パッド
9B…第3接続用パッド 9C…第4接続用パッド
10…シールド導通接続穴 12…第1めっき永久レジスト層
12A…第2めっき永久レジスト層 13…導通接続穴上の接続用パッド
14…信号経由導通接続穴 14A…金属めっき層 15…第2穴埋め樹脂
16…めっき触媒入りエポキシ接着フィルム 17・18…ビア半貫通穴
17A・17B…テーパ角 19…第3永久レジスト層
20A,20B,20C,20D…ビアホール 21,22…外層回路
23…電子部品(SMD) 24…はんだ層
24A,24B…ビアホールランド 25…本発明の薄膜多層印刷配線板
26,27…内層導体 28…絶縁基板 29…内層銅箔
30…内層の多層シールド板 31…第1貫通穴(ドリル)
32…シールド導通接続穴 33…絶縁体 34…接続用パッド
35…片面銅箔付接着プリプレグ 36…第2貫通穴(ドリル)
37…半貫通穴(ドリル) 38…外層回路 39…導通接続穴ランド
40…信号経由導通接続穴 40A…金属めっき層 41…ビアホール
42…ビアホールランド 43…ソルダーレジスト 44…電子部品(SMD) 45…はんだ 47…従来技術に係る多層印刷配線板」(【図面の簡単な説明】及び【符号の説明】)

(2)上記(1)(a)ないし(e)及び図面の記載から分かること

(ア)上記(1)(a)ないし(e)及び図面の記載から、引用文献には、多層シールド板5上に、第1,第2,第3接続パッド9・9A・9Bと第1めっき永久レジスト層12とが交互に接続された薄膜多層印刷配線板25において、多層シールド板5の内部には、表面及び裏面の第1,第2,第3接続パッド9・9A・9Bを接続するシールド導通接続穴10が形成され、該シールド導通接続穴10の内部には、絶縁体8が設けられ、該絶縁体8の内部には自動穴明け機で第2貫通穴6Aが設けられ、該第2貫通穴6Aの内部には無電解銅めっきが施されることで信号経由導通接続穴14が形成されるものであることが分かる

(イ)上記(1)(a)ないし(e)及び図面の記載から、引用文献に記載された薄膜多層印刷配線板25において、信号経由導通接続穴14は信号線として用いられることが分かる。また、シールド導通接続穴10は、内層グランド導体1と接続されていることから、アース線として用いられることが分かる。

(3)引用文献に記載された発明
上記(1)及び(2)並びに図面の記載から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「多層シールド板5上に、第1,第2,第3接続パッド9・9A・9Bと第1めっき永久レジスト層12とが交互に接続された薄膜多層印刷配線板25において、
多層シールド板5の内部には、表面及び裏面の第1,第2,第3接続パッド9・9A・9Bを接続するシールド導通接続穴10が形成され、
該シールド導通接続穴10の内部には、絶縁体8が設けられ、
該絶縁体8の内部には自動穴明け機で径0.3?0.8mmの第2貫通穴6Aが設けられ、
該第2貫通穴6Aの内部には無電解銅めっきが施されることで信号経由導通接続穴14が形成され、
前記信号経由導通接続穴14は信号線として用いられ、前記シールド導通接続穴10は、アース線として用いられる、薄膜多層印刷配線板25。」

2-2 本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明と引用発明とを対比するに、引用発明における「多層シールド板5」は、その機能及び構造又は技術的意義からみて、本願補正発明における「コア基板」に相当し、以下同様に、「第1,第2,第3接続パッド9・9A・9B」は「導体回路」に、「第1めっき永久レジスト層12」は「層間樹脂絶縁層」に、「薄膜多層印刷配線板25」は「プリント配線板」に、「シールド導通接続穴10」は「外層スルーホール」に、「シールド導通接続穴10が設けられ」は「外層スルーホールが形成され」に、「絶縁体8」は「外層樹脂充填材」に、「絶縁体8が設けられ」は「外層樹脂充填材が充填され」に、「第2貫通穴6A」は「内層スルーホール用貫通孔」に、「無電解銅めっき」は「銅めっき」に、「信号経由導通接続穴14」は「内層スルーホール」に、「アース線」は「アース線又は電源線」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「無電解銅めっきが施される」は「銅めっきが施される」である限りにおいて、本願補正発明における「銅めっきが充填される」に相当する。

してみると、本願補正発明と引用発明は、
「コア基板上に、導体回路と層間樹脂絶縁層とが交互に積層されたプリント配線板において、
コア基板の内部には、表面及び裏面の導体回路を接続する外層スルーホールが形成され、
該外層スルーホールの内部には、外層樹脂充填材が充填され、
該外層樹脂充填材の内部には内層スルーホール用貫通孔が形成され、
該内層スルーホール用貫通孔の内部には、銅めっきが施されることで内層スルーホールが形成され、
前記内層スルーホールは信号線として用いられ、前記外層スルーホールは、アース線として用いられる、プリント配線板。」
である点で一致し、次の(1)ないし(3)の点で相違する。

<相違点>
(1)「外層樹脂充填材」に関して、本願補正発明においては、「粒子状物質を含む外層樹脂充填材が充填され」、「前記粒子状物質は、無機粒子、有機樹脂粒子の中から選ばれるいずれか少なくとも1種類以上からな」るのに対して、引用発明においては、本願補正発明における「外層樹脂充填材」に相当する「絶縁体8」が、「粒子状物質を含む外層樹脂充填材が充填され」、「前記粒子状物質は、無機粒子、有機樹脂粒子の中から選ばれるいずれか少なくとも1種類以上からな」るのかどうか、明らかでない点(以下、「相違点1」という)。
(2)「内層スルーホール用貫通孔」に関して、本願補正発明においては、「レーザで開口径50?200μmの内層スルーホール用貫通孔が形成され」るのに対して、引用発明においては、本願補正発明における「内層スルーホール用貫通孔」に相当する「第2貫通穴6A」が、径0.3?0.8mmであり、レーザにより形成されるのではない点(以下、「相違点2」という)。
(3)「内層スルーホール」に関して、本願補正発明においては、「内層スルーホール用貫通孔の内部には、銅めっきが充填されることで内層スルーホールが形成され」るのに対し、引用発明においては、「第2貫通穴6Aの内部には無電解銅めっきが施されることで信号経由導通接続穴14が形成され」るものの、「銅めっきが充填される」かどうか明らかでない点(以下、「相違点3」という)。

2-3 相違点についての検討及び判断
(1)相違点1について
プリント配線板の技術分野において、スルーホールの内部に「無機粒子、有機樹脂粒子の中から選ばれるいずれか少なくとも1種類以上からなる粒子状物質を含む外層樹脂充填材が充填される技術」は、従来周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開平10-256724号公報の段落【0023】、【0032】ないし【0034】及び図面、特開平11-17341号公報の段落【0018】及び【0023】ないし【0026】及び図面、等の記載を参照。)にすぎない。
してみれば、引用発明において、周知技術1を適用することにより、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
プリント配線板の技術分野において、スルーホール用貫通孔をレーザにより形成し、その開口径を50?200μm程度とすることは、従来周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開平11-17341号公報の段落【0028】及び【0029】並びに図面、特開平11-289138号公報の段落【0019】及び図面、特開2000-49464号公報(平成12年2月18日公開)の段落【0026】及び図面、等の記載を参照。)にすぎない。
してみれば、引用発明において、周知技術2を適用することにより、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
プリント配線板の技術分野において、貫通孔の内部に銅めっきを充填する技術は、従来周知の技術(以下、「周知技術3」という。例えば、特開平11-289138号公報の段落【0020】ないし【0022】及び図面、特開平4-320087号公報の段落【0014】及び図面、特開昭63-137498号公報の特許請求の範囲及び第2ページ左下欄第13行ないし右下欄第20行並びに図面、等の記載を参照。)にすぎない。
また、内層スルーホールの内部に耐熱導電性ペーストを充填した構造も周知(以下、「周知技術4」という。例えば、平成21年8月27日付け拒絶理由通知において引用した特開平11-17341号公報の段落【0028】ないし【0039】並びに図面、等の記載を参照。)である。
してみれば、引用発明において、周知技術4を参考にして、周知技術3を適用することにより、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、請求人は、審判請求書において、「引用文献1(当審注;本審決の「引用文献」)では、段落番号[0019]において「また本実施例では、信号経由導通接続穴14内外両周面に第1,第2穴埋め樹脂8・15よりなる絶縁体を形成しているため信号経由導通接続穴14の金属めっき層14Aは、熱応力によって導通接続穴14の軸方向に伸縮される場合に、この金属めっき層14Aの中間部が太鼓形状に膨らんだり、マイクロクラック等が生じることを防止でき、前記金属めっき層14Aの疲労がより一層軽減されバレルクラックが生じ難くなる効果がある」と、内層のスルーホールは、樹脂充填が必須であり、金属を充填することを否定している。」と主張している。
しかしながら、引用文献において否定されているのは、引用文献の従来例のように、信号経由導通接続穴40の内部に「何も充填しないもの」であって、金属を充填することを否定しているわけではない。むしろ、金属を充填することにより、信号経由導通接続穴40の中間部が(穴に向かって)太鼓形状に膨らんだりすることを防止できるといえる。

また、本願補正発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術1ないし4から想定される以上の格別の作用効果を奏するものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成22年9月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 の[理由]の1(1)(a)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 引用文献
原査定の拒絶理由に引用された引用文献(特開2000-4080号公報)の記載事項及び引用発明は、前記第2の[理由]の2 2-1(1)ないし(3)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]の1(2)で検討したように、実質的に、本願補正発明における発明特定事項の一部を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、前記第2の[理由]の2 2-1ないし2-3 に記載したとおり、引用発明及び周知技術1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術1ないし4に記載された技術から想定される以上の格別の作用効果を奏するものではない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-26 
結審通知日 2011-09-27 
審決日 2011-10-11 
出願番号 特願2000-55234(P2000-55234)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大光 太朗飛田 雅之  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 中川 隆司
金澤 俊郎
発明の名称 プリント配線板  
代理人 田下 明人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ