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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1247641
審判番号 不服2008-22429  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-01 
確定日 2011-11-30 
事件の表示 特願2005-361079「複数のカラムで構成されたグラフィックユーザインターフェースを提供する装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月20日出願公開、特開2006-190267〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成17年12月14日(パリ条約による優先権主張2004年12月31日,大韓民国)の出願であって,平成20年5月26日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年9月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,平成23年3月16日付けの当審の拒絶理由通知に対して同年4月5日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成23年4月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
グラフィックユーザインターフェース上にあるお互い異質的な対象をその目的とする複数のカラムのうち少なくとも一つのカラムの項目を選択するためのセレクターの移動命令または選択命令を受信する命令受信部と,
前記グラフィックユーザインターフェース上に既に表示されている他のカラムの項目に対する活性化の可否を前記選択されたカラムの項目に応じて決定し,前記選択されたカラムの項目に対して,二つ以上の他のカラムの項目を同時に選択可能に活性化する判断部と,
前記活性化されたカラムの項目を,前記グラフィックユーザインターフェースを利用して出力するディスプレイ部と,
出力された前記活性化されたカラムの項目選択に従って命令メッセージを伝達する送受信部と,を備え,
前記カラムは,作業命令,コンテンツ種類及び対象機器を含む
ことを特徴とする複数のカラムで構成されたグラフィックユーザインターフェースを提供する装置。」

3.引用例
(1)引用例1記載の事項及び引用例1発明
これに対して,当審において,平成23年3月16日付けで通知した拒絶の理由において引用した「特開2004-129154号公報」(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の(ア)?(ク)の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,ネットワークを介して接続された複数のAV機器等を制御する機器コントロールシステム,表示装置及び機器コントロールプログラムを記録した記録媒体に関する。」

(イ)「【0023】
図1は,本発明の実施の形態のAV機器コントロールシステムの全体構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るAV機器コントロールシステムは,ネットワークシステムとして例えばディジタル放送の電波を受信可能なディジタル放送受信機能を備えたテレビジョン受信機に適用することができる。
【0024】
本実施の形態に係るAV機器コントロールシステムは,アイコン,グラフィック,文字等による情報そのものや,この情報を表示させるGUI機能を有する表示装置を含む複数のAV機器を相互にデジタルインタフェースでデイジーチェーン接続して構成される。
【0025】
図1において,AV機器コントロールシステムは,IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394規格のデジタルインタフェースで各種機器を接続するネットーク1と,ネットワーク1上に接続されたグラフィク機能及びホスト機能を持つ表示装置10と,ネットワーク1上に接続された複数のAV機器であるD-VHS11,DVD(Digital Versatile Disc)12,BSチューナ13,アンプ(AMP<1>)14,(AMP<2>)15とを備えて構成される。また,アンプ14,15には,アナログ接続によりスピーカ(SP)16,17がそれぞれ接続されている。」

(ウ)「【0027】
図2は,上記表示装置10のAV機器制御機能部の構成を示すブロック図である。
図2において,表示装置10は,ネットワークリセットを検知するネットワーク監視部21,各AV機器からの情報を送受信する通信部22(通信手段),各AV機器から送信された識別情報及び入出力情報をデバイスリストとして記憶するデバイスリスト記憶部23(デバイスリスト記憶手段),操作画面上にグラフィック表示された出力機器及びソース機器から,操作しようとする機器及び操作キーを選択する入力部24(入力手段),画面上に映像の他にグラフィック表示可能な表示デバイス25(表示手段),リモコン受光部26及び上記各構成要素を制御する制御部27(制御手段)を備えて構成される。また,リモコン装置28は,コマンド入力装置としての機能を有し,赤外線通信,無線又は有線通信によりコマンドを送信して表示装置10を制御する。
【0028】
通信部22は,ネットワーク1の他のAV機器とデータのやり取りを行う通信装置であり,インタフェースとしては,無線インタフェースでも,ケーブルに接続された有線インタフェースでもよい。」

(エ)「【0031】
入力部24は,ユーザからの入力を受け付ける入力操作を行うキーボード及びリモコン装置28の十字キー等からなる入力装置であり,AV機器及び操作の選択・実行等の入力を行う。
【0032】
表示デバイス25は,ユーザに対してユーザインタフェースや映像を表示するCRTやLCD等の表示画面40(図4で後述する)と,図示しない画像メモリ,OSD(オン・スクリーン・ディスプレイ)発生部,コントローラ部とを備えて構成される。OSD発生部は,チャンネル,時刻,音量などの情報をテレビ等の画面上に表示する回路である。テレビ等の映像装置,テレビ会議システム等の電子機器では,チャンネル,時刻,音量などの情報をテレビ画面上に表示することが一般的になっている。OSDのデータは画像ではなく,ビットマップと呼ばれる形式で保持されており,このビットマップからY,Cb,Crで表されるYUV形式の画素値に変換され,その変換された画素がテレビ放送などの原画像の上に重畳される。」

(オ)「【0035】
特に,制御部27は,ネットワーク1に接続されたAV機器を,少なくとも出力機器とソース機器とに分けて表示デバイス25の操作画面上にグラフィック表示するとともに,操作画面上で操作されたAV機器に対しネットワーク1を通して制御コマンドを送信する制御を行う。すなわち,制御部27は,ネットワーク1に接続された全てのAV機器を,操作画面上で1つの機器とみなして操作できるように出力機器及び又はソース機器をグラフィック表示する制御を行う。」

(カ)「【0041】
図5は,ネットワークリセットが起きた直後に,表示装置10のAV機器操作表示処理を示すフローチャートであり,制御部27により実行される。図中,Sはフローの各ステップを示す。」

(キ)「【0046】
次いで,ステップS6で図4の操作パネル41に表示されているAV機器が,例えばカーソル操作で選択されたか否かを判別し,AV機器が選択操作されたときは,ステップS7で該当AV機器の表示状態を変えるとともに,指示動作を実行して本フローを終了する。この実行操作は,具体的には,表示装置10からネットワーク1を通じてソース機器に制御コマンドが送信され,該当するソース機器が制御コマンドに従った動作(例えば,再生)を開始する。上記ステップS6でAV機器が選択操作されなかったときはそのまま本フローを終了する。」

(ク)「【0048】
図6は,図4の出力機器51をグルーピングした場合の操作パネル41の表示例を示す図,図7は,図4のソース機器52を他の表示形態に変更した場合の表示例を示す図である。
カーソル操作等で,出力したい機器を選択した状態は図6で示される。ここでは,TVとAMP1が選択された状態(網がけ部分参照)を示している。この場合,TVは音に関してミュート(消音)され,またTVに対して音量アップなどのリモコン操作をした場合,TVの音量は動作せず,AMP1の音量アップの動作が行われる。
【0049】
図7は,図4におけるソース機器52表示の部分を他の表示形態に変更した場合を示す。図7において,61はBS1,BS2,映画1などのコンテンツ,62は各コンテンツに対応するソース機器である。ここでは,所望のコンテンツをカーソル操作等で選択できるようになっている。図7では「映画2」を選択した状態(網がけ部分参照)を示している。
このように,ソース機器52が表示装置10に利用可能なコンテンツを通知したので,メディアやソース機器を意識しないでコンテンツを選択できる。
【0050】
図7において,選択したコンテンツを実行操作すると,ネットワーク1を通じて表示装置10からソース機器に制御コマンド(ここでは再生コマンド)が送信され,再生を開始する。表示装置10は,操作パネル41上で,ネットワーク1中のソース側の全ての機器を1つの機器とみなし,かつネットワーク1中の出力側の全ての機器を1つの機器とみなして操作できるようにしたので,再生に要するアクション数が少なくて済む。
【0051】
以上は,図4における出力機器51を選択して実行した場合の例であるが,ソース機器52を選択して実行した場合にも同様の操作が可能である。
また,図7に示すようにソース機器52のコンテンツを表示するために,ソース機器52は,ネットワーク1に接続されたとき,あるいは,表示装置10の要求に応じて図8に示すコンテンツ情報を送信する。
【0052】
図8は,ソース機器52が,ネットワーク1に接続されたとき,あるいは,表示装置10の要求に応じて送信するコンテンツ情報70を示す図である。
図9は,表示装置10の表示画面40に表示される操作パネルの他の表示例を示す図である。
【0053】
表示装置10は,リモコン操作などで図9に示す操作パネル42を呼び出す。図9に示す操作パネル42は,出力機器55の領域55Aとソース機器56の領域56Aとに分かれており,操作パネル42で出力やソースを選択することができる。
【0054】
図9のソース機器56の表示は,前記図7に示すように表示することもできる。前記図7の場合と同様に,ソース機器,あるいはソース機器のコンテンツを,ドラッグ・アンド・ドロップ操作で出力機器のアイコンにドロップすることで再生を開始する。」

上記摘記事項(ア)?(ク)の記載及び図面の記載からみて,引用例1には,以下のとおりの発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「アイコン,グラフィック,文字等による情報そのものや,この情報を表示させるGUI機能を有する表示装置を含む複数のAV機器を相互にデジタルインタフェースでデイジーチェーン接続して構成され,かつ,IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394規格のデジタルインタフェースで各種機器を接続するネットーク1と,ネットワーク1上に接続されたグラフィク機能及びホスト機能を持つ表示装置10と,ネットワーク1上に接続された複数のAV機器であるD-VHS11,DVD(Digital Versatile Disc)12,BSチューナ13,アンプ(AMP<1>)14,(AMP<2>)15とを備えて構成されるAV機器コントロールシステムにおける表示装置10であって,
ネットワークリセットを検知するネットワーク監視部21,各AV機器からの情報を送受信する通信部22(通信手段),各AV機器から送信された識別情報及び入出力情報をデバイスリストとして記憶するデバイスリスト記憶部23(デバイスリスト記憶手段),操作画面上にグラフィック表示された出力機器及びソース機器から,操作しようとする機器及び操作キーを選択する入力部24(入力手段),画面上に映像の他にグラフィック表示可能な表示デバイス25(表示手段),リモコン受光部26及び上記各構成要素を制御する制御部27(制御手段)を備えて構成され,
通信部22は,ネットワーク1の他のAV機器とデータのやり取りを行う通信装置であり,
入力部24は,ユーザからの入力を受け付ける入力操作を行うキーボード及びリモコン装置28の十字キー等からなる入力装置であり,AV機器及び操作の選択・実行等の入力を行い,
表示デバイス25は,ユーザに対してユーザインタフェースや映像を表示するCRTやLCD等の表示画面40と,図示しない画像メモリ,OSD(オン・スクリーン・ディスプレイ)発生部,コントローラ部とを備えて構成され,
制御部27は,ネットワーク1に接続されたAV機器を,少なくとも出力機器とソース機器とに分けて表示デバイス25の操作画面上にグラフィック表示するとともに,操作画面上で操作されたAV機器に対しネットワーク1を通して制御コマンドを送信する制御を行い,ネットワーク1に接続された全てのAV機器を,操作画面上で1つの機器とみなして操作できるように出力機器及び又はソース機器をグラフィック表示する制御を行い,
図5は,ネットワークリセットが起きた直後に,表示装置10のAV機器操作表示処理を示すフローチャートであり,制御部27により実行されるものであり,
ステップS6で操作パネル41に表示されているAV機器が,例えばカーソル操作で選択されたか否かを判別し,AV機器が選択操作されたときは,ステップS7で該当AV機器の表示状態を変えるとともに,指示動作を実行して本フローを終了し,この実行操作は,具体的には,表示装置10からネットワーク1を通じてソース機器に制御コマンドが送信され,該当するソース機器が制御コマンドに従った動作(例えば,再生)を開始するものであり,
図6は,出力機器51をグルーピングした場合の操作パネル41の表示例を示し,
カーソル操作等で,出力したい機器を選択した状態は図6で示され,ここでは,TVとAMP1が選択された状態(網がけ部分参照)を示し,この場合,TVは音に関してミュート(消音)され,またTVに対して音量アップなどのリモコン操作をした場合,TVの音量は動作せず,AMP1の音量アップの動作が行われ,
図7は,図4におけるソース機器52表示の部分を他の表示形態に変更した場合を示し,61はBS1,BS2,映画1などのコンテンツ,62は各コンテンツに対応するソース機器であり,ここでは,所望のコンテンツをカーソル操作等で選択できるようになっており,メディアやソース機器を意識しないでコンテンツを選択でき,
選択したコンテンツを実行操作すると,ネットワーク1を通じて表示装置10からソース機器に制御コマンド(ここでは再生コマンド)が送信され,再生を開始し,
図9は,表示装置10の表示画面40に表示される操作パネルの他の表示例を示す図であり,
図9に示す操作パネル42は,出力機器55の領域55Aとソース機器56の領域56Aとに分かれており,操作パネル42で出力やソースを選択することができ,
図9のソース機器56の表示は,前記図7に示すように表示することもでき,図7の場合と同様に,ソース機器,あるいはソース機器のコンテンツを,ドラッグ・アンド・ドロップ操作で出力機器のアイコンにドロップすることで再生を開始することができる
AV機器コントロールシステムにおける表示装置10。」

(2)引用例2記載の事項
同じく,当審において,平成23年3月16日付けで通知した拒絶の理由において引用した「特開平7-146774号公報」(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,次の(ケ)?(サ)の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)

(ケ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は良好な操作環境を与える電子機器の操作インタフェースに関し,特にTV画面等のグラフィックディスプレイを介して操作を行なうインタフェースおよびこれを利用した電子機器に関する。」

(コ)「【0012】
【実施例】以下,本発明の実施例について説明する。本実施例は,家庭内のAVシステムに本発明を適用した例である。このAVシステムの構成には,テレビ,ビデオ,CDプレーヤなどの機能が含まれるものとするが,各機能が別々の機器で実現されていて,それら全体を統合する制御インタフェースが備えられているか,全体が1つの機器としてまとめられているかは問わない。」

(サ)「【0014】図2に示すのは,本実施例による操作用画面の1つである。図2で画面下方に並んでいるのは選択可能な項目を示すアイコンであり,画面中央の矢印は,項目間の関連を表現するピクトグラフである。アイコンはそれぞれポインティングデバイスによって指定することが可能である。図3には動作中の画面の例を示す。テレビを表すアイコンを矢印の左側に,ビデオを表すアイコンを矢印の右側に配置している。これによって,「テレビ番組をビデオテープに録画する」というアクションが起動される。テレビ,矢印,ビデオという構成要素の組み合わせは,起動されるべきアクションを直感的に示しており,理解が容易である。矢印の形で一般的に示されていたピクトグラフはここで機能が確定し,「録画する」という機能を実行する。
【0015】ここでの表示画面の例は,TVやビデオ,CDなどが一体になった機器を想定しているが,他の操作としては矢印の左側にCDのアイコン,右側に視聴者を示す人のアイコンを置くことによって,CDを聞くという目的を指示できる。同様の方法で,FAXがシステム中に組み込まれた場合には,FAXを表すアイコンが選択可能となり,FAXとテレビとを指定することによって,受信FAXをテレビ画面に出力するなどの操作を指定できる。
【0016】画面上に提示されるアイコンは固定的なものではなく,状況によって変化するものである。例えば最初の例のようにビデオをとることを指定した場合には,画面が変化して図4のようになる。テレビ,矢印,ビデオの組が上方に移動して現在の動作を示し,矢印は映像信号の流れとしてその機能が確定しているため,これを明示する形に変化している。また,ビデオの録画に関する詳細の設定が下方に現れ,この詳細設定も前画面と同様に直接的な操作が可能である。さらに,ビデオの再生や送りに関する操作を行うためのパネルが現れて,ビデオに関する操作が行える。このように,その時の状況に応じて必要な機能が提示され,関係のない機能や操作が隠されることによって,ユーザが迷わずに操作を行うことができる。
【0017】画面中に提示されるアイコンの組み合わせが変化するもう1つの場合は,矢印の両側に2つ指定できるアイコンのうち一方のみを指定したときに,他方に選択可能なアイコンが判別できるように表示が変化する時である。例えば最初の例(図3)で,左側のテレビのみが指定された場合は,ビデオと人のみが選択可能である。テレビをソースとする目的としては,テレビ番組をビデオ録画するか,テレビ番組を試聴するかのいずれかの目的が一般的であるからである。テレビからラジオへの伝達は無意味であり,選択不可能である。表示の変化としては,選択可能なものをハイライトする,あるいは選択不可能なものを表示から消したり目立たないようにする方法がある。
【0018】以上の例では矢印で一般的に代表されていたピクトグラフは先に与えられているものとしたが,ピクトグラフが機能を限定することができることから,ピクトグラフの指定をアイコンの指定に先だって行うことができる。例えば図5に示す例では,音の流れを示すピクトグラフを先に指定し,人のアイコンを右側に配置することによって,左側に配置すべきアイコンが限定され,ラジオ,CD,カセットのみになる。これら3つは共に音声信号を出力可能なデバイスであり,現在指定した音の流れの機能に適する。TVとビデオの2つは映像信号を扱うために現在の目的に合わず,選択の対象から外れる。このように,選択可能なアイコンを限定して表示することにより,操作における心的負担を軽減することができる。」

(a)上記摘記事項(ケ)?(サ)の記載からみて,引用例2には,次の事項が記載されていると認められる。
「テレビ,ビデオ,CDプレーヤなどの機能が含まれる家庭内のAVシステムにおいて,TV画面等のグラフィックディスプレイを介して操作を行なうインタフェースであって,当該インタフェースは,操作用画面の下方に表示された選択可能な項目を示すアイコンの中から所望の項目のアイコンを選択して,項目間の関連を表現するピクトグラフの両側に配置することにより,配置されたアイコンに応じた所定の機能を実行することができるものであり,例えば,音の流れの機能を限定することができるピクトグラフの指定を,アイコンの指定に先だって行うこともできる。」(以下,「引用例2記載事項A」という。)

また,引用例2には,次の事項も記載されていると認められる。
「ピクトグラフの両側のアイコンのうちの一方を指定したときに,他方の項目として選択可能なアイコンのみをハイライト表示して選択可能とし,また,例えば音の流れを示すピクトグラフを先に指定し,人のアイコンを右側に配置した場合には,左側に配置すべきアイコンとして,ラジオ,CD,カセットといった音声信号を出力可能なデバイスのみが表示される。」(以下,「引用例2記載事項B」という。)

4.対比
本願発明と引用例1発明とを対比する。

(a)引用例1発明の「操作パネル42」は「グラフィックユーザインターフェース」であるということができ,また,「操作パネル42」の「出力機器55の領域55Aとソース機器56の領域56A」は「出力機器」と「ソース機器」という「お互い異質的な対象をその目的とする複数の領域」であるということができる。
そして,引用例1発明の「領域55A」及び「領域56A」が本願発明の「カラム」に相当するから,引用例1発明の「出力機器55の領域55Aとソース機器56の領域56A」が,本願発明の「グラフィックユーザインターフェース上にあるお互い異質的な対象をその目的とする複数のカラム」に相当する。
また,引用例1発明において,「入力部24は,ユーザからの入力を受け付ける入力操作を行うキーボード及びリモコン装置28の十字キー等からなる入力装置であり,AV機器及び操作(少なくとも一つの項目)の選択・実行等の入力を行」うものであり,「操作パネル41に表示されているAV機器(少なくとも一つの項目)」は,「例えばカーソル(本願発明における「セレクター」に相当する)操作で選択され」るものである。そして,「リモコン受光部26」が,リモコン装置28から「カーソル(セレクター)操作で選択」するために「カーソル(セレクター)の移動命令または選択命令を受信する」ものであることは自明のことであるから,引用例1発明の「リモコン受光部26」は「少なくとも一つの項目を選択するためのセレクターの移動命令または選択命令を受信する」機能を備えているということができる。
してみれば,引用例1発明の「表示装置10」は,「グラフィックユーザインターフェース上にあるお互い異質的な対象をその目的とする複数のカラムのうち少なくとも一つのカラムの項目を選択するためのセレクターの移動命令または選択命令を受信する命令受信部」を備えているということができる。

(b)引用例1発明において,「図9は,表示装置10の表示画面40に表示される操作パネル(グラフィックユーザインターフェース)の他の表示例を示す図であり,図9に示す操作パネル42は,出力機器55の領域55A(カラム)とソース機器56の領域56A(カラム)とに分かれて」いるものであるから,本願発明の「前記活性化されたカラムの項目を,前記グラフィックユーザインターフェースを利用して出力するディスプレイ部」と引用例1発明の「表示画面40」とは後記する点で相違するものの,ともに,「カラムの項目を,前記グラフィックユーザインターフェースを利用して出力するディスプレイ部」である点で共通する。

(c)引用例1発明において,表示装置10の制御部27は,「ネットワーク1に接続されたAV機器を,少なくとも出力機器とソース機器と(の2つのカラム)に分けて表示デバイス25の操作画面上にグラフィック表示する(出力する)とともに,操作画面上で操作された(選択された)AV機器(項目)に対しネットワーク1を通して制御コマンド(本願発明における「命令メッセージ」に相当する)を送信する制御を行」うものであり,当該制御コマンド(命令メッセージ)が,表示装置10の「通信部22」を介してネットワーク1に送信(伝達)されることは明らかであるから,本願発明の「出力された前記活性化されたカラムの項目選択に従って命令メッセージを伝達する送受信部」と引用例1発明の「通信部22」とは後記する点で相違するものの,ともに,「出力されたカラムの項目選択に従って命令メッセージを伝達する送受信部」である点で共通する。

(d)上記(a)に記載したとおり,引用例1発明の「領域55A」及び「領域56A」が本願発明の「カラム」に相当し,また,引用例1発明の「出力機器55の領域55Aとソース機器56の領域56A」が,本願発明の「グラフィックユーザインターフェース上にあるお互い異質的な対象をその目的とする複数のカラム」に相当する。
そして,引用例1発明では,「図7は,図4におけるソース機器52表示の部分を他の表示形態に変更した場合を示し,61はBS1,BS2,映画1などのコンテンツ,62は各コンテンツに対応するソース機器であり,ここでは,所望のコンテンツをカーソル操作等で選択できるようになっており,メディアやソース機器を意識しないでコンテンツを選択でき」るものであり,「図9のソース機器56の表示は,前記図7に示すように表示することもでき,図7の場合と同様に,ソース機器,あるいはソース機器のコンテンツを,ドラッグ・アンド・ドロップ操作で出力機器のアイコンにドロップすることで再生を開始することができる」ものであるから,引用例1発明において「図9のソース機器56の表示を図7に示すように表示したもの」が本願発明の「コンテンツ種類のカラム」に相当する。
また,引用例1発明の「出力機器55」が本願発明の「対象機器」に相当するから,引用例1発明の「出力機器55の領域55A」が本願発明の「対象機器のカラム」に相当する。
してみれば,本願発明と引用例1発明とは,「カラムは,コンテンツの種類及び対象機器を含む」点で共通する。

(e)引用例1発明の「表示装置10」は,「通信部22」「入力部24」「表示デバイス25」及び「制御部27」を備えて構成され,「制御部27は,ネットワーク1に接続されたAV機器を,少なくとも出力機器とソース機器とに分けて表示デバイス25の操作画面上にグラフィック表示する(グラフィックユーザインターフェースを提供する)とともに,操作画面上で操作されたAV機器に対しネットワーク1を通して制御コマンドを送信する制御を行い,ネットワーク1に接続された全てのAV機器を,操作画面上で1つの機器とみなして操作できるように出力機器及び又はソース機器をグラフィック表示する制御を行」うものであるから,引用例1発明の「表示装置10」は「グラフィックユーザインターフェースを提供する装置」であるということができる。
また,引用例1発明において,「操作パネル42(グラフィックユーザインターフェース)は,出力機器55の領域55A(カラム)とソース機器56の領域56A(カラム)とに分かれて」いるものであるから,引用例1発明の操作パネル(グラフィックユーザインターフェース)は,「複数のカラムで構成された」ものであるということができる。
してみれば,引用例1発明の「表示装置10」は本願発明の「複数のカラムで構成されたグラフィックユーザインターフェースを提供する装置」に相当する。

そうすると,本願発明と引用例1発明とは,
「グラフィックユーザインターフェース上にあるお互い異質的な対象をその目的とする複数のカラムのうち少なくとも一つのカラムの項目を選択するためのセレクターの移動命令または選択命令を受信する命令受信部と,
カラムの項目を,前記グラフィックユーザインターフェースを利用して出力するディスプレイ部と,
出力されたカラムの項目選択に従って命令メッセージを伝達する送受信部と,
を備え,
前記カラムは,コンテンツ種類及び対象機器を含む
ことを特徴とする複数のカラムで構成されたグラフィックユーザインターフェースを提供する装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では,「前記グラフィックユーザインターフェース上に既に表示されている他のカラムの項目に対する活性化の可否を前記選択されたカラムの項目に応じて決定し,前記選択されたカラムの項目に対して,二つ以上の他のカラムの項目を同時に選択可能に活性化する判断部」を備え,ディスプレイ部に出力される項目が「活性化されたカラムの項目」であり,送受信部が,「活性化されたカラムの項目」選択に従って命令メッセージを伝達するのに対して,引用例1発明はそのような構成になっていない点。

[相違点2]
本願発明では,カラムが「作業命令を含む」のに対して,引用例1発明はそのようになっていない点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。

[相違点1]及び[相違点2]について
引用例2には,「テレビ,ビデオ,CDプレーヤなどの機能が含まれる家庭内のAVシステムにおいて,TV画面等のグラフィックディスプレイを介して操作を行なうインタフェースであって,当該インタフェースは,操作用画面の下方に表示された選択可能な項目を示すアイコンの中から所望の項目のアイコンを選択して,項目間の関連を表現するピクトグラフの両側に配置することにより,配置されたアイコンに応じた所定の機能を実行することができるものであり,例えば,音の流れの機能を限定することができるピクトグラフの指定を,アイコンの指定に先だって行うこともできる。」(引用例2記載事項A)が記載されている。
ここで,上記「ピクトグラフ」は,例えば「音の流れの機能を限定することができる」ものであるから,所定の機能(作業)を指定することができる点で,本願発明における「作業命令」に対応するものである。また,引用例2記載事項Aの「ピクトグラフの両側に配置されるアイコン」は,例えばビデオやテレビ等であるから,本願発明における「対象機器」に対応する。
そして,引用例1及び引用例2はいずれも,複数の機器から構成されるAVシステムにおいて各機器の動作をグラフィックユーザインターフェースを用いてコントロールする技術に関するものである点で共通しているから,引用例1発明に引用例2記載事項Aを適用することには何ら困難性がなく,例えば音の流れの機能やその他の機能を限定することができるピクトグラフを,所定の領域(カラム)内に表示することにより,コンテンツ種類や対象機器の指定に加えて,作業命令の指定をも行うことができるようにすることには何ら困難性が無い。
してみれば,引用例1発明において,領域56A(コンテンツ種類のカラム)及び領域55A(対象機器のカラム)に加えて,作業命令を指定するための項目を表示した領域(カラム)を設けることにより,「カラムが,作業命令,コンテンツ種類及び対象機器を含む」ように構成することには何ら困難性が無く,当業者が適宜なしえたことである。

また,例えば,引用例2に「ピクトグラフの両側のアイコンのうちの一方を指定したときに,他方の項目として選択可能なアイコンのみをハイライト表示して選択可能とし,また,例えば音の流れを示すピクトグラフを先に指定し,人のアイコンを右側に配置した場合には,左側に配置すべきアイコンとして,ラジオ,CD,カセットといった音声信号を出力可能なデバイスのみが表示される。」(引用例2記載事項B)と記載されているように,「グラフィックユーザインターフェースの技術分野において,複数の選択肢の中から所定の選択肢を選択したときに,当該選択された選択肢に応じて次に選択可能な選択肢を決定し,当該決定された選択肢のみを選択可能に表示する(選択可能に活性化する)ことにより,ユーザによる選択を容易にすること」は周知技術である。
また,引用例1発明は,「カーソル操作等で,出力したい機器を選択した状態は図6で示され,ここでは,TV(の項目)とAMP1(の項目)が(同時に)選択された状態(網がけ部分参照)を示し,この場合,TVは音に関してミュート(消音)され,またTVに対して音量アップなどのリモコン操作をした場合,TVの音量は動作せず,AMP1の音量アップの動作が行われ」るものであるから,二つ以上の項目を「同時に」選択することもできるものである。
してみれば,引用例1発明に引用例2記載事項Aを適用して,「カラムが,作業命令,コンテンツ種類及び対象機器を含む」ように構成し,当該カラムの項目の選択に際して,上記周知技術を適用して,「前記グラフィックユーザインターフェース上に既に表示されている他のカラムの項目に対する活性化の可否を前記選択されたカラムの項目に応じて決定し,前記選択されたカラムの項目に対して,二つ以上の他のカラムの項目を同時に選択可能に活性化する判断部」を備えるように構成することには何ら困難性が無く,当業者が適宜なしえたことである。
また,これに対応して,ディスプレイ部に出力される項目を「活性化されたカラムの項目」とし,送受信部が,「活性化されたカラムの項目」選択に従って命令メッセージを伝達するように構成することにも何ら困難性が無く,当業者が適宜なしえたことである。

したがって,相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成は,引用例1発明,引用例2記載事項A,及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

そして,本願発明の作用効果も,引用例1発明,引用例2記載事項A,及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

よって,本願発明は,引用例1発明,引用例2記載事項A,及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明,引用例2記載事項A,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-30 
結審通知日 2011-07-05 
審決日 2011-07-19 
出願番号 特願2005-361079(P2005-361079)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日下 善之  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 須田 勝巳
木方 庸輔
発明の名称 複数のカラムで構成されたグラフィックユーザインターフェースを提供する装置及び方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  

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