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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1247680
審判番号 不服2008-30909  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-05 
確定日 2011-12-01 
事件の表示 特願2002-324833「CEA検出のための核酸増幅用プライマーおよび該プライマーを用いた検査方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月 3日出願公開、特開2004-154088〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年11月8日を出願日とする出願であって、平成20年9月24日付で手続補正がなされたが、平成20年10月31日付で拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月22日付で手続補正がなされたものである。

2.平成20年12月22日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年12月22日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
上記補正により特許請求の範囲の請求項1は、補正前の
「【請求項1】配列番号18、19、20または21の配列を有する第一プライマー、
配列番号22、23または24の配列を有する第二プライマー、
配列番号11の配列を有する第三プライマー、および
配列番号12の配列を有する第四プライマー
を含む癌胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen:CEA)検出のための核酸増幅用プライマーセット。」から、
「【請求項1】LAMP法により癌胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen:CEA)を検出するための核酸増幅用プライマーセットであって、
配列番号18、19、20または21の配列を有する第一プライマー、
配列番号22、23または24の配列を有する第二プライマー、
配列番号11の配列を有する第三プライマー、および
配列番号12の配列を有する第四プライマーを含む核酸増幅用プライマーセット。」へと補正された。
上記補正は、上記補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「癌胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen:CEA)検出のための核酸増幅用プライマーセット」について、「LAMP法により(検出するための)」という限定を付加するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された本願出願日前の2001年に頒布された刊行物であるBio Industry(2001)Vol.18,No.2,p.15-23(以下、「引用例1」という。)には、
(i)「3.LAMP法の反応機構
本増幅法の反応機構について述べる。
使用する2種の内部プライマーinner primerと2種の外部プライマーouter primerは、図2(a)に示す特徴を持つものである。inner primerであるFIP(forward inner primer)は、3′末端にF2の配列を有し、その5′側にF1配列に相補的な配列F1cから成っている。また、逆鎖に対するプライマーBIP(backward inner primer)は、B2配列をもち、その5′にB1に相補的な配列B1cから成るものである。また、outer primerは、F2、B2の外側の領域を用いる(F3およびB3)。」(第17頁右欄第1行?第12行)、
(ii)「5.増幅効率および特異性について
鋳型として、HBV配列を持つプラスミドDNAを用い、60℃、1時間反応させた。10コピー以下の鋳型DNAを検出でき、従来の遺伝子増幅法と遜色ない感度をもつことが明らかとなった(図5)。」(第19頁右欄下から第4行?第20頁左欄第1行)、
(iii)「7.RNAからの増幅
逆転写酵素も鎖置換合成を行うことが知られている。図3(a)における(1)?(5)までの反応を逆転写酵素で行えば、以降は反応の鋳型はDNAであるので。DNAからの増幅反応組成に単に逆転写酵素を添加することで、1ステップで鋳型RNAからの増幅も可能である。前立腺特異抗原(PSA)産生細胞(LNCaP)を、PSA非産生細胞(K562)にて希釈して総RNA抽出後、これを鋳型RNAとしてLAMP反応(RT-coupled LAMP)を行ったところ、100万個中に1個しか存在しないPSA生産細胞を検出可能であった。従って、本法はDNAからの増幅のみならず、RNAからの増幅においても、高い効率にて増幅を行えることがわかった(図6)。」(第20頁右欄下から第3行?第21頁右欄第1行)、と記載され、第21頁の図6の左半分には、標的であるPSAのRNAに対して、プライマーとしてFIP、BIP、F3、B3の4つを用い、RT-LAMP法で60℃、45分間反応させたことが記載されている。

また、同じく原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された本願出願日前の2001年に頒布された刊行物であるBioベンチャー(2001)Vol.1,No.1,p.109-115(以下、「引用例2」という。)には、
(iv)「プロトコール
I プライマーの設計
最適なプライマー設計がLAMP法における増幅を成功させる必要不可欠な条件となる。各領域はPCRと同様に市販のプライマー設計支援ソフトを利用して、塩基組成、GC含量、二次構造などに注意して設計する。Tm値はNearest Neighbor法で求める。設計上のポイントを次に示す。
・3′末端が極端にATリッチにならないようにする
・増幅領域はF2?B2間で200bp以内とする
・F2/B2を含むループになる部分のサイズは30?60bpとする
・各領域のTm値は60?65℃程度とする
・標的遺伝子の存在の有無が目的の場合、F1?B1間はなくてもよい
・増幅領域内でプライマーに利用した配列以外の場所に適当な制限酵素部位があると、増幅産物の確認に利用できる
なお、われわれはLAMP法専用のプライマー設計支援ソフトを富士通(株)と共同開発中である。」(第112頁下から第14行?第113頁第1行)、
(v)「実験例
LAMP法によるHBV DNAの増幅例を図3に示した。HBV DNAのHBs領域の増幅に用いたプライマーは下記の通りである。
(4つのプライマーの配列は省略)
100ngのゲノムDNA存在下で増幅反応を行った結果、鋳型以外のDNAが大量に存在していても、特異的なDNA増幅が起こり、微量(6コピー)のDNAを高効率に検出できた(図3A)。また、反応開始時に蛍光インターカレーターとしてエチジウムブロマイドを添加し反応させると、増幅反応をリアルタイムにモニタリングでき、その立ち上がる点は、初めの鋳型DNAのコピー数に依存していた(図3B)。また、反応後に紫外線ランプ照射により、目視で容易に増幅の有無を判定できた(図3C)。さらに、2種類のループプライマーを用いると、増幅時間が1/3に短縮することを確認した(図3D)。」(第113頁第12行?第21行)、と記載され、第114頁の図3Dには、HBV DNAの増幅例において、鋳型DNAが6000コピーの場合、蛍光強度の立ち上がり時間は、ループプライマー無しの場合は36分であるのに対して、ループプライマー有りの場合は1/3以下の11分であることが示されている。

さらに、同じく原査定の拒絶の理由で引用文献4として引用された本願出願日前の1993年に頒布された刊行物であるInt.J.Cancer(1993)Vol.55,p.311-319(以下、「引用例4」という。)には、
(vi)「癌胎児性抗原(CEA)は様々な発現パターンを有する密接に関連した分子のファミリーに属する癌マーカーである。我々は、逆転写酵素/PCR(RT/PCR)を用いて、CEAファミリーの個々のメンバーからの転写物を特異的に増幅する、オリゴヌクレオチドプライマーセットを開発した。」(第311頁要約の項第1行?第6行)、と記載されている。

(3)対比
(3-1)本願補正発明1
本願補正発明1は、LAMP法により癌胎児性抗原(以下、「CEA」という。)を検出するための核酸増幅用プライマーセットであって、配列番号18、19、20または21の配列を有する第一プライマー、配列番号22、23または24の配列を有する第二プライマー、配列番号11の配列を有する第三プライマー、及び配列番号12の配列を有する第四プライマーを含むプライマーセットに係るものであり、これら第一プライマーから第四プライマーに関して、本願明細書の段落【0035】には、「(領域の選択)配列番号1に記載するヒトCEAの塩基配列から、プローブ設計ソフトを用いてLAMP法に適切な領域の位置を検討した。領域の選択は、F1cおよびR1cはTm値が58.5?63.5℃、F2およびR2はTm値が61.5?62.5℃、F3およびR3はTm値が58.5?62.5℃により領域を選択した結果、次に示すものが選択された。選択された領域は、配列番号1で表される塩基配列の1900-2200番目およびその相補鎖の領域に含まれる。」と記載され、段落【0044】?【0048】には、「(プライマーの設計)選択された領域の配列から、LAMP法に適用される次の核酸増幅用プライマーが得られた。
FIP:領域F1cおよびF2を連結した塩基配列からなるプライマー
AFA I :(配列番号18)配列番号2および3で表される配列を連結
AFA II :(配列番号19)配列番号2および4で表される配列を連結
AFA III:(配列番号20)配列番号2および5で表される配列を連結
AFA V :(配列番号21)配列番号2および6で表される配列を連結
RIP:領域R1cおよびR2を連結した塩基配列からなるプライマー
ARA I :(配列番号22)配列番号7および8で表される配列を連結
ARA II :(配列番号23)配列番号7および9で表される配列を連結
ARA V :(配列番号24)配列番号7および10で表される配列を連結
F3プライマー:各配列番号で表される塩基配列からなるプライマー
AF3 :(配列番号11)
R3プライマー:各配列番号で表される塩基配列からなるプライマー
AR3 :(配列番号12)」と記載されている。
そうすると、本願補正発明1の第一プライマーから第四プライマーとは、各々LAMP法で用いる2種の内部プライマー(inner primer)FIP,RIP、及び2種の外部プライマー(outer primer)F3、R3であって、配列番号1で表されるヒトCEAの塩基配列の1900-2200番目の領域から選択された特定の配列、または特定の配列を連結したプライマーであるといえる。

(3-2)対比
そこでまず、本願補正発明1と引用例1に記載された事項を比較すると、上記引用例1記載事項(iii)及び図6には、前立腺特異抗原(PSA)産生細胞(LNCaP)を検出するために、PSA非産生細胞(K562)を加えて総RNAを抽出後、PSA検出用のFIP、BIP、F3、B3の4つのプライマーを用いて、60℃、45分間RT-LAMP反応を行ったところ、100万個中に1個しか存在しないPSA生産細胞でも検出できたことが記載されており、引用例1記載のBIP、B3は、本願補正発明1のRIP、R3の別名であるから、本願補正発明1と引用例1に記載された事項は、LAMP法により癌抗原を検出するための核酸増幅用プライマーセットであって、FIP、RIP、F3、R3を含むものである点で共通する。
しかしながら両者は、前者では、癌抗原がCEAであり、FIP、RIP、F3、R3がそれぞれ、ヒトCEAの塩基配列の領域から選択された特定の配列、または特定の配列を連結した配列からなるものであるのに対して、後者では、癌抗原がPSAであり、4つのプライマーの配列は記載されていない点で相違する。

(4)当審の判断
CEAは本願出願前から癌マーカーとして用いられる代表的な癌抗原であり、その転写産物であるCEAのmRNAを感度良く検出しようとすることは、上記引用例4記載事項(vi)にもあるように、本願出願前既に自明の技術的課題であり、引用例1に記載の癌抗原のPSAに代え、CEAをRT-LAMP法により検出しようとすることは、当業者にとって自然な発想である。
そしてその際、上記引用例2記載事項(iv)にあるLAMP法用プライマーの設計指針に従って、公知のヒトCEAの塩基配列から市販のプライマー設計支援ソフトを利用して、塩基組成、GC含量、二次構造などを考慮して、CEA検出のためのプライマーを設計することは、当業者の通常の創作活動の範囲内のことにすぎず、そのようにして、本願補正発明1に係る核酸増幅用プライマーセットを作成することは、当業者であれば容易になし得たことである。
そして、本願明細書の記載をみても、本願補正発明1に係るプライマーセットは、引用例2の記載と同様な基準により設計したものであり(明細書段落【0022】)、プローブ設計ソフトを用いて設計されたものである(明細書段落【0035】)から、本願補正発明1のプライマーセットは、引用例2に記載されたとおりの手法を用いることにより得られたものにすぎない。
一方、本願明細書の実験例では、本願補正発明1のプライマーセットを用いて試料中のヒトCEAのRNAを増幅した結果、CEA RNAのコピー数が少ない場合であっても、20分以内に増幅が確認され、検出が可能になったことが記載されているが、本願明細書の表1に記載されたこの実験例で用いた24個のプライマーセットは、いずれも2種のループプライマーを追加した計6つのプライマーからなるものであり、その実験例での結果が、ループプライマーを発明特定事項に含んでいない、4つのプライマーからなる本願補正発明1のプライマーセットによって奏された効果であるとはいえない。
むしろ、上記引用例2記載事項(v)には、2種のループプライマーを追加すると、ループプライマーを用いない場合に比べ、増幅時間が1/3に短縮することが記載されており、本願明細書の実験例において、もしループプライマーを用いていなければ、検出時間は20分以内ではなく1時間程度になるものと推定できるから、本願補正発明1において奏される効果は、引用例1、2の記載から予測できない程の格別なものとはいえない。また、本願明細書の実験例の結果である20分以内の検出とは、本願の請求項1の記載に基づかない効果であるともいえる。
以上の理由により、本願補正発明1は、引用例1及び2の記載から当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(5)審判請求人の主張
審判請求人は、平成23年5月28日付で提出した回答書において、2種のループプライマーを追加した請求項1についての補正案を提示している。念のためこの補正案について検討する。請求人は、「本願発明は術中迅速診断に適用可能なCEA検出用のプラーマーセットを提供すべく、6000コピーの場合は10分で増幅の確認がされているように短時間で増幅確認が可能なプライマーセットとなっており、上記特許請求の範囲補正案に示したループプライマーの限定を行った請求項1記載の発明は、参考資料1および2を参酌したとしても引用文献1?4から当業者が容易に発明することができたものではないと思料致します。」と主張している。
しかしながら、上記引用例2にも記載のように、LAMP法において2種のループプライマーを追加すると、増幅時間が1/3?1/2に短縮できることは、本願出願前既に周知の技術的事項である。そして、引用例1では、RT-LAMP法によりPSAが45分で検出できたことが記載されているから、引用例1でのPSAの検出にさらにループプライマーを追加すれば20分以下で増幅の確認ができることは予測できる範囲のことであり、2種のループプライマーを追加した補正案の請求項1に係る発明であっても、引用例1及び2の記載から当業者が容易になし得ることであり、請求人の上記主張は採用できない。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成20年12月22日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」という。)は、平成20年9月24日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】配列番号18、19、20または21の配列を有する第一プライマー、
配列番号22、23または24の配列を有する第二プライマー、
配列番号11の配列を有する第三プライマー、および
配列番号12の配列を有する第四プライマー
を含む癌胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen:CEA)検出のための核酸増幅用プライマーセット。」

そして、本願発明1は上記本願補正発明1を包含するものであり、本願補正発明1は上記2.(4)に記載した理由によって、引用例1及び2の記載から当業者が容易になし得たものであるから、本願発明1も引用例1及び2の記載から当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-11 
結審通知日 2011-08-16 
審決日 2011-10-11 
出願番号 特願2002-324833(P2002-324833)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
P 1 8・ 121- Z (C12N)
P 1 8・ 575- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱田 光浩  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 鵜飼 健
引地 進
発明の名称 CEA検出のための核酸増幅用プライマーおよび該プライマーを用いた検査方法  

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