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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1247742 |
審判番号 | 不服2009-11296 |
総通号数 | 145 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-06-19 |
確定日 | 2011-12-02 |
事件の表示 | 特願2004- 32749「ネットワーク内の装置を管理するための方法、システム、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月 9日出願公開、特開2004-252976〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年2月9日(パリ条約優先権主張、2003年2月20日米国)の出願であって、平成21年4月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成21年6月19日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成21年6月19日付け手続補正について [補正却下の決定の結論] 平成21年6月19日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された。 「装置固有コマンドを具備する少なくとも1つの装置を含むネットワークにおいて、前記装置を管理するための方法であって、コンピュータ・システムに下記ステップを実行させることを含み、該ステップが、 前記ネットワーク内の少なくとも1つの装置に関する装置管理操作を実行するための装置独立コマンドをホスト・システムから受信するステップであって、前記受信した装置独立コマンドが前記ネットワーク内の複数の装置のうちの少なくとも1つに向けられることができる、前記受信するステップと、 前記受信した装置独立コマンドが向けられる装置のネットワーク・アドレスを第1のマッピングから決定するステップと、 前記受信した装置独立コマンドに関連付けられた少なくとも1つの装置固有コマンドを第2のマッピングから決定するステップであって、前記第2のマッピングが前記受信した装置独立コマンドに含まれる少なくとも1つのパラメータに対する前記関連付けられた少なくとも1つの装置固有コマンド内の少なくとも1つのパラメータへのマッピング、及び該少なくとも1つのパラメータへマッピングされた装置固有コマンドの次に実行される装置固有コマンドへのシーケンスが指定されるマッピングを示す、前記決定するステップと、 前記第2のマッピングに示される前記装置独立コマンドからの前記少なくとも1つのパラメータをパラメータとして含むように前記決定した少なくとも1つの装置固有コマンドを生成するステップと、 前記決定したネットワーク・アドレスに前記生成した少なくとも1つの装置固有コマンドを送信するステップであって、前記決定したネットワーク・アドレスによって識別される装置が、前記少なくとも1つの装置固有コマンドを実行する、前記送信するステップと を含む、前記方法。」 上記補正は、本件補正前(平成20年5月20日付け補正)の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項について、「ネットワーク内の装置を管理するための方法であって」とあるのを、「装置固有コマンドを具備する少なくとも1つの装置を含むネットワークにおいて、前記装置を管理するための方法であって」と限定し、「装置独立コマンドを受信するステップであって」とあるのを、「装置独立コマンドをホスト・システムから受信するステップであって」と限定し、「少なくとも1つに向けることができる」とあるのを「少なくとも1つに向けられることができる」と訂正し、「前記装置独立コマンドが向けられる」、「前記装置独立コマンドに関連付けられた」とあるのを、それぞれ、「前記受信した装置独立コマンドが向けられる」、「前記受信した装置独立コマンドに関連付けられた」と限定し、「前記第2のマッピングが、前記装置独立コマンドに含まれる」とあるのを、「前記第2のマッピングが前記受信した装置独立コマンドに含まれる」と限定し、「前記装置固有コマンド内の少なくとも1つのパラメータへのマッピングを示す、前記決定するステップと」とあるのを、「前記関連付けられた少なくとも1つの装置固有コマンド内の少なくとも1つのパラメータへのマッピング、及び該少なくとも1つのパラメータへマッピングされた装置固有コマンドの次に実行される装置固有コマンドへのシーケンスが指定されるマッピングを示す、前記決定するステップと」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物「特開2000-244567号公報」(以下「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ルータに関し、特にそれを複数接続した時の管理方法に関する。」(第2頁) 「【0008】 【発明が解決しようとする課題】複数ルータの管理・運用に際して、最も大きな問題は管理コスト増大、ルータ間の設定ミスによるトラブルの2つである。前者はルータの台数やルータの種類に比例してオペレータの管理の手間が増えることである。後者はルータネットワーク上のルータ間の設定が矛盾しているために、個々のルータは正常に動作しているのにルータネットワーク全体としてはオペレータの思惑通りには動作しないことである。 【0009】従来技術がこれら二つの問題にどのように対処しているかを以下に述べる。 【0010】SNMPでは、IDが定義済のパラメータを複数のルータについて1台の管理端末から一括管理できる。そのためこれらのパラメータについてはルータの台数や種類の多様さに関わらず同じ手法で管理することが可能である。しかしながらSNMPで管理できるのはルータの中のごく一部のパラメータであり、例えばルータの設定情報の参照やルータの操作制御はできない。そのためこうしたことを行う場合には一つ一つのルータについて作業を行う必要が出てくるので、SNMPでは管理の手間・ルータの設定ミスといった問題を完全には解決できない。 【0011】ルータ独自の管理命令群は、一台のルータをルータ管理命令群のみで管理可能な位機能は豊富である。しかしながら管理命令群は一台のルータのみを対象にして設計されているため、複数ルータを管理する場合にはオペレータは一つ一つのルータで同じ管理命令を入力する必要がある。更にルータの種類が違うとルータ管理命令体系が異なることがあるため、複数種類のルータを管理する場合にはルータの種類によって違った管理命令を入力しなければならない。従って管理の手間・ルータの設定ミスといった問題は解決できない。」(第2頁) 「【0014】本発明の目的は、管理コスト増大・ルータ間設定ミスという二つの問題を解決し、ルータネットワークの増大に対応できるルータネットワーク管理技術を提供することである。 【0015】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明ではルータネットワーク管理プログラムを用いて、オペレータから受け取った管理命令からその命令の対象となるルータを算出し、そのルータが解釈できる書式にその命令を変換し、そのルータへ送信する。そしてこのプログラムで各ルータでの命令実行結果出力を収集し一つにまとめて、オペレータへ結果を表示する。 【0016】このようにルータネットワーク管理プログラムは、オペレータの管理命令を全て受け取り必要なルータへ管理命令を送付することにより、オペレータにルータネットワークが一つのルータであるかのように見せかける。これにより管理コスト増大・ルータ間設定ミスという二つの問題を解決する。」(第3頁) 「【0017】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を説明する。 【0018】図1は本発明の対象であるルータネットワークと、ルータネットワーク管理端末とを示したものである。ルータネットワーク管理端末11及びルータネットワークを構成する複数のルータ12が内部接続用ネットワーク13で接続されている。そして11,12,13とをまとめたものが管理上仮想的な一つのルータ15と見なされるようになる。 【0019】次に図1のそれぞれの装置の概略を説明する。 【0020】ルータネットワーク管理端末11は図2に示すように、ネットワークインターフェース114、オペレータの命令入力部113、出力表示部115を有する通常のPCである。この上でルータネットワークを管理する管理プログラム120が動作する。 【0021】 【表1】 (・・・省略・・・) 【0022】参考のために表1で管理プログラム120のサポートするルータ管理命令群の一部について、コマンド名・引数及びその動作の説明を示す。 【0023】次にルータネットワーク管理端末11上で動作する管理プログラム120を説明する。 【0024】まず管理プログラム120のデータ構造及び外部とのインターフェースを図3に示す。 【0025】ルータアドレス表21は管理プログラム120が管理するルータ名・内部接続用ネットワーク13上でのアドレス・そのルータの種類の対応を其々欄211,212,213に記したものである。管理命令変換表22は欄213で示されたルータの種類毎に、管理プログラム120へオペレータが入力した管理命令を対応する各ルータ特有の管理命令への変換する命令変換則(欄223)・管理命令送受信のための通信方法(欄224)に関する情報を、全ての管理命令について有する。又仮想ルータインターフェース名変換表28は、仮想ルータ15上で一意になるように決めた仮想インターフェース名(欄281)に対する、対応するインターフェースを持つルータ名(欄282)・対応するインターフェースの欄282のルータ上での名前(欄283)・インターフェースのアドレス(欄284)との対応付けを示す表である。 【0026】管理プログラム設定ファイル200は、ルータアドレス表21と仮想ルータインターフェース名変換表28とを生成するために必要な情報を含んだファイルである。管理プログラム120は起動時に管理プログラム設定ファイル200を読む込み、ルータアドレス表21と仮想ルータインターフェース名変換表28をプログラム内に作成する。 【0027】命令対象ルータリスト23、命令バッファ24、出力バッファ25はいずれも管理命令の対象となるルータのリストを控える管理プログラム120上のメモリ領域である。命令対象ルータリスト23は管理命令の対象となるルータのリストを控える場所であり、命令バッファ24は入力された管理命令を保存する場所である。又出力バッファ25は管理命令を各ルータで実行した際のルータからの出力を貯める場所である。 【0028】以下図5のフローチャートを用いて管理プログラム制御部20の動作を説明する。同時に具体例として、"activate if0"という管理命令を受信した時の処理内容を図3内の表のサンプル値に従って述べる。 【0029】管理プログラム120は命令入力部から管理命令要求を受け取ると(ステップ300)動作を開始する。そしてこの命令を命令バッファ24へ保存するとともに(ステップ310)、その要求から対象ルータの情報を抽出し(ステップ320)、その結果を対象ノードルータリスト23へ保存する。 【0030】ステップ320を更に細かく説明する。管理命令内に命令送付対象ルータが指定されていない場合には管理下のルータ全てをルータリスト23へ挿入する(ステップ323)。逆に対象のルータが指定されている場合にはそのルータのみをルータリスト23へ挿入する(ステップ325)。対象ルータの指定を指定する方法には明示的にルータを指定する方法と他のパラメータから暗にルータを指定する方法とがある。前者は表4の"exec"命令で管理命令が入力された場合に相当し、後者は管理命令の引数で指定したインターフェースやネクストホップから仮想ルータインターフェース名変換表28を用いてルータを特定するものである。 【0031】ステップ325までを"activate if0"が入力されたという具体例で説明すると、"if0"というインターフェースは仮想ルータインターフェース名変換表28によるとrt1のものなので、ルータリストへ挿入されるルータはルータ"rt1"と判明する。 【0032】そして命令対象ルータリスト23に入っている全てのルータについて命令バッファ24に入っている命令の送信処理を行う。そのために命令対象ルータリスト23からルータを一つ一つ取り出し、以下の処理(ステップ370)を行う。 【0033】ルータアドレス表21及び管理命令翻訳表22を参照し、命令バッファ24内の命令と対象ルータの種類から、そのルータへそのコマンドを送るため命令翻訳処理及び命令の送付方法を求め(ステップ372)、翻訳処理を実行する(ステップ374)。そして命令の送付先をルータアドレス表21から検索し、そのアドレス宛にステップ374で翻訳された命令をネットワークインターフェース114を介して送付する(ステップ376)。そしてステップ376に対するそのルータの応答を、ルータ名の情報と共に出力バッファ25に出力する(ステップ378)。この際出力内容中の各ルータが実際に使っているインターフェース名は仮想ルータインターフェースアドレス対応表28を用いてルータ上でのインターフェース名に変換する(ステップ379)。 【0034】ステップ379までを"activate if0"が入力されたという具体例で説明すると、"activate if0"をオペレータが入力した場合には、"rt1"のみが対象ルータである。ルータアドレス表によると"rt1"のルータ種別は"A"であり、又入力コマンドは"activate"なので、管理命令翻訳表22から命令翻訳処理は"activate2ifup"であることがわかる。同様にして管理命令変換テーブル22からこの変換された命令は"telnet"プログラムによって送信可能であることがわかる(ステップ372)。 【0035】この翻訳処理を実行することにより"activate"命令はルータ"rt1"特有な管理命令"ifup"へ変換されると同時に、引数のインターフェース名"if0"が仮想ルータインターフェース名変換表28によりルータ"rt1"上の対応するインターフェース名"eb0"に変換される(ステップ374)。"rt1"の内部ネットワーク上のアドレスは仮想ルータインターフェース名変換表28より"1.2.3.4"なので、"1.2.3.4"宛に"telnet"プログラムによって"ifup eb0"という命令を送付する(ステップ376)。 【0036】そして、その命令を"rt1"が処理した際の出力"eb0 activation is succeed"について更に"rt1>"というヘッダ文字列を付加して、出力バッファ25へ"rt1> eb0 activation is succeeded"と出力する(ステップ378)。そして出力バッファ内の"eb0"というインターフェース名を"if0"という仮想ルータ上のインターフェース名に変換して、出力バッファの内容を"rt1> if0 activation is succeeded"とする(ステップ379)。」(第3頁?第5頁) 「【0064】 【発明の効果】本発明によれば、一台の管理端末からルータネットワーク上のルータへ自動的に管理命令を送付することやルータネットワーク全体の設定ファイルから各ルータの構成定義ファイルを生成し各ルータへ送付することが可能になる。これにより管理者は、ルータネットワーク全体を仮想的に単一のルータであるかのように管理することが可能となる。管理プログラムは汎用の管理命令をベンダー毎のルータ管理命令に翻訳して送付するため、ルータネットワーク上に複数ベンダーのルータがあっても同じ手法を適用することができる。 【0065】従来技術ではルータの増設回線によって回線増加や負荷分散が達成されたとしても、ルータの管理コストがルータの台数及びベンダー数に比例してしまうこととルータ間の設定矛盾によるルータネットワークの設定ミスが問題になっていたが、本発明によりいずれの問題も解決される。」(第6頁?7頁) これら引用刊行物1の記載から、引用刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ルータネットワーク管理プログラムを有するルータネットワーク管理端末によりネットワーク上の複数のルータを管理するルータネットワーク管理方法であって、ルータネットワーク管理端末のルータネットワーク管理プログラムは、命令入力部からの管理命令を受信すると、管理命令の引数で指定されたインターフェース名から仮想ルータインターフェース名変換表を用いてルータ、ルータのネットワーク上のアドレス、対応ルータ上のインターフェース名を特定し、更に、ルータアドレス表を用いてルータの種類を特定し、管理命令変換表により、管理命令をルータの種類に基づいて当該ルータに特有な管理命令に変換し、変換された管理命令と変換された引数である対応ルータ上のインターフェース名をネットワーク上の当該ルータのアドレスに送付し、当該ルータは当該管理命令を実行する、ルータネットワーク管理方法。」 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物「特開2002-157172号公報」(以下「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はコンピュータシステム、特にネットワークによって複数のコンピュータが接続され、使用される分散コンピューティング環境での、ネットワーク/システム上に存在する各種リソースの稼動や性能に関する情報収集に関する。」(第2頁) 「【0017】 【発明の実施の形態】1.全体のシステム構成 本発明のシステム全体の構成要素は図1に示す通り、計測操作部12と計測情報ブローカー110、計測機能131、計測対象132、出力先14であり、それらはネットワーク22によって結ばれている。 【0018】なお図1では各構成要素がネットワーク22によって隔てられた別の機器210上に存在する形で描いているが、同一機器210上に複数の構成要素が実装されても良い。たとえば、計測操作部12と計測情報ブローカー110が同一機器210上に実装されても良い。また、計測対象132は必ずしもネットワーク22に接続されている必要はなく、計測機能131から計測可能な状態であれば良い。 【0019】1.1 各部の機能概要 計測操作部12は計測情報ブローカー110に対して、計測情報ブローカー110の各種動作に関する指示を発行する機能を有する。なお計測操作部12は計測情報ブローカー管理部117の機能にアクセス可能な端末(コンソール)やアプリケーション(ローカル/リモートアプリケーション)を想定している。 【0020】計測情報ブローカー110は本発明の主体であり、計測操作部12からの指示に基づいて計測部131に対する計測指示や計測結果の出力先14への送信を行う機能を有する。計測情報ブローカー110の詳細については、「2.計測情報ブローカーの詳細」で述べる。 【0021】計測機能131は計測情報ブローカー110からの指示に基づき計測対象132を計測し、計測結果を計測情報ブローカー110に渡す機能を持つ。なお計測機能131自体が計測機能を持つ必要はなく、さらに別の計測機能への中継機能であっても良い。 【0022】計測対象132は計測の対象であり、計測部131によって計測される。計測対象132は、ネットワークやルータ装置、コンピュータ装置などのハードウェア装置の他、機器上で稼動するファームウェアまたはソフトウェアであっても良い。 【0023】出力先14は計測結果の出力先である。ファイルシステムやデータベースなどの記憶手段の他、計測結果を利用するAP(たとえば常駐型プログラム)であっても良い。 【0024】なお計測操作部12、計測情報ブローカー110、計測部131、計測対象132、出力先14はマシンを分ける必要はなく、同一のマシン上に複数の機能が共存していても良い。」(第3頁) 「【0051】(3)複数指定 一つの計測タスクで一つの計測内容を処理することが基本だが、同様な計測を繰り返す場合、計測タスクの個数が増えるため、計測タスクの処理に要するオーバーヘッドが気になる。そのため、一度の一つの計測タスクで複数の計測対象、計測項目を処理するようにしても良い。 【0052】たとえば計測対象3111の指定で、複数の対象を併記することで複数の対象に対して同じ計測内容を実行し、複数の計測結果あるいは測定値の合計値や平均値を返すことが考えられる。また、複数の対象を併記する代わりにアスタリスクやクエスチョンマークなどのメタキャラクタを利用することも考えられる。たとえば、アスタリスクのみを選択すると指定した計測項目3112の計測が可能なネットワーク内のすべての機器に対して計測を行うなどの適用が考えられる。 【0053】また、計測項目3112内に複数の計測項目を併記することで複数の計測を行うことも考えられる。 【0054】なお、計測対象および計測項目が複数になると計測結果も複数になることが考えられるが、その場合、複数の計測結果をそのまま返すか、平均値あるいは合計値を返すなど(測定結果が数値データの場合)を行えば良い。」(第5頁) (2)対比 本願補正発明と引用発明を対比すると、 引用発明の「ルータネットワーク管理端末」、「ルータ」、及び「ネットワーク上のアドレス」は、それぞれ、本願補正発明の「コンピュータ・システム」、「装置」、及び「ネットワーク・アドレス」に相当する。 また、引用発明の命令入力部から受信された管理命令は、管理命令変換表により、ルータの種類に基づいてルータに特有な管理命令に変換されるから、引用発明の命令入力部から受信された「管理命令」は、本願補正発明の「装置独立コマンド」に相当し、引用発明の「ルータに特有な管理命令」は、本願補正発明の「装置固有コマンド」に相当し、引用発明の命令入力部からの管理命令の受信は、本願補正発明の「受信するステップ」に相当し、引用発明における管理命令変換表による管理命令の変換は、本願補正発明の「装置固有コマンドを第2のマッピングから決定するステップ」に相当する。 また、引用発明は、本願補正発明と同様に、第2のマッピングに示される装置独立コマンドから装置固有コマンドを生成しているということができるから、引用発明は、本願補正発明の「装置固有コマンドを生成するステップ」に相当するステップを有しているということができる。 また、引用発明において、管理命令の引数で指定されたインターフェース名から仮想ルータインターフェース名変換表を用いてルータのネットワーク上のアドレスを特定することは、本願補正発明のネットワーク・アドレスを「第1のマッピングから決定するステップ」に相当する。 また、引用発明の、装置固有コマンドを決定されたアドレスのルータに送付し、ルータは当該装置固有コマンドを実行することは、本願補正発明「装置固有コマンドを送信するステップ」および、「装置固有コマンドを実行する」ことに相当する。 したがって、両者は 「装置固有コマンドを具備する少なくとも1つの装置を含むネットワークにおいて、前記装置を管理するための方法であって、コンピュータ・システムに下記ステップを実行させることを含み、該ステップが、 前記ネットワーク内の少なくとも1つの装置に関する装置管理操作を実行するための装置独立コマンドを受信するステップであって、前記受信した装置独立コマンドが前記ネットワーク内の複数の装置のうちの少なくとも1つに向けられることができる、前記受信するステップと、 前記受信した装置独立コマンドが向けられる装置のネットワーク・アドレスを第1のマッピングから決定するステップと、 前記受信した装置独立コマンドに関連付けられた少なくとも1つの装置固有コマンドを第2のマッピングから決定するステップであって、前記第2のマッピングが前記受信した装置独立コマンドに含まれる少なくとも1つのパラメータに対する前記関連付けられた少なくとも1つの装置固有コマンド内の少なくとも1つのパラメータへのマッピングを示す、前記決定するステップと、 前記第2のマッピングに示される前記装置独立コマンドからの前記少なくとも1つのパラメータをパラメータとして含むように前記決定した少なくとも1つの装置固有コマンドを生成するステップと、 前記決定したネットワーク・アドレスに前記生成した少なくとも1つの装置固有コマンドを送信するステップであって、前記決定したネットワーク・アドレスによって識別される装置が、前記少なくとも1つの装置固有コマンドを実行する、前記送信するステップと を含む、前記方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1 本願補正発明は、装置独立コマンドをホスト・システムから受信するのに対して、引用発明は、装置独立コマンドを命令入力部から受信している点。 相違点2 本願補正発明は、受信した装置独立コマンドに関連付けられた少なくとも1つの装置固有コマンドを第2のマッピングから決定するステップは、少なくとも1つのパラメータへマッピングされた装置固有コマンドの次に実行される装置固有コマンドへのシーケンスが指定されるマッピングを示すのに対して、引用発明の当該ステップは、少なくとも1つのパラメータへマッピングされた装置固有コマンドの次に実行される装置固有コマンドへのシーケンスが指定されるマッピングを示すものではない点。 (3)当審の判断 以下、上記相違点について検討する。 相違点1について ネットワークに含まれる装置を管理するために当該装置にコマンドを送信する装置について、どのような装置構成を採用するかは設計的事項であって、この点、引用刊行物2にも、ネットワークを介して計測対象を計測する場合に、端末(コンソール)である計測操作部(本願補正発明の「ホスト・システム」に相当するということができる。)が、計測情報ブローカーに指示を発行し、計測情報ブローカーが計測部に計測指示を行い、計測部が計測対象の計測を行うことが記載されている。また、一般に、コマンドをホストコンピュータから送信することも周知である。 そうすると、引用発明の命令入力部を、ホスト・システムとすることにより、引用発明において、装置独立コマンドをホスト・システムから受信するようにすることは当業者が適宜になし得ることである。 相違点2について ネットワークに接続された装置を管理する場合に、1つの指示により、連続して行われる操作を順次指示することは、特開平4-200132号公報(第2頁右上欄第12行?右下欄第7行、第3頁左上欄第5行?右上欄第4行、同頁右上欄下から第5行?下から第2行、同頁左下欄第10行?右下欄第9行、ネットワークに接続された装置を管理する場合に、管理ノードにおけるオペレータのマクロ操作実行指示により、管理ノードが被管理ノードに、予め定められた所定のコマンド操作処理を順次行わせることが記載されている。)、特開2000-224167号公報(段落【0068】?【0083】、図1、図12?図15、HMIまたは制御シーケンス実行部1200から「設備の停止」(1つの制御命令関数)をネットワークを介して命令解釈部1201に送信すると、命令解釈部1201は、ネットワークを介して設備に対して、機種タイプ問い合わせ、機器稼働状況問い合わせ、一時停止命令(Nの制御命令関数)を送信することが記載されている。)、に記載されているように周知であって、引用発明の受信した装置独立コマンドに関連付けられた少なくとも1つの装置固有コマンドを第2のマッピングから決定するステップが、少なくとも1つのパラメータへマッピングされた装置固有コマンドの次に実行される装置固有コマンドへのシーケンスが指定されるマッピングを示すように構成することは当業者が周知技術に基づいて容易になし得ることである。 そして、本願補正発明のように構成したことによる効果も引用発明及び周知技術から予測できる程度のものである。 したがって、本願補正発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、引用刊行物2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成21年6月19日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年5月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「ネットワーク内の装置を管理するための方法であって、コンピュータ・システムに下記ステップを実行させることを含み、該ステップが、 前記ネットワーク内の少なくとも1つの装置に関する装置管理操作を実行するための装置独立コマンドを受信するステップであって、前記受信した装置独立コマンドが前記ネットワーク内の複数の装置のうちの少なくとも1つに向けることができる、前記受信するステップと、 前記装置独立コマンドが向けられる装置のネットワーク・アドレスを第1のマッピングから決定するステップと、 前記装置独立コマンドに関連付けられた少なくとも1つの装置固有コマンドを第2のマッピングから決定するステップであって、前記第2のマッピングが、前記装置独立コマンドに含まれる少なくとも1つのパラメータに対する前記装置固有コマンド内の少なくとも1つのパラメータへのマッピングを示す、前記決定するステップと、 前記第2のマッピングに示される前記装置独立コマンドからの前記少なくとも1つのパラメータをパラメータとして含むように前記決定した少なくとも1つの装置固有コマンドを生成するステップと、 前記決定したネットワーク・アドレスに前記生成した少なくとも1つの装置固有コマンドを送信するステップであって、前記決定したネットワーク・アドレスによって識別される装置が、前記少なくとも1つの装置固有コマンドを実行する、前記送信するステップと を含む、前記方法。」 (1)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記「2.(1)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、補正による訂正及び限定を削除したものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み更に限定を付したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用発明、引用刊行物2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用刊行物2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、引用刊行物2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-06 |
結審通知日 | 2011-07-12 |
審決日 | 2011-07-25 |
出願番号 | 特願2004-32749(P2004-32749) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 寺谷 大亮 |
特許庁審判長 |
大野 克人 |
特許庁審判官 |
鈴木 重幸 安久 司郎 |
発明の名称 | ネットワーク内の装置を管理するための方法、システム、およびプログラム |
代理人 | 上野 剛史 |
代理人 | 市位 嘉宏 |
復代理人 | 松井 光夫 |
代理人 | 太佐 種一 |
復代理人 | 村上 博司 |